本発明の請求項1記載の発明は、生死細胞のいずれとも反応して生死細胞のいずれも発色させる第1の試薬と死細胞とのみ反応して死細胞のみ反応させる第2の試薬との両方を微生物の有無を検査する検体に接触させ、蛍光染色法で染色した微生物を計量する微生物計量装置において、予め定められた複数の波長域の励起光を照射する光源と前記励起光によって発光する予め定められ異なった波長域の光だけを透過する分光フィルタと光を受光する受光部を備え、前記第1の試薬は、前記第2の試薬よりも短い波長の光で蛍光を発し、その蛍光を発した発光点の面積と輝度値と微生物とそれ以外と判断できる複数の波長域の輝度値を測定しその輝度値から色彩的特性を算出しその算出した色彩的特性から微生物1個と判断する微生物判断手段と前記第2の試薬による発光した輝度値から生細胞と死細胞を判別する生死菌判断手段とを備え、前記微生物判断手段により微生物と判断された発光点に対して前記生死菌判断手段により生菌あるいは死菌と判断された各発光点を順次積算することで生菌および死菌を同時に計量する微生物計量装置としたことにより、細胞および微生物を含んだ検体から蛍光染色を用いて色彩的特性を算出しその算出した色彩的特性から微生物と微生物以外の異物と区別・判断し、次に、微生物と判断された発光点に対して生菌と死菌を判断するものであり、この手順で実施すると効率良く、微生物の特定、生死の判断が実施でき、最小限のデータ保存、処理で行うことができ、効率的に画像処理を行い、結果として測定時間を短くすることができる。微生物とそれ以外と判断できる複数の波長域の輝度値を測定しその輝度値から色彩的特性を算出することで、微生物と微生物以外の異物と判別することができる。死菌だけを染色する染色する蛍光染色試薬と比べて、励起光の波長の短い生菌および死菌を染色する蛍光染色試薬を用いることで、微生物以外の異物から発光した発光点の蛍光波長と微生物からの発光点の蛍光波長とを比較しやすく、その発光点の色彩的特性(例えば、各波長域での光量、輝度値の比較、発光点の色度など)から微生物と異物との区別がしやすいという作用を有する。蛍光染色法で微生物を検出する場合、生菌、死菌とも検出可能であるが、通常の微生物検査の現場においては、加熱、次亜塩素酸などの殺菌を行っていることが多く、生菌数がより重要である。したがって、死菌を染色する試薬で発光した発光点の色彩的特性から微生物と異物との判断をすると、生菌と異物の区別ができないため、再度行う必要が生じる。また、生死菌の両方を染色する染色試薬と死菌のみを染色する染色試薬は、通常同時に染色させる。そのとき、必ず異なる励起波長および蛍光波長を用いる。少なくとも蛍光波長は同じにはできない。同じであれば、どちらの試薬によって蛍光を発しているのかわからない。一般的な光の波長を色で示すと紫外、青、緑、黄色、赤、赤外であるが、赤外は人間の目では認識できないため、励起光は紫外を含め、蛍光の波長は可視光の範囲で青〜赤の範囲で使用するのが良い。例えば、生死菌の両方いずれも染色する試薬として、1,4−ジアミジノ―2−フェニルインドール(DAPI)があり、この試薬の励起光は紫外光で、青色の蛍光を発する。微生物以外が発光する場合には、青以外の緑、黄色、赤の波長域を含む蛍光を発する可能性が高い。この場合でも青の波長域の発光が全くないということは少なく、青の波長域の光もふくまれていることが多い。その蛍光の波長、即ち色彩的特性を算出することで、微生物の発光か、異物の発光かを簡単に正確に区別することができる。生死菌を染色する試薬と死菌を染色する試薬は、異なる波長域の蛍光を使用する必要があるため、生死菌を染色する染色試薬の方を短い波長域の励起光で蛍光を発する試薬を用いることで、蛍光の波長を解析するための範囲を大きくとることができ、微生物と異物を区別することがより正確に実施できるという作用を有する。微生物計量装置で微生物を検出したときに、その検出したものが、正しく微生物を検出しているかを確認する方法としては、蛍光顕微鏡を用いて、目視で色、形などから判断することになる。したがって、蛍光の波長は、可視光の範囲が望ましい。
また、請求項2記載の発明は、生死菌を染色する試薬と死菌のみを染色する試薬を同一の反応機構の蛍光染色試薬を用いることで、検体中の微生物を染色する際に、検体の性状を最適にしやすいという特性を有する。蛍光染色試薬は、核酸(DNAやRNA)、細胞内の酵素(例えばエステラーゼ)や呼吸活性と反応するものなど各種市販されている。ここで、核酸に反応する試薬と酵素に反応する試薬の2種類を用いることにした場合、検体中に界面活性剤が入っていると、酵素に反応する試薬は、微生物を染色、発光しにくくなるが、核酸に反応する試薬は、ほとんど影響を受けないものがある。検体から界面活性剤を除去する必要があるが、その処理の方法によっては、核酸に反応する試薬に悪影響を与える可能性があり、反応機構は同じの方が良い。また、DNAやRNAの核酸と反応する試薬は、比較的安定で発光強度が高いものが多い。DNA、RNAは細胞、微生物に必ず存在するもので、他の反応機構の染色試薬と比較して、ほとんどの微生物を検知する可能性が高い。例えば、酵素と反応する試薬の場合は、微生物の種類や活性度の状態によって、酵素がほとんど存在しない、あるいは少量しか存在しないために反応した試薬の量も少なく、検知が難しいレベルしか蛍光発光しないことがある。DNA、RNAは動物細胞や植物細胞にも存在しているが、微生物の大きさが0.2〜7μm、酵母のような大きなものでも数10μmであるのに対して、動物細胞、植物細胞は、どんなに小さくても数10μm、通常は100μm以上の大きさであり、発光した発光点の大きさもそれに比例した面積(CCDを使用した場合は、そのピクセル数)になるため、発光点の面積から微生物と動物細胞、植物細胞と区別し、微生物と認識することができる。したがって、核酸と反応する蛍光染色試薬を使用することで、ほとんどの微生物を検知することができ、微生物以外にDNA、RNAを有するものはあるが、発光した発光点の大きさ、即ちCCDで撮影した発光点に対して、設定した輝度値よりも高い輝度値を示したピクセルの数で微生物とそれ以外と区別することができるという作用を有する。
また、請求項3記載の発明は、生死菌と死菌を区別する方法として、細胞膜の透過性の違う2種類の蛍光染色試薬を用いることで、生菌と死菌の区別を明確にできるという作用を有する。微生物の生死の定義は非常に難しい。確実に生きていることの証明は、例えば、培養してコロニーを形成することを確認すれば良い。しかし、コロニーを形成しなかったからといって、死んでいることにはならない。通常の培養条件(培地、温度、時間など)でコロニーを形成しない微生物は非常に多い。一般的に環境中に存在する微生物の99%以上は、通常の培養条件ではコロニーを形成しないと言われている。また、加熱あるいは次亜塩素酸などで殺菌した場合、培養法ではコロニーを形成しないときでも、微生物が損傷を受け、すぐにコロニーを形成しないが、死んでいるわけではなく、長期間放置することでまたコロニーを形成する能力を回復して増殖する場合もあり、生死の判断が非常に難しい。生死菌いずれも染色するDAPIは、細胞膜を透過する性質を有しており、細胞膜の損傷度合いに関係なく、微生物を染色する。死菌のみを染色する試薬として、例えば、プロピジウムイオダイト(PI)がある。PIは細胞膜を透過する性質を有していない。殺菌あるいはその他の要因によって、微生物が死んだ、あるいは死んだ状態に近づくと、細胞膜が損傷あるいは変性してくる。このPIは、細胞膜が正常なときは細胞膜透過性を有していないため細胞内に入ることができないが、細胞膜が損傷あるいは変性したときに細胞膜を通りDNA、RNAと反応する。