JP4495904B2 - 改変プロモーター - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明はタンパク質の生産に利用されるプロモーターの改良に関する。詳しくは、糸状菌で機能するプロモーターに改変を施して得られる改変プロモーターに関する。また、当該改変プロモーターを利用したタンパク質の生産系に関する。
【0002】
【従来の技術】
アスペルギルス属糸状菌は、各種の酵素タンパク質を菌体外に多量に分泌生産することが確認されている。例えば、工業的に利用されているアスペルギルス・オリゼでは培養液1リットル当たり数十g以上の酵素タンパク質を生産するといわれており、糸状菌を宿主とすることにより同種・異種のタンパク質の高い分泌生産が可能である。また、糸状菌の中には古来より醸造製品の生産に利用されている株も多く、安全性の面からもタンパク質生産に適しているといえる。そのため、近年、遺伝子組換えによる有用タンパク質の生産用宿主として糸状菌を利用した例が報告されるようになってきた。分泌型タンパク質を生産する場合、その生産量は目的の遺伝子の発現からタンパク質の修飾、そして分泌に至る過程における様々な要因によって決定されている。タンパク質の生産量を増大させる最も有効な手段は、タンパク質生産過程の第1段階である目的遺伝子の転写効率を高めること、即ち転写量を増大させることである。このような観点から、これまでに種々の糸状菌由来のプロモーターが単離され、それらを用いたタンパク質の生産系が報告されている。例えば、アスペルギルス・オリゼのアミラーゼ遺伝子のプロモーター(例えば特許文献1及び、非特許文献1参照)、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼ遺伝子のプロモーター(非特許文献2参照)等が単離され、利用に供されている。
【0003】
このように、いくつかのプロモーターが利用されているものの、プロモーターに関する遺伝子発現機構はあまり解明されていないのが現状である。これまでのところ、転写制御因子として遺伝子のカタボライト抑制制御に関与する因子(非特許文献3参照)、広域転写活性化因子であるHAP複合体の結合因子(非特許文献4参照)、デンプン分解酵素遺伝子群の転写活性化因子(非特許文献5参照)などが報告されているのみである。そのため、糸状菌を用いて有用タンパク質を効率よく生産する試みとしては、主として古典的な育種による高生産菌の作出や、天然に存在する、より高い発現プロモーターを単離することが行われてきた。しかしながら、これらの試みは多大な労力を要し、また偶然性に大きく依存することから高発現プロモーターを取得できる可能性は低い。一方、プロモーターの発現調節力を改良することができれば、このような問題点が大幅に解消されることとなる。これまでにも、プロモーターの発現調節力を改良する試みとしてアスペルギルス・オリゼのα−グルコシダーゼ遺伝子のプロモーターに改変を施したもの(特許文献2、非特許文献6参照)などが報告されている。しかし、これらの改変プロモーターではある程度の発現調節力の向上がみられるものの、タンパク質の生産が効率的に行える程の十分な発現活性が得られているとはいい難く、目的のタンパク質遺伝子をより効率的に転写できるプロモーターを開発することが切望されている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62−272988号公報
【特許文献2】
特開平9−9968号公報
【非特許文献1】
Biotechnology, 5, 368(1987)
【非特許文献2】
Biotechnology, 6, 1419(1988)
【非特許文献3】
Mol. Microbiol., 7, 847-857(1993)
【非特許文献4】
Mol. Gen. Genet., 237,251-260(1993)
【非特許文献5】
Mol. Gen. Genet., 262, 668-676(1999)
【非特許文献6】
Appl. Microbiol. Biotechnol.,50,459-467(1998)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の背景の下なされたものであって、その目的はプロモーターの発現制御に関与する塩基配列を提供することである。また、この塩基配列の情報を基にプロモーターの改変を行い、高い発現活性を有する改変プロモーターを提供することを目的とする。更には、この改変プロモーターを用いて糸状菌を宿主とするタンパク質の効率的な発現系(生産系)を構築することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的に鑑み以下の検討を行った。即ち、プロモーター活性が高いことで知られるアスペルギルス・オリゼのタカアミラーゼA遺伝子に着目し、このプロモーターを改変してより転写活性の高い改変プロモーターを取得することを試みた。その結果、プロモーター領域に挿入することによってその転写活性を増強することができる一組の配列を見出した。そして、この配列により改変されたプロモーターを用いることにより、アスペルギルス・ニドランスのアミラーゼ高生産株を取得することができた。さらに検討を行ったところ、改変プロモーターを有するアミラーゼ遺伝子が多コピー組込まれた株ではより効率的なタンパク質の産生が認められた。
【0007】
以上の検討結果から、新規に見出された配列はプロモーター領域の改変に極めて有効であり、これを利用すれば糸状菌を宿主とするタンパク質の効率的な発現系を構築できるとの知見が得られた。
【0008】
一方、当該配列を複数個用いてプロモーターの改変を行った場合の効果をアミラーゼの発現系をモデルとして検討した。その結果、当該配列が複数組込まれた改変プロモーターを用いれば、炭素源をグルコースとした場合であっても良好にアミラーゼを産生させ得ることが判明した。即ち、野生株においては培地中のグルコースによって発現抑制(カタボライト抑制)がかかるところ、当該配列を複数個挿入した改変プロモーターを用いればこのカタボライト抑制を解除できることが示された。このことから、この新規に見出された配列はプロモーター活性の抑制に関与する機構をブロックないしは解除することにも有効であると示唆された。
また、SREの有するエンハンサー機能に注目し、これに種々の変異を施してその改善を試みたところ、SREよりも優れたエンハンサー機能を有する配列を取得することに成功した。
【0009】
本発明は以上の知見に基づき完成されたものであって、以下の構成を提供する。
[1] 糸状菌で機能するプロモーターに、CCAATNNNNNN(第1塩基配列:配列番号1)を含む第1DNA断片と、CGGNNNNNNNNNGG(第2塩基配列:配列番号2)を含む第2DNA断片と、を挿入してなる改変プロモーター。
[2] 前記第1塩基配列がCCAATTAGAAG(配列番号3)である、[1]に記載の改変プロモーター。
[3] 前記第2塩基配列がCGGHNWWWWNWHGG(配列番号4)である、[1]又は[2]に記載の改変プロモーター。
[4] 前記第2塩基配列がCGGWWWWWWWWHGG(配列番号5)である、[1]又は[2]に記載の改変プロモーター。
[5] 前記第2塩基配列がCGGAAATTTAAAGG(配列番号6)、CGGAATTTAAACGG(配列番号7)又はCGGAAATTTAACGG(配列番号8)である、[1]又は[2]に記載の改変プロモーター。
[6] 前記プロモーターの5'末端側から3'末端側に向かって順に第1DNA断片、第2DNA断片が並ぶよう挿入される、[1]〜[5]のいずれかに記載の改変プロモーター。
[7] 前記プロモーターに存在するCCAAT配列よりも5'側上流域、又はプロモーター領域に存在するSRE領域よりも3'側下流域に前記第1DNA断片及び前記第2DNA断片が挿入される、[6]に記載の改変プロモーター。
[8] 複数個の前記第1DNA断片及び複数個の前記第2DNA断片が挿入される、[1]〜[7]のいずれかに記載の改変プロモーター。
[9] 前記第1DNA断片と前記第2DNA断片が同じ数ずつ挿入される、[8]に記載の改変プロモーター。
[10] 一つの第1DNA断片と一つの第2DNA断片とが組みをなし、かつ各組において第1DNA断片が前記プロモーターの5'末端側に位置するように、前記プロモーターに前記第1DNA断片と前記第2DNA断片が挿入される、[9]に記載の改変プロモーター。
[11] 糸状菌で機能するプロモーターに、配列番号9の塩基配列を有するDNA断片、又は該DNA断片の一部が改変されたDNA断片であってエンハンサー機能を有するDNA断片を1〜数個組込んでなる改変プロモーター。
[12] 前記糸状菌で機能するプロモーターがアスペルギルス・オリゼのタカアミラーゼのプロモーターである、[1]〜[11]のいずれかに記載の改変プロモーター。
[13] CGGAATTTAAACGG(配列番号7)又はCGGAAATTTAACGG(配列番号8)の塩基配列からなる、エンハンサー機能を有するDNA断片。
[14] 糸状菌で機能し、かつ[13]のDNA断片を含む、改変プロモーター。
[15] [1]〜[12]、[14]のいずれかの改変プロモーターが組込まれたベクター。
[16] [1]〜[12]、[14]のいずれかの改変プロモーターが組込まれ、されに該改変プロモーターの制御下に目的のタンパク質の構造遺伝子が組込まれたベクター。
[17] [16]のベクターを、前記構造遺伝子を発現可能に保有する糸状菌形質転換体。
[18] [1]〜[12]、[14]のいずれかの改変プロモーターと、及び目的のタンパク質をコードし、該改変プロモーターの制御下にある構造遺伝子と、を保有する糸状菌。
[19] [18]の糸状菌を、前記タンパク質を産生可能な条件で培養し、産生されたタンパク質を回収する、ことを特徴とするタンパク質の生産方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。尚、本発明においてプロモーター活性を高めることができる機能を「エンハンサー機能」という。
本発明者らは、まずアスペルギルス属に広く保存されているプロモーター領域のCCAAT配列(配列番号3)及びSRE(配列番号6)に注目し、これらを外来的にプロモーター領域に挿入した場合のプロモーター活性への影響を検討した。始めに、アスペルギルス・オリゼJCM02239株のタカアミラーゼA遺伝子のプロモーター領域を含むプラスミドを構築した。一方、CCAAT配列を含むDNA断片及びSREを含むDNA断片をそれぞれ取得した。そして、これら各DNA断片を上記のプラスミドのプロモーター領域にそれぞれ単独で挿入して改変プロモーターを構築した。次に、各改変プロモーターとタカアミラーゼA遺伝子のコーディング領域を含んだプラスミドを調製した。このようにして得られた各プラスミドを用いてアスペルギルス・ニドランスをそれぞれ形質転換し、各形質転換体のアミラーゼ活性を比較した。その結果、CCAAT配列或いはSREが挿入された改変プロモーターを有する形質転換体のアミラーゼ活性は、改変を施さないプロモーターを有する形質転換体のそれよりも低いか、又はほとんど差がなかった。また、複数のCCAAT配列又は複数のSREを挿入してプロモーターの改変を行った場合についても検討したが同様にプロモーター活性の上昇は認められなかった。以上の結果から、CCAAT配列又はSREを単独でプロモーター領域に挿入して改変を行ったとしてもプロモーター活性を上昇させることはできないと予測された。
【0011】
そこで、次にCCAAT配列及びSREを組み合わせてプロモーターの改変を行った場合におけるプロモーター活性の変化について検討した。まず、アスペルギルス・オリゼJCM02239株のタカアミラーゼA遺伝子のプロモーター領域を鋳型として、CCAAT配列及びSREを含むDNA断片(CCAAT-SRE断片:配列番号9)を作製した。このDNA断片を用いて、上記と同様の方法によりタカアミラーゼA遺伝子の改変プロモーターを作製した。次いで、この改変プロモーター及びタカアミラーゼA遺伝子のコーディング領域を含むプラスミドを構築した後、このプラスミドを用いてアスペルギルス・ニドランスの形質転換株を得た。この形質転換株のアミラーゼ活性を測定したところ、改変を施さないプロモーターを有する形質転換株(野生株)に比較して顕著なプロモーター活性の上昇が認められた。このことから、プロモーター領域にCCAAT配列とSREを併せて挿入することにより、高い活性を有する改変プロモーターを作製できることが判明した。
