JP4500429B2 - バリア膜用研磨剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なバリア膜用研磨剤に関する。詳しくは、バリア膜を絶縁膜に対して選択的に研磨でき、半導体基板表面を極めて平坦に仕上げることが可能なバリア膜用研磨剤を提供する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの高集積化に伴って、配線技術は益々微細化かつ多層化の方向に進んでいる。そして、上記配線技術の多層化により半導体基板表面の段差は大きくなり、その結果、その上に形成される配線の加工精度や信頼性を低下させ、微細化を妨げるという問題を有する。
【0003】
上記の多層化による問題点を解決するために、配線パターンや電極等(以下、配線等ともいう)が形成された層を平坦化し、その上にさらに配線等を形成する技術が開発されている。
【0004】
即ち、半導体基板の表面に金属配線用の凹部を有する絶縁膜を形成し、その上にバリア膜を介して該凹部を埋めるように金属膜を形成した後、凹部以外に存在する金属膜及びバリア膜を研磨によって除去して絶縁膜と凹部に存在する金属膜との平坦化された面が形成された半導体基板の研磨方法が開発されている。
【0005】
上記研磨において、バリア膜は、金属膜として用いるアルミニウムや銅が絶縁膜中に拡散するのを防止し、且つ、それら金属膜の半導体基板表面への密着性を良くする機能を有するものであり、一般に、窒化チタンや窒化タンタルなどが使用される。
【0006】
また、上記研磨方法に使用される研磨剤は、高い研磨性能を実現するため、機械的な研磨機能とそれを促進するような化学反応によるエッチング機能とを併せ有するものが使用される。これらの研磨剤は、かかる機能を発揮するために、一般に研磨砥粒と薬剤とよりなる。
【0007】
上記の研磨剤を使用する研磨方法は、化学機械研磨法と呼ばれ、金属膜、絶縁膜、バリア膜等の研磨対象に応じて、使用する研磨剤の組成が種々提案されている。
【0008】
一方、かかる研磨剤を使用した研磨方法として、図1に示すような二段研磨方法が一般に実施されている。即ち、(a)半導体基板1の表面に、金属配線用の凹部を有する絶縁膜2を形成し、その上にバリア膜3を介して該凹部を埋めるように金属膜4を形成した後、(b)バリア膜3上に存在する最上層の金属膜4を研磨除去する第一段研磨を行い、続いて、(c)バリア膜3を研磨除去する。
【0009】
前記半導体基板表面に形成される絶縁膜に設けられる凹部Aは、配線等を形成するために絶縁膜上に形成される溝や接続孔である。
【0010】
上記第一段研磨においては、バリア膜に対する金属膜の研磨速度の比(以下、研磨速度の比を選択比とも言う)が大きい場合には、研磨の停止層としてバリア膜を利用することができる。また、第二段研磨においては、バリア膜を絶縁膜に対して選択的に研磨できる場合は、絶縁膜を研磨の停止層として利用することができ、半導体デバイスを再現性良く、且つ精度良く製造する上で有利である。
【0011】
二段研磨方法において、上記(c)に見られるような、バリア膜の除去に使用される研磨剤(バリア膜用研磨剤)は、バリア膜を実用的な研磨速度で研磨でき、また、金属膜をバリア膜と同等な研磨速度で研磨可能であり、且つ絶縁膜に対する研磨速度を低く抑えた研磨剤が望ましい。
【0012】
従来、上記バリア膜の研磨剤としての要求に対して、絶縁層と金属膜及びバリア膜との選択比を高くすることにより、該絶縁膜を停止層として金属膜及び絶縁膜を研磨するようにした研磨剤は、数多く提案されている。
【0013】
例えば、かかる研磨剤の代表的な組成は、水性媒体、研磨材、酸化剤、及び有機酸を含むものであり、(金属膜又はバリア膜)/絶縁膜の高い選択比を達成することができる。具体的には、研磨砥粒としてアルミナを用い、有機酸としてコハク酸等を添加した研磨剤が示されている。
【0014】
上記研磨剤は、いずれも、タングステンやアルミニウム等の金属膜を研磨することを主眼にした金属膜用研磨剤であり、それらの金属膜と絶縁膜(酸化膜)との選択比を上げることを目的とするものであり、酸化膜に対する研磨速度を抑制すると共に金属膜の研磨速度を上昇せしめるため、有機酸を添加することを必須としている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の有機酸等を添加した研磨剤においては、金属膜が腐食したり、金属膜が優先して研磨されることによる金属膜の配線部分の凹み(以下、この現象をディッシングという)を起こし易いという問題がある。そのため、前記第二段研磨において腐食やディッシングが発生すると、回復させることは非常に困難であり、半導体デバイスの歩留まりを大幅に低下させることが懸念される。