細胞膜が損傷あるいは変性したことで微生物の生死を判断することは難しいが、例えば、ある種の微生物を用い、その微生物が必ずコロニーを形成する培養条件を予め確認しておき、殺菌処理(例えば、加熱、次亜塩素酸処理、エタノール処理など)を行ったその微生物に対して、PIによる染色度合い、即ち、PIによる蛍光した光量(たとえば、CCDで撮影した発光点の輝度値など)と培養法でコロニーを形成した菌数、初期菌数に対して減少した菌数あるいは比率などを検証することで、生菌、死菌の判断を行うことができるという作用を有する。これは他の反応機構の試薬では難しく、エステラーゼや呼吸活性と反応する試薬は、反応した微生物に対して生きていることは言えるが、上述したように微生物の種類によって反応するものが少ないものがものもあり、未知の微生物が無数に存在する実際の検体では測定が難しいが、核酸は全ての微生物が有しており、また、細胞膜も有しているため、微生物を判断することがしやすいという作用を有する。なお、本発明で示している死菌は、微生物の形状をほぼ保ったまま、増殖する可能性がない、または非常に少ないものを指し、溶菌などを起こして、菌の形状が大きくくずれたり、細胞内のDNA、RNAが溶出したりして、顕微鏡下で目視でも確認できないものは含まれない。
また、請求項4記載の発明は、生死菌を染色する染色試薬の励起波長を紫外にして、死菌を染色する試薬の励起波長を青または緑にすることで、特に生死菌を検出する励起波長を紫外にすることで、蛍光が通常は青である場合、その他の波長域の緑、黄色、赤の蛍光の光量がどの程度あるかを測定することで、発光点の色彩的特性を把握できる情報量が多くなるため、微生物と微生物以外の異物の判別がしやすくなるという作用を有する。蛍光染色試薬は、上述の反応機構だけでなく、反応機構は同じでも異なる蛍光色素を使用することで、最適な励起波長、その励起波長を照射したときに発光する蛍光波長が異なり、非常に多くの種類が市販されている。この蛍光染色試薬は、使用する装置や目的などによって、ユーザが選択するものであるが、一般的には、生死菌と死菌を染色する2種類以上を同時に用いて染色することは少なく、同じ検体であっても別々に染色して、別々も目視で確認することが多い。したがって、染色試薬のカタログにも同時に染色する場合の使い方を示していることはほとんどない。生死菌を染色する試薬としてDAPIを使用して、死菌のみを染色する試薬としてPIを用いる場合、DAPIは紫外光を照射すると青に蛍光発光し、PIは、緑光を照射すると赤に発光する。両方の試薬に染色された微生物に紫外光を照射し、青色で発光した場合はまず生死菌と判断し、さらに緑光で照射し、赤色で蛍光発光した場合は、死菌、赤色で発光しなかった場合は生菌として判断できる。しかし、微生物以外が蛍光発光した場合、目視で観察すると黄色あるいは赤に近い色で発光する。これは微生物以外と判断できる。この場合でも青の波長域の発光が全くないということは少なく、青の波長域の光もふくまれていることが多い。つまり、染色試薬としてDAPIを用いて、紫外光を照射して、青の波長域の光だけを透過する分光フィルタを用いて、その分光フィルタを透過した光だけをCCDで撮影し、発光点の輝度値だけで微生物と判断するのが難しく、青以外の波長域、例えば緑、赤の波長域の光量あるいは輝度値を測定し、青およびそれ以外の波長域の輝度値に対して、ある設定した値以上、各輝度値の比率、あるいは各輝度値から発光点の色度の算出など発光点の色彩的特性を算出することで、微生物の判断をより正確に実施できるという作用を有する。
また、請求項5記載の発明は、生死菌を染色する試薬の励起光を青にして、死菌を染色する試薬の励起波長を緑または黄色にすることで、特に生死菌を検出する励起波長を青にすることで、微生物以外の発光をできるだけ少なくするという作用を有する。波長が短いほど光のエネルギーが高いため、微生物以外の異物であっても蛍光発光するものが多い。しかし、励起波長を長くすると、異物の発光は少なくなるが、異物以外の発光の色彩的特性を検討する波長範囲が短くなり、微生物か異物かを判断する情報が少なくなる。励起波長が青の場合は、異物の発光が少なくなり、緑と赤の波長域の輝度値から色彩的特性を算出することができる。励起波長を緑にすると、異物の発光は青と比べて多少少なくなる程度で大きな効果はないが、蛍光波長域が赤の波長だけになり、その範囲だけで色彩的特性を算出するには、情報が少なくなり、また目視で検証確認することも基本的に赤色で蛍光しているため、困難である。
なお、紫外、青、緑、黄色、赤などで波長域を示しているが、特定のピーク波長だけでなく、実際の光は、分光フィルタなどで設定した波長域の光だけを透過させるようにしているが、励起光、蛍光ともピーク波長のみのシャープな分布ではなく、広い範囲にブロードした分布になる。したがって、本発明でいう例えば青の波長とは、一般的に示す特定のピーク波長のみ光ではなく、その波長部分を有したある程度の分布を有した波長域を示す。その他の色も同様である。
また、請求項6記載の発明は、殺菌剤などで細胞膜を損傷した微生物に対して、生死菌染色試薬と死菌染色試薬の染色量あるいは染色状態の違いによる各発光輝度値の比率から生菌と死菌を判断できるという作用を有する。但し、生菌と死菌の確認方法は、学術的にも非常に難しい。例えば、加熱などをした微生物に対して、通常の培養条件(健常微生物が増殖する条件)ではコロニー形成せず、死菌と判断しても、培養条件(培地、培養温度、培養時間など)を最適にすることで、コロニーを形成し生菌と判断することもあり、条件によって、生菌、死菌の判断が異なることが多い。したがって、この輝度値の比率を決定方法は、培養試験により検証実験をした結果を踏まえて任意に決定できるという作用を有する。ここで示した比率とは、例えば生死菌染色試薬で蛍光発光した輝度値の絶対値の範囲によって、任意に変更しても良い。つまり、輝度値の低い範囲と高い範囲では、異なった比率を設定しても良い。培養試験など異なる手法で検証した結果と比較検証を行って決める。また、微生物は、その状態によってDNA、RNA量、細胞膜の状態などが変化するため、試薬の取り込み量が異なり、その結果輝度値(発光量)や面積(設定した輝度値以上のピクセル数)が異なり、単純に輝度値だけでなく、面積と掛け合わせた値との比率として用いることで、生死菌染色試薬による発光量と死菌染色試薬による発光量の差、比率などを増幅させる作用を有し、生菌、死菌の判別をしやすくすることが可能である。
(実施の形態1)
まず、微生物を含む試料を測定するために、固定部となるスライドグラスや、培養ディッシュ、マルチウェルプレート、またはろ過膜や、測定に適した形状を持つセルの観察面表面の表側、もしくは裏側の一方に微生物を固定する。固定は、ポリ‐L‐ リジンのような試薬や、ゼラチンなどの粘着性、付着性をもった高分子材料を表面に薄く塗布し、微生物を含んだ試料を滴下し、表面に吸着させる。またメンブランフィルタのようなろ過膜の場合、上方から液体試料を吸引してろ過し、メンブランフィルタ表面に微生物を平面状に捕捉し、固定する。本発明において、最も好適に実施するものとしては、このようなろ過膜を使用することで、以下の染色や洗浄などの操作が簡便かつ微生物を流失することなく扱うことができるのでよい。また、メンブランフィルタは、薄く、小さいため、そのままでは取り扱いが容易でない。そのため、専用の支持台、吸引口付きのホルダーを使用する、もしくは膜に保持部を結合するか、一体化させたデバイスとすることで容易に膜を取り扱うことができる。
