JP4506014B2 - 被覆成形品の成形方法及び金型装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は被覆成形品の成形方法及び金型装置に係り、詳しくは、樹脂等の成形品に金型装置内で被覆剤を被覆する際に好適な被覆成形品の成形方法及び金型装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、射出成形等による成形品では、金型装置内で基材を成形した後、該基材を金型装置から取り出し、スプレー等により被覆剤を被覆して被覆層を形成していた。
【0003】
又、工数を低減するため、成形した基材に金型装置内で被覆剤を被覆する型内被覆法と呼ばれる方法が実施されている。
型内被覆法により成形される被覆成形品として、例えば、車両の側面に取り付けられるサイドモールがある。
【0004】
型内被覆法により成形されるサイドモールには、例えば、図7に示すように、両側部が湾曲した形状のものがある。サイドモール101は、基材102の意匠面としての表面103に、被覆層104が形成されている。
【0005】
サイドモール101は、意匠面と連続する裏面105の一部に貼り付けられる両面テープを介して車両に取り付けられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、サイドモール101は、被覆層104が表面103にしか被覆されていないため、基材102の端部106で被覆層104が剥がれやすいという問題がある。
【0007】
又、両面テープは、基材102の材料である樹脂に対して接着力が弱いので、接着力を確保するために専用のプライマー等を裏面105に塗布していた。このようにプライマー等を塗布する分、コスト高になるという問題もある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、基材から被覆層を剥がれにくくすることができる被覆成形品の成形方法及び金型装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、金型のキャビティ内で基材に被覆剤を被覆する被覆成形品の成形方法であって、前記キャビティ内に前記基材の材料を注入して基材を成形する工程と、前記金型をわずかに開き、かつ、キャビティ内に設けられたスライドコアを所定距離、キャビティから離れる方向へ移動させることにより、前記基材の意匠面及び該意匠面に連続する裏面の一部と対向する位置に隙間を形成する工程と、前記隙間内へ前記被覆剤を注入し、前記基材の意匠面及び該意匠面に連続する裏面の一部を覆う被覆層を形成する工程とを備えることを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、被覆成形品は、基材の意匠面及び意匠面に連続する裏面の一部まで回り込んで被覆層が形成されているため、被覆層が基材から剥がれにくい。又、被覆層が形成された箇所の裏面の被覆層にいわゆる両面テープの一方の面を貼り付け、他方の面を車両等に貼り付けることにより、被覆成形品が車両等に取り付けられる。両面テープは被覆層に対して良好な接着力が得られるため、被覆成形品は良好な接着力を得て車両等に取り付けられる。従って、プライマーを塗布する工程を廃止でき、被覆成形品を低コストで車両等に取り付けることできる。
【0011】
請求項2〜請求項4に記載の発明は、第1の金型と第2の金型とを備え、両金型間に形成されるキャビティ内で基材に被覆剤を被覆して被覆成形品を成形する金型装置であって、前記第1の金型には前記キャビティを形成する凹部を設け、前記第2の金型には前記凹部の少なくとも幅方向の両端部と対応する位置にスライドコアを設け、前記スライドコアは前記両金型が接合された状態において、前記両金型とともに前記基材を成形するためのキャビティを構成する第1の位置と、前記第1の位置から所定距離前記キャビティから離れる方向へ移動した第2の位置とに移動可能に設けられ、前記スライドコアを前記第1の位置に配置した状態で前記基材を成形後、前記スライドコアを前記第2の位置へ移動させた状態で前記スライドコアのキャビティ形成面と基材との隙間に被覆剤注入口から被覆剤を注入可能な経路を設け、前記両金型間のパーティング面は、前記第1の位置に位置する前記スライドコアのキャビティ形成面と同一平面上又は、該キャビティ形成面より反キャビティ側に位置するように設けられたことを要旨とする。
【0012】
