JP4456798B2 - ナノ複合透明樹脂組成物、それを用いた成形体、自動車用部品およびそれらの製造方法 - Google Patents

ナノ複合透明樹脂組成物、それを用いた成形体、自動車用部品およびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機ガラス等の代替に好適な透明樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、樹脂の光線透過性を悪化させることなく、部材の剛性向上ならびに熱膨張の低減が図れる表面改質シリカ組成物が配合されたナノ複合透明樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
透明材料部材において、樹脂材料は、無機材料に比べ軽量でかつ成形の自由度が大きいという利点はあるが、一方で弾性率が小さいため剛性が低い、熱膨張係数が大きい、また硬度が低いため表面が傷つき易いという難点がある。このため、透明樹脂材料は、従来、自動車において例えばヘッドランプやサンルーフなど比較的低剛性でかつ表面処理のしやすい小物部品には採用されているものの、自動車外装のかなりの面積を占める窓ガラスについては所定の機能を満足するものがまだなく、本格的な採用までには至っていない。
【0003】
このような透明樹脂材料の欠点を克服するために、無機系微粒子材料を透明樹脂に配合する有機/無機ナノコンポジット材料の研究開発が活発となり、各種の手法が提案されてきた。例えば、特開平11−343349号公報には、樹脂製ウィンドウに関する新しい材料組成とその製造技法が開示され、詳細には、樹脂製ウィンドウの強度または剛性及び透明性を確保することを目的として、無機のシリカ微粒子を透明な非結晶の有機高分子(透明樹脂)に分散・混合した透明樹脂組成物からなる樹脂製ウィンドウが開示されている。また、上記公報においては、例えば、実施例1では、メタクリル酸メチルに重合開始剤としての過酸化ベンゾイルを混合し、加熱した後、これにメチルエチルケトン溶剤に分散させたシリカ微粒子を滴下しながら重合反応を行なうことによって樹脂組成物を得ることが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報で開示される透明樹脂組成物は、高い透明性を維持しながら表面硬度を上昇させるという効果は認められるものの、一方で要求される弾性率の増大効果、換言すれば剛性向上効果は必ずしも十分とは言えず、これより窓ガラスへの適用までには至っていない。より詳細に述べると、シリカ微粒子が配合された複合樹脂材料の曲げ弾性率は、実施例11の3,500MPaが最大であるのに対して、シリカ微粒子が配合されていない複合樹脂材料(ポリメチルメタクリレート樹脂)の曲げ弾性率が3,200MPa(参考例1)であり、シリカ微粒子が配合されたことによる曲げ弾性率の上昇率は9.4%に過ぎない。これは、樹脂とシリカ微粒子との間の相互作用が十分に発揮されていないためと考えられる。
【0005】
すなわち、従来の有機ガラスや複合樹脂材料は、無機材料に比べて強度・剛性が小さいため、例えば自動車の窓ガラスのような大型でかつある程度の剛性が要求される部品に適用しようとする場合には厚みを増す必要があるが、そのような対応では形状の自由度は確保できるものの樹脂化の大きな狙いである軽量化の効果が薄れる。
【0006】
近年このような背景から、さらに可視光線の波長(380〜770nm)よりもはるかに小さい数10nmオーダの無機系微粒材料を透明樹脂に配合する有機/無機ナノコンポジット材の研究開発が活発となり、各種の手法が提案されているが、実用までには至っていない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特に透明性に優れ、弾性率の向上を実現し得る樹脂組成物の製造方法の提供を課題とする。
【0008】
また、樹脂材料は、無機材料に比べて強度・剛性が小さいため、例えば自動車の窓ガラスのような大型の部品に適用しようとする場合には、厚みを増す必要があるが、そのような対応では形状の自由度は確保できるものの樹脂化の大きな狙いである軽量化の効果が薄れる。このため、本発明は、樹脂材料の弾性率を向上できる樹脂組成物およびその製造方法の提供を課題とする。
【0009】
さらに、樹脂材料は、無機材料に比べて熱膨脹率が大きいため、例えば自動車の窓ガラスのような大型の部品に適用しようとする場合には、窓枠の鋼材との熱ひずみによりガラスそのものが割れたり、樹脂ガラス表面に波打ちが発生する恐れがあるため、熱ひずみを避ける構造設計をする必要がある。このため、本発明は、樹脂材料の熱膨張率を低減できる樹脂組成物およびその製造方法の提供をも課題とする。
【0010】
加えて、従来の弾性率の向上と熱膨張率の低減を同時に達成させる手段の一つとしての無機充填材を配合する方法では、部材の弾性率の向上ならびに熱膨張率の低減は図れるものの、透過光線の反射・散乱や吸収が増大して部材の透明性がという問題が発生する。これらは、一方を良くすれば他方が悪くなるという二律背反的な関係にある。このため、本発明は、透明性を保ちながら樹脂部材の弾性率を向上させ、かつ熱膨張率を低減させ得る樹脂組成物およびその製造方法の提供を課題とする。さらに該樹脂組成物を用いた成形体、自動車用部品とそれらの製造方法の提供をも課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、赤外線吸収特性において、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm-1低波数側にシフトさせる水素結合性官能基と不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて水素結合を介してシリカの表面が修飾されてなる表面改質シリカ組成物と母材樹脂モノマーからなり、該母材樹脂モノマーは該樹脂モノマーと重合しており、および該表面改質シリカ組成物は母材樹脂モノマー100質量部に対して3〜100質量部配合されることを特徴とするナノ複合樹脂組成物によって達成される。
