[実施の形態1]
以下に添付図面を参照して、本発明に係る回転機構および掘削機の好適な実施の形態1を詳細に説明する。なお、この実施の形態1によりこの発明が限定されるものではない。
図1は本発明に係る回転機構を用いた掘削機の実施の形態1を示す概略側面図、図2は図1に示す回転機構を軸方向(前方向)から視た概念図、図3は図1に示す回転機構の分解斜視図である。
図1に示すように掘削機は、胴部1と掘削カッタ2とを備えている。胴部1は、掘削カッタ2を支持しつつ掘削カッタ2を駆動するものであって、掘削機の外郭をなし、筒状とした内部に回転機構3を有している。
回転機構3は、軸受31、環状軸32、回転軸33、保持部材37および駆動部36を有している。
軸受31は、胴部1に固定してあり、胴部1の前後方向に沿って配置した所定の固定中心線Pを中心として環状の内周部311を有している。
環状軸32は、固定中心線Pと平行にして胴部1の前後方向に沿って配置した所定の移動中心線Gを中心とした内周部321および外周部322を有してほぼ円環状に形成してある。この環状軸32は、軸受31の環状内に内装してあり、その外周部322を軸受31の内周部311に対して当接係合してある。なお、環状軸32は、内周部321および外周部322を一体に有した環状体、あるいは内周部321を有した管体と外周部322を有した管体とを組み合わせた構成とすることができる。
回転軸33は、軸受31の固定中心線Pを回転中心として回転可能に胴部1に支持してある。この回転軸33は、環状軸32の環状内に内装してあり、ほぼ円柱状の外周部331を環状軸32の内周部321に対して当接係合してある。
保持部材37は、環状軸32の内周とほぼ同じ外周を有して所定厚さの円板状に形成してあり、環状軸32の内周に摺接して移動中心線Gを中心に回動する態様で環状軸に内装してある。また、保持部材37には、固定中心線Pを中心として回転軸33の外周とほぼ同じ内周を有した挿通孔371が偏心して設けてある。この挿通孔371には、回転軸33が回動可能に挿通支持してある。すなわち、保持部材37は、回転軸33を回動可能に挿通して回転軸33の外周部331と環状軸32の内周部321との係合を常に保持する。
駆動部36は、回転軸33を回転させるものであり、例えばモータなど胴部1に設けた駆動源からなる。なお、駆動部36は、図には明示しないが駆動源と回転軸33との間に適宜減速機構を有していてもよい。
なお、軸受31と環状軸32との係合、環状軸32と回転軸33との係合には、例えば歯車の噛合による係合がある。あるいは、高摩擦材などを介して接触滑りが防止された係合であってもよい。
掘削カッタ2は、胴部1の前側に延出した環状軸32の前端に設けてある羽根部材21からなる。羽根部材21は、固定中心線Pを中心とした所望の正多角形状の輪郭内で当該正多角形状の角数から1つ減らした数をもって環状軸32に設けてあって、移動中心線Gから放射方向に延在しつつ等角度に同じ長さで配置してある。例えば、図2に示すように所望の正多角形状が正四角形である場合には、羽根部材は3つであり、固定中心線Pを中心とした正四角形の輪郭に先端Tを当接するようにして、移動中心線Gから放射方向に延在しつつ等角度に同じ長さで配置してある。そして、羽根部材の前面に掘削ビット(図示せず)を設けることによって掘削カッタ2が構成される。また、移動中心線G、固定中心線Pおよび掘削カッタ2の先端Tを、この順序で一直線上に並べた場合、掘削カッタ2の先端Tは、所望の正多角形状の1辺の中央にあり、この辺と前記一直線は直交する。
ここで、上記軸受31、環状軸32、回転軸33、および掘削カッタ2(羽根部材21)に係る寸法設定について説明する。図2に示すように軸受31の内周部311の半径を[R]、環状軸32の外周部322の半径を[R’]、移動中心線Gからの羽根部材21の長さを[L]として、正n角形状を所望とする場合に、n≧3、R:R’=n:(n−1)、L≧R×(n+1)/nと設定する。固定中心線Pから移動中心線Gに至る偏心量[r]は、r=R−R’となる。
上記構成の掘削機は、回転機構3において駆動部36の駆動力を回転軸33に伝達することによって、回転軸33が軸受31の固定中心線Pを中心として回転(例えば図2における時計回り方向)する。すると、回転軸33の外周部331に係合する環状軸32が移動中心線Gを中心として回転軸33と同方向(例えば図2における時計回り方向)に回転する。このとき、保持部材37は、移動中心線Gを中心に回動するとともに、回転軸33の回動を許容することによって回転軸33の外周部331と環状軸32の内周部321との係合を常に保持する。すなわち、環状軸32は、回転軸33の回転に伴って、保持部材37に保持された形態で移動中心線Gを中心として回転する。さらに、移動中心線Gを中心として回転する環状軸32は、その外周部322が軸受31の内周部311に係合しているため、当該軸受31の内周部311に沿って軸受31の固定中心線Pの周りに回転軸33と逆方向(例えば図2における反時計回り方向)に輪転運動(公転)することになる。このため、環状軸32に設けた掘削カッタ2(羽根部材21)は、環状軸32の輪転運動に伴って自転および公転移動する。移動する掘削カッタ2の先端Tは、所望の正多角形状(正n角形状)の軌跡をなす。
