JP4479130B2 - 可変分散補償器及び光伝送システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバ伝送路などの光伝送路を伝搬されることによって信号光に生じる分散を補償する可変分散補償器、及びそれを備える光伝送システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ伝送路などで信号光を伝搬させる光伝送システムでは、光ファイバが有する分散により、信号光に含まれる各周波数(各波長)の光成分に分散が累積される。これに対して、光伝送路での伝搬による信号光の波形劣化を抑制するため、信号光周波数を含む周波数帯域における光伝送システムでの分散量を小さくすることが望まれている。また、多波長信号光を伝搬させる波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)伝送システムでは、同様に、多波長信号光それぞれの信号光周波数(信号光波長)を含む周波数帯域における分散量を小さくすることが必要となる。
【0003】
信号光の各周波数成分に累積される分散を補償するものとして、光伝送路上に設けられる分散補償器がある。分散補償器では、信号光に適当な位相シフトを与えることによって、信号光に生じる分散を補償する。このような分散補償器としては、例えば、文献1「電子情報通信学会技術研究報告(信学技報) Vol.100, No.379、OCS2000-61」、文献2「OplusE Vol.22, No.9、p.1151」、及び文献3「OFC2000、Shirasaki et al.、Variable dispersion compensator using the virtually imaged phased array (VIPA) for 40-Gbit/s WDM transmission systems」に記載されたものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、光伝送システムの発展により、光伝送路上に設置される分散補償器に対し、さらに高い精度で分散補償が可能であるとともに、分散補償の制御性に優れた分散補償器が要求されている。これに対して、従来の分散補償器では、分散補償の精度及び制御性が充分に得られていない。
【0005】
例えば、上記の文献1に記載された分散補償器は、アレイ導波路型回折格子(AWG:Arrayed-Waveguide Grating)を備えて構成されている。そして、AWGの第1スラブ導波路側から信号光を入力し、反対側の第2スラブ導波路から出力された各周波数成分に対して空間位相フィルタによる位相調整を行って、信号光の分散を補償している。しかしながら、このような構成では、信号光の各周波数成分に対する位相調整に空間位相フィルタを用いているため、与えられる位相シフトが固定であって、分散補償の制御ができない。
【0006】
また、文献2に記載された分散補償器は、マッハツェンダ型光回路(MZI:Mach Zender Interferometer)による光路差可変の平面導波路型光回路を利用して分散補償を行う構成となっている。しかしながら、このような構成では、光回路の構造が複雑となり、その大きさも大きく(例えば5cm角程度)なってしまう。また、位相調整のレスポンスも低い(例えば10ms程度)。
【0007】
また、文献3に記載された分散補償器では、信号光を空間で伝搬させるデバイスを利用して光路長を変化させているが、このような構成では、システムが大きく、高精度での位相調整が困難である。また、光ファイバ伝送路への挿入損失も例えば10dB以上と大きい。
【0008】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、分散補償の精度及び制御性に優れるとともに、その光回路が小型化される可変分散補償器、及びそれを備える光伝送システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明による分散補償器は、信号光に位相シフトを与えて、信号光の分散を補償する可変分散補償器であって、(1)分散補償の対象となる信号光を入力し、所定の周波数帯域内の信号光を周波数成分毎に分波する光分波手段と、(2)光分波手段で分波された周波数成分それぞれを反射して、各周波数成分に所定の位相シフトを与えるとともに、周波数成分それぞれに対する反射位置が信号光伝搬方向について可変に構成された反射手段と、(3)反射手段で反射された周波数成分を合波して、分散補償された信号光とする光合波手段とを備え、(4)反射手段は単一の反射ミラーからなり、単一の反射ミラーは、その全体の反射面を変形することにより、周波数成分に対応する反射面部分のそれぞれを信号光伝搬方向について移動することが可能な可動ミラーであり、単一の反射ミラーである可動ミラーは、その中央近傍に設けられた固定部位を固定とし、両側の端部近傍にそれぞれ設けられた印加部位である第1印加部位及び第2印加部位にモーメント印加手段によってモーメントを印加して、全体の反射面を変形するとともに、モーメント印加手段は、可動ミラーの第1印加部位に一方の端部が接続され、他方の端部に第1コムドライブが接続されている第1モーメント印加機構と、可動ミラーの第2印加部位に一方の端部が接続され、他方の端部に第2コムドライブが接続されている第2モーメント印加機構とによって構成され、第1コムドライブ及び第2コムドライブのそれぞれは、駆動用電極に設けられたクシ歯型電極部と、固定に設けられたクシ歯型電極とを組み合わせた構造を有し、それらの電極の間に電圧を印加することで駆動用電極を駆動することが可能に構成されたコムドライブであり、第1コムドライブ及び第2コムドライブによって第1モーメント印加機構及び第2モーメント印加機構の端部を駆動することによって、可動ミラーの全体の反射面を変形することを特徴とする。
【0010】
上記した可変分散補償器においては、光分波手段から反射手段を介して光合波手段に到達するまでの光路長差を利用して、信号光の各周波数成分に対してそれぞれ所定の位相シフトを与える。そして、各周波数成分に対する反射位置が可変となる反射手段を用いることにより、各周波数成分に与える位相シフトを可変としている。
【0011】
このような構成により、信号光に生じる分散を高い精度で補償することが可能となる。また、反射手段での各周波数成分の反射位置を制御することにより、位相シフトを与えることによる分散補償が制御可能となる。また、反射手段のみで分散補償を制御しているので、光回路の構造を簡単化することが可能であり、したがって、光回路を小型化することができる。
【0012】
反射手段の具体的な構成及びその駆動方法としては、例えば、単一の反射ミラーである可動ミラーは、その中央近傍に設けられた駆動部位を駆動手段によって信号光伝搬方向に駆動して、全体の反射面を変形する構成がある。
【0013】
このように可動ミラーの中央近傍の部位を変位させる構成によれば、中央の駆動部位の変位に連動させることによって反射ミラーの全体の反射面を変形させて、その反射面部分のそれぞれを効率的に信号光伝搬方向について移動することができる。この場合、駆動手段によって駆動する駆動部位以外の所定の部位、例えば可動ミラーの両側の端部近傍の部位、を固定とすることが好ましい。
【0014】
また、単一の反射ミラーである可動ミラーは、その中央近傍に設けられた固定部位を固定とするとともに、両側の端部近傍にそれぞれ設けられた印加部位にモーメント印加手段によってモーメントを印加して、全体の反射面を変形する構成がある。
【0015】
あるいは、単一の反射ミラーである可動ミラーは、その中央近傍に設けられた固定部位を固定とするとともに、両側の端部近傍にそれぞれ設けられた駆動部位を駆動手段によって信号光伝搬方向に駆動して、全体の反射面を変形する構成がある。
