近年、情報化の発達に伴い個人情報の漏洩やネットワーク上の取引行為における他人のなりすましが問題化してきている。これを防ぐために、パスワードや認証カードなど盗み見や盗難などで他人のなりすましを容易に許してしまう方式ではなく、個人固有の生体特徴を入力して個人を認証する装置が開発されてきている。また、携帯電話に代表されるように情報を扱う装置の小型化と低価格化が進み、生体特徴を入力する装置も小型化と低価格化が要求されている。更に、生体による個人認証が重要なクレジットカード等の決済行為にまで利用される応用事例も考えると、本人を確実に、しかもどのような状況下でも認証できるために生体特徴入力装置の高精度化の必要性も高まっている。
そういった中で指紋は古くから一人として同じものがない万人不同、一生変わることがない終生不変の特性が、特に警察や司法の分野で研究、確認されており高精度な個人認証が可能であるが、従来の指紋入力装置は、指の湿潤や乾燥、皮膚炎等による皮の剥けといった悪条件下で良好な指紋画像を得にくく、万人不同ではあるが万人に使用可能とは言い難かった。
ファイバーオプティックプレート(例えば特許文献2)やプリズム(例えば特許文献3)による全反射臨界角を利用した指紋の入力方式は広く個人認証に利用されているが、背景技術で説明したように指紋の陰影が皮膚の凹凸とプリズムとの接触によって得られるため、皮の剥けた部分の画像は欠損する。また高価で大きな光学部品を使用しており、装置の小型化と低価格化の妨げになっていた。
圧力又は電界又は静電容量型の2次元センサはいくつか実用化例がある。光学部品を廃し小型化と低価格化に寄与しているが、いずれも接触を前提としており皮の剥けた部分の画像は欠損する。また光学方式に比較して指の湿潤や乾燥といった状況変化に対して弱いという問題点がある。
圧力又は温度又は電界又は静電容量型の準1次元センサを使用し、センサと接触した指をスライドさせて指の指紋の映像を再構成する技術(例えば特許文献1、特許文献7)は、更なる装置の小型化と低価格化に寄与するが、接触していない部分の画像が欠損するため、皮膚炎などで部分的に皮膚が剥けている場合、指紋認証、つまり生体特徴による認証がしづらいという問題があった。また、1次元方式のセンサを使用し読取り対象を動かして映像を再構成する方法は、ファクシミリや複写機において既知であるが、装置小型化の為に指を動かす方向の速度を得るための特別なメカニズムを割愛するため、特許文献1においては、準1次元の数ラインの画像の類似性を判断して映像を再構成している。図24を参照してこの方式の指紋の画像再構成例を説明する。
指301の画像に対し、指を動かすことによってI1からInの部分画像を得て、これの類似部を除いていって再構成画像302を得る。しかしながら、この方法では図25に示す例のように指をセンサの撮像速度に対してゆっくり動かした場合、重なり度合いが大きくなって類似性の変化を判断しにくくなり、指紋画像303のように縦に間延びして歪んでしまうという問題がある。また、撮像速度より早く指をスライドさせてしまうと、図26のようにI1からInの間に欠損する画像が生じ、指紋画像304のように逆に縦に縮んで歪んでしまう場合があるという問題点がある。
前記の皮膚の剥けによる認証精度の低下を改善する発明として非接触の指紋検出装置の提案がなされている(特許文献6)。これによれば、指に入射し指内部で散乱し指の皮膚表面から放射される放射光が皮膚の内部構造を反映する為、指紋と同じ形の濃淡が観察される。これは表皮の湿潤乾燥に左右されず、表皮角質層が皮膚炎等によってむけて脱落している場合も指紋等の表皮紋様の元となる真皮の構造が保存されていれば、指紋画像が得られる。ただし、特許文献6に示される指紋検出装置の場合、指と結像系の間に空間を設け非接触にしないと目的の画像が得られない。また焦点を合わせる必要性から指の固定枠が必要であり、操作性と装置の小型化の妨げになっていた。また、結像光学系が必要であり、更に装置が大型化してしまうという問題点もある。また、指と結像系が離れており、指の内部構造で皮膚表面から射出する光の量が変化しても皮膚表面で散乱し、結像系の距離による拡散による悪影響と推測される事象によって、実際に皮の向けている部分では良好なコントラストの指紋画像が得られないという問題点があった。
本発明者によってなされた指紋認証装置(特許文献4)は、指内で散乱して皮膚表面から放射される放射光を指に近接させた2次元イメージセンサによって撮像して指紋画像を取得するものであり、装置の小型化と低価格化を実現している。しかし、大型の2次元イメージセンサが必要であり、レンズ等の光学系は廃したものの更なる装置の小型化と低価格化の妨げになっていた。
また、指からの散乱放射光による指紋像は、皮膚とセンサ保護膜との界面状態に大きく依存することは本発明者の提案にかかる特許文献5によって明らかにされている。一方で指からの散乱放射光を読取る技術は、指内部に光が一旦入射していることから、指内部の構造を反映することは明らかである。従って本発明者による特許文献4による指紋入力装置は、光学結像系を廃しある程度の小型の指紋検出装置を実現すると共に、皮が剥けた非接触の部分においての現象として、特許文献6で指摘されている指の皮膚の内部構造を反映した画像が得られる。しかしながら、指紋とそれに近接して配置された2次元イメージセンサとの間に存在する透明カバーの屈折率を、特許文献5に述べられているように透明カバーに接する指紋の凸部に対応する明部領域と接しない凹部に対応する暗部領域とのコントラストが大きくなるように選定すると、界面の反射と屈折の影響が強くなり皮膚構造を反映する成分が小さくなるため、皮膚が剥けている部分に本来現れる皮膚構造を反映した指紋像のコントラストが得にくくなるという問題点があった。この問題はダイナミックレンジを広くとれない場合に特に顕著である。非接触状態を保てば界面の影響がなくなるが、2次元のイメージセンサにおいて曲率のある指に対して一定の距離で非接触状態を保つことはできず安定した指紋画像を得るのは困難であった。