具体的には、正四角形状(n=4)について図4〜図8に例示するように、環状軸32が固定中心線Pを中心に1回転公転すると、当該環状軸32は移動中心線Gの周りに1/3自転する。したがって、図4〜図8における掘削カッタ2の先端T(A,B,C)の移動位置で示すように掘削カッタ2も同様に公転および自転し、図8に示すようにほぼ正四角形(正方形)状の軌跡をなす。この結果、ほぼ正四角形の断面の掘削孔Hを掘進することが可能になる。この掘削孔Hは、一般的な断面円形の掘削孔と比較して、不要な空間を掘削せずに利用空間のみの掘削で得られるため、必要以上の用地面積を要さないことに加えて建設費を低減することが可能になる。
さらに、掘削カッタ2を設けた環状軸32は、保持部材37によって保持された形態で公転および自転する構成であるため、従前のようにルーロー三角形の外幅を一辺とする正方形枠にルーロー三角形状の軸を支持して回転させる必要がない。すなわち、正方形枠が必要ない。このため、掘進した掘削孔Hの断面形状に対して、掘削機の胴部1の前面視の輪郭を小さく形成することが可能になる。この結果、掘削カッタ2が先行して掘進した掘削孔Hに胴部1が通過できるので、掘削断面がほぼ矩形状の掘削孔Hの掘進を行う掘削機を得ることが可能になる。この掘削機は、上記のごとく簡素な機構でほぼ矩形状の断面の掘削孔Hを掘進するため、故障が起こり難く信頼性が高く、コストが嵩むことがない。
なお、上記構成の掘削機によって掘削した掘削孔Hは、ほぼ矩形状の断面の角部が丸みを帯びることになる。丸みを帯びた断面ほぼ矩形状の掘削孔Hは、断面矩形状と比較して隅部への応力集中を緩和することができるので掘削に際して適している。
ところで、上記構成の掘削機において、複数の回転機構3を回転軸33が平行となるように設け、相互の回転機構3の各掘削カッタ2の軌跡が前面視で重複する態様で隣接する相互の掘削カッタ2の位置を回転軸33の軸方向でずらして配置する。このように構成すれば、ほぼ正四角形状の掘削断面を一連に連続したほぼ長方形状の掘削断面の掘削孔Hを得ることが可能になる。また、複数の回転機構3を回転軸33が平行となるように設け、相互の回転機構3の掘削カッタ2の軌跡が前面視で重複する態様で配置する場合、隣接する各掘削カッタ2を同一面上に配置しつつ、隣接する各回転軸33を逆方向に回転駆動する。このように構成しても、ほぼ正四角形状の掘削断面を一連に連続したほぼ長方形状の掘削断面の掘削孔Hを得ることが可能になる。
すなわち、ほぼ正四角形状の掘削断面である複数の掘削孔Hを一連に連続したほぼ長方形状の掘削断面の掘削を行うことが可能になる。また、各掘削カッタ2について相互の前面を同一面上に配置することによって、掘削した先端部を凹凸なく平らに掘進することが可能になる。
以下、上述した回転機構3における固定中心線Pから移動中心線Gに至る距離である偏心量[r]について説明する。
上述したように、回転軸33が回転した場合に、回転軸33の外周部331に係合する環状軸32が公転して、その中心である移動中心線Gを所定軌道で移動させる。そして、ほぼ正多角形状断面の掘削孔Hを掘削する場合には、掘削カッタ2を含む環状軸32の中心である移動中心線Gに対する回転軸33の中心(固定中心線P)の移動軌跡がほぼ円形で、その半径の偏心量r=R−R’は、以下の式から求めることができる。
すなわち、例えば所望の正六角形状(正n角形状)の輪郭をなす掘削カッタ2(羽根部材21)は、図9に示すように移動中心線Gから放射状に(n−1)=(6−1)=5本である。そして、各掘削カッタ2(羽根部材21)の相互の角度を2θとする。このθは、下記数1であらわされる。
そして、正n角形状の高さをD、掘削カッタ2の長さ(G〜T)をLとすると、3辺がL,L,Dの二等辺三角形の余弦定理より、下記数2が得られる。
すなわち、正n角形状の高さDは、下記数3に示すように正n角形状の中心(固定中心線P)から辺中央までの長さの2倍となる。
そして、高さDの中心(固定中心線P)が回転中心とすると、移動中心線Gとの偏心量r=R−R’は、下記数4および数5で求められる。
なお、正多角形状の辺が内側に凹まないよう、Lをここで求めた値以上とする。また、正n角形状の1辺の長さaは、下記数6で求められる。
また、正n角形状の頂点から中心までの長さ(外接円半径)bは、下記数7で求められる。
このように、固定された軸受31の内周部311の半径R、この内周部311に内接する環状軸32の外周部322の半径R’から、偏心量r=R−R’を求め、数5〜数7で掘削カッタ2(羽根部材21)の長さL、正n角形状の1辺の長さa、正n角形状の外接円半径bが得られる。逆に、a、bを設定した場合には、数6または数7から偏心量rを求めて、数1からLを求め、下記数8、数9および数10からR,R’を求める。
なお、上述したように軸受31の内周部311の半径Rと、環状軸32の外周部322の半径R’の比率は、R:R’=n:(n−1)とする。そして、固定中心線Pを原点として移動中心線Gの位置を定める。移動中心線Gからは、長さLの掘削カッタ2(羽根部材21)が延在する。そして、例えば図2に示す正n角形状の横辺をX座標、縦辺をY座標とする座標系で、掘削カッタ2の先端Tの座標は、固定中心線P、移動中心線Gおよび掘削カッタ2の先端Tが直線上に並んだときからの移動中心線Gの回転角をφとすると、下記数11および数12から固定中心線Pを中心としたほぼ正n角形状(図2の場合ほぼ正四角形状)が得られる。