【0016】
このように可動ミラーの端部近傍の部位を変位させる構成によれば、モーメントを印加する場合及び信号光伝搬方向に駆動する場合のいずれにおいても、可動ミラーを変形させるために印加が必要な力が小さくなり、その全体の反射面を容易に変形させることができる。
【0017】
また、単一の反射ミラーである可動ミラーは、その所定の部位を加熱手段によって加熱して変位させて、全体の反射面を変形する構成がある。
【0018】
このように可動ミラーを加熱して変形する構成によれば、加熱手段を用いて可動ミラーの反射面を変形することができるので、その構成の簡単化と分散補償器の小型化が可能となる。
【0019】
ここで、光分波手段及び光合波手段は、単一の光合分波手段からなることが好ましい。これによって、可変分散補償器の構成を簡単化することができる。
【0020】
また、単一の反射ミラーである可動ミラーが、可動ミラーに設けられた第1電極と、第1電極に対して所定の位置に設けられた第2電極との間に電圧を印加して生じる静電気力を用いて、その全体の反射面を変形することが可能に構成されていることが好ましい。
【0021】
このような構成を有する反射手段は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて作製することが可能である。また、その駆動方法については、上記のようにそれぞれ静電気力を利用して可動ミラーを駆動制御することにより、位相シフト及びそれによる分散補償の制御が高速化される。
【0022】
反射手段全体の構成については、反射手段を構成する反射ミラーの反射面の形状が、反射される周波数成分に関して略放物線状となっていることが好ましい。これにより、光伝送路で生じる分散において2次分散D(2)が支配的となっている場合に、分散補償の対象となっている周波数帯域の全体にわたって、信号光に対して良好に分散補償を実現することができる。
【0023】
また、本発明による光伝送システムは、(a)所定の周波数帯域内の周波数成分を有する信号光を伝搬する光伝送路と、(b)光伝送路上の所定位置に設置され、光伝送路を伝搬される信号光に生じる分散を補償する上記した可変分散補償器とを備えることを特徴とする。
【0024】
これにより、光ファイバ伝送路などの光伝送路を伝搬される信号光に生じる分散が高精度で制御性良く補償されて、信号光の波形劣化等が防止される光伝送システムが実現される。
【0025】
また、信号光のビットレートが10Gbps以上であることを特徴とする。あるいは、さらに、ビットレートが40Gbps以上であることを特徴とする。このような高速のビットレートでは、特に光伝送路での分散の発生が問題となるが、このような場合にも、上記した構成の可変分散補償器を適用することにより、信号光に対して充分に分散補償を行うことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面とともに本発明による可変分散補償器及び光伝送システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0027】
まず、可変分散補償器の概略構成について説明する。図1は、本発明による可変分散補償器の一実施形態を模式的に示す構成図である。本実施形態の可変分散補償器1は、入力された信号光に対して所定の位相シフトを与えて、信号光の分散を補償するものであり、光合分波器2と、反射ミラー群3とを備えて構成されている。また、その分散補償機能について、分散補償のために信号光の各周波数成分に与えられる位相シフト量が可変となっている。
【0028】
所定の周波数帯域(波長帯域)内の周波数成分(波長成分)を有し、分散補償の対象となる信号光は、可変分散補償器1の入力端1aから入力され、所定の位相シフトが与えられた後、分散補償された信号光として出力端1bから出力される。入力端1aと出力端1bとの間には、信号光が伝搬される光伝送路11が設けられている。
【0029】
光伝送路11上の所定位置には、光サーキュレータ12が設置されている。また、この光サーキュレータ12には、分散補償用の光伝送路13が接続されている。これにより、入力端1a側の光伝送路11からの分散補償前の信号光は、光サーキュレータ12を通過して光伝送路13へと出力される。また、光伝送路13からの分散補償後の信号光は、光サーキュレータ12を通過して出力端1b側の光伝送路11へと出力される。
【0030】
分散補償用の光伝送路13の光サーキュレータ12とは反対側の端部には、上記した光合分波器2と、反射ミラー群3とがこの順で設置されている。これらの光合分波器2及び反射ミラー群3によって、信号光に対して位相シフトが与えられて、その分散が補償される。
【0031】
光合分波器2は、分散補償前の信号光を入力し、所定の周波数帯域内の信号光を周波数成分毎に分波する光分波手段としての機能と、信号光の各周波数成分を合波して、分散補償後の信号光とする光合波手段としての機能とを有する単一の光合分波手段である。分散補償の対象となる信号光は、この光合分波器2において、所定の分波方向(図1中に示すν軸方向)に沿って、周波数ν(波長λ)により分波または合波される。
【0032】
また、反射ミラー群3は、光合分波器2で分波された信号光の周波数成分それぞれを反射して、各周波数成分に所定の位相シフトを与える反射手段である。位相シフトは、光合分波器2(光分波手段)から反射ミラー群3(反射手段)を介して再び光合分波器2(光合波手段)に到達するまでの光路長及び光路長差を利用して、信号光の各周波数成分に与えられる。また、この反射ミラー群3は、周波数成分それぞれに対する反射位置が信号光伝搬方向(図1中に示すd軸方向)について可変に構成されている。
【0033】
本実施形態における反射手段である反射ミラー群3は、光合分波器2で分波された信号光の各周波数成分に対応して、周波数毎に分割された複数の反射ミラー30からなる。これらの反射ミラー30は、信号光の分波方向であって信号光伝搬方向に略垂直なν軸方向を配列方向として略連続的に配列されており、これによって、分散補償を行う周波数帯域全体でそれぞれ信号光の周波数成分を反射する反射ミラー群3が構成されている。
【0034】
また、反射ミラー群3を構成している反射ミラー30のそれぞれは、反射面の形状は一定であるが、個別かつ互いに独立に信号光伝搬方向であるd軸方向について移動することが可能な可動ミラーとなっている。
【0035】
以上の構成において、入力端1aから可変分散補償器1に入力された分散補償の対象である信号光は、光伝送路11、光サーキュレータ12、及び光伝送路13を介して光合分波器2に入力されて、その周波数νによって各周波数成分に分波される。分波された信号光の各周波数成分は反射ミラー群3に向けて伝搬され、反射ミラー群3の対応する反射ミラー30により、所定の反射位置で反射される。そして、反射された各周波数成分は、再び光合分波器2で合波されて分散補償後の信号光となり、光伝送路13、光サーキュレータ12、及び光伝送路11を介して出力端1bから外部へと出力される。
【0036】
ここで、反射ミラー群3の各反射ミラー30における信号光の周波数成分の反射位置は、その周波数成分に対して与えるべき位相シフト量に基づいて決められる。そして、可動ミラーである反射ミラー30をそれぞれ駆動制御して、設定された反射位置となるように信号光伝搬方向に移動しておくことによって、全体の周波数帯域内での信号光に対する分散補償を実現する。
【0037】
次に、上記した可変分散補償器を備える光伝送システムについて説明する。図2は、本発明による光伝送システムの一実施形態を模式的に示す構成図である。
【0038】