【0012】
ここで、一般に、DNA配列の一部の塩基を置換したとしてもそのDNA配列が有する機能を維持できる場合がある。ところで、CCAAT配列は広域転写活性化因子(HAP)の結合配列として知られ、その結合には5'末端側の配列CCAATが重要であることが報告されている。したがって、この5'末端側のCCAAT以外の塩基を置換したとしてもCCAAT配列の有するエンハンサー機能が維持されることが予想される。
【0013】
一方、本発明者らはSREのエンハンサー機能が一部の塩基を置換した場合にも維持されるかどうかを検討した。まず、SREの一部が置換されるように設計したプライマーを用いたPCR反応によって、タカアミラーゼA遺伝子のプロモーター領域のCCAAT配列及び一部の塩基が置換されたSRE(CGGAATTTAAACGG:配列番号7)を含むDNA断片を取得した。そして、上記と同様の方法でこのDNA断片を挿入して改変を行った改変プロモーターを作製し、次いで改変プロモーターを有するタカアミラーゼA遺伝子が組込まれたアスペルギルス・ニドランスの形質転換株を取得した。この形質転換株におけるアミラーゼ活性を測定した結果、上記のCCAAT-SRE断片による改変プロモーターを用いた場合とほぼ同様のアミラーゼ活性の上昇が認められた。このことから、SREの一部に塩基置換を施したとしても、場合によってはそのエンハンサー機能を維持できることが示された。特に、5'末端側から数えて6番目、9番目及び12番目の塩基については、これらを他の塩基に置換したとしてもSREのエンハンサー機能はほとんど影響を受けないことがわかった。
【0014】
以上の知見を得た後、SREがエンハンサー機能を発揮する上で重要な部分(配列)を突き止めるべく、野生型プロモーターに存在するSREに変異を施した改変プロモーターを作製しそのプロモーター活性を調べた。その結果、SREの5'末端側から12番目の塩基をCに置換した場合にはSREの有するエンハンサー機能が維持されるどころか増強される現象が観察された。この結果から、5'末端側から12番目の塩基を置換してもSREのエンハンサー機能を維持できること、及びSREにおいて5'末端側から12番目の塩基をCとした配列(CGGAAATTTAACGG:配列番号8)はSREよりも優れたエンハンサー機能を有することが判明した。
一方、5'末端側から13番目及び14番目の塩基については、これらを他の塩基に置換することによって野生型プロモーターよりも活性が低下した。このことと、当該配列部分についてはアスペルギルス属において広く保存されていることが知られていることとを考慮すれば、これらの塩基については他の塩基に置換しないことが望ましいと考えられる。また、SREの5'末端のCGGについてもアスペルギルス属において広く保存されていることが知られており、この配列部分についても他の塩基に置換しないことが望ましいと考えられる。
【0015】
一方、アスペルギルス属の野生株において、SREの配列がCGGTCTTTTGTCGG(アスペルギルス・ニドランスのα-グルコシダーゼ)、及びCGGCGAATTCACGG(アスペルギルス・オリゼのグルコアミラーゼ)であるものが知られており、またこれらの野生株においてプロモーター活性が低下していることは報告されていない。これらの配列とアスペルギルス・オリゼのタカアミラーゼ遺伝子においてプロモーターに存在するSREとを比較すれば、5'末端側から数えて4番目、5番目、7番目、10番目、及び11番目の塩基については共通しておらず、これらの塩基はSREが有するエンハンサー機能に対する寄与の程度が低いものと考えられる。即ち、これらの塩基を他の塩基に置換したとしても、SREが有するエンハンサー機能が維持される可能性が高いと考えられる。具体的には、5'末端側から数えて4番目の塩基についてはT又はC、5番目の塩基についてはC又はG、7番目の塩基についてはA、10番目の塩基についてはG又はC、11番目の塩基についてはTであってもエンハンサー機能を有するものと考えられる。但し、個々の塩基の構造に起因する結合性などを考慮すれば、5'末端側から数えて6番目〜9番目の塩基及び11番目の塩基、更に好ましくは5'末端側から数えて4番目〜11番目の塩基はA又はTであることが望ましいと考えられる。
【0016】
以上の知見及び考察より、本発明でプロモーター領域の改変に用いられる第1DNA断片の塩基配列は、好ましくはCCAATTAGAAG(配列番号3)である。他方、第2DNA断片の塩基配列は、好ましくはCGGHNWWWWNWHGG (配列番号4)、更に好ましくはCGGWWWWWWWWHGG(配列番号5)であり、更に更に好ましくはCGGAAATTTAAAGG(配列番号6)、CGGAATTTAAACGG(配列番号7)又はCGGAAATTTAACGG(配列番号8)である。ここで、塩基配列中のNはA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、又はT(チミン)であることを、WはA(アデニン)又はT(チミン)であることを、HはA(アデニン)、C(シトシン)又はT(チミン)であることをそれぞれ表す。
【0017】
また、上述のようにSREの5'末端側から数えて12番目の塩基をCに置換して得られる配列は、それ自体でSREよりも優れたエンハンサー機能を有することが判明したことから、この配列のみを用いてプロモーターの改変を行うことができるといえる。即ち、当該配列(CGGAAATTTAACGG:配列番号8)はプロモーターの改変に有用なものであり、当該配列を単独で利用することによって高い活性のプロモーターを構築できる。また、上記の配列CGGAATTTAAACGG(配列番号7)についても、CCAAT配列と同時に用いた場合の結果ではあるものの野生型のSREと同等のエンハンサー機能が認められたことから、この配列も単独でプロモーター活性の増強に利用できるものと予想される。尚、ここでいう「利用」には、野生型のプロモーター(既に他の改変を施したものを含む)にもともと存在するSREの一部に塩基置換して上記の配列を構築すること、及び上記の配列を有するDNA断片を野生型のプロモーター(既に他の改変を施したものを含む)に挿入することを含む。また、ここでの「単独」とは、上記の第1DNA断片を同時に用いないことを意味する。
【0018】
一方、本発明者らはCCAAT-SRE断片の挿入によるプロモーター領域の改変とカタボライト抑制との関係について検討した。まず、CCAAT-SRE断片を1コピー挿入した改変プロモーター、2コピー及び3コピー挿入した改変プロモーターを作製した。そして、改変を施さないプロモーターあるいは改変プロモーターのいずれかを含むタカアミラーゼ遺伝子が挿入された形質転換体をそれぞれ取得し、炭素源としてグルコースを含む培地で生育した菌体のアミラーゼ活性を比較した。その結果、改変を施さないプロモーターを有する菌体については、カタボライト抑制がかかりアミラーゼ活性が低下したが、CCAAT-SRE断片が挿入された改変プロモーターを有する菌体についてはカタボライト抑制の程度が低く、改変を施さないプロモーターを有する菌株の37倍以上のアミラーゼ活性が認められた。かかる知見より、カタボライト抑制を解除するという効果が得られる点において、CCAAT断片およびSRE断片を複数挿入してプロモーターの改変を施すことが好ましい。
【0019】
本発明の第1DNA断片及び第2DNA断片は、例えば市販のDNA合成機を用いて合成することができる。また、例えばアスペルギルス・オリゼのタカアミラーゼA遺伝子のプロモーター領域を鋳型とし、適当なプライマーを用いたPCR法によって調製することもできる。
第1DNA断片及び第2DNA断片を含む一つのDNA断片を調製し、これを糸状菌で機能するプロモーターへ組込むことにより、本発明の改変プロモーターを作製することもできる。例えば、アスペルギルス属などにおけるプロモーターの中から第1DNA断片及び第2DNA断片に相当する配列を内包するプロモーターを選択し、これを鋳型としたPCR法などを行うことによって、このようなDNA断片を調製することができる。鋳型として用いることができる好適なプロモーターの例としては、アスペルギルス・オリゼのタカアミラーゼA遺伝子のプロモーター(配列番号12)を挙げることができる。本発明でプロモーターの改変に用いられるDNA断片の塩基配列の一例を配列番号9に示す。このDNA断片(CCAAT-SRE断片)は、アスペルギルス・オリゼのタカアミラーゼA遺伝子におけるプロモーター領域の一部(240位〜367位(転写開始点を+1として−312位〜−185位))である。尚、このDNA断片に一部の改変を施したDNA断片であっても、それが組込まれるプロモーターの活性を高める機能(エンハンサー機能)を有する限り、プロモーター領域の改変に利用できる。ここで、一部の改変とはDNA断片を構成する一部の塩基が置換、欠失される場合、又は1〜数個の塩基が付加若しくは挿入される場合をいう。このような改変が許容される程度は、改変が行われるDNA断片上の部位によって異なる。上述のように、エンハンサー機能に重要な部分は第1DNA断片及び第2DNA断片に相当する配列部分であるので、当該配列部分の改変の程度は小さいことが好ましい。他方、その他の部分はエンハンサー機能に直接関与しないと予想されることから比較的大きな改変が許容されると考えられる。例えば、1〜20個程度、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の塩基の置換、欠失、付加などを行うことができる。尚、このような改変には5'末端、3'末端、又はその他の部位への制限酵素認識配列の導入や、シグナルペプチドをコードする配列の付加などが含まれる。
【0020】
本発明では、糸状菌で機能するプロモーターに第1DNA断片及び第2DNA断片(以下、これらのDNA断片及びこれらを含むDNA断片をまとめて、「エンハンサー機能を有するDNA断片」とも呼称する)が挿入されて改変プロモーターが構築されるが、これらのDNA断片の挿入部位は特に限定されない。但し、改変が施されるプロモーターとしてCCAAT配列及びSREを有するものを採用する場合には、これら二つの配列の間以外の部位に挿入することが好ましい。即ち、CCAAT配列よりも5'末端側の部位又はSREよりも3'末端側の部位にエンハンサー機能を有するDNA断片を挿入することが好ましい。
【0021】
糸状菌で機能するプロモーターに複数個の第1DNA断片及び複数個の第2DNA断片を挿入することにより、本発明の改変プロモーターを作製することもできる。この場合、使用する第1DNA断片と第2DNA断片の個数を同じとすることが好ましい。また、一つの第1DNA断片と一つの第2DNA断片とが組をなし、かつ各組において第1DNA断片が5'末端側に位置するようにプロモーターに挿入されることが好ましい。
第1DNA断片と第2DNA断片を含むDNA断片を用いる場合においても、これを複数挿入してプロモーターの改変を行ってもよい。この場合においても、改変が施されるプロモーターとしてCCAAT配列及びSREを有するものを採用するときには、これら二つの配列の間以外の部位に当該DNA断片を挿入することが好ましい。
【0022】
複数のエンハンサー機能を有するDNA断片を組込んでプロモーターの改変を行うことにより、更なるプロモーター活性の向上が期待できる。この時組み込まれるDNA断片の数は1個より2個が好ましく、2個より3個の方がより好ましい。また、後述の実施例で示されるように、DNA断片を挿入することによって(アミラーゼを産生させる際のカタボライト抑制を解除することに有効であることが示される)、プロモーター活性の抑制に働く機構をブロックないし解除することができる。
【0023】
本発明における糸状菌で機能するプロモーターとしては、糸状菌で機能するという性質を有する限りその種類は特に限定されない。例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ属等の微生物におけるタンパク質をコードする遺伝子のプロモーターを挙げることができる。具体的には、アスペルギルス属のα−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α―グルコシダーゼ等をコードする遺伝子のプロモーターを用いることができる。中でも、アスペルギルス・オリゼのタカアミラーゼのプロモーターを用いることが好ましい。これらのプロモーターはそれを有する微生物より、制限酵素処理、PCR法などの遺伝子工学的手法を用いて取得することができる。また、目的のプロモーターが組込まれたベクターを利用できる場合には、当該ベクターから制限酵素処理やPCR法などによって取得することができる。尚、本発明における糸状菌とは広義の糸状菌を意味し、酵母も包含する。
