JP4500696B2 - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フォトクロミック眼鏡レンズ等のフォトクロミック性を有する光学物品として好適な積層体に関する。
フォトクロミズムとは、ある化合物に太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所におくと元の色に戻る可逆作用のことであり、様々な用途に応用されている。
例えば、眼鏡レンズの分野においてもフォトクロミズムが応用されており、上記のような性質を有する各種フォトクロミック化合物を添加することによりフォトクロミック性を付与したプラスチックレンズが得られている。フォトクロミック化合物としてはフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等が見出されている。
フォトクロミック性を有するプラスチックレンズの製法としては、
(i)フォトクロミック性を有しないレンズの表面にフォトクロミック化合物を含浸させる方法(含浸法);
(ii)モノマーにフォトクロミック化合物を溶解させそれを重合させることにより直接フォトクロミックレンズを得る方法(練り混み法);
(iii)レンズ表面にフォトクロミック性を有するコーティング層を設ける方法(コーティング法);
が提案されている。
これら方法で製造されるフォトクロミックプラスチックレンズのフォトクロミック特性は、フォトクロミック化合物のマトリックスとなる樹脂(或いは原料モノマー組成物)の性質に密接に関係しており、これを利用してフォトクロミック特性を向上させるためにこれまで多くの検討がなされている。例えば、レンズ基材のガラス転移温度(Tg)を下げ、フォトクロ分子の運動を高分子中でも動きやすくする、又はマトリクス樹脂の原料モノマーとして特定の長鎖のアルキレングリコールジメタクリレートと3個以上のラジカル重合性基を有する多官能メタクリレートとを組み合わせたものを使用して高分子中の自由空間を広げてフォトクロ分子の動きをしやすくする、などの手段を採用して発色濃度や退色速度といったフォトクロミック特性が比較的良好なフォトクロミックレンズを得ることに成功している(特許文献1参照)。
ところが、フォトクロミックプラスチックレンズにおいては、製法や用いるマトリックス樹脂の種類により程度の差はあるが、フォトクロミック化合物がクロメン化合物である場合において、該クロメン化合物の光酸化による劣化に起因する耐久性の点に問題がある。例えば、先行技術1に示される方法においては、レンズ基材のTgを下げて、フォトクロミック化合物の含浸性を向上させているため、レンズ基材の柔軟性があまりにも高くなり、その結果、酸素の透過性が高くなってしまい、クロメン化合物が光酸化により劣化し易くなっている。従って、この方法で得られたフォトクロミックレンズを長期に渡って使用すると、発色前からレンズ基材が黄変着色したり、或いは発色濃度が低下したりしてしまう。このようなフォトクロミック化合物の劣化は、基材となるプラスチックレンズを得るためのモノマー系やフォトクロミック材料を工夫することによりかなり防止することができるが(例えば特許文献2参照)、更に改善の余地がある。また、上記のコーティング法により作製したフォトクロミックレンズにおいては、フォトクロミック化合物を含むコーティング膜の厚みが数十ミクロンと薄いため、含浸法や練り込み法によって得られるフォトクロミックレンズに比べて耐久性は更に低くなる傾向がある。
フォトクロミックレンズの劣化を防止し、その耐久性を向上させるための方法としては、フォトクロミックレンズの表面に有機系の紫外線吸収剤を含有するコーティング膜を設けることが提案されている(特許文献3参照)。ここで、上記紫外線吸収剤としては、具体的にはベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等を使用することが示されている。
米国特許第5739243号明細書 国際公開第01/05854号パンフレット 米国特許第6547390号明細書
しかしながら、上記特許文献3に具体的に示されている紫外線吸収剤を使用してフォトクロミックレンズの表面に紫外線吸収性コーティング膜を設けた場合には、該紫外線吸収剤がフォトクロミック化合物の励起に有効な波長の紫外線をも吸収してしまうため、レンズの発色濃度が低下するという問題があることが明らかとなった。
また、特許文献3では、アルコキシシラン/シリカゲルからなるシリコーンコーティング剤(最も汎用的なコーティング剤である)に有機系紫外線吸収剤を添加し、このようなコーティング剤を用いて紫外線吸収性コーティング膜を形成している。しかるに、このようなコーティング剤を用いる場合には、硬化時における紫外線吸収剤の析出によりコーティング膜が白濁し、レンズの品質が低下してしまうという問題がある。また、白濁の程度が小さい場合においても、長期間使用していると、コーティング膜内部から紫外線吸収剤がブリードアウトしてしまい、フォトクロミック化合物の酸化劣化を防止する効果が徐々に低下し、十分な耐久性向上効果が得られないという問題がある。尚、硬化時における紫外線吸収剤の析出の問題は、紫外線吸収剤の添加量を少なくすれば改善されるが、光学特性の点で実用上問題の無いレベルのレンズを得ようとする場合には紫外線吸収剤の量をかなり少なくする必要があり、結局、フォトクロミック化合物の酸化劣化を十分に抑制することが困難となり、満足し得る耐久性向上効果を得ることができない。
従って、本発明の目的は、発色濃度の低下を生じることなく、フォトクロミック化合物としてクロメン化合物を用いた場合において、その酸化劣化が有効に防止され、フォトクロミック耐久性の高いフォトクロミック製品及びその製造法を提供することにある。
本発明の他の目的は、紫外線吸収剤の析出による白濁が有効に防止され、レンズ等の光学基材の光学特性を低下させることなく、紫外線吸収剤によるクロメン化合物の酸化劣化防止が有効に行われるフォトクロミック製品及びその製造法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、長期にわたって使用された場合にも紫外線吸収剤のブリードアウトが有効に抑制され、安定して紫外線吸収剤によるクロメン化合物の酸化劣化防止が有効に行われ、フォトクロミック耐久性の高いフォトクロミック製品及びその製造法を提供することにある。
上記課題に鑑み、本発明者らは、鋭意検討を行った。その結果、光学基板のフォトクロミック表層部上に、厚さが0.1〜100μmであり、360nmの光線透過率が55%以上であり且つ320nmの光線透過率が%以下である紫外線吸収膜を形成することにより、フォトクロミック化合物であるクロメン化合物の発色濃度の低下を生じることなく、その酸化劣化を有効に防止でき、さらに、該紫外線吸収膜を特定の方法により製造すれば、該紫外線吸収剤の析出による白濁や、該紫外線吸収剤のブリードアウトも有効に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、少なくとも一方の表面にクロメン化合物からなるフォトクロミック化合物が分散した樹脂で構成されたフォトクロミック表層部を有する光学基板と、該光学基板のフォトクロミック表層部上に形成された厚さが0.1〜100μmの紫外線吸収膜とからなり、該紫外線吸収膜は、下記(a)または(b)のコーティング剤の硬化体により形成された、360nmの光線透過率が55%以上であり且つ320nmの光線透過率が%以下の性状を有する膜
(a)320nmの波長の紫外線を選択的に吸収する無機化合物のコロイド粒子を紫外線吸収剤として含有するシリコーン系コーティング剤
(b)320nmの波長の紫外線を選択的に吸収する紫外線吸収剤を含有する有機系コーティング剤
であることを特徴とする積層体(以下、フォトクロミック積層体と呼ぶことがある)が提供される。
本発明のフォトクロミック積層体においては、
(1)前記紫外線吸収膜の560nmの光線透過率が85%以上であること、
(2)前記紫外線吸収膜が、チタンを含有する無機酸化物を紫外線吸収剤として含むコーティング層であること、
が好ましい。