本実施形態の光伝送システムは、信号光を送信する送信器(送信局)Tと、送信器Tから送信された信号光を伝搬する光伝送路である光ファイバ伝送路Lと、光ファイバ伝送路Lを伝搬された信号光を受信する受信器(受信局)Rとを備えて構成されている。
【0039】
光ファイバ伝送路L上の所定位置には、図1に示した構成を有する可変分散補償器1が設置されている。この可変分散補償器1は、好ましくは受信器Rに近い光ファイバ伝送路L上の位置、例えば受信器Rの直前位置、に設けられる。これにより、送信器Tから受信器Rへと光ファイバ伝送路Lを伝搬される間に信号光に累積された分散に対して、受信器Rで信号光が受信される前に、可変分散補償器1によって分散補償が行われる。
【0040】
本実施形態による可変分散補償器及び光伝送システムにおいては、光分波手段である光合分波器2で分波された信号光が、再び光合波手段である光合分波器2で合波されるまでの光路長を利用して、信号光の各周波数成分に対して位相シフトを与える。そして、各周波数成分に対する光路長及び位相シフトの設定に用いられる反射手段である反射ミラー群3について、反射ミラー群3を構成している複数の反射ミラー30による周波数成分の反射位置を、それぞれの反射ミラー30で可変としている。
【0041】
これにより、各周波数成分に対して与えられる位相シフトが可変となるため、任意の位相調整を行うことが可能となり、信号光に生じる分散を高い精度で補償することが可能となる。また、反射ミラー群3を構成している反射ミラー30それぞれによる周波数成分の反射位置を個別に制御することができるので、信号光に付与する位相シフト量を制御性良く制御して、分散補償の条件を詳細に設定または変更することが可能となる。
【0042】
さらに、反射手段のみで分散補償の制御を行っているので、光回路の構造を簡単化することが可能であり、光回路を小型化することができる。なお、このような反射手段は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて作製することが可能である。
【0043】
このような構成を有する可変分散補償器を適用した光伝送システムによれば、光ファイバ伝送路Lなどの光伝送路を伝搬される信号光に生じる分散が高精度で制御性良く補償されて、信号光の波形劣化等が確実に防止される光伝送システムが実現される。
【0044】
なお、図1に示した可変分散補償器1では、分散補償前の信号光を周波数成分に分波する光分波手段、及び周波数成分を合波して分散補償後の信号光とする光合波手段を、単一の光合分波器2としている。これによって、可変分散補償器1の構成を簡単化し、その光回路をさらに小型化することができる。ただし、これらの光分波手段及び光合波手段は、別々に構成されていても良い。
【0045】
図3は、図1に示した実施形態による可変分散補償器の具体的な構成例を示す平面図である。なお、図3においては、光伝送路11及び光サーキュレータ12等については図示せず、信号光に対して実際に分散補償を行う光合分波器2及び反射ミラー群3からなる光回路のみを示している。
【0046】
本実施例の可変分散補償器1においては、分散補償の対象となる信号光を分波または合波する光合分波器2として、基板10上に所定の導波路パターンで形成された平面導波路型光回路によるアレイ導波路型回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)2aが用いられている。
【0047】
AWG2aは、その端部が入出力ポートとなっている入出力用チャネル導波路21と、入出力用チャネル導波路21に接続された第1スラブ導波路22と、第1スラブ導波路22に接続され各々の光路長が互いに異なる複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路部23と、アレイ導波路部23に接続された第2スラブ導波路24とを有して構成されている。
【0048】
第2スラブ導波路24のアレイ導波路部23とは反対側には、さらに、複数本(n本)のチャネル導波路261〜26nからなるチャネル導波路群25が接続されている。また、チャネル導波路群25の第2スラブ導波路24とは反対側には、n本のチャネル導波路261、262、…、26nにそれぞれ対応するn個の可動反射ミラー301、302、…、30nからなる反射ミラー群3が設けられている。これらの反射ミラー301〜30nは、基板10上にチャネル導波路群25を横切るように形成された溝部31内に、対応するチャネル導波路261〜26nを伝搬されたきた信号光成分を反射するようにそれぞれ設置されている。
【0049】
溝部31は、具体的には、チャネル導波路群25のチャネル導波路261〜26nでの信号光伝搬方向に略垂直で信号光の分波方向となっている方向に沿って形成されている(図1参照)。そして、反射ミラー群3の反射ミラー301〜30nは、この溝部31内で、それぞれ対応するチャネル導波路261〜26nに対向する位置(チャネル導波路のコア部に対向する位置)に設置されている。
【0050】
以上の構成において、AWG2aの入出力ポートから入出力用チャネル導波路21に信号光が入力されると、第1スラブ導波路22、アレイ導波路部23、及び第2スラブ導波路24を順次に経て導波される間に信号光が周波数毎(波長毎)に分波される。分波された信号光の各周波数成分は、チャネル導波路群25のチャネル導波路261〜26nにそれぞれ分割されて入力される。
【0051】
チャネル導波路261〜26nのそれぞれを伝搬された周波数成分は、反射ミラー群3の対応する可動反射ミラー301〜30nによって反射され、再びチャネル導波路261〜26nのそれぞれを逆方向に伝搬される。そして、第2スラブ導波路24、アレイ導波路部23、及び第1スラブ導波路22を順次に経て導波される間に各周波数成分が合波されて、入出力用チャネル導波路21を介して分散補償された信号光として入出力ポートから出力される。
【0052】
ここで、本実施例における反射手段である反射ミラー群3は、上述したように、その反射面を個別に移動することが可能な複数の可動反射ミラー30によって構成されている。これらの可動反射ミラー30の駆動方法としては、可動ミラー30に設けられた電極(第1電極)と、第1電極に対して所定の位置に設けられた電極(第2電極)との間に電圧を印加して生じる静電気力を用いて、その駆動制御を行うことが好ましい。これにより、反射ミラーでの反射位置、及びそれによって設定される位相シフト量、分散補償の条件の制御を容易かつ高速に行うことができる。
【0053】
図4は、図3に示した可変分散補償器での反射ミラー群に用いられる可動反射ミラーの一例を示す構成図である。この反射ミラー群3は、上記のように溝部31内に配列された複数の可動反射ミラー30を有する。また、隣接する可動反射ミラー30の間には、それぞれガイドレール32が設けられており、可動反射ミラー30の移動方向がガイドされている。
【0054】
それぞれの可動反射ミラー30は、好ましくは絶縁体からなるミラー支持部33によって支持されている。ミラー支持部33は、反射ミラー30とは反対側の端部を支点として可動となっており、その一方側には、第1電極である電極34が形成されている。また、ミラー支持部33を挟んで電極34の反対側に、第2電極である電極35が設けられている。この電極35は、基板10に対して固定されている。
【0055】
ミラー支持部33に設けられた電極34と、基板10に固定の電極35との間には、電圧を可変に印加する可変電源が接続されている。そして、この電極34と電極35との間の印加電圧を変えると、発生する静電気力またはその変化によってミラー支持部33にたわみが生じ、このたわみに可動反射ミラー30が連動して、ガイドレール32によってガイドされた移動方向に移動する。
【0056】
