JP4484253B2 - インクジェット記録用水性インク組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は耐水性に優れた顔料分散型水性インク組成物に関し、特にインクジェット記録用顔料分散型水性インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在知られている各種記録方法の中で、騒音が小さく、高速記録が可能であり、しかも普通紙に記録が行えるインクジェット記録方法は極めて有用な記録方法である。
【0003】
このインクジェット記録方法は、インクと言われる着色液体に熱を加えて気泡を発生させ、気泡が発生する時に生じる圧力でインクを直径30〜50ミクロンのノズルから小液滴の形で飛ばし、それを紙等の被記録部材に付着させて、記録を行う方式、及びインクに圧電素子により圧力を加え、インクの小液滴をノズルから飛ばす方法が主な記録方法である。
【0004】
この記録方法に適用するインクとして顔料分散型水性インクが挙げられるが、従来の顔料分散型インクを用いて、インクジェット記録方法を行った場合、得られたインク画像が耐水性に劣るという欠点がある。たとえば特開昭56−147860号、特開昭56−147861号、特開昭56−147862号、特開昭56−147863号、特開昭56−147859号に提案されているインクジェット記録用水性インク組成物に用いられているスチレン系共重合体は、酸価が200mgKOH/g以上であり、水に溶けやすく、これを分散剤として分散した顔料を含むインク組成物で、インクジェット記録を行った場合、インク画像が耐水性に劣ると言う欠点がある。
【0005】
また特開平4−18461号公報の実施例2には、水性媒体中に、分散した顔料、塩基性化合物及びスチレン系共重合体を含むインクジェット記録用水性インク組成物において、前記重合体が、酸価が430mgKOH/g、重量平均分子量5,860のスチレン系共重合体であって、かつ前記塩基性化合物の含有量が前記共重合体の酸価に相当する量の87%である、水溶性樹脂を含むインクジェット記録用水性インク組成物が記載されている。
【0006】
さらに特開平4−18467号公報の実施例2には、水性媒体中に、分散した顔料、塩基性化合物及びスチレン系共重合体を含むインクジェット記録用水性インク組成物において、前記共重合体が、酸価が120mgKOH/g、重量平均分子量6,100のスチレン系共重合体であって、かつ前記塩基性化合物の含有量が前記共重合体の酸価に相当する量の125%である、水溶性樹脂を含むインクジェット記録用水性インク組成物が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記公報はいずれも吐出安定性の改良に主眼が置かれており、その点については良好な結果をもたらすかもしれないが、それから得られるインク画像は、やはり、いずれも耐水性が不十分であるという欠点を有していた。本発明は、従来のインクジェット記録方法に用いられている顔料分散型水性インク組成物の耐水性に劣ると言う欠点を解決するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記実状に鑑みて鋭意検討したところ、上記公報の記載からは耐水性の改良に寄与しているとは認められない「樹脂酸価」及び「塩基性化合物含有量」の2つの尺度を組み合わせて、スチレン系共重合体として、特定範囲の酸価のスチレン系共重合体を用い、かつ前記塩基性化合物の含有量を、前記共重合体の酸価に相当する量の特定範囲とする設計を行うことにより、それらの相乗効果により、これら公報記載の組成物からは予想できない、極めて耐水性に優れたインク画像が得られる顔料分散型水性インク組成物を得ることが出来ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、水性媒体(I)中に、分散した顔料(A)、塩基性化合物(B)及びスチレン系共重合体(C)を含むインクジェット記録用水性インク組成物において、共重合体(C)の酸価が20〜170mgKOH/gであって、かつ塩基性化合物(B)の含有量が共重合体(C)の酸価に相当する量の40%以上120%未満であることを特徴とするインクジェット記録用水性インク組成物である。
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明に使用される顔料(A)は特に限定されるものではなく、無機顔料、有機顔料又は必要に応じて体質顔料が挙げられる。
【0012】
無機顔料としては、例えばカーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物及び金属塩化物が挙げられる。特に黒色水性インク組成物ではカーボンブラックが好ましく、カーボンブラックとして例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック及びチャンネルブラックが挙げられる。これらのカーボンブラックは1種類を使用しても良く、また複数のカーボンブラックを併用しても良い。
【0013】