本発明によれば、また、上記のフォトクロミック積層体からなる光学物品が提供される。
上記のフォトクロミック積層体は、320nmの波長の紫外線を選択的に吸収する無機化合物のコロイド粒子を紫外線吸収剤として含有するシリコーン系コーティング剤を、前記光学基板のフォトクロミック表層部上に塗布し、これを硬化させて0.1〜100μmの厚みを有する紫外線吸収膜を形成することによって製造することができる。
また、上記のフォトクロミック積層体は、320nmの波長の紫外線を選択的に吸収する紫外線吸収剤を含有する有機系コーティング剤を、前記光学基板のフォトクロミック表層部上に塗布し、これを硬化させて0.1〜100μmの厚みを有する紫外線吸収膜を形成することによっても製造することができる。
上記何れの製造方法によっても、紫外線吸収膜は、フォトクロミック表層部上に直接形成することができるし、またはプライマー層や本発明の効果を損なわない態様であれば他の機能層を介してフォトクロミック表層部上に形成することもできる。
なお、フォトクロミック積層体に形成される紫外線吸収膜の光線透過特性は、石英ガラス上に同一組成で同一の厚さの紫外線吸収膜を形成し、石英ガラスの反射を差し引いた各波長における光透過率を測定することにより容易に確認することができる。また、フォトクロミック積層体に形成されている紫外線吸収膜の光線透過特性を、該積層体を用いて直接的に測定するには、反射法を用いて、該紫外線吸収膜の特定波長の光吸収を測定すればよい。例えば、分光光度計に、5°正反射測定装置を取り付け、アルミニウムとの相対反射率を測定し、この相対反射率から紫外線吸収膜の吸収を算出することにより、各波長の光線透過率を求めることができる。
また、本明細書において、320nmの波長の紫外線を選択的に吸収するとは、320nmの波長の紫外線の吸収強度を100%とした時に、360nmの波長の紫外線の吸収強度が80%以下、好ましくは60%以下であることを意味する。こうした320nmの波長の選択的な吸収能を有する紫外線吸収剤は、吸収の極大波長が300〜330nmにあるものにおいて達成されることが多い。
本発明のフォトクロミック積層体においては、フォトクロミック表層部上に形成される紫外線吸収膜が、0.1〜100μmの厚みを有していると共に、所定の光線透過特性を有しているため、光学基板の基本的な光学特性を低下させることなく、フォトクロミック耐久性が向上している。即ち、この紫外線吸収膜は、320nmの光線透過率が%以下であるため、フォトクロミック表層部に存在しているクロメン化合物の紫外線による酸化劣化を有効に防止でき、フォトクロミック耐久性を向上させ得るのであるが、かかる紫外線吸収膜は、同時に、360nmでの光線透過率が55%以上に確保されているため、フォトクロミック反応が該紫外線吸収膜によって阻害されず、例えば発色濃度の低下を有効に回避されている。従って、本発明のフォトクロミック積層体は、紫外線吸収膜が形成されているにもかかわらず、光照射してクロメン化合物を発色させたときの発色濃度が、紫外線吸収膜を有しない場合と同等レベルにある。
また、本発明のフォトクロミック積層体は、先に述べたように、320nmの紫外線を選択的に吸収する紫外線吸収剤を含むシリコーン系コーティング剤もしくは有機系コーティング剤をフォトクロミック表層部に塗布し硬化せしめることにより製造されるが、このような方法で紫外線吸収膜を形成することにより、紫外線吸収剤の析出による白濁や紫外線吸収剤のブリードアウトによる紫外線吸収膜の性能低下(酸化防止効果の低下)を有効に防止することができる。即ち、紫外線吸収剤の析出やブリードアウトは、前述したように、シリコーン系コーティング剤に有機系の紫外線吸収剤を添加した場合に発生するものである。従って、本発明にしたがい、チタン含有の無機酸化物などの無機化合物のコロイド粒子が紫外線吸収剤として添加されたシリコーン系コーティング剤や、紫外線吸収剤が添加された有機系コーティング剤(炭化水素系重合性単量体を硬化性成分とするようなコーティング剤)を用いて紫外線吸収膜を形成した場合には、紫外線吸収剤の析出による白濁は発生せず、可視光の優れた光線透過率が良好に保持され(例えば560nmの光線透過率は85%以上である)、且つ紫外線吸収剤のブリードアウトも有効に抑制され、紫外線吸収膜の性能低下を回避することができるのである
また、本発明においては、前記シリコーン系コーティング剤を用いて形成された紫外線吸収膜は、酸素バリアー性にも優れているため、紫外線によるクロメン化合物の酸化劣化が著しく高く、最も好適である。
本発明のフォトクロミック積層体は、フォトクロミックプラスチックレンズ等のフォトクロミック光学物品として好適に使用できる。
本発明のフォトクロミック積層体は、光学基板に形成されているフォトクロミック表層部上に、特定の厚みと特定の光線透過性とを有する紫外線吸収膜を形成させたものである。
[光学基板]
光学基板は、表裏1対の主表面を有する透明な板状体を意味し、該板状体は湾曲していてもよく、その厚さも必ずしも一定である必要は無い。また、この光学基板の少なくとも一方の表面には、フォトクロミック化合物が分散した樹脂で構成されるフォトクロミック表層部が形成されており、このフォトクロミック表層部の存在により、所定のフォトクロミック反応による色の可逆変化を有するものである。このようなフォトクロミック表層部は、用途に応じて、所定形状の透明板状態の全表面に形成されていてもよいし、一方の表面の全面に形成されていてもよいし、或いは一方の表面に部分的に形成されていてもよい。さらには、光学基材の全体が、フォトクロミック化合物が分散した樹脂で形成され、表面のみならず、内部においてもフォトクロミック反応が生じるように形成されていてもよい。
本発明のフォトクロミック積層体における光学基板として好適に使用できるものとしては、含浸法、練り込み法或いはコーティング法で製造されるフォトクロミックプラスチックレンズ;ガラス等の透明基材にコーティング法と同様にしてフォトクロミック性を付与したフォトクロミック光学部品が例示される。
含浸法で製造されるフォトクロミックプラスチックレンズとしては、例えば米国特許第5739243号明細書(前記特許文献1)に開示されているものが好適に使用できる。
また、練り込み法で製造されるフォトクロミックプラスチックレンズとしては、国際公開第01/05854号パンフレット(前記特許文献2)に開示されている硬化体が好適に使用できる。この硬化体は、(A)Lスケールロックウェル硬度が40以下である重合性単量体、(B)Lスケールロックウェル硬度が60以上である3官能以上の多官能重合性単量体、(C)Lスケールロックウェル硬度が60以上である2官能性重合性単量体、及びフォトクロミック化合物を含んでなる硬化性組成物を硬化することにより得られ、60以上の硬度を有するものである。尚、上記の重合性単量体のLスケールロックウェル硬度とは、この単量体を単独重合して得られる重合体の硬度を意味する。
コーティング法で製造されるフォトクロミックプラスチックレンズ或いはフォトクロミック光学部品としては、国際公開第03/011967号パンフレットに開示されている硬化性組成物からなるコーティング剤を用いてフォトクロミックコート層(フォトクロミック表層部)を形成したものが好適である。尚、この硬化性組成物は、シラノール基または加水分解によりシラノール基を生成する基を有するラジカル重合性単量体を含有するラジカル重合性単量体と、アミン化合物と、フォトクロミック化合物とを、夫々特定量含有してなるものであり、アミン化合物が配合されていない硬化性組成物もコーティング剤として好適に使用できる。
フォトクロミック化合物としては、上記光学基板の製造に使用される硬化性組成物において使用可能な公知のクロメン化合物が制限無く使用することができる。クロメン化合物は、フォトクロミック化合物の中でも、フォトクロミック特性の耐久性が高く、さらに発色濃度および退色速度が良好である。また、本発明における紫外線吸収膜の選定による発色濃度の維持の効果が顕著に発揮されることからも、好適に使用される。