以下、数5を適用した算定例であって、横辺をX座標、縦辺をY座標とする座標系において回転機構3を回転させたときの正多角形状の軌跡を見る。図10は正三角形状の軌跡を示す図であり、単位をm(メートル)とする。ここでは、R=6m,R’=4m,L=8.4mとし、偏心量r=2mとする。これにより、図10に示す正三角形状断面の掘削孔Hが得られる。この結果、例えば上部を車道(2車線)、下部を下水道に利用する複合トンネルとなる。また、上記形状を上下逆向きにすることで、土被りの小さい箇所でも掘削地盤の崩壊を生じ難くできる。
図11は正四角形状の軌跡を示す図であり、単位をm(メートル)とする。ここでは、R=4m,R’=3m,L=8mとし、偏心量r=1mとする。これにより、図11に示す正四角形状断面の掘削孔Hが得られる。この結果、例えば道路・鉄道などの有効空間を円形断面よりも小さい外径寸法のトンネルとなる。
図12は正六角形状の軌跡を示す図であり、単位をm(メートル)とする。ここでは、R=3m,R’=2.5m,L=10mとし、偏心量r=0.5mとする。これにより、図12に示す正六角形状断面の掘削孔Hが得られる。この結果、例えば立坑掘削機によって施工した正六角形状の孔を組み合わせてハニカム状の地中壁が得られる。
図13は正八角形状の軌跡を示す図であり、単位をm(メートル)とする。ここでは、R=2m,R’=1.75m,L=9.5mとし、偏心量r=0.25mとする。これにより、図13に示す正八角形状断面の掘削孔Hが得られる。
なお、上記回転機構3は、移動中心線G、固定中心線Pおよび掘削カッタ2の先端Tを、この順序で直線上に並べた態様において、当該直線と直交する方向が所望とする正多角形状の1辺の方向となる。すなわち、所望とする正多角形状の軌跡の配置は、移動中心線G、固定中心線Pおよび掘削カッタ2の先端Tの位置設定によって決められる。掘削機の場合、移動中心線G、固定中心線Pおよび掘削カッタ2の先端Tの位置に合わせて設置角度を調整すれば、掘削孔Hの断面配置を設定できる。
このように、上述した回転機構3は、所定の固定中心線Pを中心とした環状の内周部311を有する固定の軸受31と、固定中心線Pに平行な所定の移動中心線Gを中心とした内周部321および外周部322を有して環状に形成してあってその外周部322を軸受31の内周部311に当接係合して軸受31に内装した環状軸32と、固定中心線Pを回転中心として回転可能に設けてあって環状軸32の内周部321に対して自身の外周部331を当接係合した回転軸33と、移動中心線Gを中心に回動する態様で環状軸32に内装してあるとともに回転軸33を支持して当該回転軸33の外周部331と環状軸32の内周部321との係合を保持しつつ軸受31の内周部311と環状軸32の外周部322との係合を保持する保持部材37と、回転軸33を回転駆動する駆動部36と、固定中心線Pを中心とした所望の正多角形状の輪郭内で当該正多角形状の角数から1つ減らした数をもって環状軸32に設けてあって移動中心線Gから放射方向に延在しつつ等角度に同じ長さで配置した掘削カッタ2(羽根部材21)とを備えている。
そして、駆動部36の駆動力を回転軸33に伝達することによって、回転軸33が軸受31の固定中心線Pを中心として回転する。すると、回転軸33の外周部331に係合する環状軸32が移動中心線Gを中心として回転軸33と同方向に回転する。また、移動中心線Gを中心として回転する環状軸32は、その外周部322が軸受31の内周部311に係合しているため、当該軸受31の内周部311に沿って軸受31の固定中心線Pの周りに回転軸33と逆方向に輪転運動(公転)することになる。このため、環状軸32に設けた掘削カッタ2(羽根部材21)は、環状軸32の輪転運動に伴ってその先端Tが移動する。移動する掘削カッタ2の先端Tは、所望の正多角形状の軌跡をなし、ほぼ正多角形状断面の掘削孔Hが得られる。
すなわち、回転機構3は、回転軸33が軸受31の固定中心線Pを中心として回転駆動され、かつ、環状軸32が回転軸33の回転に伴って保持部材37に保持された形態で移動中心線Gを中心として回転する。この結果、回転軸33が軸受31の固定中心線P上でその軸心がずれることなく回転するため、回転ぶれや振動を低減することが可能になる。また、環状軸32が回転軸33の回転に伴って保持部材37に保持された形態で移動中心線Gを中心として回転するため、回転軸33と環状軸32との間に従前の自在継手を要することがないので、自在継手に係るコストを低減することが可能になる。
さらに、環状軸32が保持部材37に保持された形態で移動中心線Gを中心として回転するため、従前の枠体を必要とせずにほぼ正多角形状の軌跡をなすことが可能になる。このため、掘進した掘削孔Hの断面形状に対して、掘削機の胴部1の前面視の輪郭を小さく形成することが可能になる。この結果、掘削カッタ2が先行して掘進した掘削孔Hに胴部1が通過できるので、ほぼ多角形状断面の掘削孔Hの掘進を行う掘削機を得ることが可能になる。
