JP4500398B2 - エアジェットルームにおける緯糸把持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、緯糸をエア流により把持できるエア式把持装置と機械式把持装置とを備えたエアジェットルームにおける緯糸把持装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エアジェットルームによる製織は、緯糸測長貯留装置で貯留、測長された緯糸を緯入れ後、筬打ち、切断するという各工程を繰返してなされる。
緯入れは、メインノズルや経糸杼口途中に設けたサブノズルから噴射されるエア流により推進力を得た緯糸が、経糸杼口内を高速で飛走し、経糸の杼口出口まで到達し、緯糸測長貯留装置の緯糸係止ピン等により緯糸の引出し解舒が阻止されて完了する。このとき、高速で飛走する緯糸が急停止させられるから、緯糸には慣性力により張力が作用し、緯糸は伸された状態となる。
また、これに続いて行われる筬打ち時でも、緯糸は引張られ伸される。これは、メインノズルが筬を保持するスレイ上に載置されていると、メインノズルと筬とが共に揺動するのに対して、緯糸測長貯留装置等は揺動しないため、緯糸測長貯留装置等とメインノズルとの間の距離は筬打ちにより延び、連なる緯糸が引張られるからである。
【0003】
この筬打ちの直後に緯糸の切断が行われると、その緯糸に作用していた張力は急激に解放されて緯糸は縮もうとし、いわゆる切断ショックと呼ばれる反動が緯糸に発生する。この切断ショックがメインノズル側の緯糸に伝達され、例えば、緯糸のメインノズルから糸抜け等を起し得る。
この糸抜けを防止するために、緯入れされた緯糸の切断前後でエア微噴射を行って、緯糸の姿勢を安定に保持することが提案されてきた(例えば、特開平5−272033号公報、特開平5−279940号公報、特開平5−287639号公報等)。しかし、過剰なエア微噴射は、緯糸の撚り戻りや表面に飾糸を伴う緯糸の損傷を招く虞がある。そこで、緯糸を把持する機械式把持装置やエア式把持装置をメインノズル入口側に設けることが提案されてきた。例えば、特開平11−107123号公報や特開平11−200193号公報等にその開示がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述の特開平11−107123号公報に開示された機械式把持装置は、慣性重量が大きいにも拘らず高速で揺動するメインノズルと一体的に設けられているため、エアジェットルームの高速化が妨げられ、好ましくない。
特開平11−200193号公報のエア式把持装置は、メインノズル入口側に設ける把持装置として好ましいが、機械式把持装置に対して緯糸の把持力は比較的ソフトである。このため、切断ショックが大きい場合、エア式把持装置のみでは、必ずしも切断ショックを十分に抑制・低減できない。特に、スパンデックスヤーンのように伸縮性の高い緯糸を使用すると、切断後の緯糸を伝わる反動がエア式把持装置を越えて緯糸測長貯留装置にまで及び、ドラムによる緯糸の測長や係止ピンによる緯糸の係止等に悪影響を与え得る。
【0005】
そこで、このような切断ショックをより確実に抑制し、その悪影響を防止するために、緯糸測長貯留装置とエア式把持装置との間に機械式把持装置を追加することが効果的であり、前述の特開平11−200193号公報に、それに関連する開示がある。そして、この公報によると、エア式把持装置と機械式把持装置との把持タイミングと解放タイミングとを同一にすることを提案している。
しかし、エア式把持装置と機械式把持装置との把持タイミングと解放タイミングとを同一とすると、次のような問題が発生し得る。
つまり、通常、エア式把持装置は、糸抜けを防止するために、長期間にわたり把持用エア噴射を行って緯糸を屈曲・把持している。エア式把持装置による緯糸の把持は比較的ソフトであるため、この把持により緯糸が損傷を受けることは少ない。ところが、機械式把持装置は把持部材を緯糸に当接させて強力に把持するため、エア式把持装置に併せて長期間緯糸を把持すると、機械式把持装置の把持部で緯糸が摩擦等され緯糸の損傷を招く虞がある。
【0006】