この発明の金型装置を使用して被覆成形品を成形する場合は、先ず、第1,第2の金型が接合され、スライドコアが前記第1の位置に位置した状態で、キャビティ内に基材の材料が充填される。この充填された材料が硬化して基材が成形された後に、第1,第2の金型間がわずかに離されるとともにスライドコアが第2の位置に配置されて、第1,第2の金型,スライドコア及び基材の間に、基材の意匠面及び意匠面に連続する裏面の一部と対向する位置に隙間が形成される。この隙間に被覆剤注入口から通路を介して被覆剤が充填される。充填された被覆剤が硬化することにより、基材の意匠面及び意匠面に連続する裏面の一部を覆う被覆層が形成される。従って、被覆層が基材から剥がれにくい被覆成形品を金型内で成形できる。
【0014】
また、パーティング面が、キャビティ形成面と同一平面上に位置するように設けられた場合は、基材の材料がパーティング面に侵入してもバリは基材の意匠面側には形成されない。又、パーティング面が、キャビティ形成面より反キャビティ側に位置するように設けられた場合には、キャビティ内に基材の材料を充填させる際に、パーティング面がキャビティと接していないため、基材の材料がパーティング面に侵入しない。従って、基材を成形する際のバリの発生を低減できる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、前記両金型の一方に前記樹脂注入口が設けられ、他方に被覆剤注入口が設けられ、前記両金型が接合した状態で前記樹脂注入口と前記キャビティとが連通可能、かつ前記被覆剤注入口と前記キャビティとが連通不能となり、前記両金型がわずかに離れた状態で前記被覆剤注入口と前記キャビティとが連通可能、かつ前記被覆剤注入口と前記キャビティとが連通不能となることを要旨とする。
【0018】
この発明によれば、両金型が接合した状態では樹脂注入口からキャビティ内に樹脂が注入され、この樹脂は被覆剤注入口に流れ込まない。又、両金型がわずかに離れた状態では、被覆剤注入口からキャビティ内に被覆剤が注入され、この被覆剤は樹脂注入口に流れ込まない。従って、被覆剤注入口に樹脂が流れ込まないようにできるとともに、樹脂注入口に被覆剤が流れ込まないようにできる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、前記両金型の一方には、前記被覆剤注入口と、該被覆剤注入口と連通する前記経路としての第1のゲートが設けられ、該第1のゲートは、前記スライドコアを前記第1の位置に配置した状態で、前記キャビティ形成面よりわずかに反キャビティ側で前記スライドコアと対面して封止されていることを要旨とする。
【0020】
この発明によれば、両金型が接合した状態では、第1のゲートは封止される。両金型がわずかに離れた状態では、スライドコアが第2の位置に移動されることにより、第1のゲートは意匠面及び該意匠面に連通する裏面の一部と対向する位置に形成される隙間と連通される。従って、樹脂注入口からキャビティ内に注入される樹脂が被覆剤注入口に流れ込まないようにできる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、前記両金型の一方に、樹脂注入口が設けられ、該樹脂注入口と前記キャビティとを連通する第2のゲートは、前記金型の移動方向と略同じ方向に延びるように形成された前記パーティング面の一部と交わるように前記両金型に形成されたことを要旨とする。
【0022】
この発明によれば、両金型が接合した状態では、第2のゲートは連通されるため、樹脂注入口から注入される樹脂は第2のゲートを介してキャビティ内に充填される。両金型がわずかに離れた状態では、第2のゲートは切断され、第2のゲートの樹脂注入口側部は他方の金型の壁面と対面して封止される。従って、樹脂注入口に被覆剤が流れ込まないようにできる。
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記両金型間のパーティング面が、前記スライドコアのキャビティ形成面より反キャビティ側に、少なくとも前記第1の位置と第2の位置との間の距離と、前記両金型がわずかに離れる距離とを合わせた距離離れて位置するように設けられたことを要旨とする。
この発明によれば、前記両金型がわずかに離れることにより前記パーティング面に相当する箇所に形成される隙間が、前記スライドコアと対向して封止され、意匠面及び意匠面に連続する裏面の一部と対向する位置に形成される隙間と連通しない。従って、被覆層を形成する際のバリの発生を低減できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図4に従って説明する。
【0024】
図4は被覆成形品としてのサイドモール1の模式断面図を示す。
図4に示すように、長尺状のサイドモール1は、両側部が湾曲した形状の断面形状になるように形成されている。基材2は樹脂で形成されており、被覆層3により被覆されている。被覆層3は、基材2の意匠面としての表面4から、意匠面に連続する裏面5の一部(両面テープが貼り付けられるところ)まで回り込んで被覆するように形成されている。なお、図では分かりやすくするため、被覆層3を厚く図示しており、実際は基材2の厚さに比較して被覆層3の厚さは非常に薄い。