また、上記回転機構3は、軸受31の内周部311の半径を[R]、環状軸32の外周部322の半径を[R’]、移動中心線Gからの羽根部材21の長さを[L]として、正n角形状を所望とする場合に、n≧3、R:R’=n:(n−1)、L≧R×(n+1)/nと設定してある。この結果、掘削された掘削孔Hは、ほぼ正多角形状断面の各辺が平行もしくは掘削孔Hの外側に向けて凸状に形成されるため、力学的に強度を有するものとなる。また、必要に応じて、偏心量r=R−R’を小さく調整する、もしくは羽根部材21の長さLを長く調整することで、ほぼ多角形状断面の各辺が外側に向けて丸みを帯びた断面形状の掘削孔Hを得ることが可能である。
また、回転軸33が固定中心線Pに位置して回転駆動されることから、その前端を掘削カッタ2の前側に延在して別の掘削カッタを装備することが可能である。この結果、ほぼ正多角形状断面の掘削孔Hを掘削する前に円形の補助掘削孔を掘削したり、掘削断面の途中までをほぼ正多角形状断面にしてその先を円形状断面とすることができる。また、回転軸33の前端部に掘削ドリルを設ければ、掘削孔Hを掘削する前に削岩が可能になり、掘削の負荷を低減できる。
なお、掘削断面の途中までをほぼ正多角形状断面にしてその先を円形状断面とする場合、例えば、場所打ちコンクリート杭の杭頭のみをほぼ正方形断面にして、残りの下部を円形とする。このようにすることで、図14に示すように基礎と接合される応力が大きい杭頭だけをほぼ正方形状断面として、X,Y方向に配筋される基礎梁やマット配筋との干渉を避けつつ、杭頭に大量の主筋を配することが可能になる。また、ほぼ正方形状断面なので外周フープ100だけでなく、断面中央部にトレミー管101のスペースを確保しつつ両端にフック102aを有した中子フープ102を追加することで、せん断耐力を容易に増大させて杭頭部でのせん断破壊を防止することができる。従前の円形状断面の杭頭では、拡頭断面でもある程度の耐力増加はできたが、杭頭主筋配筋が円周上に並ぶことから基礎配筋との干渉問題があり、せん断耐力確保のために過大な杭頭断面積となる場合も多く、本実施の形態1ではこれらを根本的に解決する。
また、複数の回転機構3を回転軸33が平行となるように設け、相互の回転機構3の各掘削カッタ2の軌跡が前面視で重複する態様で隣接する相互の掘削カッタ2の位置を回転軸33の軸方向でずらして配置する。あるいは、隣接する各掘削カッタ2を同一面上に配置しつつ、隣接する各回転軸33を逆方向に回転駆動する。このように構成すれば、ほぼ正多角形状の掘削断面を組み合わせて一連に連続した掘削断面の掘削孔Hを得ることが可能である。さらに、上記回転機構3と従前の円形掘削の回転機構とを組み合わせれば、多角形状の掘削断面と円形状の掘削断面とを組み合わせて一連に連続した掘削断面の掘削孔Hを得ることが可能である。なお、各掘削カッタ2について相互の前面を同一面上に配置すれば、相互の回転機構3の間において掘削した先端部を凹凸なく平らに掘進することが可能になる。
また、回転軸33が固定中心線Pに位置して回転駆動されることから、従前からある掘削機の回転軸の前端部構成を上述した機構に変更することで上記掘削機を容易に得ることが可能である。
ところで、上述した実施の形態1では、回転軸33の外周部331と環状軸32の内周部321との係合を常に保持しつつ、軸受31の内周部311と環状軸32の外周部322との係合を常に保持する保持部材37として、環状軸32の内周に摺接して移動中心線Gを中心に回動し、回転軸33を回動可能に挿通支持する構成としてある。これに限らず、例えば図15に示すように中心軸34および従動軸35で構成した保持部材37であってもよい。中心軸34は、環状軸32の移動中心線G上に設けてあって、環状軸32の環状内に内装してあり、ほぼ円柱状の外周部341を回転軸33の外周部331に対して当接係合してある。従動軸35は、回転軸33と同じ直径の外周部351を有して回転軸33と平行に設けてあって、環状軸32の環状内に内装してあり、ほぼ円柱状の外周部351を環状軸32の内周部321および中心軸34の外周部341に当接係合してある。この従動軸35は、複数(図15では2つ)設けてあって、回転軸33を伴って移動中心線Gを中心として120°間隔で配置してある。すなわち、環状軸32は、回転軸33の回転に伴って、回転軸33、中心軸34および従動軸35によって保持された形態で移動中心線Gを中心として回転する。また、図には明示しないが、軸受31の内周部311と環状軸32の外周部322との間に保持部材が係合されることによっても、回転軸33を支持して当該回転軸33の外周部331と環状軸32の内周部321との係合を保持しつつ、軸受31の内周部311と環状軸32の外周部322との係合を保持することになるので、このような形態であってもよい。この場合の保持部材(図示なし)は、軸受31の内周とほぼ同じ外周を有して所定厚さの円板状に形成してあり、環状軸32の外周に摺接して固定中心線Pを中心に回動する態様で軸受31に内装してある。そして、この保持部材(図示なし)には、移動中心線Gを中心として環状軸32の外周とほぼ同じ内周を有する貫通孔が偏心して設けられている。もちろん、この図示しない保持部材と図1や図15に示す保持部材37とをそれぞれ組み合わせて双方用いてもよい。