また、機械式把持装置による緯糸の把持がエア式把持装置による緯糸の把持と同時か又はそれより先行すると、エア式把持装置より上流側の緯糸は機械式把持装置により先行して拘束される。この状態でエア式把持装置が緯糸を屈曲させ始めると、機械式把持装置の把持力が強力であるため、エア式把持装置は緯糸をその下流側から上流側に引き寄せようとする。緯糸がこのような動きをすると、メインノズルからの糸抜けを助長し、糸抜けを多発させる虞がある。
【0007】
更に、機械式把持装置による緯糸の解放(把持終了)がエア式把持装置による緯糸の解放と同時か又はそれよりも遅延すると、機械式把持装置による把持力が強力であるため、緯糸の緯入れに悪影響を与えることも起り得る。特に、機械式把持装置はエア式把持装置に較べて作動遅れを生じる可能性があるため、例えば、両者の把持終了時期の指令が同時でも、機械式把持装置が緯糸の緯入れに悪影響を与える虞がある。
【0008】
本発明のエアジェットルームにおける緯糸把持装置は、このような事情に鑑みてなされたものである。つまり、本発明は、エア式把持装置と機械式把持装置とを備えるエアジェットルームにおいて、緯糸の損傷や緯入れ不良を確実に防止することができるエアジェットルームにおける緯糸把持装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、機械式把持装置による機械式把持期間をエア式把持装置によるエア式把持期間より短期に設定することを思い付き、本発明のエアジェットルームにおける緯糸把持装置を開発するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明のエアジェットルームにおける緯糸把持装置は、緯糸の貯留と測長とを行う緯糸測長貯留装置と、該緯糸測長貯留装置から解舒された該緯糸を経糸杼口内に緯入れするために緯入れ用エア噴射を行うメインノズルと、該メインノズルの入り口側に前記メインノズルと一体的に配設されると共に前記緯糸を挿通するスレッドガイドに貫設した把持用エア通路に該緯糸を横切るべく供給されたエア流により該緯糸を該把持用エア通路内のエア排出側に屈曲させて把持することで該緯糸の切断時の該メインノズルからの糸抜けを防止し得るエア式把持装置と、該緯糸測長貯留装置と該エア式把持装置との間に該緯糸を機械的に把持する機械式把持装置とを備えるエアジェットルームにおいて、
前記エア式把持装置が前記緯糸を把持するエア式把持期間は、緯入れされた該緯糸が切断される切断時期を含み、
前記機械式把持装置が前記緯糸を把持する機械式把持期間は、該切断時期を含むと共に前記エア式把持期間よりも短期設定され、
前記機械式把持装置が前記緯糸の把持を開始する機械式把持開始時期は、前記エア式把持装置が該緯糸の把持を開始するエア式把持開始時期よりも遅延設定され、
前記機械式把持装置が前記緯糸の把持を終了する機械式把持終了時期は、前記エア式把持装置が該緯糸の把持を終了するエア式把持終了時期よりも先行設定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のエアジェットルームは、エア式把持装置を備えるため、緯糸切断後の切断ショックを低減・抑制して緯糸の糸抜け等を防止できる。また、このエア式把持装置と緯糸測長貯留装置との間に備えられた機械式把持装置が緯糸の切断時期を挟んで緯糸を機械的に把持するため、切断ショックによる反動を緯糸測長貯留装置まで伝達されることを阻止し、緯糸測長貯留装置は緯糸の測長や貯留を確実に行える。
【0012】
そして、その機械式把持装置の機械式把持期間が、エア式把持装置のエア式把持期間よりも短期であるため、把持による緯糸の損傷を従来以上に低減・抑制できる。
また、機械式把持装置が緯糸の把持を開始する機械式把持開始時期は、エア式把持装置が緯糸の把持を開始するエア式把持開始時期よりも遅延設定されているため、好適である。
【0013】
これにより、エア式把持装置による緯糸の屈曲把持が機械式把持装置による機械的把持に先行する。このため、エア式把持装置が緯糸を屈曲させる際、緯糸はその上流側(緯糸測長貯留装置側)からも引き寄せられ、その下流側(メインノズル側)から引寄せられる緯糸の長さは短くなる。そして、エア式把持装置より下流側に延在する緯糸は長めに保持されるため、メインノズルからの緯糸の糸抜けをエア式把持装置が助長することを抑制できる。