【0025】
基材2の材料としての樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂が使用される。又、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂でもよい。あるいは、これらのアロイ材、更にはこれらに繊維状あるいは鱗片状のフィラーを配合したもの等でもよい。
【0026】
被覆層3の材料としての被覆剤には、例えば、少なくとも2個以上の(メタ)アクリレート基を有するウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等のオリゴマーもしくはその樹脂、又は不飽和ポリエステル樹脂20〜70重量%とメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、スチレン等の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー80〜30重量%からなるビヒクル成分、顔料及び重合開始剤等からなる被覆剤が使用される。又、エポキシ樹脂/ポリアミン硬化系、ポリオール樹脂/ポリイソシアネート硬化系等の、型内注入直前に、主剤/硬化剤を混合する2液型被覆剤でもよい。なお、これらの被覆剤から形成された被覆層3は、公知のいわゆる両面テープに対して良好な接着性を有する。
【0027】
次に、上記のサイドモール1を製造するための金型装置11について説明する。
図1は金型装置11を閉じた状態の模式断面図を示す。図2(a)は図1のIIA−IIA線模式拡大断面図を示し、図2(b)は図1のIIB−IIB線模式拡大断面図を示す。図3は金型装置11をわずかに開いた状態の模式断面図を示す。なお、図3では分かりやすくするため、金型装置11を実際より大きく開いて図示している。
【0028】
図1に示すように、金型装置11は、第1の金型としての固定型12、第2の金型としての可動型13及び第1,第2のスライドコア14,15を備えている。固定型12は可動型13の上方に設置されている。金型装置11は、可動型13が固定型12に向かって上方に移動することにより型締めされる。
【0029】
固定型12には、可動型13と対向する面に凹部16が形成されている。可動型13には、凹部16の両端部と対向する位置に収容凹部17,18が形成され、収容凹部17,18の間には突部19が形成されている。各収容凹部17,18には、それぞれ第1,第2のスライドコア14,15が収容されている。
【0030】
各スライドコア14,15は略直方体形状に形成され、可動型13の移動方向(図1中、上下方向)と同じ方向に、図示しない駆動装置により駆動される。即ち、各スライドコア14,15は、それぞれのキャビティ形成面としての上面14a,15aが水平になるように形成されている。各スライドコア14,15は、収容凹部17,18と突部19の両端部との境目と同じ高さに上面14a,15aが位置する第1の位置と、該第1の位置からわずかに下方の第2の位置との間を移動可能に設けられている。
【0031】
図1に示すように、スライドコア14,15が第1の位置に配置され、可動型13が固定型12に接合された状態(金型装置11が閉じた状態)で、上面14a,15a,凹部16及び突部19の間に、基材2を成形するためのキャビティ20が形成される。
【0032】
金型装置11の第1のパーティング面31はキャビティ20の左方に形成され、第2のパーティング面32はキャビティ20の右方に形成されている。
固定型12の左端面12aには、被覆剤注入口35が形成されている。被覆剤注入口35には図示しない被覆剤注入装置が連結されている。
【0033】
固定型12には、被覆剤注入口35と連通する第1のゲート36が形成されている。図1及び図2(a)に示すように、ゲート36は孔状に形成され、金型装置11が閉じた状態で、上面14aからわずかに下方でスライドコア14の側面と対向して封止されるように形成されている。又、金型装置11がわずかに開いた状態では、スライドコア14が第2の位置に移動することにより上面14aと対向する位置に生じる隙間に連通される。第1のパーティング面31は、スライドコア14の側面と接するように、ゲート36より下方に形成されている。
【0034】
可動型13の右端面13aには、樹脂注入口40が形成されている。樹脂注入口40には図示しない樹脂注入装置が連結されている。