また、一方で指に存在する生体特徴の入力装置として指紋以外に第一関節より下の指の付け根側の血管のパターンを認証する技術は、指紋がなんらかの問題で無い、あるいは皮膚炎等で指紋が劣化し画像化しにくい場合に有効な生体認証手段として提供されるが、そのパターンの有効な情報量は一般に多様な指紋より少なく、また栄養状態や血栓や血圧等の障害によって変化する。万人不同、終生不変として警察と司法分野が主体で研究が完成されている指紋に比較してその精度は未確認であり今後の研究課題として残されている。しかしながら、例えば特許文献7で開示されているように指紋の紋様と同時に読取ることができれば指紋情報との補完、あるいは生体であるかどうかの有力な情報源となり偽指の判断方法としても有効である。しかし、非接触の指紋検出装置の提案(特許文献6)と同様に指と結像光学系の間に空間が必要であり、また焦点を合わせる必要性から指の固定枠も必要であり、操作性と装置の小型化の妨げになっていた。また、指先の指紋部分には毛細血管のみしか存在せず、毛細血管は前記方式ではパターンを読取ることはできない。読取りが可能な静脈血管は第一関節より下の指の付け根側であるため、その部分を第一関節より上の指先の指紋部分と同時に縮小光学系で読まなければならないので更に装置が大型化してしまうという問題点もある。
『発明の目的』
本発明はこのような事情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、指の指紋などの生体特徴を1次元または準1次元のイメージセンサを使用して安定に入力することのできる小型で低廉な生体特徴入力装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、指表面の指紋と同時に指の血管像も同時に入力することのできる小型で低廉な生体特徴入力装置を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、指の指紋などの生体特徴を1次元または準1次元のイメージセンサを使用して安定に入力するための指走行ガイドを備えた電子機器を提供することにある。
本発明の第1の生体特徴入力装置は、1次元または準1次元のイメージセンサと、指と前記イメージセンサとの相対的なスライド運動中に前記指と前記イメージセンサの有効画素部とが接触しない距離を保つ指走行ガイドと、前記指の内部で散乱して前記指の皮膚表面から放射される放射光による画像を前記相対運動中に前記イメージセンサによって撮像された1次元または準1次元の部分画像をつなぎ合わせる画像処理部とを備えることを特徴とする。
本発明の第2の生体特徴入力装置は、1次元または準1次元のイメージセンサと、指と前記イメージセンサとの相対的なスライド運動中に前記指と前記イメージセンサの有効画素部とが接触しない距離を保つ指走行ガイドと、前記指の背部に血管像用の光を照射する上部光源と、前記指の内部で散乱して前記指の皮膚表面から放射される放射光による第1画像と前記上部光源から照射された光が指内を通過して前記指の皮膚表面から放射される放射光による第2画像とを前記相対運動中に前記イメージセンサによって交互に撮像された1次元または準1次元の部分画像を第1画像毎および第2画像毎につなぎ合わせ、且つ、再構成した第1画像と第2画像の差分である血管像を抽出する画像処理部とを備えることを特徴とする。
本発明の第3の生体特徴入力装置は、第1または第2の生体特徴入力装置において、前記指走行ガイドは、前記イメージセンサの前記有効画素部の上部に間隙を有することを特徴とする。
本発明の第4の生体特徴入力装置は、第3の生体特徴入力装置において、前記間隙の高さが10μm以上、200μm以下、前記相対運動方向の長さが前記イメージセンサの副走査方向の有効画素長以上、2.0mm以下であることを特徴とする。
本発明の第5の生体特徴入力装置は、第3または第4の生体特徴入力装置において、前記間隙に、光透過性を有する固体が挿入されていることを特徴とする。
本発明の第6の生体特徴入力装置は、第1または第2の生体特徴入力装置において、前記指走行ガイドの少なくとも前記イメージセンサの前記有効画素部の上部が光透過性を有する固体で構成されていることを特徴とする。
本発明の第7の生体特徴入力装置は、第6の生体特徴入力装置において、前記固体の高さが10μm以上、200μm以下であることを特徴とする。
本発明の第8の生体特徴入力装置は、第5、第6または第7の生体特徴入力装置において、前記固体の屈折率が、1.1より大きいことを特徴とする。
本発明の第9の生体特徴入力装置は、第5、第6または第7の生体特徴入力装置において、前記固体の屈折率が、1.1より大きく、1.4より小さいことを特徴とする。
本発明の第10の生体特徴入力装置は、第5、第6または第7の生体特徴入力装置において、前記固体の屈折率が、2.0より大きいことを特徴とする。
本発明の第11の生体特徴入力装置は、第5、第6または第7の生体特徴入力装置において、前記固体の屈折率が、2.0より大きく、5.0より小さいことを特徴とする。
本発明の第12の生体特徴入力装置は、第1、第2、第3、第5または第6の生体特徴入力装置において、前記イメージセンサによる読取対象部位の近傍より前記指の腹部に光を照射することにより、指内部に散乱光を発生させる下部光源を備えることを特徴とする。
本発明の第13の生体特徴入力装置は、第1、第2、第3、第5または第6の生体特徴入力装置において、前記イメージセンサの出力画像信号から指紋ピッチの画像成分を抽出するバンドパスフィルタと、該バンドパスフィルタの出力を増幅する自動利得制御回路とを備えることを特徴とする。
