JP4505064B2 - 地盤固結改良剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はフミン酸で代表されるフミン質有機酸や陽イオン吸着交換能を有する粘土鉱物のいずれかを比較的多く含み、かつ地震の際に液状化災害、滑り破壊災害、不同沈下災害等の発生が予想される細砂地盤及び/または礫質地盤を、確実かつ恒久的に固結強化安定化する事でその発生防止が可能な、微細な水砕スラグと微細な消石灰及び/または微細な生石灰粒子と特定された水溶性硫酸塩及び炭酸アルカリ金属塩と、必要に応じて更に有機高分子系の分散助剤とを含有してなる懸地盤固結改良剤に関する。またその地盤固結改良剤を用いた地盤改良工法ならびに連続地中杭または連続地中壁の構築方法に関する。
【0002】
より詳しくは、フミン酸で代表されるフミン質有機酸や陽イオン吸着交換能を有する粘土鉱物のいずれかを比較的多く含有してなり、かつ地震発生の際に、液状化、滑り破壊、不同沈下等に起因する重大災害が予想される細砂地盤及び/または礫質地盤等を主な対象地盤とし、液状化防止、滑り破壊防止、不同沈下防止等の地盤改良目的で注入され、現場1次分散安定性が優れ、0.2〜300時間と任意な液ライフを持つ一方、ブリージング率が低くかつ短時間固結性とが同時に発揮される地盤固結改良剤に関する。
またその懸濁型グラウト剤を用いた地盤改良工法、またさらに懸濁型グラウト剤を用いた連続地中杭または連続地中壁の構築方法等に関する。
【0003】
【従来の技術】
本発明でフミン酸とは、若い地層の堆積物に多く含まれている事が良く知られ、その平均分子量は数百〜数万と言われ、詳細な分子構造はいまだに明らかになっていないが、タンパク質の分解生成物、また更に炭水化物などとの縮合反応によって生成された有機高分子化合物と言われている物である。
細砂地盤中のフミン質有機酸の含有濃度を簡便的に知るには、0.5〜1N(N:規定)の水酸化ナトリウム溶液を用い、加熱下に1時間程度抽出する処理方法で抽出し、砂を除いた該抽出母液をフェノールフタレン指示薬の存在下に0.5〜1N塩酸で逆滴定する事で細砂中に含有するフミン質有機酸の絶対量を求める事ができる。完全に中和された該抽出母液からは茶褐色の物質が沈殿析出することがあるが、この沈殿物がフミン酸のNa塩であると広く認識されている。
【0004】
固結体が比較的高強度となる地盤固結改良剤としては、セメントを主成分とする地盤固結改良剤が公知であり、例えば特開平1−133965号公報等に代表される。しかし、フミン質有機酸及び/または陽イオン吸着交換能を有する粘土鉱物を多く含んだ地盤では著しく硬化阻害を受け、そのままでは固結信頼性を欠く課題がある。
【0005】
ところで、フミン質有機酸による硬化阻害を受けないとされる土壌固化剤として提案されているものに特公平06−78524号公報がある。該公報技術によれば、4CaO・3Al2O3・SO3と11CaO・7Al2O3・CaX2(Xはハロゲン)、CaO・Al2O3、12CaO・7Al2O3の1種とが共存するカルシウム・アルミネートを主成分に半水石膏や無水石膏等で代表される水硬性の無機硫酸塩を添加混合してなる組成物が高有機質土壌固化剤として好ましく使用出来るとしている。該組成物の基本的な固結反応は土壌中の有機成分に影響されることなく、水と合うと速やかにエトリンガイトを形成して固結するとある。しかし、水硬性微粒子はその特扱いに注意が必要で、水に濡れるとすぐ硬化してしまうか又は2次粒子を形成する為、現場向きでない課題がある。
【0006】
またその他、高炉水砕スラグ、転炉水砕スラグ等の潜在水硬性の性質を示すスラグ粉末を主剤としたいわゆるスラグ系地盤固結改良剤が近年数多く提案されており、例えば特開平6−219796号公報、特開平6−228558号公報、特開平7−119138号公報等に代表される。これらの開示技術ではスラグ粉末の潜在水硬性を顕在化させる為のアルカリ刺激剤として、例えばアルカリ水ガラス溶液やアルミン酸ソーダや水酸化ナトリウム等を例示している。しかしそれらのアルカリ刺激剤を添加してなる既知のスラグ系懸濁型グラウト剤の多くは、地盤改良硬化速度や固結強度を高めようとすればするほどその系自体のゲルタイムは短くなる傾向にあり、1液化しても数十時間以上と長い液ライフを持つ急速固結型のスラグ懸濁型グラウト剤は得られない課題がある。
【0007】
また既知のスラグ系懸濁型グラウト剤の多くは、実際の細砂地盤と混和されると、地盤中にあるフミン質有機酸成分がアルカリ刺激剤によって中和され水溶化されて溶脱する為、スラグ粒子への硬性阻害が顕著に表れ、結果として地盤の高強度固結化が未達となる重大な課題を内在している。また同様に、陽イオン吸着交換能を有する粘土鉱物に起因するスラグ粒子の水和硬化性阻害、具体的には珪酸カルシウム水和結晶またはカルシウムアルミネート水和結晶等で代表される水和物結晶群の生成反応に必須なカルシウム陽イオンやアルミニウム陽イオンが粘土鉱物によって吸着消費される為に、スラグ粒子の水和硬化反応が顕著に阻害され、結果として地盤の高強度固結化が未達となる重大な課題を内在している。
【0008】
特に河川域周辺の細砂地盤は腐葉土またはフミン質有機酸や陽イオン吸着交換能の強い粘土成分を比較的多く含む地盤と言われる。その為、すでに公知のセメント系地盤固結改良剤やスラグ系地盤固結改良剤のいずれかを使用した地盤改良現場に於いては、予想以上に著しい硬化阻害現象を受け、しばしば固化が全く観察されなかったり、目標固結強度に達しない等の数多くの問題を抱えている実態にある。すなわち実際の砂質土地盤ではその固結信頼性がまだ極めて不十分な実態にある。
特に、水ガラス−スラグ系地盤固結改良剤や水酸化ナトリウム−スラグ系地盤固結改良剤等の公知のスラグ系地盤固結改良剤では、砂質土地盤中で著しい硬化阻害を受けると、必然的に地下水の流入と共に環境負荷が大きいと懸念されるアルカリ刺激剤が広範囲に溶脱し、所定領域外へ広く拡散または流出する事となる。すなわち、フミン質有機酸や陽イオン吸着交換能の強い粘土成分を比較的多く含む実地盤の固結剤として使用されると環境負荷の問題ならびに強度発現不良が助長されることが大きな問題となる。
【0009】
地盤固結改良剤の抱えている課題のうち、急激な増粘を抑制して地盤との一体混和性を向上される為に取り得る手段としては、水/スラグ比または水/セメント比を出来るだけ大きくする事が挙げられるが、この方法では新たな課題としてブリージング発生率が極めて高くなってしまう課題や強度低下が避けられない課題等を併発する。
【0010】
以上の様に、すでに公知の地盤固結改良剤に於いては実地盤に好ましく採用出来、フミン質有機酸や陽イオン吸着交換能の強い粘土成分を比較的多く含む細砂地盤及び/または礫質地盤等を短時間内に確実に高強度かつ恒久的に固結する事ができる高度な硬化機能と、また更に、1液化状態で24時間以上安定に取り扱え、注入作業中は著しい増粘が見られない高速固結改良機能とを併せ持つ地盤固結改良剤が見当たらない。
【0011】
ところで、平成7年1月に発生した阪神淡路大震災の災害は、軟弱地盤上に構築されていた重要構造物に多大な被害が集中した事実から、その復旧工事方法や、不安定地盤上のすべての重要構造物に対する安全性確保の方法、恒久的な耐地震性強化方法等の課題をも提起したと言える。
特に前記した事に鑑みて、主要な都市部の液状化が予想される地盤上に構築され、また構築しようとしている重要構造物の耐震安全性確保が緊急かつ強く求められており、安全に取扱うことが可能でありかつ現場での注入信頼性や硬化信頼性に富んだ新規な地盤固結改良剤を市場に早期に提供する事の必要性が高まっている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は前記した社会的要請に鑑み、フミン酸で代表されるフミン質有機酸及び/または陽イオン吸着交換能の強い粘土鉱物を比較的多く含む固結させずらい細砂地盤及び/または礫質地盤を主な対象地盤とし、その液状化防止、滑り破壊防止、不同沈下防止目的の為の地盤改良に際し、現場での1次分散安定性と高速固結性能に特に優れ、かつまたフミン質有機酸塩の溶脱による硬化阻害要因ならびに多価金属陽イオン吸着による硬化阻害要因を少なからず受けても、所定の時間内で確実に高強度に対象地盤を固結する事が出来、その固結体は恒久的機能を発揮する環境負荷の小さいスラグ系の地盤固結改良剤を安価に安定的に提供する事にある。
【0013】
より具体的には、以下の(A)〜(C)に示す性質を併せ持つ新たなスラグ系の地盤固結改良剤を提供する事にある。
(A)所定量の水と懸濁すると容易に1次分散し、その懸濁液は0.2〜300時間と任意な液ライフを持つ一方、ホモゲル塊生成時のブリージング率が低い地盤固結改良剤。
(B)1kg当たりの改良対象地盤から抽出されたフミン質有機酸量として、その全量を中和するに要した水酸化ナトリウムのミリ当量で表した含有濃度で100ミリ当量未満の範囲にある細砂地盤及び/または礫質地盤、及び/または、100g当たり50ミリ当量未満のカルシウム陽イオン吸着交換能を有する細砂地盤及び/または礫質地盤を、地盤固結改良剤の懸濁液ライフに何等関係無く、地盤と均一に混和後1〜3日以内には該地盤の固結強度(サンドゲル1軸圧縮強度)を低くとも50N/cm2以上と急速固結させることが可能な地盤固結改良剤。
(C)固結体が長期間安定した強度特性を示す懸濁型グラウト剤。
【0014】
また併せて、液状化防止、滑り防止、不同沈下防止目的の為の地盤改良目的に、前記した地盤固結改良剤を用いた、より経済的な地盤改良工法並びに連続地中杭または連続地中壁の構築方法をそれぞれ提供する事にある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を克服すめため鋭意検討した結果、微細な水砕スラグと、微細な消石灰及び/または微細な生石灰と、特定された水溶性硫酸塩および炭酸アルカリ金属塩とをそれぞれ含有して成り地盤固結改良剤が前記課題を解決出来る事を見出し本発明を達成した。
【0016】