樹脂注入口40と収容凹部18との間には、樹脂注入口40側から順に、可動型13の突部41、固定型12の突部42、可動型13の突部43が形成されている。第2のパーティング面32は、突部41,42,43を形成するように屈曲形成されている。突部43の上面はキャビティ20に向かって上昇傾斜するように形成されている。突部41には樹脂注入口40と連通する孔45が形成され、突部42には孔46が形成されている。図1に示すように、金型装置11が閉じた状態で、孔45,46間は連通される。
【0035】
図2(b)に示すように、突部43の上面には小突部47が形成され、小突部47には溝48が形成されている。孔45,46,溝48は第2のゲートを構成する。溝48はキャビティ20と連通するように形成されている。パーティング面32の左端32aは、小突部47との対向部以外では、第1の位置に位置したスライドコア15と、上面15aからわずかに下方で接するように形成されている。
【0036】
図1に示すように、金型装置11が閉じた状態では、樹脂注入口40は孔45,46,溝48を介してキャビティ20と連通される。そして、金型装置11がわずかに開いた状態(図3に示す状態)では、孔45は突部42と対面して封止される。溝48も突部42と対面して封止され、孔46は突部41と対面して封止される。即ち、樹脂注入口40は、金型装置11が閉じた状態ではキャビティ20と連通され、金型装置11がわずかに開いた状態では封止される。
【0037】
次に、前記の金型装置11を使用したサイドモール1の製造方法を説明する。
先ず、図1に示すように、可動型13を固定型12に接合させるとともに、スライドコア14,15を第1の位置に移動させて金型装置11を型締めし、キャビティ20を形成する。
【0038】
次に、基材2の材料である溶融された樹脂が、図示しない樹脂注入装置より樹脂注入口40に射出され、樹脂が孔45,46,溝48を介してキャビティ20内に充填される。
【0039】
このとき、各パーティング面31,32はそれぞれスライドコア14,15の側面と接しているため、キャビティ20内に充填された樹脂は各パーティング面31,32に侵入しない。
【0040】
次に、キャビティ20内の樹脂が硬化して基材2が成形される。樹脂は、硬化する際にわずかに収縮(成形収縮)するため、突部19側に収縮し、固定型12からわずかに離れる。基材2が成形された後、被覆層3を成形するための隙間を形成するため、図3に示すように、金型装置11をわずかに開く。即ち、可動型13をわずかに下げるとともに、両スライドコア14,15を第2の位置に移動させる。
【0041】
基材2は、可動型13に付着したまま可動型13とともに下方に移動し、固定型12から分離される。この移動により、固定型12の凹部16と基材2の表面4との間に隙間53が形成される。上面14a,15aと、表面4に連続する裏面5の一部と対応する面との間には、それぞれ隙間54,55が形成される。隙間53〜55は、キャビティ20内の樹脂が硬化する際に収縮することにより形成された隙間を介して連通される。なお、隙間53,55は、溝48に樹脂が残ったままの小突部47との対向部以外の箇所で連通される。
【0042】
孔45は突部42と対面して封止される。溝48も突部42と対面して封止され、孔46は突部41と対面して封止される。被覆剤注入口35はゲート36を介して隙間53,54と連通される。なお、第1のパーティング面31に相当する箇所に生じる隙間58は、スライドコア14の側面と対面して封止される。
【0043】
次に、図示しない被覆剤注入装置より、被覆層3の材料である被覆剤が被覆剤注入口35に注入され、被覆剤がゲート36を介して隙間53〜55内に充填される。
【0044】
次に、被覆剤が完全に硬化する前に、金型装置11を少し型締めする。そして、被覆剤が完全に硬化して被覆層3が成形された後に金型装置11を型開きし、成形されたサイドモール1を取り出す。
【0045】
上記のようにして製造されたサイドモール1は、裏面5の被覆層3が形成された部分に両面テープが貼り付けられ、該両面テープを介して車両の側面に取り付けられる。
【0046】
この実施形態によれば、以下のような効果を有する。
(1)金型装置11により成形されたサイドモール1は、基材2の表面4から回り込んで裏面5にも被覆層3が形成されているため、被覆層3が剥がれにくくなり、剥がれに関する耐液性や耐熱性を向上できる。
【0047】
(2)被覆層3は、両面テープに対して良好な接着性を有する材料により構成されているため、裏面5の被覆層3が形成された部分に両面テープを貼り付けるだけでサイドモール1は好適な接着力で車両に取り付けられる。従って、プライマーを塗布する工程を廃止でき、サイドモール1を低コストで車両に取り付けることができる。
【0048】