【0024】
本発明は以上の改変プロモーターが組込まれたベクターも提供する。このようなベクターは目的とするタンパク質の生産に利用することができる。例えば、改変プロモーターの支配下に目的のタンパク質の構造遺伝子を導入して発現用ベクターを構築する。これを用いて適当な宿主を形質転換し、改変プロモーター及び目的のタンパク質の構造遺伝子が適切に導入された形質転換体を、当該タンパク質を産生可能な条件で培養する。その後、培養液又は菌体内より目的のタンパク質を回収する。尚、本発明でいう改変プロモーターが組込まれたベクターには、改変プロモーターの制御下に特定のタンパク質の構造遺伝子が組込まれたものも含まれる。
【0025】
本発明のベクターは、宿主である糸状菌を形質転換した際に形質転換体を選択するのに好適な選択マーカーを有していることが好ましい。選択マーカーは使用する宿主との関係で適当なものを採用でき、例えばオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ遺伝子(argB)、硝酸還元酵素遺伝子(niaD)、アセトアミダーゼ遺伝子(amdS)、トリプトファンシンターゼ遺伝子(trpC)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)等の栄養要求性相補遺伝子、オリゴマイシン、デストマイシン、ハイグロマイシン等に対する薬剤耐性遺伝子などを挙げることができる。
【0026】
タンパク質の生産に利用される宿主としてはアスペルギルス属(アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・ニドランス)、ペニシリウム属、トリコデルマ属、リゾプス属等に分類される糸状菌を用いることができる。好ましくはアスペルギルス属の糸状菌が用いられる。中でもアスペルギルス・オリゼ、又はニガーを用いることが安全性点から好ましい。
【0027】
また本発明者らは改変プロモーターが導入される糸状菌が本来的に産生するタンパク質(同種タンパク質)のみならず、本発明の改変プロモーターが導入される糸状菌が本来は産生しないタンパク質、即ち外来的にそれをコードする遺伝子が導入されることにより初めて産生されるタンパク質(異種タンパク質)も効率的に発現するかを調べる為に、宿主生物であるアスペルギルス・オリゼにアスペルギルス・オリゼのアミラーゼ遺伝子を形質転換したもの、さらにはアスペルギルス・オリゼとは系統分類学的に遠い糸状菌のラッカーゼ遺伝子を形質転換しこれらのタンパク質レベルの発現を確認した。
本発明の改変プロモーターを利用して生産可能なタンパク質は特に限定されず、例えばα―アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ等の糖質関連酵素、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ等の酸化還元酵素、キモシン等のプロテアーゼ、リパーゼなどを挙げることができる。また、同種タンパク質、異種タンパク質の如何を問わない。
【0028】
本発明のベクターの宿主への導入は公知の方法で行うことができる。例えば、プロトプラスト化した菌体を用いたTurnerら方法(Gene, 36, 321-331(1985))により行うことができる。その他、五味らの方法(Agric. Biol. Chem., 51, 323-328(1987))の方法などを採用してもよい。
【0029】
本発明の改変プロモーター及び目的のタンパク質の構造遺伝子が適切に導入された形質転換体を、当該構造遺伝子を発現可能な条件で培養することにより、目的のタンパク質を産生させることができる。培養用の培地は使用する宿主に応じて適切なものが用いられる。例えば市販の各種培地又はこれらにアルギニン、ウリジン等の形質転換体の生育、選択、タンパク質の発現促進などに必要な成分を添加した培地などを用いることができる。
【0030】
所望時間培養した後の培養液又は菌体より目的のタンパク質を回収することができる。即ち、分泌型タンパク質であれば培養液より、それ以外であれば菌体内より回収することができる。培養液から回収する場合には、例えば培養上清をろ過、遠心処理して不溶物を除去した後、硫安沈殿等の塩析、透析、各種クロマトグラフィーなどを組み合わせて分離、精製を行うことにより、目的のタンパク質を取得することができる。他方菌体内から回収する場合には、例えば菌体を加圧処理、超音波処理などによって破砕した後、上記と同様に分離、精製を行うことにより目的のタンパク質を取得することができる。尚、ろ過、遠心処理などによって予め培養液から菌体を回収した後、上記一連の工程(菌体の破砕、分離、精製)を行ってもよい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例では、特に記載しない限り、制限酵素およびその他の遺伝子操作用酵素として宝酒造または東洋紡績の製品を用いた。尚、酵素の反応条件等は添付の取り扱い説明書に従った。
また、本実施例で使用した合成オリゴDNAは、宝酒造またはインビトロジェンで合成されたものを使用し、塩基配列の決定はABI PRISM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社)、PCR反応はサーマル・サイクラー(パーキンエルマージャパン社製)を用いて行った。
【0032】
[実施例1] プロモーター領域のサブクローニング
アスペルギルス・オリゼJCM02239株のタカアミラーゼA遺伝子(taaG2)3164bp〔Gene,84,319-327(1989)〕を含むpTG-taa〔Mol. Gene. Genet.,254,119-126(1997)〕を出発材料としてタカアミラーゼA遺伝子プロモーター領域およびタカアミラーゼA遺伝子のコーディング領域を調製した。
まず、pTG-taaからタカアミラーゼA(taaG2)プロモーター領域を含む750bpのEcoRI-SalI断片を取得し、この断片をプラスミドpKF18K(東洋紡績株式会社)のマルチクローニングサイトのEcoRI-SalI部位に挿入してタカアミラーゼプロモーターを含むプラスミドpKF-taaPを取得した。プロモーター領域への変異導入操作および改変プロモーター領域の構築はこのプラスミドを用いて行った。
【0033】
[実施例2] 転写制御因子結合配列を含むDNA断片の取得
既に報告されている広域転写活性化因子(HAP)の結合因子であるCCAAT配列〔Mol. Gen. Genet., 237,251-260(1993)〕およびデンプン分解酵素遺伝子群の転写活性化因子(AmyR)の結合因子SRE〔Mol. Gen. Genet., 262, 668-676(1999)〕を含む断片を次の様に取得した。
まず、CCAAT配列の5'末端側にXhoI部位を、3'末端側にNotI部位を付加した合成DNAとしてXNF( 5'-CCGCTCGAGGCACCATCCAATTAGAAGCGCGGCCGCTAAACTAT-3':配列番号13)と、この配列の相補鎖としてXNR( 5'-ATAGTTTAGCGGCCGCGCTTCTAATTGGATGGTGCCTCGAGCGG-3':配列番号14)を合成し、続いてこれら合成DNAの相補鎖同士を混合して98℃10分間加熱後、2時間かけて30℃まで冷却し、その後4℃まで冷却してアニーリングさせることによってCCAAT配列を単独で含むDNA断片を取得した。
【0034】
一方、SREの5'末端側と3'末端側にSpeI部位およびHincII部位を付加した合成DNAとしてSREf( 5'-GACTAGTTAACCTAGGGGCGGAAATTTAACGGGATGTTAACTAGTC-3':配列番号15)と、この配列の相補鎖としてSREr( 5'-GACTAGTTAACATCCCGTTAAATTTCCGCCCCTAGGTTAACTAGTC-3':配列番号16)を合成し、上記と同様の方法でSREを単独で含むDNA断片を取得した。以後、ここで作製したCCAAT配列のみを含むDNA断片を「CCAAT断片」、SREのみを含むDNA断片を「SRE断片」とそれぞれ呼ぶことにする。
【0035】
次に、CCAAT配列からSREまでの領域を含むDNA断片(配列番号9。以下、「CCAAT-SRE断片」という)を、以下のプライマーおよび鋳型として実施例1で調製したpKF-taaPを用いて、94℃ 30秒、54℃ 30秒、72℃ 1分30秒を1サイクルとして30サイクルのPCR反応を行うことによって取得した。尚、PstIサイトを含む断片(配列番号10。以下、「CCAAT-SRE(PstI)断片」という)とXhoI-NotIサイトを含む断片(配列番号11。以下、「CCAAT-SRE(XhoI-NotI)断片」という)の2種類を作製した。
【0036】
PstIサイトを付加した上流プライマー、
CSPf: 5'-AAACTGCAGACCACCTCTAGGCATCGGACG-3'(配列番号17)
PstIサイトを付加した下流プライマー、
CSPr: 5'-TTTCTGCAGTGTTGATTTGTGGTTGAGTGG-3'(配列番号18)
XhoIサイトを付加した上流プライマー、
CSXf: 5'-CGGCTCGAGGCATCGGACGCACCATCC-3'(配列番号19)
NotIサイトを付加した下流プライマー、
CSNr: 5'-ATAGTTTAGCGGCCGCCGACTGTGATTTGTGGTTGAGTGG-3'(配列番号20)
【0037】
[実施例3] 改変プロモーターを含むプラスミドの構築
タカアミラーゼA遺伝子プロモーター領域への変異導入を次のように行った。まず、実施例1で調製したpKF-taaPへプロモーター領域改変用の制限酵素サイトを導入するために、以下に示すプライマーおよびMutan-Super Express Km Kit(TAKARA社)を用いてpKF-taaPに対する部位特異的変異導入を行った。なお、野生型プロモーターの配列(配列番号12)を図1に示し、導入した制限酵素サイトの位置を図2に示した。
【0038】
下流域(配列番号12に示すタカアミラーゼプロモーターの存在位置465)へのNotIサイト導入用のプライマー、
Not-b: 5'-CGCTTGGATTCCCCGCCCGCGGCCGCAGAGCTTAAAGTATGTCCC-3'(配列番号21)
下流域(配列番号12に示すタカアミラーゼプロモーターの存在位置440)へのXhoIサイト導入用のプライマー、
Xho-b; 5'-GAATGCAATTTAAACTCTTCCTCGAGTCGCTTGGATTCCCCGCCC-3'(配列番号22)
【0039】
上流域(配列番号12に示すタカアミラーゼプロモーターの存在位置153)へのNotIサイト導入用のプライマー、
Not-a: 5'-GTAGTAAAACCCCGGAGTCAGCGGCCGCCAAGCCCAAGTCCTTCACG-3'(配列番号23)
上流域(配列番号12に示すタカアミラーゼプロモーターの存在位置128)へのXhoIサイト導入用のプライマー、
Xho-a: 5'-CGTCAAGGGATGCAAGACTCGAGTAGTAAAACCCCGGAGTC-3'(配列番号24)
【0040】
CCAAT配列とSREに挟まれた領域(配列番号12に示すタカアミラーゼプロモーターの存在位置252)へのNotIサイト導入用のプライマー、
Not: 5'-GCACCATCCAATTAGAAGCGCGGCCGCGAAACAGCCCAAGAAAAAGG-3'(配列番号25)
下流域(配列番号12に示すタカアミラーゼプロモーターの存在位置490)へのSpeIサイト導入用のプライマー、
STATA: 5'-TAAAGTATGTCACTAGTCGATGCGAT-3'(配列番号26)
【0041】