また本発明において微生物を含有するか含有する可能性のある検体は液状検体であるが、検査対象が飲料水などの液状サンプルの場合は、それ自体が液状検体となる。検査対象が野菜や肉をはじめとする食材などの固体サンプルの場合は、それをホモジナイズして液状検体としたり、その表面から綿棒などを用いて細胞および微生物を採取し、これを生理食塩水や燐酸緩衝液などに遊離させて液状検体としたりする。また、まな板などの調理器具などが検査対象となる場合、その表面から綿棒などを用いて微生物を採取し、これを生理食塩水などに遊離させて液状検体とする。こうした液状検体をメンブランフィルタで吸引および加圧濾過、また場合によっては超音波を利用して加振ろ過することでメンブランフィルタ上に細胞および微生物を捕捉することができる。
また、固定部としては、メンブランフィルタ以外にも、プレパラート表面や、可視光の透過性が高く、平面性の高いプレートの表面や、プレート間の間隙に固定し、もしくは粘着性を持ったシート状、ディスク状のチップデバイス表面、平板培地表面、もしくはシャーレやディッシュ、マルチウェルプレートなどの表面、電極材料や吸着材料の表面などに行う。このとき、固定は、遠心力や、静電気力、誘電泳動力、疎水力などの物理吸着力以外にも、ゼラチンなどの接着成分によるものや、抗原・抗体反応、リガンド・レセプターの反応などの生物的な結合力を用いることができる。
また、蛍光染色試薬の浸透を調整するために、必要に応じて、適当な濃度の2価金属錯体や、カチオン性界面活性剤を混合した水溶液などを液体試料に混合させるか、もしくは細胞および微生物が固定部の上方から接触、またはろ過するか、または下方から接触させるなどの手法により、細胞および微生物の細胞膜透過性を一定に保たせることができる。
なお、2価金属錯体としては、エチレンジアミン四酢酸などを0.5から100mM程度の濃度範囲にて使用する。
なお、カチオン性界面活性剤としては、Tween20やTween60、Tween80、TritonX−100などの細胞に対して侵襲性が低いものが使用でき、これらを0.01から1%程度の濃度範囲にて使用する。
次に蛍光染色手段として、乾燥防止成分を混合し、生死菌染色試薬または死菌染色試薬のいずれか、または両方を一定濃度含む染色試薬を微生物の有無を検査する固定表面に一定量滴下する。
蛍光染色試薬は、細胞または微生物のDNA、RNAと反応するもの(例えばDAPI)、呼吸活性と反応するもの(例えばCTC)、取り込み活性と反応するもの(例えば2−NBDG)、代謝活性と反応するもの(例えば6−CFDA)など各種市販されている。反応機構が同じでも、蛍光色素の違いによって、励起波長、蛍光波長が異なる蛍光染色試薬も非常に多く市販されており、検査目的、測定機器の仕様などにより任意に選択できる。微生物の特定および生死の判断を行うためには、生死菌および死菌のみを染色する両方の蛍光染色試薬で同時に微生物を染色することが望ましい。もっとも微生物が生菌の場合は、死菌のみを染色する試薬では染色されないが、ここでは染色するとは染色処理のことを示している。
生死菌および死菌を染色する蛍光染色試薬は、特に生死の判断を行うのに、同じ反応機構の試薬を用いることが望ましい。その中でも、DNA、RNAと反応する核酸染色試薬を使用することが望ましい。細胞および微生物は、必ずDNA、RNAを有しており、例えば細胞膜が損傷した死菌であれば、生死菌試薬および死菌染色試薬の両方に染色される。生死菌染色試薬としてDAPI、死菌染色試薬としてPIを用い、実際の顕微鏡での観察で紫外光を照射して青に発光した発光点に、緑光を照射して、赤に蛍光発光すれば死菌として認識でき、発光しなければ生菌であると判断できる。核酸染色試薬で染色された微生物は、顕微鏡で観察すると菌全体が発光するため、倍率を拡大すると菌の形状まで認識できる。微生物の特定および生死判断を行うための方法(順番)も重要である。紫外光、緑光で照射した際、染色された微生物以外の異物による発光もあるため、その判断を行う必要がある。まず、生死菌の検出を行う。DAPIを使用した場合は、紫外光を照射して青の蛍光を発した発光点が生死菌の可能性が高いと判断する。その次に青以外の波長域の光量、輝度値を測定する。具体的には、紫外光を照射して、まず、青の波長域を透過する分光フィルタを用いて、その分光フィルタを透過した光量、あるいはその光を受光したCCDの発光点の輝度値を測定する。次に緑の波長域の光を透過する分光フィルタに切り替えて、CCDで発光点を撮影し、緑の波長域の輝度値を算出する。また、必要に応じて、赤の波長、あるいいは、緑の波長域の範囲でさらに分割して測定などを行う。これは、発光点の色彩的特性から微生物とそれ以外と判断できる複数の波長域の輝度値を測定し、その輝度値から色彩的特性を算出して、微生物と判断する。次に緑光を照射して、赤に発光する点を確認する。このときは、紫外光を照射して、青に発光した発光点の中から、その発光点の色彩的特性から微生物と判断された発光点のみの確認で良い。その中で赤に発光した発光点は死菌、発光しなかった発光点は生菌と判断できる。この手順で実施すると効率良く、微生物の特定、生死の判断が実施できる。生死菌の染色試薬で微生物とそれ以外と判断するために、励起波長は短いほど、蛍光波長を分析して色彩的特性を算出するための情報量を多くすることができる。励起光が同じである生死菌と死菌の染色試薬は使用することができないため、生死菌を染色する蛍光染色試薬の方を励起波長の短いものを選択する必要がある。
また、この処理手順は、自動で微生物を計量する装置に非常に適している。具体的な一例を説明する。微生物の菌数を検査する液状の検体をメンブレンフィルタでろ過して、メンブレンフィルタ上に微生物を捕捉する。DAPIとPIを最適な溶液に最適な濃度で溶かし、その溶液をメンブレンフィルタに滴下して、最適な時間放置した後、その溶液をろ過する。この操作でメンブレンフィルタ上の微生物は、DAPI、PIで染色される。メンブレンフィルタの最適な面積に紫外光を照射する。この面積は、レンズの倍率などによってCCDで1回の撮影される面積よりやや大きめで、当然撮影される部分である。フィルタの面積が撮影される面積より大きい場合は、スキャンニングを行い、フィルタ全体あるいは適当な面積になるように複数回撮影する。青の波長を透過する分光フィルタを用いて、発光点の画像を撮影する。この分光フィルタは、DAPIの蛍光特性に適した波長を中心とした波長域を透過する性質を有することが望ましいが、それに拘る必要はなく、後述の色彩的特性を算出するのに適した波長域でも良い。その後、同じ紫外光を照射して、緑の波長域および/または赤の波長域を透過する特性を有した分光フィルタに切り替え、同様に発光点を撮影する。次に同じ場所に緑光を照射して、赤の波長域を透過する性質を有する分光フィルタで透過した光(発光点)をCCDで撮影する。スキャンニングを行う場合、メンブレンフィルタを移動させ、先ほど撮影した以外の部分を同様に発光点の画像を撮影する。メンブレンフィルタの1回の測定で、測定画像は、紫外光照射の青の蛍光画像、緑の蛍光画像と赤の蛍光画像、緑光照射の赤の蛍光画像が撮影される。それらの画像について画像処理を行い、微生物の特定および生死菌の判断を行う。それらの画像の各発光点について、位置情報、輝度値、面積(ピクセル数)などを記憶する。なお、分光フィルタなどお光学特性上、各画像の発光点の位置がずれる場合には補正した位置情報にする必要がある。画像処理方法の一例について説明する。まず、紫外光照射の青の蛍光画像の各発光点について、設定した輝度値の範囲内および設定した大きさ(ピクセル数)の範囲内の発光点を仮の生死菌として認識する。ピクセル数としては、1〜30個の範囲の大きさが1個の菌として認識できることが望ましい。これより大きいと結果的に撮影面積が小さくなり、フィルタ全体を測定するのに記憶するデータ量が増大し、画像処理に多大な時間がかかる。