JP4457599B2 - 高分子光導波路の製造方法 - Google Patents
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Description
然し、(1)の選択重合法はフイルムの張り合わせに問題があり、(2)や(3)の方法は、フォトリソグラフィー法を使うためコスト高になり、(4)の方法は、得られるコア径の精度に課題がある。また、(5)の方法はコア層とクラッド層との十分な屈折率差がとれないと言う問題がある。
現在、性能的に優れた実用的な方法は、(2)や(3)の方法だけであるが前記のごときコストの問題がある。そして(1)ないし(5)のいずれの方法も、大面積でフレキシブルなプラスチック基材に高分子導波路を形成するのに適用しうるものではない。
この問題を解決する方法の1つとして、デビット・ハートはキャピラリーとなる溝のパターンが形成されたパターン基板と平面基板とをクランプ用治具で固着し、さらにパターン基板と平面基板との接触部分を樹脂でシールなどした後減圧して、モノマー(ジアリルイソフタレート)溶液をキャピラリーに充填して、高分子光導波路を製造する方法を提案した(以下の特許文献1を参照)。この方法はコア形成用樹脂材料としてポリマー前駆体材料を用いる代わりにモノマーを用いて充填材料を低粘度化し、キャピラリー内に毛細管現象を利用して充填させ、キャピラリー以外にはモノマーが充填されないようにする方法である。
しかし、この方法はコア形成用材料としてモノマーを用いているため、モノマーが重合してポリマーになる際の体積収縮率が大きく、高分子光導波路の透過損失が大きくなるいう問題がある。
また、この方法は、パターン基板と平面基板とをクランプで固着する、あるいはこれに加えさらに接触部を樹脂でシールするなど煩雑な方法であり、量産にはむかず、その結果コスト低下を期待することはできない。また、クラッドとして厚さがmmオーダーあるいは1mm以下のフィルムを用いる高分子光導波路の製造に適用することは不可能である。
しかし、この特許に記載の製造方法を高分子光導波路の製造に適用しても、光導波路のコア部は断面積が小さいので、コア部を形成するのに時間がかかり、量産に適さない。また、モノマー溶液が重合して高分子になるときに体積変化を起こしコアの形状が変化し、透過損失が大きくなるという欠点を持つ。
このように、PDMSを使ったソフトリソグラフィー技術や、毛細管マイクロモールド法は、ナノテクノロジーとして最近、米国を中心に注目を集めている技術である
(1)1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層から形成され、光導波路コア凸部に対応する凹部を有する鋳型を準備する工程、2)鋳型にクラッド用基材を密着させる工程、3)クラッド用基材を密着させた鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程、4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程、5)鋳型をクラッド用基材から剥離する工程、6)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程、を有する高分子光導波路の製造方法であって、前記3)の工程において鋳型凹部の一端部への加圧注入及び/又は鋳型凹部の他端部からの減圧吸引を行ない、かつ加圧注入及び減圧吸引の一方又は両方を静圧力のみによって実施することを特徴とする高分子光導波路の製造方法。
(3)前記硬化樹脂層が、凹部両端部における進入部及び/又は排出部に連通する応力緩和のための空隙部を有することを特徴とする前記(1)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(4)前記鋳型形成用硬化性樹脂が、液状シリコーンゴムであることを特徴とする前記(1)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(5)前記液状シリコーンゴムが、液状ジメチルシロキサンゴムであることを特徴とする前記(3)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(7)前記加圧充填及び/又は減圧吸引を静圧力のみで行なうことを特徴とする前記(6)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(8)前記加圧充填において圧力を段階的に増加させ、前記減圧吸引において圧力を段階的に減少させることを特徴とする前記(6)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(10)前記強化部材が、金属材料又はセラミック材料からなることを特徴とする前記(2)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