【0014】
さらに、機械式把持装置が緯糸の把持を終了する機械式把持終了時期は、エア式把持装置が緯糸の把持を終了するエア式把持終了時期よりも先行設定されているため、好適である。
これにより、機械式把持装置による作動遅れが生じたとしても、緯糸が緯入れ開始前に確実に解放され、機械式把持装置が緯糸の緯入れ性に悪影響を与えることがない。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の第1の実施形態であるエアジェットルームについて、図1〜図5を用いて説明する。
図1に示すエアジェットルームは、2色の緯糸Y1、Y2を経糸Wの杼口内にそれぞれ独立して緯入れできるものである。緯糸をY1、Y2と区別したが、緯糸Y1、Y2は同色でも良い。いずれにしても、緯糸数の増加により、エアジェットルームの稼働率や高機能化を図れる。ここで、緯糸Y1、Y2の各系統の基本的構成は共通するため、以下では、代表的に緯糸Y1の系統を取上げて説明する。そして、図2および図3でも、それに対応した符号を主に付した。
【0016】
図1に示すように、緯糸Y1は、緯糸チーズ110から供給され、巻付方式の緯糸測長貯留装置120の糸巻付面(測長バンド)121に巻付け貯留される。この巻き付けは、糸巻付管122を巻付モータ123により回転駆動することにより行われる。
糸巻付面121からの緯糸Y1の引出し解舒と引出し解舒阻止は、その近傍にある緯糸係止ピン124aが出没して糸巻付面121と係合・離間することにより行われる。これにより、緯入れされる緯糸Y1の測長がなされる。
なお、緯糸係止ピン124aは、電磁ソレノイド124により駆動され、電磁ソレノイド124の励消磁は、織機制御コンピュータCにより制御される。織機制御コンピュータCは、糸巻付面121近傍に設けられた反射式光電センサーの緯糸解舒検出器125から送信される解舒検出信号と織機主軸に設けられたロータリエンコーダ19から送信される織機回転角度検出信号とに基づいて電磁ソレノイド124の制御を行っている。
【0017】
緯糸Y1は、緯糸測長貯留装置120からタンデムノズル130内に導かれる。タンデムノズル130は、メインノズル140による緯入れを補助するために設けられている。緯糸Y1は、さらにメインノズル140内に導かれる。メインノズル140とタンデムノズル130とは、緯入れのための緯入れ用エア噴射を所定タイミングで行い、緯糸Y1の切断前後にはエア微噴射を行う。このエア微噴射により、切断後の緯糸の姿勢が安定に保持され、次回の緯入れへスムーズに移行できる。
なお、緯糸チーズ110、緯糸測長貯留装置120、タンデムノズル130は図示しない機台に固定されているが、メインノズル140と筬520とは共にスレイ530上に固定され筬打ち毎に高速で揺動する。
【0018】
次に、メインノズル140と、その入口側(上流側)に設けられたエア式把持装置150とについて、図1と図2とを用いて説明する。図2は、メインノズル140とエア式把持装置150との断面図である。
メインノズル140は、経糸Wの杼口内に向けた所定の角度で配設されている。メインノズル140は、ノズルボディ148と、ノズルボディ148の筒内に嵌入結合された加速管145と、ノズルボディ148の筒内に螺合されたスレッドガイド146と、スレッドガイド146をノズルボディ148に固定するためのロックナット147とからなる。
【0019】
スレッドガイド146の入口側にはセラミック製の摺接ガイドピース142が嵌合固定されている。スレッドガイド146の先端側(下流側)には小径部146aが形成されている。この小径部146aの中間に複数の位置決めフィン146bが周方向に配設されている。位置決めフィン146bの外周端はノズルボディ148の内周壁に当接している。これにより、スレッドガイド146はノズルボディ148に対して安定に保持されている。
加速管145は、ノズルボディ148に嵌合された基管145aと、基管145aに嵌合連結された細管145bとからなる。