本発明の第14の生体特徴入力装置は、第1、第2、第3、第5または第6の生体特徴入力装置において、前記画像処理手段は、つなぎ合わせた画像の歪みを指紋部分の周波数解析によって修正する補正手段を含むことを特徴とする。
本発明の第1の電子機器は、1次元または準1次元のイメージセンサと、前記イメージセンサの有効画素部の上部に間隙を有し、指と前記イメージセンサとの相対的なスライド運動中に前記指と前記イメージセンサの有効画素部とが接触しない距離を保つ指走行ガイドを備えることを特徴とする。
本発明の第2の電子機器は、第1の電子機器において、指の内部で散乱して指の皮膚表面から放射される放射光による画像を入力する生態入力装置におけるものであることを特徴とする。
本発明の第3の電子機器は、第1または第2の電子機器において、前記間隙の高さが10μm以上、200μm以下、前記相対運動方向の長さが前記イメージセンサの副走査方向の有効画素長以上、2.0mm以下であることを特徴とする。
本発明の第4の電子機器は、第1、第2または第3の電子機器において、前記間隙に、光透過性を有する固体が挿入されていることを特徴とする。
本発明の第5の電子機器は、1次元または準1次元のイメージセンサと、前記イメージセンサの有効画素部の上部を構成する、光透過性を有する固体を備えることを特徴とする。
本発明の第6の電子機器は、第5の電子機器において、指の内部で散乱して指の皮膚表面から放射される放射光による画像を入力する生態入力装置におけるものであることを特徴とする。
本発明の第7の電子機器は、第5または第6の電子機器において、前記固体の高さが、10μm以上、200μm以下であることを特徴とする。
本発明の第8の電子機器は、第3、第4、第5、第6または第7の電子機器において、前記固体の屈折率が、1.1より大きく、1.4より小さいことを特徴とする。
本発明の第9の電子機器は、第3、第4、第5、第6または第7の電子機器において、前記固体の屈折率が、2.0より大きく、5.0より小さいことを特徴とする。
『作用』
本発明にあっては、指と1次元または準1次元のイメージセンサとが互いにスライドする相対運動中、指走行ガイドによって指とイメージセンサの有効画素部との接触が防止されると同時に、両者の距離がほぼ一定に保たれるため、指と有効画素部の距離が遠すぎて画像がぼけたり、距離が変動して画像が歪んだりするのが防止され、指の内部で散乱して指の皮膚表面から放射される放射光を前記相対運動中にイメージセンサによって安定して撮像することができ、ひいては、撮像された1次元または準1次元の部分画像をつなぎ合わせることで生成される指全体の画像の精度を高めることができる。
本発明によれば以下のような効果が奏される。
第1の効果は、指の指紋などの生体特徴をイメージセンサによって安定して入力することができることである。その理由は、2次元のイメージセンサでは曲率のある指に対して一定の距離で非接触状態を保って安定して指紋画像を得るのは困難であるが、本発明は1次元または準1次元のイメージセンサを使用しており、且つ、指と1次元または準1次元のイメージセンサとが互いにスライドする相対運動中に指とイメージセンサの有効画素部とが接触せずにほぼ一定の距離が保たれるようにする指走行ガイドを備えているからである。
第2の効果は、指の湿潤や乾燥、皮膚炎等による皮膚の剥け等の悪条件化でも生体特徴を入力できることである。その理由は、1次元ないし準1次元のイメージセンサ上に近接配置された指とイメージセンサとの相対運動によって指とイメージセンサを画像が直接読取れる適切な距離と非接触状態を保ちながら指内部の構造を反映した指の画像を読取ることができるからである。更にこの効果を実際の画像例を使って説明する。図9は、従来の接触を前提とした方式のうち全反射臨界角を利用した方式の画像であり、画像のほぼ中央部にある皮膚の剥けた部分で画像が欠損している。図8は、本発明の実施の形態による同じ指の同じ部位の画像例である。同じ皮剥けの部位においてコントラストが得られている。図13は、更に本発明の別の実施の形態の同じ部位の画像例であり、この画像においても皮剥けの部位に関して明暗は反転しているものの画像が欠損することなく得られている。
第3の効果は、小型で低価格な生体特徴を入力できる装置を提供できることにある。その理由は、1次元ないし準1次元のイメージセンサ上に近接配置された指とイメージセンサとの相対運動によって指とイメージセンサを画像が直接読取れる適切な距離と非接触状態を保ちながら読取った指内部の構造を反映した指の画像をつなぎ合わせる方式を採用することによって、イメージセンサ等の部品が小型になり低価格のものが採用できるからである。
第4の効果は、従来の指紋のみによる生体特徴入力装置よりも高精度な生体特徴入力装置を提供できることにある。その理由は、指を動かすことによって指先の指紋だけでなく指の第一関節と第二関節の間の紋様と血管像を入力してより多くの生体特徴を同時に読取ることができるからである。
『第1の実施の形態』
次に、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
『構成の説明』
図1を参照すると、本発明の第1の実施の形態にかかる生体特徴入力装置は、1次元または準1次元のイメージセンサ5と、このイメージセンサ5の有効画素部1の直上に間隙2が位置するように取り付けられた指走行ガイド3と、イメージセンサ5のアナログ出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換部7と、イメージセンサ5の撮像タイミングの制御およびA/D変換部7から出力されるデジタル信号に対する画像処理などを実行するマイクロプロセッサ部8とを備えている。