なお、上述した実施の形態1では、回転機構3を掘削機に適用した例で説明しているが、上記回転機構3は掘削機に限るものではない。例えばほぼ多角形状の軌跡をなす上記回転機構3の他の用途として、地中連続壁などでの多角形状断面の掘削に用いたり、セメントなどの硬化材を地盤中に注入する地盤改良で地盤を硬化材とともに混練り攪拌するときに用いたり、あるいは工作物の多角形状の切削に用いたり、地盤以外の混練り物製造の攪拌に用いたりするなど、様々な用途が考えられる。すなわち、地盤改良や混練り攪拌に上記回転機構3を用いる場合には、羽根部材21が攪拌羽根となる。また、切削に上記回転機構3を用いる場合には、羽根部材21に切削刃を設けて切削カッタとなる。したがって、本発明の実施の形態1での掘削は、攪拌や切削を含む意味で用いている。
[実施の形態2]
以下に添付図面を参照して、本発明に係る掘削機の好適な実施の形態2を詳細に説明する。なお、この実施の形態2によりこの発明が限定されるものではない。
図16は本発明に係る掘削機の実施の形態2を示す概略側面図、図17は図16に示す掘削機を軸方向から視た概念図である。なお、本実施の形態2において、上述した実施の形態1と同等部分には同一の符号を付す。
図16に示すように掘削機は、胴部1と掘削カッタ2(実施の形態1における羽根部材21)とを備えている。胴部1は、掘削カッタ2を支持しつつ掘削カッタ2を駆動するものであって、掘削機の外郭をなし、その内部に駆動機構(実施の形態1における回転機構)3を有している。
駆動機構3は、軸受31、環状軸32、回転軸33、中心軸34、従動軸35および駆動部36を有している。
軸受31は、胴部1に固定してあり、胴部1の前後方向に沿って配置した所定の固定中心線Pを中心として環状の内周部311を有している。
環状軸32は、固定中心線Pと平行にして胴部1の前後方向に沿って配置した所定の移動中心線Gを中心とした内周部321および外周部322を有してほぼ円環状に形成してある。この環状軸32は、軸受31の環状内に内装してあり、その外周部322を軸受31の内周部311に対して当接係合してある。なお、環状軸32は、内周部321および外周部322を一体に有した環状体、あるいは内周部321を有した管体と外周部322を有した管体とを組み合わせた構成とすることができる。
回転軸33は、軸受31の固定中心線Pを回転中心として回転可能に胴部1に支持してある。この回転軸33は、環状軸32の環状内に内装してあり、ほぼ円柱状の外周部331を環状軸32の内周部321に対して当接係合してある。
中心軸34は、環状軸32の移動中心線G上に設けてある。この中心軸34は、環状軸32の環状内に内装してあり、ほぼ円柱状の外周部341を回転軸33の外周部331に対して当接係合してある。なお、中心軸34は、実施の形態1における保持部材37を構成する。
従動軸35は、回転軸33と同じ直径の外周部351を有して回転軸33と平行に設けてある。この従動軸35は、環状軸32の環状内に内装してあり、ほぼ円柱状の外周部351を環状軸32の内周部321および中心軸34の外周部341に当接係合してある。また、従動軸35は、複数(本実施の形態2では2つ)設けてあって、回転軸33とともに移動中心線Gを中心として120°間隔で配置してある。なお、従動軸35は、実施の形態1における保持部材37を構成する。
駆動部36は、回転軸33を回転させるものであり、例えばモータなど胴部1に設けた駆動源からなる。なお、駆動部36は、図には明示しないが駆動源と回転軸33との間に適宜減速機構を有していてもよい。
なお、軸受31と環状軸32との係合、環状軸32と回転軸33および従動軸35との係合、中心軸34と回転軸33および従動軸35との係合には、例えば歯車の噛合による係合がある。あるいは、高摩擦材などを介して接触滑りが防止された係合であってもよい。
掘削カッタ2は、胴部1の前側に延出した環状軸32の前端に設けてあって、移動中心線G上に中心(重心)を置いた仮想ルーロー三角形状の範囲内であって、少なくとも中心(移動中心線G)と頂点(T)とを結ぶ延長線に沿って配置してある。図には明示しないが掘削カッタ2の前面には、掘削ビットが設けてある。ルーロー三角形は、図17に一点鎖線で示すように正三角形の各頂点を中心として他の頂点を結ぶ円弧を描いてなる形状をなし、その外幅(差し渡し幅)がいずれも定幅なものである。
ここで、上記軸受31、環状軸32、回転軸33、中心軸34、および掘削カッタ2の寸法設定について説明する。図18は図17に示す掘削機の寸法設定を示す概念図である。図18に示すように回転軸33の中心(固定中心線P)から中心軸34の中心(移動中心線G)に至る距離(偏心量)を[r]として、軸受31の内周部311の直径を[8r]、環状軸32の外周部322の直径を[6r]、および環状軸32の内周部321の直径を[h(回転軸の直径)+2r]と設定する。かつ、掘削カッタ2のルーロー三角形の外幅を[a]として、掘削カッタ2を配置するルーロー三角形の中心(移動中心線G)と頂点Tとを結ぶ延長線Lを[L=0.5a+r]と設定する。