【0020】
スレッドガイド146の小径部146aの先端側は基管145aの入口管内に入りこんでおり、小径部146aの外周壁面と基管145aの内周壁面との間でテーパ状のエア流路が形成されている。メインノズル140は、緯入れ用エア供給管路32(図1)から供給された圧縮エアを、図示しないノズルボディ148のエア供給口→ノズルボディ148内の内周壁面と小径部146aの外周壁面との間のエア流路→基管145a内→細管145b内を順次経過させて、緯入れ用エア噴射を行う。そして、この緯入れ用エア噴射により、小径部146aの先端部146cより下流側の加速管145内にある緯糸Y1がエア流による推進力を付与され、経糸Wの杼口内に高速で導かれる。
【0021】
また、メインノズル140がエア微噴射を行う場合も、緯入れ用エア噴射と同様の経路をたどって圧縮エアが噴射されるが、圧縮エアはカットブロー用エア供給管路34(図1)からメインノズル140に供給される。
なお、タンデムノズル130もメインノズル140と共通の基本的構造を備え、緯入れ用エア供給管路24(図1)から圧縮エアが供給されて緯入れ用エア噴射を行い、また、微噴射用エア供給管路26(図1)から圧縮エアが供給されてエア微噴射を行う。
【0022】
エア式把持装置150は、メインノズル140の入口側(上流側直近)に配設され、把持基体158と把持ノズル151とスレッドガイド146に配設された把持用エア通路149とを基本的な構成とする。図1に示すように、本実施形態のエア式把持装置150は、緯糸Y2系統であるメインノズル240の入口側に設けられたエア式把持装置250と把持基体158を共通にする。さらに、本実施形態ではノズルボディ148と把持基体158とが一体となっている。
図2に示すように把持基体158は略直方体状の一体ブロックからなる。把持基体158は前述したようにノズルボディ148と共通であるため、メインノズル140のスレッドガイド146が内設される。そして、把持基体158の下面(図2)には、糸把持用エア供給管路53(図1)から供給された圧縮エアを噴射(把持用エア噴射)する把持ノズル151が設けられている。
【0023】
把持ノズル151の取付け方向に沿って、把持基体158には把持用エア供給孔157が形成され、さらにその延長上に把持用エア排出孔156が形成されている。また、エア流が把持用エア供給孔157と把持用エア排出孔156との間を挿通すると共に緯糸Y1と交差するように、スレッドガイド146には把持用エア通路149が貫設されている。そして、把持ノズル151から把持用エア噴射が行われると、スレッドガイド146内の緯糸Y1の通路を横切るように、把持用エア供給孔157→把持用エア通路149→把持用エア排出孔156→エア排出路155とエアが流れる。このエア流によりスレッドガイド146内を挿通する緯糸Y1は、把持用エア供給孔157から把持用エア排出孔156に向う方向(矢印R方向)に屈曲させられ、緯糸Y1が把持される。
【0024】
次に、図1を参照しつつ、エア式把持装置150とメインノズル140とタンデムノズル130とのエア配管とエアの供給排出制御について説明する。
エア式把持装置150には、圧縮エアを供給するための糸把持用エア供給管路53が接続されている。そして、糸把持用エア供給管路53上には電磁開閉弁55と圧力調整弁57とが設けられている。
【0025】
メインノズル140には、緯入れ用エア噴射を行うための緯入れ用エア供給管路32と、エア微噴射を行うためのカットブロー用エア供給管路34と、メインノズル140内に緯糸Y1を挿通させる際に使用する糸通し用エア供給管路36とが並列して接続されている。緯入れ用エア供給管路32上には電磁開閉弁38が介在し、カットブロー用エア供給管路34上には電磁開閉弁40が介在し、糸通し用エア供給管路36上には手動式の開閉弁42が介在する。メインノズル140へ緯糸Y1を糸通しする際には、開閉弁42が開かれる。
【0026】