図5は、可動反射ミラーの他の例を示す構成図である。この反射ミラー群3は、溝部31内に配列された可動反射ミラー30、ガイドレール32、及びミラー支持部33については、図4の構成例と同様であるが、反射ミラー30を駆動するための電極の構造が異なっている。
【0057】
ミラー支持部33には、その両側にクシ歯型電極36が形成されている。これに対して、ミラー支持部33の両側に、それぞれ同様のクシ歯型電極37、38が設けられている。そして、これらの電極36、37、38にそれぞれ印加される電圧を変えることによって、可動反射ミラー30が移動する。このようにクシ歯型電極を用いた場合、反射ミラー30を効率的に精度良く駆動することができる。
【0058】
光伝送システムにおいて信号光に生じる分散、及び可変分散補償器による分散補償について、図1及び図2を参照しつつさらに説明する。なお、以下においては、分散補償の対象である信号光の光強度を、その電界の振幅|E|の値またはその二乗値によって表すこととする。
【0059】
光伝送システムにおいて光ファイバ伝送路Lを伝搬される信号光は、図2に示すように、送信器Tにおいて、その光強度|E|が所定の信号波形Aを有するように生成されて、光伝送システムに対する入力信号光として送信される。この入力信号光は、信号光周波数ν0(信号光波長λ0=c/ν0)を中心周波数として、所定の信号光周波数帯域(波長帯域)に広がった信号光成分を有している。
【0060】
このような信号光が光ファイバ伝送路Lを伝搬されると、光ファイバ伝送路Lでの分散が信号光に累積される。そして、伝搬後の信号光では、図2に信号波形Bとして示すように、その光強度|E’|の信号波形が入力信号光の信号波形Aから歪む波形劣化が発生する。
【0061】
この波形劣化を生じた信号光を分散補償の対象として、可変分散補償器1において、光ファイバ伝送路Lで累積した分散による位相シフトを打ち消すように、信号光の各周波数成分に分散補償のための位相シフトを与えて、その分散を補償する。これにより、光ファイバ伝送路Lを伝搬されることによる分散の影響が極力除去された光強度|E”|の信号波形Cを有する信号光が得られる。
【0062】
詳述すると、光ファイバ伝送路Lに2次分散(分散)D(2)及び3次分散(分散スロープ)D(3)が存在する場合、波長λ(=c/ν)の信号光成分に対する全分散Dの値は、群遅延時間をτとして、次式
によって表される。ただし、λ0は上記した信号光の中心波長である。
この全分散Dにおいて2次分散D(2)が支配的であるとすると、波長λの信号光成分に対する群遅延時間τは、
τ(λ)=D(2)(λ−λ0)
となる。このとき、光ファイバ伝送路Lを伝搬された信号光の各信号光成分に発生する分散による位相シフトφは、中心周波数ν0(中心波長λ0)での位相シフトを0として、以下のようになる。
φ=−πcD(2)((ν−ν0)/ν0)2
また、位相シフトφの変化率は、
である。すなわち、光ファイバ伝送路Lを伝搬される信号光には、分散D(2)により、中心周波数ν0を中心として放物線状に変化する位相シフトが発生する。
【0063】
このような位相シフトが発生した信号光に対して、図1及び図3に示した可変分散補償器1によって分散補償を行う。ここで、図1に示すように、分散補償を行う周波数帯域となる反射ミラー群3の全体での周波数帯域全幅を2δν、反射ミラー群3に含まれる複数の反射ミラー30のそれぞれでの周波数幅である分散補償分解能をΔνとする。
【0064】
また、反射ミラー群3に含まれる反射ミラー301〜30nのそれぞれについて、反射ミラー30iによって反射される信号光の周波数成分の中心周波数をνi、信号光の各周波数成分に対して分散補償のために与えられる位相シフトをψとする。
【0065】
反射ミラー301〜30nのそれぞれによる各周波数成分の反射位置は、反射ミラー30iでの反射によって信号光の周波数成分に与えられる位相シフトがψ=−φ(νi)となって、反射ミラー30iの中心周波数νiで光ファイバ伝送路Lでの位相シフトφが打ち消されるように設定される。
【0066】
反射ミラー30それぞれに対する反射位置が設定されたら、各可動反射ミラー30を設定した反射位置となるように移動する。これによって、光伝送システムでの分散を補償可能な構成が実現される。位相シフトψ=−φ(νi)を与えるための可動反射ミラー30iの位置d(図1参照)は、光合分波器2と反射ミラー群3との間の媒質の屈折率をnとして、次式
d=cφ(νi)/4πnνi
で求められる。
【0067】
ここで、上記した例のように、反射手段である反射ミラー群3が分割された複数の反射ミラー30から構成されている場合、各反射ミラー30の範囲内では、信号光の周波数成分に対して与えられる位相シフト量ψが一定となる。したがって、信号光に対して有効に分散補償を行うためには、1個の反射ミラー30に対応する周波数範囲Δν内で、信号光に発生している位相シフトφ(ν)が大きく変化しないように、反射ミラー群3での分散補償の周波数分解能Δνを設定することが好ましい。具体的には、位相シフトφの変化率dφ/dνに対して、周波数分解能Δνが次式の条件を満たすことが好ましい。
|Δν×(dφ/dν)|≦π
【0068】
全分散Dにおいて2次分散D(2)が支配的であるとすると、位相シフトφの変化率の絶対値|(dφ/dν)|は、周波数ν=ν0±δν、すなわち中心周波数ν0から全幅2δνの半分の周波数δνだけ離れた、周波数帯域の端となる周波数成分において最大となり、その最大値は、
である。したがって、上記した好適な条件
を満たす補償可能な分散D(2)の最大値は、
となる。
【0069】
例えば、分散補償の対象となる信号光について、その中心周波数をν0=189.1THz(中心波長をλ0=1585nm)、周波数帯域の半幅をδν=50GHz、1個の反射ミラー当りの周波数範囲である周波数分解能をΔν=5GHzとすると、補償可能な最大分散は|D(2)|max=240ps/nmとなる。また、同様の条件で、周波数帯域の半幅をδν=15GHz、周波数分解能をΔν=3GHzとすると、補償可能な最大分散は|D(2)|max=1300ps/nmとなる。
【0070】
なお、上記の式より、補償可能な最大分散|D(2)|maxの値は、周波数分解能Δνを細かくすることによって大きくなることがわかる。この周波数分解能Δνについては、可変分散補償器の具体的な構成、例えば、図3に示した可変分散補償器1でのAWG2aによる信号光の分波条件、及び基板10上に形成可能な分割可動ミラーの幅などを考慮して、好適な値に設定することが好ましい。
【0071】
ここで、図3に示したAWG2aを含む可変分散補償器1の具体的な構成例を示しておく。第2スラブ導波路24に接続されているチャネル導波路群25での隣接するチャネル導波路同士の間隔をΔx、隣接するチャネル導波路を伝搬される信号光の周波数成分同士の波長間隔をΔλとすると、次式
Δx/Δλ
=NcfΔL/nsΔxλ0
が成り立つ。ただし、Ncは導波路の群屈折率、fはスラブ導波路の長手方向の長さ、ΔLはアレイ導波路部でのチャネル導波路同士の光路長差、nsはスラブ導波路の実効屈折率である。これらのうち、群屈折率Nc及び実効屈折率nsは、それぞれ1.5程度である。
【0072】
これに対して、信号光の中心波長をλ0=1550nm、分散補償を行う周波数帯域を2δν=100GHz(波長帯域0.8nmに相当)とし、この周波数帯域を10分割して周波数分解能をΔν=10GHzとする。このとき、波長分解能は、Δλ=0.08nmである。また、チャネル導波路同士の間隔をΔx=20μmとする。
【0073】
これらの数値を代入すると、可変分散補償器1のAWG2aが満たすべき構成条件として、
fΔL=7.75×10-6m
が得られる。この条件は、例えば、スラブ導波路をf=30mmとし、アレイ導波路部をΔL=258μmとした構成によって満たすことが可能である。
【0074】