1次元のイメージセンサ5とは1ラインのイメージセンサであり、準1次元のイメージセンサ5とは2ラインから20ライン程度の短冊形のイメージセンサである。その仕様について考察すると、指の生体特徴のうち、指紋を読取ることを可能にするには指紋の隆線間隔が成人の場合0.2mmから0.5mm程度であり、子供や婦人の場合は0.1mm程度まで考慮すれば良いので、センサ(受光素子)のピッチは20〜50μm程度が望ましい。指の幅と丸みを考慮し、横幅15mm程度を接触有効部分とすれば、例えば29.6μm間隔で1ライン512ドットのセンサを12ラインならべて準1次元のイメージセンサとすれば、1度に横15.15mm、縦0.35mmの短冊形の画像が得られる。イメージセンサ5は、CMOSやCCD、TFT技術などによって作成可能であり、この密度と大きさは現状の集積回路技術によって十分生産可能であり、且つビデオカメラ等で実用化されているイメージセンサが10μm以下ということを考え合わせると必要十二分な感度も得られる。
指走行ガイド3は、指4とイメージセンサ5とが互いにスライドする指紋採取時の相対運動中に指4とイメージセンサ5の有効画素部1とが接触せずにほぼ一定の距離が保たれるように指4とイメージセンサ5との間に設けられている。本実施の形態の場合、指走行ガイド3は、不透明な材質で構成され、生体特徴入力装置専用の図示しない筐体に取り付けられるか、携帯電話機やパーソナルコンピュータ等の電子機器の筐体に取り付けられるか、そのような電子機器の筐体の一部を構成する。また、本実施の形態の指走行ガイド3に設けられた間隙2の形状は、真上から見て矩形状をなしており、その長辺サイズは、イメージセンサ5の有効画素部1に光が十分入射するように少なくとも有効画素部1の長辺(主走査方向)以上のサイズがあり、その短辺サイズは、同じく有効画素部1に光が十分入射するように少なくとも有効画素部1の短辺(副走査方向)以上のサイズで、且つ、大きすぎると指紋採取時に指4の皮膚が有効画素部1に直接接触してしまうため、2.0mm以下、好ましくは1.0mm以下の短辺サイズになっている。また間隙2の高さ(深さ)方向のサイズは、小さすぎると指紋採取時に指4の皮膚が有効画素部1に直接接触してしまい、大きすぎると、指4の皮膚と有効画素部1との距離が離れすぎて画像のぼけがひどくなるため、10μm〜200μm、好ましくは20μ〜80μmのサイズになっている。
A/D変換部7は、イメージセンサ5のアナログ出力信号をデジタル信号に変換してマイクロプロセッサ部8へ出力し、マイクロプロセッサ部8は、A/D変換部7のデジタル信号を入力して適切な画像処理を実行する。
『動作の説明』
本実施の形態の生体特徴入力装置を使用して、指4の指紋を読み取る場合、指4の第一関節あたりを指走行ガイド3の間隙2付近にあてがい、指4の腹部で間隙2をなぞるように図1(b)の矢印6方向に指4を引いていく。指4の皮膚には弾力性があるため、図2に示すように指4を矢印601の方向に押し付けるとイメージセンサ5の有効画素部1に指4が接触してしまうような高さと幅の間隙2であっても、上記のように指4の腹部で間隙2を軽くなぞるようにすると、図3に示すように引く方向602と反対方向の力603が指4の皮膚表面に加わり、有効画素部1に指4が接触することはなく、指4の移動中、指4の皮膚と有効画素部1との距離が常に一定に保たれる。
この指4の移動中、指4の内部で散乱して指4の皮膚表面から放射される放射光による画像がイメージセンサ5によって撮像される。ここで、指4内で散乱し、指4の皮膚表面から放射される光は、図4に示す指の内部構造にしたがって陰影を形成する。表皮1004の指内部側の組織には真皮1005があり、指紋の凸部である隆線1002の下には乳頭腺組織1003がある。乳頭腺を含む真皮1005は、表皮部1004より水分と油分を多く含み屈折率に差が生じる。従って指紋隆線部に突出しているこの乳頭腺によって隆線1002は指紋の凹部である谷部1001より放射される光が減少すると考えられる。このため、イメージセンサ5の有効画素部1に配列されているセンサ(受光素子)のうち、撮像のタイミングにおいて隆線1002に近接するセンサは、谷部1001に近接するセンサに比べて入射する放射光が少なくなり、谷部1001が明部領域、隆線1002が暗部領域となる部分画像が得られる。
こうして適当なタイミング毎に得られた1次元または準1次元の部分画像にかかるアナログ信号は、A/D変換部7によりデジタル信号に変換されてマイクロプロセッサ部8に入力される。マイクロプロセッサ部8は、順次入力される部分画像どうしをつなぎ合わせていくことにより、指4全体の皮膚の紋様画像を再構成する。このマイクロプロセッサ部8で実施される部分画像のつなぎあわせ処理は、基本的に図24で説明した方法と同様に、部分画像どうしの類似性を判断して実施する。その処理の一例を図5に示す。
まず、イメージセンサ5の1フレーム分の部分画像を読み取り、図示しない第1メモリに書き込む(ステップS101)。ここで、1フレーム分の部分画像とは、イメージセンサ5が数ラインから構成される準1次元イメージセンサの場合は全ラインで得られた画像を意味し、イメージセンサ5が1ラインから構成される1次元イメージセンサの場合はその1ラインで得られた画像を意味する。次に、再びイメージセンサ5の1フレーム分の部分画像を読み取り、第1メモリに記憶された画像の最上位ライン側とライン単位で比較する(ステップS102)。今回読み取ったラインの中で第1メモリに記憶された画像の最上位ライン側のラインと差のあるラインがある場合、差のあるライン以降のラインを第1メモリの最上位ライン側に追加する。例えば、イメージセンサ5が12ラインから構成されており、今回読み取った12ラインのうち、最後の3ラインが第1メモリに記憶された最上位ライン側の3ラインと同じであり、最後から4番目のラインから先頭ラインまでが異なる場合、先頭ラインから9番目のラインまでを第1メモリの最上位ライン側に追加する。以上のステップS102〜S104の処理を指1本分の画像データが取得されるまで繰り返し行う(ステップS105)。