【0016】
従って、本発明の目的は、バリア膜の研磨における金属膜の腐食やディッシングを有効に防止しながら、絶縁膜に対するバリア膜の選択比が大きく(絶縁膜を研磨の停止層として利用可能な)、しかも、バリア膜と金属膜とをほぼ等しい研磨速度で研磨可能なバリア膜用研磨剤を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた。その結果、特定の比表面積のヒュームドシリカと特定の濃度範囲の無機酸塩と酸化剤を使用し、且つpHを特定の範囲に調整することによって、上記目的を全て達成した安定な研磨剤が得られることを見い出し、本発明を提案するに至った。
【0018】
即ち、本発明は、半導体基板の絶縁膜上に形成されたバリア膜及び銅膜を、比表面積が90〜300m2/gのヒュームドシリカ、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は、硫酸テトラメチルアンモニウムである無機酸塩、酸化剤及び溶媒よりなり、該無機酸塩の濃度が100〜2000ppmであり、且つpHが4.2〜6.4である研磨剤を使用し、絶縁膜を停止層として研磨することを特徴とする研磨方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る研磨剤について詳細に説明する。
【0020】
本発明は、砥粒としてヒュームドシリカを使用することが極めて重要である。即ち、砥粒として他の種類の砥粒、例えば、アルミナを使用した場合は、研磨剤にしたときに砥粒が凝集し易かったり、スクラッチが発生し易いという問題がある。研磨工程においてスクラッチが発生すると、デバイスの配線が断線したりショートしたりするため、デバイスの歩留まりを大幅に低下させる原因となる。
【0021】
また、ヒュームドシリカ以外のシリカとして、アルコキシシランを原料に用いて加水分解により製造されるゾル−ゲルシリカ(以下、高純度コロイダルシリカともいう)、珪酸ソーダを原料にして鉱酸で中和して製造される湿式シリカ、同じく珪酸ソーダを原料にしてオストワルド法で製造されるコロイダルシリカなども挙げられるが、ヒュームドシリカの代わりにそれらのシリカを使用した場合、一般に絶縁膜に対するバリア膜の選択比が低下する傾向が強く、本発明の目的を達成することが困難となる。
【0022】
尚、上記のヒュームドシリカ以外のシリカを、バリア膜の選択比を大幅に低下させない範囲、具体的には、全砥粒中に30重量%以下、好ましくは20重量%以下の範囲で添加することは、絶縁膜の研磨速度を低く抑えたまま、バリア膜や金属膜の研磨速度を向上させることも可能であり、好ましい。
【0023】
本発明に使用されるヒュームドシリカは、火炎中で四塩化ケイ素等のシラン系ガスを加水分解して製造される微細なシリカである。
【0024】
上記ヒュームドシリカは、後で詳述するその他の構成との組合せにおいて、80m2/g以上、好ましくは100m2/g以上の比表面積を有することが重要である。
【0025】
即ち、該ヒュームドシリカの比表面積が80m2/g未満の場合は絶縁膜の研磨速度が高くなり、絶縁膜に対するバリア膜の選択比が低下する傾向にある。また、該比表面積が400m2/gを超えると、ヒュームドシリカが凝集し易い傾向にあり、かかる値以下のものを使用することが望ましい。
【0026】
本発明の研磨剤中におけるヒュームドシリカの濃度は、公知の研磨剤の濃度範囲が特に制限なく採用されるが、一般に、1〜20重量%、好ましくは、5〜20重量%の範囲が好適である。
【0027】
上記ヒュームドシリカの濃度が1重量%より小さい場合、研磨速度が低下する傾向があり、また、20重量%を超えるとシリカの凝集が起こり易くなり、工業的な実施において安定な研磨が困難となる傾向にある。
【0028】
本発明のバリア膜用研磨剤のpHは、3〜8の範囲、好ましくは4〜7の範囲であることが非常に重要である。
【0029】
即ち、研磨剤のpHが3よりも低い場合は、金属膜の研磨速度が他の膜に対して大きくなり過ぎ、また、溶解性も増すため、ディッシングが起こり易くなる傾向にある。一方、pHが8を越えると、絶縁膜の研磨速度が大きくなり過ぎ、前記選択性が低下する場合がある。