なお、分散補償の周波数帯域2δνについては、分散補償の対象となる信号光の信号光成分が分布している周波数範囲を充分に含むように設定することが好ましい。
【0075】
また、分散補償の対象となる信号光が、互いに異なる信号光波長を有する複数の信号光からなる多波長信号光であれば、多波長信号光に含まれる単一の信号光に対して分散補償を行う場合には、例えば、隣接する信号光同士の周波数間隔を周波数全幅2δνとすることができる。また、周波数全幅2δνを信号光同士の周波数間隔よりも大きく(例えば整数倍)すれば、多波長信号光に含まれる複数の信号光に対する分散補償が可能な構成となる。
【0076】
また、信号光のビットレート(変調速度)については、ビットレートが10Gbps以上であることが好ましく、あるいは、さらに、40Gbps以上であることが好ましい。このような高速のビットレートでは、特に光伝送路での分散の発生が問題となるが、このような場合にも、上記した構成の可変分散補償器を適用することにより、信号光に対して充分な精度で良好に分散補償を行うことができる。ただし、可変分散補償器1は、上記より小さいビットレートの信号光に対しても有効に適用することができることは言うまでもない。
【0077】
また、反射手段を構成する反射ミラーの配列または反射面の形状が、反射される周波数成分に関して略放物線状となっていることが好ましい。これにより、光伝送路で生じる分散において2次分散D(2)が支配的となっている場合に、分散補償の対象となっている周波数帯域の全体にわたって、信号光に対して良好に分散補償を実現することができる。
【0078】
以上の構成による光伝送システム及び可変分散補償器における、光伝送路での分散による信号光の波形劣化、及び信号光に対する分散補償について、具体的な条件を適用してシミュレーションを行い、その効果の確認を行った。
【0079】
分散補償の対象となる信号光については、その中心周波数をν0=189.1THz(中心波長をλ0=1585nm)とし、また、光の変調方式をNRZ、変調速度(ビットレート)Mを10Gbpsまたは40Gbpsとした。また、信号光の光パルスの波形については、non-chirp の super-Gaussian 形状とした。このとき、1ビットの信号の継続時間を2t0(=1/M)とすると、信号光の信号波形は、
によって与えられる。ただし、mは光パルス形状を定めるパラメータで、ここではm=2とした。
【0080】
また、実際に分散補償を行う信号光としては、29=512ビットのランダム符号を伝送させ、得られる信号波形をアイパターンで表示することによって評価した。
【0081】
まず、ビットレートをM=10Gbpsとした場合の分散補償の例を示す。このビットレート10Gbpsでは、信号の周期となるクロックは、100psである。
【0082】
図6は、10Gbpsの光伝送システムを伝送される信号光の一例を示すグラフであり、図6(a)は送信器の直後での入力信号光の信号波形(図2における信号波形Aを参照)を、また、図6(b)は分散補償前(分散補償なし)での出力信号光の信号波形(図2における信号波形Bを参照)を示している。
【0083】
図6(a)に示す信号波形を有する入力信号光は、信号光周波数ν0=189.1THzを中心として、およそ±15GHzの周波数範囲での周波数成分を有している。これに対して、光伝送路を伝搬されることによって信号光に発生する分散をD(2)=+1200ps/nm、D(3)=0ps/nm2とすると、伝搬後の出力信号光では、図6(b)に示すように、分散による波形劣化を生じた信号波形となる。
【0084】
図7は、10Gbpsの光伝送システムを伝送される信号光に対する分散補償の一例を示すグラフであり、図7(a)は信号光の位相シフトを、また、図7(b)は分散補償後(分散補償あり)での出力信号光の信号波形(図2における信号波形Cを参照)を示している。
【0085】
ここで、図7(a)において、横軸は、中心周波数ν0=189.1THzに対する相対周波数ν−ν0(GHz)を示している。また、縦軸は、分散D(2)=+1200ps/nmに対応する位相シフト変化率dφ/dν(rad/GHz)、及び位相シフトφ、−ψ(rad)を示している。
【0086】
図6(a)に示した入力信号光の各周波数成分に対し、上記した光伝送路での分散D(2)によって、図6(b)に示した伝搬後の出力信号光では、図7(a)に示す放物線状の位相シフトφが発生している。これに対して、本実施例では、周波数帯域の半幅をδν=15GHz、周波数分解能をΔν=3GHzとして分散補償を行った。
【0087】
このとき、可変分散補償器1では、信号光の各周波数成分に対して、図7(a)中に−ψのグラフで示す位相シフトψが与えられる。この周波数幅Δν=3GHzでの階段状の位相シフトψのグラフは、反射ミラー群3における複数の反射ミラー30の配列に対応している。すなわち、位相シフトψの横軸方向は、反射ミラー30のν軸方向についての位置に対応している。また、縦軸方向は、反射ミラー30のd軸方向についての位置に対応している(図1参照)。
【0088】
反射ミラー群3は、図7(a)に示すように、それぞれの反射ミラー30iで反射される周波数幅Δνの周波数成分に対し、その中心周波数νiで2つの位相シフトが−ψ=φ(νi)と一致するように構成されている。このような構成により、光伝送路で信号光に生じた位相シフトφが可変分散補償器1で与えられる位相シフトψによって極力打ち消される。そして、図7(b)に分散補償後の出力信号光の信号波形を示すように、信号光の分散が充分に補償される。
【0089】
図8は、10Gbpsの光伝送システムを伝送される信号光に対する分散補償の他の例を示すグラフであり、図8(a)は信号光の位相シフトを、また、図8(b)は分散補償後での出力信号光の信号波形を示している。なお、図8(a)のグラフにおいては、位相シフト変化率dφ/dν及び位相シフトφは、図7(a)に示したものと同一である。
【0090】
図6(a)に示した入力信号光の各周波数成分に対し、上記した光伝送路での分散D(2)によって、図6(b)に示した伝搬後の出力信号光では、図8(a)に示す放物線状の位相シフトφが発生している。これに対して、本実施例では、周波数帯域の半幅をδν=15GHz、周波数分解能をΔν=1GHzとして分散補償を行った。
【0091】
このとき、可変分散補償器1では、信号光の各周波数成分に対して、図8(a)中に−ψのグラフで示す位相シフトψが与えられる。この周波数幅Δν=1GHzでの階段状の位相シフトψのグラフは、反射ミラー群3における複数の反射ミラー30の配列に対応している。
【0092】
反射ミラー群3は、図8(a)に示すように、それぞれの反射ミラー30iで反射される周波数幅Δνの周波数成分に対し、その中心周波数νiで2つの位相シフトが−ψ=φ(νi)と一致するように構成されている。このような構成により、光伝送路で信号光に生じた位相シフトφが可変分散補償器1で与えられる位相シフトψによって極力打ち消される。そして、図8(b)に分散補償後の出力信号光の信号波形を示すように、信号光の分散が充分に補償される。特に、本実施例では、周波数分解能Δνを図7に示した例での3GHzよりも小さい1GHzとすることによって、分散補償の精度が向上されている。
【0093】
次に、ビットレートをM=40Gbpsとした場合の分散補償の例を示す。このビットレート40Gbpsでは、信号の周期となるクロックは、25psである。
【0094】
図9は、40Gbpsの光伝送システムを伝送される信号光の一例を示すグラフであり、図9(a)は送信器の直後での入力信号光の信号波形を、また、図9(b)は分散補償前での出力信号光の信号波形を示している。
【0095】