【0012】
【発明の効果】
本発明者等は、これらの観点から鋭意検討した結果、上記課題を解決するには、母材樹脂に均一に分散させるための無機充填材の適切な材料選定に加え、母材樹脂と無機充填材との間に強い相互作用を形成させる必要があるとの見解に達した。ついで、その見解に基づいて実験によりその方策を種々確認したところ、母材樹脂と無機充填材が各々備えている官能基の間に水素結合を形成させるという本発明に係わる新しい技法を見出すに至った。
【0013】
より詳細に述べると、本発明者等は、▲1▼シラノール基(−Si−OH)を有するシリカに、特定の樹脂モノマーを加えてシラノール基と樹脂モノマー骨格中に含まれるカルボニル等の官能基との間の水素結合を形成する表面改質シリカ組成物を作製する際に、表面改質用の樹脂モノマーとして、当該シリカが有するシラノール基中の自由水酸基の赤外線吸収ピークを330cm-1以上低波数側にシフトさせる水素結合性の官能基及び表面改質後に配合される母材樹脂モノマーと重合するための不飽和二重結合基を有するモノマーを使用する;さらに▲2▼当該表面改質シリカ組成物を、不飽和二重結合基を有する母材樹脂モノマー、重合開始剤および溶媒からなる混合溶液に配合して、母材樹脂モノマーと表面改質シリカ組成物の樹脂モノマーと重合させることによって得られる、ナノ複合樹脂組成物は、高い透明性を維持したままで弾性率の向上及び熱膨張率の低減が同時に図れるものであることを見出し、本発明に至った。以下、本発明の効果を請求項ごとに記載する。
【0014】
請求項1は、シリカのシラノール基(−Si−OH)と樹脂モノマーに含まれる水素結合性官能基とを反応させて水素結合をより強固に形成させた後、樹脂モノマーと母材樹脂モノマーとを重合することによって、機械的強度に優れたナノ複合樹脂組成物が得られる。また、モンモリロナイト等の粘土質の無機充填材とは異なり着色を防止することができる樹脂組成物を得ることができる。
【0015】
請求項2は、シリカ中のシラノール基との水素結合性に優れた特定の官能基を有する樹脂モノマーを選択することにより、シリカ表面の改質を再現性良くかつ迅速に行なうことができ、水素結合性及び場合によっては透明性に優れた樹脂組成物となる。
【0016】
請求項3は、特定の材料を母材樹脂モノマーとして選択することにより、表面改質シリカ組成物の表層に存在する不飽和二重結合基を持つ樹脂モノマーとの結合性に優れた、ゆえに機械的強度に優れたナノ複合樹脂組成物が得られる。
【0017】
請求項4は、表面改質シリカ組成物の形状を球状または鎖状とすることにより、粒子同士の凝結を起こさずに、シリカを安定した状態で母材樹脂モノマー中に分散でき、透明性を保ちながら透明樹脂部材の弾性率向上と熱膨張率低減を達成することができる。
【0018】
請求項5は、表面改質シリカ組成物の粒径を可視光線の波長(380nm)以下とすることにより、可視光の透過を妨げることがなく、ゆえに母材樹脂モノマー中に安定した状態で分散することによって、透明性を保ちながら透明樹脂部材の弾性率向上と熱膨張率低減を達成することができる。
【0019】
請求項6は、シリカ組成物の平均一次粒子径を低減することで透明性の確保に優れる。
【0020】
請求項7〜33、36、37、38は、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた各種用途に関するものであり、本発明のナノ複合樹脂組成物による強度が高く、熱膨張率が低くかつ樹脂モノマーや母材樹脂モノマーの種類によっては透明性が高いという特性をいかして、軽量化と成形の自由度が要求される無機ガラス代替用途としての樹脂ウィンドウ(特に、熱線付き樹脂製ウインドウ);自動車の内外装部品成形体及び車両用外板;樹脂製ワイパーシステム;樹脂製ドアミラーステイ;樹脂製ピラー;樹脂成形体;樹脂製ミラー;樹脂製ランプリフレクター;樹脂製エンジンルーム内カバー及びケース;樹脂製冷却装置部品;大気と連通した中空構造および/または密閉された中空構造を有する樹脂一体成形体;ひとつの部品に二種類以上の機能が付与される一体成形部品;可動部と非可動部を有する成形体;ならびに炭化水素系燃料を収納する部品あるいは容器など、透明性、剛性、高温時にソリなどが抑制された上記樹脂組成物を使用することで、大型かつ剛性および耐衝撃性に対する要求性の強い車両用途に有効に使用できる。
【0021】
請求項34は、乾式製造法により製造される粉末状シリカ(乾式製法粉)を出発原料として用いることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のナノ複合樹脂組成物の製造方法であり、該方法によれば、シリカの事前処理としての疎水化が不要であり、薬剤の不使用と工程削減からより安価な表面改質シリカ組成物が得られ、ゆえにこのような特定の改質シリカ組成物が均一に分散した透明性、剛性に優れるナノ複合樹脂組成物を簡便に製造することができる。
【0022】
請求項35は、湿式製造法により製造されるコロイダルシリカ(湿式製法粉)を出発原料として用いることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のナノ複合樹脂組成物の製造方法であり、該方法によれば、シリカの事前処理としての疎水化が不要であり、薬剤の不使用と工程削減からより安価な表面改質シリカ組成物が得られ、ゆえにこのような特定の改質シリカ組成物が均一に分散した透明性、剛性に優れるナノ複合樹脂組成物を簡便に製造することができる。
【0023】
請求項36は、請求項1〜6のいずれかに記載のナノ複合樹脂組成物からなる樹脂シートを金型に挿入し、該挿入積層体間に加圧流体を注入して中空構造を形成することを特徴とする、樹脂一体成形体の製造方法であり、不要の工程を増加させることなく自動車用樹脂一体成形体を製造できる。
【0024】