次に、実施例2で調製したCCAAT断片をXhoIおよびNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動に供して回収・精製した。得られたDNA断片を上記のようにしてプロモーター下流域に導入したXhoI-NotI部位に挿入し、改変プロモーターPCCAATbを含むプラスミドpKF-CCAATbを作製した。同様に、 実施例2で調製したSRE断片をHincIIで切断して得られるDNA断片がプロモーター下流域のXhoI-NotI部位に挿入された改変プロモーターPSREbを含むプラスミドpKF-SREb、実施例2で調製したCCAAT-SRE(PstI)断片をPstIで切断して得られるDNA断片がプロモーター下流域のPstI部位に挿入された改変プロモーターPCSPを含むプラスミドpKF-PCSP、実施例2で調製したCCAAT-SRE(XhoI-NotI)断片をXhoI、NotIで切断して得られるDNA断片がプロモーター下流域のXhoI-NotI部位に挿入された改変プロモーターPCSbを含むプラスミドpKF-PCSbをそれぞれ作製した。また、CCAAT-SRE(XhoI-NotI)断片をXhoI、NotIで切断し、回収・精製した断片をプロモーター下流域のXhoI-NotI部位に挿入し、その後、CCAAT-SRE(PstI)断片をPstI部位に挿入することにより、2箇所にCCAAT-SRE断片が挿入された改変プロモーターPCSPbを含むプラスミドpKF-PCSPbを作製した。
【0042】
[実施例4] プロモーター活性評価用プラスミドの構築
プロモーター活性評価用プラスミドの作製過程を図3に示す。まず、プラスミドpUC18(東洋紡績株式会社)をSalIで消化後、Klenow処理によって平滑末端化し、セルフライゲーションすることによってSalI部位の欠失したプラスミドpUC18(S-)を取得した。一方、プラスミドpTG-taaよりタカアミラーゼA遺伝子のEcoRI断片を単離し、この断片をpUC18(S-)のマルチクローニングサイトのEcoRI部位に挿入してpUC-taa(S-)を取得した。このプラスミドpUC-taa(S-)をEcoRIで部分分解し、taaG2遺伝子の3'末端側のEcoRIサイトが欠失したプラスミドpUC-taaを取得した。同様にして、pBluescriptII KS(+)のXhoI、SalI、BamHIを欠失させたプラスミドpBlue(XSE-)を取得した。
【0043】
次に、pUC-taaからtaaG2を含むEcoRI-HindIII断片を単離して、この断片をプラスミドpBlue(XSE-)のマルチクローニングサイトのEcoRI-HindIII部位に挿入して、taaG2を含むプラスミドpBlue-taaを取得した。
続いて、実施例3で得られた改変プロモーターを含むプラスミドpKF-taaPMシリーズ(pKF-CCAATb、pKF-SREb、pKF-PCSP、pKF-PCSb、またはpKF-PCSPb)から改変プロモーター領域のEcoRI-SalI断片を単離して、プラスミドpBlue-taaのマルチクローニングサイトのEcoRI-SalIに挿入し、改変プロモーター領域とtaaG2遺伝子が連結したプラスミドpBlue-taaMを取得した。pBlue-taaMから改変プロモーターを含んだtaaG2遺伝子のXbaI-BamHI断片を単離し、プラスミドpBAR7 (pBluescriptII KS(+)にアスペルギルス・ニドランス由来のC末が欠失したargB遺伝子が挿入されたプラスミド)のマルチクローニングサイトのXbaI-BamHIに組み込み、プロモーター活性測定用プラスミドpBAR-taaMシリーズ(pBAR-CCAATb、pBAR-SREb、pBAR-PCSP、pBAR-PCSb、及びpBAR-PCSPb)とした。
【0044】
[実施例5] 改変プロモーターを有する形質転換体の取得
1.形質転換
糸状菌の形質転換を次のように行った。まず、実施例4で得られたpBAR-taaMシリーズ(pBAR-CCAATb、pBAR-SREb、pBAR-PCSP、pBAR-PCSb、及びpBAR-PCSPb)の各プラスミドをEcoRVで消化後、フェノール/クロロホルム抽出およびエタノール沈殿の操作を行い、精製したものを形質転換に用いた。
次に、これらのプラスミドによるアスペルギルス・ニドランスの形質転換を行った。アスペルギルス・ニドランスのオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ遺伝子欠損株であるABPU1株(biA1; pyrG89; wA3; argB2; pyroA4)をコンプリート培地(2% マルトエキス、2% グルコース、0.1% バクトペプトン)に必要な栄養源(アルギニン、ウリジン、ピリドキシン、及びビオチン)を添加した培地で、37℃、一晩振とう培養した後、得られた菌体を細胞壁溶解液〔20 mg/ml Yatalase(宝酒造社), 0.8 M NaCl, 10 mM リン酸緩衝液(pH6.0)〕に懸濁し、30℃で1〜2時間緩やかに振とうすることによりプロトプラスト化した。得られたプロトプラストをナイロンフィルターで濾過することにより、残存する菌体を除去した。次にこのプロトプラストを用いて、Turnerらの方法〔Gene, 36, 321-331(1985)〕によりコンピテントセルの調製および形質転換を行い、アルギニンを含まない培地(ツァペック・ドックス培地(0.2% NaNO3、0.1% K2HPO4、0.05% KCl、0.05% MgSO4・7H2O、2% グルコース(pH5.5))にウリジン、ピリドキシン、及びビオチンを添加した培地)で生育可能な形質転換体をそれぞれのプラスミドにつき、20から40株ずつ取得した。
【0045】
2.サザンブロット解析による形質転換体の選択
各形質転換株から染色体DNAを次のように調製した。まず、形質転換株をコンプリート培地に必要な栄養源(ウリジン、ピリドキシン、及びビオチン)を添加した培地で37℃、一晩振とう培養後、得られた菌体をブフナー漏斗とNo.2のろ紙(アドバンテック社)で集めて滅菌水で洗浄した。余分な水分を除去したあと、-80℃で凍結し、FREEZONE(LABCONCO社)を用いて凍結乾燥した。乾燥後、1mmのガラス玉を加えて、マルチビーズショッカー(安井器械社)を用いて2000rpm、5分間破砕して微粉末状にし、この菌体破砕物に抽出溶液〔1% ヘキサデシルメチルアンモニウムブロマイド、0.7M NaCl、50mM Tris-HCl、10mM EDTA、1% β-メルカプトエタノール〕を加えて撹拌後、室温で30分間放置した。得られた溶菌液をフェノール/クロロホルム抽出して、夾雑するタンパク質を除去後、等量のイソプロパノールを加えて、DNAを沈殿させた。この沈殿物を0.1mg/mlのRNaseを含むTE溶液に溶解して、37℃、30分間反応させた後、さらに0.2mg/mlのproteinaseKを含むTE溶液を加え、37℃、30分間反応させた。この溶液をフェノール/クロロホルム抽出した後、2.5倍容の冷エタノールで沈殿させた。この沈殿物を70% エタノールでリンスして乾燥後、TE溶液に溶解したものを染色体DNA溶液とした。
【0046】
サザンブロット解析は、染色体DNAをPvuIIあるいはEcoRVで消化後、アガロースゲル電気泳動で分離してナイロンメンブレン(ロシュ社)にブロットした後、taaG2の約1000bpのBglII-SmaI消化物をプローブとして検出した。このとき、プローブのラベリングおよびシグナルの検出はDIG核酸検出キット(ロシュ社)を用いて行った。
【0047】
サザン解析の結果よりプロモーター活性の測定に適した形質転換体、即ちプラスミドがargB座位へ相同的に1コピー組み込まれた株で、染色体に組み込まれるときの位置による影響と、導入される遺伝子のコピー数の影響を受けずにプロモーター活性を測定できる形質転換体を、使用したプラスミドにつき、任意に2株以上選択した。
【0048】
[実施例6] 形質転換体のアミラーゼ活性測定及び改変プロモーターの活性評価
実施例5で得られた、pBAR-CCAATb又はpBAR-SREbが組み込まれた各形質転換体を用いて、CCAAT配列又はSREを単独で挿入して改変を行った場合のプロモーター活性の変化を評価した。また、pBAR-PCSPが組み込まれた形質転換体を用いて、CCAAT配列及びSREを同時に挿入して改変を行った場合についても同様に評価した。まず、各形質転換体を、最少培地(0.9% NaNO3、0.05% KCl、0.15% KH2PO4、0.15% Trace element、0.05% MgSO4・7H2O、1% グルコース(pH6.5))に必要な栄養源(ウリジン、ピリドキシン、及びビオチン)を添加した寒天培地に放射状に植菌し、37℃、3日間培養した後、この寒天培地から分生胞子を胞子懸濁用溶液(0.01% tween80、0.8% NaCl)に懸濁して綿で濾過し、胞子懸濁液を調製した。この胞子懸濁液から、分生胞子1×108個をSP培地(1% Starch、1% polypeptone、0.5% KH2PO4、0.1% NaNO3、0.05% MgSO4・7H2O (pH6.5))にアルギニン以外の必要な栄養源(ウリジン、ピリドキシン、及びビオチン)を添加した培地100mlに接種し、37℃、36時間振とう培養後、ブフナー漏斗とろ紙で菌体と上清を分離して、上清を酵素溶液とした。
【0049】
アミラーゼ活性は20mM 酢酸ナトリウムbuffer、10mM CaCl2、2% Soluble Starch (ナカライテスク社)、に酵素溶液を加えて150μlの反応系を調製し、これを37℃で20分間反応させて生成した還元糖量をNelson-Somogyi法により定量した。また、1分間に1μmolのグルコースを遊離する酵素量を1unitとした。以上のように測定したアミラーゼ活性を指標として、野生型プロモーターと改変プロモーターとのプロモーター活性の評価を行った。
【0050】
アミラーゼ活性の測定結果を図4の表に示す。この表からわかるように、CCAAT配列あるいはSREを挿入した改変プロモーター(PCCAATb及びPSREb)は、野生型プロモーター(taaP)と比較すると活性が低下しているか、あるいはほとんど差がなく、CCAAT配列やSREを単独で挿入することによるプロモーター活性の上昇効果は認められなかった。また、これらの断片をそれぞれ複数挿入した場合にも同様に活性の上昇効果は認められなかった(データ示さず)。これらの結果から、本プロモーターはすでに高度に最適化されており、CCAAT配列やSREの挿入効果よりも変異導入によるプロモーター構造への悪影響のほうが顕著に現れたものと考えられた。
他方、CCAAT配列及びSREが同時に挿入された改変プロモーター(PCSP)では、野生型プロモーター(taaP)と比較して著しい活性の上昇が見られ、約4倍のアミラーゼ活性が認められた。以上の結果より、プロモーター活性を上げるにはCCAAT配列とSREを同時に挿入することが重要であるといえる。
【0051】
[実施例7] CCAAT配列及びSREを複数挿入してプロモーターの改変を行った場合の効果
次にCCAAT-SRE断片をプロモーター領域に1コピー、2コピー、3コピー挿入したプロモーターを用いた場合のアミラーゼ生産量の増加効果を調べた。CCAAT-SRE断片をプロモーター領域に最大三つまで挿入した場合(オリジナル1+挿入したもの3=4)のプロモーター活性への効果を検討するため、実施例3で取得したpKF-PCSPbのPstI部位に、実施例2で取得したCCAAT-SRE(PstI)断片(配列番号10)を挿入したプラスミドpKF-PCSPPbを作製した。このプラスミドを用いて、実施例4で示したとおりにプロモーター活性測定用プラスミドpBAR-CSPPbを作製し、実施例5に従ってpBAR-CSPPbが組み込まれた形質転換体を取得した。この形質転換体について、実施例6と同様の方法により、胞子懸濁液を調製した。この胞子懸濁液から、分生胞子1×108個をSP培地(1% Starch、1% polypeptone、0.5% KH2PO4、0.1% NaNO3、0.05% MgSO4・7H2O (pH6.5))にアルギニン以外の必要な栄養源(ウリジン、ピリドキシン、及びビオチン)を添加した培地100mlに接種し、37℃、40時間振とう培養後、実施例6に従ってアミラーゼ活性を測定した。比較として、野生型プロモーターを有するプラスミドpBAR-taaが組み込まれた形質転換体、CCAAT-SRE断片を一つ挿入して改変を行ったプロモーターを有するプラスミドpBAR-CSbが組み込まれた形質転換体、およびCCAAT-SRE断片を二つ挿入して改変を行ったプロモーターを有するプラスミドpBAR-CSPbが組み込まれた形質転換体のアミラーゼ活性も測定した。