図9(a)に示す信号波形を有する入力信号光は、信号光周波数ν0=189.1THzを中心として、およそ±50GHzの周波数範囲での周波数成分を有している。これに対して、光伝送路を伝搬されることによって信号光に発生する分散をD(2)=+200ps/nm、D(3)=0ps/nm2とすると、伝搬後の出力信号光では、図9(b)に示すように、分散による波形劣化を生じた信号波形となる。
【0096】
図10は、40Gbpsの光伝送システムを伝送される信号光に対する分散補償の一例を示すグラフであり、図10(a)は信号光の位相シフトを、また、図10(b)は分散補償後での出力信号光の信号波形を示している。
【0097】
ここで、図10(a)において、横軸は、中心周波数ν0=189.1THzに対する相対周波数ν−ν0(GHz)を示している。また、縦軸は、分散D(2)=+200ps/nmに対応する位相シフト変化率dφ/dν(rad/GHz)、及び位相シフトφ、−ψ(rad)を示している。
【0098】
図9(a)に示した入力信号光の各周波数成分に対し、上記した光伝送路での分散D(2)によって、図9(b)に示した伝搬後の出力信号光では、図10(a)に示す放物線状の位相シフトφが発生している。これに対して、本実施例では、周波数帯域の半幅をδν=50GHz、周波数分解能をΔν=2GHzとして分散補償を行った。
【0099】
このとき、可変分散補償器1では、信号光の各周波数成分に対して、図10(a)中に−ψのグラフで示す位相シフトψが与えられる。この周波数幅Δν=2GHzでの階段状の位相シフトψのグラフは、反射ミラー群3における複数の反射ミラー30の配列に対応している。
【0100】
反射ミラー群3は、図10(a)に示すように、それぞれの反射ミラー30iで反射される周波数幅Δνの周波数成分に対し、その中心周波数νiで2つの位相シフトが−ψ=φ(νi)と一致するように構成されている。このような構成により、光伝送路で信号光に生じた位相シフトφが可変分散補償器1で与えられる位相シフトψによって極力打ち消される。そして、図10(b)に分散補償後の出力信号光の信号波形を示すように、信号光の分散が充分に補償される。
【0101】
上述した実施形態及び実施例では、図1及び図3に示したように、反射手段として複数の可動反射ミラー30からなる反射ミラー群3を用いている。これに対して、反射手段として、複数の反射ミラーに分割されていない単一の可動反射ミラーを用いることも可能である。
【0102】
図11は、可変分散補償器での反射手段として単一の反射ミラーを用いた場合における可動反射ミラーについて示す図であり、図11(a)はその形状及び駆動方法を示す模式図、図11(b)は具体的な構成例を示す図である。
【0103】
図11に示す反射手段4は、単一の可動反射ミラー40からなる。この可動反射ミラー40は、図11(a)に示すように、その全体の反射面の曲面形状を変形(例えば放物線状の形状に変形)することにより、信号光の各周波数成分に対応する反射面部分のそれぞれを信号光伝搬方向について移動することが可能となっている。これにより、分割された複数の可動反射ミラー30からなる反射ミラー群3と同様に、可変に精度良く分散補償を行うことができる。
【0104】
このような単一の可動反射ミラー40を有する反射手段4の具体的な構成としては、例えば図11(b)に示す構成例がある。この反射手段4では、ポリシリコン層41上に、可動反射ミラーとなる金属層40が形成されている。また、この金属層40は、可動ミラーに設けられた第1電極としても機能する。
【0105】
ポリシリコン層41の金属層40とは反対側には、シリコン層44上に形成された金属層43が配置されている。この金属層43は、第1電極に対して所定の位置に設けられた第2電極となっている。また、ポリシリコン層41と金属層43とは、酸化シリコン層42によって隔てられている。この酸化シリコン層42は、ポリシリコン層41及び金属層43の端部に対して設けられている。
【0106】
可動反射ミラーとして機能するとともに第1電極である金属層40と、第2電極である金属層43との間には、電圧を可変に印加する可変電源が接続されている。そして、この金属層40と金属層43との間の印加電圧を変えると、発生する静電気力またはその変化によって酸化シリコン層42が設けられていない中央部分の金属層40及びポリシリコン層41にたわみが生じて反射面の曲面形状が変形し、反射面部分のそれぞれが移動する。このような構成の反射手段4は、例えば、光合分波器2として図3に示した実施形態と同様にAWGを用いた場合には、その第2スラブ導波路の出力端に沿って設置することが好ましい。
【0107】
図12は、単一の反射ミラーを用いた場合における可動反射ミラーの他の構成例を示す図である。この反射手段4では、図11に示した反射手段と同様に、単一の可動反射ミラー40が用いられており、その全体の反射面の曲面形状を変形することによって、反射面部分のそれぞれを信号光伝搬方向について移動する構成となっている。
【0108】
図12(a)に示す反射手段4の可動反射ミラー40では、その両側の端部近傍の部位401、402を固定部位とし、中央近傍の部位403を駆動手段によって信号光伝搬方向に駆動することが可能な駆動部位としている。そして、この駆動部位403に対して、駆動部位403を信号光伝搬方向に駆動するための駆動手段であるコムドライブ45が接続されている。
【0109】
本実施例におけるコムドライブ45は、クシ歯型電極を7段に組み合わせた構造を有している。可動反射ミラー40を信号光伝搬方向に駆動させる駆動用電極46には、駆動方向の幅w0の枠状電極部460に対して、7段のクシ歯型電極部461〜467が設けられている。この駆動用電極46は、可動反射ミラー40で反射される信号光の伝搬方向となる可動反射ミラー40に略垂直な方向を駆動方向として設置されており、接続部468を介して可動反射ミラー40の駆動部位403に接続されている。
【0110】
これらの駆動用電極46のクシ歯型電極部461〜467に対して、7段のクシ歯型電極471〜477が、それぞれ対応するクシ歯型電極部461〜467と相互に入り組むように設けられている。これらのクシ歯型電極471〜477は、可動反射ミラー40及び各電極が設けられる基板等に固定されており、また、例えば、互いに同電位となるように電気的に接続されている。
【0111】
以上の電極構成を有するコムドライブ45において、クシ歯型電極部461〜467を含む駆動用電極46と、クシ歯型電極471〜477との間に電圧を印加すると、固定されているクシ歯型電極471〜477に対して、駆動用電極46が静電気力によって信号光伝搬方向である駆動方向に移動する。このとき、駆動用電極46と接続部468を介して接続されている可動反射ミラー40の中央近傍の駆動部位403が信号光伝搬方向に駆動されて、その全体の反射面が変形する。
【0112】
このように、可動反射ミラー40の中央近傍の部位を駆動して変位させる構成によれば、中央の駆動部位403の変位に連動させることによって反射ミラー40の全体の反射面を変形させて、その反射面部分のそれぞれを効率的に信号光伝搬方向について移動することができる。
【0113】
なお、可動反射ミラー40の中央近傍の部位403を駆動部位とする場合には、駆動部位403以外の所定の部位を固定とする必要がある。この固定する部位については、例えば、図12(a)に示す構成例のように、両側の端部近傍の部位401、402を固定部位とすることが好ましい。あるいは、端部近傍以外の部位、例えば中央部と端部の中間の部位などを固定しても良い。
【0114】
図12(b)に示す駆動用電極46のクシ歯型電極部461及び対応するクシ歯型電極471の部分拡大図を参照して、図12(a)に示したコムドライブ45の具体的な構成の一例を説明する。まず、駆動用電極46の全体としては、枠状電極部460の長手方向の幅をw0=610μmとし、また、図12(a)に示したように7段の電極構成とした。