タンデムノズル130には緯入れ用補助エア噴射を行うための緯入れ用エア供給管路24及びエア微噴射を行うための微噴射用エア供給管路26が並列接続されている。緯入れ用エア供給管路24上には電磁開閉弁28が介在されており、微噴射用エア供給管路26上にはスピードコントロールバルブ30が介在されている。スピードコントロールバルブ30はタンデムノズル130におけるエア微噴射の強さを調整するためのものである。
【0027】
次に、タンデムノズル130の入口側に設けられた機械式把持装置160について、図3と図4とを用いて説明する。図3に示すように機械式把持装置160は、直流サーボモータ90と可動部材92と取付部材911と、緯糸案内リング87、88、89とからなる。なお、図1および図3に示すように機械式把持装置160は、エア式把持装置150と緯糸測長貯留装置120との間、より具体的にはタンデムノズル130の入口側に設けられる。
【0028】
直流サーボモータ90は、織機制御コンピュータCの駆動制御回路96により駆動制御され、直流サーボモータ90の回転軸91を図4に示す解放位置と把持位置とに回動させる。この直流サーボモータ90の具体的な制御については後述する。
可動部材92は、U字状に湾曲した高剛性の金属ワイヤからなる。そして、可動部材92は、把持位置で緯糸Y1に当接して緯糸Y1を屈曲させると共に把持片98との間で緯糸Y1を把持する。図4では、可動部材92が把持位置にあるときを実線で示し、解放位置にあるときを2点鎖線で示した。
把持片98は、把持位置で可動部材92に対向配置されており、緯糸Y1を損傷させないように把持片98の当接面98aは平坦で滑らかな表面としてある。また、この把持片98は可動部材92のストッパとしても作用するため、直流サーボモータ90の制御を簡素化できる。
【0029】
取付部材911は、可動部材92と回転軸91とを連結するためのアダプターであり、直流サーボモータ90の回転軸91に固着されている。この取付部材911を介して、可動部材92は回転軸91と一体的に回動する。可動部材92は、U字状の開口側を取付部材911に取付けられている。
【0030】
さらに、可動部材92の両側とU字の中央部とに、可動部材92のワイヤを挟むように緯糸案内リング87、88、89が配設されている。可動部材92が回動すると、緯糸Y1は両側が緯糸案内リング87、88、89に位置規制されているため、緯糸Y1はU字状に、つまり2重に屈曲する。なお、緯糸案内リング87、88、89は、摩耗を考慮して金属製若しくはセラミック製とされており、また、屈曲により緯糸Y1が損傷しないように、緯糸案内リング87、88、89の両端部は曲面形状とされており、また、内周表面は非常に滑らかに仕上げられている。
【0031】
図3に示すように、駆動制御回路96は、ロータリエンコーダ19による所定の織機回転角度検出時期に基づき、機械式把持装置160による緯糸Y1の機械式把持開始時期と機械式把持終了時期と各時期における直流サーボモータ90の駆動量とを制御する。なお、本実施形態では、使用する緯糸の種類に応じて織機制御コンピュータCに予め入力されたエア式把持開始時期に対する遅延角度に基づき、機械式把持開始時期が決定される。また、機械式把持終了時期も同様に、使用する緯糸の種類に応じて織機制御コンピュータCに予め入力されたエア式把持終了時期に対する進行角度に基づき、決定される。
【0032】
なお、引出し解舒制御回路171は、緯糸解舒検出器125により検出された緯糸Y1の引き出し解舒信号とロータリエンコーダ19により検出された織機の回転角度信号とに基づき、電磁ソレノイド124を励消磁して、緯糸係止ピン151の出没を制御する。これにより、緯糸Y1の引出し解舒とその阻止が行われる。
【0033】
織機制御コンピュータCは電磁開閉弁28、38を励消磁制御し、タンデムノズル130とメインノズル140とはそれぞれ、緯入れ用補助エア噴射と緯入れ用エア噴射とを行う。そして、緯入れされた緯糸Y1は、筬打ち直後に電磁カッター60(図1)によって切断分離される。この切断前の所定時期に織機制御コンピュータCは電磁開閉弁55を励磁制御して、エア式把持装置150で把持用エア噴射を行う。これにより、緯糸Y1の把持が開始される(以下、この把持を「エアグリップ」と呼称する)。そして、メインノズル140による緯入れ用エア噴射前の所定時期に、織機制御コンピュータCは電磁開閉弁55を消磁制御して、エアグリップを終了する。
