JP4483130B2 - 開閉装置の消弧機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は直流電路を開閉する開閉装置の消弧機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は、従来の直流開閉装置の一種である電磁接触器の略断面図である。
図7において、1はクロスバー、2はクロスバー1の窓枠1a内に配置したばね受け、3はばね受け2に設けた突起2aと、クロスバー1の窓枠1a内のばね受け2と対向する位置に設けた突起1bに系合させたばね、4はばね受け2とクロスバー1の窓枠1a間に、ばね3により加圧されて保持された可動接触子、4aは可動接触子4に設けた可動接点、5は前記可動接点4aと対向する固定接点5aを持つ固定接触子、6はアークホーン、7はアークホーン6をネジ8により保持し、外郭を成すアークカバー、9はアークカバー7とアークホーン6の間に保持される永久磁石、10は前記固定接触子5を保持し、外郭を成すハウジングを示す。
【0003】
図8は、従来の電磁接触器の消弧機構の動作を示す状態図である。
従来の構造を有する電磁接触器の消弧機構においては、可動接点4aと固定接点5aが接触して電路を形成した状態から、図8aに示す可動接点4aと固定接点5aが離れた状態になる電路の遮断動作において、可動接点4aと固定接点5a間に生じるアーク101は、永久磁石9によりクロスバー1が位置するA方向と反対B方向へ駆動され、図8bのごとく可動接触子4と永久磁石9の間、及びアークホーン6と固定接触子5の間の2本のアーク101a及び101bに分断される。
その後、2本のアーク101a及び101bは、電流方向が逆のため、永久磁石9によりそれぞれクロスバー側のA方向、及びA方向と逆のアークホーン側のB方向へ駆動され、図8cのごとくアーク長が増加し、クロスバー側とアークホーン側の全アーク長が回路電圧条件に対応するものとなるまで持続し、その条件がそろった時アークが消弧する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の構造を有する電磁接触器の消弧機構においては、可動接触子と永久磁石間に発生したアークは、永久磁石の発生する磁界により駆動され,永久磁石面と可動接触子面をクロスバー1の方向に移動し、アーク101aはクロスバー1に達する。
このクロスバー1と永久磁石9面の間にはアークによる熱ストレスを遮蔽するため、クロスバー1をカバーする機能を持つ絶縁材料からなる遮蔽板を備え、損傷を防止しているが、可動接触子、クロスバー1は接点の開閉動作時に上下方向に動く可動物であることより、完全にカバーする事は出来ず電磁接触器の開閉動作時に発生アークによりクロスバー1への熱影響を与えてしまう。
また、上述したクロスバー1をカバーする機能を持つ絶縁材料からなる遮蔽板を備えた構成の従来の電磁接触器に対し、よりアークのクロスバー1への影響を小さくするためには、上述の構成に加え、永久磁石9からクロスバー1までの距離を大きくすることで対処可能であったが、該構成では製品小形化が困難であった。
【0005】
また、電磁接触器の直流電流遮断においては、アーク発生部分ではアーク熱による絶縁部品への影響が大きく、消弧室の絶縁材料を耐熱性の高いものにする必要がある。したがって、従来は消弧室の一部を構成するアークカバー7の材料として、耐熱性の高い材料を使用していた。
しかしながら、耐熱性の高い材料は機械的な弾性力を有していない。
このため、従来のアークカバー7には機械的な弾性力がなく、アークカバー7をハウジング10へ取付ける際に、ネジ等の固定部品が必要であり、かつネジをアークカバー7へ仮固定し、締付ける工数が必要であった。
【0006】
また、前記構造を有する電磁接触器の消弧機構においては、図8b、図8cに示すように、アークカバー7の外側にアーク発生時にアークにより主回路端子と同電位になり充電部となるネジ8が露出するため、アークカバー7から制御盤の扉までの間に、一定の絶縁距離を確保する必要があった。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、直流の電流遮断において、永久磁石とクロスバーの間のギャップを保ち、かつ消弧室を小形化することである。
【0008】
また、第2の目的は、永久磁石のクロスバーとの反対側面に導電性非磁性材料から成るアークホーンにより保持し、接点間で発生したアークをアークホーンへ転移させて分断することである。
【0009】