次に本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態によれば、1次元または準1次元のイメージセンサ5を使用し且つ余計な光学部品を使用することなく、指4の内部構造を直接反映した皮膚の紋様画像を、指4の湿潤や乾燥などの影響を受けずに安定して読み取ることができ、また装置を単純かつ小型化することができる。その理由は、イメージセンサ5として小型で廉価な1次元または準1次元イメージセンサを使用すると共に、指4とイメージセンサ5とが互いにスライドする相対運動中に指4とイメージセンサ5の有効画素部1とが接触せずにほぼ一定の距離が保たれるようにするための指走行ガイド3を備え、指4の内部で散乱して指4の皮膚表面から放射される放射光による画像を前記相対運動中にイメージセンサ5によって直接撮像し、得られた1次元または準1次元の部分画像をマイクロプロセッサ部8の画像処理によりつなぎ合わせていって指の紋様画像を再構成するからである。
また、特許文献6のような縮小光学系を使用すると、皮膚の表面で拡散してレンズや光路によって拡散すると思われる現象によって良好なコントラストが得られなかった皮剥け部分でも、本実施の形態によれば、指内部の構造を反映した良好なコントラストの紋様が得られる。これは、本実施の形態においては、指4に近接した距離でイメージセンサ5に光を指から直接入射するため、皮膚の表面で拡散して混じり合う成分が少なくなるためと思われる。
『第2の実施の形態』
図6を参照すると、本発明の第2の実施の形態にかかる生体特徴入力装置は、指走行ガイド3上に複数の光源151が配設されている点で図1に示した第1の実施の形態にかかる生体特徴入力装置と相違し、それ以外は第1の実施の形態と同じである。
光源151は、指走行ガイド3の間隙2の近傍にその長辺に沿って一列に配列されており、指紋採取時に指走行ガイド3上を矢印6に示す方向に移動する指4をその背部側(指走行ガイド3側)から照明し、指内部に散乱光を発生させる。光源151を間隙2を中心にして指4を引く側に配列してあるのは、指先が間隙2付近に達した状態でも十分に指先内部に散乱光を発生できるようにするためである。
指内部で散乱し皮膚表面から放射する光は、周囲光のみでも皮膚紋様のパターンが読取れるが、更に光源151を指の引く方向に1次元ないし準1次元イメージセンサ5に平行に近接して配置すれば、その光源151からの光は指内部で散乱して光源方向の光成分が強く射出する。この様子を図7を参照して説明する。
図7を参照すると、光源方向に強度が偏った散乱光のうち、矢印1011で示す隆線1002付近を通過するものは、表皮1004を通過する距離が長くなって暗くなると考えられる。反対に矢印1102で示す指紋谷部1001付近を通過する光は、表皮1004を通過する距離が短くなって明るくなると考えられる。従って距離の差によってコントラストが増加する。実際の詳細なメカニズムは不詳だが、実験の結果を画像例として図8に示す。また参考として、同じ指の同じ部位を従来の接触を前提として方式のうち全反射臨界角を利用した方式で読み取った画像を図9に示す。
図8において手前側(図の下側)が光源であり指を引く側である。より距離のある指紋隆線部が暗くなり、谷部の手前側は明るくなる。特に指紋隆線部の光源側がより暗くなっており、コントラストが上昇している。この部分は、乳頭腺組織1003による指の皮膚内部の散乱光の減衰効果と重なり合っていると考えられる。また図9の画像中央部あたりに紋様が欠落している箇所があるが、これは皮膚の剥けた部分に対応している。同じ部位は図8では紋様が現れており、従来欠損していた皮剥け部分の画像も高いコントラストで得られている。
なお、本実施の形態では、間隙2を中心にして指4を引く側に光源151を配設したが、間隙2を中心とした反対側に光源151を配設しても良く、また間隙2の両側の近傍に光源151を配列しても良い。
『第3の実施の形態』
図10を参照すると、本発明の第3の実施の形態にかかる生体特徴入力装置は、指走行ガイド3の間隙2に光透過性を有する固体で作られた保護カバー801が挿入されている点で図1に示した第1の実施の形態にかかる生体特徴入力装置と相違し、それ以外は第1の実施の形態と同じである。
保護カバー801の下面はイメージセンサ5の有効画素部1にほぼ接しており、その上面は指走行ガイド3の上面とほぼ同一面になっている。したがって、指4の指紋を読み取るために指4の第一関節あたりを指走行ガイド3の間隙2に埋め込まれた保護カバー801付近にあてがい、指4の腹部で保護カバー801をなぞるように指4を引いていった場合、指4の皮膚の一部は常に保護カバーに接する。このため、指内で散乱し、指の皮膚表面から放射した光のうち、保護カバーに接触する指紋隆線部などから放射した光は、図11(a)の符号1111に示すように直接に保護カバー801に入射して保護カバー801内を伝播しイメージセンサ5の有効画素部1に到達する。また、保護カバー801に接触しない指紋谷部などから放射した光は、符号1112に示すように一旦空気層に入射して空気層を伝播した後に保護カバー801に入射し、その後は指紋隆線部から放射した光と同じく保護カバー801内を伝播してイメージセンサ5の有効画素部1に到達する。
これに対して保護カバー801がない第1の実施の形態の場合、指内で散乱し、指の皮膚表面から放射した光は、指紋隆線部および指紋谷部にかかわらず、図11(b)の符号1111および1112に示すように、一旦空気層に入射して空気層を伝播した後に有効画素部1に到達する。