(11)前記強化部材の厚さが、1mm〜40mmであることを特徴とする前記(2)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(13)前記鋳型のシェア(Share)ゴム硬度が、15〜80であることを特徴とする前記(1)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(14)前記鋳型の表面粗さが、0.5μm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(15)前記鋳型が、紫外領域及び/又は可視領域において光透過性であることを特徴とする前記(1)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(17)前記コア形成用硬化性樹脂の粘度が50mPa・s〜2000mPa・sであることを特徴とする前記(1)に記載の高分子光導波路の製造方法。
(18)前記クラッド用基材とクラッド層の屈折率の差が、0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層から形成され、光導波路コア凸部に対応する凹部を有する鋳型を準備する工程
2)鋳型にクラッド用基材を密着させる工程
3)クラッド用基材を密着させた鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
5)鋳型をクラッド用基材から剥離する工程
6)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程
そして、前記3)の工程において、鋳型凹部の一端部への加圧注入及び/又は鋳型凹部の他端部からの減圧吸引を行ない、かつ加圧注入及び減圧吸引の一方又は両方を静圧力のみによって実施することを特徴とする。
図1(A)は光導波路コアに対応する凸部12が形成された原盤10を、凸部12の長手方向に直角に切断した切断面を示す。
次に、図1(B)が示すように、原盤10の凸部12が形成された面に、鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層20aを形成する。図1(B)は原盤10に鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層20aを形成したものを、凸部12の長手方向に直角に切断した切断面を示す。
次に、鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層20aを原盤10から剥離して型をとり(図示せず)、次いで型の両端を、前記凹部22が露出するように切断することにより、凹部22にコア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口22a(図2参照)、及び前記凸部12に対応する凹部22から前記樹脂を排出させるための排出口22b(図2参照)を形成して、鋳型20を作製する(図1(C)参照)。
その後、鋳型凹部内のコア形成用硬化性樹脂を硬化させ、鋳型を剥離する。図1(F)は、クラッド用基材の上に光導波路コア40が形成されたものを、コア長手方向に直角に切断した切断面を示す。
さらに、クラッド用基材のコア形成面にコア形成用硬化性樹脂の硬化層であるクラッド層50を形成することにより、本発明の高分子光導波路60が作製される。図1(G)は、高分子光導波路60をコア長手方向に直角に切断した切断面を示す。
1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層から形成され、光導波路コア凸部に対応する凹部を有する鋳型を準備する工程
鋳型の作製は、光導波路コアに対応する凸部を形成した原盤を用いて行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。以下では、原盤を用いる方法について説明する。
<原盤の作製>
光導波路コアに対応する凸部を形成した原盤の作製には、従来の方法、たとえばフォトリソグラフィー法やRIE法を特に制限なく用いることができる。また、本出願人が先に出願した電着法又は光電着法により高分子光導波路を作製する方法(特願2002−10240号)も、原盤を作製するのに適用できる。原盤に形成される光導波路コアに対応する凸部の大きさは一般的に5〜500μm程度、好ましくは40〜200μm程度であり、高分子光導波路の用途等に応じて適宜決められる。例えばシングルモード用の光導波路の場合には、10μm角程度のコアを、マルチモード用の光導波路の場合には、50〜100μm角程度のコアが一般的に用いられるが、用途によっては数百μm程度と更に大きなコア部を持つ光導波路も利用される。