すなわち、本発明の懸濁型グラウト剤とは、微粒子状の水砕スラグの30〜87重量%と、微粒子状の消石灰及び/または微粒子状の生石灰の2〜50重量%と、重硫酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、過硫酸塩および硫酸アルカリ金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1種または2種以上の水溶性硫酸塩の3〜20重量%および炭酸アルカリ金属塩の0.1〜10重量%とを含有してなる地盤固結改良剤である。好ましくは、固形分換算比の分散助剤/水砕スラグの重量比が0.001〜0.05の範囲で更に有機高分子系の分散助剤を含有させてなる地盤固結改良剤がより好ましい。また更に、地盤固結改良剤中に重硫酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、過硫酸塩、硫酸アルカリ金属塩から選ばれた少なくとも1種または2種以上の水溶性硫酸塩を5〜20重量%の範囲、炭酸アルカリ金属塩の0.1〜10重量%の範囲で含有させると共に、有機高分子系分散助剤の0.001〜1重量%水溶液から求められた慣性二乗半径が250〜2,000オングストロームの範囲にある固体粉末状のセメント用減水剤から選定された1種または2種以上を0.05〜2重量%の範囲で含有させた地盤固結改良剤がより好ましい。
【0017】
また本発明の地盤改良方法とは、1kgの改良対象地盤から抽出されたフミン酸で代表されるフミン質有機酸量として、その全量を中和するのに要した水酸化ナトリウムのミリ当量で表した含有濃度で100ミリ当量未満の高有機酸含有の細砂地盤及び/または礫質地盤、及び/または、100gの改良対象地盤中50ミリ当量未満のカルシウム陽イオン吸着交換能を有する細砂地盤及び/または礫質地盤に対し、本発明の地盤固結改良剤を懸濁下に一体混和して固結させる事を特徴とする方法である。
【0018】
また本発明の連続地中杭または連続地中壁の構築方法とは、1kgの改良対象地盤から抽出されたフミン酸で代表されるフミン質有機酸量として、その全量を中和するのに要した水酸化ナトリウムのミリ当量で表した含有濃度で最大100ミリ当量未満の高有機酸含有のシルト細砂地盤及び/またはシルト礫質地盤、及び/または、100gの改良対象地盤中50ミリ当量未満のカルシウム陽イオン吸着交換能を有するシルト細砂地盤及び/またはシルト礫質地盤に対し、本発明の地盤固結改良剤を、地中深く下ろされたミキシングロッドの先端部より吐出または流出させ、同ロッドで該地盤と混和させ、同操作を継続または繰返すことにより、ミキシングロッド周辺の土砂と本発明の地盤固結改良剤とを一体混合させて固結させる方法である。
【0019】
ところで前記した分子の慣性二乗半径とは、一般的に、無限希薄水溶液中に於いて1分子が占める自由占有体積または分子の広がり度合いを表すひとつの指標値であり、その数値が大きい程嵩高い占有面積または分子の広がりが高い事を意味する。
また本発明に於いては、その慣性二乗半径の数値は公知の慣性半径測定方法で得た数値で表されて良く、測定方法によって特に制約は無い。一般的には慣性半径分子量測定器で容易に求める事が出来る。
【0020】
すなわち、本発明は次の(1)〜(6)を提供するものである。
(1)微粒子状の水砕スラグの30〜87重量%と、微粒子状の消石灰及び/または微粒子生石灰の2〜50重量%と、重硫酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、過硫酸塩、硫酸アルカリ金属塩から選ばれた少なくとも1種または2種以上からなる水溶性硫酸塩の3〜20重量%および炭酸アルカリ金属塩の0.1〜10重量%とを含有してなる地盤固結改良剤。
(2)固形分換算比の分散助剤/水砕スラグの重量比が0.001〜0.05の範囲で更に有機高分子系の分散助剤を含有させてなる事を特徴とする(1)記載の地盤固結改良剤。
【0021】
(3)水砕スラグが(CaO+MgO+Al2O3)/SiO2の重量比で表される塩基度で1.7〜2.1の範囲にある高炉水砕スラグである事を特徴とする(1)または(2)に記載の地盤固結改良剤。
(4)地盤固結改良剤を水で懸濁させてなり、水/水砕スラグの重量比で0.5〜5の範囲、(消石灰+生石灰)/水砕スラグの重量比が0.01〜3の範囲、分散助剤/(消石灰+生石灰+水砕スラグ)の重量比が0.005〜0.02の範囲、水溶性硫酸塩として硫酸ナトリウムの単独を選定しその2〜10重量%、炭酸アルカリ金属塩として炭酸ナトリウムの単独を選定しその1〜5重量%を含有させてなる1液型懸濁溶液とする事を特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の地盤固結改良剤。
【0022】
(5)1kgの改良対象地盤から抽出されたフミン酸で代表されるフミン質有機酸量として、その全量を中和するのに要した水酸化ナトリウムのミリ当量で表した含有濃度で100ミリ当量未満の高有機酸含有の細砂地盤及び/または礫質地盤、及び/または、100gの改良対象地盤中50ミリ当量未満のカルシウム陽イオン吸着交換能を有する細砂地盤及び/または礫質地盤に対し、(1)〜(4)のいずれかに記載の地盤固結改良剤を懸濁下に一体混和して固結させる事を特徴とする地盤改良方法。
【0023】
(6)1kgの改良対象地盤から抽出されたフミン酸で代表されるフミン質有機酸量として、その全量を中和するのに要した水酸化ナトリウムのミリ当量で表した含有濃度で100ミリ当量未満の高有機酸含有のシルト細砂地盤及び/またはシルト礫質地盤、及び/または、100gの改良対象地盤中50ミリ当量未満のカルシウム陽イオン吸着交換能を有するシルト細砂地盤及び/またはシルト礫質地盤に対し、(1)〜(4)記載のいずれかの地盤固結改良剤を、地中深く下ろされたミキシングロッドの先端部より吐出または流出させ、同ロッドで該地盤と混和させ、同操作を継続または繰返すことにより、ミキシングロッド周辺の土砂と(1)〜(4)記載のいずれかの地盤固結改良剤とを一体混合させて固結させる事を特徴とする連続地中杭または連続地中壁の構築方法。
【0024】
【発明の実施の態様】
本発明の地盤固結改良剤では、その対象地盤は、1kgの改良対象地盤から抽出されたフミン酸で代表されるフミン質有機酸量として、その全量を中和するのに要した水酸化ナトリウムのミリ当量で表した含有濃度で100ミリ当量未満の範囲で該有機酸を含有してなる細砂地盤及び/または礫質地盤がその主な対象範囲となる。
また更には、100gの改良対象地盤中50ミリ当量未満のカルシウム陽イオン吸着交換能を有する細砂地盤及び/または礫質地盤も好ましい対象範囲である。
すなわち、フミン酸で代表されるフミン質有機酸及び/または陽イオン吸着交換能を有する粘土鉱物を含有してなる細砂地盤及び/または礫質地盤が対象範囲として好ましく示され、その他、スラグの硬化阻害を受けにくい一般的な細砂地盤及び/または礫質地盤であっても好ましく包含されるものである。
なお、前記した対象地盤範囲によって本発明の地盤固結改良剤の適用範囲が特に限定される事が無い事は明白である。
【0025】
また例えば、前記した値よりも高濃度に有機酸を含有してなる細砂地盤及び/または礫質地盤に於いては、本発明の地盤固結改良剤を混和させる前に、希薄な水酸化ナトリウム溶液等で代表される公知のフミン質有機酸溶脱作用を持つアルカリ希薄溶液を事前に注入して該有機酸塩を地盤改良対象域外に広く流出拡散・低濃度化させる方法、またはアルカリ希薄溶液を注入し適宜くみあげて除去・低濃度化する前処理方法などで、その対象地盤が前記範囲内の性質に改善されてなる改質地盤も好ましく包含される。
また例えば、前記した値よりも高いカルシウム陽イオン吸着交換能力を持つ細砂地盤及び/または礫質地盤に際し、予め、事前に消石灰飽和溶液や海水などを浸透注入させ、地盤の持つ陽イオン吸着交換能力を飽和・減少せしめる等の前処理を行う事で前記要件を満足する改質地盤も好ましく包含するものである。
【0026】
本発明の地盤固結改良剤とは、先に示したように基本的に、微粒子状の水砕スラグ(イ)の30〜87重量%と、微粒子状の消石灰(ロ−1)及び/または微粒子状の生石灰(ロ−2)の2〜50重量%と、重硫酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、過硫酸塩、硫酸アルカリ金属塩から選ばれた少なくとも1種または2種以上からなる水溶性硫酸塩(ニ)の3〜20重量%及び炭酸アルカリ金属塩(ホ)の0.1〜10重量%とを含有してなる地盤固結改良剤−1である。
このましくは更に有機高分子系の分散助剤(ハ)を加えてなる地盤固結改良剤−2が良い。
好ましくは、地盤固結改良剤−1または地盤固結改良剤剤−2を水の適量に懸濁してなる地盤固結改良剤中に重硫酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、過硫酸塩、硫酸アルカリ金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1種または2種以上の水溶性硫酸塩(ニ)の5〜20重量%及び炭酸アルカリ金属塩(ホ)の0.1〜10重量%の範囲で含有させると共に、有機高分子系の分散助剤(ニ)がその0.001〜1重量%と希薄な水溶液から求められた慣性二乗半径が250〜2,000オングストロームの範囲にある固体粉末状のセメント用減水剤から選定された1種または2種以上の0.05〜2重量%の範囲で含有させた地盤固結改良剤−2がより好ましい。
【0027】
また、本発明の地盤固結改良剤−1又は地盤固結改良剤−2では、水に懸濁させてなる組成物も好ましく包含され、水/(消石灰+生石灰+水砕スラグ)の重量比が1〜6の範囲となる様に懸濁させた地盤固結改良剤溶液の態様は特に好ましい。