請求項37は、請求項1〜6のいずれかに記載のナノ複合樹脂組成物を金型に充填し、溶融樹脂内に加圧流体を注入して中空構造を形成することを特徴とする、樹脂一体成形体の製造方法であり、不要の工程を増加させることなく自動車用樹脂一体成形体を製造できる。
【0025】
請求項38は、請求項1〜6のいずれかに記載のナノ複合樹脂組成物からなる樹脂シートを金型に挿入し、シートに溶融樹脂を金型に充填し、溶融樹脂内に加圧流体を注入して中空構造を形成することを特徴とする、樹脂一体成形体の製造方法であり、不要の工程を増加させることなく自動車用樹脂一体成形体を製造できる。
【0026】
本発明のナノ複合樹脂組成物は、母材樹脂モノマーに配合する無機成分としてのシリカの親和性向上に加え、両者間の水素結合の強化に着目して開発検討してきたものである。その結果、透明性を損なわずに強度向上と線膨張係数の低減を図れる手法を見出した。この材料を自動車や家電あるいは住宅等の工業用途に用いれば、部材の軽量化と造型の自由度の拡大を図ることができる。例えば、既述の自動車のウィンドウなどの諸用途で使用すれば、無機ガラスと代替でき、車両の軽量化と新規デザインの創出に大いに貢献できる。さらに、車両用途において軽量化が達成できると同時に、省燃費とCO2排出低減から地球環境の保全にも寄与することになる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、赤外線吸収特性において、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm-1低波数側にシフトさせる水素結合性官能基と不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて水素結合を介してシリカの表面が修飾されてなる表面改質シリカ組成物と母材樹脂モノマーからなり、該母材樹脂モノマーは該樹脂モノマーと重合しており、および該表面改質シリカ組成物は母材樹脂モノマー100質量部に対して3〜100質量部配合されることを特徴とするナノ複合樹脂組成物である。
【0028】
本発明の第一の特徴の一は、ナノ複合樹脂組成物の無機成分として配合する表面改質シリカ組成物において、当該シリカの化学的性質ならびに表面改質に用いる修飾用の樹脂モノマーの性能要件にある。すなわち、本発明に用いる無機充填材は、表面にシラノール基(−Si−OH)を有するシリカに特定される。無機成分をシリカに特定するのは、シリカのシラノール基(−Si−OH)と樹脂モノマーの水素結合性官能基との間に水素結合を形成でき、ゆえにこのような状態で表面改質シリカ組成物の樹脂モノマーと母材樹脂モノマーとを重合させることにより得られる複合樹脂組成物は強度等の本来備えていた物性を十分に発揮できることが判明したからである。上述したように、本発明によれば、シラノール基と樹脂モノマーとの間に水素結合を形成させてより強固な物性の複合樹脂材料を得ることができるため、モンモリナイト等の粘土質の無機充填材とは異なり、その形成複合樹脂材料は着色されないという利点がある。
【0029】
本発明で用いられる表面改質シリカ組成物は、赤外線吸収特性において、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm-1低波数側にシフトさせる水素結合性官能基と不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて水素結合を介してシリカの表面が修飾されたものである。
【0030】
本発明において使用できるシリカとしては、シラノール基(−Si−OH)を有する無機シリカであれば特に制限無く使用できる。シラノール基の末端の水素原子は、活性なプロトン性の性質をもちアルカリ成分とよく反応し、かつ窒素原子、フッ素原子、更にはカルボニル基に含まれる酸素原子等の電気陰性度の大きい原子を含む官能基との間に水素結合を形成する性質がある。このため、表面改質シリカ組成物を母材樹脂モノマーと混合すると、母材樹脂モノマー中にしっかりと混合される。下記本発明の第二及び第三でその表面改質方法については詳述するが、微粒子シリカとしては、一般に市販されている四塩化珪素(SiCl4)の高温加熱加水分解品や珪酸ソーダ((SiO2n・Na2O)の加水分解により得られるもの等を原料とすることができる。前者は微粉末状で、後者は水分散型あるいは有機溶媒分散型のコロイド状で販売されているが、本発明では双方の微粒子シリカを表面改質シリカ組成物の原料として用いることができる。なお、後者のコロイダルシリカでは、近年、球状シリカが4〜5個連結した、長さが40〜50nmの鎖状シリカが販売され(例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックST−UPなど)、本発明では、このような鎖状シリカも、従来の球状シリカと同様にしてシリカ組成物の原料として用いることができる。また、微粒子シリカは、その形状は、特に制限されるものはなく、上述したように、球状であっても鎖状であってもよいが、平均一次粒子径が380nm以下であること、より好ましくは5〜100nmであることが好ましい。これを樹脂モノマーと混合した場合に、透明性を保ちながら樹脂部材の弾性率向上と熱膨張率低減を達成することができるためである。
【0031】
本発明で用いられるシリカを表面改質するための樹脂モノマーは、シリカのシラノール基の自由水酸基の赤外線吸収ピークを330〜450cm-1低波数側にシフトさせる水素結合性の官能基と母材となる母材樹脂モノマーと単独重合あるいは共重合が可能な不飽和二重結合基を持つモノマーであることが必須の要件である。この際、シリカのシラノール基の自由水酸基のシフト量については、そのシフト量が大きいほどシリカと母材樹脂の水素結合によるが相互作用が強くなり、所期の強固な物性のナノ複合樹脂組成物が得られることを考慮してその下限を330cm-1とした。また、表面改質剤として特に好ましく使用される樹脂モノマーによるシリカのシラノール基の自由水酸基のシフト量を以下に示す。すなわち、アクリル酸では429cm-1、メタクリル酸では354cm-1、メタクリル酸メチルでは324cm-1、2−ヒドロキシエチルアクリレートでは361cm-1、及びアクリル酸ジメチルアミノエチルでは345cm-1である。