鋳型は、前記のようにして作製した原盤の光導波路コアに対応する凸部が形成された面に、鋳型形成用硬化性樹脂を塗布したり注型し、必要に応じ乾燥処理をした後、該樹脂を硬化させ、次いでその硬化樹脂層を剥離して作製される。また、鋳型には、前記凸部に対応する凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口、及び前記凸部に対応する凹部から前記樹脂を排出させるための排出口が形成されるが、その形成方法は特に制限はない。原盤に予め進入口や排出口に対応する凸部を設けておくこともできるが、簡便な方法としては、例えば、原盤に鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層を形成した後剥離して型をとり、その後、型の両端を前記凹部が露出するように切断することにより進入口及び排出口を形成する方法が挙げられる。
また、鋳型凹部に連通する貫通孔を凹部の両端に設けることが有効である。進入口側の貫通孔は液(樹脂)溜まりとして利用でき、排出側の貫通孔は減圧吸引管をその中に挿入して凹部内部を減圧吸引装置に接続することができる。また、進入側貫通孔をコア形成用硬化性樹脂の注入管に連結して該樹脂を加圧注入することも可能である。貫通孔は、凹部のピッチにより、各凹部に対応してそれぞれ設けてもよく、また、各凹部に共通に連通する1つの貫通孔を設けてもよい。
また、前記原盤にはあらかじめ離型剤塗布などの離型処理を行なって鋳型との剥離を促進することが望ましい。
鋳型形成用硬化性樹脂は、原盤の表面に塗布や注型等することが可能で、また、原盤に形成された個々の光導波路コアに対応する凸部を正確に写し取らなければならないので、ある限度以下の粘度、たとえば、500〜7000mPa・s程度を有することが好ましい。(なお、本発明において用いる「鋳型形成用硬化性樹脂」の中には、硬化後、弾性を有するゴム状体となるものも含まれる。)また、粘度調節のために溶剤を、溶剤の悪影響が出ない程度に加えることができる。
鋳型のシェア(Share)ゴム硬度は、15〜80、好ましくは20〜60であることが、型取り性能、凹部形状の維持、剥離性の点からみて好ましい。
鋳型の表面粗さ(二乗平均粗さ(RMS))は、0.5μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下にすることが、形成されたコアの光導波特性において光損失を大幅に低減できる。
本発明において用いるクラッド用基材としては、ガラス基材、セラミック基材、プラスチック基材等のものが制限なく用いられる。また屈折率制御のために前記基材に樹脂コートしたものも用いられる。クラッド用基材の屈折率は、1.55より小さく、1.50より小さいものがより好ましい。特に、コア材の屈折率より0.05以上小さいことが必要である。また、クラッド基材としては、平坦で、鋳型との密着性に優れ、両者を密着させた場合、鋳型凹部以外に空隙が生じないものが好ましい。また、クラッド基材が鋳型及び/又はコアとの密着性が余り良好でない場合には、オゾン雰囲気による処理、波長300nm以下の紫外線照射処理を行って、鋳型等との密着性を改善することが好ましい。
プラスチック基材の中でも、フレキシブルなフィルム基材を用いた高分子光導波路は、カプラー、ボード間の光配線や光分波器等としても使用できる。前記フィルム基材は、作製される高分子光導波路の用途に応じて、その屈折率、光透過性等の光学的特性、機械的強度、耐熱性、鋳型との密着性、フレキシビリティー(可撓性)等を考慮して選択される。
また、脂環式オレフィン樹脂としては主鎖にノルボルネン構造を有するもの、及び主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基(アルキル基としては炭素数1から6のものやシクロアルキル基)等の極性基をもつものが挙げられる。中でも前記のごとき主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ脂環式オレフィン樹脂は、低屈折率(屈折率が1.50近辺であり、コア・クラッドの屈折率の差を確保できる)及び高い光透過性等の優れた光学的特性を有し、鋳型との密着性に優れ、さらに耐熱性に優れているので特に本発明の高分子光導波路の作製に適している。
また、前記フィルム基材の厚さはフレキシビリティーと剛性や取り扱いの容易さ等を考慮して適切に選ばれ、一般的には0.1mm〜0.5mm程度が好ましい。
鋳型凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するには、鋳型凹部の一端部(進入口側)へ加圧注入を行なったり、鋳型凹部の他端部(減圧吸引側)から減圧吸引を行なったり、或いは加圧注入と減圧吸引の両方を行ない、その際前記加圧注入及び減圧吸引の一方又は両方を静圧力のみによって実施することにより、脈動を小さく又はなくす。特に加圧注入の際に脈動を発生させないことが好ましい。脈動を発生させない加圧手段としては、圧力ガスボンベの利用、重力利用加圧装置の利用、大きなサイズの加圧空間タンクを挿入した装置の利用、多重の気体フィルターの利用、高所からの液体圧力の利用等が挙げられる。また、減圧手段としては、通常の減圧手段に前記のごとき脈動抑制装置を利用するものであり、例えば真空ポンプ(ロータリーポンプ等)を、真空ポンプと鋳型凹部との間にトラップ或いは減圧タンク等を介して用いることにより、脈動をなくする又は小さくすることができる。