特に好ましくはその(イ)として、粒径加積曲線上に於ける95重量%粒子径が50μm以下でかつ比表面積が0.35〜3m2/gの範囲にある水砕スラグ(a)と、その(ロ−1)として、粒径加積曲線上に於ける95重量%粒子径が250μm以下でかつ比表面積が0.3〜50m2/gの範囲にある消石灰(b)と、その(ハ)として、0.001〜1重量%水溶液から求められた慣性二乗半径が低くとも150オングストローム以上と嵩高い有機高分子系の分散助剤(c)と、前記した水溶性硫酸塩(ニ)及び炭酸アルカリ金属塩(ホ)および水(ヘ)とを必須成分として含有させ、水砕スラグ(a)の30〜87重量%と、微粒子状の消石灰(b)の2〜50重量%と水溶性硫酸塩(ニ)の5〜20重量%及び炭酸アルカリ金属塩(ホ)の0.1〜10重量%と前記分散助剤(ハ)の0.05〜2重量%とを含有してなる地盤固結改良剤−2が特に最も好ましい。
以下の記載では地盤固結改良剤−1と地盤固結改良剤−2を一括総称して単に地盤固結改良剤と呼ぶ事がある。
【0028】
ところで前記した粒径加積曲線上に於ける95重量%粒子径が50μm以下とは、公知の粒度分布測定によって作成された粒度加積曲線の95重量%加積粒子径値(以下の記載では単に95重量%粒子径と呼び、記号はd95で表わす事がある。)に該当する粒子サイズ(μm:ミクロン)で表され、一般的に95重量%の粒子の全てが50μmを下まわる事を意味するものである。
また、本発明の地盤固結改良剤は常温で固体組成物であったり、また水と懸濁させてなる組成物のいずれかであったりして良い。また、一部の構成成分を固体で取り扱い、現場で他の溶液型の必須成分とを混合し、懸濁状態とした地盤固結改良剤であっても良く、任意の形態をとっても良い。
【0029】
すなわち、微粒子状の水砕スラグ(イ)と、微粒子状の消石灰(ロ−1)及び/または微粒子状の生石灰(ロ−2)と、有機高分子系の分散助剤(ハ)と、前記した水溶性硫酸塩(ニ)及び炭酸アルカリ金属塩(ホ)と水(ヘ)とからなる懸濁組成物であっても本発明の地盤固結改良剤として広く包含されると言うことである。
【0030】
また本発明では粒子サイズやその分布状態ならびに比表面積等に関する記載値は、光散乱式粒度分布測定器の使用によるものである。
また比表面積値を事前に求める方法としては、例えばコンクリート協会が推奨する空気を用いたセル通気法やその他窒素や他の不活性ガスを用いたセル通気法等のいずれかの方法で求める方法が例示出来る。
【0031】
水砕スラグ(イ)の具体例には、例えば高炉水砕スラグ、転炉水砕スラグ、電炉水砕スラグ、平炉水砕スラグ等に代表される金属製錬副産物の1種または2種以上から成るものが挙げられる。
その中でもより更に好ましくは、日本工業規格・JIS−R−5202で示された「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じた測定結果で表され、SiO2分として30〜35重量%、CaO分として35〜45重量%、Al2O3分として13〜20重量%、MgO成分として5〜8重量%、その他の成分を数重量%含む等の組成比で構成され、かつ(CaO+MgO+Al2O3)/SiO2の重量比で表される塩基度が1.7〜2.1の範囲にある高炉水砕スラグが特に最も好ましい(イ)の具体例として挙げられる。
【0032】
徐冷スラグは本発明の水砕スラグ(イ)からは除外される。理由は徐冷スラグ類は結晶質スラグであり潜在水硬性(潜在的な水和硬化性)が無いからである。
本発明記載の前記水砕スラグ(イ)としては、結晶質な成分が少量混在していても良く、基本的に水冷却法等の急冷法で得た非晶質性に富む微粒子状の水砕スラグ粉であれば好ましく使用できる。
【0033】
一般的に水砕スラグ(水滓スラグとも言い、以下では単にスラグと呼ぶ事がある)はそれ自身では自硬性は示さない。
水砕スラグは一般的にアルカリの共存下の水溶液中や高湿度環境下ではその固体表面からSiO2やAl2O3成分が溶出し、次いでCaイオンが溶出して系中に珪酸カルシウム水和結晶・ゲル及び/またはシリカアルミネート水和結晶・ゲル等が生成し、その結晶・ゲルが順次生長または強固に凝集する事で系全体が固結する硬化メカニズムが広く支持されている。その固結体の1軸圧縮強度特性は経時と共に増大する事が良く知られており、その際使用するアルカリ量が過少の場合には、一向に一体的なゲル化がおこらなかったりする。また過大の場合にはスラリー粘度が過大で、結果として流動性不良からポンプ送液が出来なかったりすると共に、粘性変化が顕著な為に、地盤固結改良が中断されるかまたは全く出来ない等の障害をきたす事が一般的な事実としてあり、アルカリ溶液硬化剤は総じてその傾向が顕著に表れる。
本発明の地盤固結改良剤ではアルカリ刺激剤成分として作用するものとして微粒子状の消石灰(ロ−1)及び/または微粒子状の生石灰(ロ−2)や炭酸アルカリ金属塩(ホ)が挙げられる。それらの飽和溶液や希薄溶液はアルカリ性を示すからである。
なお、消石灰飽和溶液は約0.1重量%消石灰を含有する希薄なアルカリ溶液であり、それゆえ、微粒子状の消石灰(ロ−1)及び/または微粒子状の生石灰(ロ−2)の配合量を多くしても本発明の地盤固結改良剤はその水と懸濁化させた時のスラリー粘度を低くかつその変化を低く押さえる事が出来る利点を奏する。
【0034】
ところで、本発明に使用できる水砕スラグ(イ)では95重量%粒子径には特に制約は無く、好ましくは前記(a)とすることが良い。
すなわち、水砕スラグ(イ)に関わる好ましい要件としては、95重量%粒子径(d95)が50μm以下でかつ比表面積が0.35〜3m2/gの範囲にある事である。より好ましくは95重量%粒子径(d95)が10μm以下、より更に好ましくは8μm以下、より最も好ましくは5μm以下にあり、かつまたその比表面積が0.85〜3m2/gの範囲、好ましくは1〜2m2/g、より好ましくは1〜1.5m2/gの範囲にある物とする事はおおいに好ましい。
【0035】
本発明の地盤固結改良剤中には前記の水砕スラグ(イ)を、水を除いた構成割合で200〜85重量%の範囲で用いる事が最も一般的である。より好ましくは25〜80重量%の範囲、より最も好ましくは30〜80重量%の範囲とする事が良い。20重量%未満の(イ)の使用では凝結性が極めて緩慢で最終的な固結体の強度が低く実用性にとぼしいからである。また一方、85重量%を超える(イ)の使用ではその組成物の硬化活性がかえって低下する事からである。
【0036】
本発明の地盤固結改良剤を構成する上で更に欠かせない成分に、微粒子状の消石灰(ロ−1)及び/または微粒子状の生石灰(ロ−2)が挙げられる。
微粒子状の消石灰(ロ−1)としては、特に制約は無く、好ましくは粒径加積曲線上に於ける95重量%粒子径(d95)が250μm以下でかつ比表面積が0.3〜50m2/gの範囲にある超微粒子状の消石灰(b)が挙げられる。
微粒子状の生石灰(ロ−2)としては、特に制約は無く、好ましくは粒径加積曲線上に於ける95重量%粒子径(d95)が250μm以下でかつ比表面積が0.3〜50m2/gの範囲にある事が良い。
消石灰(ロ−1)及び/または微粒子状の生石灰(ロ−2)らは、水砕スラグの持つ潜在水硬性を顕在化させる物質として、ならびに地盤中で急速かつ高強度な固結体を与える作用効果がおおいに期待出来る。また以下の、珪酸カルシウム水和結晶、カルシウムアルミネート水和結晶、エトリンガイト等の地盤強化安定に有効な水和結晶体の成長をうながす上でも欠かせない。またカルシウムイオンの供給源としても本発明の構成成分として必須な成分の一つである。
【0037】
消石灰(ロ−1)はその製造方法や粉砕方法等によって特に制約を受ける事は無く、広く公知の方法で製造されたものの中から前記要件に合致する物を選定使用する事で良い。例えば、一般ゴミの焼却ガス中の有害塩素系ガス吸着剤用に開発または市販されている超微粒子の消石灰製品群をそのまま(b)として充てて良い。またより好ましくは、95重量%粒子径(d95)が250μm以下でかつ比表面積が1〜50m2/gの範囲にある物は特に好ましく使用できる。より更に好ましくは95重量%粒子径(d95)が20μm以下、より更に好ましくは15μm以下、より最も好ましくは10μm以下にあり、かつまたその比表面積が1.2〜45m2/gの範囲、好ましくは1.5〜40m2/g、より好ましくは2〜30m2/gの範囲にある物とする事はおおいに好しい。
生石灰(ロ−2)はその製造方法や粉砕方法等によって特に制約は受ける事は無く、広く公知の方法で製造されたものの中から前記要件に合致する物を選定使用する事で良い。例えば、天然の石灰石を焼成・粉砕して製造された微粒子生石灰製品で代表される。またより好ましくは、95重量%粒子径(d95)が250μm以下でかつ比表面積が1〜50m2/gの範囲にある物は特に好ましく使用できる。より更に好ましくは95重量%粒子径(d95)が20μm以下、より更に好ましくは15μm以下、より最も好ましくは10μm以下にあり、かつまたその比表面積が1.2〜45m2/gの範囲、好ましくは1.5〜40m2/g、より好ましくは2〜30m2/gの範囲にある物とする事はおおいに好ましい。
【0038】
また本発明記載の消石灰(ロ−1)はその純度にも特に制約は無く、例えば数十重量%以内で生石灰(ロ−2)を含有するものであっても好ましく包含される。その理由は生石灰は水と合うと直ちに消石灰が誘導されることが公知である事からであり、生石灰が不純物として内包するものであってもその本質的な作用効果に支障が生じないことが明らかであるからである。
なお、以下の記載では消石灰(ロ−1)及び/または生石灰(ロ−2)を一括して単に石灰成分(ロ)と総称することがある。
【0039】
本発明の懸濁型グラウト剤では、石灰成分(ロ)の使用量として、水を除いた構成割合で2〜50重量%の範囲、好ましくは5〜50重量%の範囲、より好ましくは10〜50重量%の範囲とする事が良く、石灰成分(ロ)/水砕スラグ(イ)の比が0.01〜3の範囲、特に好ましくは0.02〜1の範囲とする事が良い。2重量%未満の配合量では地盤の固結強度が低く耐久性に欠けるからであり、一方、50重量%を超えての使用では、それ以上増量しても特に顕著な効果が見出せないばかりか高コストとなるからである。