【0030】
従って、研磨剤のpHを上記範囲に調整することによって、金属膜の腐食やディッシングを抑えつつ、選択性の高い研磨剤を調製することができる。
【0031】
本発明においては、研磨剤のpHは、無機酸塩の種類を選択することによって、上記範囲のpHを有するものも得ることができるが、必要に応じて、pHを上記範囲に調整するため、硝酸や硫酸等の無機酸あるいはアンモニア、エチレンジアミン等の塩基を添加することができる。
【0032】
本発明の研磨剤においては、無機酸塩を含有すること及び該無機塩を特定の濃度範囲に調整することが極めて重要である。
【0033】
即ち、上記無機酸塩の添加は、絶縁膜の研磨速度を上昇させることなく、バリア膜の研磨速度を高める効果を発揮する。
【0034】
また、本発明の研磨剤で使用する比表面積が80m2/g以上のヒュームドシリカは、溶媒に分散させた状態では一般的に不安定で、特に、pHが3〜8といった酸性から中性の範囲で使用する場合には、特に不安定で、凝集が起こり易いという問題があり、この問題を解決するためにも、特定濃度の無機塩類を添加することが極めて効果的である。
【0035】
尚、溶媒中のヒュームドシリカの分散性を安定化させるためには、上記無機酸塩の代わりにフタル酸水素カリウムやシュウ酸アンモニウムといった有機酸塩を使用することも考えられるが、無機酸塩の場合とは異なり、金属膜を腐食させ、ディッシングが発生し易くなるという問題がある。
【0036】
本発明において、上記無機酸塩としては、特に制限無く公知のものが使用できる。好適な代表例を例示すると、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、ホウフッ化アンモニウム、過塩素酸アンモニウムなどのアンモニウム塩及び上記アンモニウム塩のアンモニアの一部を水素で置き換えた塩類、更に上記アンモニウム塩のアンモニアの一部又は全部をNa、K、Ca、Mgなどのカチオン及びエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどの各種アミンで置換した塩類などが挙げられる。
【0037】
特に、上記無機酸塩の中でも、特に、硫酸アンモニウムは金属膜に対する腐食性も低く、極めて好適である。
【0038】
尚、本発明のバリア膜用研磨剤を半導体デバイスの基板の研磨に使用する場合には、NaやK等の金属イオンをなるべく含まない高純度のものを使用することが好ましい。
【0039】
本発明において、上記無機酸塩の含有量は、10〜5000ppmの範囲、好ましくは50〜2000ppmの範囲、更に好ましくは100〜1000ppmの範囲が好適である。10ppm未満の場合は、上述したような研磨剤の安定化効果が小さい場合がある。5000ppmを越えた場合には、却って研磨剤の安定性が損なわれ、凝集し易くなる場合がある。
【0040】
このように、本発明のバリア膜用研磨剤は、無機酸塩を10〜5000ppmの濃度範囲で含有することによって、研磨剤の安定性を増すことが可能で、更に金属膜の腐食とディッシングを抑制しつつ、バリア膜の研磨速度を向上させることも可能である。
【0041】
本発明のバリア膜用研磨剤においては、酸化剤を含有することが、バリア膜と共に、金属膜を実用的な研磨速度で研磨するために重要である。
【0042】
かかる酸化剤は、特に制限無く公知のものが使用できる。例えば、過酸化物、過塩素酸塩、過硫酸塩、酸化性金属塩、酸化性金属錯体などが挙げられるが、それらの中でも、取り扱い易さ、純度等の上で過酸化水素が最も好ましい。
【0043】
また、本発明のバリア膜用研磨剤において、上記酸化剤の濃度は、0.1〜10重量%の範囲、好ましくは0.5〜6重量%の範囲が適当である。
【0044】
酸化剤の濃度が0.1重量%未満であると金属膜の研磨速度が低下する傾向がある。また、酸化剤の濃度が10重量%を越えても研磨速度の向上効果はあまり見られない場合が多く、更に、濃度の高い酸化剤を使用することは危険性の面でも問題があり、また廃水処理の負担が増えるなどの問題が生じることが懸念される。
【0045】
なお、上記酸化剤は、研磨剤と混合した後、長期間放置しておくと徐々に分解する場合があるため、研磨剤を使用する直前に混合するのが好ましい。
【0046】
本発明において、溶媒としては研磨剤として公知のものが特に制限なく使用されるが、水が代表的であり、最も好適である。水以外にもエタノール等の有機溶媒でも良く、また、水と有機溶媒の混合溶媒も使用可能である。