(3)基材2を成形する際に、各パーティング面31,32はそれぞれスライドコア14,15の側面に接しているため、キャビティ20内に充填された樹脂は各パーティング面31,32に侵入しない。従って、基材2を成形する際のバリの発生を低減できる。
【0049】
(4)第2のパーティング面32が段差状に形成されているため、金型装置11が閉じている場合は樹脂注入口44は孔45,46,溝48を介してキャビティ20に連通されるが、金型装置11がわずかに開いた場合は、樹脂注入口44は孔45が突部42と対面することにより封止される。従って、被覆剤が樹脂注入口44に逆流しないようにできる。
【0050】
(5)ゲート36が、金型装置11が閉じている場合に、上面14aよりわずかに下方でスライドコア14と対面するように形成されているため、金型装置11が閉じている場合に被覆剤注入口35は封止され、金型装置11がわずかに開いた場合に被覆剤注入口35はゲート36を介して隙間53〜55に連通される。従って、基材2の材料としての樹脂が被覆剤注入口35に逆流しないようにできる。
【0051】
(6)第1のパーティング面31は、第1のパーティング面31が開くことにより生じる隙間58がスライドコア14の側面と対面して封止されるように上面14aより下方に形成されている。従って、隙間58が隙間53〜55と連通しないため、被覆層3を成形する際のバリの発生を低減できる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を図5に従って説明する。前記実施形態と同様の部分については同一番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
図5(a)は金型装置が閉じた状態の模式断面図を示し、図5(b)は金型装置がわずかに開いた状態の模式断面図を示す。
図5(a)、(b)に示す金型装置61では、基材2の材料となる樹脂を注入する樹脂注入口62は、可動型13の下端面の中央に形成され、樹脂注入口62と連通するゲート63は、上方に延び、突部19の中央でキャビティ20と連通するように形成されている。
【0054】
第2のパーティング面64は、第1の位置に位置するスライドコア15と接するように形成されている。そして、図5(b)に示すように、金型装置61がわずかに開いた場合に、パーティング面64が開いて形成される隙間65が、スライドコア15と対面して封止される。
【0055】
上記のような金型装置61によりサイドモール1を成形する場合は、先ず、図5(a)に示すように、金型装置61を閉じるとともにスライドコア14,15を第1の位置に移動させてキャビティ20を形成した状態で、ゲート63からキャビティ20内に基材2の材料となる樹脂を射出して充填する。次に、キャビティ20内の樹脂が硬化して基材2が成形された後に、図5(b)に示すように、金型装置61をわずかに開くとともにスライドコア14,15を第2の位置に位置させて互いに連通する隙間53〜55を形成し、ゲート36から隙間53〜55に被覆層3の材料となる被覆剤を注入して充填させる。
【0056】
この実施形態によれば、前記各実施形態の(1)〜(3),(5)及び(6)の効果の他に次の効果を有する。
(7)第2のパーティング面64は、第2のパーティング面64が開くことにより生じる隙間65がスライドコア15の側面と対面して封止されるように、上面15aより下方に形成されている。従って、隙間65が隙間53〜55と連通しないため、被覆層3を成形する際のバリの発生を一層低減できる。
【0057】
(8)基材2の材料としての樹脂を注入するゲート63が突部19側からキャビティ20に連通するように形成されているため、ゲート63からの樹脂の注入によるバリは裏面5に形成される。従って、バリを一層目立たないようにでき、サイドモール1の外観の品質を一層向上できる。
【0058】
(9)ゲート63は突部19の中央でキャビティ20と連通するように形成されているため、より簡単な構成で、被覆剤がゲート63を介して樹脂注入口62に逆流しないようにできる。
【0059】
なお、実施形態は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように変更してもよい。
・スライドコアの形状は、略直方体形状に限らず、例えば、図6(b)に示すように、基材2の裏面5を一層内側まで覆うように被覆層71を形成するため、図6(a)に示すように、第1の位置に位置するスライドコア72,73のキャビティ形成面としての上面72a,73aが、基材2の裏面5の一層内側の部分と接するように形成してもよい。この場合、被覆層を一層剥がれにくくすることができる。
【0060】