【0040】
本発明の地盤固結改良剤では、特に制約するものでは無いが、水に懸濁させる際の水の使用量は水/[石灰成分(ロ)+水砕スラグ(イ)]の重量比を1〜6の範囲とする事が好ましい、より好ましくは水/[石灰成分(ロ)+水砕スラグ(イ)]の重量比を1〜5の範囲とする事がより好ましい。
また本発明の地盤固結改良剤では、水砕スラグ(イ)の微粉末と石灰成分(ロ)の微粉末とは事前にドライブレンドされ、地盤改良現場に供給され、現場で所定量の水溶性硫酸塩(ニ)と炭酸アルカリ金属塩(ホ)及び水(ヘ)を加えて本発明の地盤固結改良剤−1を、また、水砕スラグ(イ)の微粉末と石灰成分(ロ)の微粉末とは事前にドライブレンドされ、地盤改良現場に供給され、現場で所定量の分散助剤(ハ)、水溶性硫酸塩(ニ)、炭酸アルカリ金属塩(ホ)及び水(ヘ)を加えて本発明の地盤固結改良剤−2を適宜調整して良い。
【0041】
次に、本発明の地盤固結改良剤−2を構成する上で必須な成分として分散助剤(ハ)成分があげられる。
その分散助剤(ハ)の必須要件として、特に制約は無いが、0.001〜1重量%と希薄な水溶液から求められた慣性二乗半径が低くとも150オングストローム以上と嵩高い水溶性有機高分子系の分散助剤を使用する事がよい。より更に好ましくは(ハ)の慣性二乗半径が200〜2,000オングストロームの範囲、最も好ましくは500〜2,000オングストロームの範囲にある事が最も好ましい。
前記分散助剤(ハ)としては、特に制約する物では無いが、例えば、希薄な該水溶液中に於いてその自由占有面積(溶液中での嵩高さ)を表すひとつの指標である慣性二乗半径が低くとも150オングストローム以上ある以下のいわゆるセメント用減水剤が代表的な具体例として挙げられる。
【0042】
そのセメント用減水剤には、例えばナフタレンスルフォン酸ホルムアルデヒド縮合誘導体やそれらのアルカリ塩類等で代表されるいわゆるナフタレン系減水剤、リグニンスルフォン酸ホルムアルデヒド縮合誘導体等やそれらのアルカリ塩類で代表されるいわゆるリグニン系減水剤、水溶性ポリカルボン酸化合物やそれらのアルカリ塩類で代表されるいわゆるポリカルボン酸系減水剤、水溶性メラミンスルファミン酸ホルムアルデヒド縮合物やそれらのアルカリ塩類等で代表されるいわゆるメラミンスルファミン酸系減水剤、水溶性メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物やそれらのアルカリ塩類等で代表されるいわゆるメラミン系減水剤、水溶性アルキレングリコールモノアミン付加変性メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物やそれらのアルカリ塩類等で代表されるいわゆる変性メラミン系減水剤等を例示出来、それらの1種または2種以上を併用使用して良い。また更に、前記した化合物群の中から、0.001〜1重量%と希薄な水溶液から求められた慣性二乗半径が150オングストローム以上、好ましくは200〜2,000オングストロームの範囲にあるセメント用減水剤を選択し本発明記載の分散助剤(ハ)として選定使用する事は大いに好ましい。特に最も好ましくは、前記要件と共にその重量平均分子量が1×104〜1×106の範囲にある(ハ)を選定使用する事は特に好ましい。
【0043】
本発明記載の分散助剤(ハ)のより更に好ましい物としては、0.001〜1重量%と希薄な水溶液から求められた慣性二乗半径が500〜2,000オングストロームにある水溶性ポリカルボン酸系高分子化合物やそれらのアルカリ塩類の1種とする事が特に最も好ましい。
【0044】
ところで、本発明記載の分散助剤(ハ)として、特に制約する物では無いが、0.001〜1重量%と希薄な水溶液から求められた慣性二乗半径が150オングストローム未満の物を選定使用した場合、得られる地盤固結改良剤の懸濁液はその流動性及び懸濁粒子の分散安定性に欠ける傾向にあり、特に留意が必要である。
【0045】
すなわち、0.001〜1重量%と希薄な水溶液から求められた慣性二乗半径が150オングストローム未満の(ハ)の使用では、その使用割合を高めても、十分な現場1次分散性を確保できないケースがある。
【0046】
分散助剤(ハ)は室温で固体またはあらかじめ水に溶解してなる濃厚溶液等であって良く、それ自体の取扱形態等の違いや使用割合で本発明は何等制約は受けない。
なお濃厚水溶液などの形態で取り扱う場合は、その有効固形分を求め、その有効固形分換算で表される分散助剤/(消石灰+生石灰+水砕スラグ)の重量比が0.0005〜0.05の範囲、より好ましくは0.005〜0.02の範囲となる様にすることは大いに好ましいことである。
【0047】
次に、本発明の地盤固結改良剤−1または地盤固結改良剤−2を構成する上で必須な成分として重硫酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、過硫酸塩、硫酸アルカリ金属塩から選ばれた少なくとも1種または2種以上からなる水溶性硫酸塩(ニ)及び炭酸アルカリ金属塩(ホ)がある。
その水溶性硫酸塩(ニ)成分の配合量としては、水を除いた構成割合で、3〜20重量%の範囲、より好ましくは5〜20重量%の範囲、最も好ましくは10〜20重量%の範囲とすることが良い。
【0048】
前記した重硫酸塩としてはすでに公知の物を選定使用してよく特に制約は無い。具体的な例としては、重硫酸ナトリウム、重硫酸カリウム、重硫酸リチウム、重硫酸アンモニウムなどが挙げられ、それらの無水物及び/または1〜7水塩を例示でき、それらを単独または2種以上併用使用して良い。重硫酸塩として特に好ましい例は、重硫酸ナトリウムまたは重硫酸カリウムである。
【0049】
前記した重亜硫酸塩としてはすでに公知の物を選定使用してよく特に制約は無い。具体的な例としては、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸リチウム、重亜硫酸アンモニウムなどが挙げられ、それらの無水物及び/または単水塩または複水塩を例示でき、それらを単独または2種以上併用使用して良い。
重亜硫酸塩として特に好ましい例は、重亜硫酸ナトリウムまたは重亜硫酸カリウムである。
【0050】
また前記の亜硫酸塩としてはすでに公知の物を選定使用してよく特に制約は無い。具体的な例としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸アンモニウムなどが挙げられ、それらの無水物及び/または単水塩または複水塩を例示でき、それらを単独または2種以上併用使用して良い。亜硫酸塩として特に好ましい例は、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸カリウムである。
【0051】
また前記のチオ硫酸塩としてはすでに公知の物を選定使用してよく特に制約は無い。具体的な例としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸リチウム、チオ硫酸アンモニウムなどが挙げられ、それらの無水物及び/または単水塩または複水塩を例示でき、それらを単独または2種以上併用使用して良い。チオ硫酸塩として特に好ましい例は、チオ硫酸ナトリウムまたはチオ硫酸カリウムである。
【0052】
また前記した過硫酸塩としてはすでに公知の物を選定使用してよく特に制約は無い。具体的な例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸リチウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられ、それらの無水物及び/または単水塩または複水塩を例示でき、それらを単独または2種以上併用使用して良い。過硫酸塩として特に好ましい例は、過硫酸ナトリウムまたは過硫酸カリウムである。
【0053】
また前記の硫酸アルカリ金属塩としてはすでに公知の物を選定使用してよく特に制約は無い。具体的な例としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウムカリウム、硫酸リチウム、硫酸カリウムリチウム、硫酸ナトリウムリチウム等が挙げられ、それらの無水物及び/または単水塩または複水塩を例示出来、それらの1種または2種以上からなる混合物として良い。より好ましい硫酸アルカリ金属塩としては硫酸ナトリウムである。
特にその硫酸ナトリウムには、例えば無水硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウムの一水塩、硫酸ナトリウムの12水塩などが入手可能であり、そのいずれか1種または2種以上の混合物であっても何等問題無い。特に硫酸ナトリウムの12水塩は別名ボウ硝といわれ、広く天然に存在していて環境負荷が小さいことから大いに好ましい例である。
【0054】
炭酸アルカリ金属塩(ホ)成分の配合量としては、水を除いた構成割合で、0.01〜10重量%の範囲、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲、最も好ましくは0.5〜10重量%の範囲とすることが良い。
炭酸アルカリ金属塩(ホ)としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムカリウム及び炭酸リチウム等の無水物及び/または単水塩または複水塩を具体的に例示出来、それらの1種または2種以上からなる混合物として良い。
より好ましい炭酸アルカリ金属塩(ホ)として炭酸ナトリウムの単独とする態様例が良い。
【0055】
水砕スラグ(イ)の微粉末と、石灰成分(ロ)の微粉末と、更に前記した水溶性硫酸塩(ニ)及び炭酸アルカリ金属塩(ホ)とを、事前にドライブレンドした固体組成物を1パック包装してなる本発明の地盤固結改良剤を長期間保管または地盤改良現場に供給出来る。
またその際、固形粉末状の分散助剤(ハ)を更に含めることも何ら問題無いことである。
1パック包装の際に使用される包装材料には特に制約は無く、例えば紙袋、ポリ袋、アルミラミネート袋、金属製容器などその材種や形は任意であって良い。