【0052】
測定結果を図5の表(デンプンの欄)に示す。尚、図の上段には、各改変プロモーターにおけるCCAAT配列又はSREの挿入位置が模式的に表される。この表から分かるように、CCAAT配列からSREを含む領域を1つ挿入するごとにアミラーゼ生産量の増加が認められた。即ち、CCAAT-SRE断片を複数挿入することにより、アミラーゼ生産量を向上させることができることを確認した。
【0053】
[実施例8] 改変プロモーターの炭素源に対する効果
CCAAT-SRE断片を1コピー、2コピー、3コピー挿入した改変プロモーターPCSb、PCSPbおよびPCSPPbの、グルコースに対するカタボライト抑制を弱める効果を検討するために、pBAR-CSbが組み込まれた形質転換体、pBAR-CSPbが組み込まれた形質転換体、及びpBAR-CSPPbが組み込まれた形質転換体をC源がグルコースであるGP培地(1% Glucose、1% polypeptone、0.5% KH2PO4、0.1% NaNO3、0.05% MgSO4・7H2O (pH6.5))で培養した場合のアミラーゼ活性を測定し、C源がデンプンであるSP培地(1% Starch、1% polypeptone、0.5% KH2PO4、0.1% NaNO3、0.05% MgSO4・7H2O (pH6.5))で培養した場合の各アミラーゼ活性(実施例7)と比較した。
【0054】
C源をグルコースにした場合の測定結果を図5の表(グルコースの欄)に示す。野生型プロモーターを有する形質転換株を、グルコースをC源として用いた培地で培養した時のアミラーゼ生産量は、デンプンをC源として用いた培地で培養した時のアミラーゼ生産量の約40分の1である。一方、改変プロモーターを有する形質転換株では、グルコースをC源として用いた培地で培養した時のアミラーゼ生産量と、デンプンをC源として用いた培地で培養した時のアミラーゼ生産量の比は約1対8である。この結果より、CCAAT-SRE断片をプロモーター領域に挿入した改変プロモーターは、野生型プロモーターと比較して、カタボライト抑制を弱める効果が得られることが示された。また、グルコースをC源として用いた培地で培養した場合にも、デンプンをC源として用いた培地で培養した時と同様に、CCAAT-SRE配列を複数挿入したことによる発現増強効果が認められるため、改変プロモーターを用いることによって、発現増強効果とカタボライト抑制を弱める効果の2つの効果が得られることが明らかになった。つまり、CCAAT-SRE配列が複数組込まれた改変プロモーターを用いれば、炭素源をグルコースとした場合であっても良好にアミラーゼを産生させ得ることが判明した。
【0055】
[実施例9] エンハンサー機能を有するDNA断片の多様性の検討
CCAAT-SRE断片のSRE部分の一部を変化させた場合にプロモーター活性の増強効果が保持されるかどうかを検討した。まず、SRE部分が野生型(CGGAAATTTAAAGG:配列番号6)から(CGGAATTTAAACGG:配列番号7)に置換されるように設計した以下のプライマーMSRE、及びMutan-Super Express Km Kit(TAKARA社)を用いてpKF-taaPに対する部位特異的変異導入を行った。変異が導入されたプロモーター領域からCCAAT-SRE(XhoI-NotI)断片を取得し、これをCCAAT-mSRE断片とした。次に、実施例2及び3と同様の方法で、CCAAT-mSRE断片をプロモーター下流域のXhoI-NotIサイトに挿入した改変プロモーターPCmSbを作製し、この改変プロモーターを含むプラスミドpKF-PCmSbを用いて、実施例4と同様の方法でアミラーゼ活性測定用プラスミドpBAR-CmSbを構築し、次いで実施例5及び6と同様の方法でプロモーター活性を評価した。
【0056】
SRE部分の一部を他の塩基に置換するためのプライマー、
MSRE: 5'-TAGGGGCGGAATTTAAACGGGATTAA-3'(配列番号27)
アミラーゼ活性の測定結果を図6の表に示す。この表からわかるように、塩基置換を施したプロモーター(PCmSb)では野生型(taaP)の約3.2倍のアミラーゼ発現量が見られ、SREに塩基置換を施さないプロモーター(PCSb)と同等のプロモーター活性増強効果が認められた。このことから、SRE部分の配列の一部に変異を施してもプロモーター活性を増加する効果、即ちエンハンサー機能を保持できることが確認できた。
【0057】
[実施例10] エンハンサー配列の挿入位置の検討
CCAAT-SRE断片を様々な部位に挿入してプロモーターを改変した場合のプロモーター活性への影響を比較し、効果的な挿入位置を検討した。
まず、実施例3と同様の方法によって、実施例9で作製したCCAAT-mSRE断片がプロモーター上流域のXhoI-NotIサイト、CCAAT配列とSREに挟まれた領域のNotIサイト、又は下流域のSpeIサイトに挿入された改変プロモーターPCmSa、PCmSN、PCmSSをそれぞれ作製した。そして、実施例3及び4と同様の方法で、これらの改変プロモーターを含むアミラーゼ活性測定用プラスミドを構築し、次いで実施例5及び6と同様の方法でプロモーター活性を比較した。
【0058】
アミラーゼ活性の測定結果を図6の表に示す。尚、表の左には各改変プロモーターにおけるCCAAT-mSRE断片の挿入位置が模式的に表される。この表からわかるように、CCAAT配列からSREを含む領域を、もともと存在するCCAAT配列とSREの間に挿入した改変プロモーターPCmSNではプロモーター活性の上昇は認められなかったが、CCAAT配列とSREの間以外の領域に挿入した場合には、どの領域に挿入してもアミラーゼ発現量が増加することが認められた。しかし、CCAAT配列より上流やTATA-boxの直前に挿入した改変プロモーターPCmSaやPCmSSよりも、プロモーター下流域のXhoI-NotI部位に挿入したPCmSb(実施例9)の方が発現量が多かった。このことから、CCAAT-mSRE断片の挿入位置はもともと存在するSREの下流側が最も適しており、また転写開始点からCCAAT-mSRE断片までの距離とプロモーター活性とは相関性がないことが示唆された。尚、CCAAT-SRE断片についても同様であると考えられる。
【0059】
[実施例11] アミラーゼ高生産株の取得
改変プロモーターを持つアミラーゼ遺伝子を用いてアスペルギルス・ニドランスのアミラーゼ高生産株の取得を試みた。
実施例5又は7で作製した形質転換体の中から改変プロモーターを有するアミラーゼ遺伝子がargB座位へ相同的に多コピー組み込まれた株(CSb16、CSP6、CSPb19)を選択して、100mlのSPY培地(3% Starch、0.2% KCl、0.1% KH2PO4、0.05% MgSO4・7H2O、1% polypeptone、0.5% Yeast Extract)で37℃、5日間培養して実施例6で示した方法によりアミラーゼ活性を測定した。その結果を図7の表に示す。野生型プロモーターを持つtaa2株と比較して、改変プロモーターを持つCSb17株は5倍のアミラーゼ発現量を示した。アミラーゼ遺伝子が多コピー組み込まれた株では、コピー数の増加に伴って発現量が増加する傾向にあり、最も発現量が高い株で野生型プロモーターの約34倍、タンパク質量として1リットルあたり約10gものアミラーゼを発現していた。このことから、改変したプロモーターを持つアミラーゼ遺伝子を多コピー組み込むことにより、大量のタンパク質生産が可能であることが確認できた。
【0060】
[実施例12] 炭素源の違いによるアミラーゼ生産性の比較
次に、プロモーター領域にCCAAT-SRE断片を2つ有するCSP6株と、プロモーター領域にCCAAT-SRE断片を3つ有するCSPb19株を用いて様々なC源に対する発現量の差を調べた。
CSP6株とCSPb19株を100mlのSPY培地(C源デンプン:3% Starch、0.2% KCl、0.1% KH2PO4、0.05% MgSO4・7H2O、1% polypeptone、0.5% Yeast Extract)とMPY培地(C源マルトース:3% Maltose、0.2% KCl、0.1% KH2PO4、0.05% MgSO4・7H2O、1% polypeptone、0.5% Yeast Extract)、およびGPY培地(C源グルコース:3% Glucose、0.2% KCl、0.1% KH2PO4、0.05% MgSO4・7H2O、1% polypeptone、0.5% Yeast Extract)で37℃、5日間培養して実施例6と同様の方法でアミラーゼ活性を測定した。
【0061】
その結果を図8の表に示す。この表からわかるように、どちらの株もデンプンをC源として培養したときよりもマルトースをC源として培養したときの方がアミラーゼ活性が低い。これは低分子のC源を用いたことによるC源枯渇等の影響であると思われる。また、グルコースをC源とした場合にCSP6株はカタボライト抑制を受けて発現量が著しく低下してしまうのに対し、CSPb19株はデンプンをC源にした場合とほぼ同等の発現量を維持していた。このことから、プラスミドを多コピー導入した形質転換体を長時間培養する場合は、カタボライト抑制効果や発現増強効果がより顕著に現れることが確認できた。すなわち、アミラーゼ高生産株の取得を目的としてプラスミドを多コピー導入する場合には、3つ以上のCCAAT-SRE配列を有する改変プロモーターを用いることにより、より効率的にアミラーゼ高生産株を取得できることが確認された。
【0062】
[実施例13] CCAATとSREとの距離を変化させた場合の効果
CCAAT-SRE断片においてCCAAT配列とSREとの距離を変化させた場合のエンハンサー機能への影響を検討した。
まず、実施例2に示したプライマーCSXf、CSNrと次に示すプライマーCBglr、SBglfを用いてPCR反応を行い、CCAAT配列を含む断片とSREを含む断片とを別々に取得した。これらの断片をBglIIサイトで連結することにより、CCAAT配列とSREとの距離が短いDNA断片(以下、「sCCAAT-mSRE断片」という)を取得し、プロモーター(taaP)領域内の下流域のXhoI-NotIサイトに挿入して改変プロモーターPsCmSbを作製した。この改変プロモーターを用いて、実施例3から6と同様の方法によりプロモーター活性を評価した。
【0063】
BglIIサイトを付加した下流プライマー
CBglr:5'-GAAGATCTCTGTTTCGCTTTGCTGCTTC-3'(配列番号28)
BglIIサイトを付加した上流プライマー
SBglf:5'-GAAGATCTTCCAGAGTGACTAGGGGCGG-3'(配列番号29)
【0064】
アミラーゼ活性を測定した結果を図9の表に示す。この表に示されるように、sCCAAT-SRE断片を用いて改変を行ったプロモーター(PsCmSb)は野生型プロモーター(taaP)の約1.6倍のアミラーゼ発現量の増加効果が認められる。即ち、CCAAT配列とSREの間を短くした場合にもプロモーター活性の増強効果が得られている。このことから、プロモーターの活性化に関与しているのはCCAAT配列とSREの2つの領域であることが強く示唆される。尚、PsCmSbは、元の大きさのCCAAT-mSRE領域を挿入したPCmSbと比較すると約半分の増加効果しかないが、この増加効果の低下はCCAAT配列からSREまでの距離を変えたことにより、CCAAT配列に結合するHAP複合体とSREに結合するAmyRと位置関係が最適な位置からずれたためではないかと思われる。つまり、CCAAT配列からSREまでの距離の最適化により、より短いDNA断片を用いた場合でもCCAAT-SRE断片が有するプロモーター活性の増強効果を保持することは十分に可能であると考えられる。
【0065】
[実施例14] エンハンサー配列(SRE)の多様性の検討
野生型プロモーター(taaP)のSRE部分に種々の変異を導入した場合のプロモーター活性への影響を調べた。まず、以下に示すプライマーを用いたPCR反応によって、野生型プロモーター(taaP)に存在するSREの一部の塩基を他の塩基に置換した改変プロモーターtaaS(SRE部分の配列がCGGAAATTTAACGG:配列番号8)とMSRE2(SRE部分の配列がCGGAAATTTAATTA:配列番号30)を作製した。これらの改変プロモーターを用いて、実施例3から6と同様の方法によりプロモーター活性を評価した。
【0066】
