JP4482679B2 - 任意の表面特性及び表面形状を有する基体表面へのシリカ薄膜の製造方法及び複合構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規シリカ薄膜の製造方法及び複合構造体に関するものであり、更に詳しくは、任意の表面特性及び表面形状を有する基体表面への成膜と膜厚の制御を可能とする成膜方法であって、基体上に均一かつ高品質な所定の膜厚のシリカ薄膜を作製することを可能とする新しい成膜方法、及び該方法によって作製されたシリカ薄膜を表層に有する、高い透光性等の特性を有する複合構造体に関するものである。このシリカ膜は、電気的絶縁膜、高い強度を利用した高純度保護膜、高い透光性を利用した光導波形成膜、低い屈折率を利用した低反射コーティング膜、基体表面の微細な欠陥を修復し平滑性を回復する修復膜、基体からの元素拡散を抑制するアンダーコート膜、基体表面を任意の表面粗さに改質する表面処理膜等として多角的に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、基体表面にシリカ薄膜を形成する化学的手法として、例えば、ゾル−ゲル法、スパッタリング法、LPD法などがよく知られている。これらのうち、ゾル−ゲル法は、シリコンアルコキシドのアルコール溶液に反応触媒、安定化剤等を添加することにより部分的に加水分解した安定化シリカゾルを調製し、これをコーティング液としてディッピング、スピニングなどの方法で基体表面に塗布し、該基体表面上で加水分解と重合反応を行わせた後、加熱焼成により膜形成する方法である。スパッタリング法は、真空容器中に基体を固定し、該容器内で種々の方法で気化させたシリコンあるいはシリコン化合物を基体表面に堆積せしめることにより基体表面にシリカ薄膜を形成する方法である。LPD法は、水溶液中における過飽和度の変化を利用して液中に溶解したふっ化シリコンを沈殿せしめると共に基体表面に付着させることにより基体表面にシリカ薄膜を形成する方法である。
【0003】
しかし、これらの従来技術の問題点として、以下の点が指摘される。まず、ゾル−ゲル法は、低温で比較的短時間に膜形成できる方法であるが、通常、膜の均一性を保つことが難しいという問題がある。また、膜を形成するシリカ中に安定化剤等の有機物が残存し易く、これらの除去には高温焼成が必要とされる。また、焼成の際に放出される酸性ガスは、焼成装置に悪影響を与える。スパッタリング法は、形状が複雑な面には膜形成が難しく、かつ反応装置が複雑かつ高額であり、高コストであるという問題がある。LPD法は、工程が煩雑であり、かつ膜を形成するシリカ中に水などが残存し易いという問題がある。
【0004】
また、金属アルコキシドの加水分解を利用したシリカ薄膜の製造方法に関するものとして、以下のものが挙げられる。
1)特開平9−295804「シリカ薄膜の製造方法」
しかし、金属アルコキシドの加水分解を利用した方法では、1)膜厚を厳密に制御する方法が提案されていない、2)表面粗さを制御することができない、3)基体表面が疎水性である場合の被覆方法を提示していない、等の問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を抜本的に解決することが可能な新しい成膜技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、シリコンアルコキシドの加水分解により液中に直径1〜30nmの低密度ケイ酸コロイドを生ぜしめ、これらの基体への付着と脱水重縮合による液中での膜成形過程を最適化してそれらの過程を制御することにより所期の目的を達成し得ることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、上記従来技術の課題を解決し、1)非晶質シリカ薄膜を親水性、疎水性の別を問わず任意の形状の基体表面に形成できるシリカ薄膜の製造方法、2)該シリカ薄膜の表面粗さを制御する方法、及び、3)反応時間の設定により該シリカ薄膜の膜厚を厳密に制御する方法、を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、上記方法により、基体上に均一かつ高品質なシリカ薄膜を形成する方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、上記方法により得られたシリカ薄膜を任意の構造体の表層に形成して複合化した該シリカ薄膜を表層に有する、高い透光性を有する複合構造体を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)疎水性表面を有する基体表面に接合したシリカ薄膜の形成を可能とするシリカ薄膜の製造方法であって、
(a)シリコンアルコキシド、アルコール、水及びアルカリからなる溶液に基体を浸漬する、