【0032】
また、本発明で使用されるシリカ表面改質用の樹脂モノマーは、所望の用途に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、水素結合形成性という点を考慮すると、シリカに含まれるシラノール基と水素結合を形成しやすい酸素原子(O)、窒素原子(N)及びフッ素原子(F)等の電気陰性度の大きい原子を含む官能基を有する樹脂モノマーが好ましく、また、シリカのシラノール基との水素結合性を考慮して、特にカルボニル基(−CO−)を有する樹脂モノマーが好ましく使用される。また、樹脂製ウィンドウ等の用途によっては、透明樹脂モノマーであることが好ましい。なお、本明細書における透明樹脂モノマーとは、全光線透過率が75%以上の樹脂を構成するモノマーをいう。ただし、上述したように、樹脂モノマーは、シリカのシラノール基の自由水酸基の赤外線吸収ピークを所定量シフトさせる特性を有し、かつ母材樹脂モノマーと重合できる不飽和二重結合基を具備するものに限られる。
【0033】
上記点を考慮して、本発明で使用されるシリカ表面改質用の樹脂モノマーの具体例としては、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系高分子材料、ポリカーボネート系高分子材料等のポリアリーレート系高分子材料、ポリアセタール系高分子材料、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル系高分子材料、ポリエーテルエーテルケトン系高分子材料、ポリエーテルケトン系高分子材料等を構成するモノマーなどの酸素原子を含む官能基を有する樹脂のモノマー;ポリアミド系高分子材料、ポリアミドイミド系高分子材料等を構成するモノマーなどの窒素原子を含む官能基を有する樹脂のモノマー;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂を構成するモノマーなどのフッ素原子を含む官能基を有する樹脂のモノマーなどが挙げられる。これらのうち、表面改質シリカ組成物に含まれるシラノール基と樹脂モノマーに含まれる官能基との水素結合性を勘案すると、(メタ)アクリル系高分子材料を構成するモノマー及びポリアミド系高分子材料を構成するモノマーが好ましく、特にアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好ましく挙げられる。この際、樹脂モノマーは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0034】
本発明による表面改質シリカ組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知のシリカ表面改質方法が使用できるが、好ましくは、シリカの状態によって最適な製造方法が使用される。
【0035】
すなわち、第一の方法は、乾式製造法により製造される粉末状(球状)シリカを用いて、本発明のナノ複合樹脂組成物を製造するものである。したがって、本発明の第二は、一次粒子形状が球状であるシラノール基を有する粉末状シリカを、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm-1低波数側にシフトさせる水素結合性官能基及び不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて表面を修飾して表面改質シリカ組成物をなし、ついで該表面改質シリカ組成物を、母材樹脂モノマーならびに重合開始剤および/または溶媒を含む混合溶液に配合して、該表面改質シリカ組成物の樹脂モノマーと該混合溶液の母材樹脂モノマーとを重合してナノ複合樹脂組成物を製造することを特徴とする本発明のナノ複合樹脂組成物の製造方法である。
【0036】
本発明の第二において、前述のように、乾式法によるシリカの工業的製造は、四塩化珪素(SiCl4)の高温加水分解法を採ることが多い。本発明の第二の方法は、高温下で水素と酸素を流して水を形成させ、同時に当該形成水を四塩化珪素に接触、加水分解させて製造されるシラノール基を有する微粉末状のシリカ(乾式製法粉)を出発原料として使用するものである。なお、この方法により製造されるシリカは、表面エネルギーを最小にしようとする力が働くためか、その一次粒子の形状は限りなく球状に近い。これを受けて、本発明の第二で使用されるシリカの一次粒子形状を球状と規定した。
【0037】
このようなシリカを用いるナノ複合透明樹脂組成物の製造方法は、下記及び実施例で詳述するが、概略的には次のようである。まず、上記のようにして製造されたシリカに水素結合性の官能基と不飽和二重結合を持つ樹脂モノマーを接触させてシリカの表面を改質し、表面改質シリカ組成物を作製する。この改質は、シリカと樹脂モノマー両材料間の水素結合の形成によるものであり、形成の有無および強さの度合は赤外線分光光度計を用いて、自由水酸基と水素結合性水酸基の吸収周波数の変化を観測して評価する。次に、この表面改質シリカ組成物を、母材樹脂モノマーと重合開始剤および必要に応じて加えた溶媒からなる混合溶液に加え、所定の温度及び時間、重合反応を行ない、所期のナノ複合透明樹脂組成物を得る。この際、重合開始剤および溶媒は、母材樹脂モノマーの種類に基づいて選べばよいが、塊状重合の場合には、溶媒は不要である。なお、前記シラノール基含有シリカはチキソトロピック性があり、その特性から接着剤や塗料等の工業分野で幅広く利用されている。しかしながら、その反面、シラノール基は親水性のため、本発明に係わるような樹脂材料への適用に当たっては予め疎水化処理をする必要があり、疎水化の種々の技法が提案されている。これに対して、本発明に係わる表面改質シリカ組成物は、前記したような水素結合性と重合性の特性に加え、系を疎水化する機能も兼ね備えている。これにより、シリカの事前処理としての疎水化が不要となり、薬剤の不使用と工程削減からより安価な表面改質シリカ組成物が得られるという利点もある。