SREc(taaS用):5'-GGGGCGGAAATTTAACGGGATTAATTTCC-3'(配列番号31)
MSRE2(MSRE2用):5'-CGGAAATTTAATTAGATTAATTTCC-3'(配列番号32)
アミラーゼ活性を測定した結果を図10の表に示す。野生型のプロモーターに存在するSREの5'末端側から12番目の塩基をCに変異させた改変プロモーターtaaSは、野生型プロモーターの約1.2倍のアミラーゼ活性が認められる。この結果から、SREの5'末端側から12番目の塩基を変異させたとしても、SREが有するエンハンサー機能を維持できること、及びこの塩基をCに置換して得られる配列はより優れたエンハンサー機能を有することが判明した。一方、SRE部分の5'末端側から13及び14番目の塩基をそれぞれT及びAに置換した改変プロモーターMSRE2ではアミラーゼ発現量が低下し、野生型プロモーターの約0.8倍になった。この結果から、SREの5'末端側から13、14番目の塩基については変異させないことが高いエンハンサー機能を維持するのに重要であるといえる。
【0067】
[実施例15]アミラーゼ発現用プラスミドの構築
アスペルギルス・オリゼを宿主として利用した酵素の生産系においても改変プロモーターの利用が有効であることを証明するため、実施例3と実施例7で作製した各改変プロモーターを用いて以下の実験を行った。まず、実施例4で作製したプラスミドpBAR-CSPbをXbaIおよびBamHIで切断した後、アガロースゲル電気泳動によって約3600bpのDNA断片を回収・精製した。回収されたDNA断片を、オロチジン5’ホスフェートデカルボキシラーゼ遺伝子(pyrG遺伝子)の導入されているプラスミドpYRG100のXbaI-BamHI切断部位に挿入してアミラーゼ遺伝子発現用プラスミドpYRG-CSPbを構築した。尚、pYRG100については、先の報告(日本醤油研究所雑誌, 25(1), 21-26(1999))に従って次のように作製した。即ち、アスペルギルス・オリゼAMA 1201株(FERM P−19089)の染色体DNAを鋳型とし、以下のプライマーPyrFとプライマーPyrRを用いてPCR反応を行い、これによって得られた増幅産物をSalIとHindIIIで切断して約1.9KbpのDNA断片を取得し、このDNA断片を、pUC119のマルチクローニングサイトのSalI-HindIII部分へ挿入してpYRG100とした。
PyrF:5'-TATGTCGACCCAAGCCGCTGCTGGAATTGA-3'(配列番号33)
PyrR:5'-GAAAAGCTTGATCAATACCGTACGGGAGAT-3'(配列番号34)
【0068】
[実施例16] アミラーゼ低生産株(アスペルギルス・オリゼAMA 1201−P株)、及びアミラーゼ高生産株(アスペルギルス・オリゼKBN6217−56株)の形質転換
1.アスペルギルス・オリゼの形質転換
実施例15で得られたプラスミドpYRG-CSPbを用いて、改変プロモーターをアスペルギルス・オリゼ同種内(アスペルギルス・オリゼの遺伝子でアスペルギルス・オリゼを形質転換)で利用した場合における、タンパク質の生産性向上効果を評価した。まず、実施例15で得られたプラスミドpYRG-CSPbによるアスペルギルス・オリゼの形質転換を次のように行った。pyrG遺伝子の欠損株であるアスペルギルス・オリゼAMA 1201−P株および同遺伝子欠損株であるアスペルギルス・オリゼKBN6217−56株を、コンプリート培地(2% マルトエキス、2% グルコース、0.1% バクトペプトン)にウリジンを添加した培地で30℃、一晩振とう培養した後、得られた菌体を細胞壁溶解液〔20 mg/ml Yatalase(宝酒造社), 0.8 M NaCl, 10 mM リン酸緩衝液(pH6.0)〕に懸濁し、30℃で1〜2時間緩やかに振とうすることによりプロトプラスト化させた。そしてプロトプラストを含む懸濁液をナイロンフィルターで濾過して残存する菌体を除去した。
【0069】
尚、アスペルギルス・オリゼAMA 1201−P株はAMA 1201株を親株とし、他方アスペルギルス・オリゼKBN6217−56株はKBN6217株を親株とし、いずれもMol. Gen. Genet. (1987) 210: 460-461に従って5フルオロオロチン酸(5−FOA)の耐性株を分離した後ウリジン要求性変異株を選抜することによって取得された。
アスペルギルス・オリゼAMA 1201株は以下のとおり寄託されている。
受託番号:FERM P−19089
国際寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 茨城県つくば市東1丁目1番3号 中央第6
寄託日:2002年(平成14年)11月1日
同様にアスペルギルス・オリゼKBN6217株は以下のとおり寄託されている。
受託番号:FERM P−19088
国際寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 茨城県つくば市東1丁目1番3号 中央第6
寄託日:2002年(平成14年)11月1日
【0070】
次に、上記の方法で得られた各プロトプラストを用いて、Turnerらの方法(Gene, 36, 321-331(1985))によりコンピテントセルの調製および形質転換を行い、そしてウリジンを含まない培地(ツァペック・ドックス培地(0.2% NaNO3、0.1% K2HPO4、0.05% KCl、0.05% MgSO4・7H2O、2% グルコース(pH5.5))で生育可能な形質転換体をそれぞれの宿主について数十株取得した。
【0071】
2.アミラーゼ高生産性の株の取得
上記の1.で取得した各形質転換体をアミラーゼ活性検出用寒天培地(2% マルトース、1% アミロペクチン、0.15% KH2PO4、0.05% KCl、0.09% NaNO3、0.05% MgSO4・7H2O、1.5% Agar (pH6.5))に点植菌した。菌体から分泌されたアミラーゼの作用によって基質のアミロペクチンが分解されて生じたハローの大きさを指標に、アミラーゼ高生産性の株をそれぞれの宿主についてスクリーニングした。
【0072】
3.アミラーゼ活性の測定
上記の2.で取得したアミラーゼ高生産株をエーゼで掻き取り、100ml のSP培地(1% Starch、1% polypeptone、0.5% KH2PO4、0.1% NaNO3、0.05% MgSO4・7H2O (pH6.5))に接種し、30℃、66時間振とう培養後、実施例6に従ってアミラーゼ活性を測定した。
測定結果を図11の表に示す。アミラーゼ低生産株であるAMA 1201−P株或はアミラーゼ高生産株であるKBN6217−56株のいずれを宿主として用いた場合においても形質転換体のアミラーゼ生産量は親株のそれよりも著しく増加した。具体的には、アミラーゼ低生産株であるAMA 1201−P株を宿主として得られた形質転換株ではアミラーゼ生産量が親株の57倍以上となった。一方、元々アミラーゼ高生産株であるKBN6217−56株を宿主とした形質転換株ではアミラーゼ生産量が親株の10倍以上となった。以上より、アスペルギルス・オリゼを宿主とした場合においても、導入遺伝子を高発現させることに対して本発明の改変プロモーターが有効に機能することが確認された。
【0073】
[実施例17]異種遺伝子(ラッカーゼ遺伝子)発現用プラスミドの構築
次に、異種遺伝子を発現させる場合における改変プロモーターの効果を検討した。ラッカーゼ遺伝子発現用プラスミドの構築を次のように行った。、まず、ラッカーゼ遺伝子と連結するために、以下に示すプライマーを用いたPCR法によりタカアミラーゼプロモーターおよび改変プロモーター(PCSPb、PCSPPb)にそれぞれ変異導入を行った。
タカアミラーゼ遺伝子プロモーターの5’末端側(EcoRI切断部位あり)のプライマー:5'-GGAATTCATGGTGTTTTGATC-3'(Taa1F、配列番号35)
タカアミラーゼ遺伝子プロモーターの3’末端側にEcoT22I切断部位を付加するためのプライマー:5'-GAGACCACCACGCGACATGCATAAATGCCTTCTGTGG-3'(Taa-E、配列番号36)
【0074】
一方、Paraphaeoshaeria 属(パラファエオスフェリア)あるいは本属に近縁であると同定されたKL112株由来のラッカーゼ遺伝子をプロモーターと連結してベクターに組み込むために、以下に示すプライマーを用いたPCR法によりラッカーゼ遺伝子の増幅及び制限酵素認識の為の変異導入を行った。
ラッカーゼ遺伝子の増幅および5’末端側にEcoT22I切断部位を付加するためのプライマー:P11:5'-CCATGCATTTCTTTATCATTGGAG-3'(配列番号37)
ラッカーゼ遺伝子の増幅および3’末端側にSacI切断部位を付加するためのプライマー、P12:5'-CCGAGCTCTGGTATAGTATCTTGAATGTATC-3'(配列番号38)。
PCR反応に供する鋳型DNAは、Raederらの方法(U.Raeder and P. Broda, Lett. Appl. Microb.,1, 17-20(1985))に従ってポテトデキストロース寒天培地(DIFCO)で培養したKL112株より調製した。尚、本KL112株は以下のとおり寄託されている。
受託番号:FERM P−19071
国際寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 茨城県つくば市東1丁目1番3号 中央第6
寄託日:2002年(平成14年)10月18日
以上の方法で変異導入した各プロモーター領域をEcoRIおよびEcoT22Iで切断し、他方、増幅したラッカーゼ遺伝子についてはEcoT22IおよびSacIで切断した。そしてアガロースゲル電気泳動を利用して各制限酵素切断断片を回収・精製した。得られた各制限酵素切断断片を発現ベクターpYRG100のEcoRI-SacI切断部位に挿入してラッカーゼ発現用ベクターpTALC100(タカアミラーゼプロモーター)、pTALCPb(改変プロモーターPCSPb)及びpTALCPPb(改変プロモーターPCSPPb)を構築した。
【0075】
[実施例18] アスペルギルス・オリゼを宿主とした形質転換体の取得
1.ラッカーゼ高生産性の株の取得
実施例17で得られたプラスミドpTALC100、pTALCPbおよびpTALCPPbを用いて、アスペルギルス・オリゼ AMA 1201−P株を実施例16の1.に記載したのと同様の方法で形質転換した。次いで形質転換体をラッカーゼ活性検出用寒天培地(ポテトデキストロース寒天培地(DIFCO)、10mM CuSO4、1mM カフェイン酸)に点植菌した。菌体から分泌されたラッカーゼの作用により基質のカフェイン酸が酸化開裂・重合されて生ずる褐変物質によって形成されるハローの大きさを指標に、ラッカーゼ高生産株をスクリーニングした。
【0076】
2.ラッカーゼ活性の測定
上記の1.で取得したラッカーゼ高生産株をエーゼで掻き取り、50ml のSPN培地(3% Starch、1% polypeptone、1% 発酵粕、0.1% KH2PO4、0.2% KCl、0.05% MgSO4・7H2O、10mM CuSO4 (pH6.5))に接種して30℃、6日間振とう培養した。培養終了後、ブフナー漏斗とろ紙で菌体と上清を分離して、上清を酵素溶液とした。
50mM 酢酸ナトリウムbuffer、1mM グアイアコール (和光純薬)に酵素溶液を加えて2.5mlの反応系を調製し、これを40℃で10分間反応させた時の430nmにおける吸光度の変化を調べることによってラッカーゼ活性を求めた。
【0077】
ラッカーゼ活性を測定した結果を図12の表に示す。非組換え株(宿主として用いたアスペルギルス・オリゼAMA 1201−P株)では全くラッカーゼ活性が認められなかったが、形質転換体ではいずれも高いラッカーゼ活性が検出された。CCAAT-SRE断片を三つ含んだプロモーター(PCSPb)を導入した形質転換体のラッカーゼ生産性は、野生型プロモーターを導入した形質転換体のそれと同程度であった。しかし、CCAAT-SRE断片を四つ含んだプロモーター(PCSPPb)を導入することにより、より高い効率でラッカーゼを生産する株を取得することができた。
以上の結果から、異種遺伝子の発現を目的とした場合においても、CCAAT-SRE配列をより多く含んだ改良プロモーターを用いた方が、酵素を効率的に生産する目的において有利であることが確認された。