【0034】
また、織機制御コンピュータC(駆動制御回路96)は、切断前の所定時期に直流サーボモータ90を把持位置の方向(図4の矢印方向)へ駆動する。これにより、緯糸Y1は可動部材92と把持片98との間で挟持され、機械式把持装置160による把持が開始される。また、メインノズル140による緯入れ用エア噴射前の所定時期に、織機制御コンピュータCは直流サーボモータ90を解放位置の方向へ駆動し、緯糸Y1の機械式把持装置160による緯糸Y1の把持が終了する。
【0035】
図5を用いて、これらのエア式把持装置と機械式把持装置との作動タイミングをさらに詳しく説明する。なお、本実施形態では織機1回転毎に緯糸Y1、Y2が交互に緯入れされるものと想定して、緯糸Y2の各種タイミングについても図5に併せて示した。また、波形は連続的に順次繰返されるものとする。
図5に示した波形M1は、メインノズル140の緯入れ用エア噴射を制御する電磁開閉弁38の励消磁を表し、波形T1はタンデムノズル130の緯入れ用補助エア噴射を制御する電磁開閉弁28の励消磁を表し、波形A1はエア式把持装置150へのエア供給を制御する電磁開閉弁55の励消磁を表し、波形B1は可動部材92の変位を制御する直流サーボモータ90への電流供給タイミングを表す。なお、波形M2、T2、A2、B2は、緯糸Y2系統に関するものである。図5において、0°は筬打ちタイミングを、θcは電磁カッター60による切断タイミングを、θwは緯糸Y1の緯入れ完了タイミングをそれぞれ示す。
【0036】
機械式把持装置160の直流サーボモータ90は、機械式把持開始時期θb1から機械式把持終了時期θb2までの間、織機制御コンピュータCの駆動制御回路96から電流が供給される。これにより、直流サーボモータ90は可動部材92を把持位置に変位させ、可動部材92は把持片98との間で緯糸Y1を挟持しつつ機械的に把持する。そして、機械式把持終了時期θb2で直流サーボモータ90は可動部材92を解放位置に変位させようとする。そして、可動部材92は緯糸Y1から離脱して、機械式把持装置160は緯糸Y1の把持を終了する。機械式把持開始時期θb1から機械式把持終了時期θb2までの期間が、本発明でいう機械式把持期間Tbに相当する。
【0037】
また、エア式把持装置150の電磁開閉弁55も、エア式把持開始時期θa1からエア式把持終了時期θa2までの間、織機制御コンピュータCから励磁制御を受ける。この間、エア式把持装置150は把持用エア噴射を行い続け、緯糸Y1を屈曲させつつエアグリップする。そして、エア式把持終了時期θa2で電磁開閉弁55は織機制御コンピュータCにより消磁制御され、エア式把持装置150は緯糸Y1のエアグリップを終了する。エア式把持開始時期θa1からエア式把持終了時期θa2までの期間が、本発明でいうエア式把持期間Taに相当する。
【0038】
このエアグリップ終了後、緯入れ用エア噴射開始時期θm1で、織機制御コンピュータCは電磁開閉弁38を励磁制御し、メインノズル140は緯入れ用エア噴射を開始する。そして、織機制御コンピュータCは電磁ソレノイド124を消磁して緯糸係止ピン124aを引込ませ、緯糸Y1の引出し解舒を許容する。こうして緯糸Y1の緯入れが開始される。緯入れ用エア噴射開始時期θm1に続く緯入れ用補助エア噴射開始時期θt1で、織機制御コンピュータCは電磁開閉弁28を励磁制御し、タンデムノズル130は緯入れ用補助エア噴射を開始してメインノズル140による緯入れを補助する。
【0039】
それから所定進角後、緯入れ用補助エア噴射終了時期θt2で、織機制御コンピュータCは電磁開閉弁28を消磁制御し、タンデムノズル130は緯入れ用補助エア噴射を終了する。これに続く緯入れ用エア噴射終了時期θm2で、織機制御コンピュータCは電磁開閉弁38を消磁制御し、メインノズル140は緯入れ用エア噴射を終了する。なお、メインノズル140による緯入れ用エア噴射が終了した後も、筬520に平行して設けられた緯入れガイドにサブノズル510(図1、図3)からエア噴射が順次行われており、このエア流により緯糸Y1は経糸Wの杼口出口まで高速で導かれる。