(b)アルコール溶媒中でのシリコンアルコキシドの加水分解により液中に形成される直径1〜30nmの過渡的なケイ酸コロイド(低密度ケイ酸コロイド)を生ぜしめる、
(c)これらの基体への付着と脱水重縮合により液中で基体上に均一な所定の膜厚のシリカ薄膜を形成する、
(d)上記膜形成過程で反応液を揺動させること、溶媒を循環させること、又は反応槽を震盪することにより反応液を動的な状態に保持して、上記(b)により液中に形成された低密度ケイ酸コロイドの基体表面への付着を促進させる、
ことを特徴とするシリカ薄膜の製造方法。
(2)シリコンアルコキシドが、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラエトキシド、シリコンテトライソプロポキシド、及びシリコンテトラブトキシドの群から選ばれた少なくとも1種である前記(1)に記載の方法。
(3)溶媒であるアルコールが、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールの群から選ばれた少なくとも1種である前記(1)に記載の方法。
(4)シリカ膜の膜厚が、1nm〜10μmである前記(1)に記載の方法。
(5)基体表面の疎水度を設定することにより薄膜の表面粗さを制御する前記(1)に記載の方法。
(6)基体の浸漬の開始時間とその後の保持時間を任意に設定することにより所定の膜厚にする前記(1)に記載の方法。
(7)前記(1)から(6)のいずれかに記載の方法により得られたシリカ薄膜を、乾燥することを特徴とするシリカ薄膜の製造方法。
(8)乾燥後の熱処理によって膜内部に残留する不純物を除去して熱処理前の膜と比べて高純度、かつ高密度の非晶質シリカ膜とする前記(7)に記載の方法。
(9)前記(1)から(8)のいずれかに記載の方法により得られたシリカ薄膜を疎水性表面を有する基体の表層に有することを特徴とする未処理の基体と比べて高い光透過性を有する複合構造体。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明者らは、上記従来技術における諸問題の解決を種々検討した結果、1)シリコンアルコキシドの加水分解による非晶質シリカの沈殿生成物が、加水分解反応過程で生成した直径数十nm以下の不安定な一次粒子の凝集安定化物としての二次粒子であること、2)沈殿生成物の生成過程において、反応溶液中に任意の物体を浸漬させておくと、その物体の表面が親水性であれば一次粒子が物体の表面に付着し、均一な薄膜を形成すること(図1)、3)こうして得られたシリカ薄膜は、緻密であり、乾燥後の加熱焼成を要さずとも高い密着性と高い強度を有すること、更に、4)該基体の表面が疎水性であれば一次粒子及び反応溶液中で一次粒子が凝集して生成した二次粒子が、溶液内でのブラウン運動とファンデルワールス結合により基体表面に低い確率で付着し、これらが、均一ではあるが表面粗さの大きな薄膜を形成すること(図2)、を見出した。図1に、親水性表面を有する基体へのシリカ薄膜の形成過程及びこれによって得られる平滑な薄膜を模式的に示す。また、図2に、疎水性表面を有する基体へのシリカ膜の形成過程及びこれによって得られる表面粗さの大きい薄膜を模式的に示す。
【0008】
本発明は、斯る新事実の発見に基づくものであり、本発明は、シリコンアルコキシド、アルコール、アンモニア、水からなる溶液に、基体を浸漬し、室温以下の温度で保持することにより、シリコンアルコキシドの加水分解により生成したシリカを基体表面に付着させることを特徴とする新規なシリカ薄膜の製造方法に係るものである。本発明は、広義には、基体の表面にシリカ薄膜を形成する方法、更には、基体の表面状態を制御することで表面粗さを制御する方法、及び該方法により得られたシリカ薄膜を表層に有する複合構造体を提供するものである。
【0009】
本発明において、薄膜形成に使用するシリコンアルコキシド、アルコール、水及びアルカリからなる溶液とは、1)シリコンアルコキシドとして、好適には、シリコンメトキシド、シリコンエトキシド、シリコンイソプロポキシド、シリコンブトキシド、2)溶媒であるアルコールとして、好適には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、及び、3)加水分解のために必要とされる水及び加水分解を促進する触媒としてのアルカリ、好適には、アンモニア、からなるものである。これらは、それぞれが、以下の濃度範囲で混合されたものであることが好ましい。
1)シリコンアルコキシド:0.05〜0.5mol/l
2)アルカリ(アンモニア):0.5〜5.0mol/l
3)水:1〜10mol/l
【0010】
次に、本発明の方法の概要を図3に示す。
本発明のシリカ膜は、好適には、シリコンアルコキシド、アルコール、アンモニア及び水を用い、これらを所定量混合撹拌した後、そこに基体を浸漬し、所定の温度に設定した状態で数分から数十時間保持することにより作製される。