上記構成の掘削機は、駆動機構3において駆動部36の駆動力を回転軸33に伝達することによって、回転軸33が軸受31の固定中心線Pを中心として回転(例えば図17における時計回り方向)する。すると、回転軸33の外周部331に係合する中心軸34が移動中心線Gを中心として回転軸33とは逆方向(例えば図17における反時計回り方向)に回転する。さらに、中心軸34の外周部341に係合する従動軸35が回転軸33と同方向(例えば図17における時計回り方向)に回転する。同時に、回転軸33が回転することによって、回転軸33の外周部331および従動軸35の外周部351に係合する環状軸32が移動中心線Gを中心として回転軸33および従動軸35と同方向(例えば図17における時計回り方向)に回転する。すなわち、環状軸32は、回転軸33の回転に伴って、回転軸33および従動軸35に支持された形態で移動中心線Gを中心として回転する。また、移動中心線Gを中心として回転する環状軸32は、その外周部322が軸受31の内周部311に係合しているため、当該軸受31の内周部311に沿って軸受31の固定中心線Pの周りに回転軸33と逆方向(例えば図17における反時計回り方向)に輪転運動(公転)することになる。このため、環状軸32に設けた掘削カッタ2は、環状軸32の輪転運動に伴ってその先端であるルーロー三角形の頂点Tが移動する。移動する掘削カッタ2の先端(頂点T)は、ルーロー三角形の外幅を一辺とし軸受31の固定中心線Pを中心とした正方形に近いほぼ矩形状の軌跡をなす。
なお、上記寸法設定によって「環状軸32の外周部322の直径[6r]」:「軸受31の内周部311の直径[8r]」、すなわち3:4に設定してあるため、図19〜図23に示すように環状軸32が移動中心線Gを中心に1回転すると、当該環状軸32は固定中心線Pの周りに1/3回転分公転することになる。したがって、図19〜図23における掘削カッタ2の先端A,B,Cの移動位置で示すように掘削カッタ2も同様に公転回転する。
この結果、図17に示すようにほぼ矩形状の断面の掘削孔Hを掘進することが可能になる。この掘削孔Hは、断面円形の掘削孔と比較して、不要な空間を掘削せずに利用空間のみの掘削で得られるため、必要以上の用地面積を要さないことに加えて建設費を低減することが可能になる。
さらに、掘削カッタ2を設けた環状軸32は、回転軸33および従動軸35に支持された形態で回転する構成であるため、従前のようにルーロー三角形の外幅を一辺とする正方形枠にルーロー三角形状の軸を支持して回転させる必要がない。すなわち、正方形枠が必要ない。このため、掘進した掘削孔Hの断面形状に対して、掘削機の胴部1の前面視の輪郭を小さく形成することが可能になる。この結果、掘削カッタ2が先行して掘進した掘削孔Hに胴部1が通過できるので、掘削断面がほぼ矩形状の掘削孔Hの掘進を行う掘削機を得ることが可能になる。この掘削機は、上記のごとく簡素な機構でほぼ矩形状の断面の掘削孔Hを掘進するため、故障が起こり難く信頼性が高く、コストが嵩むことがない。
なお、上記構成の掘削機によって掘削した掘削孔Hは、ほぼ矩形状の断面の角部が丸みを帯びることになる。丸みを帯びた断面ほぼ矩形状の掘削孔Hは、断面矩形状と比較して隅部への応力集中を緩和することができるので掘削に際して適している。
ところで、上記構成の掘削機において、回転軸33を複数平行に設けた上記駆動機構3によって掘削カッタ2を複数隣接し、相互の掘削カッタ2の軌跡が前面視で重複する態様で隣接する相互の掘削カッタ2の位置を回転軸33の軸方向でずらして配置する。このように構成すれば、ほぼ正方形(ほぼ矩形状)の掘削断面を一連に連続したほぼ長方形(ほぼ矩形状)の掘削断面の掘削孔を得ることが可能になる。
また、回転軸33を複数平行に設けた上記駆動機構3によって掘削カッタ2を複数隣接し、相互の掘削カッタ2の軌跡が前面視で重複する態様で配置する場合、隣接する各掘削カッタ2を同一面上に配置しつつ、隣接する各回転軸33を逆方向に回転駆動する。このように構成すれば、ほぼ正方形(ほぼ矩形状)の掘削断面を一連に連続したほぼ長方形(ほぼ矩形状)の掘削断面の掘削孔を得ることが可能になる。
すなわち、ほぼ正方形(ほぼ矩形状)の掘削断面である複数の掘削孔Hを一連に連続したほぼ長方形(ほぼ矩形状)の掘削断面の掘削を行うことが可能になる。また、各掘削カッタ2について相互の前面を同一面上に配置することによって、掘削した先端部を凹凸なく平らに掘進することが可能になる。
以下、上述した掘削機における回転軸33の中心(固定中心線P)から中心軸34の中心(移動中心線G)に至る距離[r]について説明する。
上述したように、回転軸33が回転した場合に、回転軸33の外周部331に係合する環状軸32が公転して、その中心である中心軸34の中心(移動中心線G)を所定軌道で移動させる。そして、ほぼ正方形状の掘削孔Hを掘削する場合には、掘削カッタ2をなす仮想ルーロー三角形上において、当該ルーロー三角形の中心(重心)である中心軸34の中心(移動中心線G)に対する回転軸33の中心(固定中心線P)の移動軌跡がほぼ円形で、その半径である[r]は、仮想ルーロー三角形の外幅[a]の7.7%〜8.2%程度となることが幾何学的に分かっている。
すなわち、図24に示すようにルーロー三角形の外幅[a]を一辺とした正方形の横辺をX座標、縦辺をY座標とする座標系で、当該正方形に内接する形態でルーロー三角形を回転させたときのルーロー三角形上での正方形の中心位置(回転軸33の中心(固定中心線P))の軌跡を見る。図24において破線で示す軌跡は、回転軸33の中心(固定中心線P)と中心軸34の中心(移動中心線G)との距離[r](偏心量)を下記数13で示す0.0774aで一定としたものである。
