JP4501367B2 - 燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部改質式の燃料電池に関し、詳しくは、燃料電池スタックの排熱を効率良く利用して好適な燃料ガスの改質が行える燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体酸化物形燃料電池は、第三世代の発電用燃料電池として開発が進んでいる。現在、固体酸化物形燃料電池は、円筒型、モノリス型、および平板積層型の3種類が提案されており、何れも酸化物イオン伝導体から成る固体電解質を空気極層と燃料極層との間に挟んだ積層構造を有する。この積層体から成る発電セルとセパレータを交互に積層することにより燃料電池スタックが構成される。
【0003】
発電セルには、空気極側に酸化剤ガスとしての酸素(空気)が、燃料極側に燃料ガス(H2 、CO、CH4 等)が供給される。空気極と燃料極は、ガスが固体電解質との界面に到達することができるように、いずれも多孔質とされている。空気極側に供給された酸素は、空気極層内の気孔を通って固体電解質層との界面近傍に到達し、この部分で、空気極から電子を受け取って酸化物イオン(O2-)にイオン化される。この酸化物イオンは、燃料極の方向に向かって固体電解質層内を拡散移動する。燃料極との界面近傍に到達した酸化物イオンは、この部分で、燃料ガスと反応して反応生成物(H2 O、CO2 等)を生じ、燃料極に電子を放出する。
【0004】
燃料に水素を用いた場合の電極反応は次のようになる。
空気極: 1/2 O2 + 2e- → O2-
燃料極: H2 + O2- → H2 O+2e-
全体 : H2 + 1/2 O2 → H2 O
【0005】
ところで、燃料電池に使用される燃料ガスは天然ガス(メタンガス)等の炭化水素化合物(原燃料と言う)であるため、実際はこの原燃料を水素を主成分とする燃料ガスに改質してから使用する必要がある。改質の方法として、原燃料が炭化水素系の気体燃料や液体燃料の場合、通常は水蒸気改質法が用いられている。
【0006】
例えば、メタンガスを原燃料とする改質反応は次のようになる。
脱硫されたメタンガスは、改質器で水蒸気を加えられて、水素と一酸化炭素になる。この改質反応は吸熱反応であって、温度は650〜800℃程の高温となる。
CH4 +H2 O→3H2 +CO
この時、生成された一酸化炭素は、さらに水蒸気と反応して水素と二酸化炭素に変わる。
CO+H2 O→H2 +CO2
【0007】
従来より、燃料電池の改質方法として、燃料電池の外に改質器を設置する外部改質法や、高温の燃料電池スタックの内部に直接燃料改質機構を組み込んだ内部改質法が知られている。水蒸気改質反応が吸熱反応であることから、改質反応のための熱を別途供給する必要がある外部改質法は発電効率が悪く燃料電池の燃料改質機構には不向きであり、発電時に燃料電池より発生する熱の一部を改質反応の吸熱反応に利用できる効率的な内部改質法が注目されている。
既述したように、改質反応は吸熱反応であり、十分な改質反応を行うには改質触媒を少なくとも640℃以上、望ましくは700℃以上に加熱する必要があることから、内部改質式の燃料電池では、改質用の熱エネルギーとして燃料電池スタックからの高温排熱が利用されている。
【0008】
尚、燃料電池スタックからの排熱を回収して反応ガス(燃料ガス、空気)の予熱や改質反応等に有効利用する技術として特許文献1が開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭62−283570号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、固体酸化物形燃料電池を例にとると、作動温度が1000℃前後の高温型固体酸化物形燃料電池では、排出される熱エネルギー量が多いため、改質に要する熱エネルギーを回収するのは比較的容易であるが、作動温度が700℃前後の低温作動型の固体酸化物形燃料電池の場合は、先の高温型に比べて排出される熱エネルギー量も少なく熱的にゆとりが無いため、効率的な熱回収が行われないと改質反応が不十分になる恐れがある。改質不十分であると、メタン(未改質ガス)からの炭素析出で電池性能が急激に低下したり、発電セル内にメタンが導入されると吸熱反応による熱応力で燃料極が剥離し、寿命が短くなるといった弊害が生じる。