また、第3の目的は、永久磁石を保持するアークホーンの先端にエッジを設け、接点間で発生したアークのアークホーンへの転移を促進することである。
【0010】
また、第4の目的は、アークカバーの材料を熱可塑性樹脂とし、ベースへのアークカバーの着脱容易化を図るとともに、ネジ等の金属取付部品のアークカバー正面への露出を防止し、安全性を向上させることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る開閉装置の消弧機構は、クロスバー内に配設されたばねにより加圧され、クロスバーに保持された可動接触子と、この可動接触子と対向する固定接触子と、外郭をなすアークカバーと、アークカバー内部に配設された永久磁石とを備えた開閉装置において、永久磁石の可動接触子裏面との対峙面におけるクロスバー側を覆う、絶縁材料からなるアークシールドと、永久磁石の反クロスバー側に配置され、上記永久磁石の可動接触子裏面との対峙面の一部を開放するエッジ部を設けた、導電性非磁性材料からなるアークホーンと、を備えたものである。
【0014】
また、アークカバー及びアークシールドに対して係合部を形成し、アークシールドを、永久磁石を載置した状態で組み付けるものである。
【0015】
また、アークシールドを耐熱材料により形成し、アークカバーの材料を熱可塑性樹脂とし、アークシールドとアークカバーの係合部をアークカバーの弾性力により取り付け、取り外し可能とするものである。
【0016】
また、永久磁石をアークシールドにより覆う範囲は、電磁開閉器の電流開閉における定格電圧、定格電流により、遮断条件が満足されるアーク長が得られる条件となるように決定するものである。
【0017】
さらに、永久磁石の、可動接触子の接点部裏面との対峙面のうち、クロスバー側から可動接触子方向の最頂部までの概略1/2を熱硬化性樹脂からなるアークシールドにより覆うものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
この発明の一実施の形態を図1〜図6によって説明する。
図1は、この発明の一実施の形態による電磁接触器の消弧機構を示す略縦断面図であり、図2は、図1のA方向から見た電磁接触器の内部構造を示す略断面図である。
図において、1はクロスバー、2はクロスバー1の窓枠1a内に配置したばね受け、3はばね受け2に設けた突起2aと、クロスバー1の窓枠1a内のばね受け2と対向する位置に設けた突起1bに系合させたばね、4はばね受け2とクロスバー1の窓枠1a間に、ばね3により加圧されて保持された可動接触子、4aは可動接触子4に設けた可動接点、5は前記可動接点4aと対向する固定接点5aを持つ固定接触子、6はアークホーン、7は熱可塑性樹脂で構成され、アークホーン6を保持し、外郭を成すアークカバー、9はアークカバー7とアークホーン6の間に保持される永久磁石、10は熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂で構成され、固定接触子5を保持し、外郭を成すハウジング、11は消弧直前のアーク101a及びアーク101bが激突するため、熱硬化性樹脂等の耐熱性材料で構成されたアークシールドである。
また、アークホーン6のうち可動接触子4と向合う先端には、エッジ部6aが設けられている。
【0019】
なお、アークカバー7、ハウジング10、アークシールド11の材質は、電磁接触器の電流開閉時のアークによる熱影響度の大きさにより決定される。
とくに、直流電磁開閉器においてはアークに長時間さらされ熱影響の大きな部品は耐熱性材料で構成する必要がある。
【0020】
図3は、アークシールド11、アークホーン6と永久磁石9の、アークカバー7への取付け前の状態を示す状態図であり、図4は、アークシールド11、永久磁石9、アークホーン6の各部品を示す斜視図、図5は、この発明の一実施の形態によるアークカバー7取り付け時の状態を示す斜視図である。
図において、アークホーン6の先端6bがアークカバー7の溝部7b1に挿入され、アークシールド11の壁部11bがアークカバー7の溝部7b2に挿入され、永久磁石9がアークカバー7の皿型形状部7b3に当接し、その後、アークシールド11の爪部11aがアークカバー7の凹部7aに係合される。
前述の組立の過程において、アークシールド11の爪部11aがアークカバー7の凹部7aに係合される直前に、アークカバー7の凹部7a周辺部は変形する。この際、アークカバー7は壊れることなく変形するが、この変形動作は、アークカバー7の材料を高い弾性力を有する熱可塑性樹脂としたために得られる。