好ましくはポリ袋内袋型の紙袋またはアルミラミネート袋のいずれかとする事がおおいに好ましい。
1パック包装体で供給された該組成物は、作業現場で開封後、所定量の水で溶解/懸濁分散作業を行なうのみで本発明の水に懸濁化されてなる地盤固結改良剤が簡便かつ容易に調整できる。
【0056】
すなわち、本発明の地盤固結改良剤に必須な構成成分である水砕スラグ(イ)の微粉末と石灰成分(ロ)の微粉末と更に水溶性硫酸塩(ニ)及び炭酸アルカリ金属塩(ホ)、必要に応じて更に固形の分散助剤(ハ)とを、事前に1パック包装供給する利点としては、地盤注入現場での計量配合添加ミスを完全に回避できる事があげられる。
【0057】
ここで、本発明の地盤固結改良剤の提供意義が地震発生に伴い液状化や滑り破壊や不同沈下等の要因によって重大災害の発生が予想される脆弱な細砂地盤及び/または礫質地盤を高強度に一体固結させる、いわゆる液状化防止、滑り破壊防止、不同沈下防止等の地盤改良目的にある事から、その観点に立てば、事前に4〜5者の成分をドライブレンドして1パック包装し、地盤改良現場での配合ミスの回避を図る事は、地盤固結改良剤が本来持つ砂質土地盤中でのみ表れる急速固結性を再現性よく発揮させる上で有益であることは明らかである。
【0058】
本発明の地盤固結改良剤ではその有効成分を対象地盤と一体混和し、高強度に一体固結させる上で欠かせない成分に水(ヘ)がある。ただし水は対象地盤中に地下水として大量に包含されている時は、あえて地上で水を加えなくともよく、粉状からなる本発明の地盤固結改良剤をそのまま粉体混合させる方法で達成して良い。
水(ヘ)は注入現場近辺で手に入る物であれば特に制約は無く、例えば河川水、雪、氷、湖水、地下水、湧き水、雨水、水道水、工業用水、海水含有水、イオン交換水、純水などであってよい。好ましくは水道水や地下水や河川の水があげられる。
【0059】
本発明の地盤固結改良剤では水砕スラグ(イ)と石灰成分(ロ)と水溶性硫酸塩(ニ)及び炭酸アルカリ金属塩(ホ)の各必須成分を必ず含有している組成物とする事が必須要件であり、本発明の目的(解決すべき課題)を達成する上で何一つ欠かせない。以下にその理由を簡単に記す。
まず石灰成分を含有せず、水砕スラグと水の2成分からなる組成物ではスラグの水和硬化反応がほとんど観察されない事による。
次に水砕スラグを含有せず、石灰成分と水の2成分からなる組成物では水和硬化反応が全く観察されないことによる。
【0060】
また硫酸アルカリ金属塩類を全く含まず、水砕スラグと石灰成分と水の3成分または水砕スラグと石灰成分と炭酸アルカリ金属塩と水の4成分で構成された組成物等は、本発明の地盤固結改良剤−1と同様に、基本的なスラグ粒子の水和硬化反応が少なからず観察されるが、川砂や海砂と混和された時の硬化活性が極めて緩慢であり、急速固結性と液ライフのバランスに欠けるからである。しかも本発明の解決すべき課題、(A)〜(F)の課題を同時に達成できないからである。
また炭酸アルカリ金属塩類を全く含まず、水砕スラグと石灰成分と水溶性硫酸塩と水の4成分で構成された組成物は、本発明の地盤固結改良剤−1と同様に、基本的なスラグ粒子の水和硬化反応が観察されるが、ホモゲル塊形成時のブリージング発生率が高い課題があるからである。
以上の理由から、本発明の地盤固結改良剤では水砕スラグ(イ)と石灰成分(ロ)と水溶性硫酸塩(ニ)と炭酸アルカリ金属塩(ホ)の各成分を必ず含有している事が必須構成要件である。
【0061】
本発明の地盤固結改良剤−1または地盤固結改良剤−2は、それ自体液ライフが0.2〜300時間と任意に設定出来る。その一方、液ライフの大小にあまり左右される事無く砂質土などで代表される細砂と混和されると直ちに高速固結反応する性質を発揮する。その性質を発揮させる目的に照しても、前記した(イ)、(ロ)、(ニ)、(ホ)の各成分の含有は本発明の地盤固結改良剤では絶対に欠かせない。
【0062】
また本発明の地盤固結改良剤では必要に応じて以下の(a)〜(g)に示した各種の添加助剤が、より好ましくは(a)〜(g)の1種または2種以上からなる添加助剤をその公知の作用効果を期待し、かつ本発明の目的を達成できる範囲内に於いて、適宜併用使用して良い。
【0063】
(a)は、以下に示された燐酸塩類(a)であり、水砕スラグの水和硬化速度調整機能やワーカビリティー調整機能を持つ。
その燐酸塩類(a)の例には、第2及び/または第3アルカリ金属燐酸塩、第2及び/または第3アルカリ土類金属燐酸塩から選ばれた1種または2種以上からなる物が挙げられる。
第2燐酸アルカリ金属塩には燐酸水素2ナトリウム、燐酸水素2カリウム、燐酸水素2リチウム等の無水物やそれらの含水塩類を例示出来る。また第3燐酸アルカリ金属塩には燐酸3ナトリウム、燐酸3カリウム、燐酸3リチウム等の無水物やそれらの含水塩類を例示出来る。
第2アルカリ土類金属燐酸塩には燐酸水素カルシウム、燐酸水素マグネシウム等の無水物やそれらの含水塩類を例示出来る。また第3アルカリ土類金属燐酸塩には燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム等の無水物やそれらの含水塩類を例示出来る。
本発明の地盤固結改良剤ではその燐酸塩類(a)を水に懸濁してなる地盤固結改良剤中に0.01〜1重量%の範囲で併用使用して良い。
【0064】
(b)としては有機カルシウム塩類(b)であり、前記(a)と同様な機能を付与出来る。例えば、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウムなどの公知の水溶性モノカルボン酸及び/または水溶性ジカルボン酸のカルシウム塩類、カルシウムサッカラートで代表される糖のカルシウム錯体等が好ましく例示される。
本発明の地盤固結改良剤ではその有機カルシウム塩類(b)を地盤固結改良剤中に0.001〜0.1重量%の範囲で併用使用して良い。
【0065】
また(c)は1次粒子径が0.01〜8μmの範囲にある非水硬性の無機微粒子(c)があげられ、固結物の増強機能や硬化活性向上効果を期待できる。その非水硬性の無機微粒子(c)としては例えば、炭酸カルシウム粉末、炭酸マグネシウム粉末、チタンホワイト粉末、水酸化亜鉛粉末、水酸化アルミニウム粉末、水酸化マグネシウム粉末等が挙げられる。非水硬性の無機微粒子(c)を地盤固結改良剤中に0.01〜10重量%の範囲で併用使用して良い。
【0066】
(d)は水砕スラグ以外の水硬性無機微粒子(d)であり、固結物の増強耐久性向上機能や硬化活性向上効果をおおいに期待できる。1次粒子径が0.01〜8μmの範囲にある例えば、メタカオリン、ポルトランドセメント、半水石膏、無水石膏等が例示される。それらの水硬性無機微粒子(d)を地盤固結改良剤中に0.01〜10重量%の範囲で併用使用して良い。
【0067】
(e)としては有機質なセメント用硬化遅延剤(e)であり、その名の通り水砕スラグの水和硬化のタイミングを遅らせる機能を付与出来る。すでに公知の有機質なセメント用硬化遅延剤が挙げられ、特に制約する物では無いが、例えば庶糖やグラニュー糖やブドウ糖などの単糖類、同二糖類、同多糖類、があり、また例えば、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、琥珀酸等の有機酸化合物、また例えば、尿素やシクロデキストリンなどで代表される包接化合物形成剤などがそれぞれ挙げられる。
地盤固結改良剤中に0.001〜3重量%の範囲で併用使用して良い。
【0068】
また(f)は界面活性剤であり、ワーカビリティーを改善出来る。すでに公知の各種の、カチオン石鹸、アニオン石鹸、両性石鹸、ノニオン石鹸等が例示出来る。また更には水性シリコン化合物、エチレングリコールやグリセリンなどの多価水溶性グリコール類、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールや3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールで代表されるアセチレンアルコール類系消泡剤も好ましい前記(f)に含まれる。
地盤固結改良剤中に0.001〜0.03重量%の範囲で併用使用して良い。
【0069】
また(g)としては、公知の粒子沈降分離軽減剤(g)があげられ、例えば、メチルセルロースやヒドロキシセルロースや可溶性デンプンやポリビニルアルコール等があげられる。地盤固結改良剤中に0.001〜0.03重量%の範囲で併用使用して良い。
【0070】
本発明の地盤固結改良剤に於いては、基本的に粉体組成物または水に懸濁させて1液型または2液型の懸濁組成物として良く、特に制約は無い。
水に懸濁させて1液型または2液型の懸濁組成物とする場合は、注入管先端混合(いわゆる2ショット方式)または注入管直前混合(いわゆる1.5ショット方式)または1液注入(いわゆる1ショット工法)などの方法で当該懸濁型組成物を調製と同時に地盤に注入する方法を採る方法が採用出来る。
その2液の形態には特に制約は無いが、一般的には主剤液として水砕スラグ粉末と分散助剤と石灰成分及び水とからなる懸濁水溶液をあて、もう一方の硬化剤液として水溶性硫酸塩及び炭酸アルカリ金属塩と水とからなる溶液とする態様、または、主剤液として水砕スラグ粉末と分散助剤と石灰成分と水溶性硫酸塩及び水とからなる懸濁水溶液をあて、もう一方の硬化剤液として炭酸アルカリ金属塩と水とからなる溶液とする態様例が一般的に好ましい。
【0071】
本発明の地盤固結改良剤では、例えばその懸濁液ライフ(非流動化時間またはゲルタイム)を最大300時間程度と極めて長くすることは容易に可能であり、かつ、その様に極めて長い液ライフを持つ組成物でありながら豊浦標準砂や1〜5号珪砂等で代表される高純度珪砂を始めとし本発明記載の対象地盤と接触または混和されるとその時点から直ちに硬化反応が進行し、1〜3日以内には該砂などと一体固結する活性を兼備していることが挙げられる。