1以下では1個の菌を認識できない。次に紫外光照射の緑の蛍光画像と赤の蛍光画像について、仮の生死菌として認識した発光点と同じ位置の発光点の輝度値を求め、青、緑、赤のそれぞれの輝度値から色彩的特性を算出する。ここでは色彩的特性として色度を算出する。色度の算出方法の詳細は後述するが、土壌の検体の粒子(異物)と大腸菌について測定した一例を図1に示す。図1で示したように、大腸菌は、色度x、色度yとも0.25以下であるが、土壌成分である異物は、各色度とも0.25以上であった。このように色度を算出することで、微生物と微生物以外の異物と判別することができる。なお、この色度は、分光フィルタなどの特性によって、同じものを測定しても値が大きく変ることがある。測定対象の菌、およびそれ以外の異物の色度を測定し、その測定値をもとに微生物と特定できる色度の設定値、範囲、あるいはxとyの比率などを設定して、微生物と判別する必要がある。もちろん、色度以外の色彩的特性から設定値を設けても良い。次に色度から微生物と判断された紫外光照射の青の蛍光画像の発光点と同じ位置の緑光照射の赤の蛍光画像の発光点の輝度値から、設定した輝度値以上を死菌、以下を生菌として判断できる。生菌、死菌として認識した各発光点を積算し、生菌数、死菌数として計量することができる。なお、実際の検体を測定した場合、紫外光照射の青の蛍光画像には発光点がないが、緑照射の赤の蛍光画像には発光点がある場合がある。これは、微生物以外の異物として認識して良いので、画像処理などを行わない方が早く結果がだせる。この発光は特にお茶に含まれている成分に良く見られる現象である。上記の手順、処理方法で行うことで、仮の微生物の発光点から微生物を特定し、その発光点だけに関して生菌と死菌を区別することで、最小限のデータ保存、処理で行うことができ、効率的に画像処理を行い、結果として測定時間を短くすることができる。
参考までに、図2にDAPIの励起光の吸収スペクトルと蛍光スペクトルを示す。励起光の最適なピーク波長は、360nm付近で、蛍光波長は、460nm付近である。それそれシャープな分布ではなく、そのピーク波長を中心に大きくブロードしている。ピーク波長と多少異なった励起光でも蛍光を発するし、蛍光もピーク波長と多少異なった波長域でもある程度の光量を発する。DAPIに限らず、蛍光染色試薬は、ピーク波長は異なるが、同様の分布を示す。励起光は、360nmにピーク波長を持つ光源あるいは分光フィルタで調整するのが望ましいが、多少異なる波長であっても、蛍光を発生される光量で照射できれば良い。但し、励起光の波長と蛍光の波長が重なり合わないように励起光、蛍光の波長を分光フィルタで調整する必要がある。重なる部分があると、反射で蛍光の部分に光量がもれ、蛍光発光の発光点として撮影される可能性がある。蛍光した発光点の色彩的特性の一つとして、図2のようなピーク分布と測定し、そのピーク分布とパターン認識などを用いて比較し、設定した範囲内であれば微生物として認識することができるが、微生物の発光量は微小であり、このようなピーク分布を測定しようとすれば、非常に大掛かりな装置で、高価なものになり実用化が困難である。簡単にかつ精度良く微生物と判断するための色彩的特性を算出するためには、ある程度の波長域(10〜60nm)の透過性を有した分光フィルタを使用し、その波長域の異なる分光フィルタを複数使用し、それぞれの波長域における光量あるいはCCDで撮影したときの輝度値から微生物と異物を区別できる色彩的特性を把握し、その特性から微生物を判断することで、安価で実用的な装置を提供できる。
蛍光染色試薬は、核酸結合性の構造をもつが好ましく、DNA、RNAを有する細胞を検出することで、微生物を見逃すことが少ないという効果がある。各種染色試薬は、励起波長、蛍光波長が異なるものが多く市販されており、最適な各波長も明示されており、適時目的に応じて選択することができる。細胞膜を透過する性質を有する生死菌染色試薬として使用するものは、紫外励起で青色蛍光を発するものであれば、DAPI(1,4−ジアミジノ―2−フェニルインドール)、青色励起で緑色蛍光または黄緑色、黄色蛍光を発するもので、例えばアクリジンオレンジ、オキサゾールイエロー、チアゾールオレンジや、SYTO9、SYTO13、SYTO16、SYTO21、SYTO24、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR Goldなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素系化合物が使用できる。また、細胞膜と透過する性質を有していない死菌染色試薬としては、緑色蛍光を発するもので、例えばアクリジン2量体、チアゾールオレンジ2量体、オキサゾールイエロー2量体などのモノメチン架橋非対称シアニン色素2量体や、SYTOX Green、TO−PRO−1などのモノメチン架橋非対称シアニン色素系化合物、赤色蛍光を発するものであれば、PI(ヨウ化プロピジウム)、臭化ヘキシジウム、臭化エチジウム、LDS−751、SYTOX Orangeなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素などが使用できる。
なお、これらの蛍光色素は、細胞および微生物を含む試料に対して、あらかじめ0.1から100μMとなるようを混合しておき、同時に作用させるか、もしくは別々に、時間を置かず、もしくは適当な時間間隔を開けて所定の濃度で作用させることとする。
なお、メンブランフィルタ上に捕捉した細胞および微生物を含む物質表面が、測定中に乾燥し、発光強度が変化することを防ぐための手段として、染色試薬には10から60%w/vのグリセロールや、10から90%v/vのD(−)−マンニトールやD(−)−ソルビトールなどの糖アルコール類のいずれかを1種類以上混合させておく。
なお、乾燥固化して保存する目的として、ポリビニルアルコールを10から80%程度の適当な濃度にて混合、もしくは後から表面を覆うことで、蛍光発光を比較的安定に保存することができる。
なお、固定部として適しているメンブランフィルタとしては、例えば、孔径が0.2μm〜1μmのポリカーボネート製など公知のものを用いることができる。
また、画像検出には、蛍光色素に対して特定の波長を照射するための励起光源、分光フィルタ、励起光を直径3mm程度に集光する為の集光レンズ、励起光の成分を除去する為のハイパスフィルタ、試料から発せられる蛍光から特定の波長成分を取り出すための受光フィルタ、拡大する為のレンズユニット、蛍光像を画像の電気信号に変換するためのCCDやCMOSなどの受像素子により構成される。
蛍光染色試薬として使用する蛍光色素の主な発光波長であるが、例えば、青色励起の場合には波長が470nmから510nm付近の波長成分を含む励起光を照射した場合、波長が510nmから540nm付近の蛍光を発する。緑色励起の場合には、510nmから550nm付近の波長成分を含む励起光を照射し、波長が560から620nm付近の蛍光を発する。オレンジ色励起の場合には、波長が540nmから610nm付近の波長成分を含む励起光を照射した場合、波長が560nmから630nm付近の蛍光を発する。
そのため、検出手段である励起光源として、発光ダイオードを使用する場合、青色のものでは、好ましくは480nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるもの、黄色からオレンジ色のものでは、好ましくは560nm付近の波長を発することができるものを使用する。分光フィルタを使用して、その波長を中心として波長域にすることが必要であるが、波長域を狭くすると光量が低下する。波長域を広くすると蛍光波長と重なる部分が生じるなどの問題も起こるため、最適な波長域に調整することが必要である。