基体表面に膜が形成されるかどうかは、シリコンアルコキシドが加水分解して生成するシリコン酸の生成速度と重合状態に支配されており、調製する溶液組成のうち、シリコンアルコキシドと水との量比は重要である。基体表面への膜の形成は、加水分解反応過程で生成した直径1〜30nmの過渡的な一次粒子の付着によるものである。そのため、基体の表面が親水性であれば一次粒子が物体の表面に付着し、膜は均一なものとなり、基体の表面が疎水性であれば、一次粒子の付着確率が減少し、かつ凝集物である二次粒子が付着するため、膜の表面に凹凸が生じる。このため、目的とする膜表面の形状に対して、基体の表面特性は重要である。
【0011】
本発明では、基体として、例えば、金属、ソーダライムガラスやシリカガラス等のガラス、ポリエチレンやポリスチレン等のプラスチクス、シリコンゴム、アクリル樹脂、セルロースなどが使用される。しかし、これらに制限されるものではなく、いずれのものでもよい。また、基体表面は、親水性であっても疎水性であってもよく、例えば、基体表面をフッ素処理に代表される化学的修飾により表面処理することにより基体の表面を疎水化してもよい。基体の表面状態は、平滑であっても凹凸があってもよい。疎水性の基体表面に膜が形成される上記成分の最適混合比は、溶媒中に二次粒子としての単分散球状シリカ粒子が形成される混合比、である。
【0012】
親水性の基体表面に膜が形成される上記成分の最適混合比は、1)溶媒中に二次粒子としての単分散シリカ粒子が形成される混合比、2)上記1)に比して、若干加水分解速度の遅い混合比、すなわち、溶媒中に二次粒子としての単分散シリカ粒子が形成される条件よりも水濃度あるいはアンモニア濃度が低い混合比、である。急速な加水分解の進行により均一な膜が形成されない場合には、処理温度を低く設定することにより加水分解を抑制し、均一な膜を得ることができる。したがって、本発明では、シリコンアルコキシド濃度は重要ではなく、シリコンアルコキシド濃度を下げた場合には水濃度あるいはアンモニア濃度を上げること、及び長時間の反応時間を設定することによって均一なシリカ膜を形成することができる。
【0013】
シリコンアルコキシド濃度を上げた場合には、水濃度あるいはアンモニア濃度を下げること、及び反応温度を下げることによって、均一なシリカ薄膜を形成することができる。本発明では、前述したとおり、シリコンアルコキシドとしては、シリコンメトキシド、シリコンエトキシド、シリコンイソプロポキシド、シリコンブトキシドのうちの一つ以上を使用することができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのうちの一つ以上を使用することができる。これらのうち、シリコンアルコキシドとしては、シリコンテトラエトキシド、溶媒としては、エタノールかイソプロパノールが好ましい。その濃度は、0.05〜0.5mol/l、望ましくは0.1〜0.2mol/lである。水は、シリコンアルコキシドの加水分解を起こし、シリコン酸を生成させるのに必要である。その量は、シリコンアルコキシドに対して、モル比で1〜100の範囲である。
【0014】
本発明において、アルカリは、シリコンアルコキシドの加水分解を起こし、ケイ酸コロイドを生成させる触媒として必要である。本発明では、アルカリとして、好適には、アンモニアが使用される。その量は、シリコンアルコキシドに対して、モル比で1〜100の範囲である。膜形成過程における反応液の保持温度は、氷点下であっても室温以上であってもよいが、0℃以上30℃以下が好ましい。この場合、溶媒の揮発を防ぐ目的で、反応を密閉容器で行ってもよい。低密度ケイ酸コロイドの基体への付着を促進させるために、反応液を動的な状態に保持させることが必要とされる。この場合、反応液を揺動させること、反応槽を震盪すること、又は溶媒を循環させること、により、反応液を動的な状態に保持させる。また、これらの操作手段は、特に制限されるものではなく、任意の手段を用いることができる。本発明において、反応液を動的な状態に保持することはきわめて重要である。反応液を静置させた場合には、反応条件を最適化することが難しくなり、所期の目的を達成することが困難となる。尚、本発明において、「動的な状態に保持」とは、反応液を静置状態にしないで非静止状態に保つことを意味する。
【0015】