そのゆえ、水で1液に懸濁化してなる長い液ライフを持つ本発明の地盤固結改良剤溶液組成物を、注入現場以外の遠い場所で予め調整し、工事現場にその1液化してなる地盤固結改良剤溶液組成物を搬送して、そのまま現場注入作業に供する事ができる点は、従来に無い本発明の地盤固結改良剤の性質である。
【0072】
すなわち、本発明の地盤固結改良剤の特徴とは[発明が解決しようとする課題]の項で示した(A)〜(C)のすべての性質を兼備(満足)する地盤固結改良剤である事が挙げられる。
【0073】
本発明の懸濁型グラウト剤を使用または調製する際、前記した各構成成分の配合手順や調製方法等には特に制約はない。
例えば、水砕スラグ粉末と石灰成分粉末と水溶性硫酸塩と炭酸アルカリ金属塩と必要に応じて固形の分散助剤とをドライブレンドして調製されてよい。また例えば水砕スラグ粉末と石灰成分粉末と必要に応じて固形の分散助剤とを必要量の水で懸濁させた液に更に所定量の水溶性硫酸塩と炭酸アルカリ金属塩と追添加して懸濁1液型地盤固結改良剤としたり、またその逆であったりして良い。
また前記した様に、水砕スラグ粉末と石灰成分粉末と固形分散助剤と固体の水溶性硫酸塩及び固体の炭酸アルカリ金属塩とをそれぞれ所定量ドライブレンド・1パック包装して貯蔵・搬送・供給された物を、注入または機械混合現場にて開封後、所定量の水にて分散溶解混合させるなどの1液化現地調製法などの態様例が好ましく採用できる。
【0074】
本発明の地盤改良工法について以下記述する。
本発明の地盤改良方法とは、1kgの改良対象地盤から抽出されたフミン酸で代表されるフミン質有機酸量として、その全量を中和するのに要した水酸化ナトリウムのミリ当量で表した含有濃度で100ミリ当量未満の高有機酸含有の細砂地盤及び/または礫質地盤、及び/または、100gの改良対象地盤中50ミリ当量未満のカルシウム陽イオン吸着交換能を有する細砂地盤及び/または礫質地盤に対し、本発明の地盤固結改良剤を選定使用し懸濁下に一体混和して固結させる事を特徴とする地盤改良方法である。地盤中の混和攪拌浸透方法としては、すでに公知の機械的混和方法ないし物理的浸透混和方法等、公知の方法を適宜採用して良く、特に制約は無い。
【0075】
特に限定制約する物では無いが、一般的には本発明の地盤固結改良剤を大気圧以上最大5KN/cm2(ゲージ圧力)以下の範囲、より好ましくは2.5N〜5KN/cm2(ゲージ圧力)の範囲の攪拌応力または吐出圧で、地盤と一体混合操作を行って固結させる方法であれば発明の目的に合致した安定した高速固結性が確保された地盤改良工事が可能である。
特に好ましい地盤改良方法としては、前記した1液または2液から成る(a)と(b)と(ハ)と(ニ)および(ホ)と(ヘ)とを含有してなる本発明の事前に懸濁化されてなる地盤固結改良剤溶液−2を1ショット方式でグラウト注入管を介して地盤中に加圧浸透固結させて一体固結させる方法を挙げることが出来る。すなわち、水砕スラグ(a)の30〜87重量%と、微粒子状の消石灰(b)の2〜50重量%と水溶性硫酸塩(ニ)の5〜20重量%及び炭酸アルカリ金属塩(ホ)の0.1〜10重量%と前記分散助剤(ハ)の0.05〜2重量%を水(ヘ)に懸濁化してなる1液または2液型の地盤固結改良剤懸濁組成物−2を1ショット方式〜2ショット方式のいずれかの方法でグラウト注入管を介して地盤中に加圧浸透固結させて一体固結させる方法が大いに好ましい方法と言える。
【0076】
次に本発明のグラウト剤組成物を使用した連続地中杭または連続地中壁の構築方法とは、1kgの改良対象地盤から抽出されたフミン酸で代表されるフミン質有機酸量として、その全量を中和するのに要した水酸化ナトリウムのミリ当量で表した含有濃度で100ミリ当量未満の高有機酸含有のシルト細砂地盤及び/またはシルト礫質地盤、及び/または、100gの改良対象地盤中50ミリ当量未満のカルシウム陽イオン吸着交換能を有するシルト細砂地盤及び/またはシルト礫質地盤に対し、本発明の地盤固結改良剤を、地中深く下ろされたミキシングロッドの先端部より吐出または流出させ、同ロッドで該地盤と混和させ、同操作を継続または繰返すことにより、ミキシングロッド周辺の土砂と本発明の地盤固結改良剤とを一体混合させて固結させる事を特徴とする連続地中杭または連続地中壁の構築方法である。
【0077】
本発明の地盤固結改良剤を用いた地盤改良用途には前記した以外に、止水を主な目的とする地盤改良用途、岩盤亀裂注入用途に供されて良い。
【0078】
【実施例】
以下に本発明の実施例、比較例を示すが、本発明は実施例によって何等制約や限定はされない。また、例中の%、部とはそれぞれ重量%、重量部を意味し、L、mLとはリットル、ミリリットルをそれぞれ意味する。
本発明の実施例、比較例として使用するために調整された地盤固結改良剤の配合は、表4にそれぞれ記載した。また構成成分比率については表5に記載した。
【0079】
ところで、本発明の実施例および比較例に於いて使用した原材料は以下の物を用いた。
1.水砕スラグ
表1に示した微粒子状の高炉水砕スラグを使用した。ただし、表1記載の95%最大粒子径(d95)とは光学式粒度分布測定器で求めた粒径加積曲線の95重量%粒子径を意味する。またブレーン値とはコンクリート協会で指定されたセル通気法で求めた比表面積値である。また塩基度とは日本工業規格(JIS−R−5202;ポルトランドセメントの化学分析法)に準じた元素分析法によってCaO,MgO,Al2O3,SiO2で表される各成分の含有重量%を測定した後、その値から(CaO+MgO+Al2O3)/SiO2の重量比を算出し、その算出値を塩基度として表示。
【0080】
【表1】
【0081】
2.消石灰
表2に示した微粒子状の消石灰を使用した。
この内、消石灰1とは、一般ゴミの焼却ガス中の有害塩素系ガス吸着剤用に開発された超微粒子消石灰製品群の中から選ばれたものであり、消石灰2、消石灰3は汎用の市販微粒子消石灰である。
また表2中に記載の95%最大粒子径(d95)とは光学式粒度分布測定器で求めた粒径加積曲線の95重量%粒子径を意味する。またブレーン値とはコンクリート協会で指定されたセル通気法で求めた比表面積値である。
【0082】
【表2】
【0083】
3.生石灰
試薬の生石灰を密閉乾燥雰囲気下にボールミルで粉砕後、篩いで分級し、およそ95%最大粒子径(d95)が15.2μm、ブレーン値が45m2/gの微粒子生石灰を用意した。その物を以下の例中では生石灰1または記号でCK1と表示した。
4.分散助剤
表3に示した3種類の分散助剤を使用した。
ただし、表3中に記載の固形分とは、試料を110℃×30分間強熱乾燥した後、残分の重量%を求めた値であり、重量平均分子量及び慣性二乗半径は試料を0.01%、0.1%、0.2%の3水準に希釈し、GPC(サイズ排除クロマトグラフ)と多角度散乱検出器を接続した計測システムによって導かれた値である。
【0084】
【表3】
【0085】
5.水溶性硫酸塩及炭酸アルカリ金属塩
重硫酸塩の例として重硫酸ナトリウム・1水塩(試薬品)を、また硫酸アルカリ金属塩としては硫酸ナトリウム無水物[略記号で(硫酸Na)と称する](試薬品)、硫酸カリウム無水物[略記号で(硫酸K)と称する](試薬品)、硫酸ナトリウムカリウム無水物[略記号で(硫酸NaK)と称する](試薬品)を代表使用した。また重亜硫酸塩の例としては重亜硫酸ナトリウム無水物(試薬品)を、過硫酸塩の例としては過硫酸カリウム・12水塩(試薬品)を、チオ硫酸塩の例としてはチオ硫酸ナトリウム無水物(試薬品)をそれぞれ用意した。
炭酸アルカリ金属塩としては炭酸ナトリウム無水物(試薬品)[略記号で(炭酸Na)と称する]を代表使用した。
【0086】
6.砂質土
本発明の実施例または比較例に於いて、サンドゲル強度特性の試験、耐久性試験、大規模注入試験等に供したモデル地盤としては、千葉県鎌滝産の礫質交じりの砂質土[以下砂質土(I)と単に称する]及び茨城県利根川流域産の川砂[以下砂質土(II)と単に称する]のいずれかを用いた。
砂質土(I)については、最大粒子径(d99.9);約5mm、平均粒子径(d50)が約400μm、フミン質有機酸量:10〜15ミリ当量NaOH/kg,カルシウム陽イオン吸着交換能:30〜35ミリ当量/100gであった。
砂質土(II)については、最大粒子径(d99.9);約2mm、平均粒子径(d50)が約200μm、フミン質有機酸量:60〜65ミリ当量NaOH/kg,カルシウム陽イオン吸着交換能:3〜5ミリ当量/100gであった。
なお、上記フミン質有機酸量とは砂質土と10倍量の1規定水酸化ナトリウム溶液を混合し、1時間加熱下にフミン質有機酸の抽出中和処理を行って後、抽出母液を得て、その母液をフェノールフタレイン指示薬の存在下に1規定塩酸溶液で逆滴定して求めた水酸化ナトリウム消費量のミリ当量数で表した値である。
いずれの砂質土モデル地盤も本発明の対象地盤として好ましい範囲のものであり、特に砂質土(II)自体はその粒度分布が豊浦標準砂にほぼ匹敵するものであった。
【0087】
また本発明の実施例及び比較例に於いて実施した試験方法については以下の通りである。
a.初期ローシェアー粘度(以下の記載では単に初期粘度とも言う)
主剤成分と硬化剤成分の全てを含む調整直後の懸濁型の地盤固結改良剤を20℃に保ち、B型粘度計60rpmにて測定した値をローシェアー粘度(初期粘度)とした。
b.流動性消失時間
主剤成分と硬化剤成分の全てを含む懸濁型の地盤固結改良剤をその混合調整時点を基点に、静置状態で放置し、ときどき傾斜させて懸濁液部の流動性が失われた時点までに要した時間または日数を計測し、その値を流動性消失時間として表示。
【0088】
c.サンドゲル固結特性
砂質土(I)または砂質土(II)と水懸濁の地盤固結改良剤を、重量比で385:90の割合で混和し、成型用円筒モールド容器(50mmφ×100mm高さ)に充填放置し、経日養生後の固結挙動特性を測定した。具体的には室温下で1日、3日の養生条件をそれぞれ経て後、脱型し、得られたサンドゲル体を1軸圧縮強度試験に供した。そして単位面積当たりの降伏破壊強度の値を求め、その値をサンドゲル(I)強度またはサンドゲル(II)強度とした。