有機顔料として、例えば溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、不溶性ジアゾ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料及びキノフタロン顔料が挙げられる。これらの有機顔料は1種類を使用しても良く、また複数の有機顔料を併用しても良い。また有機顔料には無機顔料も併せて使用することができる。また流動性改良等のため、体質顔料等も併せて使用することもできる。
【0014】
本発明の処方によれば、調製された組成物から得られるインク画像の耐水性絶対値は、カーボンブラック系も有機顔料系も同等程度であるが、カーボンブラック系はそれ自体の耐水性が良好で、有機顔料のそれよりも優れていることからすると、改良の程度(向上率)の点では、有機顔料系のほうカーボンブラック系よりも顕著となる傾向にある。
【0015】
体質顔料として、例えばシリカ、炭酸カルシウム、タルクが挙げられる。これらの体質顔料は単独で使用されることは希であり、無機顔料又は有機顔料と併用して使用される。
【0016】
また黒色水性インク組成物の調色のため、他の無機顔料及び/又は有機顔料の2種以上を併せて使用することもできる。また流動性改良等のため、体質顔料等も併せて使用することができる。
【0017】
これらの顔料(A)の添加量は、最終的に得る水性インク組成物の1〜30重量%相当量を用いることが好ましいが、なかでも1〜10重量%相当量がより好ましい。
【0018】
本発明に用いられるスチレン系共重合体(C)は、スチレン及び/又はスチレン誘導体と、1種類又は2種類以上のイオン性モノマーを必須構成モノマーとし、その他の付加重合性ビニル基を有するモノマーを構成モノマーとして含んでいても良い、酸価が20〜170mgKOH/gの共重合体である。中でも酸価40〜155mgKOH/gの共重合体が好ましい。
【0019】
更には、顔料の分散安定性に優れていると言う点より、共重合体としては、スチレン及び/又はスチレン誘導体、(メタ)アクリル酸及び1種類又は2種類以上のアクリル酸エステルを必須構成モノマーとし、その他の付加重合性ビニル基を有するモノマーを構成モノマーとして含んでいても良いスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。
【0020】
尚、本発明では、アクリル酸とメタクリル酸を総称して、(メタ)アクリル酸と言う。
【0021】
共重合体(C)を得るためのモノマーは、付加重合性ビニル基を有する非イオン性モノマーであり、例えばスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリルニトリル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート及びN−ブトキシメチルアクリルアミドが挙げられる。これらは、顔料(A)に吸着する共重合体(C)の疎水性部分を構成する。
【0022】
これらの非イオン性モノマーの内、顔料に対する吸着性に優れるスチレン及び/又はα−メチルスチレン等のスチレン誘導体が必須である。但し、スチレン及び/又はスチレン誘導体のみよりなる重合体は、柔軟性に欠けると言う欠点があるため、その他の非イオン性モノマーとの共重合体が好ましい。
【0023】
共重合体(C)を得るのに使用できるイオン性モノマーとしては、主に付加重合性ビニル基を有するモノマーが挙げられ、例えばカルボン酸基、スルホン酸基、硫酸エステル基等のイオン性基が、例えば(メタ)アクリル酸、、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマール酸、フマール酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート及びスルホン化ビニルナフタレンのα,β−不飽和モノマー等のイオン性モノマーより共重合体(C)中に導入される。これらのイオン性モノマーの内、顔料の分散安定性に優れている点より、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0024】
共重合体(C)を含む本発明の組成物は、イオン的方法によって安定化できる。このイオン的方法では、顔料(A)粒子を、前記したイオン性モノマーを必須成分として重合させて得た共重合体(C)と、塩基性化合物(B)との中和によって安定化できる。つまり、顔料(A)粒子は、中和された共重合体(C)の解離によって形成される電気二重層を通して安定化されており、それによってイオンの反発力が顔料粒子の凝集を阻止している。
【0025】
共重合体(C)としては、中和した時に水に分散するもののほうが、顔料表面への吸着性がより高いため、分散顔料の機械的安定性が高くなることより、水に溶解するものより好ましい。即ち、化合物(B)で中和された共重合体(C)が水性媒体(I)に分散してしているものが、より好ましい。
【0026】
スチレン系共重合体(C)は1種類を使用しても良く、また複数組み合わせることも出来る。またスチレン系共重合体を必須成分として、非イオン性モノマーよりなる樹脂を1種類以上組み合わせることも出来る。