【0038】
また、第二の方法は、湿式製造法により製造される水分散型あるいは有機溶媒分散型のコロイダルシリカを用いて、本発明のナノ複合樹脂組成物を製造するものである。したがって、本発明の第三は、一次粒子形状が球状あるいは鎖状であるシラノール基を有するコロイダルシリカ溶液を、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm-1低波数側にシフトさせる水素結合性官能基及び不飽和二重結合基を有する両親媒性の樹脂モノマーを用いて表面を修飾して表面改質シリカ組成物をなし、ついで該表面改質シリカ組成物を、母材樹脂モノマーならびに重合開始剤および/または溶媒を含む混合溶液に配合して、該表面改質シリカ組成物の樹脂モノマーと該混合溶液の母材樹脂モノマーとを重合してナノ複合樹脂組成物を製造することを特徴とする本発明のナノ複合樹脂組成物の製造方法である。
【0039】
本発明の第三において、前述のように、湿式法によるシリカの工業的製造は、珪酸ソーダ(水ガラス(SiO2n・Na2O)の加水分解法を採ることが多い。すなわち、本発明の第三の方法では、珪酸ソーダに水を加えてポリケイ酸を成し、ついでアルカリ下で加熱をして格子生成させた後、濃縮して水分散型のコロイダルシリカとする。このようにして得られるシリカは、pHが9〜10.5のシラノール基を有するアルカリ性の水分散型シリカ組成物である。このシリカ組成物が出発原料として主に使用されるが、この際、上記のようにして得られたアルカリ性の水分散型シリカ組成物について、イオン交換法によりNaを除去すればpH2〜4のシラノール基を有する酸性の水分散型シリカ組成物とすることができ、または、溶媒を置換することによって、有機溶媒分散型シリカ組成物を得ることができる。これらはいずれも製品として販売されており、本発明に係わる対象のシリカ(湿式製法粉)である。この湿式製法粉状態のシリカは、既述のように、球状と鎖状があり、この際、前者の平均一次粒子径は10〜20nmのものであり、後者の平均一次粒子径は10〜20nm、長さが40〜50nmのものである。溶媒中で処理をするため粒子同士の凝結がなく、シリカは安定した状態で溶媒中に分散している。
【0040】
このようなシリカを用いるナノ複合透明樹脂組成物の製造方法は、下記及び実施例で詳述するが、概略的には次のようである。まず、コロイダルシリカに水素結合性の官能基と不飽和二重結合を持つ樹脂モノマーを接触させてシリカの表面を改質した後、乾燥して、微粉末状の表面改質シリカ組成物を得る。ここで、用いられる樹脂モノマーは、上記発明の第一で記載された樹脂モノマーに関する記載と同様であるが、親水基と親水基の両基を有する両親媒性の樹脂モノマーである。このような両親媒性の樹脂モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミドおよび2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。この際、両親媒性の樹脂モノマーは、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、先の水分散型のコロイダルシリカに予めトルエン等の有機溶媒を加え、次に両親媒性の樹脂モノマーを配合して表面改質シリカ組成物を成し、水を除去して有機溶媒分散型の表面改質シリカ組成物としてもよい。この改質は、前記乾式製粉と同様、シリカと樹脂モノマー両材料間の水素結合の形成によるものであり、形成の有無および強さの度合は赤外線分光光度計を用いて、自由水酸基と水素結合性水酸基の吸収周波数の変化を観測して評価する。次に、この表面改質シリカ組成物を、母材樹脂モノマーと重合開始剤および必要に応じて加えた溶媒からなる混合溶液に加え、所定の温度及び時間、重合反応を行ない、所期のナノ複合透明樹脂組成物を得る。この際、重合開始剤および溶媒は、母材樹脂モノマーの種類に基づいて選べばよいが、塊状重合の場合には、溶媒は不要である。
【0041】
なお、前記本発明の第三と同様であるが、シラノール基含有シリカはチキソトロピック性があり、その特性から接着剤や塗料等の工業分野で幅広く利用されている。しかしながら、その反面、シラノール基は親水性のため、本発明に係わるような樹脂材料への適用に当たっては予め疎水化処理をする必要があり、疎水化の種々の技法が提案されている。これに対して、本発明に係わる表面改質シリカ組成物は、前記したような水素結合性と重合性の特性に加え、系を疎水化する機能も兼ね備えている。これにより、シリカの事前処理としての疎水化が不要となり、薬剤の不使用と工程削減からより安価な表面改質シリカ組成物が得られるという利点もある。
【0042】
以下、本発明による表面改質シリカ組成物の製造方法を詳述する。
【0043】
本発明による表面改質シリカ組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知のシリカ表面改質方法が使用できる。例えば、表面改質シリカ組成物は、シラノール基を有するシリカに、改質剤としての上記したような特定の樹脂モノマーで処理することによって製造される。
【0044】