【0047】
ところで本発明の研磨剤においては、バリア膜の研磨速度を更に向上させるために、特定の濃度範囲のアルミニウムを添加することができる。即ち、アルミニウムを原子換算で0.1〜50ppm、好ましくは0.5〜20ppmの範囲で含有することができる。
【0048】
上記アルミニウムの濃度が0.1ppm未満の場合は研磨速度の向上効果が小さく、50ppmを越えると研磨剤の安定性が損なわれる場合がある。
【0049】
アルミニウムの添加方法は特に限定されない。例えば、アルミニウムの化合物をヒュームドシリカのスラリーに添加することができる。
【0050】
アルミニウムの化合物としては、溶媒、特に水に溶解するものであれば制限なく使用できる。硫酸アルミニウムが代表的であるが、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウム明ばん)、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。上記以外にも、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウムなどの有機酸の塩類も使用できるが、前述したように有機酸は金属膜、例えば銅などを腐食する場合があるため、なるべく使用量を抑えることが好ましい。その他に、アルミニウムイソプロポキサイドやアルミニウムエトキシドなどのアルコキシドなども利用できる。上記の中でも硫酸アルミニウムは水に溶け易く、対イオンである硫酸イオンが被研磨物、特に銅に対する腐食がほとんど無く、極めて好適である。
【0051】
また、本発明の研磨剤は、金属膜とバリア膜をほぼ同等の速度で研磨することによって、配線層の表面をきわめて平坦に研磨することが可能である。
【0052】
しかしながら、金属膜はその成膜の方法等によって研磨速度が異なる場合がある。例えば、スパッタで成膜されたCu膜は、メッキで成膜されたCu膜に比べてやや研磨速度が高くなる傾向がある。このため、バリア膜に対して金属膜の研磨速度がやや高すぎたり、低すぎたりする場合がある。
【0053】
そのような場合には、本発明の研磨剤においては、防食剤を添加することによって金属膜の研磨速度を微調整し、金属膜とバリア膜の研磨速度をより精度よく一致させることができる。
【0054】
上記防食剤としては、公知のものが制限無く使用できる。代表例を例示すると、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、2−アミノチアゾール及びそれらの誘導体などが挙げられる。これらの中でも金属膜、特に銅の防食効果に優れたベンゾトリアゾールが好適に使用できる。
【0055】
上記防食剤は、研磨剤中に10〜1000ppm、好ましくは50〜500ppm添加することで、金属膜の研磨速度を増加させたり、あるいは減少させることができる。
【0056】
例えば、防食剤を10〜150ppm、好ましくは50〜150ppm添加することによって、金属膜の研磨速度を増加させることができる。
【0057】
あるいは、防食剤を150〜1000ppm、好ましくは150〜500ppm添加することによって、金属膜の研磨速度を減少させることができる。
【0058】
上記防食剤の濃度が10ppm未満の場合は金属膜の研磨速度を調整する効果が小さく、1000ppmを越えると金属膜の研磨速度が著しく低下する場合がある。
【0059】
なお、上記防食剤は、予め研磨剤に混合していても良く、使用時に金属膜の研磨速度を微調整するために添加しても良い。
【0060】
本発明において、上述したヒュームドシリカや無機酸塩の濃度範囲は、主に研磨剤として使用する時の最適な濃度範囲を述べており、かかる濃度範囲よりも高いものを予め製造し、使用時に純水等の溶媒で希釈して使用しても何ら問題はない。
【0061】
上記研磨剤の製造方法は特に限定されず、公知の方法が採用できるが、高比表面積のヒュームドシリカは一般に溶媒中に微分散するのが難しいため、高せん断性の分散機を使用した方法が好適である。具体的には、高圧ホモジナイザーや摩砕機など分散機が、コンタミが少なく、シリカを微分散できるため、好ましく採用される。
【0062】
前述のアルミニウム化合物を添加した場合は、局所的にシリカが凝集する場合があるため、アルミニウム化合物を添加した後に上記のように高せん断性の分散機を使用してヒュームドシリカの分散液を製造するのが好ましい。
【0063】