尚、各形質転換体の培養濾液についてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ったところ、ラッカーゼ遺伝子から予想される分子量のタンパク質量が、いずれの形質転換体においても非組換えに比較して明らかに増大していることが確認された。
【0078】
【発明の効果】
本発明により、糸状菌で機能する発現効率の高い改変プロモーターが提供される。この改変プロモーターを用いれば、糸状菌を宿主とした同種又は異種タンパク質の効率的な生産系が構築できる。アミラーゼを生産タンパク質のモデルとして検討したところ、野生型プロモーターを用いた場合に比較して7倍もの発現量を有する形質転換体が取得され、本発明の改変プロモーターがタンパク質の高生産系の構築に極めて有用であることが確認された。
【0079】
【配列表】
SEQUENCE LISTING
<110> AMANO ENZYME INC.
<120> Modified promoter
<130> P02-660
<140>
<141>
<150> JP P2002-055853
<151> 2002-03-01
<160> 38
<170> PatentIn Ver. 2.1
<210> 1
<211> 11
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: an enhancer
sequence
<400> 1
ccaatnnnnn n 11
<210> 2
<211> 14
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: an enhancer
sequence
<400> 2
cggnnnnnnn nngg 14
<210> 3
<211> 11
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: an enhancer
sequence
<400> 3
ccaattagaa g 11
<210> 4
<211> 14
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: an enhancer
sequence
<400> 4
cgghnwwwwn whgg 14
<210> 5
<211> 14
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: an enhancer
sequence
<400> 5
cggwwwwwww whgg 14
<210> 6
<211> 14
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: an enhancer
sequence
<400> 6
cggaaattta aagg 14
<210> 7
<211> 14
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: an enhancer
sequence
<400> 7
cggaatttaa acgg 14
<210> 8
<211> 14
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: an enhancer
sequence
<400> 8
cggaaattta acgg 14
<210> 9
<211> 128
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a DNA fragment
including CCAAT sequence and SRE
<400> 9
ccaattagaa gcagcaaagc gaaacagccc aagaaaaagg tcggcccgtc ggccttttct 60
gcaacgctga tcacgggcag cgatccaacc aacaccctcc agagtgacta ggggcggaaa 120
tttaaagg 128
<210> 10
<211> 196
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a DNA fragment
including CCAAT sequence and SRE
<400> 10
ctgcagacca cctctaggca tcggacgcac catccaatta gaagcagcaa agcgaaacag 60
cccaagaaaa aggtcggccc gtcggccttt tctgcaacgc tgatcacggg cagcgatcca 120
accaacaccc tccagagtga ctaggggcgg aaatttaaag ggattaattt ccactcaacc 180
acaaatcaca ctgcag 196
<210> 11
<211> 193
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a DNA fragment
including CCAAT sequence and SRE
<400> 11
ctcgagaggc atcggacgca ccatccaatt agaagcagca aagcgaaaca gcccaagaaa 60
aaggtcggcc cgtcggcctt ttctgcaacg ctgatcacgg gcagcgatcc aaccaacacc 120
ctccagagtg actaggggcg gaaatttaaa gggattaatt tccactcaac cacaaatcac 180
agtcggcggc cgc 193
<210> 12
<211> 615
<212> DNA
<213> Aspergillus oryzae
<220>
<221> promoter
<222> (1)..(615)
<400> 12
gaattcatgg tgttttgatc attttaaatt tttatatggc gggtggtggg caactcgctt 60
ccgggcaact cgcttaccga ttacgttagg gctgatattt acgtaaaaat cgtcaaggga 120
tgcaagacca aagtagtaaa accccggagt caacagcatc caagcccaag tccttcacgg 180
agaaacccca gcgtccacat cacgagcgaa ggaccacctc taggcatcgg acgcaccatc 240
caattagaag cagcaaagcg aaacagccca agaaaaaggt cggcccgtcg gccttttctg 300
caacgctgat cacgggcagc gatccaacca acaccctcca gagtgactag gggcggaaat 360
ttaaagggat taatttccac tcaaccacaa atcacagtcg tccccggtat tgtcctgcag 420
aatgcaattt aaactcttct gcgaatcgct tggattcccc gcccctggcc gtagagctta 480
aagtatgtcc cttgtcgatg cgatgtatca caacatataa atactagcaa gggatgccat 540
gcttggagga tagcaaccga caacatcaca tcaagctctc ccttctctga acaataaacc 600
ccacagaagg cattt 615
<210> 13
<211> 44
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: a PCR primer
designed for amplifying CCAAT sequence
<400> 13
ccgctcgagg caccatccaa ttagaagcgc ggccgctaaa ctat 44
<210> 14
<211> 44
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: a PCR primer
designed for amplifying CCAAT sequence
<400> 14
atagtttagc ggccgcgctt ctaattggat ggtgcctcga gcgg 44
<210> 15
<211> 46
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: a PCR primer
designed for amplifying SRE
<400> 15
gactagttaa cctaggggcg gaaatttaac gggatgttaa ctagtc 46
<210> 16
<211> 46
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: a PCR primer
designed for amplifying SRE
<400> 16
gactagttaa catcccgtta aatttccgcc cctaggttaa ctagtc 46
<210> 17
<211> 30
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: a PCR primer
designed for amplifying a DNA fragment including
CCAAT sequence and SRE
<400> 17
aaactgcaga ccacctctag gcatcggacg 30
<210> 18
<211> 30
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: a PCR primer
designed for amplifying a DNA fragment including
CCAAT sequence and SRE
<400> 18
tttctgcagt gttgatttgt ggttgagtgg 30
<210> 19
<211> 27
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: a PCR primer
designed for amplifying a DNA fragment including
CCAAT sequence and SRE
<400> 19
cggctcgagg catcggacgc accatcc 27
<210> 20
<211> 40
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: a PCR primer
designed for amplifying a DNA fragment including
CCAAT sequence and SRE
<400> 20
atagtttagc ggccgccgac tgtgatttgt ggttgagtgg 40
<210> 21
<211> 45
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a primer for
site-directed mutagenesis
<400> 21
cgcttggatt ccccgcccgc ggccgcagag cttaaagtat gtccc 45
<210> 22
<211> 45
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a primer for
site-directed mutagenesis
<400> 22
gaatgcaatt taaactcttc ctcgagtcgc ttggattccc cgccc 45
<210> 23
<211> 47
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a primer for
site-directed mutagenesis
<400> 23
gtagtaaaac cccggagtca gcggccgcca agcccaagtc cttcacg 47
<210> 24
<211> 41
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a primer for