・被覆層3の材料となる被覆剤を注入するゲートは、突部19側から隙間54,55の一方に連通するように、収容凹部17又は収容凹部18を回り込むようにして可動型13に形成してもよい。この場合、このゲートからの注入によるバリは裏面5側に形成されるため、バリをより一層目立たないようにでき、サイドモール1の外観の品質をより一層向上できる。又、金型装置が閉じている場合は、このゲートはスライドコアの側面に当たって封止されているため、この構成でも、樹脂が被覆剤注入口に逆流しないようにできる。
【0061】
・基材の幅方向の両端部に対応させてスライドコアを設けることに限らず、基材の長手方向の両端部と対応する箇所にもスライドコアを設けてもよい。この場合、長手方向の両端部に連続する裏面5の部分をも被覆するように被覆層を形成できる。又、全部のスライドコアを一体にして、略環状のスライドコアを形成してもよい。
【0062】
・被覆剤注入口35と隙間53,54を連通させる通路は、例えば、パーティング面が開くことにより被覆剤注入口35と隙間53,54とが連通するように形成してもよい。例えば、第1の実施形態の構成において、第1のパーティング面31に段差を設け、該段差の上面を、第1の位置に配置されたときのスライドコア14の上面14aより下側で、第2の位置に配置されたときのスライドコア14の上面14aより上側となるように形成し、第1のゲート36の右端が段差の上面と対向するように形成する。
【0063】
・隙間54,55を形成する金型装置の構成はスライドコアを駆動可能に設置することに限らず、例えば、金型装置内で基材2を成形した後に、金型装置をわずかに開き、基材2を長手方向の両端で支持して基材2を宙に浮かせ、その後に被覆層を形成するようにしてもよい。
【0064】
・金型装置11は、第1の金型を可動型にし、第2の金型を固定型にするように形成してもよい。即ち、凹部16を有する金型を可動型とし、スライドコアを有する金型を固定型とする。
【0065】
・金型装置11は、可動型13が上下方向に移動する構成に限らず、例えば、左右方向に移動する構成にしてもよい。
・本発明はサイドモールの成形方法及び金型装置に限らず、例えば、ロッカモールやバンパー等の、他の被覆成形品の成形方法及び金型装置に実施してもよい。
【0066】
上記各実施形態から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(1)前記パーティング面が、前記第1の位置に位置する前記スライドコアのキャビティ形成面と同一平面上又は、該キャビティ形成面よりわずかに反キャビティ側に位置するように設けられている。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、基材から被覆層が剥がれにくい被覆成形品を金型内で容易に成形できる。又、請求項2〜請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明を容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の金型装置を閉じた状態を示す模式断面図。
【図2】(a)は図1のIIA−IIA線模式拡大断面図、(b)は図1のIIB−IIB線模式拡大断面図。
【図3】金型装置をわずかに開いた状態を示す模式断面図。
【図4】サイドモールの模式断面図。
【図5】第2の実施形態の金型装置を示し、(a)は閉じた状態の模式断面図、(b)は金型装置をわずかに開いた状態を示す模式断面図。
【図6】(a)は別のスライドコアを収容した金型装置の模式断面図、(b)はサイドモールの模式断面図。
【図7】従来技術のサイドモールの模式断面図。
【符号の説明】
1…被覆成形品としてのサイドモール、2…基材、3,71…被覆層、4…意匠面としての表面、5…裏面、11,61…金型装置、12…第1の金型としての固定型、13…第2の金型としての可動型、14,72…第1のスライドコア、14a,15a,72a,73a…キャビティ形成面としての上面、15,73…第2のスライドコア、16…凹部、20…キャビティ、31…第1のパーティング面、32,64…第2のパーティング面、35…被覆剤注入口、36…第1のゲート、44,62…樹脂注入口、45,46…第2のゲートを構成する孔、48…同じく溝、53〜55…隙間。
Claims (5)
- 金型のキャビティ内で基材に被覆剤を被覆する被覆成形品の成形方法であって、
前記キャビティ内に前記基材の材料を注入して基材を成形する工程と、
前記金型をわずかに開き、かつ、キャビティ内に設けられたスライドコアを所定距離、キャビティから離れる方向へ移動させることにより、前記基材の意匠面及び該意匠面に連続する裏面の一部と対向する位置に隙間を形成する工程と、