【0027】
スチレン系共重合体(C)の添加量は、該共重合体(C)と顔料(A)との重量比で1:10から5:1が好ましいが、さらには1:5から3:1が好ましい。
【0028】
スチレン系共重合体(C)を水性媒体に分散又は溶解するために、塩基性化合物(B)を加える必要がある。塩基性化合物(B)としては、例えば脂肪族アミン系化合物、アルコールアミン系化合物、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。
【0029】
脂肪族アミン系化合物としては、例えばアンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン及びトリメチルアミンが挙げられる。アルコールアミン系化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン及びN−メチルジエタノールアミンが挙げられる。
【0030】
アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物として、例えば水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び水酸化ストロンチウムが挙げられる。これらの塩基性化合物(B)は1種類を使用しても良く、また複数組み合わせることも出来る。
【0031】
これらの塩基性化合物(B)の内、水性媒体との相溶性に優れていること、及び揮発性等が適当であることより、アルコールアミン系化合物が好ましい。中和するための化合物(B)が適当な揮発性を有する場合には、保存状態では揮発が少なく、インク画像形成後、それが蒸発する傾向にあるので、共重合体(C)は水溶性が低下し、インク画像の耐水性は向上する様に組成物を設計できる。
【0032】
本発明では、組成物中の塩基性化合物(B)の含有量は、共重合体(C)の酸に相当する量の40%以上120%未満に調製される。中でも、50%以上110%以下とするのが好ましい。尚、使用したスチレン系共重合体(C)の酸価に相当する、塩基性化合物(B)の量(g)は式(1)で表される。
【0033】
相当する量(g)=A×Wp×M/56110 式(1)
A :スチレン系共重合体(C)の酸価(mgKOH/g)
Wp:使用したスチレン系共重合体(C)の重量(g)
M :塩基性化合物(B)の分子量
【0034】
本発明においては、上記イオン的方法で安定化が可能だが、必要であれば、非イオン的方法を、それに併用することもできる。この目的では、親水性部分と疎水性部分を有する化合物を用い、それの疎水性部分で顔料表面に吸着し、親水性部分でエントロピー的又は立体的に顔料を分散安定化を補う。
【0035】
この目的に有用な代表的な化合物には、例えばポリビニルアルコール、セルロース系誘導体、ポリエチレンオキサイド及びポリプロピレンオキサイドが挙げられる。この非イオン的方法は、pH変化又はイオン性汚染に対して敏感ではないが、インク画像が耐水性に劣ると言う欠点があるので、併用する場合には最小限に止める必要がある。
【0036】
水性媒体(I)中に、分散した顔料(A)、塩基性化合物(B)及びスチレン系共重合体(C)を含むインクジェット記録用水性インク組成物より得られるインク画像の耐水性は、同一分子量の共重合体(C)の比較においては、共重合体(C)の酸価が高くなるほど、また塩基性化合物(B)の含有量が多くなるほど、劣る。
【0037】
したがって、本発明で用いるスチレン系共重合体(C)として、酸価が170mgKOH/g以下のものを用い、かつ塩基性化合物(B)の含有量を、使用した共重合体(C)の全酸価に相当する量の120%未満となる様に調製すれば、当該水性インク組成物より得られるインク画像は耐水性に優れたものとなる。
【0038】
但し、共重合体(C)の酸価が低くなると、顔料の分散安定性を損なうため、共重合体(C)としては、酸価20mgKOH/g以上のものを用いることが必要である。
【0039】
また同一分子量の共重合体(C)での比較において、上記した通り塩基性化合物(B)の含有量が120%以上となる様に多ければ、インク画像の耐水性が劣るし、塩基性化合物(B)の含有量が少なくても、やはり顔料の分散安定性を損なうため、塩基性化合物(B)の含有量は、使用した共重合体(C)の全酸価に相当する量の40%以上が必要である。
【0040】
したがって、水性媒体(I)中に、分散した顔料(A)、塩基性化合物(B)及びスチレン系共重合体(C)を含むインクジェット記録用水性インク組成物において、共重合体(C)の酸価が20〜170mgKOH/gであって、かつ塩基性化合物(B)の含有量が共重合体(C)の酸価に相当する量の40%以上120%未満であるインクジェット記録用水性インク組成物は、良好な顔料分散安定性と、インク画像の耐水性との両方に優れる。
【0041】
またスチレン系共重合体(C)の重量平均分子量は、特に制限されず、如何なる分子量のものを用いてもよいが、インク画像の耐水性の点で、3,000以上、中でも3,000〜30,000のものを用いるのが好ましく、4,000〜26,000のものが特に好ましい。