以上のような構成により、本発明のバリア膜用研磨剤は、絶縁膜の研磨速度を低く抑えつつ、且つバリア膜を効率良く研磨することができる。また、同時に金属膜に対しても実用的な研磨速度を発揮することができる。
【0064】
本発明のバリア膜用研磨剤は、前記特徴的な構成によって、その選択比(絶縁膜に対するバリア膜の研磨速度比)を、10以上、特に、20以上とすることが可能である。
【0065】
また、本発明のバリア膜用研磨剤の絶縁膜に対する研磨速度は、被研磨膜の素性や研磨条件等にも大きく左右されるが、一般的に100オングストローム/min以下、特に、50オングストローム/min以下とすることが可能である。
【0066】
更に、本発明のバリア膜用研磨剤は、バリア膜と金属膜とを同時研磨する場合の金属膜に対するバリア膜の選択比(バリア膜/金属膜)が0.5〜2.5、特に、0.7〜2.3の範囲にあるものを得ることが可能であり、これらをほぼ同等の速度で研磨することが可能である。
【0067】
一方、本発明のバリア膜用研磨剤は、上記性能を有する中で、バリア膜に対する研磨速度を、100〜1000オングストローム/minの範囲、好ましくは200〜800オングストローム/minの範囲のものを選択することが好ましい。
【0068】
即ち、一般に、半導体基板上に形成するバリア膜の厚みは、100〜500オングストロームの範囲であることが多いため、上記研磨速度が100オングストローム/min未満では生産性が低下する場合がある。また、上記研磨速度が1000オングストローム/minを超える場合は、バリア膜と同時に金属膜の研磨速度も上昇することがあるため、ディッシングの発生や制御性の低下が懸念される。
【0069】
そのため、本発明の研磨剤を上記範囲の研磨速度に調整することによって、研磨工程の管理が容易となり、好ましい。
【0070】
本発明において、上記バリア膜用研磨剤を使用した半導体デバイスの製造は、半導体基板表面に絶縁膜、バリア膜及び金属膜を所定のパターンで積層し、これらを研磨することによって行われる。
【0071】
上記半導体基板は、ICやLSIなどの半導体デバイスに使用されるシリコン基板が代表的であるが、ゲルマニウムや化合物半導体などの半導体基板も使用される。
【0072】
また、絶縁膜は配線層間の電気的分離に用いられるものであって、絶縁性のものであれば特に制限はない。一般には、酸化シリコン膜(プラズマ−TEOS膜やSOG膜と呼ばれているものなど)や有機SOG膜等が使用される。
【0073】
更に、バリア膜は配線用金属の絶縁膜中への拡散を防止すると共に、金属膜の絶縁膜への密着性を良くするために絶縁膜と金属膜の間に形成される薄膜であって、タンタル膜、窒化タンタル膜、チタン膜、窒化チタン膜、窒化タングステン膜などが挙げられる。中でも、タンタル膜、窒化タンタル膜、窒化チタン膜が好適である。
【0074】
更にまた、金属膜は、配線パターンや電極を形成するための配線材料であり、アルミニウム膜、銅膜、タングステン膜などが挙げられる。
【0075】
本発明のバリア膜用研磨剤は、金属膜に銅膜を、バリア膜にタンタル膜、窒化タンタル膜、窒化チタン膜を用いたときに特に顕著な効果を発揮する。
【0076】
本発明のバリア膜用研磨剤は、前記図1に示す(c)の第二段研磨に好適に使用することができる。また、上記図1とは別の研磨方法であり、図2に示すように、(b)第一段研磨においてバリア膜3上に金属膜4を一部残した状態で研磨を終了し、(c)第二段研磨において金属膜4とバリア膜3を同時に研磨除去する研磨方法においても、本発明のバリア膜研磨剤は、該第二段研磨に使用することができる。
【0077】
この場合、バリア膜上に残存させる金属膜の厚みは、可及的に薄くすることが効率的にバリア膜上の金属膜を除去でき好ましい。
【0078】
上記図1、図2に示す研磨方法において、第一段研磨では、金属膜を2000オングストローム/min以上の高い研磨速度で研磨可能で、且つスクラッチやディッシングの発生を抑えながら金属膜をバリア膜に対して選択的に除去できる公知の金属膜用研磨剤を選択して使用することが好ましい。特に、図2に示すように、バリア膜上に金属膜を残存させる研磨方法においては、より研磨速度が高い研磨剤を選択することが可能である。
【0079】
また、上記研磨方法において、第二段研磨では、絶縁膜の凹部以外のバリア膜を完全に取り去る必要があるため、比較的長め、具体的には、バリア膜をほぼ除去したと思われる時間よりも数秒〜数百秒間余分に研磨を継続することが望ましい。そうすることによって、絶縁膜の凹部以外のバリア膜を完全に除去できる。