すなわち、シリカを樹脂モノマーで改質する方法としては、シクロヘキサン等の溶媒中にシリカを分散し、ついで改質剤である樹脂モノマーを添加し、還流処理をする、いわゆる液相法によって行なうことができる。反応終了後、生成物をシクロヘキサンで洗浄する。この際、微粒子シリカを分散させる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のパラフィン系炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン、シクロへキサン等のシクロパラフィン系炭化水素;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系炭化水素;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。シリカは、上記溶媒中に10〜45質量%の濃度に調整する。改質条件は、特に制限されず、樹脂モノマーの種類や濃度等によって異なり、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の赤外吸収ピークが330〜450cm-1低波数側にシフトするような条件であればよい。例えば、好ましい改質温度は、40〜200℃であり、還流時間は0.5時間以上である。
【0045】
このような改質は、真空ラインの中でシリカを加熱して吸着水を除去した後、改質剤である上記樹脂モノマーの蒸気を導入して200〜300℃で加熱する、いわゆる気相法によっても行なうことができる。改質条件は、特に制限されず、樹脂モノマーの種類や濃度等によって異なり、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の赤外吸収ピークが330〜450cm-1低波数側にシフトするような条件であればよい。なお、改質前のシリカが水に分散したコロイド状である場合には、水との反応性を回避するために水を例えばメチルエチルケトン等の有機溶媒に置換する必要がある。このような脱水方法は特開平2000−44226号等で開示されている。
【0046】
上述したようにしてシリカ表面が改質された本発明による表面改質シリカ組成物の形状については特に限定されず、一般的な粒子状や球状、略球状だけでなく、鎖状、直方体や板状、繊維のような直線形状、枝分かれした分岐形状等も用いることができるが、好ましくは粒子状、特に球状や鎖状である。また、本発明による表面改質シリカ組成物の粒径もまた、表面改質シリカ組成物が母材樹脂モノマー中に均一に分散できるような粒径であれば特に限定されないが、高強度・低熱膨張率でかつ透明性の高いナノ複合透明樹脂組成物を得ることを考慮すると、出来るだけ粒径の小さいシリカを用いるのが望ましい。より望ましくは、可視光線波長(380〜770nm)である380nm以下、特に望ましくは5〜100nmの平均一次粒子径を有する表面改質シリカ組成物が使用できる。平均一次粒子径を380nm以下とすることでこれを配合した樹脂組成物の透明性を担保できる。なお、平均一次粒子径が5〜100nmのものは、透明性の確保の点で優れる。なお、本明細書において、「平均一次粒子径」とは、シリカ組成物の直線距離で最も長い部分の長さの平均値をいう。
【0047】
次に、本発明による表面改質シリカ組成物及び母材樹脂モノマーからのナノ複合樹脂組成物の製造方法を詳述する。すなわち、本発明において、このような表面改質シリカ組成物は、さらに母材樹脂モノマーに配合されて、表面改質シリカ組成物の表層に存在する不飽和二重結合基を持つ樹脂モノマーと単独重合あるいは共重合される。
【0048】
本発明において、表面改質シリカ組成物の配合量は、母材樹脂モノマー100質量部に対して、3〜100質量部の範囲であることを必須要件とする。シリカ組成物の配合量を特定範囲に制限することで、剛性、耐衝撃性等の強度を確保し、熱膨張率を低減することができるからである。当該シリカ組成物の配合量が増すにつれて水素結合の存在割合が増し、それにつれて複合樹脂材料の強度は増しかつ熱膨張率も低下するが、母材樹脂モノマー100質量部に対する配合量が100質量部を超えても更なる特性向上は少なく、逆に透明性が低下し、また比重が高くなって部材の質量が増える場合がある。したがって、表面改質シリカ組成物の配合量は、母材樹脂モノマー100質量部に対して100質量部を上限とするのが望ましい。一方、母材樹脂モノマー100質量部に対する配合量が3質量部以上あれば、線膨張係数の低減効果は低いものの、複合樹脂材料の強度が向上しその効果が認められるが、配合量が3質量部を下回ると、熱膨張率の低減効果が低く、ナノ複合樹脂組成物の強度向上や熱膨張率低減の機能に劣り、シリカ無添加の透明樹脂材との差異はない場合があるからである。なお、ナノ複合透明樹脂組成物の強度向上は、シリカ組成物の配合量が3質量部以上になると認められ、40質量部以下であると所定の機能の全てを確保でき、かつ重量増加を最小限に押さえることができる。これらより、表面改質シリカ組成物の配合量は、母材樹脂モノマー100質量部に対して、3〜40質量部とするのがより望ましい。
【0049】
本発明で用いられる母材樹脂モノマーは、表面改質シリカ組成物の表層に存在する不飽和二重結合基を持つ樹脂モノマーと単独重合あるいは共重合が可能であれば、特に制限されずに公知のモノマーが使用できる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン;スチレン、オルソメチルスチレン、メタメチルスチレン、パラメチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族炭化水素;塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルアルコールなどのビニル系モノマー;テトラフルオロエチレン等のフッ素系モノマー;ならびに(メタ)アクリル酸系モノマーが挙げられる。これらのうち、表面改質シリカ組成物の表層に存在する不飽和二重結合基を持つ樹脂モノマーとの重合性を考慮すると、エチレン、プロピレン、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルアルコール、テトラフルオロエチレン等のフッ素系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましく使用される。この際、母材樹脂モノマーは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0050】