しかし、上記破線で示す軌跡は、実際のルーロー三角形上での正方形の中心位置(回転軸33の中心(固定中心線P))の軌跡(図24に実線で示す)に対して一致するのは3箇所のみである。そして、破線で示す軌跡の場合は、掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が孔の内側に向けてやや凹状に形成されることになる。このように掘削された掘削孔は、力学的に強度が低下するため好ましくない。
上記実線で示す軌跡は、下記数14で示す0.0816aを含んで、回転軸33の中心(固定中心線P)と中心軸34の中心(移動中心線G)との距離[r](偏心量)が0.0774a〜0.0816aとなる。
また、回転軸33の中心(固定中心線P)と中心軸34の中心(移動中心線G)との距離[r](偏心量)が大きくなるほど掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が孔の内側に向けて凹状に形成されることになる。したがって、距離[r]が、仮想ルーロー三角形の外幅[a]の6%〜8%であれば掘削される掘削孔Hの断面形状は理想的なほぼ矩形状となる。
これを具体的に示すと、図17に示す状態からルーロー三角形(掘削カッタ2)が120°時計回りに回転すると、掘削カッタ2の中心であってルーロー三角形の重心である移動中心線Gは、回転軸33の中心である固定中心線Pの周りに360°反時計回りに回転する。したがって、環状軸32の中心(移動中心線G)が中心(固定中心線P)に対してφ回転したとき、掘削カッタ2は中心(移動中心線G)に対して−φ/3回転する。すなわち、上記正方形のX,Y座標において、掘削カッタ2の先端(ルーロー三角形の頂点)の軌跡は、下記数15および数16によって求められる。
そして、上記数15および数16で求めた掘削カッタ2の先端の軌跡を図25〜図33に示す。図25は回転軸33の中心(固定中心線P)と中心軸34の中心(移動中心線G)との距離[r](偏心量)が0.1a(10%)の場合の掘削カッタ2の先端の軌跡であり、掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が孔の内側に向けて凹状に形成されることが分かる。
図26は距離[r](偏心量)が0.09a(0.9%)の場合の掘削カッタ2の先端の軌跡であり、これも掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が孔の内側に向けて凹状に形成されることが分かる。
図27は距離[r](偏心量)が0.085a(0.85%)の場合の掘削カッタ2の先端の軌跡であり、これも掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が孔の内側に向けて凹状に形成されることが分かる。
図28は距離[r](偏心量)が0.08a(0.8%)の場合の掘削カッタ2の先端の軌跡であり、これも掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が孔の内側に向けて凹状に形成されることが分かる。
図29は距離[r](偏心量)が0.075a(0.75%)の場合の掘削カッタ2の先端の軌跡であり、掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が略平行に形成されることが分かる。
図30は距離[r](偏心量)が0.07a(0.7%)の場合の掘削カッタ2の先端の軌跡であり、掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が孔の外側に向けて凸状に形成されることが分かる。
図31は距離[r](偏心量)が0.065a(0.65%)の場合の掘削カッタ2の先端の軌跡であり、これも掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が孔の外側に向けて凸状に形成されることが分かる。
図32は距離[r](偏心量)が0.06a(0.6%)の場合の掘削カッタ2の先端の軌跡であり、これも掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が孔の外側に向けて凸状に形成されることが分かる。
図33は距離[r](偏心量)が0.055a(0.55%)の場合の掘削カッタ2の先端の軌跡であり、掘削されたほぼ矩形状の掘削孔Hの断面の各辺が孔の外側に向けて凸状に形成され、掘削孔H全体がやや丸みを帯びていることが分かる。
したがって、図25〜図33に示すように理想的な断面形状の掘削孔Hを得るためには、回転軸33の中心(固定中心線P)と中心軸34の中心(移動中心線G)との距離[r]を、仮想ルーロー三角形の外幅[a]の6%〜8%として偏心量とすることが好ましいことが分かる。