【0089】
d.耐久性試験
上記サンドゲル強度と同様な方法で得たサンドゲル(I)を、1ケ月、3ケ月、6ケ月、12ケ月間大過剰の50℃温水中に浸漬させて後、取り出して20℃の時のサンドゲル(I)の1軸圧縮強度試験を実施した。なお調整10日後のサンドゲル(I)強度値を100とし、測定値を元の基準値で割って100を掛けた値を強度保持率%とし、その値を耐久性として各例の結果に示した。
【0090】
実施例1
表4に示す様に、水砕スラグ1の300部と消石灰1の50部と硫酸ナトリウムの50部および炭酸ナトリウム20部を水道水の845部で懸濁溶解させてなる懸濁型の地盤固結改良剤組成物(KD1)を調整し、そのローシェアー粘度特性、流動消失時間、サンドゲル固結特性試験を行って、その結果を表6に示した。
実施例1の懸濁型の地盤固結改良剤組成物(KD1)の1日室温養生後のサンドゲル固結体は、100N/cm2の圧縮負荷では破壊がみとめられず、115N/cm2と高い1軸圧縮強度を示した。KD1の3日室温養生後のサンドゲル固結体は、300N/cm2の圧縮負荷では破壊がみとめられず、1120N/cm2と高い1軸圧縮強度を示した。
【0091】
実施例2〜10
表4に記載の実施例2〜実施例10の配合表に従い、実施例1と同様な手順でそれぞれ1液性の懸濁型の地盤固結改良剤組成物(実施例2;KD2)〜(実施例10;KD10)]を調整した。そしてローシェアー粘度特性、流動性消失時間、サンドゲル固結特性試験をそれぞれ行って、その結果を表6に示した。
実施例2〜実施例10の各地盤固結改良剤組成物[(KD2)〜(KD10)]の各3日室温養生後のサンドゲル固結体は、そのいずれも100N/cm2の圧縮負荷では破壊がみとめられず、それ以上の高い1軸圧縮強度特性を持つ高強度なサンドゲル体であった。
【0092】
比較例1〜4
表4に記載の比較例1〜4の配合表に従い、実施例1と同様な手順でそれぞれ1液性の懸濁型の地盤固結改良剤組成物[(比較例1;KE1)〜(比較例4;KE4)]を調整した。そしてローシェアー粘度特性、流動消失時間、サンドゲル固結特性試験をそれぞれ行って、その結果を表6に示した。
【0093】
【表4】
表中記載の記号の説明
水砕スラグのS1とは水砕スラグ1を、同S2とは水砕スラグ2を、同S3とは水砕スラグ3をそれぞれ意味する。
また、消石灰のC1とは消石灰1を、C2とは消石灰2を、C3とは消石灰3を意味する。また更に分散助剤のE1とは分散助剤1を、E2とは分散助剤2を、E3とは分散助剤3を意味する。
また、硫酸ソーダとは硫酸ナトリウムの事である。
また、アルカリ刺激剤の硬Xとは2号水ガラス溶液を意味し、硬Yとは20%水酸化ナトリウム溶液をそれぞれ意味する。
【0094】
【表5】
表中記載の記号の説明
硬化剤Xとは固形の2号水ガラスを意味し、硬化剤Yとは水酸化ナトリウムをそれぞれ意味する。
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
実施例11
アルミ−ポリエチレンラミネート袋に水砕スラグNo.1の300部と消石灰No.1の50部と無水硫酸ナトリウムの50部と無水炭酸ナトリウムの20部からなるドライミックス包装袋を作成し、温度40℃、湿度90%の雰囲気下に1ケ月間保存した後、水道水の845部を加えて強攪拌し、実質表4の実施例1と同組成からなる地盤固結改良剤;KD11を調整した。
得られたKD−11の地盤固結改良剤は諸物性および耐久性に関し、実施例1のKD1と全く同様な結果を得た。
【0098】
実施例12
まず、分散助剤2(記号E2)の5部を水道水200部に溶解させた液を2L容器に取り、強攪拌下に水砕スラグ3(記号S2)の150部と消石灰1(記号C1)の50部を加え、3分間混合させた。次いで総量が500mLとなる様に水道水225部を追加して均一なる懸濁型主剤液Aを得た。また一方、重硫酸ナトリウム・1水塩の30部と炭酸ナトリウム無水物の10部とを水道水の483部で溶解してなる硬化剤液Bを得た。
攪拌下にある主剤液Aの全量500mLに硬化剤液Bの約500mLを混和させて2液混和懸濁型の地盤固結改良剤KD−12とした。
KD−12のローシェアー粘度は18mPa・sと低粘度であり、豊浦標準砂や砂質土(II)に対し低圧で浸透注入作業が可能であった。また流動性消失時間はおよそ0.5〜0.7時間であった。また、室温下1日養生後のサンドゲル(II)強度特性は50N/cm2付加時点ではなんら破壊が認められず、その値は80〜90N/cm2と高く、KD−12は細砂地盤に対し高速浸透性ならびに高速高強度固結性が確認された。
【0099】
実施例13
実施例12のKD−12組成物に於いて、消石灰1の50部の代替物質として生石灰1の10部と消石灰2の40部からなる混合物で代替し、かつまた、硬化剤液Bが過硫酸カリウム・12水塩の3部と硫酸ナトリウムカリウム無水物の27部及び炭酸ナトリウム無水物の7.5部とを水道水の485部で溶解してなる硬化剤液とした以外は実施例12と同様にして得た2液混和懸濁型の地盤固結改良剤KD−13を調整した。
KD−13のローシェアー粘度は17mPa・sと低粘度であり、豊浦標準砂や砂質土(II)に対し低圧で浸透注入作業が可能であった。またおよその流動性消失時間は0.5〜0.6時間であった。またサンドゲル(II)強度特性試験の結果は、室温下1日養生後の1軸圧縮強度は50N/cm2では破壊が認められず、80〜85N/cm2と高く、KD−13は細砂地盤に対し高速浸透性ならびに高速高強度固結性が確認された。
【0100】
実施例14
まず、分散助剤2(記号E2)の8部を水道水200部に溶解させた液を2L容器に取り、強攪拌下に水砕スラグ2(記号S2)の200部と消石灰1(記号C1)の50部を加え、3分間混合させた。次いで総量が500mLとなる様に水道水を追加して均一なる懸濁型主剤液Aを得た。また一方、重亜硫酸ナトリウムの15部と亜硫酸ナトリウムの15部と炭酸ナトリウムの5部とを水道水の487部で溶解してなる硬化剤液Bを得た。
攪拌下にある主剤液Aの全量500mLに硬化剤液Bの約500mLを混和させて2液混和懸濁型の地盤固結改良剤KD−14とした。
KD−14のローシェアー粘度は21mPa・sと低粘度であり、およその流動性消失時間は約0.5時間程度であり、水締め状態下の砂質土(I)に対しゲージ圧15N/cm2低圧下でグラウト管を介して容易に浸透注入作業が可能であった。またサンドゲル(I)強度特性試験の結果は、室温下1日養生後の1軸圧縮強度は50N/cm2では破壊が認められず、78〜84N/cm2と高く、KD−14は細砂地盤に対し高速浸透性ならびに高速高強度固結性が確認された。
【0101】
実施例15
まず、分散助剤2(記号E2)の10部を水道水200部に溶解させた液を2L容器に取り、強攪拌下に水砕スラグ2(記号S2)の300部と消石灰1(記号C1)の50部を加え、3分間混合させた。次いで総量が500mLとなる様に水道水を追加して均一なる懸濁型主剤液Aを得た。また一方、チオ硫酸ナトリウムの5部と硫酸カリウムの45部と炭酸ナトリウムの5部とを水道水の475部で溶解してなる硬化剤液Bを得た。
攪拌下にある主剤液Aの全量500mLに硬化剤液Bの約500mLを混和させて2液混和懸濁型の地盤固結改良剤KD−15とした。
KD−15のローシェアー粘度は29mPa・sと低粘度であり、およその流動性消失時間は0.2〜0.3時間であり、水締め状態下の砂質土(I)に対しゲージ圧15N/cm2低圧下でグラウト管を介して容易に浸透注入作業が可能であった。またサンドゲル(I)強度特性試験の結果は、室温下1日養生後の1軸圧縮強度は100N/cm2では破壊が認められず、120〜130N/cm2と高く、KD−15は細砂地盤に対し高速浸透性ならびに高速高強度固結性が確認された。
【0102】
実施例16
まず、分散助剤2(記号E2)の3部を水道水50部に溶解させた液を1L容器に取り、強攪拌下に水砕スラグ3(記号S3)の100部と消石灰1(記号C1)の50部を加え、3分間混合させた。次いで総量が500mLとなる様に水道水を追加して均一なる懸濁型主剤液Aを得た。また一方、硫酸ナトリウムの25部と炭酸ナトリウムの25部とを水道水の475部で溶解してなる硬化剤液Bを得た。
攪拌下にある主剤液Aの全量500mLに硬化剤液Bの約500mLを混和させて2液混和懸濁型の地盤固結改良剤KD−16とした。
KD−16のローシェアー粘度は14.5mPa・sと低粘度であり、およその流動性消失時間は0.2時間程度であり、水締め状態下の砂質土(I)や砂質土(II)に対し、それぞれ、ゲージ圧15N/cm2低圧下でグラウト管を介して容易に浸透注入作業が可能であった。またサンドゲル(I)強度特性試験の結果は、室温下1日養生後の1軸圧縮強度は50N/cm2では破壊が認められず、60〜70N/cm2と高く、室温7日養生後のサンドゲル(I)強度は最大180N/cm2の値を示した。したがって、KD−16は細砂地盤に対し高速浸透性ならびに高速高強度固結性が確認された。
【0103】
以下の実施例17〜実施例19は、それぞれ大型モデル地盤を用いての地盤改良工法適性試験の結果である。
実施例17
実施例6のKD−6で表される水懸濁型の地盤固結改良剤の約100Lを新たに調整し、1液とし、以下の模擬地盤−1に対して1ショット注入試験を実施した。
まず砂質土(I)を2m四方、高さ4mの試験槽に充填し水締めして後24時間放置して模擬地盤−1とした。一般に用いられているグラウトマシンを使用し、グラウト注入管をその先端吐出口から容器底面までの距離を100mmとした位置まで差込んで固定させ、その位置で25L/分の注入速度で1液から成るKD−6を10分間注入した。その後30分放置後、注入管を290mm程度引き上げた位置で、調整後30分経過後のKD−6を25L/分の速度で10分間注入した。また更に30分放置後、同様に注入管を290mm引き上げてその位置で調整後60分以上経過後のKD−6を25L/分の注入速度で10分間注入作業を実施した。合計5ステップにわたる注入操作を実施し、KD−6の地盤固結改良剤は調整から注入作業終了まで一貫して3時間以内で完了した。また5ステップ注入作業中に於いて、注入圧力の急上昇などの現象は一切観察されなかった。