また、上記母材樹脂モノマーのうち、自動車窓ガラスなど屋外での使用頻度の高い部材には、透明性に加え、耐候性の良い(メタ)アクリル酸系モノマーを使用することが特に好ましい。上記(メタ)アクリル酸系モノマーは、官能性モノマーと非官能性モノマーに大別される。このうち、官能性モノマーの具体例としては、カルボキシル基を有するものとしてアクリル酸およびメタクリル酸が、ヒドロキシル基を有するものとしてメタクリル酸ヒドロキシルエチルおよびメタクリル酸ヒドロキシプロピルが、アマイド基を有するものとしてアクリルアマイドおよびメタアクリルアマイドが、グリシジル基を有するものとしてアクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルそしてメタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸第三ブチルアミノエチル等が挙げられる。さらに、非官能性モノマーの具体例としては、硬質モノマーに分類されるメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸正ブチルおよびメタクリル酸イソブチルが、そして軟質モノマーに分類されるメタクリル酸正ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸正ブチル、アクリル酸イソブチルおよびアクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらのモノマーは、単独であるいは2種以上の混合物として母材樹脂モノマーとして使用することができる。なお、本発明において、シリカの修飾用の樹脂モノマーと母材樹脂モノマーが同一の場合には単独重合体のナノ複合樹脂組成物となり、異質の場合には共重合体のナノ複合樹脂組成物となる。
【0051】
本発明において、ナノ複合樹脂組成物は、上記のようにしてシリカのシラノール基と樹脂モノマーの水素結合性官能基との水素結合を介してシリカ表面が改質された表面改質シリカ組成物が形成された後、この表面改質シリカ組成物を母材樹脂モノマー中に配合して、シリカ表面上の樹脂モノマーと母材樹脂モノマーとを重合させることによって調製される。この際、表面改質シリカ組成物は、母材樹脂モノマー、重合開始剤、および必要であれば溶媒と直接混合されても、あるいは予め他の溶媒に溶解された後溶液の形態で混合されてもよい。後者の場合、使用できる他の溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のパラフィン系炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロへキサンなどのシクロパラフィン系炭化水素;メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼンなどの芳香族系炭化水素等が挙げられる。また、この際の溶解液中の表面改質シリカ組成物の濃度は、特に制限はないが、混合の均一性や操作性の点から10〜45質量%であることが好ましい。
【0052】
本発明において、混合溶液を構成する溶媒は、使用される母材樹脂モノマーや表面改質シリカ組成物の種類によって適宜選択される。例えば、メチルメタアクリレートなどを主な母材樹脂モノマーとして使用する場合には、アセトン、アニリン、キシレン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、トルエン及びメチルエチルケトンなどの芳香族系やケトン系の有機溶媒を好ましく使用することができる。溶媒の量は、特に制限されないが、混合溶液の均一性や音波処理や重合反応の操作性の点から、溶媒における母材樹脂モノマーの濃度が、10〜40質量%となるような量であることが好ましい。本発明では、溶媒は、樹脂モノマーの重合反応後に、除去されることで、本発明のナノ複合透明樹脂組成物を調製することができる。なお、凝固用の溶剤としては、エタノール、メタノール、ブタノールなどのアルコール類やヘキサンなどが挙げられ、その配合量は、重合反応後の溶液100質量部に対して、10〜300質量部、より好ましくは50〜100質量部である。
【0053】
本発明のナノ複合樹脂組成物には、必要に応じて透明性を阻害しない程度に、様々な添加剤、例えば帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、エネルギー消剤、難燃剤、顔料、着色剤等を添加してもよい。
【0054】
本発明のナノ複合樹脂組成物は、強度が高く、熱膨張率が低くかつ使用される樹脂モノマーや母材樹脂モノマーの種類によっては透明性が高いという特性を兼ね備えているため、これらの機能が要求される部材に好適であり、例えば、内装材では計器盤の透明カバーならびに外装材では窓ガラス(ウィンドウ)やヘッドランプ、サンルーフ及びコンビネーションランプカバー類などの、自動車や家電そして住宅に用いられる透明部材・備品に適している。特に、本発明のナノ複合樹脂組成物は、軽量化と成形の自由度が要求される無機ガラス代替用途としての樹脂製ウィンドウ(特に、熱線付き樹脂製ウインドウ);車両用内外装部品成形体及び車両用外板;樹脂製ワイパーシステム;樹脂製ドアミラーステイ;樹脂製ピラー;樹脂成形体;樹脂製ミラー;樹脂製ランプリフレクター;樹脂製エンジンルーム内カバー及びケース;樹脂製冷却装置部品;大気と連通した中空構造および/または密閉された中空構造を有する樹脂一体成形体;一の部品に異なる2種以上の機能が付与される一体成形部品;可動部と非可動部を有する成形体;ならびに炭化水素系燃料を収納する部品あるいは容器で、その効果を有効に発揮できる。
【0055】
すなわち、請求項7〜33、36、37、38は、本発明に係わるナノ複合樹脂組成物の用途に関するものである。
【0056】
以下、本発明に係わるナノ複合樹脂組成物の用途について詳述する。
【0057】