上記のクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号明細書、WO96/14596号明細書などに記載されているフォトクロミック化合物のうちの該化合物が制限なく使用できる。また、特開2001-114775号、特開2001-031670号、特開2001-011067号、特開2001-011066号、特開2000-347346号、特開2000-344762号、特開2000-344761号、特開2000-327676号、特開2000-327675号、特開2000-256347号、特開2000-229976号、特開2000-229975号、特開2000-229974号、特開2000-229973号、特開2000-229972号、特開2000-219687号、特開2000-219686号、特開2000-219685号、特開平11-322739号、特開平11-286484号、特開平11-279171号、特開平10-298176号、特開平09-218301号、特開平09-124645号、特開平08-295690号、特開平08-176139号、特開平08-157467号等に記載されたフォトクロミック化合物の内のうちの該化合物に該当するものも使用することができる。
このようなクロメン化合物の具体例としては、国際公開01/60811号パンフレット、米国特許6340765号、米国特許6525194号記載の化合物を挙げることができるが、最も好適なクロメン化合物としては、次の一般式(1)で示されるクロメン化合物を例示できる。
Figure 0004500696
一般式(1)において、下記式(2):
Figure 0004500696
で示される基は、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは非置換の不飽和複素環基であり、
、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アラルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、置換もしくは非置換のアリール基、ハロゲン原子、アラルキル基、ヒドロキシル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子とピラン環もしくは前記式(2)で示される基の環とが結合する置換もしくは非置換の複素環基、または該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基であり、
oは0〜6の整数であり、
およびRは、それぞれ独立に、下記式(3)または下記式(4)で表される基、或いは、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、またはアルキル基である。また、RとRとは一緒になって、脂肪族炭化水素環もしくは芳香族炭化水素環を構成していてもよい。
Figure 0004500696
(式中、Rは、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、Rは、水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子であり、pは1〜3の整数である。)
Figure 0004500696
(式中、Rは、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、p’は1〜3の整数である。)
なお、上記式(3)、上記式(4)または上述のR、およびRにおける置換アリール基または置換ヘテロアリール基が有する置換基としては、R〜Rと同義の基を挙げることができる。
上記式(1)で示されるクロメン化合物のなかでも、発色濃度、退色速度等のフォトクロミック特性および耐久性の点から、次の式(5)〜(10)で示される化合物が特に好適である。
Figure 0004500696
式(5)において、
、R10は、それぞれ、前記式(1)におけるRおよびRと同義であり、
11、R12は、前記式(1)におけるRと同義であり、
qおよびq’はそれぞれ1〜2の整数である。
Figure 0004500696
式(6)において、
13、R14は、前記式(1)におけるR11およびR12と同義であり、
15、R16は、前記式(1)におけるRと同義であり、
Lは下記式、
Figure 0004500696
(上記式中、Pは、酸素原子または硫黄原子であり、R17は、炭素数1〜6のアルキレン基であり、s、s’およびs”は、いずれも1〜4の整数である。)で示されるいずれかの基であり、
rおよびr’は各々独立に1または2である。
Figure 0004500696
式(7)において、
18、R19は、前記式(1)におけるRおよびRと同義であり、
20、R21およびR22は、前記式(1)におけるRと同義であり、
vは1又は2である。
Figure 0004500696
式(8)において、
23、R24は、前記式(1)におけるRおよびRと同義であり、
25およびR26は、前記式(1)におけるRと同義であり、
wおよびw’は各々独立に1または2である。
Figure 0004500696
式(9)において、
27、R28は、前記式(1)におけるRおよびRと同義であり、
29、R30、R31およびR32は、前記式(1)におけるRと同義であり、
xおよびx’は、各々独立に1または2である。
Figure 0004500696
式(10)において、
33、R34は、前記式(1)におけるRおよびRと同義であり、
35、R36およびR37は、前記式(1)におけるRと同義であり、
環Qは、脂肪族炭化水素環であり、
y、y’およびy”は、各々独立に1または2である。
本発明においては、上記式(5)〜(10)で示されるクロメン化合物の中でも、下記構造のクロメン化合物が特に好適に使用される。
Figure 0004500696
上述したクロメン化合物は適切な発色色調を発現させるため、複数の種類のものを適宜混合して使用することができる。
本発明で用いる光学基板は、上述したクロメン化合物が分散されている樹脂組成物によりフォトクロミック表層部が形成されているが、かかる樹脂組成物におけるクロメン化合物の濃度は、良好な発色濃度が得られるという観点から0.002〜20重量%の範囲であるのが好適である。
また、練り込み法により製造された光学基板は、光学基板の全体が上記の樹脂組成物により形成されているが(即ち、内部もフォトクロミック表層部と同じ組成を有している)、このような練り込み型光学基板では、一般に厚みが2mm以上のフォトクロミックプラスチックレンズであるとき、初期着色(光未照射状態での着色を言う)が低く良好な発色濃度が実現されるという観点から、前記樹脂組成物におけるクロメン化合物の含有量は、0.01〜1重量%の範囲にあることが特に好ましい。また、コーティング法や含浸法によりフォトクロミック表層部が形成される光学基板においては、特にフォトクロミック表層部の厚みが10〜100μmであるとき、上記と同様の観点から、フォトクロミック表層部におけるクロメン化合物の含有量は0.1〜15重量%の範囲であることが好ましく、またフォトクロミック表層部の厚みが10〜40μmである場合には、該表層部におけるクロメン化合物の含有量は0.1〜5重量%であるのが特に好ましい。
本発明のフォトクロミック積層体においては、コーティング法或いは含浸法によりフォトクロミック表層部が形成されていることが好ましい。クロメン化合物の酸化劣化の原因は、酸素及び有害な紫外線であるが、特にクロメン化合物が分散している部分の厚みが薄いほど、酸素の拡散が大きくなり酸化劣化を受け易くなる。即ち、コーティング法等によりフォトクロミック表層部が形成されている光学基板の方が、練り込み法による光学基板によりもクロメン化合物の酸化劣化を生じ易いという性質を有している。本発明は、後述する特定の光線透過特性を有する紫外線吸収膜を設けることにより、このようなクロメン化合物の酸化劣化を防止するため、コーティング法等による光学基板に本発明を適用した場合に、クロメン化合物の酸化劣化を防止してフォトクロミック耐久性を向上させるという本発明の利点が極めて大きいのである。