また、前記加圧充填と減圧吸引を併用する場合はこれらを同期して行うことがさらに、前記加圧充填において圧力を段階的に増加させ、前記減圧吸引において圧力を段階的に減少させることが、鋳型が安定して固定された状態で、コア形成用硬化性樹脂をより高速に注入する相反則を両立させる点からみて好ましい。
前記コア形成用の紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が好ましく用いられる。
また、前記紫外線硬化性樹脂としてエポキシ系、ポリイミド系、アクリル系紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
このほかに、原盤に形成された光導波路コアに対応する凸部が有する元の形状を高精度に再現するため、前記硬化性樹脂の硬化前後の体積変化が小さいことが必要である。例えば、体積が減少すると導波損失の原因になる。したがって、前記硬化性樹脂は、体積変化ができるだけ小さいものが望ましく、10%以下、好ましくは0.01〜4%の範囲にあることが望ましい。溶剤を用いて低粘度化することは、硬化前後の体積変化が大きいのでできれば避ける方が好ましい。体積収縮が0.01%以下の材料系や体積膨張する材料系では鋳型からの剥離効率が下がり、鋳型からの剥離時に表面の破断等の表面劣化が生じるため、形成されるコア表面の平滑性が低下して光導波損失が上昇するので好ましくない。
コア形成用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするため、前記樹脂にポリマーを添加することができる。前記ポリマーはコア形成用硬化性樹脂との相溶性を有し、かつ該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないものが好ましい。またポリマーを添加することにより体積変化を小さくする他、粘度や硬化樹脂のガラス転移点を高度に制御できる。前記ポリマーとしては例えばアクリル系、メタクリル酸系、エポキシ系のものが用いられるが、これらに限定されるものではない。
コア形成用硬化性樹脂の硬化物の屈折率は、クラッドとなる前記フィルム基材(以下の5)の工程におけるクラッド層を含む)より大きいことが必要である。コアとクラッド(クラッド用基材及びクラッド層)との屈折率の差は、0.01以上、好ましくは0.05以上である。
また、前記充填を促進するため、前記系の減圧に加えて、鋳型の進入口から充填するコア形成用硬化性樹脂を加熱することにより、より低粘度化することも有効な手段である。
充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる。紫外線硬化性樹脂を硬化させるには、紫外線ランプ、紫外線LED、UV照射装置等が用いられる。また、熱硬化性樹脂を硬化させるには、オーブン中での加熱等が用いられる。
前記4)の工程の後、鋳型をクラッド用基材から剥離する。また、前記1)〜3)の工程で用いる鋳型は、屈折率等の条件を満たせばそのままクラッド層に用いることも可能で、この場合は、鋳型を剥離する必要はなくそのままクラッド層として利用する。この場合、鋳型とコア材料の接着性を向上させるために鋳型をオゾン処理することが好ましい。
コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成するが、クラッド層としてはフィルム(たとえば前記2)の工程で用いたようなクラッド用基材が同様に用いられる)や、クラッド用硬化性樹脂を塗布して硬化させた層、高分子材料の溶剤溶液を塗布して乾燥して得られる高分子膜等が挙げられる。クラッド用硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。
クラッド形成用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、該樹脂と相溶性を有し、また該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないポリマー(例えばメタクリル酸系、エポキシ系)を該樹脂に添加することができる。
前記紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、クラッド層に添加するポリマーと同様のポリマーを添加することができる。