【0104】
3日後に、模擬地盤−1上面の注入管の位置を中心とした半径30cmの円周上の各4点から試験槽内の鉛直方向に金属棒を差し入れた所、どの部位に於いても深さ約2.7mの地点で固結体と思われる塊に当たった。
注入から7日後に試験槽を解体し、未固結部分を水で洗い流して固結体を露出させた。その結果、浸透固結塊は概ね直径1m、高さ1.45mであった。
また、約5cm大のキュウビック塊を5点採取し、その密度を測定した結果、密度のバラツキはほとんど無かったことから均等に浸透固結してなる砂質土(I)サンドゲルが形成されている事が判明した。そして該サンドゲル(I)強度は最低値でも300N/cm2を超える高い圧縮破壊強度を持つものであった。
【0105】
また更に、砂質土(II)を用いて構成され、前記模擬地盤−1と全く同様に調整された模擬地盤−2に対しても、KD−6の地盤固結改良剤を用いて前記したと同様に行った浸透固結試験の結果は、模擬地盤−1の結果と同じ内容の固結体を形成した。
【0106】
実施例18
表4の実施例2の配合表で示したと同様なKD−2地盤固結改良剤の200Lを新たに調整し、実施例12と同様な模擬地盤−1に対して小型ミキシングロッドを挿入して混合固結実験を実施した。
まず小型ミキシングロッドを挿入しつつ、その先端吐出口から容器底面までの距離を100mmとした位置まで模擬地盤−Iに差込んで固定させ、その位置で25L/分の注入速度でゆっくりと引き上げながらKD−2を30分間注入攪拌混合した。
2日後に、模擬地盤−1上面の小型ミキシングロッド挿入位置を中心とした半径30cmの円周上の各4点から試験槽内の鉛直方向に金属棒を差し入れた所、どの部位に於いても深さ約2.7mの地点で固結体と思われる塊に当たった。
注入から7日後に試験槽を解体し、未固結部分を水で洗い流して固結体を露出させた。その結果、浸透固結塊は概ね直径1m、高さ1.45mの地中杭が形成されていた。
また該固結体を鉛直方向及び水平方向の数箇所に切断し内部のサンドゲル構成状況を詳細に観察した結果、砂質土と混和してなる固結体であることが判明。
また、約5cm大のキュウビック塊を5点採取し、その密度を測定した結果、密度のバラツキはほとんど無かったことから均等に浸透固結してなる砂質土(I)サンドゲルが形成されている事が判明した。
また更に、砂質土(II)を用いて構成された前記模擬地盤−1と全く同様な模擬地盤−2に対しても前記同様に行った小型ミキシングロッドを介した固結試験の結果は、模擬地盤−1の結果とほとんど同じであった。
【0107】
実施例19
表4の実施例5のKD−5地盤固結改良剤400Lを新たに調整し、以下の模擬地盤−1に対して超高圧混合工法で地盤固結実験を実施した。
その模擬地盤−1としては、砂質土(I)を2m×5m、高さ4mの試験槽に充填し、水締めして後24時間以上放置してなる模擬地盤である。
その模擬地盤−1にグラウト用の注入ミキシング管を底面から100mmの位置まで差込み、該注入ミキシング管の先端附近に設けられた管側面の複数個の吐出孔からKD−5地盤固結改良剤を圧力3kN/cm2の超高圧下に、かつ50L/分の吐出速度にて吐出させた。
なお、吐出応力で吐出孔部が自由回転する構造となっており、管周辺の360゜鉛直方向に均一に地盤固結改良剤を吐出させた。
更に、吐出開始後ゆっくりと該注入ミキシング管を引上げて深さ2.5mの位置まで引き上げて同注入操作を停止させた。
施工数日後に、模擬地盤−1上面の注入点の真中を中心とした半径100cmの円周上の各4点から試験槽内の鉛直方向に金属棒を差し入れた所、どの部位に於いても深さ約2.5mの地点で固結体と思われる塊に当たった。
【0108】
7日後に試験槽を解体し、未固結部分を水で洗い流して固結体を露出させたところ、浸透固結塊は半径125〜150cmと長く、砂質土(I)と地盤固結改良剤KD−5がよく混合一体化固結された高強度なサンドゲル塊からなる地中杭を形成している事が観察された。
【0109】
【発明の効果】
本発明の地盤固結改良剤は実施例1〜10(表4〜表6)及び実施例11〜実施例16等で明らかな様に、その流動性消失時間が実施例2の0.2時間から実施例10の85時間といったぐあいに任意に調整可能である一方、その液ライフにあまり影響を受ける事無く、砂質土と混和されると急速に固結する作用効果が明らかに見られる。上記特性を持つスラグ系地盤固結改良剤はこれまでに全く知られていない。
また実施例17〜実施例19で明らかな様に、本発明の地盤固結改良剤は公知の安価な地盤改良工法の採用で、その地盤の早期固結改良目的が容易に達成できることが明らかである。すなわち、標準砂並みの細砂質地盤に対しても薬液注入工法またはミキシングロッド工法、高圧混合工法のいずれの工法でも問題無く施工出来、理想的な浸透固結塊等を地中に形成できる作用効果を持つことがあきらかである。
【0110】
特に、高フミン質有機酸を含有する砂質土地盤及び/またはカルシウムイオン吸着交換能が大きい硬化させずらい砂質土地盤を、本発明の地盤固結改良剤では施工後(砂質土中に投入混合施工後)1〜3日以内と短時間内に確実に50N/cm2以上のサンドゲル強度発現を達成できる新規な地盤固結改良剤組成物である。
【0111】
また表7の耐久性評価結果に示す様に、本発明の地盤固結改良剤を用いた固結させずらい砂質土との一体化固結体、すなわち砂質土−サンドゲル固結体は12ケ月間の温水浸漬劣化試験でもむしろ強度が上向きであり、問題となる様な著しい強度低下は認められない事から、本発明の地盤固結改良剤は耐久性に極めて優れる事が明らかである。
【0112】
また一方、比較例1〜比較例4の地盤固結改良剤は、そのいずれも発明の目的を達成できていない。
【0113】
比較例2、比較例3で明らかな様に、公知のアルカリ刺激剤を含むスラグ−消石灰併用系の地盤固結改良剤は、その液ライフが短く、1液型地盤固結改良剤懸濁液とは成りにくい。またフミン質有機酸や粘土鉱物を多く含む固結させずらい砂質土地盤では良好な地盤固結改良剤として向かない事が明らかである。
【0114】
本発明の地盤固結改良剤は、解決すべき課題に挙げた(A)〜(C)の全てを満たす点でその効果が特に顕著である。
【0115】
すなわち、本発明の地盤固結改良剤の作用効果として総論すると、フミン酸で代表されるフミン質有機酸及び/または陽イオン吸着交換能を有する粘土鉱物を多く含有し、地震時に液状化災害、滑り破壊災害、不同沈下災害等の重大災害の発生が予想される砂質土地盤及び/または礫質地盤への浸透注入工法による地盤改良現場に於いて、高速高浸透作業性が確保できる上に短時間内に高強度固結性を示す事から、環境負荷が極限まで抑制出来、改良総コストが安くかつ高信頼性の地盤改良を可能にする事が挙げられるる。
併せて、耐久性に優れた地盤固結改良ならびに連続地中杭または連続地中壁の構築方法等を安価に提供出来る効果を持つ。
Claims (6)
- 微粒子状の水砕スラグの30〜87重量%と、微粒子状の消石灰及び/または微粒子状の生石灰の2〜50重量%と、重硫酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、過硫酸塩および硫酸アルカリ金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1種または2種以上の水溶性硫酸塩の3〜20重量%および炭酸アルカリ金属塩の0.1〜10重量%とを含有してなる地盤固結改良剤。
- 固形分換算の分散助剤/水砕スラグの重量比が0.001〜0.05の範囲で更に有機高分子系の分散助剤を含有させてなる事を特徴とする請求項1記載の地盤固結改良剤。
- 水砕スラグが(CaO+MgO+Al2O3)/SiO2の重量比で表される塩基度で1.7〜2.1の範囲にある高炉水砕スラグである事を特徴とする請求項1または2に記載の地盤固結改良剤。
- 地盤固結改良剤を水で懸濁させてなり、水/水砕スラグの重量比が0.5〜5の範囲、(消石灰+生石灰)/水砕スラグの重量比が0.01〜3の範囲、分散助剤/(消石灰+生石灰+水砕スラグ)の重量比が0.005〜0.02の範囲、水溶性硫酸塩として硫酸ナトリウムの単独を選定しその2〜10重量%、炭酸アルカリ金属塩として炭酸ナトリウムの単独を選定しその1〜5重量%を含有させてなる1液型懸濁溶液とする事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の地盤固結改良剤。
- 1kgの改良対象地盤から抽出されたフミン酸で代表されるフミン質有機酸量として、その全量を中和するのに要した水酸化ナトリウムのミリ当量で表した含有濃度で100ミリ当量未満の高有機酸含有の細砂地盤及び/または礫質地盤、及び/または、100gの改良対象地盤中50ミリ当量未満のカルシウム陽イオン吸着交換能を有する細砂地盤及び/または礫質地盤に対し、請求項1〜4のいずれかに記載の地盤固結改良剤を懸濁下に一体混和して固結させる事を特徴とする地盤改良方法。
- 1kgの改良対象地盤から抽出されたフミン酸で代表されるフミン質有機酸量として、その全量を中和するのに要した水酸化ナトリウムのミリ当量で表した含有濃度で100ミリ当量未満の高有機酸含有のシルト細砂地盤及び/またはシルト礫質地盤、及び/または、100gの改良対象地盤中50ミリ当量未満のカルシウム陽イオン吸着交換能を有するシルト細砂地盤及び/またはシルト礫質地盤に対し、請求項1〜4のいずれかに記載の地盤固結改良剤を、地中深く下ろされたミキシングロッドの先端部より吐出または流出させ、同ロッドで該地盤と混和させ、同操作を継続または繰返すことにより、ミキシングロッド周辺の土砂と請求項1〜4のいずれかに記載の地盤固結改良剤とを一体混合させて固結させる事を特徴とする連続地中杭または連続地中壁の構築方法。
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