また、フォトクロミック化合物が分散された樹脂(以下、フォトクロミック樹脂組成物と呼ぶ)には、その黄変防止や成形性の向上、さらにはフォトクロミック化合物を添加時のフォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上等のために、それ自体公知の各種の添加剤が含まれていてもよい。
このような添加剤として、界面活性剤を例示することができる。界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、マトリックスとなる樹脂成分を形成するラジカル重合性単量体への溶解性からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン系界面活性剤を具体的に挙げると、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテルシリコーン鎖(ポリアルキルシロキサンユニット)を疎水基とする界面活性剤、パーフルオロアルキル基含有のエステル系オリゴマーやパーフルオロアルキル基含有アルキレンオキサイド付加物、フッ素系脂肪族系ポリマーエステル等を挙げることができる。上述した界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。また、フォトクロミック樹脂組成物中の界面活性剤の含有量は、一般に0.001〜20重量%範囲が好ましい。
また、上記の添加剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤やイオウ系酸化防止剤などの各種酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤などの各種ラジカル捕捉剤、ヒンダードアミン系光安定剤などの各種光安定剤、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物などの紫外線吸収剤等を、それぞれ、単独または2種以上の組み合わせで使用することもできる。この種の添加剤も、一般に、フォトクロミック樹脂組成物中に、それぞれ、0.001〜20重量%の量で含有していてもよい。これらの添加剤の中では、特にヒンダードアミン光安定剤がフォトクロミック化合物の劣化防止効果が高いという点で好適であり、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、旭電化工業(株)製アデカスタブLA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−77、LA−82等のヒンダードアミン類が好適に使用される。このようなヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、0.1〜10重量%、特に1〜10重量部の範囲が最も好適である。
また、上述した各種の添加剤以外にも、フォトクロミック特性を損なわない範囲で、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤などが、フォトクロミック樹脂組成物中に添加されていてもよい。
[紫外線吸収膜]
本発明のフォトクロミック積層体において、上述した光学基板のフォトクロミック表層部上に形成される紫外線吸収膜は、0.1〜100μmの厚みを有するものでなければならない。該膜の厚さが0.1μm未満のときは十分な耐久性向上硬化が得られず、100μmを超えるときは均一な厚さの膜を得るのが困難となり、厚みのばらつきなどにより積層体の光学特性が低下してしまう。また、この紫外線吸収膜は、後述するように、コーティング法によって形成されるが膜の耐久性、光学特性等の点で、その厚みが0.5〜30μmの範囲にあることが好ましい
また、このような紫外線吸収膜は、360nmの光線透過率が55%以上、好ましくは60%以上であり、同時に、320nmの光線透過率が%以下、好ましくは3%以下にあることも重要である。即ち、前記したクロメン化合物の酸化劣化は320nm付近の短波長の光により強く引き起こされ、他方、クロメン化合物の励起は360nm付近の波長の光により良好に進行するため、上記のような光線透過特性を有する紫外線吸収膜を設けることにより、発色濃度の低下を招くことなく、クロメン化合物の酸化劣化を有効に防止し、フォトクロミックの耐久性を向上させることができる。例えば、紫外線吸収膜の360nmでの光線透過率が上記範囲よりも低いときには、クロメン化合物の発色濃度の低下を生じてしまい、また320nmの光線透過率が上記範囲よりも高い場合には、クロメン化合物の酸化劣化を有効に抑制することができず。十分なフォトクロミック耐久性向上が得られない。即ち、本発明では、紫外線吸収膜が上記のような光線透過特性を有しているため、クロメン化合物の耐久性向上と発色濃度とを両立することが可能となるのである。
また、紫外線吸収膜中には、目視で確認できる不透明な異物(例えば紫外線吸収剤の析出物)が存在せず、透明性に優れていることが好ましい。従って、膜界面の反射があるため膜の屈折率により好適範囲は異なるが、一般に、この紫外線吸収膜の560nmの光線透過率は85%以上であることが好ましく、より好適には90%以上であることが望ましい。
[紫外線吸収膜の形成]
上述したフォトクロミック積層体は、320nmの波長の紫外線を選択的に吸収する紫外線吸収剤を使用し、紫外線吸収剤の使用量に応じて、前述した膜厚の範囲内において所定の光線特性を有するような膜厚を選定して、紫外線吸収膜を光学基板のフォトクロミック表層部上に形成することにより製造される。このような製造法において採用される紫外線吸収膜の形成方法としては、特に、紫外線吸収剤の析出がなく、且つ560nmの光線透過率が85%以上の膜が得られ、さらに、該紫外線吸収剤のブリードアウトも生じ難い膜が得られるという点で、紫外線吸収剤を含有するシリコーン系コーティング剤を用いてのコーティング法による方法(a)、紫外線吸収剤を含有する有機系コーティング剤を用いてのコーティング法による方法(b)が採用される。
コーティングによる方法(a):
この方法では、紫外線吸収剤を含有するシリコーン系コーティング剤を、フォトクロミック表層部に塗布し、塗布膜を硬化させることにより、紫外線吸収膜が形成される。
紫外線吸収剤としては、320nmの波長の紫外線を選択的に吸収する無機化合物のコロイド粒子が使用される。このような無機化合物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン等の金属酸化物、及びこれら金属酸化物を含む複合酸化物を挙げることができる。これらの中でも着色を有さない点から、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムおよびこれら金属酸化物を含む複合酸化物が好ましく、酸化チタンを含む複合金属酸化物が最も好ましい。具体的には、酸化チタン/酸化ジルコニウム/酸化スズ系複合金属酸化物、酸化チタン/酸化ジルコニウム/酸化珪素系複合金属酸化物が最も好ましい。複合金属酸化物においては、前記例示したような320nmの波長を選択的に吸収する金属酸化物の含有量が、30重量%以上、より好適には50重量%以上であるのが好ましく、特に、酸化チタンの含有量がこれらの量以上であるのが好ましい。このような金属酸化物又は複合酸化物のコロイド粒子は、所謂ゾルゲル法により調製可能であり、また、このようなコロイド粒子を含むゾルも工業的に又は試薬として入手可能である点で好適に使用される。
尚、上記の無機化合物のコロイド粒子は、320nmの波長の紫外線を選択的に吸収し得る限りにおいて、他の無機化合物成分を粒子中に少量含有していても差し支えない。
このような紫外線吸収剤のシリコーン系コーティング剤中の含有量は、得られる紫外線吸収膜の360nmの光線透過率及び320nmの光線透過率が前述した範囲となるように適宜決定されるが、一般には、紫外線吸収膜中に15〜90重量%、より好適には15〜70重量%の範囲で含有させるのが好ましい。さらに、紫外線吸収剤を金属酸化物として用いる場合には、その含有量は15〜50重量%であることが最も好ましく、これら金属酸化物を含む複合酸化物として用いる場合には、その含有量は25〜70重量%であるのが最も好ましい。