【0040】
そして、織機制御コンピュータCは、緯糸解舒検出器125から送信された緯糸Y1の解舒検出信号に基づいて電磁ソレノイド124を励磁制御し、緯糸係止ピン124aを突出させ、緯糸Y1の引出し解舒を阻止する。これにより、緯糸Y1の緯入れが完了する(緯入れ完了時期θw)。
【0041】
緯入れ完了後、エア式把持開始時期θa1で織機制御コンピュータCは電磁開閉弁55を励磁制御し、エア式把持装置150は緯糸Y1のエアグリップを開始する。また、エア式把持開始時期θa1に所定期間遅れた(遅延した)機械式把持開始時期θb1で、織機制御コンピュータCは直流サーボモータ90を駆動制御して可動部材92を把持位置に変位させ、機械式把持装置160は緯糸Y1の把持を開始する。ここで、緯糸Y1がメインノズルから抜けにくくするために、機械式把持開始時期θb1をエア式把持開始時期θa1よりも遅延させた。
【0042】
これらによる緯糸Y1の把持がされている状態で、筬打ち(筬打ち時期0°)、電磁カッター60による切断(切断時期θc)がなされる。そして、エア式把持装置150による緯糸Y1のエアグリップは、次回のエア式把持終了時期θa2までの期間(エア式把持期間Ta)継続され、機械式把持装置160による緯糸Y1の把持は、次回の機械式把持終了時期θb2までの期間(機械式把持期間Tb)継続される。ここで、緯入れ性に支障が生じないように機械式把持装置160の応答性を考慮して、機械式把持終了時期θb2をエア式把持終了時期θa2よりも進行させた。
【0043】
なお、波形M1には図示していないが、電磁開閉弁40も織機制御コンピュータCにより励消磁制御され、メインノズル140はカットブロー用エア供給管路34からエア供給を受け、切断時期θcの前後にわたってエア微噴射を行う。ちなみに、タンデムノズル130は、スピードコントロールバルブ30を介して微噴射用エア供給管路26からエアが供給され続けるため、エア微噴射は緯入れ用補助エア噴射直後から行われている。
【0044】
本発明の機械式把持装置160の第2実施形態を図6および図7に示す。この機械式把持装置160は、図3と図4とに示した第1実施形態の直流サーボモータ90の代りにロータリソレノイド390を用いたものである。ロータリソレノイド390は、図7に示す一方向へのみ回転する。
可動部材92は、第1実施形態と同様であるが、ロータリソレノイド390の回転軸391aには取付けられず、回転軸391aと独立して枢支された枢支軸395aに取付部材395を介して取付けられている。そして、その枢支軸395aにはねじりバネ396が設けられており、取付部材395を介して可動部材92が把持位置から解放位置に復帰する方向に付勢している。
【0045】
また、ロータリソレノイド390は、回転軸391aから直角方向に伸びるクランク形状のアーム391を備え、回転軸391aとアーム391とは一体的に回動する。回転軸391aと平行になるアーム391の水平部分に可動部材92のワイヤを挿通する通孔391bが形成されている。
ロータリソレノイド390は、任意の位置で停止状態を維持できないため、機械式把持装置160は、可動部材92を解放位置で停止維持させるためのストッパ397と可動部材92を把持位置で停止維持させるための把持片398とを備える。この把持片398は、把持片98と同様に、可動部材92のストッパとして作用するのみならず、可動部材92が把持位置に変位したときに把持片398と可動部材92との間で緯糸Y1が挟持されるようになっている。
ロータリソレノイド390は、直流サーボモータ90に対して機構が異なるものの、その制御方法に関する基本的な考え方は第1実施形態と共通する。このため、第1実施形態と同様に、エア式把持装置150と機械式把持装置160との把持時期を調整する。
【0046】
また、上述した実施形態では2色の緯糸Y1、Y2を想定したが、単色でも3色以上でも本発明を適用できることに変わりはない。
また、前述の可動部材92は、U字状以外に剛性棒状等でも良く、使用する緯糸Y1の種類や必要とする制動力、把持力に応じて適宜選択すれば良い。
