JP4491937B2 - 自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用シートベルト装置のショルダーアンカー等のウェビング挿通部材に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
自動車用シートベルト装置は、周知の通り自動車においてウェビングによって乗員を保護するように設けられるものである。例えば自動車の前席用のシートベルト装置にあっては、ウェビングはＢピラーのショルダーアンカーに掛けられている。
【０００３】
このショルダーアンカーは、通常は金属製の本体の外面を合成樹脂（通常はポリアミド）で覆うようにインサート成形されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
このショルダーアンカーにはウェビングの挿通孔が設けられ、この挿通孔の内面などウェビングが摺動する面は上記の合成樹脂にて構成されているが、摺動抵抗が大きい。
【０００５】
本発明はウェビングがきわめてスムーズに摺動する自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材は、ウェビングの挿通部を有した自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材において、該挿通部のうち少なくともウェビングが摺動する部分が低摩擦材よりなり、且つ、十点平均粗さ（Ｒｚ）７〜１７μｍ、凹凸の平均間隔（Ｓｍ）１５０〜３５０μｍの粗面である自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材であって、該低摩擦材は、固体潤滑材のコーティング及び金属めっきの一方又は双方であり、該固体潤滑材のコーティングは、フッ素樹脂コーティングと、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ほう素又はフッ化黒鉛からなるセラミック系コーティングとを含み、該金属めっきは、ニッケルめっき、クロムめっき及びボロンめっきを含むことを特徴とするものである。
【０００７】
かかるウェビング挿通部材にあっては、所定表面粗さの低摩擦材面によりウェビングが案内されるため、その摺動抵抗がきわめて小さい。
【０００８】
一般に、ウェビングは樹脂コーティングが施されている。このウェビングがウェビング挿通部と摺動した場合、ウェビングのコーティング樹脂の一部が挿通部の摺動面に擦り付けられ、これによってウェビングの摺動抵抗が増加するようになる。本発明にあっては、摺動面を粗くし、ウェビングとの接触面積を減少させることにより、ウェビングの摺動抵抗は著しく小さいものとなる。
【０００９】
本発明では、このウェビングの摺動部分に金属ピースが配置され、この金属ピースの表面が粗面であり、該表面に低摩擦材が設けられていることが好ましい。この金属ピースは、前記ウェビングが摺動する湾曲面と、該湾曲面に連なる１対の脚片部とを有しており、該脚片部が該ウェビング挿通部材の本体を狭持していることが好ましい。この本体の該ウェビング挿通部の周囲及び前記金属ピースの脚片部を覆う合成樹脂を有することが好ましい。
【００１０】
本発明では、この低摩擦材は固体潤滑材のコーティング及び金属めっきの一方又は双方である。
【００１１】
【発明の実施の形態】
図１は実施の形態に係る自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材としてのショルダーアンカーの正面図、図２は図１のII−II線に沿う断面図、図３はスリップピースの斜視図である。
【００１２】
このショルダーアンカー１は、金属製のプレート状の本体２と、この本体２に係合したスリップピース６と、合成樹脂モールド４とからなる。
【００１３】
本体２の上部には、Ｂピラーへの取付用のボルト挿通孔２ａが設けられ、下部にはウェビングの挿通孔２ｂが設けられている。
【００１４】
このスリップピース６は金属板をプレス成形して湾曲面６ａと１対の平行な脚片部６ｂ，６ｂとを有するようにしたものであり、図２の如くこの１対の脚片部６ｂ，６ｂ間で本体２のウェビング挿通孔２ｂの縁部を挟持する。
【００１５】
この脚片部６ｂと、本体２のウェビング挿通孔２ｂの周囲とを覆うようにインサート成形により合成樹脂モールド４が形成され、本体２とスリップピース６との一体性を高めるようになっている。この合成樹脂としてはナイロンなどのポリアミドを用いることができる。
【００１６】
このスリップピース６の湾曲面６ａは、ＪＩＳ Ｂ ０６０１で規定する十点平均粗さ（Ｒｚ）７〜１７μｍ、凹凸の平均間隔（Ｓｍ）１５０〜３５０μｍの粗面である。
【００１７】
この粗面は、ショットブラスト、サンドブラスト、ショットピーニング、バレル研磨などにより形成される。この粗面の表面には低摩擦材の層が形成されている。この低摩擦材の層としては、フッ素樹脂（例えば四フッ化エチレン）コーティング、ニッケルめっき、クロムめっき、ボロンめっき等の他、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ほう素、フッ化黒鉛等のセラミック系コーティング等が挙げられる。これらの固体潤滑性に優れたコーティングないしめっきを形成することにより、ウェビングの摺動がきわめて良好なものとなる。なお、めっきを複数層形成してもよく、めっき層の上に上記の１種又は２種以上のコーティング層を形成してもよい。
【００１８】
このような固体潤滑性の層は、合成樹脂モールド４の表面にも形成してもよい。
【００１９】
この十点平均粗さ及び平均間隔よりなる低摩擦材表面によると、ウェビングとの接触面積が小さく、ウェビングの摺動抵抗がきわめて小さい。なお、十点平均粗さ（Ｒｚ）は１０〜１３μｍが特に好ましく、平均間隔（Ｓｍ）は、２００〜３００μｍが特に好ましい。
【００２０】
図４は別の実施の形態に係る自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材８の正面図、図５は図４のＶ−Ｖ線に沿う断面図である。
【００２１】
このウェビング挿通部材８は全体として金属プレートよりなるものであり、ボルト挿通孔８ａとウェビング挿通孔８ｂとを有している。このウェビング挿通孔８ｂの下縁側は略Ｃ字形断面形状となるようにプレスにより湾曲されており、この湾曲部８ｃの表面は十点平均粗さ（Ｒｚ）７〜１７μｍ、凹凸の平均間隔（Ｓｍ）１５０〜３５０μｍの粗面である。この粗面に上記の固体潤滑性のめっきないしコーティング層が形成されている。
【００２２】
上記実施の形態はショルダーアンカーに関するものであるが、シートベルト装置のタング等にも本発明を適用できる。
【００２３】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材によると、ウェビングとのすべり効率の大幅な改善を図ることで、巻き取り不良の低減と引き出し巻き取りが良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【図１】 実施の形態に係る自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材としてのショルダーアンカーの正面図である。
【図２】 図１のII−II線に沿う断面図である。
【図３】 スリップピースの斜視図である。
【図４】 別の実施の形態に係る自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材８の正面図である。
【図５】 図４のＶ−Ｖ線に沿う断面図である。
【符号の説明】
１，８ ショルダーアンカー
２ 本体
２ａ，８ａ ボルト挿通孔
２ｂ，８ｂ ウェビング挿通孔
４ 合成樹脂モールド
６ スリップピース
６ａ 湾曲面
６ｂ 脚片部
８ｃ 湾曲部