また、前記クラッド用基材とクラッド層との屈折率差は小さい方が好ましく、その差は0.05以内、好ましくは0.001以内、更に好ましくは差がない(不均一性が無いまたは極少)ことが光の閉じ込めの点からみて好ましい。
図5(B)は、図5(A)のA−A断面図であり、22は鋳型凹部を示す。
また、図7(A)及び図7(B)は、保持部材92に固定用の嵌合用溝93を設け、一方鋳型の強化部材に嵌合用部材29を設け、嵌合用部材29を嵌合用溝93の中に嵌め込んで固定するものである。
空隙部の断面積は、すべての凹部の総断面積の5〜20000倍であることが好ましく、より好ましくは500〜2500倍である。(ここで、「すべての凹部の総断面積」とは、空隙部を通じて連通する各凹部の端部の面積の総和を意味する。)
図8(A)及び(B)は進入部及び排出部に空隙部を設けた鋳型の一例を示す断面図である。
図8(A)は、鋳型を鋳型凹部及び空隙部が現われるように切断した切断面を示す図で、図8(A)中、20は鋳型、21は空隙部、22は凹部、24は強化部材、24bは強化部材に設けた注入口、24cは排出口をそれぞれ示す。また、図8(B)は、図8(A)をA−A線で切断した切断面を示す。
実施例1
<鋳型の作製>
ガラス基板に紫外線硬化型厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して高圧水銀灯で露光し、現像して、断面が正方形の凸部(幅:50μm、高さ:50μm、長さ:50mm)を5本形成した。次に、これを120℃でポストベークして、光導波路コア作製用原盤を作製した。この原盤の表面に離型剤を塗布した。
次に、図5(A)で示すような、紫外線照射部分に対応する開口部が設けられ、かつ3つの注入口及び3つの排気口を有する強化部材(厚さ2mmのアルミニウム製)を用意した。この強化部材を、離型剤を塗布した原盤にかぶせた。
次いで、強化部材の開口部から、熱硬化性液状ジメチルシロキサンゴム(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184、粘度5000mPa.s)及びその硬化剤を混合したものを流し込み(この際、原盤凸部の末端部は前記ゴムで覆われないようにした)、120℃で30分間加熱して硬化させた。硬化後、硬化ゴムと強化部材が一体になったものを原盤から剥離したところ、前記凸部に対応する凹部を持ち、凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口及び該樹脂を凹部から排出させるための排出口が形成された鋳型が作製された。
前記鋳型にアートンフイルムを加圧密着させた。また、前記鋳型の強化部材の各注入口と各排気口に注入管と減圧脱気管を接続した。注入管にはコア形成用硬化性樹脂を入れた加圧タンクを接続し、さらに加圧タンクには窒素ボンベを直結させて、静圧(13kPa)で該樹脂を圧入できるようにした。また、減圧脱気管は、圧力制御機構と減圧タンクを介して真空ロータリーポンプに接続し、圧力調整された静圧力(−50kPa)による減圧吸引が行なわれるようにした。コア形成用硬化性樹脂としては粘度が1300mPa・sの紫外線硬化性樹脂(JSR社製:PJ3001)を用いた。40秒で鋳型凹部に紫外線硬化性樹脂を充填することができた。
鋳型から注入管及び減圧脱気管をはずし、鋳型の露光用開口部から50mW/cm2のUV光を10分間照射してコア形成用硬化性樹脂を硬化させた。鋳型を剥離すると、アートンフイルム上に屈折率1.59のコアが形成された。
さらに、アートンフイルムのコア形成面に、硬化後の屈折率がアートンフイルムと同じ1.51である紫外線硬化性樹脂(JSR(株)製)を全面に塗布した後、50mW/cm2のUV光を10分間照射して紫外線硬化させ(硬化後の膜厚10μm)た。フレキシブルな高分子光導波路が得られた。この高分子光導波路の平均導波損失は、0.35dB/cmであった。
実施例1において、注入管と減圧脱気管に直接ロータリーポンプに接続し、同様の加圧及び減圧でコア形成用硬化性樹脂を充填する他は、実施例1と同様にして高分子光導波路を作製した。この加圧及び減圧では、80ヘルツの脈動による圧力変化があった。得られた高分子光導波路の損失を測定したところ、導波損失は平均値で0.43dB/cmであった。
<鋳型の作製>
ガラス基板に紫外線硬化型厚膜レジスト液(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃加熱オーブンでプリベークし、フォトマスクを通して高圧水銀灯により露光した後、現像工程を経て、断面が正方形の微細凸部(幅:80μm、高さ:80μm、長さ:100mm)を10本作製した。次に、これを120℃でポストベークした。このようにして作製した凸部の1つの端部に、モールドにより、高さ2mm、幅(凸部に直交する方向)10mm、基板長手方向長さ20mmの、断面が長方形の圧力緩和空隙作製用凸部を形成し、原盤とした。
次に、図6(A)に示すようなアルミ製の強化部材を作製した。露光用開口部24aは石英ガラス製とした。