本発明では、反応条件を適切に設定することにより、膜の形成速度は、保持時間の対数関数として表すことができる。また、膜の形成は、過渡的な一次粒子の付着によるのであるから、基体の反応液への浸漬の開始時間は反応が継続している間のいつでもよい。したがって、浸漬の開始時間とその後の保持時間を適宜設定することにより所望の膜厚を得ることができる。膜の形成速度は、溶媒中のシリコンアルコキシド濃度に比例する。したがって、シリコンアルコキシド濃度の調整により同一の処理時間でも膜厚を制御することができる。基体の表面を疎水化することにより、過渡的な一次粒子が基体表面に付着する確率を低下させ、同時に一次粒子の凝集体である二次粒子が基体表面に付着する確率を上げることができる。したがって、基体表面の疎水性を上げることにより薄膜の表面形状を制御することができる。前述したように、このとき、製膜条件として、反応液を動的な状態に保持させることはきわめて重要であり、そのために、本発明において、反応槽の震盪、溶媒の循環、あるいは反応液の揺動は重要な構成要素として位置づけられるものである。
【0016】
本発明の方法で得られる非晶質シリカ膜は、堆積状態で既に高密度であり、乾燥のプロセスを省略することができる。更に、室温で乾燥することにより、充分な硬度を示す。本発明の方法で得られる非晶質シリカ膜は、乾燥によりアルコールに不溶となり、この処理を繰り返すことにより、更に厚い膜を得ることができる。更に、これを加熱焼成することにより、本発明の方法で得られる非晶質シリカ膜の構造内部に残留するOH、アルキル基を除去することができ、それにより、純度の高い非晶質シリカからなる薄膜を形成することができる。
【0017】
本発明のシリカ膜は、高透光性、高絶縁性、高密度、(疎水化による)超撥水性等の優れた特性を有する。このことから、このシリカ膜を任意の構造物の表面に形成して複合化することができる。これにより、上記特性の付加された複合構造物を作製することができる。本発明のシリカ膜は、例えば、絶縁膜、低反射コーティング膜、光導波形成膜、光伝達材料、アンダーコート膜、又は表面処理膜等として利用することができ、該シリカ膜は、これを表層に有するフィルム、光学用ガラス、液晶パネル、ブラウン管、ガラス窓、保護カバー、材料、電子部品、構造物等のあらゆる種類の複合構造体に適用することができる。
【0018】
【作用】
本発明では、シリコンアルコキシド、アルコール、水及びアルカリからなる溶液に基体を浸漬し、アルコール溶媒中でのシリコンアルコキシドの加水分解により液中に直径1〜30nmの低密度ケイ酸コロイドを生成させる。シリカ薄膜の形成過程で、反応液を任意の手段で動的な状態に保持させることにより、これらの基体への付着と脱水重縮合による液中での膜形成を促進することができる。それにより、液中で基体上に均一な所定の膜厚のシリカ膜を作製することができる。この場合、シリコンアルコキシド濃度、水濃度、触媒濃度、処理温度、処理時間、処理回数などによりシリカ膜の膜厚を制御することができる。また、基体表面の疎水性を上げることにより薄膜の表面形状を制御することができる。上記方法で作製される非晶質シリカ膜は、均一かつ高密度であり、これを室温で乾燥することにより高い硬度性を付加することができる。また、これを加熱焼成することにより、高純度、かつ高密度の非晶質シリカ膜とすることができる。本発明のシリカ膜は、後記する実施例に示されるように、例えば、ガラス基体の透光率を向上させる特性を有する。
【0019】
本発明における上記低密度ケイ酸コロイドの基体への付着と脱水重縮合について説明すると、シリコンアルコキシドの加水分解によって生じた過渡的なシリコン酸は、液中で凝縮と再溶解を繰り返しており、凝縮によって形成された過渡的なシリコン酸コロイドのうち、互いに衝突して表面積/体積比が小さくなったものだけが再溶解を免れて固相となる。この過渡的なシリコン酸コロイドは、反応が進行する間、常に生成と溶解を繰り返しており、かつその大きさは溶存シリコン酸の過飽和度に比例する。本発明では、これにより、上記反応が進行している間であれば、基体の浸漬開始と継続時間を任意に設定して、基体表面にシリカ膜を形成することができる。また、反応液を動的な状態に保持することにより、基体の表面が疎水性であっても、過渡的なシリコン酸コロイドを基体表面に付着せしめることが可能となる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
基体として、表面が親水性であるシリコン基板と、表面が強疎水性である1H、1H、2H、2H−perfluorodecyl trimethoxysilane単分子膜によって表面を化学修飾(フッ素処理)したシリコン基板、を使用した。反応時にシリコンテトラエトキシド0.11mol/lとなるようにこれをエタノールに溶解した溶液、並びに反応時に水3.0mol/l、アンモニア1.0mol/lとなるようにこれらをエタノールに溶解した溶液を調製し、前者に基体を浸漬した。前者の容器を震盪して反応液を動的な状態に保持した状態で、これに後者を投入した後、容器をフィルムで密閉し、更に震盪して反応液を動的な状態に保持しつつ20℃で保持した。
【0021】