【0080】
このような第二段研磨において、本発明のバリア膜用研磨剤は、絶縁膜の研磨速度を低く抑えつつ、且つ金属膜を腐食しないので、層間絶縁膜の厚みの制御性が高く、好適である。即ち、上記のような過剰研磨を行っても、絶縁膜の厚みが薄くなり過ぎたり、配線の断面積が減少したりして半導体デバイスの信頼性を低下させる恐れが少ないという特徴を有している。
【0081】
以上説明したように、本発明のバリア膜用研磨剤を第二の研磨剤として使用することによって、バリア膜を効率的に除去可能で、更に半導体基板の表面を極めて平坦に仕上げることが可能である。
【0082】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明のバリア膜用研磨剤は、金属膜を腐食させたり、ディッシングを起こさせたりすることが少なく、研磨剤の安定性にも優れている。更に、バリア膜を絶縁膜に対して選択的に研磨できるため、絶縁膜の厚みを設計通りに制御し易く、半導体デバイスの製造プロセス上極めて有用である。
【0083】
また、前記図2に示す研磨方法における第二段研磨において、本発明のバリア膜用研磨剤を使用してバリア膜を研磨することによって、極めて平坦性の高い半導体基板表面を、効率的に得ることができる。
【0084】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0085】
(研磨試験)
銅(Cu)膜、窒化タンタル(TaN)膜、タンタル(Ta)膜、窒化チタン(TiN)膜、チタン(Ti)膜、あるいは酸化シリコン(SiO2)膜が表面に形成された4インチのシリコンウェハを用いて研磨試験を行った。尚、Cu膜はメッキで成膜されたものを用いた。研磨パッドにはロデール製のIC1000/SUBA400を用い、加工圧力300g/cm2、定盤回転数40rpm、研磨剤の滴下速度80ml/minの条件で研磨試験を行い、研磨速度を求めた。
【0086】
(溶解性試験)
Cu膜が表面に形成されたシリコンウェハを用いて溶解性の試験を行った。研磨剤中に試験片を浸漬し、それらの入った容器を50℃に保持された恒温振盪器中に入れた。10分後に容器から試験片を取り出し、表面に残存する研磨剤を洗い流した。浸漬前後のCu膜の膜厚変化からCu膜の溶解速度を求めた。
【0087】
実施例1及び比較例
表1に示すように、比表面積が200m2/gのヒュームドシリカと硫酸アンモニウムと過酸化水素水と純水を所定量混合し、ヒュームドシリカの濃度が8重量%、硫酸アンモニウムが500ppm、H2O2の濃度が1重量%、pHが4.3の研磨剤を調製し、評価した。また、ヒュームドシリカの代わりに、比表面積が100m2/gのγ−アルミナ粒子を用い、硫酸を用いてpH調整した以外は上記と同様にしてアルミナ系の研磨剤も調製し、評価した。
【0088】
研磨試験の結果を表1に示した。尚、No.2は比較例である。
【0089】
本発明のヒュームドシリカ系の研磨剤は、バリア膜であるTaN膜や、金属膜であるCu膜の研磨速度は比較的高いのに対して、絶縁膜であるSiO2膜の研磨速度は極めて低く抑えられており、絶縁膜に対してバリア膜や金属膜を選択的に研磨できる研磨剤であることがわかった。
【0090】
また、上記ヒュームドシリカ系の研磨剤は、1ヶ月以上経過しても安定であった。
【0091】
一方、アルミナ系の研磨剤では、研磨剤が凝集する傾向を示し、数時間研磨剤を静置しておくと相分離を起こした。
【0092】
また、該研磨剤を良く攪拌しながら研磨試験を行ったところ、SiO2膜の研磨速度が131オングストローム/minと高く、TaN/SiO2の選択比も1.0と極めて低いことがわかった。
【0093】
また、研磨後のCu膜付きウエハの表面を観察したところ、シリカ系研磨剤で研磨したものにはスクラッチはなかったが、アルミナ系研磨剤の方は、顕微鏡でスクラッチの発生が認められた。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例2及び比較例
表2に示すように、比表面積の異なる各種のヒュームドシリカを用い、更にシリカの濃度を変えた以外は実施例1、No.1と同様にして研磨剤を調製し、評価した。
【0096】
また、No.8では、全シリカ中の90重量%を比表面積が200m2/gのヒュームドシリカを用い、10重量%を比表面積が30m2/gの高純度コロイダルシリカを用いた以外は上記と同様にして研磨剤を調製し、評価した。