前記原盤に離型剤を塗布した後、この上に熱硬化性シリコーンゴムオリゴマー(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184、ジメチルポリシロキサン)を、凸部の長手方向の一端が一部露出するように、かつ、他端にある空隙部作製用凸部の端部までが覆われるように、塗布した。この上から前記強化部材を押圧し固定した。その後、120℃で30分間加熱して硬化させ、シリコンゴムと強化部材を一体化させた。硬化シリコーンゴム層の厚さは10mmであった。次いでこれを原盤から剥離し鋳型を得た。鋳型のシリコンゴム層には、50μm角の凹部と、コア形成用硬化性樹脂の進入部と排出部、空隙部とが形成された。
前記鋳型にアートンフイルムを加圧密着させた。また、前記鋳型の強化部材の各注入口と各排気口に注入管と減圧脱気管を接続した。実施例1と同様の加圧充填装置(静圧力6kPa)及び減圧吸引装置(静圧力−80kPa)を用い、粘度が500mPa・sの紫外線硬化性樹脂(JSR社製:PJ3001)を圧力注入した。
充填終了後、鋳型から注入管及び減圧脱気管をはずし、鋳型の石英製窓を通して75mW/cm2のUV光を10分間照射してコア形成用硬化性樹脂を硬化させた。
鋳型を剥離すると、アートンフイルム上に屈折率1.570のコアが形成された。
さらに、アートンフイルムのコア形成面に、硬化後の屈折率がアートンフイルムと同じ1.510である熱硬化性樹脂(JSR(株)製)を全面に塗布した後、加熱硬化させたところ、フレキシブルな高分子光導波路が得られた。この高分子光導波路の平均導波損失は、0.358dB/cmであった。また、10本の導波路の光損失は、0.36 ±0.008dB/cmの範囲に入っており、バラツキの少ない特性であった。
<鋳型の作製>
ガラス基板に紫外線硬化型厚膜レジスト液(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃加熱オーブンでプリベークし、フォトマスクを通して高圧水銀灯により露光した後、現像工程を経て、断面が正方形の微細凸部(幅:50μm、高さ:50μm、長さ:100mm)を15本作製した。次に、これを120℃でポストベークした。このようにして作製した凸部の両端部に、モールドにより、高さ2mm、幅(凸部に直交する方向)15mm、基板長手方向長さ10mmの、断面が長方形の圧力緩和空隙作製用凸部を形成し、原盤とした。
次に、図6(A)に示すようなステンレス製の強化部材を作製した。露光用開口部24aは石英ガラス製とした。
この原盤と強化部材を用いて、実施例2と同様にして鋳型を作製した。
実施例2と同様にして、粘度が1300mPa・sの紫外線硬化性樹脂(JSR社製:PJ3001)を鋳型凹部に充填した。
充填終了後、鋳型から注入管及び減圧脱気管をはずし、鋳型の石英製窓を通して50mW/cm2のUV光を10分間照射してコア形成用硬化性樹脂を硬化させた。鋳型を剥離すると、アートンフイルム上に屈折率1.591のコアが形成された。
さらに、クラッド基材フィルムのコア形成面に、硬化後の屈折率がアートンフイルムと同じ1.510である紫外線硬化性接着剤(JSR(株)製)を全面に塗布した後、膜厚120μmのアートンフィルムを載せ、50mW/cm2のUV光を15分間照射して紫外線硬化させた。フレキシブルなサンドイッチ型高分子光導波路が得られた。この高分子光導波路の平均導波損失は、0.354dB/cmであった。
12 光導波路コアに対応する凸部
20 鋳型
20a 鋳型の樹脂硬化層
21 空隙部
22 鋳型に形成された凹部
22a コア形成用硬化性樹脂の進入口
22b コア形成用硬化性樹脂の排出口
23a 進入口側貫通孔
23b 減圧吸引側貫通孔
24 鋳型強化部材
26a、26b コア形成用硬化性樹脂の注入管
28a、28b コア形成用硬化性樹脂の排出管
30 クラッド用基材
40a コア形成用硬化性樹脂
40 コア
50 クラッド層
60 高分子光導波路
Claims (19)
- 1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層から形成され、光導波路コア凸部に対応する凹部を有する鋳型を準備する工程、2)鋳型にクラッド用基材を密着させる工程、3)クラッド用基材を密着させた鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程、4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程、5)鋳型をクラッド用基材から剥離する工程、6)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程、を有する高分子光導波路の製造方法であって、前記3)の工程において鋳型凹部の一端部への加圧注入及び/又は鋳型凹部の他端部からの減圧吸引を行ない、かつ加圧注入及び減圧吸引の一方又は両方を静圧力のみによって実施することを特徴とする高分子光導波路の製造方法。