【0011】
従って、上記した弊害を無くして安定した発電性能を得るには、燃料電池から排出される余剰エネルギー(排熱)をいかに効率良く回収し、そして発電反応に有効使用するかが大きな課題となっている。
【0012】
本発明は、このような従来からの課題に鑑みて成されたもので、燃料電池スタックからの排熱を効率良く利用して好適な改質を行える燃料電池を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、発電セルとセパレータを交互に積層して燃料電池スタックを構成し、ハウジング内に収納すると共に、運転時に前記燃料電池スタック内へ反応用ガスを供給して発電反応を生じさせる内部改質式の燃料電池において、前記燃料電池スタックの周辺に燃料改質器を配設し、この燃料改質器の外側である前記ハウジング側に改質用水蒸気を得る水気化器を設けると共に、前記燃料改質器と前記水気化器との間に熱遮蔽部材を設けたことを特徴としている。
【0015】
ハウジング内において、燃料改質には改質反応(吸熱反応)のための高温を供給する必要があり、一方、改質用の高温水蒸気を得るには改質反応のように高温よりも寧ろ多量の熱量を供給する必要がある。
そこで、本発明では、燃料改質器を燃料電池スタックからの放射熱を直接受熱できる燃料電池スタックの周囲に配置すると共に、熱遮蔽部材を隔ててその外側(ハウジングに近い方向)に水気化器を配置し、燃料改質器と水気化器を熱的に隔離する構成とした。改質器は、熱遮蔽部材による保温効果で得られた高温雰囲気中にあって放射熱を効率良く受熱し、十分な改質を行うことができると共に、水気化器は熱遮断部材の伝導熱や、熱遮断部材を越えて誘導される排気熱により多量の熱量を吸収して高温水蒸気を発生する。これにより、燃料電池からの排熱を有効に利用した高効率発電システムを実現できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図3に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は本発明が適用された固体酸化物形燃料電池の内部構成を示し、図2は燃料電池スタックの要部概略構成を示し、図3は発電反応室内における燃料改質機構の概略構成を示す。
【0018】
先ず、図1に基づいて固体酸化物形燃料電池の構成を説明する。
図1、図2において、符号1は固体酸化物形燃料電池(燃料電池モジュール)、符号2は内壁に断熱材27を層状に付装した円筒状のハウジング、符号3は積層方向を縦にして燃料電池モジュール1の中央に配設された燃料電池スタックである。
この燃料電池スタック3は、固体電解質層4の両面に燃料極層5および空気極層(酸化剤極層)6を配した発電セル7と、燃料極層5の外側の燃料極集電体8と、空気極層6の外側の空気極集電体(酸化剤極集電体)9と、各集電体8、9の外側のセパレータ10を順番に積層した構造を有する筒状体で成る。
【0019】
ここで、固体電解質層4はイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)等で構成され、燃料極層5はNi、Co等の金属あるいはNi−YSZ、Co−YSZ等のサーメットで構成され、空気極層6はLaMnO3 、LaCoO3 等で構成され、燃料極集電体8はNi基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、空気極集電体9はAg基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、セパレータ10はステンレス等で構成されている。
【0020】
また、燃料電池スタック3の側方には、各セパレータ10の燃料通路26に接続管11を通して燃料ガスを供給する燃料用マニホールド13と、各セパレータ10の酸化剤通路25に接続管12を通して酸化剤ガスとしての空気を供給する酸化剤用マニホールド14とが、発電セル7の積層方向に延在して設けられている。
【0021】