【0042】
尚、同一酸価・同一塩基性化合物使用量では、共重合体(C)の重量平均分子量が大きいほど、該水性インク組成物より得られるインク画像の耐水性は優れる。重量平均分子量が7,000を越えるスチレン系共重合体(C)を含む本発明の水性インク組成物は、その共重合体(C)が如何なる酸価であっても、化合物(B)含有量が如何なる量であっても、それら酸価及び含有量が本発明の数値限定範囲であれば、得られるインク画像の耐水性は、極めて優れたものとなる。
【0043】
尚、ここで言う共重合体(C)の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフ)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0044】
一方、重量平均分子量が3,000〜7,000のスチレン系共重合体(C)を含む本発明の水性インク組成物より得られるインク画像は、化合物(B)が同一含有量の系における重量平均分子7,000を越えるスチレン系共重合体(C)のそれに対比して、当該スチレン系共重合体の酸価が100mgKOH/gを越えると、やや耐水性が低下する傾向にある。しかし実用上問題はない。
【0045】
従って、重量平均分子量が3,000〜7,000の共重合体を用いる場合には、重量平均分子量7,000を越える共重合体を用いる場合より酸価範囲の自由度が狭い。つまり、酸価が20〜100mgKOH/gのスチレン系共重合体を用いて本発明の水性インク組成物を調製するのが好ましく、それより得られるインク画像の耐水性は極めて優れている。スチレン系共重合体(C)の重量平均分子量が3,000未満になると、顔料の分散安定性が損なわれる傾向にあり、好ましくない。
【0046】
即ち、酸価20〜170mgKOH/g、かつ7,000を越える重量平均分子量の共重合体(C)を用い、かつ共重合体(C)の酸価相当量40%以上120%未満の化合物(B)含有量で調製した組成物と同等のインク画像耐水性を有する組成物を、重量平均分子量が3,000〜7,000、酸価が20〜100mgKOH/gの共重合体(C)で得ようとする場合には、共重合体(C)の酸価相当量40%以上120%未満の化合物(B)含有量の範囲で出来るだけ、その使用量を最小限に止める様に組成物を調製するのが好ましい。
【0047】
本発明のインクジェット記録用水性インク組成物の製造方法を以下に示すが、この製造方法は本発明を明確にするためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0048】
水性媒体(I)に、塩基性化合物(B)とスチレン系共重合体(C)を加え、スチレン系共重合体(B)を分散又は溶解する。スチレン系共重合体(C)が分散又は溶解しにくいときは、水性媒体を加熱しながら、分散または溶解する。スチレン系共重合体(C)を分散又は溶解するときに、ホモミキサー等の攪拌機を用いても良い。
【0049】
スチレン系共重合体(C)が、塩基性化合物(B)を含む水性媒体(I)に完全に溶解せず、その一部又は大部分が分散して、スチレン系共重合体(C)がコロイド状態になることがある。特に、スチレン系共重合体(C)の酸価が低く、重量平均分子量が大きく、更に塩基性化合物の含有量が小さい場合、スチレン系共重合体(C)がコロイド状態になる傾向は強い。
【0050】
このコロイド状態になったスチレン系共重合体(C)を含む水性媒体(I)に顔料(A)を加え、分散すると、顔料表面にスチレン系共重合体(C)が強く吸着し、機械的安定性に優れた水性インク組成物が得られる。
【0051】
機械的安定性に優れた水性インク組成物は、インクジェットプリンターのノズル部分に急激に送られた時に生ずる大きいずり応力に対して安定であり、ノズル部分に凝集して吸着することが少ない。したがって、インクジェットプリンターのインク吐出安定性に優れる。
【0052】
次に顔料(A)を加え、顔料(A)を分散する。これに用いる分散機は、一般に使用されている分散機なら、いずれでも良いが、たとえば、ペイントシェイカー、ボールミル、ロールミル、スピードラインミル、ホモミキサー及びサンドグラインダーが挙げられる。得られた顔料分散型水性インク組成物をフィルターリングや遠心分離等で、粗大粒子を取り除くこともできる。
【0053】
上記の製造方法により、本発明のインクジェット記録用水性インク組成物は製造される。
【0054】
本発明の水性媒体(I)は、水を主成分とする溶媒である。水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用することが好ましい。本発明の水性媒体(I)は水溶性有機溶媒を含んでいても良い。
【0055】