- 前記鋳型が、光導波路コア凸部に対応する凹部を有する鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層と、前記硬化樹脂層を補強する強化部材を有し、強化部材にはコア形成用硬化性樹脂の注入口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記硬化樹脂層が、凹部両端部における進入部及び/又は排出部に連通する応力緩和のための空隙部を有することを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記鋳型形成用硬化性樹脂が、液状シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記液状シリコーンゴムが、液状ジメチルシロキサンゴムであることを特徴とする請求項3に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記3)の工程において加圧充填を行い、加圧充填と同期して鋳型凹部のコア形成用硬化性樹脂排出側から減圧吸引することを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記加圧充填及び/又は減圧吸引を静圧力のみで行なうことを特徴とする請求項6に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記加圧充填において圧力を段階的に増加させ、前記減圧吸引において圧力を段階的に減少させることを特徴とする請求項6に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記硬化樹脂層の厚さが、10μm〜50mmであることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記強化部材が、金属材料又はセラミック材料からなることを特徴とする請求項2に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記強化部材の厚さが、1mm〜40mmであることを特徴とする請求項2に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記鋳型の表面エネルギーが、10dyn/cm〜30dyn/cmであることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記鋳型のシェア(Share)ゴム硬度が、15〜80であることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記鋳型の表面粗さが、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記鋳型が、紫外領域及び/又は可視領域において光透過性であることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記クラッド用基材が、クラッド用フィルム基材であることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記コア形成用硬化性樹脂の粘度が50mPa・s〜2000mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 前記クラッド用基材とクラッド層の屈折率の差が、0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
- 1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層から形成され、光導波路コア凸部に対応する凹部を有する鋳型を準備する工程、2)鋳型にクラッド用基材を密着させる工程、3)クラッド用基材を密着させた鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程、4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程、を有する高分子光導波路の製造方法であって、前記3)の工程において鋳型凹部の一端部への加圧注入及び/又は鋳型凹部の他端部からの減圧吸引を行ない、かつ加圧注入及び減圧吸引の一方又は両方を静圧力のみによって実施し、更に前記鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層が光透過性であり、かつその屈折率と前記4)の工程で形成されるコアの屈折率の差が0.01以上あることを特徴とする高分子光導波路の製造方法。
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