【0021】
また、アークカバー7の爪部7cがハウジング10の凹部10cに係合され、また、アークカバー7の爪部7dがハウジング10の凹部10dに係合されている。(図1及び図2参照)
図5a→図5bの過程を経て、アークカバー7がハウジング10に取付けられ、前述の図1及び図2の状態になるが、図5a→図5bの過程の途中でアークカバー7の7c部(図1)及び7d部(図2)周辺が変形する。
この際、アークカバー7は壊れることなく変形するが、この変形動作は、アークカバー7の材料を高い弾性力を有する熱可塑性樹脂としたために得られる。
【0022】
図6は、この発明の一実施の形態による電磁接触器の消弧機構の動作を示す状態図である。
次に、上述の如く構成された電磁接触器の消弧機構の作用について説明する。可動接点4aと固定接点5aが接触して電路を形成した状態から、電路の遮断動作で図6aに示す様に可動接点4aと固定接点5aが離れた状態になると、可動接点4aと固定接点5a間にアーク101が生じる。
アーク101は永久磁石9により駆動され、図6aの位置から図6bの位置へと移動する。
そして、アーク101は、アークホーン6のエッジ部6aの電界集中による付勢力を得ながらアークホーン6へと転移し、アークホーン6により101aと101bに分断され、図6cの状態となる。
その後、永久磁石9はアーク101aに対し、図6cのA方向へ、アーク101bに対し図6cのB方向へ駆動力を与える。
【0023】
このとき、アークは永久磁石と可動接触子の導電部分間に発生するため、アーク101aの可動接触子4側端末に対し進行方向Aにおいて移動を妨げる絶縁物はないが、アーク101aの永久磁石9側端末に対し進行方向Aにおいてアークシールド11が絶縁物として移動を妨げている。
このため、アーク101aはA方向に駆動力を与えられるものの、移動することができず、図6dの状態で静止する。
【0024】
前述のとおり、永久磁石9の、可動接触子4の接点部裏面との対峙面9aのうち、クロスバー1側から可動接触子4方向の最頂部までの概略1/2を熱硬化性樹脂からなるアークシールド11により覆われ、クロスバー1との反対側部分がアークホーン6により覆われている。(図3及び図6a)
永久磁石9をアークシールド11により覆う範囲は,電磁開閉器の電流開閉における定格電圧、定格電流により、遮断条件が満足されるアーク長が得られる条件となるように決定する必要がある。
例えば、定格電圧DC220V、定格電流20Aの場合は、5mmとなる様に決定する。
【0025】
このように、永久磁石9の可動接触子4に対峙する面9aの一部を耐熱材料で覆うことによって、クロスバー1の表面から永久磁石9の中心までの距離が、従来技術による電磁開閉器に対して本願の電磁開閉器では低減される。
また、アーク101bの両端末に対し、進行方向Bにおいて移動を妨げる絶縁物はなく、アーク101bはアークホーン6の上を移動しながらB方向へ駆動され、図6dの状態まで伸長する。
この際、アークホーン6は非磁性材料のため永久磁石が発生する磁束をアークホーン6の断面に集中することなく、気中アーク部への磁束供給が確保され、その結果必要なアーク駆動力が確保される。しかもアークホーン6は高導電性のため、アーク101bが即座に移動するのを促進する。
この様にして図6dのアーク101aとアーク101bのアーク電圧の合計が絶縁回復電圧を超え、アークは消弧される。
【0026】
本実施の形態によれば、発生したアーク101aを永久磁石の導電部の露出面に拘束しアーク101aがA方向に移動するのを防ぐため、従来の電磁開閉器の消弧室寸法X(図7のクロスバー1の表面からアークボックス10の内面)に対し、本実施の形態に係る電磁開閉器の消弧室寸法Y(図1のクロスバー1の表面からアークシールド11の内面)は約25%低減され、消弧構造が小型化でき、製品の小型化が計れる。なお、従来技術とは絶縁材料のカバーする対象がクロスバーか永久磁石と異なり、カバーの果たす機能がクロスバーをアークの熱から保護するかアークを永久磁石面のクロスバー方向への移動を制限するかが異なるものである。
また、図6bから図6cの状態に移行する過程において、導電性材料から成るアークホーン6に転流したアーク101bはアークホーン6の上を移動し、アーク101bの伸長を促進する。
なお、アークホーン6は非磁性材料から成るため、アークの発生領域において永久磁石6が励起する磁束の経路に影響しない。
さらに、図6bから図6cの状態に移行する過程において、アークホーン6のエッジ部6aが電界集中を促し、アークホーン6へのアークの移動を促進する。また、アークカバー7とハウジング10がネジ等の追加部品を用いずに結合できるため、材料コスト・取付けコストが安価で、かつ着脱容易である。