前記隙間内へ前記被覆剤を注入し、前記基材の意匠面及び該意匠面に連続する裏面の一部を覆う被覆層を形成する工程とを備えることを特徴とする被覆成形品の成形方法。 - 第1の金型と第2の金型とを備え、両金型間に形成されるキャビティ内で基材に被覆剤を被覆して被覆成形品を成形する金型装置であって、
前記第1の金型には前記キャビティを形成する凹部を設け、前記第2の金型には前記凹部の少なくとも幅方向の両端部と対応する位置にスライドコアを設け、
前記スライドコアは前記両金型が接合された状態において、前記両金型とともに前記基材を成形するためのキャビティを構成する第1の位置と、前記第1の位置から所定距離前記キャビティから離れる方向へ移動した第2の位置とに移動可能に設けられ、
前記スライドコアを前記第1の位置に配置した状態で前記基材を成形後、前記スライドコアを前記第2の位置へ移動させた状態で前記スライドコアのキャビティ形成面と基材との隙間に被覆剤注入口から被覆剤を注入可能な経路を設け、
前記両金型間のパーティング面は、前記第1の位置に位置する前記スライドコアのキャビティ形成面と同一平面上又は、該キャビティ形成面より反キャビティ側に位置するように設けられ、
前記両金型の一方に基材を形成する樹脂を注入するための樹脂注入口が設けられるとともに、他方に被覆剤注入口が設けられ、
前記両金型が接合した状態で前記樹脂注入口と前記キャビティとが連通可能、かつ前記被覆剤注入口と前記キャビティとが連通不能となり、前記両金型がわずかに離れた状態で前記被覆剤注入口と前記キャビティとが連通可能、かつ前記樹脂注入口と前記キャビティとが連通不能となることを特徴とする金型装置。 - 第1の金型と第2の金型とを備え、両金型間に形成されるキャビティ内で基材に被覆剤を被覆して被覆成形品を成形する金型装置であって、
前記第1の金型には前記キャビティを形成する凹部を設け、前記第2の金型には前記凹部の少なくとも幅方向の両端部と対応する位置にスライドコアを設け、
前記スライドコアは前記両金型が接合された状態において、前記両金型とともに前記基材を成形するためのキャビティを構成する第1の位置と、前記第1の位置から所定距離前記キャビティから離れる方向へ移動した第2の位置とに移動可能に設けられ、
前記スライドコアを前記第1の位置に配置した状態で前記基材を成形後、前記スライドコアを前記第2の位置へ移動させた状態で前記スライドコアのキャビティ形成面と基材との隙間に被覆剤注入口から被覆剤を注入可能な経路を設け、
前記両金型間のパーティング面が、前記第1の位置に位置する前記スライドコアのキャビティ形成面と同一平面上又は、該キャビティ形成面より反キャビティ側に位置するように設けられ、
前記両金型の一方には、前記被覆剤注入口と、該被覆剤注入口と連通する前記経路としての第1のゲートが設けられ、
前記第1のゲートは、前記スライドコアを前記第1の位置に配置した状態で、前記キャビティ形成面よりわずかに反キャビティ側で前記スライドコアと対面して封止されていることを特徴とする金型装置。 - 第1の金型と第2の金型とを備え、両金型間に形成されるキャビティ内で基材に被覆剤を被覆して被覆成形品を成形する金型装置であって、
前記第1の金型には前記キャビティを形成する凹部を設け、前記第2の金型には前記凹部の少なくとも幅方向の両端部と対応する位置にスライドコアを設け、
前記スライドコアは前記両金型が接合された状態において、前記両金型とともに前記基材を成形するためのキャビティを構成する第1の位置と、前記第1の位置から所定距離前記キャビティから離れる方向へ移動した第2の位置とに移動可能に設けられ、
前記スライドコアを前記第1の位置に配置した状態で前記基材を成形後、前記スライドコアを前記第2の位置へ移動させた状態で前記スライドコアのキャビティ形成面と基材との隙間に被覆剤注入口から被覆剤を注入可能な経路を設け、
前記両金型間のパーティング面が、前記第1の位置に位置する前記スライドコアのキャビティ形成面と同一平面上又は、該キャビティ形成面より反キャビティ側に位置するように設けられ、
前記両金型の一方に、基材を形成する樹脂を注入するための樹脂注入口が設けられ、該樹脂注入口と前記キャビティとを連通する第2のゲートは、前記金型の移動方向と略同じ方向に延びるように形成された前記パーティング面の一部と交わるように前記両金型に形成されたことを特徴とする金型装置。 - 前記両金型間のパーティング面が、前記スライドコアのキャビティ形成面より反キャビティ側に、少なくとも前記第1の位置と第2の位置との間の距離と、前記両金型がわずかに離れる距離とを合わせた距離離れて位置するように設けられたことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の金型装置。
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