尚、かかる紫外線吸収膜の厚みは前述した範囲(0.1〜100μm)に設定されるが、かかる範囲において、紫外線吸収剤の量に応じて膜厚を調整することが好ましく、例えば紫外線吸収剤量が、少ない場合には膜厚を厚くし、多い場合には膜厚を薄くすることが好ましい。膜中の紫外線吸収剤量に比して、必要以上に膜厚が厚いと、紫外線吸収膜にクラック等が生じるおそれがあるからである。例えば、紫外線吸収膜中の紫外線吸収剤量(濃度)が15〜70重量%の場合には、膜厚は0.5〜30μmの範囲、より好ましくは1〜10μmの範囲にあるのが好適である。
また、かかる方法(a)において用いるシリコーン系コーティング剤は、加水分解可能な有機ケイ素化合物またはその加水分解物を硬化成分として含むものである。加水分解可能な有機ケイ素化合物またはその加水分解物としては、一般にシランカップリング剤として使用されているものが好適に使用される。このような有機ケイ素化合物の具体例としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアセトキシシラン等を例示することができる。このような有機ケイ素化合物またはその加水分解物からなる硬化成分は、紫外線吸収膜(硬化膜)中の含有量が10〜25重量%となる程度の量で使用される。
また、上記のシリコーン系コーティング剤には、前述した紫外線吸収剤以外に、他の添加剤(例えば、酸、レベリング剤、硬化触媒など)や有機溶媒を含有していてもよい。
酸は、硬化成分である有機ケイ素化合物の加水分解及び縮合を促進させるために使用されるものであり、塩酸等の鉱酸が好適に使用される。このような酸は、一般に、有機ケイ素化合物1モルに対して1〜10ミリモルの量で使用される。
有機溶媒は、コーティング剤の粘度を調整して塗布性を高めるために使用され、或いは前述したコロイド粒子の分散媒(ゾル)として使用されるものであり、メタノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジオキサンが好適に使用できる。このような有機溶媒のコーティング剤中含量は、一般に、40〜90重量%である。
レベリング剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができる。このようなレベリング剤の含有量は、コーティング剤当り0.01〜3質量%程度である。
また、硬化触媒としては、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸類、Cu(II)、Zn(II)、Co(II)、Ni(II)、
Be(II)、Ce(III)、Ta(III)、Ti(III)、Mn(III)、La(III)、Cr(III)、V(III)、Co(III)、Fe(III)、Al(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、V(IV)等を中心原子とするアセチルアセトナート;アミン、グリシン等のアミノ酸;ルイス酸;有機金属塩;等が好適に使用される。これらの硬化触媒は、固形分当り、0.1〜3重量%の量でコーティング剤中に添加される。
尚、上述したシリコーン系コーティング剤中には、得られる紫外線吸収膜の光線透過特性を損なわない範囲で、コロイダルシリカ等の無機酸化物のコロイド粒子を補強剤等として含有していてもよい。
コーティングによる方法(b):
この方法では、紫外線吸収剤を含有する有機系コーティング剤を用いてのコーティングにより、前述した紫外線吸収膜が形成される。
この有機系コーティング剤に配合される紫外線吸収剤も、320nmの波長の紫外線を選択的に吸収するものであり、このような光線透過特性を有している限り、例えば前記方法(a)で使用される無機化合物(特に無機酸化物)などの無機系の紫外線吸収剤を使用することもできるし、有機系の紫外線吸収剤を使用することもできる。しかし、膜形成時における紫外線吸収剤の析出による白濁を防止するという点で、有機系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。このような有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系、ヒドロキシベンゾエート系、ベンゾオキサジノン系およびトリアジン系等に属する化合物のうち、320nmの波長の紫外線を選択的に吸収するという条件を満足し、且つ前述した光線透過特性を有する膜を形成可能なものが単独或いは2種以上の組み合わせで使用されるが、特に、320nmの短波長紫外域に大きな極大吸収を有し、且つフォトクロミック化合物の発色濃度を低下させ難いという点で、シアノアクリレート系、サリチル酸エステル系及びヒドロキシベンゾエート系のものが好適である。ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系の有機紫外線吸収剤の多くのものは、上記要件を満たさないものが多く、一般には単独で使用することができない。
本発明において、特に好適に使用できる有機系紫外線吸収剤の代表例としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2‘−エチルヘキシルー2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;フェニルサルチレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシベンゾエート等のヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
これらの紫外線吸収剤の含有量も、前記した前記(a)の方法と同様に、硬化膜の光透過特性(紫外線吸収特性)が、前述した条件を満足するように、調整され、例えば有機系コーティング剤の固形分当り0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲に設定されるが、その使用量に応じて膜厚を調整することが好ましく、例えば該紫外線吸収剤の濃度が0.1〜5重量%の場合には、形成される紫外線吸収膜の膜厚は0.5〜30μmの範囲が好適である。
また、上記のような紫外線吸収剤が配合される有機系コーティング剤は、透明な硬化体を与える炭化水素系の重合性単量体(主骨格が炭化水素により形成されている重合性単量体であり、部分的であれば酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を含んでいても良い)を硬化成分として含むものである。
このような炭化水素系の重合性単量体成分としては、単官能あるいは多官能(メタ)アクリレート化合物、単官能あるいは多官能ビニル化合物、単官能あるいは多官能エポキシ化合物、多官能ウレタン(ポリイソシアネート)化合物、単官能あるいは多官能ヒドロキシ化合物等、透明性硬化体を与えることが知られている公知の重合性単量体(モノマー)及びこれらモノマーの混合物が特に制限無く使用できる。好適に使用できるモノマーを具体的に例示すると、以下のモノマーを挙げることができる。
(1)単官能あるいは多官能(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、グリシジルメタクリレート、
平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンダイマー、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等。
(2)単官能あるいは多官能エポキシモノマー
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスルトールトリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等。
(3)多官能ウレタン(ポリイソシアネート)化合物
トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオホスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物;トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジエソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシナネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物と、活性水素を有する化合物とを、イソシアネート基が残るような仕込み比で種々の方法で結合させたポリイソシアネート化合物またはポリイソシアネートオリゴマー化合物。
(4)単官能あるいは多官能ヒドロキシ化合物
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレングリコール類;ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)などのポリ(アルキレンアジペート)類;ポリ−ε−カプロラクトン、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリールなどのポリカプロラクトン類;ポリ(1,4−ブタンジエン)グリコール、ポリ(1,2−ブタンジエン)グリコールなどのポリブタジエングリコール類;ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)などのポリ(アルキレンカーボネート)類;ポリエステルポリオール類;1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどの3個以上のヒドロキシ基を含有するポリオール類;シリコーンポリオール等。
また、上述した有機系コーティング剤は、硬化触媒を含有しているのが好適である。硬化触媒としては、ラジカル重合開始剤、光重合開始剤等が、用いる重合性単量体の反応性に応じて適宜使用される。
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物などを例示することができる。このようなラジカル重合開始剤の使用量は、その種類、重合条件、用いる重合性単量体成分の種類や組成によって異なり、一概に限定できないが、一般には、全ラジカル重合性単量体100重量部当り、0.01〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アエトフェノン4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、アシルフォスフィンオキサイド、ジアシルフォスフィンオキサイド等を例示することができる。このような光重合開始剤は、一般に、全ラジカル重合性単量体100重量部当り、0.001〜5重量部の範囲で使用される。
また、上記以外の硬化触媒として、各種エポキシ樹脂硬化剤や各種有機ケイ素樹脂硬化剤等を使用することもできる。このような硬化剤の具体例としては、各種の有機酸及びそれらの酸無水物;三級アミン化合物などの窒素含有有機化合物;有機錫化合物、有機亜鉛化合物などの各種金属錯化合物あるいは金属アルコキシド;アルカリ金属の有機カルボン酸塩、炭酸塩等の各種塩;などが挙げられる。その際の添加量としては、重合性単量体の合計重量100重量部当り0.1〜5重量部、特に0.5〜2重量部であるのが好適である。
更に有機系コーティング剤は、必要に応じて希釈用の有機溶媒を含有していてもよいし、紫外線吸収剤以外の安定剤等を含んでいてもよい。有機溶媒としてはモノマー成分及び各種添加剤を溶解するものであれば特に限定されず、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチル等が使用できる。また、紫外線吸収剤以外の安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、含硫黄系2次酸化防止剤、含リン系2次酸化防止剤、ニッケル系一重項酸素消光剤等を挙げることができる。
上述したコーティングによる紫外線吸収膜の形成方法(a)及び(b)において、コーティング剤を光学基板の所定部位に塗布する方法は特に限定されず、スピンコート、ディッピング、スピンディッピング等により塗布することができる。最終的に得られる紫外線吸収膜の厚さは、スピンコートにおける回転数、コーティング剤の粘度等を調整することにより制御することができる。
なお、これらコーティング剤の塗布に先立ち、紫外線吸収膜と光学基板との密着性を向上させるために、光学基板表面を前処理するのが好適である。前処理としては、塩基性水溶液又は酸性水溶液による化学的処理、研磨剤を用いた研磨処理、大気圧プラズマ及び低圧プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、またはUVオゾン処理等を挙げることができる。また、前処理によりプライマー層を形成し、プライマー層上に紫外線吸収膜を形成させることも密着性の観点から好ましい。プライマー層の形成は、必要に応じて上記のような表面処理を行なった後、ウレタン系プライマーに代表される各種プライマー、好適には湿気硬化型のウレタン系プライマーを光学基板のフォトクロミック表層部に塗布し硬化させればよい。このようなプライマー層の厚みは、通常、2〜10μm程度である。
また、光学基板表面の所定の部位に塗布されたコーティング層は、コーティング剤の種類に応じて硬化され、目的とする紫外線吸収膜を形成する。例えば、シリコーン系コーティング剤を用いた場合には(前記方法(a))、加熱縮合によりコーティング層を硬化させ、紫外線吸収膜を形成する。また、有機系コーティング剤を用いる場合には(前記方法(b))、熱重合及び/又は光重合によりコーティング層を硬化させ、紫外線吸収膜が形成する。このとき、熱重合させる場合は、一般的には40〜200℃の温度で5分〜30時間加熱すればよく、光重合させるときは、窒素等の不活性雰囲気にて、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、無電極放電光源DまたはVバルブ等を光源とし、10〜200mW/cmの光線強度で1秒〜30分、光照射すればよい。
なお、これらコーティング剤を用いる場合、光学基板にコーティング剤を直接塗布するのではなく、これらコーティング剤を用いて別途に紫外線吸収膜を作製し、得られた膜を、接着剤等を用いて、光学基板表面の所定部位に接着することもできる
本発明においては、紫外線吸収膜を形成する(a)〜()の方法の中でも、(a)の方法が、得られる紫外線吸収膜(硬化膜)が硬く、緻密なことに起因して酸素バリアー性が高く、320nm付近の有害な紫外線を遮断する効果と相乗的に作用して、クロメン化合物の酸化劣化防止効果が極めて高く、フォトクロミック耐久性向上効果が極めて高いという点で有利である。
上記紫外線吸収膜は、通常は単層構造として設けるが、前記0.1〜1μm、好適には0.5〜30μmの厚さの範囲内であれば、少数層の複層構造として設けても良い。簡便に成膜でき手間とコストがかからず、また、クラックなどの外観不良も生じ難いという観点から、単層構造が最も好ましく、複層構造とする場合も3層以内とするのが好ましい。なお、このような薄く、積層されていても少数層である紫外線吸収膜は、レンズの反射防止処理で行われる反射防止膜、すなわち、屈折率の異なる金属酸化物を蒸着法等により交互に5層〜7層積層した膜とは明確に異なるものである。
本発明のフォトクロミック積層体は、そのままフォトクロミック光学物品として使用することが可能であるが、紫外線吸収膜が前記(a)の方法で形成されたものでない場合には、紫外線吸収膜をハードコート材で被覆することが好ましい。ハードコート膜で被覆することにより、表面の耐擦傷性を向上させることができる。当該ハードコート膜としては公知のものがなんら制限なく使用でき、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム等の酸化物のゾルを主成分とするハードコート液や、有機高分子体を主成分とするハードコート液を用いて形成できる。さらに、本発明のフォトクロミック積層体の表面もしくは更にハードコート材で被覆した表面にSiO等の金属酸化物から成る薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工及び2次処理を施すことも可能である。