当該水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール及びイソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール及びグリセリン等の多価アルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン及びジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール及びポリポロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類、、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル及びトリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0056】
これらの水溶性有機溶剤の中でも、多価アルキルアルコール類、ポリアルキレングリコール類及びアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類等の多価アルコール化合物は、本発明のインクジェット記録用水性インク組成物の湿潤剤として作用する。つまりインクジェット記録装置のノズル部分において、インクが乾燥し、ノズルを塞いでしまうことを防止するために、インクが乾燥することを抑制する。したがってこれらの多価アルコール化合物を使用することが好ましい。これらの多価アルコール化合物は1種類を使用しても良く、また複数組み合わせることも出来る。これらの多価アルコール化合物の添加量は、インクジェット記録用水性インク組成物の0〜50重量%が好ましく、さらには5〜30重量%が好ましい。
【0057】
本発明のインクジェット記録用水性インク組成物にはその他の添加物をそれぞれの目的に応じて加えることが出来る。例えば、分散助剤、増粘剤、流動性改良剤、界面活性剤、電導度調整剤、pH調整剤、酸価防止剤、防腐剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、消泡剤、浸透剤が挙げられる。
【0058】
【実施例】
以下において、本発明の実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本発明を明確にするためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。尚、実施例及び比較例中の部は特に断らない限り、重量部とする。
【0059】
合成例1(スチレン系共重合体の合成)
攪拌機、温度計、環流コンデンサー付きのセパラブルフラスコにMEK667部を仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温する。内温を70℃に保ち、メタクリル酸230部、スチレン590部、メチルメタクリレート150部及びAIBN(アゾビスイソブチルニトリル)10部の混合物を約2時間かけて添加し、反応させる。添加終了後、4及び8時間後にAIBN2部、また12及び16時間後にAIBN1部を添加し、反応を継続させる。またモノマー混合物の添加終了4時間後に、MEK333部を加える。モノマー混合物添加終了22時間後に内温を下げて、反応を終了させ、スチレン系共重合体のMEK溶液を得た。
【0060】
このスチレン系共重合体のMEK溶液を大量のメタノール中に注いで、攪拌する。メタノール中で沈殿したスチレン系共重合体を、ガラスフィルターを用いて溶剤と分離し、更にメタノールで洗浄する。メタノールを含んでいるスチレン系共重合体を加熱減圧乾燥機に入れ、恒量に達するまで乾燥する。
【0061】
得られたスチレン系共重合体の酸価は147mgKOH/gであり、GPCで測定した重量平均分子量はポリスチレン換算で24,000であった。以下、このスチレン系共重合体を樹脂(a)と略記する。
【0062】
合成例2(スチレン系共重合体の合成)
攪拌機、温度計、環流コンデンサー付きのセパラブルフラスコにイソプロピルアルコール(IPA)1,000部を仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温する。内温を70℃に保ち、アクリル酸51部、スチレン300部、アクリル酸ブチル149部及びAIBN(アゾビスイソブチルニトリル)30部の混合物を約2時間かけて添加し、反応させる。添加終了後、4及び8時間後にAIBN2部加え、反応を継続させる。モノマー混合物添加終了12時間後に内温を下げて、反応を終了させ、スチレン系共重合体のIPA溶液を得た。
【0063】
このスチレン系共重合体のIPA溶液を大量のメタノール中に注いで、攪拌する。メタノール中で沈殿したスチレン系共重合体を、ガラスフィルターを用いて溶剤と分離し、更にメタノールで洗浄する。メタノールを含んでいるスチレン系共重合体を加熱減圧乾燥機に入れ、恒量に達するまで乾燥する。
【0064】
得られたスチレン系共重合体の酸価は77mgKOH/gであり、GPCで測定した重量平均分子量はポリスチレン換算で5,600であった。以下、このスチレン系共重合体を樹脂(b)と略記する。
【0065】
合成例3(スチレン系共重合体の合成)
アクリル酸51部を、アクリル酸80部に代え、アクリル酸ブチル149部を、アクリル酸ブチル120部に代えた以外は、合成例2と同じ操作を行い、酸価120mgKOH/g、重量平均分子量6,100のスチレン系共重合体を得た。以下、このスチレン系共重合体を樹脂(c)と略記する。