また、マニホールド13、14の外周側には、各マニホールド13、14につながる燃料ガス予熱管15、酸化剤ガス予熱管16や、各予熱管15、16および燃料電池スタック3を予熱するヒータ20等が配設されている。ヒータ20および予熱管15、16は、ハウジング2の内部に収容されており、ハウジング2内の各予熱管15、16に外部の燃料ガス供給管17、酸化剤ガス供給管18がそれぞれ接続されている。
【0022】
また、この固体酸化物形燃料電池1は、発電セル7の外周部にガス漏れ防止シールを設けないシールレス構造とされており、運転時には、図2に示すように、燃料通路26および酸化剤通路25を通してセパレータ10の略中心部から発電セル7に向けて供給される燃料ガスおよび酸化剤ガス(空気)を、発電セル7の外周方向に拡散させながら燃料極層5および空気極層6の全面に良好な分布で行き渡らせて発電反応を生じさせると共に、発電反応で消費されなかった残余の高温ガスを、発電セル7の外周部から外に自由に放出するようになっている。また、ハウジング2には、その内部空間、即ち、発電反応室21に放出された余剰ガスを燃料電池モジュール1の外に排出するための排気管22a、22bが設けられている。
【0023】
ところで、本実施形態では、図3に示すように、発電反応室21内において、燃料電池スタック3の放射伝熱が可能となる燃料電池スタック3の近傍に炭化水素触媒を充填した燃料改質器30が燃料電池スタック3の高さ方向に配設されている。この燃料改質器30は、未改質の燃料ガスが導入される中央部の箱形第1改質器31と、第1改質器31の両側に配置される一対の箱形第2改質器32とで構成されており、燃料電池スタック3からの放射熱を効率良く受熱できるよう、これらの改質器31、32が燃料電池スタック3の円周に沿って円弧状に配置されている。
そして、第1改質器31と左右の第2改質器32とは、それぞれ配管33によって接続されており、第1改質器31に導入された未改質の燃料ガスが第1改質器31を通過後、この配管33を通して両側の第2改質器32、32に導入されるようになっている。尚、第1改質器31のガス導入口39は図示しない配管により燃料ガス予熱管15に接続されていると共に、第2改質器32、32の出口35、35は、図示しない配管により燃料用マニホールド13に接続されている(図1参照)。
【0024】
この燃料改質器30に対応してその外側(ハウジング2側)に、改質用の高温水蒸気を得るための水気化器34が配設されており、且つ、この水気化器34と燃料改質器30の間に断熱材等で成る熱遮蔽部材28が燃料電池スタック3を囲むように配設されて燃料改質機構を構成している。
【0025】
本実施形態において、水気化器34は、中央の燃料電池スタック3を取り囲むように所定の間隔を持って配設された高さ方向に延びる複数のフィン付き垂直管37で構成されている。そして、各々垂直管37の下端部は管部材36により連結されており、図1の水供給管19を通して供給される水蒸気発生用の水は当管部材36を通して各垂直管37に導入され、垂直管37内において熱交換されて高温水蒸気を発生する。高温水蒸気は各垂直管37の上端部より管部材38より燃料改質器30に導入されるようになっている。
【0026】
尚、水気化器34の構造は上記した垂直管37に限るものではなく、燃料電池スタック3を取り囲む熱遮蔽部材28の周囲に給水管を螺旋状に配管した蛇管構造としても良い。何れにしても、水気化器34は発電反応室21内において、燃料電池スタック3からの排熱を熱エネルギー源として高温水蒸気を発生し、未改質の燃料ガスと混合されて第1改質器31に導入されるように構成されている。
【0027】
燃料改質には、改質反応のための高温(650〜800℃)が必要であり、一方、改質用の高温水蒸気を得るには改質反応のような高温は必要なく、寧ろ多量の熱量を必要とする。因みに、水気化器34の周囲温度は300℃程度確保できていれば水蒸気の発生は十分である。
【0028】
本構成において、燃料改質器30は、熱遮蔽部材28による保温効果で得られる高温雰囲気中で燃料電池スタック3からの放射熱を効率良く受熱し、十分な改質を行うことができると共に、水気化器34は熱遮蔽部材28より伝導される熱や、熱遮断部材を越えて誘導される排気熱により、多量の熱量を吸収して効率的に高温水蒸気を発生することが可能となる。