このような本発明のフォトクロミック積層体においては、紫外線を含む光を照射してそのフォトクロミック性を発現させる用途に制限なく使用できるが、例えば320nmの有害な光を多く含む太陽光や水銀灯を照射する用途において好適に使用される。
実施例
以下、本発明の優れた効果を実施例及び比較例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における光学基板の作製に、以下のフォトクロミック化合物を用いた。
フォトクロミック化合物A:
下記式で表される構造を有する化合物。
Figure 0004500696
フォトクロミック化合物B:
下記式で表される構造を有する化合物。
Figure 0004500696
フォトクロミック化合物C:
下記式で表される化合物。
Figure 0004500696
(フォトクロミック表層部を有する光学基板の製造)
レンズ基板として、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを重合させることにより得られたプラスチックレンズ(屈折率=1.50)を用意した。
湿気硬化型プライマー(竹林化学工業株式会社製プライマーPFR4)と酢酸エチルを重量比で9:1となるように調合し、窒素雰囲気下で均一になるまで充分に撹拌してプライマーコート液を調製した。上記のレンズ基板の表面をアセトンで十分に脱脂した後、スピンコータ(MIKASA製スピンコータ1H−DX2)を用いて、上記のプライマーコート液をレンズ基板表面にスピンコートし、室温にて20分で硬化してレンズ基板の表面にプライマー層を有するレンズ基板を作製した。
また、下記配合;
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン
50重量部
ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量532) 15重量部
トリメチロールプロパントリメタクリレート 15重量部
ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート
(ダイセルユーシービー社、EB−1830) 10重量部
グリシジルメタクリレート 10重量部
により、ラジカル重合性単量体の混合物を調製した。次いで、このラジカル重合性単量体混合物100重量部に、フォトクロミック化合物Aを2.35重量部、フォトクロミック化合物Bを0.2重量部及びフォトクロミック化合物Cを
1.6重量部加え、十分に混合した後に、さらに、
重合開始剤 0.5重量部
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート
(安定剤) 5重量部
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
(シランカップリング剤) 7重量部
を添加し、十分に混合することにより、フォトクロミック重合性組成物(フォトクロミックコート液)を調製した。尚、上記の重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドの混合物(重量比:3対1)を用いた。
次いで、上記のフォトクロミックコート液の約2gを、前述のスピンコータを用いて、レンズ基板の表面にスピンコートし、405nmの光線強度120mW/cmのメタルハライドランプを用いて、窒素ガス雰囲気中で3分間光照射することにより、レンズ基板表面のフォトクロミックコート液の塗膜を硬化させ、さらに110℃の恒温器にて1時間加熱処理を行うことにより、フォトクロミックコート層(フォトクロミック表層部)を有する光学基板(レンズ基板)を得た。なお、得られたフォトクロミックコート層の膜厚は40μmであった。
実施例1
上記で作製された光学基板のフォトクロミックコート層上に、以下のようにして紫外線吸収膜を形成してフォトクロミック積層体を得た。
先ず、下記処方:
γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン(GTS) 9.15g
t−ブチルアルコール(TBA) 5.6g
ジアセトンアルコール(DAA) 2.8g
レベリング剤(日本ユニカー株式会社製「L7001」) 0.025g
にしたがい、各成分を混合後、0.05N塩酸水溶液2.09gを撹拌しながら滴下し、4時間撹拌した。
上記の混合液に、
アルミニウムアセチルアセトナート(Al(AcAc)) 0.094g
イソプロピルアルコール(IPA) 2.8g
エチレングリコールイソプロピルエーテル(EGiPE) 2.8g
を加え、30分撹拌した。この液に、紫外線吸収剤として、
メタノール分散酸化チタン/酸化ジルコニウム/酸化珪素複合金属酸化物微粒子ゾル(重量比:65/5/30、固形分濃度30重量%)25.07g
を添加し、室温にて一晩撹拌し、酸化物微粒子(紫外線吸収剤)を含む溶液を調製し、次いでこの溶液を0.5ミクロンのフィルターで濾過し、紫外線吸収剤を含むシリコーン系コーティング剤を調製した。このシリコーン系コーティング剤の組成を表1に示した。
このようにして調製されたシリコーン系コーティング剤4gを、先に作成した光学基板のフォトクロミックコート層の上に、前述と同様のスピンコータを用いて塗布した。スピンコート条件は650rpm、15秒とした。
スピンコート後、70℃で15分予備乾燥した後、120℃で1時間本硬化を行い、2μmの厚みの紫外線吸収膜を有するフォトクロミック積層体を得た。
このフォトクロミック積層体の紫外線吸収特性及びフォトクロミック特性を以下の方法で評価した。
紫外線吸収特性の評価:
上記で用いた紫外線吸収剤を含むシリコーン系コーティング剤を、石英ガラス上に、上記と全く同じ条件でスピンコートし且つ硬化させて、同一膜厚の硬化膜(紫外線吸収膜)を作製した。この硬化膜の320nm,360nm及び560nmの光線透過率を測定することで、上記のフォトクロミック積層体における紫外線吸収膜の紫外線吸収特性を評価した。560nmの光線透過率は90%で、目視で濁りは無く透明であった。また、360nmの光線透過率は74%であり、320nmの光線透過率は1%であった。この結果を表2に示した。
フォトクロミック特性の評価:
得られたフォトクロミック積層体のフォトクロミック特性は、以下の方法で発色濃度、耐久性、黄色さを測定することで評価した。その結果は表3に示した。
(1)発色濃度A(Abs.);
得られたフォトクロミック積層体に、浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を使用し、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃で120秒間光照射して発色させた。
尚、積層体表面でのビーム強度は365nm=2.4mW/cm,245nm=24μW/cmとした。このときの最大吸収波長の吸光度を(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求め、発色濃度を下記の方法で算出した。
120秒間光照射した後の、590nmでの吸光度{ε(120)}と、光照射していない状態での硬化体の該波長における吸光度{ε(0)}との差{A=ε(120)−ε(0)}を求めこれを発色濃度とした。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
(2)耐久性;
光照射による発色の耐久性は、次の劣化促進試験により評価した。
すなわち、得られたフォトクロミック積層体を、スガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により50時間促進劣化させた。この促進劣化前後での発色濃度を測定し(A:試験前の発色濃度、A50:試験後の発色濃度)を測定し、{(A50/A)×100}の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