また、前述の回転軸91には、可動部材92を把持位置から解放位置に又は解放位置から把持位置に付勢するねじりバネ等を付加しても良い。可動部材92の解放位置や把持位置への変位を素早く行わせることができる。
また、前述の機械式把持開始時期、機械式把持終了時期、機械式把持期間、更にはエア式把持開始時期、エア式把持終了時期、エア式把持期間等の時期を、織機制御コンピュータCに別途設けた演算回路により学習制御させて、適切な時期に随時調整されるようにしても良い。
【0047】
また、前述のロータリソレノイド390に、正逆回転可能なロータリソレノイドを使用しても良い。
また、前述のねじりバネ396の代りに、回転軸391aの下部にカウンタウェイトを配設して、ロータリソレノイド390が消磁状態のときカウンタウェイトの自重でアーム391が回転して解放位置に復帰するようにしても良い。
このように、本発明のエアジェットルームにおける緯糸把持装置には種々の実施形態を考えることができる。従って、本発明のエアジェットルームにおける緯糸把持装置が、上述した実施形態に限られるものでないことは言うまでもない。
【0048】
【発明の効果】
本発明のエアジェットルームにおける緯糸把持装置によれば、エア式把持装置と機械式把持装置とを備えると共に、機械式把持装置による機械式把持期間がエア式把持装置によるエア式把持期間より短期に設定されているため、緯糸の損傷をより低減・抑制しつつ確実な緯糸の把持ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態のエアジェットルームを示す概要図である。
【図2】本発明の第1実施形態のエア式把持装置とメインノズルとを示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の機械式把持装置を示す概要図である。
【図4】図3に示した機械式把持装置のA−A断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態のエア式把持装置と機械式把持装置との作動時期を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態の機械式把持装置を示す概要図である。
【図7】図6に示した機械式把持装置のB−B断面図である。
【符号の説明】
120 緯糸測長貯留装置
130 タンデムノズル
140 メインノズル
150 エア式把持装置
160 機械式把持装置
Ta エア式把持期間
θa1 エア式把持開始時期
θa2 エア式把持終了時期
Tb 機械式把持期間
θb1 機械式把持開始時期
θb2 機械式把持終了時期
θc 切断時期
Claims (1)
- 緯糸の貯留と測長とを行う緯糸測長貯留装置と、
該緯糸測長貯留装置から解舒された該緯糸を経糸杼口内に緯入れするために緯入れ用エア噴射を行うメインノズルと、
該メインノズルの入り口側に前記メインノズルと一体的に配設されると共に前記緯糸を挿通するスレッドガイドに貫設した把持用エア通路に該緯糸を横切るべく供給されたエア流により該緯糸を該把持用エア通路内のエア排出側に屈曲させて把持することで該緯糸の切断時の該メインノズルからの糸抜けを防止し得るエア式把持装置と、
該緯糸測長貯留装置と該エア式把持装置との間に該緯糸を機械的に把持する機械式把持装置とを備えるエアジェットルームにおいて、
前記エア式把持装置が前記緯糸を把持するエア式把持期間は、緯入れされた該緯糸が切断される切断時期を含み、
前記機械式把持装置が前記緯糸を把持する機械式把持期間は、該切断時期を含むと共に前記エア式把持期間よりも短期設定され、
前記機械式把持装置が前記緯糸の把持を開始する機械式把持開始時期は、前記エア式把持装置が該緯糸の把持を開始するエア式把持開始時期よりも遅延設定され、
前記機械式把持装置が前記緯糸の把持を終了する機械式把持終了時期は、前記エア式把持装置が該緯糸の把持を終了するエア式把持終了時期よりも先行設定されていることを特徴とするエアジェットルームにおける緯糸把持装置。
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