このように、上述した掘削機は、所定の固定中心線Pを中心とした環状の内周部311を有する固定の軸受31と、所定の移動中心線Gを中心とした内周部321および外周部322を有して環状に形成してあってその外周部322を軸受31の内周部311に当接係合して軸受31に内装した環状軸32と、軸受31の固定中心線Pを回転中心として回転可能に設けてあって環状軸32の内周部321に対して自身の外周部331を当接係合した回転軸33と、環状軸32の移動中心線G上に設けてあって回転軸33の外周部331に対して自身の外周部341を当接係合した中心軸34と、回転軸33と同じ外周部351を有して当該外周部351を環状軸32の内周部321および中心軸34の外周部341に当接係合した複数の従動軸35と、回転軸33を回転駆動する駆動部36と、環状軸32に設けてあって当該環状軸32の移動中心線G上に中心を置いたルーロー三角形状の範囲内で少なくとも中心(移動中心線G)と頂点Tとを結ぶ延長線に沿って配置した掘削カッタ2とを備えている。
そして、駆動部36の駆動力を回転軸33に伝達することによって、回転軸33が軸受31の固定中心線Pを中心として回転する。すると、回転軸33の外周部331に係合する中心軸34が移動中心線Gを中心として回転軸33とは逆方向に回転する。さらに、中心軸34の外周部341に係合する従動軸35が回転軸33と同方向に回転する。同時に、回転軸33が回転することによって、回転軸33の外周部331および従動軸35の外周部351に係合する環状軸32が移動中心線Gを中心として回転軸33および従動軸35と同方向に回転する。また、移動中心線Gを中心として回転する環状軸32は、その外周部322が軸受31の内周部311に係合しているため、当該軸受31の内周部311に沿って軸受31の固定中心線Pの周りに回転軸33と逆方向に輪転運動(公転)することになる。このため、環状軸32に設けた掘削カッタ2は、環状軸32の輪転運動に伴ってその先端であるルーロー三角形の頂点Tが移動する。移動する掘削カッタ2の先端(頂点T)は、ルーロー三角形の外幅を一辺とし軸受31の固定中心線Pを中心とした正方形に近いほぼ矩形状の軌跡をなす。この結果、ほぼ矩形状の断面の掘削孔Hを掘進することができる。
すなわち、回転軸33が軸受31の固定中心線Pを中心として回転駆動され、かつ、環状軸32が回転軸33の回転に伴って回転軸33および従動軸35に支持された形態で移動中心線Gを中心として回転するという回転機構のみによって成り立っている。この結果、回転軸33が軸受31の固定中心線P上でその軸心がずれることなく回転するため、回転ぶれや振動を低減することが可能になる。また、環状軸32が回転軸33の回転に伴って回転軸33、中心軸34および従動軸35に支持された形態で移動中心線Gを中心として回転するため、回転軸33と環状軸32との間に従前の自在継手を要することがないので、自在継手に係るコストを低減することが可能になる。
さらに、環状軸32が回転軸33の回転に伴って回転軸33、中心軸34および従動軸35に支持された形態で移動中心線Gを中心として回転するため、正方形枠を必要とせずにほぼ矩形断面の掘削孔Hを掘削することが可能になる。
また、回転軸33が固定中心線Pに位置して回転駆動されることから、前端を掘削カッタ2の前側に延在すれば、その前端に別の掘削カッタを装備することが可能である。例えば、回転軸33の前端部に設けた掘削カッタによって、ほぼ矩形断面の掘削孔Hを掘削する前に円形の補助掘削孔を掘削することが可能になる。
また、回転軸33が固定中心線Pに位置して回転駆動されることから、従前からある掘削機の回転軸の前端部構成を上述した機構に変更することで上記掘削機を容易に得ることが可能である。
また、上述した掘削機は、回転軸33の中心(固定中心線P)から中心軸の中心(移動中心線G)に至る距離を[r]として軸受31の内周部311の直径を[8r]、環状軸32の外周部322の直径を[6r]、および環状軸32の内周部321の直径を[回転軸の直径+2r]と設定し、かつ、掘削カッタ2のルーロー三角形の外幅を[a]として掘削カッタ2を配置するルーロー三角形状の中心(移動中心線G)と頂点Tとを結ぶ延長線を[0.5a+r]と設定した。この結果、理想的なほぼ矩形断面の掘削孔Hを掘削することが可能になる。
また、上述した掘削機は、回転軸33の中心(固定中心線P)から中心軸の中心(移動中心線G)に至る距離[r]を、掘削カッタ2におけるルーロー三角形の外幅[a]の6%〜8%として偏心量に設定した。この結果、掘削された掘削孔Hは、ほぼ矩形状の断面の各辺が平行もしくは掘削孔Hの外側に向けて凸状に形成されるため、力学的に強度を有するものとなる。また、偏心量を適宜変更することで、必要に応じたほぼ矩形断面の掘削孔Hを得ることが可能である。
なお、上述した実施の形態2では、主に地盤などを掘削する掘削機に関して説明しているが、上記構成は掘削機に限るものではない。例えばほぼ矩形状の軌跡をなす上記回転機構における他の用途として、地中連続壁などでの矩形掘削に用いたり、セメントなどの硬化材を地盤中に注入する地盤改良で地盤を硬化材とともに混練り攪拌するときに用いたり、あるいは工作物の矩形切削に用いたり、地盤以外の混練り物製造の攪拌に用いたりするなど、様々な用途が考えられる。すなわち、地盤改良や混練り攪拌に上記回転機構を用いる場合には、上記掘削機,掘削カッタ2が、攪拌機,攪拌羽根となる。また、切削に上記回転機構を用いる場合には、上記掘削機,掘削カッタ2が、切削機,切削カッタとなる。したがって、本発明の実施の形態2でも、掘削は攪拌や切削を含む意味で用いている。