(3)黄色さ(YI);
フォトクロミック積層体の発色前の黄色さを、上記の劣化促進試験前後で、スガ試験機(株)製の色差計(SM−4)を用いて測定し、促進試験前の黄色さを“YI0”、試験後の黄色さを“YI50”として示した。また、劣化試験前後での黄変度(△YI=YI50−YI0)も求めた。なおYI値が高いほど、黄色さが強く、△YI値が大きいほど、劣化試験前後での黄変度が大きいことを示す。
実施例2および3
紫外線吸収膜の形成に用いたシリコーンコーティング剤の組成を表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にしてフォトクロミック積層体を製造し、紫外線吸収特性及びフォトクロミック特性をの評価を行い、その結果を表2及び3に示した。
実施例4
紫外線吸収膜を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてフォトクロミック積層体を作製した。
紫外線吸収膜形成用のコート液として、SCL International社製ハードコート液(製品名:160−74NT)を用意した。このコート液は、酸化チタン含有のハードコート液で、固形分濃度は約33重量%であり、ハードコート膜の屈折率はカタログ値で1.60である。このコート液4gを、先に作製した光学基板のフォトクロミックコート層の上に、前述と同様のスピンコータを用いて塗布した。スピンコート条件は600rpm、10秒とした。スピンコート後、70℃で15分予備乾燥した後、120℃で1時間本硬化を行い、フォトクロミック積層体を得た。なお、このとき得られた紫外線吸収膜の厚みは4.8μmであった。
このフォトクロミック積層体の紫外線吸収特性及びフォトクロミック特性を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2、表3に示した。
実施例5
紫外線吸収膜を、以下のように有機系コーティング剤を用いて形成した以外は、実施例1と同様にしてフォトクロミック積層体を作製した。
2−ヒドロキシエチルメタクリレート90重量部とウレタンオリゴマーヘキサアクリレート10重量部とを混合し、ラジカル重合性単量体の混合物を調製した。次いで、下記処方:
上記ラジカル重合性単量体混合物 100重量部
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニル1アクリレート
(シアノアクリレート系有機紫外線吸収剤) 1.5重量部
光重合開始剤 0.1重量部
により、各成分を十分に混合し、有機系コーティング剤を調製した。尚、光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドの混合物(重量比:3対1)を用いた。
上記の有機コーティング剤の約2gを、前述したスピンコータを用い、実施例1と全く同じ条件で光学基板のフォトクロミックコート層の表面にスピンコートした。次いで、メタルハライドランプを用いて、405nmの光線強度120mW/cmで窒素雰囲気中で該光学基板に1分間光照射し、有機コーティング剤の塗膜を硬化させ、さらに110℃の恒温器にて1時間加熱処理を行うことにより、フォトクロミックコート層表面に有機紫外線吸収膜を有するフォトクロミック積層体を得た。なお、得られた有機紫外線吸収膜の膜厚は10μmであった。
このフォトクロミック積層体の紫外線吸収特性及びフォトクロミック特性を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2、表3に示した。
比較例1
シリコーン系コーティング剤に添加する紫外線吸収剤のゾルを、メタノール分散酸化チタン/酸化ジルコニウム/酸化珪素複合金属酸化物微粒子ゾル(重量比:20/5/75、固形分濃度30重量%)に変え、該シリコーン系コーティング剤の組成を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてフォトクロミック積層体を製造した。
このフォトクロミック積層体の紫外線吸収特性及びフォトクロミック特性を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2、表3に示した。
比較例2:ブランク試験
先に作製された光学基板について、フォトクロミックコート層の表面上に何も積層させず、そのままフォトクロミック特性を評価し、その結果を表3に示した。尚、この光学基板の紫外線吸収特性は、各波長での光線透過率を100%として表2に示した。
較例
複合金属酸化物微粒子ゾルの代わりに、同量のメタノール分散酸化珪素金属酸化物微粒子ゾル(固形分濃度30重量%)を用いた以外は、実施例1と全く同様に酸化物微粒子(紫外線吸収剤ではない)を含む溶液を調製した。
次いで、この溶液100重量部に、さらに有機系紫外線吸収剤として、1.8重量部の2−(5−クロロー2’−ヒドロキシー3’−t−ブチルー5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾールを混合し、該有機系紫外線吸収剤が溶解するまで攪拌し、0.5ミクロンのフィルターでこの溶液を濾過することにより、有機系紫外線吸収剤を含むシリコーン系コーティング剤を調製した。
このシリコーン系コーティング剤を用いて、実施例1と全く同様にして厚みが2μmの紫外線吸収膜を有するフォトクロミック積層体を作製し、このフォトクロミック積層体の紫外線吸収特性及びフォトクロミック特性を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2、表3に示した。
Figure 0004500696
Figure 0004500696
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Claims (6)

  1. 少なくとも一方の表面にクロメン化合物からなるフォトクロミック化合物が分散した樹脂で構成されたフォトクロミック表層部を有する光学基板と、該光学基板のフォトクロミック表層部上に形成された厚さが0.1〜100μmの紫外線吸収膜とからなり、該紫外線吸収膜は、下記(a)または(b)のコーティング剤の硬化体により形成された、360nmの光線透過率が55%以上であり且つ320nmの光線透過率が%以下の性状を有する膜
    (a)320nmの波長の紫外線を選択的に吸収する無機化合物のコロイド粒子を紫外線吸収剤として含有するシリコーン系コーティング剤
    (b)320nmの波長の紫外線を選択的に吸収する紫外線吸収剤を含有する有機系コーティング剤
    であることを特徴とする積層体。
  2. 前記紫外線吸収膜の560nmの光線透過率が85%以上である請求項1記載の積層体。
  3. 前記紫外線吸収膜が、チタンを含有する無機酸化物を紫外線吸収剤として含むコーティング層である請求項1または請求項2に記載の積層体。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体からなる光学物品。
  5. 少なくとも一方の表面にフォトクロミック化合物が分散した樹脂で構成されたフォトクロミック表層部を有する光学基板を用意し、320nmの波長の紫外線を選択的に吸収する無機化合物のコロイド粒子を紫外線吸収剤として含有するシリコーン系コーティング剤を、前記光学基板のフォトクロミック表層部上に、直接またはプライマー層を介して塗布し、これを硬化させて0.1〜100μmの厚みを有する紫外線吸収膜を形成することを特徴とする請求項1記載の積層体の製造方法。
  6. 少なくとも一方の表面にフォトクロミック化合物が分散した樹脂で構成されたフォトクロミック表層部を有する光学基板を用意し、320nmの波長の紫外線を選択的に吸収する紫外線吸収剤を含有する有機系コーティング剤を、前記光学基板のフォトクロミック表層部上に、直接またはプライマー層を介して塗布し、これを硬化させて0.1〜100μmの厚みを有する紫外線吸収膜を形成することを特徴とする請求項1記載の積層体の製造方法。
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