【0097】
研磨試験の結果を表2に示した。尚、No.1は比較例である。
【0098】
比表面積が80m2/g以上のヒュームドシリカを用いた場合は、TaN/SiO2の選択比は10を超えており、更にTaN/Cuの選択比は0.5〜2の範囲にあり、バリア膜用研磨として好適であることがわかった。
【0099】
また、No.8では、No.5と比較してSiO2膜の研磨速度は若干上昇したが、選択比としては本発明の要件を満足している。また、この例ではCu膜とTaN膜の研磨速度をNo.5よりも高くできることがわかった。
【0100】
一方、No.1のように比表面積が80m2/g未満のヒュームドシリカを用いた場合は、SiO2膜の研磨速度が高く、そのためTaN/SiO2の選択比が低く、本発明の要件を満足しないことがわかった。
【0101】
【表2】
【0102】
実施例3及び比較例
表3に示すように、硫酸あるいはアンモニアを適量添加してスラリーのpHを変えた以外は実施例1、No.1と同様にして研磨剤を調製し、評価した。
【0103】
研磨試験の結果を表3に示した。尚、No.1、4は比較例である。
【0104】
研磨剤のpHが3〜8の範囲にある場合には、TaN/SiO2の選択比は10以上であり、しかもTaN/Cuの選択比は0.5〜2の範囲にあるため、高選択性のバリア膜用研磨剤として適していることがわかった。また、Cu膜の溶解速度は30オングストローム/min以下と実用に際して特に問題のない範囲であることが確認できた。
【0105】
pHが3よりも低い場合には、Cu膜の溶解速度が非常に高いためディッシングの発生が懸念される。
【0106】
また、pHが8を超える場合には、SiO2膜の研磨速度が高いためTaN/SiO2の選択比が低いことがわかった。
【0107】
【表3】
【0108】
実施例4及び比較例
表4に示すように、無機酸塩として、硫酸アンモニウムを用いてその濃度を変化させたり、塩の種類を変えた以外は実施例1、No.1と同様にして研磨剤を調製し、評価した。
【0109】
研磨試験の結果を表4に示した。なお、No.1、8、9は比較例である。
【0110】
硫酸アンモニウム以外の無機酸塩を用いた場合にも、本発明の要件を満足することがわかった。また、無機酸塩の添加量を増すと、SiO2膜の研磨速度を抑えたままTaN膜の研磨速度を高くできることがわかった。
【0111】
また、無機酸塩を添加した場合は1ヶ月以上静置してもシリカは凝集せず、いずれも安定であったが、添加しなかった場合はシリカが凝集することがわかった。
【0112】
一方、無機酸塩の代わりに有機酸塩を使用した場合、研磨剤の安定性やTaN/SiO2の選択比は本発明の要件を満たしていたが、Cu膜の溶解速度が30オングストローム/minを越えており、無機酸塩を用いたものに比べてディッシングが発生し易いことがわかった。
【0113】
【表4】
【0114】
実施例5及び比較例
表5に示すように、H2O2の濃度を変えた以外は実施例1、No.1と同様にして研磨剤を調製し、評価した。
【0115】
研磨試験の結果を表5に示した。No.1は比較例である。
【0116】
H2O2を添加しなかった場合は、Cu膜の研磨速度が100オングストローム/min未満と低すぎることがわかった。
【0117】
一方、H2O2を添加することによってTaN膜の研磨速度を高められることがわかった。
【0118】
【表5】
【0119】
実施例6
実施例1、No.1と同様にして研磨剤を調製し、表6に示すTaN膜以外のバリア膜の研磨性能を評価した。
【0120】
研磨試験の結果を表6に示した。
【0121】
本発明のバリア膜用研磨剤は、TaN膜以外にも、Ta膜、TiN膜及びTi膜に対して高い研磨速度とともに、SiO2膜に対する高い選択比を示すことがわかった。
【0122】
【表6】
【0123】
実施例7
ここではパターン付きウェハを用いて本発明のバリア膜用研磨剤の性能を調べた。
【0124】
まず、比表面積が75m2/gの高純度コロイダルシリカ粒子が7重量%と、炭酸アンモニウムが0.6重量%と、H2O2が4重量%のアルカリ性(pH9.3)の第一の研磨剤を調製した。また、実施例1のNo.1の研磨剤を第二の研磨剤として使用した。
【0125】
シリコンウエハ表面に形成されたSiO2膜上に幅0.35〜100μmの配線用溝が形成され、その上に厚さ250オングストロームのTaN膜と厚さ1.5μmのCu膜が順次積層されたパターンウエハを用いて、そのシリコンウエハ表面をまず第一の研磨剤で240秒間研磨した。