【0115】
また、各クシ歯型電極の構成等については、クシ歯型電極の幅をw2=10μm、駆動用電極46が初期位置にある状態でのクシ歯型電極間の駆動方向でのギャップをg1=60μm、駆動方向に直交する方向でのクシ歯間のギャップをg2=10μm、クシ歯型電極同士のオーバーラップ部分の長さをt=10μm、各電極の高さを50μm、クシ歯型電極の本数を19とした。また、可動反射ミラー40については、中央の駆動部位403から端部の固定部位401または402までの距離を100μm、厚さを2.5μmとした。
【0116】
以上の構成からなるコムドライブ45において、駆動用電極46とクシ歯型電極471〜477との間に100Vの電圧を印加したところ、駆動用電極46及び電極46に接続された可動反射ミラー40の駆動部位403の変位は0.2μmであった。可動反射ミラー40は、この駆動部位403の変位によってたわみを生じ、これによって全体の反射面が変形する。
【0117】
図13は、単一の反射ミラーを用いた場合における可動反射ミラーの他の構成例を示す図である。この反射手段4では、図11に示した反射手段と同様に、単一の可動反射ミラー40が用いられており、その全体の反射面の曲面形状を変形することによって、反射面部分のそれぞれを信号光伝搬方向について移動する構成となっている。
【0118】
図13に示す反射手段4の可動反射ミラー40は、その中央近傍の部位403を固定部位とし、両側の端部近傍の部位401、402を、それぞれ変位させることが可能な部位としている。本実施例では、これらの部位401、402を印加部位とするとともに、印加部位401、402のそれぞれに対して、モーメントを印加することによって印加部位401、402を変位させるモーメント印加手段であるモーメント印加機構51、52が接続されている。
【0119】
これらのモーメント印加機構51、52には、可動反射ミラー40の印加部位401、402に接続されている端部とは反対側の端部に、それぞれコムドライブ53、54が接続されている。これらのコムドライブは、それぞれ図12(a)に示すコムドライブ45と同様の構成を有するものであり、図13においては、そのモーメント印加機構51、52への接続位置及び駆動方向を模式的に示してある。
【0120】
以上の構成において、コムドライブ53、54によってモーメント印加機構51、52の端部が駆動されると、印加機構51、52の全体が移動または変形する。このとき、これらのモーメント印加機構51、52が接続されている可動反射ミラー40の印加部位401、402にモーメントが印加されてそれらの部位が変位し、それに連動して可動反射ミラー40の全体の反射面が変形する。
【0121】
このように、可動反射ミラー40の端部近傍の部位を変位させる構成によれば、可動ミラーを変形させるために印加が必要な力が小さくなり、その全体の反射面を容易に変形させることができる。モーメント印加機構51、52を駆動するコムドライブ53、54として、図12(a)に示したものと同様の構成を有するコムドライブを図13に示した構成の反射手段4に適用して、可動反射ミラー40の変位について調べたところ、15Vの電圧を印加(30μNの力の印加に相当)したときに、可動反射ミラー40の印加部位401、402の変位はそれぞれ4μmであった。
【0122】
図14は、単一の反射ミラーを用いた場合における可動反射ミラーの他の構成例を示す図である。この反射手段4では、図11に示した反射手段と同様に、単一の可動反射ミラー40が用いられており、その全体の反射面の曲面形状を変形することによって、反射面部分のそれぞれを信号光伝搬方向について移動する構成となっている。
【0123】
図14に示す反射手段4の可動反射ミラー40は、その両側の端部近傍の部位401、402を固定部位としている。そして、可動反射ミラー40の所定の部位(一部分または全体の部位)に対して、図14に模式的に示すように、可動反射ミラー40を加熱するための加熱手段50が設置されている。
【0124】
以上の構成において、加熱手段50によって可動反射ミラー40の一部分または全体の部位が加熱されると、可動反射ミラー40が熱膨張等によって変形し、その全体の反射面が変形する。
【0125】
このように、可動反射ミラー40を加熱して変形する構成によれば、加熱手段を用いて可動ミラーの反射面を変形することができるので、その構成の簡単化と分散補償器の小型化が可能となる。例えば、厚さ2.5μmのSiのビームにΔt=300℃の熱を加えたところ、可動反射ミラー40の中央近傍の部位で、4μmの変位が得られた。
【0126】
ここで、可動反射ミラー40の両側の端部近傍の部位を固定して反射面を変形する構成と、可動反射ミラー40の中央近傍の部位を固定して反射面を変形する構成とを比較すると、中央近傍の部位を固定して端部近傍の部位を駆動する構成の方が、反射ミラー40に印加する力が小さくなる。
【0127】
すなわち、図15(a)及び(b)に示すように、同様の形状を有する可動反射ミラー40に対して、その両側の端部近傍の部位401、402を固定した場合と、中央近傍の部位403を固定した場合とを比較すると、端部近傍の部位401、402を固定した構成(図15(a))では、その中央近傍の部位を5μm変位させるのにf0=8.7×104μNの力が必要であった。
【0128】
これに対して、中央近傍の部位403を固定した構成(図15(b))では、端部近傍の部位に対して、加えた力の合計が上記の例と等しくなるようにそれぞれf1=f2=f0/2=4.35×104μNの力を加えたときに、それらの端部近傍の部位の変位は約4倍の19.6μmであった。また、可動反射ミラー40の変位を上記と同様に5μmとすると、端部近傍の部位に加える力の合計は約2×104μNと約1/4の力となった。
【0129】
このように、可動ミラーの端部近傍の部位を駆動する構成によれば、モーメントを印加する構成及び信号光伝搬方向に駆動する構成のいずれにおいても、可動ミラーを駆動するために印加が必要な力が小さくなり、その全体の反射面を容易に変形させることができる。
【0130】
図16は、単一の反射ミラーを用いた場合における可動反射ミラーについて、その中央近傍の部位を固定したときの構成例を示す図である。この反射手段4は、単一の可動反射ミラー40と、枠状電極部560とクシ歯型電極部561〜567からなる駆動用電極56及びクシ歯型電極571〜577を含むコムドライブ55とを有し、端部近傍の部位を固定した例について図12(a)に示した反射手段と類似の構成となっている。
【0131】
図16に示す反射手段4の可動反射ミラー40では、その中央近傍の部位403を固定部位とし、両側の端部近傍の部位401、402を駆動手段によって信号光伝搬方向に駆動することが可能な駆動部位としている。そして、これらの駆動部位401、402に対して、それぞれ接続部568、569を介して、駆動部位401、402を信号光伝搬方向に駆動するための駆動手段である上記したコムドライブ55が接続されている。
【0132】
以上の構成において、クシ歯型電極部561〜567を含む駆動用電極56と、クシ歯型電極571〜577との間に電圧を印加すると、固定されているクシ歯型電極571〜577に対して、駆動用電極56が静電気力によって信号光伝搬方向である駆動方向に移動する。このとき、駆動用電極56と接続部568、569を介して接続されている可動反射ミラー40の端部近傍の駆動部位401、402がそれぞれ信号光伝搬方向に駆動されて、その全体の反射面が変形する。このように可動反射ミラー40の端部近傍の駆動部位401、402を駆動する構成によれば、上述したように、比較的小さい力で反射面を変形させることができる。
【0133】