Claims (6)

1. ウェビングの挿通部を有した自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材において、該挿通部のうち少なくともウェビングが摺動する部分が低摩擦材よりなり、且つ、十点平均粗さ（Ｒｚ）７〜１７μｍ、凹凸の平均間隔（Ｓｍ）１５０〜３５０μｍの粗面である自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材であって、
   該低摩擦材は、固体潤滑材のコーティング及び金属めっきの一方又は双方であり、
   該固体潤滑材のコーティングは、フッ素樹脂コーティングと、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ほう素又はフッ化黒鉛からなるセラミック系コーティングとを含み、
   該金属めっきは、ニッケルめっき、クロムめっき及びボロンめっきを含むことを特徴とする自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材。
2. 請求項１において、前記ウェビングの摺動部分に金属ピースが配置され、この金属ピースの表面が粗面であり、該表面に前記低摩擦材が設けられていることを特徴とする自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材。
3. 請求項２において、前記低摩擦材はニッケルめっき又はクロムめっきあるいはこれらを複数層形成したものであることを特徴とする自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材。
4. 請求項２又は３において、金属ピースは、前記ウェビングが摺動する湾曲面と、該湾曲面に連なる１対の脚片部とを有しており、該脚片部が該ウェビング挿通部材の本体を狭持していることを特徴とする自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材。
5. 請求項４において、該本体の該ウェビング挿通部の周囲及び前記金属ピースの脚片部を覆う合成樹脂を有することを特徴とする自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材。
6. 請求項１において、ウェビング挿通部材の金属製本体に一体に連なる金属製湾曲部が該ウェビング摺動部分に設けられ、該湾曲部の表面が前記粗面であり、該表面に前記低摩擦材が設けられていることを特徴とする自動車用シートベルト装置のウェビング挿通部材。

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