図11(b)に示される保護カバー801がない第1の実施の形態の場合、前述したように、隆線部は暗部領域として、谷部は明部領域としてイメージセンサ5で検出される。これに対して、図11(a)に示される保護カバー801が介在する場合、保護カバー801の屈折率が空気と同じ値「1」に近ければ、保護カバー801が存在しない図11(b)と等価になるので、隆線部が暗部領域、谷部が明部領域としてイメージセンサ5で検出されるが、保護カバー801の屈折率の値が大きくなれば、隆線部が明部領域、谷部が暗部領域としてイメージセンサ5で検出されるようになる。これは、保護カバー801の屈折率が大きくなると、指4と保護カバー801との間の屈折率差よりも、指4と空気との間の屈折率差および空気と保護カバー801との間の屈折率差の方が大きくなることと、図11(a)の隆線部から放射する光1111が有効画素部1に到達するまでには屈折率差の少ない1つの界面(指と保護カバーとの界面)を通過するのに対し、谷部から放射する光1112は屈折率差の大きな2つの界面(指と空気との界面、空気と保護カバーとの界面)を通過することにより、皮膚表面から放射した時点では隆線部よりも谷部の放射光の方が強度が強かったものが、有効画素部1に到達した時点では、谷部よりも隆線部から届く光の方が強度が相対的に強くなったためと推測される。事実、指からの散乱放射光をガラスなどでできた透明保護カバーを介して指に近接させた2次元イメージセンサによって撮像する特許文献4の指紋入力装置では、指紋の谷部が暗部領域、隆線部が明部領域となる指紋画像が得られる。
このため、保護カバー801の屈折率が或る値のとき、隆線部と谷部とのコントラストが0になる。本明細書において、そのような屈折率の値を特異点と呼び、保護カバー801は、特異点近傍の値以外の値の屈折率を持つ光透過性の固体で構成されている。以下、保護カバー801の屈折率について考察する。
本発明者の提案にかかる特許文献5では、2次元イメージセンサと指との間に介在する透明固体膜の屈折率とコントラストとの関係が解析されており、それによれば図12に示すような関係が導出されている。図12において、縦軸は、指紋隆線直下の透明固体膜に入射した光のパワーをP3L、指紋谷部直下の透明固体膜に入射した光のパワーをP3Dとしたときに、(P3L−P3D)/P3Lで計算されるコントラスト、横軸は、透明固体膜の屈折率である。また、+印の点を結ぶ線は指の屈折率を1.4、×印の点を結ぶ線は指の屈折率を1.5とそれぞれ仮定した場合のものである。ただし、図12のグラフは指の皮膚と空気と透明固体膜の界面との屈折率の差による効果のみを計算で求めたものであり、指の皮膚内構造による効果とは異なる。
図12を参照すると、透明固体膜の屈折率が空気と同じ1.0のときにコントラストが0%になっている。これは、図12のグラフは、皮膚内部から隆線部に向かう光のパワーと谷部に向かう光のパワーを同じと仮定しているためである。本来は、屈折率が1.0のときに第1の実施の形態と同じコントラストが得られる。図12ではそのコントラスト値はマイナスとなる。第1の実施の形態で得られるコントラストをC%とすると、図12のグラフでコントラストがC%となる屈折率の値が特異点となる。一般的には、C=10程度なので、特異点=1.1になり、屈折率が1.1の保護カバー801では谷部と隆線部のコントラストが0になる。従って、保護カバー801の屈折率は、1.0以上かつ1.1未満か、あるいは1.1より大きい必要がある。1.1未満の屈折率を持つ光透過性の固体は殆どないので、実質的には1.1より大きい屈折率を持つ光透過性の固体で保護カバー801を構成すればよい。
他方、図12を参照すると、透明固体膜の屈折率が1.4〜2.0の範囲でコントラストが特に高くなっている。皮膚の剥けた部分全体が透明固体膜に接しない場合、その部分全体が同じコントラストになるのではなく、前述したように指内部の構造を反映した紋様が現れる。このため、その紋様のコントラストに比べて、透明固体膜に接する隆線と接しない谷部とのコントラストが異常に高いと、センサのダイナミックレンジが広くない場合、皮膚の剥けた部分の紋様の検知が困難になる。従って、保護カバー801には、図12においてコントラストが特に高くなっている1.4〜2.0の範囲の屈折率は適さない。
更に本発明者の提案にかかる特許文献5で解析されているように、透明固体膜の屈折率が大きくなると、コントラストが出ても明度が下がり、外乱光によるノイズおよび回路で発生するノイズをノイズ成分としてS/N比が下がり、指紋隆線部と指紋谷部の識別が不正確となる確率が高くなる。このため、屈折率の上限値は5.0程度が望ましい。
以上の考察の結果、保護カバー801の屈折率は、1.1より大きく1.4より小さいか、または2.0より大きく、5.0より小さいことが望ましい。
屈折率1.4未満の物質で保護カバー801に適する固体としては、たとえばBeF3(フッ化ベリリュウム)を主成分とするガラスがある。
屈折率2.0より大きい物質で保護カバー801に適する固体としては、たとえばBaO(酸化バリウム)やPbO(酸化鉛)を多量に含むガラス、ヘマタイト(赤鉄鋼)、ルチル(金赤石)、ゲルマニュウム、ダイアモンドあるいはシリコンなどがある。この中でシリコンは、半導体材料として入手が容易であり、かつ加工も容易で比較的安価である。シリコンウェハを厚さ200μm以下に加工し保護カバーとすれば、光の低波長域、特に波長800〜1000nmの近赤外光において透過性が高く、十分なセンサ光出力が得られる。またシリコンは有害物質を含むガラスに比較して、環境を配慮した材料でもある。またシリコンウェハより作り出したCMOS、CCD等のイメージセンサの下部を薄く研磨して感光層までの厚さを200μm以下として上下をひっくり返して配置し、もともとのシリコンウェハの基部であった下部を皮膚に接触させれば、特別にカバーを施すことなく同等の構造が得られる。