また、励起光源としてレーザーを用いる場合には、青色のものでは、好ましくは475nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるものを使用する。
また、励起光源としてハロゲンランプや水銀ランプを使用する場合には、適当な分光フィルタとして、染色試薬の励起波長に合わせて最適な干渉フィルタを使用することができる。また、0.1から10nmの波長分解能を有する反射型や透過型の回折格子により、最適な角度を与え、任意の波長を含む励起光を取り出すことができる。
集光レンズは、蛍光染色された細胞および微生物が展開されているメンブレンフィルタに対し、照射範囲が、例えば直径が3mm程度の一定面積となるよう励起光を照射することができる。さらに光を散乱させるための拡散板などを上流側に組み合わせることでより均一な励起光を照射することもできる。
サンプルに照射された励起光により発生した蛍光は、ハイパスフィルタを通過することで、色彩的特性は損なわれず、効果的に励起光由来の光成分がカットされる。
当該蛍光はレンズユニットを通し、受光部として単板カラーCCDや、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3原色を取得できるRGB3種類の蛍光フィルタを含む3CCDなどの電荷結合素子ユニットを用いて露光時間0.1秒から10秒程度の露光時間でRGB3色からなる画像撮影することにより取得される。
取得する色の輝度情報は、蛍光染色試薬である蛍光色素の蛍光波長範囲であれば、使用可能である。例えばシアニン色素であるSYBR Greenの場合、極大蛍光波長は521nmであるが、蛍光スペクトルは620nm付近まで広がっており、生死菌染色試薬として使用した場合、530nm付近の緑色(G)を画像(a)、610nm付近の赤色(R)を画像(b)として取得することができ、(a)、(b)を使用して微生物と夾雑物との判別が行える。
また、単板モノクロCCDやCMOSを使用した場合、適切な分光フィルタを切り替えて使用することで、必要な波長の輝度情報を含む画像を取得することができる。このとき、別の利点として、同一のCCDを使用することで、異なるCCDによる感度特性の差の影響は全く受けずに測定を行うことが可能となり、感度補正を行う工程を省略することができる。
これらの操作により取得された複数の蛍光画像は、演算部であるマイコンや外部端末上のプログラムによって処理される。
演算部には、画像からドット欠けなどの輝点を除去するための輝点除去部と、画像から発光点を抽出するための発光点抽出部、複数の画像の発光点を照合し、一致させる発光点照合部、照合されて数値が結合されたデータを出力する出力部、蛍光発光を評価する蛍光評価部、染色試薬の輝度より微生物の生死を判別する生死判断部、そして色彩的特性を表す変数によって発光点が微生物もしくは夾雑物であることを判別する微生物判断部、そして測定した画像の有効面積を算出する有効エリア算出部により構成される。
まず、輝点除去部であるが、これはCCDなどの受像素子に見られる画素ピクセルの感度ムラや、感度消失した部分によるドット欠けと呼ばれる現象があるが、このドット欠けの輝点が画像上に現れると、微生物の発光点と間違える恐れがあるか、または微生物の発光点を取得できない原因となり、誤差の要因となりうる。そのためこのような輝点は除去する必要があるが、輝点除去用の画像として、光源を照射しない暗視野画像を、露光時間をサンプル測定と同程度かもしくは長めに設定して取得し、輝点のみが写っている画像を得る。そして発光点を写した各画像から輝点画像を減算することにより、輝点のみを削除することが可能となる。そのようにして輝点を除去した画像を以下において使用する。
発光点抽出部について、画像中に含まれる発光点のうち、設定された面積、輝度の範囲に該当するものを抽出する。例えば、面積を2から15、輝度を15から255とすると、面積が16以上であるような大きい夾雑物はあらかじめカウントから除外することができ、また輝度が14以下のバックグラウンドノイズ(暗ノイズ)を除去することができる。このしきい値は、レンズの倍率や、励起光源の強度、露光時間などにより最適な値が変化するため、微生物を最適に抽出できる値は、あらかじめ検証して確認することが必要である。
なお、最大輝度を示した座標の(x、y)の値、RGBの値を含む場合、それぞれの輝度も数値として同時に抽出される。この処理は、汎用的な画像処理ソフトウェアであるImage Pro Plusなどを使用して実行できる。また、同様の処理を組み込んだプログラムとすることもできる。
次に発光点照合部によって、抽出された発光点の数値データと、異なる輝度情報を含む同位置の発光点の数値データとを、座標をもとに比較、照合され、結合される。
このとき、異なる輝度情報を含む画像とは、異なる受光フィルタで取得された画像のことを指すが、画像間では分光フィルタの特性や、機械的誤差に起因する座標ズレがわずかに生じる為、そのまま画像のピクセル座標を照合した場合、一致しないことがある。そこで、一方の座標に画像ズレを補正する座標補正値を補って照合させるのだが、特に機械的誤差については温湿度などの使用環境の影響により、使用するごとに座標ズレの値が変化してしまう場合がある。そのため、座標補正値を測定毎に更新して使用することで、測定ごとに最適な値を使用することが有効である。
座標を補正するための補正値は、あらかじめ取得した位置補正用画像から補正値を読み取ることにより取得する。位置補正用画像は、取得する全ての波長域において写りこむ蛍光体を使用して撮像する。取得する波長が緑色と赤色であれば、長波長側の赤色の蛍光粒子が使用でき、同程度の発光強度が得られるように励起光源の強度と露光時間を調節して行う。また、蛍光体により補正値を自動で算出させるような処理の場合には、個数が多くなると演算する数も多くなり、時間がかかってしまうため、画面あたり5から50個の範囲内であれば、1から数分程度と比較的短時間で求めることができる。このような濃度になるように調整し、確認された蛍光粒子の懸濁液を一定量メンブランフィルタでろ過をする、固定部と反応させることにより、位置補正用画像を取得するための位置補正用チップを作成する。また、これを校正用として長期的に繰返し使用したい場合には、ビーズを高分子などで固定するか、金属蒸着で金属薄膜を覆ってしまうことにより固定しておくことで繰返し使用しても外れずに位置が一定になる。また、校正用としては、その他にも、蛍光性の樹脂をマスキングして微小パターンやスポットを形成させるなどにより作成することも有効である。
このようにして作成された位置補正用チップは、装置に設置されて実際の計測と同じ動きを与えて画像を撮像する。これにより、モーターの位置制御誤差やバックラッシュなどの機械的誤差、フィルタやレンズの製造誤差、装置を組み上げる際の製造誤差に由来する光軸のズレなどで発生する画像の座標ズレを再現した画像を取得し、その補正値を求めて実際の計測で使用することで、位置精度が高められる。