所定の時間が経過した後に、基体を取りだし、これをエタノール120mlに対して水0.648mlを加えたもので洗浄し、70℃で乾燥した。得られたシリカ膜について原子間力顕微鏡(AFM)で膜厚を調べた。膜厚は、反応時間60分から240分にかけて、時間t(分)の関数として次式で表された(図4)。
未処理シリコン板上:d(nm)= 30 log(t)−8.8
疎水処理シリコン板上:d(nm)= 33 log(t)−36
また、シリコン単結晶基板上のシリカ膜の表面粗さはRMS粗さで1nmであった。フッ素処理済シリコン単結晶基板の表面粗さはRMS粗さで10〜14nmであった。
【0022】
実施例2
上記実施例1において、基体をソーダライムガラスとし、該ガラス板の両表面を膜厚137nmの非晶質シリカ膜で被覆した。この試料について、紫外−可視光分光光度計で透光率を計測した。未処理の基体と比較したところ、非晶質シリカ膜の被覆により透光率が向上することが分かった(図5)。
【0023】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、新規シリカ薄膜の製造方法及び複合構造体に係るものであり、本発明により、以下のような格別の作用効果が奏される。
(1)本発明のシリカ薄膜の製造方法によれば、非晶質シリカ薄膜を、膜厚を制御して、任意の表面特性及び任意の表面形状を有するの基体上に成膜して、基体上に均一かつ高品質な所定の膜厚のシリカ膜を作製することができる。
(2)基体の耐熱温度以下の温度であれば加熱焼成により膜内部に残留する不純物を除去して高純度化することができる。
(3)このシリカ薄膜は、電気的絶縁性を利用した電気的絶縁膜、高い強度を利用した高純度保護膜、高い透光性を利用した光導波形成膜、表面の微細な凹凸を利用した低反射膜、基体表面の微細な欠陥を修復する修復膜などの工業的用途に多角的に利用することができる。
(4)上記方法により得られたシリカ薄膜を表層に有する、高い光透過性を有する複合構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明における基体上への平滑な膜形成過程の模式図を示す。
【図2】図2は、本発明における基体上への表面粗さの大きい膜形成過程の模式図を示す。
【図3】図3は、本発明の方法の概要を示す。
【図4】図4は、シリカ膜の膜厚と反応時間の関係を示す。
【図5】図5は、紫外−可視光分光光度計でガラスの透光率を計測した結果を示す。
Claims (9)
- 疎水性表面を有する基体表面に接合したシリカ薄膜の形成を可能とするシリカ薄膜の製造方法であって、
(1)シリコンアルコキシド、アルコール、水及びアルカリからなる溶液に基体を浸漬する、
(2)アルコール溶媒中でのシリコンアルコキシドの加水分解により液中に形成される直径1〜30nmの過渡的なケイ酸コロイド(低密度ケイ酸コロイド)を生ぜしめる、
(3)これらの基体への付着と脱水重縮合により液中で基体上に均一な所定の膜厚のシリカ薄膜を形成する、
(4)上記膜形成過程で反応液を揺動させること、溶媒を循環させること、又は反応槽を震盪することにより反応液を動的な状態に保持して、上記(2)により液中に形成された低密度ケイ酸コロイドの基体表面への付着を促進させる、
ことを特徴とするシリカ薄膜の製造方法。 - シリコンアルコキシドが、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラエトキシド、シリコンテトライソプロポキシド、及びシリコンテトラブトキシドの群から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の方法。
- 溶媒であるアルコールが、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールの群から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の方法。
- シリカ膜の膜厚が、1nm〜10μmである請求項1に記載の方法。
- 基体表面の疎水度を設定することにより薄膜の表面粗さを制御する請求項1に記載の方法。
- 基体の浸漬の開始時間とその後の保持時間を任意に設定することにより所定の膜厚にする請求項1に記載の方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載の方法により得られたシリカ薄膜を、乾燥することを特徴とするシリカ薄膜の製造方法。
- 乾燥後の熱処理によって膜内部に残留する不純物を除去して熱処理前の膜と比べて高純度、かつ高密度の非晶質シリカ膜とする請求項7に記載の方法。
- 請求項1から8のいずれかに記載の方法により得られたシリカ薄膜を疎水性表面を有する基体の表層に有することを特徴とする未処理の基体と比べて高い光透過性を有する複合構造体。
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