【0126】
その結果、バリア膜を停止層としてCu膜が除去され、TaN膜と配線溝のCu膜が露出した状態となった。続いて、第二の研磨剤で100秒間研磨を行ったところ、配線溝以外のSiO2膜上のTaN膜が完全に除去され、SiO2膜と配線溝のCu膜が露出した状態になった。
【0127】
研磨後のシリコンウエハ表面を電子顕微鏡で観察したところ、スクラッチやディッシングは全く見られず、配線溝以外の部分のSiO2膜と配線溝のCu膜の表面にはほとんど段差は無く、平坦な表面が形成されていることが確認できた。
【0128】
以上の結果より、第一の研磨剤で金属膜を研磨除去した後に、本発明のバリア膜用研磨剤を用いてバリア膜と金属膜を同時研磨し、更にバリア膜を絶縁膜に対して選択的に研磨することによって、極めて平坦な半導体基板表面が形成できることがわかった。
【0129】
なお、参考のために、第一の研磨剤、第二の研磨剤のCu膜、TaN膜、SiO2膜に対するそれぞれの研磨速度を表7に示した。これからわかるように、ここで用いた第一の研磨剤はバリア膜に対して金属膜を選択的に研磨できることがわかる。
【0130】
一方、第二の研磨剤は、絶縁膜に対してバリア膜を選択的に研磨でき、更にバリア膜と金属膜をほぼ等しい研磨速度で研磨できることがわかる。
【0131】
【表7】
【0132】
実施例8
アルミニウム化合物を添加した場合の効果を調べた。
【0133】
200m2/gのヒュームドシリカを純水に分散させ、16重量%のスラリーを調製した。次に、硫酸アルミニウムを加えて、アルミニウム換算で1〜10ppmの範囲の数種類のスラリーを調製した。上記スラリーは高圧ホモジナイザー(ナノマイザー(株)製、ナノマイザーLA)を用いて分散処理した。
【0134】
上記のアルミニウム濃度の異なるスラリーを用いて、シリカ濃度が8重量、硫酸アンモニウムが500ppm、H2O2の濃度が1重量%のpH6.5〜7の研磨剤を数種類調製した。なお、pH調整にはアンモニア水を使用した。
【0135】
研磨試験の結果を表8に示した。アルミニウムを添加することによって、特にTaNやTaなどのバリア膜の研磨速度が向上することがわかった。また、上記範囲のアルミニウム化合物を添加した研磨剤は、保存安定性も良好であった。
【0136】
【表8】
【0137】
実施例9
防食剤を添加した場合の効果を調べた。
【0138】
実施例1、No.1の研磨剤に、防食剤であるベンゾトリアゾールを100ppm添加した研磨剤について、研磨試験を行った結果を表9に示した。
【0139】
ベンゾトリアゾールを添加していない研磨剤では、Cu膜の研磨速度がTaN膜の研磨速度に比べてやや低かった。ベンゾトリアゾールを添加することによって、金属膜の研磨速度が増加し、TaN/Cuの選択比がより1に近付けられることがわかった。
【0140】
【表9】
【0141】
実施例10
実施例1、No.1の研磨剤にベンゾトリアゾールを添加した数種類のスラリーを調製し、評価した。
【0142】
研磨試験の結果を表10に示した。尚、金属膜の研磨試験にはこれまでの実施例とは異なり、スパッタで成膜されたCu膜付きウェハを用いた。
【0143】
ベンゾトリアゾールを添加していない研磨剤では、Cu膜の研磨速度がTaN膜の研磨速度に比べてやや高いことが判った。ベンゾトリアゾールを添加することによって、金属膜の研磨速度が減少し、TaN/Cuの選択比がより1に近付けられることがわかった。
【0144】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバリア膜用研磨剤を使用した研磨方法の代表的な態様を示す工程図
【図2】本発明のバリア膜用研磨剤を使用した研磨方法の他の代表的な態様を示す工程図
【符号の説明】
A 凹部
1 半導体基板
2 絶縁膜
3 バリア膜
4 金属膜
Claims (1)
- 半導体基板の絶縁膜上に形成されたバリア膜及び銅膜を、比表面積が90〜300m2/gのヒュームドシリカ、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は、硫酸テトラメチルアンモニウムである無機酸塩、酸化剤及び溶媒よりなり、該無機酸塩の濃度が100〜2000ppmであり、且つpHが4.2〜6.4である研磨剤を使用し、絶縁膜を停止層として研磨することを特徴とする研磨方法。
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