画像中に見られる微生物の発光点を示すオブジェクトは、拡大レンズ系の合計が200から300倍程度のときは、オブジェクトの面積は受像素子上で1から20ピクセル程度になる。これは微生物の細胞1個の直径が0.6から5μm程度であるときに撮像された値である。一方、微生物細胞が2から複数個繋がっていた場合、発光点のオブジェクトの面積は大きくなり、20ピクセルを越えるものも見られる。このような大きな発光点のオブジェクトは、共焦点光学系などの特殊な光学系を使用しない限りは、殆どの場合一つのオブジェクトとして検出され、二つのオブジェクトを分離して検出することが難しい。このとき問題となるのは、二つのオブジェクトが異なる発光特性をもつ場合に、各画像を比較して発光点を照合して輝度を結合したときに、同一のオブジェクトとして検出される、隣り合った微生物の発光輝度を誤って結合してしまうと、本来の微生物の発光特性とは全く異なる不正確なデータが形成されてしまうという恐れがある。そのような事例を防止するためには、発光点の座標をオブジェクトの最大輝度値を示す座標とし、画像間の発光点を照合するときは、その座標から非常に近傍に限定された誤差範囲エリア内にあるもう一方の画像の座標をもつ発光点とのみ結合されるようにすることが必要である。
そのため、同一の発光点のオブジェクトとして抽出されているものであっても、照合した場合に一致しないことがありうる。そのとき結合する輝度データが存在しなくなってしまうことを防止するために、照合するもう一方の画像に一致する発光点が検出されなかった場合に、もう一方の画像中の同じ座標のピクセルの輝度値を抽出し、この値を結合させることが有効である。これにより、発光点が一方の画像でしか抽出されなかった場合でも、輝度情報を欠如させることなく、精度よく照合データを作成することができることになる。
また、最終菌数の検出精度にも関連するが、生菌と死菌が繋がって存在している場合、上記のような工程を持たせなければ、オブジェクトを死菌として検出してしまう可能性があるが、これにより生菌と死菌が繋がったものとして検出することができるようになり、培養法などとの相関性が向上することに繋がる。
照合されて結合されたデータは、出力部によりデータファイルとして出力される。この時点でデータファイルとして保存することで、この後の工程を一度にまとめて処理することも可能となるため、作業が効率化される。
発光点の輝度情報をもつデータファイルに対して、生死判断部によって発光点が生菌群であるか、もしくは死菌群であるかいずれかに分類される。このとき、生菌群、もしくは死菌群であることを示すパラメータを与えることで、以降の処理が行いやすくなり、処理を効率化することができる。尚、パラメータとは生菌群であれば1、死菌群であれば2であるというように、発光点のデータの変数を与えることにより行うこととする。
生菌群または死菌群であるかを判断する為には、以下のようにグラフを使用することが望ましい。まず、発光点のデータのうち、生死菌染色試薬の輝度と、死菌染色試薬の輝度を用いて、この二つの値よりドットプロットを作成し、表示させる。これは、横軸に生死菌染色試薬の輝度値、縦軸に死菌染色試薬の輝度値をとり、検出された発光点毎にプロットしていく。尚、ドットプロットの表示は、画像処理を行うプログラムのインターフェース上に行うことが良く、発光点のデータファイルを読み出した場合に表示させるようにするとよい。
次に、表示されたドットプロットに対して、カーソルを使用して境界線を作成する。境界線は、1本ないし複数本の直線や曲線、多角線などで自由に作成することができるものとし、プロットを見ながら、プロットの集団を分類しやすいように、作成する。なお、境界線の作成工程は、簡単に行えるようにグリッドなどを使用することや、輪郭、プロットにトラップさせるような機能を持たせると、作成が容易であり、かつ正確に行うことができる。この境界線は、生死菌染色試薬の輝度値と死菌染色試薬の輝度値との比率を示している。
また、多角線の場合には、線が交差しないように、一方の方向のみに作成可能とすると確実である。
作成した境界線は、取り消すことや、保存することができるようにし、繰り返し使用することができるようにする。
次に、作成した境界線をもとに、境界線に相当するしきい値を算出する。算出されたしきい値に対して、グラフの上・左側にあるものが死菌群、反対が生菌群として分類し、パラメータを与えて処理する。
生菌群、死菌群が判断された後、微生物判断部によって夾雑物を分離除外する場合は、以下の処理を行う。微生物と夾雑物の判別は、色彩的特性の値を算出することによってなされる。
色彩的特性とは、RGBの輝度値より演算されて与えられた色度、色相角などから発光点の色彩に関して算出した値のことである。色彩的特長を示す表色系は、Lab表色系や、LCh表色系、XYZ表色系などの表色系が使用される。ここではXYZ表色系に基づいた色度を用いる。取得される輝度はRGBの色空間のものであるため、このRGBそれぞれの輝度値から、XYZ表色系への変換が行われる。
(数式1)
X=0.3933×R/255+0.3651×G/255+0.1903×B/255
Y=0.2123×R/255+0.7010×G/255+0.0858×B/255
Z=0.0182×R/255+0.1117×G/255+0.9570×B/255
さらに、
x=X/(X+Y+Z)
y=Y/(X+Y+Z)
式中のR、G、BはそれぞれR輝度値、G輝度値、B輝度値であることを示す。これにより細胞および微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が算出される。
発光点毎に算出された色度の値であるが、発光点はそれぞれ生菌群、死菌群であるかを判別するためのパラメータが与えられており、生菌群であった場合には、生菌群に対して設定された色度しきい値(ある範囲を有した)と比較し、死菌群であった場合には、死菌群に対して設定された色度しきい値(ある範囲を有した)と比較して、それぞれに微生物以外の値を示したものは、微生物以外の異物として判断される。その異物と判断された発光点は除外され、しきい値の範囲内の発光点は、それぞれ生菌、死菌として判断され、発光点ひとつを生菌1個あるいは死菌1個とカウントされ、積算される。
次に、このカウント値に対して、実際に使用した検体に含まれる単位量あたり(たとえば1mLや1グラムなど)の菌数の総数を算出する。そのためには、測定した画像のうち、画像処理して使用した有効エリア面積を有効エリア算出部にて求める。測定に使用した有効エリアは、画像の補正値を変数とした関数で求められる。
画像の縦の長さをP、横の長さをQ、縦方向の座標補正値をα、横方向の座標補正値をβとすると、1画面あたりの有効エリア画素数Mは数式2のように表される。
(数式2)
M =(P−α)×(Q−β)
また、有効エリア面積は、レンズ系の倍率などから、画素あたりの面積を求め、画素あたりの面積をsとするとし、測定視野数をNとして、1画面あたりの有効エリア面積Sと全有効面積は、
(数式3)
S = Ms
全有効面積:S×N
となる。
得られた面積に対して、微生物の固定部の固定部分の表面積(例えば、メンブランフィルタの全面積)の値を割り返す。これにより得られた数値を、カウント菌数に掛け合わせることで、最終的な、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
以上の手法を用いて、検体中や細胞培養液に含まれていた微生物の生死を判別し夾雑物と分離して、数を計量することができるのである。
図3は、本発明を好適に実施するための微生物計量装置の一態様を示す構成図である。この微生物計量装置1は、検出手段として励起光源2、励起用分光フィルタ3、集光レンズ4、ハイパスフィルタ5、蛍光用分光フィルタ6、レンズユニット7、受光素子8を含む。励起光源2から発せられた励起光から目的の波長を取り出すために蛍光用分光フィルタ6で分光する。分光された励起光は集光レンズ4を経て検査台9にセットされたメンブランフィルタ10(別途の操作によりメンブランフィルタ上に核酸結合性の蛍光色素で染色された微生物を捕捉してあるもの)上に集光される。励起光源から発せられた励起光は、集光レンズ4によって集光されるが、その際、集光レンズ4によって励起光を照射する範囲は直径3mm程度の微小な一定面積に集光される。励起光により発する蛍光は、励起光成分を除去するためにハイパスフィルタ5を経て、蛍光用分光フィルタ6、レンズユニット7により拡大され、受像素子であるCCDユニット11に到達し、電気信号化される。これにより得られた信号は画像化され、演算部12によって画像処理される。