また、熱遮蔽部材28を設けて燃料改質器30と水気化器34を熱的に隔離すことにより、水気化器34の気化作用(熱交換)による熱吸収で改質器30側が冷却されることが防止でき、燃料改質器30の周りに十分な改質反応が行える高温雰囲気状態を確保することができる。このように、燃料電池からの排熱を有効に利用した高効率発電システムを実現できる。
【0029】
次に、本実施形態の燃料改質機構の動作を説明する。
燃料電池の運転時には燃料ガスである炭化水素ガス(CH4 )と水気化器34からの高温水蒸気の混合ガスがガス導入口39より第1改質器31に導入される。尚、図1においては、燃料ガス予熱管15から予熱された燃料ガスが供給される。この混合ガスは第1改質器31より第2改質器32に誘導され、改質器内を流通する過程で炭化水素触媒に接触して水蒸気改質法による炭化水素ガスの改質反応が行われる。この改質反応は吸熱反応であって、改質反応に必要な高熱(例えば、650〜800℃)は、燃料電池スタック3からの放射熱を受熱して得られる。燃料改質器30は燃料電池スタック3の周囲方向の放射伝熱可能な好適位置に配置されているので、改質反応の吸熱反応に必要とされる十分な高熱を直接受熱することができる。
【0030】
第1改質器3で改質された燃料ガスは左右の出口より配管33、33を通して第2改質器32、32に導入され、第2改質器32内を流通する過程で炭化水素触媒に接触してさらに改質される。第2改質器32の改質反応で得られた水素リッチな改質ガス(H2 、CO、CO2 )は、第2改質器32の出口35、35より図示しない配管を通して図1に示す燃料用マニホールド13に誘導され、ここから各接続管11を通して各セパレータ10の側部に導入される。図2に示すように、改質ガスはさらにセパレータ10の側面から燃料通路26を通して燃料極側に吐出し、燃料極集電体8内を拡散移動して燃料極層5に達し、発電反応が行われる。
【0031】
以上、本実施形態では、ジルコニア等の固体酸化物を電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)について説明したが、これに限るものではなく、燐酸を電解質とする燐酸形燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、或いは、イオン交換膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)等についても勿論適用可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、燃料改質器では、熱遮蔽部材による保温効果で得られる高温雰囲気中で燃料電池スタックからの放射熱を効率良く受熱し、十分な改質温度にて好適な燃料改質が行われると共に、水気化器では、熱遮断部材からの伝導熱や排気熱より多量の熱量を吸収して効率的に高温水蒸気を発生することができる。
このように、従来余剰エネルギーとして外部に放出されていた熱を有効に利用することができ、発電システムの効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された固体酸化物形燃料電池の内部構成を示す断面図。
【図2】燃料電池スタックの要部概略構成図で、運転時のガスの流れを示す。
【図3】燃料改質機構の要部概略構成を示す上面図。
【符号の説明】
1 燃料電池(固体酸化物形燃料電池)
2 ハウジング
3 燃料電池スタック
7 発電セル
10 セパレータ
28 熱遮蔽部材
30 燃料改質器
34 水気化器
Claims (1)
- 発電セルとセパレータを交互に積層して燃料電池スタックを構成し、ハウジング内に収納すると共に、運転時に前記燃料電池スタック内へ反応用ガスを供給して発電反応を生じさせる内部改質式の燃料電池において、
前記燃料電池スタックの周辺に燃料改質器を配設し、この燃料改質器の外側である前記ハウジング側に改質用水蒸気を得る水気化器を設けると共に、前記燃料改質器と前記水気化器との間に熱遮蔽部材を設けたことを特徴とする燃料電池。
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