保護カバー801を備えた本実施の形態の生体特徴入力装置により読み取った指4の指紋画像を図13に示す。画像左上の丸い皮剥け部分においても隆線部のコントラストが得られていることがわかる。ただし、明部と暗部は、他の場所と反転している。このように保護カバー801を設けると、前述したように保護カバー801の屈折率によっては接触部分の条件により指紋隆線部は明るく、谷間部は暗くなり、非接触の部分と明暗が逆転する。この問題に対しては画像処理と指紋認証の方式によって解決できる。すなわちエッジ強調によって隆線の連続性のみを抽出してつなげていけば良い。また、認証方式として指紋の分岐点や端点といった特徴点の位置関係で認証する方式を採用すれば、明暗の逆転は認証に影響を与えない。
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られるのに加えて、指走行ガイド3の間隙2にゴミがたまって画質が劣化するという心配がなくなるという効果がある。
『第4の実施の形態』
図14を参照すると、本発明の第4の実施の形態にかかる生体特徴入力装置は、イメージセンサ5とA/D変換部7との間にバンドパスフィルタ1801および自動利得制御回路1802が接続されている点で、図10に示した第3の実施の形態にかかる生体特徴入力装置と相違し、それ以外は第3の実施の形態と同じである。
バンドパスフィルタ1801は、イメージセンサ5から出力される画像信号から指紋ピッチの画像成分のみを抽出する。バンドバスフィルター1801の最適周波数特性は指紋の隆線ピッチ0.2mmから0.5mmを考慮しかつセンサの密度と走査周波数から決定される。このバンドパスフィルタ1801で抽出された画像成分は、後段の自動利得制御回路1802によって増幅されて、A/D変換部7に出力される。
本実施の形態によれば、イメージセンサ5の出力から指紋ピッチの画像成分のみを抽出するバンドパスフィルタ1801とその出力を増幅する自動利得制御回路1802とを設けてあるため、皮剥け部分の小さい出力も大きくすることができる。保護カバー801として屈折率が1.4から2.0の範囲の材質を使用した場合、第3の実施の形態では、皮剥け部分の出力が小さくなり過ぎて認識が困難になるが、本実施の形態ではそのような問題を改善できる。保護カバー801に屈折率1.4以上2.0以下の通常ガラス等の物質が使えれば、価格的に有利である。勿論、1.4〜2.0以外の屈折率を持つ材質で保護カバー801が構成されている場合にも本実施の形態は有効である。
『第5の実施の形態』
図15を参照すると、本発明の第5の実施の形態にかかる生体特徴入力装置は、指走行ガイド3全体を保護カバー901とした点で第3の実施の形態と相違し、その他の点は第3の実施の形態と同じである。
保護カバー901は、第3の実施の形態における保護カバー801と同様の屈折率を有する光透過性の固体で構成され、その厚みの条件は保護カバー801と同じである。
本実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果が得られるのに加え、走行ガイド3全体が保護カバー901になっているため、組み立て性に優れるという効果がある。
『第6の実施の形態』
図16を参照すると、本発明の第6の実施の形態にかかる生体特徴入力装置は、上方より指4の背部(爪側)を照明する光源161を備え、指4の皮膚紋様と同時に血管像を読み取る点で、第2の実施の形態と相違し、その他の点は第2の実施の形態と同じである。
指4の上部に図示しない支持具により取り付けられている光源161は、指の血管を読取るためのもので、他の生体組織より近赤外線の吸収が強いヘモグロビンの吸収が良好に生じる800から1000nm付近の光を照射する。特に波長820〜950nm付近の赤外リモコン用等に開発されたLEDは出力が大きく光源161に適している。指4の下部に配置した光源151に由来する画像からは皮膚表面の画像のみが得られるが、上部光源161から照射した光源による画像には、ヘモグロビンを含む血液が集中している太い血管を通過し他の組織より暗くなる血管の映像を含む。従って、以下のようにして、光源161による画像と光源151による画像を求め、両者の画像の差を演算することで、指の皮膚紋様と同時に血管像を読み取ることができる。
本実施の形態の生体特徴入力装置を使用して、指の皮膚紋様と同時に血管像を読み取る場合、指4の第二関節あたりを指走行ガイド3の間隙2付近にあてがい、指4の腹部で間隙2をなぞるように指4を引いていく。この指4の移動中にイメージセンサ5によって画像を撮像する。まず、イメージセンサ5の最初のフレーム画像を得る時に指下部に配置した光源151を点灯し画像を得る。次に指下部の光源151を消灯し指上部の光源161を点灯してイメージセンサ5の次のフレーム画像を得る。これを繰り返していき、交互にそれぞれの光源の画像をつなぎあわせることによって、図17に示すような下部の光源151による画像1701と上部の光源161による画像1702を得る。両者とも指紋1704および第一関節1705と第二関節1706間の紋様1707が存在するが、上部からの光源161による画像には更に血管像1708を含む。これらを交互に切り替えた2つの画像1701、1702の差分を求めることによって、血管像1709のみの画像1703を得ることができる。この差分を求める処理は、マイクロプロセッサ部8によって行われる。図18にその処理例を示す。