励起光源2は、異なる波長域の複数用いることや異なる波長域の複数の励起用分光フィルタ3を切り替えて使用することができる。このとき、死菌染色試薬の励起波長域より生死菌染色試薬の励起波長域を短いものを選択する。具合的には、死菌染色試薬の励起波長が、青の波長であれば、生死菌染色試薬の励起波長は、紫外の波長を用い、死菌染色試薬の励起波長が、緑あるいは黄色の波長であれば、生死菌染色試薬の励起波長は、青の波長を用いる。核酸接合性の染色試薬を用いたとき、微生物は全て染色される。しかし、微生物以外の発光、あるいは電気的なノイズも含めて発光した発光点があり、大きさ、輝度値が微生物と同等であると、微生物と判断する。さらに詳細に微生物と判断するためには、発光点の色彩的特性を算出して、微生物の発光点の値と比較して判断する必要がある。その色彩的特性を算出するためには、解析を行うための波長の範囲が長いほど有利である。したがって、微生物を判断するための色彩的特性の算出は、生死菌の染色試薬の励起光での発光点で行うので、できるだけ短い波長で実施する必要がある。但し、紫外光は、エネルギーが高いため、生死菌染色試薬で染色された微生物だけでなく、無機の粒子状の物質も反射や自家蛍光などで蛍光を発するものが多い。例えば、検体に酸化アルミなどが多く含むと蛍光を発することがある。色彩的特性を算出して多くのものが、微生物以外の物質と判断できるが、異物の発光点が多いと誤カウントする可能性も多い。青の励起光は、色彩的特性を算出する波長の範囲は、紫外光と比較して狭くはなるが、エネルギーは低くなるため、微生物以外の発光は少なくなる。少ない方が誤カウントする可能性は低くなる。微生物の有無、または菌数を検査する検体は、食品、化粧品、医薬品、土壌・河川の環境などさまざまあり、その検体に含まれる微生物以外の物質の種類、量や要求される菌数の制度、感度によって適時選択する必要がある。
なお、色彩的特性を算出するために、透過する波長域の異なる複数の蛍光用分光フィルタ6を用いる。波長域は色彩的特性を算出するために最適な波長域を設定する。また、演算部12は、微生物計量装置1の外部に設けても良いし、パソコンを使用して発光点の画像を微生物計量装置1で撮影し、その画像データをパソコンに送り、そのパソコンで画像解析、色彩的特性の算出、微生物のカウントを行っても良い。
図4は、演算部12における演算工程フローを示した図であり、輝点除去部13、仮の微生物判断手段14、微生物判断手段15、生死菌判断手段16、有効エリア算出部17から構成されている。演算部12における演算工程フロー、輝点除去部13、仮の微生物判断手段14、微生物判断手段15、生死菌判断手段16、有効エリア算出部17などについて、以下説明する。
まず座標補正用画像を読み込んで座標補正値を算出する。次にしきい値などの変数を入力し、輝点除去部によって除去する輝点を確認し、以後、撮影された画像について、輝点を除去する。除去された輝点の部分の画素には、周囲の画素の輝度値をもとにした平均値などをいれることにする。生死菌画像(生死菌染色試薬で染色し、予め設定した励起光で照射して、蛍光した発光点を撮影した画像)を読み込み、まず各発光点を認識し、その発光点に関して、輝度値、面積値(ピクセル数)などが予め設定した値の範囲のものについて、仮の微生物判断手段によって、その発光点を仮の微生物と認識する。
次の色彩的特性を算出するための他の波長域での発光点を撮影した色度算出用画像(生死菌染色試薬とは異なる波長域の蛍光画像)を読み込む。このとき、色彩的特性をより精密に検討するために、蛍光波長が異なる複数の画像を用いても良い。色度算出用画像の各発光点について、座標補正を行い、さきほどの仮の微生物と判断された発光点と同じ座標(発光点がなくても)の輝度値を求める。
仮の微生物と認識した発光点の輝度値と色度算出用画像の輝度値から色彩的特性を算出して、予め純粋の微生物を用いて算出した色彩的特性値と比較し、設定した範囲内の値であれば微生物判断手段15によってその発光点を微生物と認識し、微生物(生死菌)1個とカウントする。この処理を仮の微生物と判断した発光点全てに行い、微生物と判断された発光点を積算し、撮影された画像毎に生死菌数として計量する。次に死菌画像(死菌染色試薬で染色し、予め設定した励起光で照射して、蛍光した発光点を撮影した画像)を読み込み、各発光点を認識し、その発光点の座標を補正する。
微生物(生死菌)と判断した発光点と同じ座標の輝度値(発光点がなくても)を求める。このとき、発光点がある場合は、輝度値と面積(ピクセル数)から、微生物以外と判断することもでき、設定した値の範囲内のものについて、輝度値を求めることもできる。もちろん、微生物以外と判断した発光点が先ほどの積算値から差し引く必要がある。生死菌と判断した発光点について、生死菌画像の発光点の輝度値と死菌画像の同じ位置の輝度値から生死菌判断手段16にいって、その発光点全てについて、生菌、死菌と判断して、それぞれ発光点を特定し、生菌と判断した発光点を生菌1個として、死菌と判断した発光点を死菌1個と判断して、撮影画像毎にそれぞれ積算し、生菌数と死菌数を計量する。
撮影画像の中で生菌数、死菌数を算出した有効エリアを有効エリア算出部17で算出して、メンブレンフィルタの面積とその面積に対して最終的に撮影して有効エリア面積からメンブレンフィルタの面積における最終の菌数を算出して、最終生菌数、死菌数を算出して出力をする。
図5(a)にE.coliの輝度と色度の演算結果を示す。E.coliを含む水検体をメンブレンフィルタにろ過し、生死細胞用蛍光色素であるSYTO9と、死細胞用蛍光色素であるヨウ化プロピジウムを用いて染色したものを、単板モノクロCCDと、青色励起光照射におけるG輝度画像とR輝度画像を取得したデータの一例を示す表である。このとき、B輝度画像は、励起光の波長と重なるために取得できず、数値を代入して使用している。この変数は、最適な値に調整することができる。
図5(b)に微生物判断手段15の具体的な一例を示す。図5(b)に示される色度の演算工程フローは、RGBの輝度から、XYZ表色系の(x、y)の値への変換を示す。この工程はまず、RGBの輝度を測定する手段によって取得されたRGBそれぞれの輝度値から、リニアRGBへの変換、ガンマ補正がなされる。これにさらに視覚的特性を重み付けし、微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が求められる。このとき、例えば光学フィルタによって青色(B)をカットし、緑色(G)および赤色(R)のみが取得されるような条件の場合には、青色の感度は得られないものとして、あらかじめ実験によって最適化された固定値を代入して使用することや、またはRまたはGの輝度値による関数を設定して使用することもできる。これにより得られた色度の値に対してしきい値と比較することで、微生物か夾雑物であるかを判別する。なお、このときのしきい値は実験により決定する。