なお、ネジ等の結合用の金属部品がアークカバー7の外部へ露出することを防止でき、アークカバー7の外面から制御盤の扉までの絶縁距離を確保する必要がないので、制御盤の寸法が小形化できる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、アークシールドにより可動接触子と永久磁石との間に発生したアークのクロスバー方向への移動を制限することによりクロスバーをアーク熱から保護することができる。
【0028】
また、導電性材料から成るアークホーンに転流したアークはアークホーンの上を移動し、アークの伸長を促進し、分断させることができる。
【0029】
また、アークホーンのエッジ部が電界集中を促し、アークホーンへのアークの移動を促進し、分断させることができる。
【0030】
また、アークカバーとハウジングがネジ等の追加部品を用いずに結合できるため、材料コスト・取付けコストが安価で、かつ着脱容易である。
また、ネジ等の結合用の金属部品がアークカバーの外部へ露出することを防止でき、アークカバーの外面から制御盤の扉までの絶縁距離を確保する必要がないので、制御盤の寸法が小形化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る電磁接触器の消弧機構を示す略縦断面図である。
【図2】 図1においてA方向から見た電磁接触器の内部構造を示す略縦断面図である。
【図3】 電磁接触器の消弧機構のうち、アークシールド11、アークホーン6と永久磁石9の、アークカバー7への取付け前の状態を示す状態図である。
【図4】 電磁接触器の消弧機構のうち、アークシールド、永久磁石、アークホーンの各部品の斜視図である。
【図5】 電磁接触器の外観を示す斜視図である。
【図6】 本発明の電磁接触器の消弧機構を示す略縦断面図である。
【図7】 従来の電磁接触器の消弧機構を示す略縦断面図である。
【図8】 従来の電磁接触器の消弧機構を示す略縦断面図である。
【符号の説明】
1 クロスバー、2 ばね受け、3 ばね、4 可動接触子、4a 可動接点、5 固定接触子、5a 固定接点、6 アークホーン、6a アークホーンのエッジ部、6b アークホーンのアークカバー溝への挿入部、7 アークカバー、7a アークカバーのアークシールド保持用爪部、7b1 アークカバーのアークホーン把持部、7b2 アークカバーのアークシールド把持部、7b3 アークカバーの永久磁石当接部、7c アークカバーのハウジングへの固定用爪部、7d アークカバーのハウジングへの固定用爪部、8 ネジ、9 永久磁石、9a 永久磁石の可動接触子対峙面、10 ハウジング、11 アークシールド、101 アーク、101a 分断後のアーク、101b 分断後のアーク。
Claims (5)
- クロスバー内に配設されたばねにより加圧され、クロスバーに保持された可動接触子と、この可動接触子と対向する固定接触子と、外郭をなすアークカバーと、アークカバー内部に配設された永久磁石とを備えた開閉装置において、
永久磁石の可動接触子裏面との対峙面におけるクロスバー側を覆う、絶縁材料からなるアークシールドと、
永久磁石の反クロスバー側に配置され、上記永久磁石の可動接触子裏面との対峙面の一部を開放するエッジ部を設けた、導電性非磁性材料からなるアークホーンと、
を備えたことを特徴とする消弧機構。 - アークカバー及びアークシールドに対して係合部を形成し、アークシールドを、永久磁石を載置した状態で組み付けることを特徴とする請求項1に記載の開閉装置の消弧機構。
- アークシールドを耐熱材料により形成し、アークカバーの材料を熱可塑性樹脂とし、アークシールドとアークカバーの係合部をアークカバーの弾性力により取り付け、取り外し可能とすることを特徴とする請求項1または2に記載の開閉装置の消弧機構。
- 永久磁石をアークシールドにより覆う範囲は、電磁開閉器の電流開閉における定格電圧、定格電流により、遮断条件が満足されるアーク長が得られる条件となるように決定することを特徴とする請求項1に記載の開閉装置の消弧機構。
- 永久磁石の、可動接触子の接点部裏面との対峙面のうち、クロスバー側から可動接触子方向の最頂部までの概略1/2を熱硬化性樹脂からなるアークシールドにより覆うことを特徴とする請求項4に記載の開閉装置の消弧機構。
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