まず、光源151のみ点灯させた状態でイメージセンサ5の1フレーム分の部分画像を読み取り、図示しない第1メモリに書き込む(ステップS201、S202)。次に、光源161のみ点灯させた状態でイメージセンサ5の1フレーム分の部分画像を読み取り、図示しない第2メモリに書き込む(ステップS203、S204)。次に、再び光源151のみ点灯させた状態でイメージセンサ5の1フレーム分の部分画像を読み取って第1メモリに記憶された画像の最上位ライン側のラインとライン単位で比較し(ステップS205、S206)、今回読み取ったラインの中で第1メモリに記憶された画像の最上位ライン側のラインと差のあるラインがある場合、差のあるライン以降のラインを第1メモリの最上位ライン側に追加する(ステップS207、S208)。次に、光源161のみ点灯させた状態でイメージセンサ5の1フレーム分の部分画像を読み取って第2メモリに記憶された画像の最上位ライン側のラインとライン単位で比較し(ステップS209、S210)、今回読み取ったラインの中で第2メモリに記憶された画像の最上位ライン側のラインと差のあるラインがある場合、差のあるライン以降のラインを第2メモリの最上位ライン側に追加する(ステップS211、S212)。以上のステップS205〜S212の処理を指1本分の画像データが取得されるまで繰り返し行う(ステップS213)。これにより、第1メモリには図17の画像1701が、第2メモリには図17の画像1702が記憶される。最後に、第2メモリに記憶された画像から第1メモリに記憶された画像を減算し、図17の画像1703を生成する(ステップS214)。
このように本実施の形態によれば、指4を第二関節1706から指先まで指走行ガイド3上を滑らせることによって、指先の指紋1704と同時に一度の動作で第一関節と第二関節間の皮膚紋様1707と血管像1709を読取ることが可能になる。残念ながら指を圧迫することによって血管像が薄くなり、あるいは変化するため、個人認証の情報としては精度が不十分であるが、指紋等の皮膚紋様による個人認証の補間データとして、あるいは偽指の判定に使用できるため、全ての画像によって指先の指紋単独よりも高精度に個人認証が可能になるという効果がある。
『第7の実施の形態』
本発明の第7の実施の形態にかかる生体特徴入力装置は、マイクロプロセッサ部8における部分画像のつなぎ合わせ処理後に画像の歪みを補正する処理を実行するようにした点で第1の実施の形態にかかる生体特徴入力装置と相違し、その他の点は第1の実施の形態と同じである。従って、本実施の形態の構成は図1と同じである。
本実施の形態においては、マイクロプロセッサ部8は、部分画像をつなぎ合わせていく処理と、画像の歪み補正を行う処理とをその順に実施する。部分画像をつなぎあわせていく処理は、第1の実施の形態と同様である。この場合、指の横方向の画像はイメージセンサ5のセンサピッチで一意に歪みのない画像が得られるが、縦方向は相関関係を見ながらつなげて行っても指4の移動速度によって歪んでしまう。指紋などの認証方式のうち、隆線の分岐点や端点の相関関係を見る方式は比較的歪みに強いが、それでも認証精度を高めるためには、補正されていることが望ましい。そこで本実施の形態では、指紋においては横方向と縦方向に隆線の成分があり隆線の間隔は個人でほぼ一定であることを利用し、縦横の隆線の周波数成分の違いから縦の歪みを予測し、以下のように補正する。
図19において、もとの指の紋様画像1201の横方向の隆線の周波数成分1202をf1、縦方向の隆線の周波数成分1203をf2、補正前の隆線上の画素の縦座標をYとすれば、補正後の隆線上の画素の縦座標Y’は、次式で与えられる。
Y’=Y×(f2/f1)…(1)
図19は指をゆっくり引いて縦に伸びた画像の場合であるが、早く引きすぎて短くなった場合でも部分的に欠損はするが、欠損度によって限度はあるものの近似画像が得られる。図19は指紋の形態のうちの渦状紋を示し、図20は蹄状紋を示す。統計的にこの2つの紋様が人間の場合に多く含まれる。稀に図21のような弓状紋があり、この弓状紋の場合、横方向の隆線の周波数成分が大きく異なるため、前述した方法は適用できない。しかし、弓状紋は統計的に少ない(日本人で1%以下と言われる)ため、大部分の紋様画像を上記の補正方式で補正することが可能である。
図22にマイクロプロセッサ部8で実施される画像処理の流れを示す。ステップS301〜S305は部分画像をつなぎ合わせていく処理を示し、図5のステップS101〜S105と同じである。ステップS306〜S308は画像の歪みを補正する処理の手順を示す。画像の歪みを補正する処理においては、まず、第1メモリに記憶された画像に対してエッジ強調、スケルトン処理等の画像処理を行って隆線を抽出する(ステップS306)。次に、画像の横と縦の隆線数を求め、それぞれ横と縦の画素数で割ることにより、横方向の隆線の周波数成分f1、縦方向の隆線の周波数成分f2を求める(ステップS307)。次に、隆線の形状から指紋紋様の形態を判断し、図19および図20に示した渦状紋および蹄状紋であれば、前述した式(1)を用いて隆線上の画素の縦座標を補正し、画像を縦方向に伸縮する(ステップS308)。
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られると共に、歪みの少ない紋様画像を得ることができる。その理由は、部分画像をつなげて再構成した画像における横および縦方向の隆線の周波数成分の違いに基づいて、画像の縦方向の歪みを予測し補正するからである。
以上、本発明を幾つかの実施の形態を挙げて説明したが、本発明は以上の実施の形態にのみ限定されず、その他各種の付加変更が可能である。例えば、第3〜第7の実施の形態に第2の実施の形態における光源151を設けた実施の形態、第1、第3、第5〜第7の実施の形態に第4の実施の形態におけるバンドパスフィルタ1801と自動利得制御回路1802を設けた実施の形態など、前記実施の形態を適宜組み合わせた実施の形態も考えられる。