E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)の中の菌数を測定する。これらの液体試料を、孔径が0.45μm、直径9mmの黒色メンブランフィルタに表面を金属蒸着したものの上方からピペットにて滴下し、吸引ろ過した。メンブランフィルタは、そのままでは表面に触れてしまう恐れがあり、扱いにくいため、周囲を樹脂枠で覆い、一体化させたものを使用した。吸引ろ過圧は、あまり高すぎるとろ過できず、低すぎると微生物へのダメージとなってしまうばかりか、メンブランフィルタが破損することがあるため、100から400Torr付近のポンプ圧に設定して行った。メンブランフィルタ上にろ過するとき、計数しやすさや、逆算する精度の問題から、微生物などの発光物はできるだけ均一に分散させる必要がある。そのため、メンブランフィルタのろ過性能を均一にするために、メンブランフィルタ下方の吸引口にはろ紙などを挟み、吸引圧を拡散して、メンブラン全体に均一にかかるようにして行った。また、それとは別に、メンブランフィルタのポアの通過抵抗を減少させるため、液体試料をろ過する前に、少量の界面活性剤希釈液(Tween20 0.1%)をろ過した。液体試料は、E.coli菌液の場合は0.1mL、水道水の場合は20mLろ過した。
続いてメンブランフィルタ上に捕集された微生物に対して、蛍光染色を行った。染色試薬は、生死菌染色試薬であるSYTO24と、死菌染色試薬であるSYTOX Orange(いずれも商品名)を使用した。これらの染色試薬は、空気中で光を吸収して分解しやすいため、ジメチルスルホキシドにて500μMに調整し、少量ずつマイクロチューブに分注してストック液とし、保管した。保管は、マイクロチューブ内に窒素を封入し、マイナス20度のフリーザーにて暗所保管した。必要本数を解凍し、それぞれの試薬10μLに対して希釈液を全量が1mLになるように加え、混合した。この希釈液は、試薬の溶解性と、保存性、細胞への浸透性、乾燥防止性、低自家蛍光性である必要があるが、このような条件を満たすものとして、D−ソルビトールを蒸留水で50%程度に希釈しTris−HClと少量の界面活性剤(Tween20)を混合したものを使用した。
終濃度5μMに調整した試薬は、1種類ずつ微生物が捕集されたメンブランフィルタ上方から滴下し、常温にて数分間染色し、余剰の試薬は吸引ろ過にて除去した。染色順序は限定されず、生死菌染色試薬、死菌染色試薬いずれから行っても同様に染色することができる。
染色したのち、余剰試薬を吸引によってできる限り除去した後、メンブランフィルタを微生物計数装置に設置し、計測を行った。
微生物計数装置は、図3に記載されたものであるが、今回、生死菌試薬に対応する励起光は青色LED(約470nm)と、死菌試薬に対応する励起光は黄色LED(約560nm)を使用し、分光フィルタとして緑色は530から550nmに透過性をもつものと、赤色は590から610nmに透過性を持つものを使用した。なお、光源には、光束を撮像範囲に照射しやすいよう集光レンズを設けている。
また、メンブランフィルタの設置ステージには着脱可能な機構を設け、さらにステージ部材がメンブランフィルタを裏側から平面かつピントが合う高さに固定できるようにし、ピント調節を不要とした。メンブランフィルタを固定したステージは、モーター駆動のXYステージにより移動可能であり、プログラムによってあらかじめ指定した位置への移動を連続的に行うことができるものとした。
メンブランフィルタ表面の蛍光画像の取得は、メンブランフィルタの上方に設置された赤外カットフィルタを施した単板モノクロCCDカメラと、拡大レンズ系にて行った。画像を取得する際には、励起光となるLEDが点灯して照射され、受光フィルタを切り替えて目的の波長の画像を取得できるものとし、これらのカメラ、光源、フィルタ、およびステージは、動作をプログラムされたマイコンを使用して制御されるものとした。
画像の取得は、同一の位置で(a)青色励起,緑色蛍光、(b)青色励起、赤色蛍光、(c)黄色励起、赤色蛍光、の3種類の画像を、露光時間が0.1から3秒程度で連続的に取得し、ステージによって次の撮像領域に移動し、同様に画像を取得するものとした。また、測定の最初には、LEDを点灯させずに画像を取得し、ドット欠けである輝点の画素部分を確認し、輝点を除去するための画像を取得した。
画像を全て取得した後、演算部により輝点の除去、発光点の抽出、照合が行われ、発光点ごとに輝度値を求めたデータを作成した。
図6(a)に、E.coliと水道水中の発光物の輝度のドットプロット及び生死判断手段による分類方法を示す。図6(a)に示されていますように、E.coliと水道水中にみられる発光点のプロットを生死菌染色試薬であるSYTO24の蛍光波長である青励起、緑蛍光での輝度と、死菌染色試薬であるSYTOX Orangeの蛍光波長である黄色励起、赤蛍光での輝度を2軸におき、ドットプロットを作成したものである。
このとき、任意に設定できる境界線として、cがy=100、dがx=yのような直線を設定し、cより小さく、かつdより小さい領域を生菌群、それ以外の領域を死菌群として指定し、該当する領域の発光点に対してフラグを立て、発光点の分類を行った。dは、生死菌染色試薬による輝度値と死菌染色試薬による輝度値の比率を示しており、このような一定の比率で判断しても良いし、Cで示した範囲を組合わせて行っても良い。また、比率は一定ではなく、範囲によって異なった比率でも良い。この設定は、プロットした点で2つの群ができたときは、それらに群を分けるように設定することや培養試験での結果に基づき最適と考えられる比率を設定する。
図6(b)に、発光点の色度図と微生物判断手段による判断方法を示す。図6(b)に示されていますように、大きさ、輝度値から仮の微生物として分類された発光点の集団を、XYZ表色系における色度データのうち、xとyの値をグラフ上にプロットした。このとき、E.coli生菌がx<0.37、y>0.54の領域に分布していたのに対し、水道水中の微生物以外の発光物はxが0.3から0.6、yが0.3から0.6と幅広い領域に分布していることが確認された。このとき、しきい値は、E.coliの値を参考に設定し、xはe=0.37、yはf=0.54として、x<e、y>fの領域に分類された集団を微生物として判別し、水道水中に含まれる発光物のような夾雑物を判別した。その結果、検出された発光点のうち夾雑物の大半を分離することができ、水道水では図6の(a)のとおり生死判断手段によって100個の点から32個の点が抽出されたが、さらに図6の(b)によってそのうちの8個が微生物の生菌であると判別することができた。実際のプログラムは、まず、(a)の画像の発光点の大きさと輝度値から仮の微生物と認識した点に関して、(b)の画像から色度を算出して、微生物と特定される発光点を求める。その発光点に関して、(a)と(c)の画像から得られる輝度値を用いて、生菌と死菌の判断することで、菌数が多い、即ち発光点が多くても、色度や輝度値の比率などを求める発光点を順次絞って、少なくして判断することで、計算が速くなり、測定時間も短縮することができる。
図7に図6同様大腸菌と異物について、生菌、死菌、異物に関する発光点の色度とその発光点について蛍光顕微鏡を用いて目視で確認した結果の一例を示す。大腸菌と特定した発光点に関して、生菌と死菌とでは、色度の値が異なり、生菌と死菌を別々の色彩的特性の設定範囲を設けることで、生菌、死菌、異物と判別することができる。より正確に微生物(生菌あるいは死菌)と判別するために、発光点を生菌、死菌と区別してから、生菌と異物、死菌と異物の判断をさせると良い。
このしきい値は一例であるが、染色に使用する蛍光色素の種類や、濃度、希釈する溶液の極性などによっても変化することから、使用が想定される環境に最も適した値をあらかじめ設定しておくことが好ましい。
なお、最終菌数の妥当性については、培養困難である菌も存在する為、適切な培養方法、培地の種類を複数組み合わせて使用し、評価することが望ましい。