本発明による可変分散補償器、及びそれを備える光伝送システムは、上述した実施形態及び実施例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、信号光の分波及び合波を行う光合分波器としては、AWGに限らず、様々なものを用いて良く、また、光分波器及び光合波器を別々に設けても良い。また、信号光の分波については、反射手段の構成等に応じて、複数の周波数成分に分割されるように分波しても良いし、あるいは、周波数によってスペクトル状に連続的に分波しても良い。
【0134】
図17は、可変分散補償器の他の実施形態を模式的に示す構成図である。本実施形態では、分散補償用の光ファイバ伝送路13からの信号光は、光合分波手段である回折格子2bに入力して分波され、反射手段5において周波数成分毎に反射される。そして、反射された各周波数成分は、再び回折格子2bで合波されて分散補償後の信号光となり、光ファイバ伝送路13へと入力される。
【0135】
図18は、可変分散補償器の他の実施形態を模式的に示す構成図である。本実施形態では、光合分波手段として、その下面側に2つの回折格子2d、2eが形成された酸化シリコン(SiO2)プレート2cを用いている。入力用の光ファイバ伝送路14からの信号光は、プレート2cに上面側から入射された後、光分波手段である回折格子2dに入力して分波され、反射手段6において周波数成分毎に反射される。そして、反射された各周波数成分は、光合波手段である回折格子2eで合波されて分散補償後の信号光となり、プレート2cの上面を通過して出力用の光ファイバ伝送路15へと入力される。
【0136】
これらの構成例以外にも、光分波手段、反射手段、及び光合波手段、あるいはそれらの組み合わせについて、それぞれ様々な形態のものを適用することが可能である。
【0137】
【発明の効果】
本発明による可変分散補償器及び光伝送システムは、以上詳細に説明したように、次のような効果を得る。すなわち、光分波手段から反射手段を介して光合波手段に到達するまでの光路長差を利用して、信号光の各周波数成分に対して位相シフトを与えるとともに、各周波数成分に対する反射位置が可変な反射手段を用いて位相シフトを可変とした可変分散補償器によれば、信号光に生じる分散を高い精度で制御性良く補償することが可能となる。また、反射手段のみで分散補償を制御しているので、光回路の構造を簡単化することが可能であり、したがって、光回路を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】可変分散補償器の一実施形態を模式的に示す構成図である。
【図2】光伝送システムの一実施形態を模式的に示す構成図である。
【図3】図1に示した実施形態による可変分散補償器の具体的な構成例を示す平面図である。
【図4】可動反射ミラーの一例を示す構成図である。
【図5】可動反射ミラーの他の例を示す構成図である。
【図6】10Gbpsの光伝送システムでの(a)入力信号光、及び(b)分散補償前の出力信号光の一例を示すグラフである。
【図7】10Gbpsの光伝送システムでの(a)信号光の位相シフト、及び(b)分散補償後の出力信号光の一例を示すグラフである。
【図8】10Gbpsの光伝送システムでの(a)信号光の位相シフト、及び(b)分散補償後の出力信号光の他の例を示すグラフである。
【図9】40Gbpsの光伝送システムでの(a)入力信号光、及び(b)分散補償前の出力信号光の一例を示すグラフである。
【図10】40Gbpsの光伝送システムでの(a)信号光の位相シフト、及び(b)分散補償後の出力信号光の一例を示すグラフである。
【図11】可動反射ミラーの他の例を示す図である。
【図12】可動反射ミラーの他の例を示す構成図である。
【図13】可動反射ミラーの他の例を示す構成図である。
【図14】可動反射ミラーの他の例を示す構成図である。
【図15】可動反射ミラーの駆動方法について説明する図である。
【図16】可動反射ミラーの他の例を示す構成図である。
【図17】可変分散補償器の他の実施形態を模式的に示す構成図である。
【図18】可変分散補償器の他の実施形態を模式的に示す構成図である。
【符号の説明】
1…可変分散補償器、1a…入力端、1b…出力端、10…基板、11…光伝送路、12…光サーキュレータ、13…光伝送路、T…送信器、R…受信器、L…光ファイバ伝送路、
2…光合分波器、2a…アレイ導波路型回折格子(AWG)、21…入出力用チャネル導波路、22…第1スラブ導波路、23…アレイ導波路部、24…第2スラブ導波路、25…チャネル導波路群、261〜26n…チャネル導波路、
3…反射ミラー群、30、301〜30n…可動反射ミラー、31…溝部、32…ガイドレール、33…ミラー支持部、34〜38…電極、
4…反射手段、40…可動反射ミラー、41…ポリシリコン層、42…酸化シリコン層、43…金属層、44…シリコン層、45、53、54、55…コムドライブ、50…加熱手段、51、52…モーメント印加機構。
Claims (5)
- 信号光に位相シフトを与えて、前記信号光の分散を補償する可変分散補償器であって、
分散補償の対象となる信号光を入力し、所定の周波数帯域内の前記信号光を周波数成分毎に分波する光分波手段と、
前記光分波手段で分波された前記周波数成分それぞれを反射して、各周波数成分に所定の位相シフトを与えるとともに、前記周波数成分それぞれに対する反射位置が信号光伝搬方向について可変に構成された反射手段と、
前記反射手段で反射された前記周波数成分を合波して、分散補償された信号光とする光合波手段とを備え、
前記反射手段は単一の反射ミラーからなり、前記単一の反射ミラーは、その全体の反射面を変形することにより、前記周波数成分に対応する反射面部分のそれぞれを前記信号光伝搬方向について移動することが可能な可動ミラーであり、
前記単一の反射ミラーである前記可動ミラーは、その中央近傍に設けられた固定部位を固定とし、両側の端部近傍にそれぞれ設けられた印加部位である第1印加部位及び第2印加部位にモーメント印加手段によってモーメントを印加して、全体の反射面を変形するとともに、
前記モーメント印加手段は、前記可動ミラーの前記第1印加部位に一方の端部が接続され、他方の端部に第1コムドライブが接続されている第1モーメント印加機構と、前記可動ミラーの前記第2印加部位に一方の端部が接続され、他方の端部に第2コムドライブが接続されている第2モーメント印加機構とによって構成され、
前記第1コムドライブ及び前記第2コムドライブのそれぞれは、駆動用電極に設けられたクシ歯型電極部と、固定に設けられたクシ歯型電極とを組み合わせた構造を有し、それらの電極の間に電圧を印加することで前記駆動用電極を駆動することが可能に構成されたコムドライブであり、
前記第1コムドライブ及び前記第2コムドライブによって前記第1モーメント印加機構及び前記第2モーメント印加機構の端部を駆動することによって、前記可動ミラーの全体の反射面を変形することを特徴とする可変分散補償器。 - 前記光分波手段及び前記光合波手段は、単一の光合分波手段からなることを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
- 前記反射手段を構成する反射ミラーの反射面の形状が、反射される前記周波数成分に関して略放物線状となっていることを特徴とする請求項1または2記載の可変分散補償器。
- 所定の周波数帯域内の周波数成分を有する信号光を伝搬する光伝送路と、
前記光伝送路上の所定位置に設置され、前記光伝送路を伝搬される前記信号光に生じる分散を補償する請求項1〜3のいずれか一項記載の可変分散補償器と
を備えることを特徴とする光伝送システム。 - 前記信号光のビットレートが10Gbps以上であることを特徴とする請求項4記載の光伝送システム。
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