【0066】
実施例及び比較例
第1表に、実施例及び比較例の組成及び配合量、及び耐水性を示した。以下に第1表に示した実施例及び比較例の顔料分散型水性インク組成物の製造方法を示す。
【0067】
250mlのステンレスビーカーに第1表記載の水性媒体、スチレン系共重合体及び塩基性化合物を入れ、スターラーで攪拌しながら、90℃前後まで加熱し、共重合体を溶解又は分散させる。但し、実施例1については、加熱しながら、ホモミキサーで攪拌し、共重合体を分散した。冷却後、蒸発により減少した量の水を加え、250mlの広口ポリビンに移す。更に広口ポリビンに顔料とガラスビーズ(3mmφ)200部を加え、ペイントコンディショナーで4時間分散して、実施例及び比較例の水性インク組成物を得た。
【0068】
耐水性の試験方法は、実施例及び比較例の水性インク組成物をペンでコピー用紙に筆記し、筆記後1〜2分の間に筆記されたコピー用紙を水に浸し、筆記されたインクの状態を観察する。筆記されたインクが水に全く流れでなければ、耐水性は極めて良好であり、◎印で示す。筆記されたインクが水に少し流れ出る程度で、インク画像が判読できれば、耐水性は良好であり、○印で示す。筆記されたインクが水に大部分流れ出たときは、耐水性は不良であり、×印で示す。
【0069】
尚、表中の各”Joncryl”は、ジョンソンポリマー社製の(メタ)アクリル酸を共重合成分として含むスチレン系共重合体である。
【0070】
【表1】
Figure 0004484253
【0071】
比較例3
酸価430、重量平均分子量5860となる様にする以外は合成例3と同様なモノマー組成で同様な操作を行って、対応するスチレン系共重合体を得た。これを用いた以外は、比較例2と同様の操作を行ってインク組成物を得た。この組成物を用いて同様の操作を行ったが、比較例2と同様の結果であった。
【0072】
第1表の実施例1と比較例1〜3とを対比すればわかる通り、ほぼ同等の重量平均分子量を有する共重合体を用いても、化合物(B)の含有量が、40%≦共重合体(C)酸価相当量<120%から逸脱している組成物(比較例1)や、20≦酸価≦170から逸脱している組成物(比較例2〜3)では、それらが兼備されている実施例1の様な、優れた耐水性を有するインク画像が得られないことが明らかである。
【0073】
【表2】
Figure 0004484253
【0074】
【表3】
Figure 0004484253
【0075】
実施例1と7との対比から、ほぼ同一の分子量・同一塩基性化合物含有量において、酸価がより低い共重合体を用いたほうが、インク画像の耐水性はより優れたものとなることがわかる。
【0076】
尚、実施例のいずれの組成物も、吐出オリフィス又はノズルから吐出させ、インクを液滴として飛翔させて記録を行うインクジェットプリンターによる印字を行った場合でも、同様に優れたインク画像の耐水性が得られた。また実施例4の組成物は、ノズル部分でのインクの乾燥も少なく、ノズルを塞ぐことなく、特に吐出安定性にも優れていた。
【0077】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用水性インク組成物は、従来のインク組成物から得られるインク画像に比べて、耐水性が極めて高いという格別顕著な効果を奏している。

Claims (7)

  1. 水性媒体(I)中に、分散した顔料(A)、塩基性化合物(B)及びスチレン系共重合体(C)を含むインクジェット記録用水性インク組成物において、共重合体(C)の酸価が20〜170mgKOH/gであって、かつ塩基性化合物(B)の含有量が共重合体(C)の酸価に相当する量の40%以上120%未満であり、かつ塩基性化合物(B)で中和された共重合体(C)が水性媒体(I)中に分散していることを特徴とするインクジェット記録用水性インク組成物。
  2. スチレン系共重合体(C)の重量平均分子量が7,000を越えることを特徴とする請求項1記載の組成物。
  3. スチレン系共重合体(C)の酸価が20〜100mgKOH/gかつ重量平均分子量が3,000〜7,000であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
  4. スチレン系共重合体(C)が、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 顔料(A)が、有機顔料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 水性媒体(I)が、多価アルコール化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
  7. 塩基性化合物(B)が、アルコールアミン系化合物であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
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