site-directed mutagenesis
<400> 24
cgtcaaggga tgcaagactc gagtagtaaa accccggagt c 41
<210> 25
<211> 47
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a primer for
site-directed mutagenesis
<400> 25
gcaccatcca attagaagcg cggccgcgaa acagcccaag aaaaagg 47
<210> 26
<211> 26
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a primer for
site-directed mutagenesis
<400> 26
taaagtatgt cactagtcga tgcgat 26
<210> 27
<211> 26
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a primer for
site-directed mutagenesis
<400> 27
taggggcgga atttaaacgg gattaa 26
<210> 28
<211> 28
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a PCR primer
designed for amplifying a DNA fragment including
CCAATsequence
<400> 28
gaagatctct gtttcgcttt gctgcttc 28
<210> 29
<211> 28
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a PCR primer
designed for amplifying a DNA fragment including
SRE
<400> 29
gaagatcttc cagagtgact aggggcgg 28
<210> 30
<211> 14
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a partialy
modified SRE
<400> 30
cggaaattta atta 14
<210> 31
<211> 29
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a PCR primer
designed for mutating SRE
<400> 31
ggggcggaaa tttaacggga ttaatttcc 29
<210> 32
<211> 25
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a PCR primer
designed for mutating SRE
<400> 32
cggaaattta attagattaa tttcc 25
<210> 33
<211> 30
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a PCR primer
<400> 33
tatgtcgacc caagccgctg ctggaattga 30
<210> 34
<211> 30
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a PCR primer
<400> 34
gaaaagcttg atcaataccg tacgggagat 30
<210> 35
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a PCR primer
<400> 35
ggaattcatg gtgttttgat c 21
<210> 36
<211> 37
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a PCR primer
<400> 36
gagaccacca cgcgacatgc ataaatgcct tctgtgg 37
<210> 37
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a PCR primer
<400> 37
ccatgcattt ctttatcatt ggag 24
<210> 38
<211> 31
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:a PCR primer
<400> 38
ccgagctctg gtatagtatc ttgaatgtat c 31
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はタカアミラーゼA遺伝子(アスペルギルス・オリゼ)のプロモーター領域の配列を示す図である。
【図2】 図2はタカアミラーゼA遺伝子(アスペルギルス・オリゼ)のプロモーター領域の模式図であり、転写制御因子結合配列(CCAAT配列・SRE)の位置と、変異導入箇所を示す。部位特異的変異によって導入した制限酵素サイトを下線で示す。CCAATはCCAAT配列(広域転写活性化因子(HAP複合体)の結合因子)、SREはデンプン分解酵素遺伝子群の転写活性化因子(AmyR)の結合因子、TATAはTATA-box、+1は転写開始点をそれぞれ表す。
【図3】 図3は実施例4におけるプロモーター活性評価用プラスミドの作製過程を示す図である。
【図4】 図4は実施例6におけるアミラーゼ活性測定の結果をまとめた表である。表の左には各改変プロモーターにおけるCCAAT配列又はSREの挿入位置が模式的に表される。点線で囲った部分が挿入した断片である。taaPは野生型プロモーター、PCCAATbはCCAAT配列を挿入した改変プロモーター、PSREbはSREを挿入した改変プロモーター、PCSPはCCAAT-SRE断片を挿入した改変プロモーターをそれぞれ表す。
【図5】 図5は実施例7及び8におけるアミラーゼ活性測定の結果をまとめた表である。上段には各改変プロモーターにおけるCCAAT-SRE断片の挿入位置が模式的に表される。点線で囲った部分が挿入した断片である。taaPは野生型プロモーター、PCSb及びPCSPはCCAAT-SRE断片を一つ挿入した改変プロモーター、PCSPbはCCAAT-SRE断片を二つ挿入した改変プロモーター、PCSPPbはCCAAT-SRE断片三つ挿入したプロモーターをそれぞれ表す。
【図6】 図6は実施例10におけるアミラーゼ活性測定の結果をまとめた表である。表の左には各改変プロモーターにおけるCCAAT-mSRE断片の挿入位置が模式的に表される。点線で囲った部分が挿入した断片である。taaPは野生型プロモーターを表す。また、PCmSa、PCmSN、PCmSb、PCmSSはそれぞれ異なる位置にCCAAT-mSRE断片を一つ挿入した改変プロモーターを表す。
【図7】 図7は実施例11で取得した各形質転換体をSPY培地で5日間培養した場合のアミラーゼ生産量をまとめた表である。ABPU1は使用した宿主、taa2は野生型プロモーターを有する菌株を表す。アミラーゼ生産量はタカアミラーゼの比活性を100 U/mgとしたときの換算値で示した。
【図8】 図8は実施例12におけるアミラーゼ生産量の測定結果をまとめた表であり、改変プロモーターを有する菌体を様々な炭素源で5日間培養した場合のアミラーゼ生産量が示される。アミラーゼ生産量はタカアミラーゼの比活性を100 U/mgとしたときの換算値で示した。
【図9】 図9は実施例13におけるアミラーゼ活性測定の結果をまとめた表である。表の左には各改変プロモーターにおけるCCAAT-mSRE断片又はsCCAAT-mSRE断片の挿入位置が模式的に表される。点線で囲った部分が挿入した断片である。taaPは野生型プロモーター、PCmSbはCCAAT-mSRE断片を挿入した改変プロモーター、PsCmSbはsCCAAT-mSRE断片を挿入した改変プロモーターをそれぞれ表す。
【図10】 図10は実施例14におけるアミラーゼ活性測定の結果をまとめた表である。表の左には各改変プロモーターにおけるSRE部分の配列が示される。taaPは野生型プロモーターを表す。taaSでは5'末端側から数えて12番目の塩基が置換されている。同様にMSRE2では5'末端側から数えて12〜14番目の塩基が置換されている。
【図11】 図11は実施例15及び16におけるアミラーゼ活性測定の結果をまとめた表である。非組換え株は形質転換を施していない菌株、PCSPbはCCAAT-SRE断片を二つ挿入したプロモーターを有する菌株をそれぞれ表す。
【図12】 図12は実施例17及び18におけるラッカーゼ活性測定の結果をまとめた表である。非組換え株は形質転換を施していない菌株、PCSPbはCCAAT-SRE断片を二つ挿入したプロモーター、PCSPPbはCCAAT-SRE断片三つ挿入したプロモーターを有する菌株をそれぞれ表す。

Claims (17)

  1. 糸状菌で機能するプロモーターに、該プロモーターの5"末端側から3"末端側に向かって順に並ぶように、CCAATNNNNNN(第1塩基配列:配列番号1)を含む第1DNA断片と、CGGNNNNNNNNNGG(第2塩基配列:配列番号2)を含む第2DNA断片と、を挿入してなる改変プロモーターであって、前記プロモーターに存在するCCAAT配列よりも5"側上流域、又はプロモーター領域に存在するSRE領域よりも3"側下流域に前記第1DNA断片及び前記第2DNA断片が挿入される、改変プロモーター
  2. 前記第1塩基配列がCCAATTAGAAG(配列番号3)である、請求項1に記載の改変プロモーター。
  3. 前記第2塩基配列がCGGHNWWWWNWHGG(配列番号4)である、請求項1又は2に記載の改変プロモーター。
  4. 前記第2塩基配列がCGGWWWWWWWWHGG(配列番号5)である、請求項1又は2に記載の改変プロモーター。
  5. 前記第2塩基配列がCGGAAATTTAAAGG(配列番号6)、CGGAATTTAAACGG(配列番号7)又はCGGAAATTTAACGG(配列番号8)である、請求項1又は2に記載の改変プロモーター。
  6. 複数個の前記第1DNA断片及び複数個の前記第2DNA断片が挿入される、請求項1〜のいずれかに記載の改変プロモーター。
  7. 前記第1DNA断片と前記第2DNA断片が同じ数ずつ挿入される、請求項に記載の改変プロモーター。
  8. 一つの第1DNA断片と一つの第2DNA断片とが組みをなし、かつ各組において第1DNA断片が前記プロモーターの5"末端側に位置するように、前記プロモーターに前記第1DNA断片と前記第2DNA断片が挿入される、請求項に記載の改変プロモーター。
  9. 糸状菌で機能するプロモーターに、配列番号9の塩基配列を有するDNA断片、又は該DNA断片の一部が改変されたDNA断片であってエンハンサー機能を有するDNA断片を1〜数個組込んでなる改変プロモーター。
  10. 前記糸状菌で機能するプロモーターがアスペルギルス・オリゼのタカアミラーゼのプロモーターである、請求項1〜のいずれかに記載の改変プロモーター。
  11. CGGAATTTAAACGG(配列番号7)又はCGGAAATTTAACGG(配列番号8)の塩基配列からなる、エンハンサー機能を有するDNA断片。
  12. 糸状菌で機能し、かつ請求項11のDNA断片を含む、改変プロモーター。
  13. 請求項1〜10、請求項12のいずれかの改変プロモーターが組込まれたベクター。
  14. 請求項1〜10、請求項12のいずれかの改変プロモーターが組込まれ、されに該改変プロモーターの制御下に目的のタンパク質の構造遺伝子が組込まれたベクター。
  15. 請求項14のベクターを、前記構造遺伝子を発現可能に保有する糸状菌形質転換体。
  16. 請求項1〜10、請求項12のいずれかの改変プロモーターと、及び目的のタンパク質をコードし、該改変プロモーターの制御下にある構造遺伝子と、を保有する糸状菌。
  17. 請求項16の糸状菌を、前記タンパク質を産生可能な条件で培養し、産生されたタンパク質を回収する、ことを特徴とするタンパク質の生産方法。
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