本発明の第四は、上記記載の本発明のナノ複合樹脂組成物を用いた車両用内外装部品成形体及び車両用外板である。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、高剛性、高耐熱性であり、加熱時/成形時の寸法安定性及び透明性にも優れるため、車両用の内外装部品成形体や車両用外板の用途に好適である。例えば、図1で示すような、ドアモール1、ドアミラーのフレーム枠2、ホイールキャップ3、スポイラー4、バンパー5、ウィンカーレンズ6、ピラーガーニッシュ7、リアフィニッシャー8、ヘッドランプカバー(図示せず)等の車両用外装部品成形体、図2a、図2bで示すような、フロントフェンダー21、ドアパネル22、ルーフパネル23、フードパネル24、トランクリッド25、バックドアパネル(図示せず)等の車両用外板が挙げられる。
【0059】
本発明の第五は、本発明のナノ複合樹脂組成物を含んで成ることを特徴とする樹脂製ワイパーシステム、樹脂製ドアミラーステイ、樹脂製ピラーである。本発明のナノ複合樹脂組成物は、高剛性、高耐熱性であり、加熱時/成形時の寸法安定性、透明性にも優れるため、例えばワイパーシステム、ドアミラステーやピラー等のような視界の向上が要求される部品の用途に好適である。
【0060】
従来のワイパーシステムは、黒色塗装仕上げの鋼鉄と黒色のゴムで構成され、低速作動時に視界が妨げられるという課題があった。また、従来のドアミラステーは、外板と同色もしくは黒色塗装仕上げの樹脂製であり、右左折時の視界が妨げられるという課題があった。また、従来のピラーは鋼鉄製であり、フロントピラー、センターピラーは通常走行時や右左折時、リアピラーは後方移動時や後方確認時に視界が妨げられるという課題があった。これらの部品に透明な樹脂材料を使用できれば視界は向上するが、高い剛性や耐熱性、加熱時/成形時の寸法安定性も要求されることから、従来の透明樹脂材料では実現が難しかった。これに対して、本発明の高剛性、低熱膨張率及び低熱収縮率を兼ね備えるナノ複合樹脂組成物を上記したような透明材として用いることで、これらの課題が解決可能となり、透明な上記部品が得られることが判明した。また、これらの部品の透明化は視界向上だけでなく、意匠性の向上にも寄与できると期待される。
【0061】
本発明のワイパーシステムの一実施態様を、図3に模式的に示す。図3に示されるように、ワイパーシステム30は、ワイパーアーム31とワイパーブレード32から構成され、ワイパーアーム固定用ナット穴33を中心として半弧を描くように作動する。ワイパーブレード32は、一般に弾性を有する支持部分と軟らかいゴム部分とから構成され、本発明のワイパーシステムにおいては、ワイパーアーム、ワイパーブレード、ワイパーブレード支持部分の少なくとも1つに本発明の樹脂組成物を透明材として用いたものである。なお、本発明のワイパーシステムにおいては、該ゴム部分として耐久性が高く比較的透明性の高いシリコンゴム等を用いることが好ましい。また、ワイパーブレードの支持部分として、本発明の樹脂組成物に適量のアクリルゴム成分を加えた樹脂組成物を用いて調製してもよい。ワイパーブレードの支持部分に適度な弾性を与えることができるからである。このような樹脂組成物としては、例えば、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、アクリルゴム(アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルやその共重合体等で、例えば日本ゼオン株式会社製Nipol AR31がある)を1〜30質量部添加したものがある。
【0062】
また、本発明において、ワイパーシステム、ドアミラーステイ及びピラーは、本発明のナノ複合樹脂組成物のみを透明材として用いてもよいが、例えば、本発明の樹脂組成物を他の樹脂材料と積層した多層積層体として構成されることも可能である。このような多層積層体は、少なくとも本発明の樹脂組成物からなる層を一層以上含んでいればよく、好ましくは積層体の最表面層と最下層が本発明の樹脂組成物からなり、より好ましくは中間層にも該樹脂組成物層を設ける。このように多層積層体とすることで、本発明の樹脂組成物以外の他の付加機能をも付与することが可能となる。多層積層体を用いる場合の各層の厚さは、最終的な成形品の厚さと積層数から至適な厚さを選択することができる。このような多層積層体とする場合の他の樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン/メチルメタアクリレート共重合体がある。また、本発明の樹脂組成物や上記多層積層体を用いたワイパーシステム、ドアミラーステイやピラーの製造方法や構成は特に限定されず、それぞれ単独の部品としてもよいし、ドアミラーステイやピラーとして使用できるのであれば、例えば後記する一体成形体の製造方法等によって、ドアミラーステイとフロントピラーや各ピラーと樹脂ルーフパネルとの一体成形体とすることもできる。
【0063】
本発明の第六は、透明部と不透明部を有する樹脂成形体であって、少なくとも透明部が本発明の樹脂組成物を含んで成ることを特徴とする樹脂成形体である。本発明のナノ複合樹脂組成物は、高剛性、高耐熱性であり、加熱時/成形時の寸法安定性、耐薬品性、透明性にも優れるため、透明部と不透明部とを有し、これらを一体に成形した樹脂成形体の用途にも好適に使用できる。このような樹脂成形体を、自動車部品を例に説明する。
【0064】
自動車には、各種ランプ類やカバー、ガラス等の透明な部品と、外板や各種内装部品のような不透明な部品が混在している。これらの部品にはそれぞれ透明性、剛性、耐熱性、低線膨張率、低成形収縮率、耐薬品性等、異なる様々な特性が要求されるため、従来の樹脂材料ではこれら透明な部品と不透明な部品との一体化は難しかった。しかしながら、本発明の樹脂組成物は、射出成形、真空圧空成形などによって容易に成形できるため、本発明の樹脂組成物を透明材として使用して、高剛性、高耐熱性、低線膨張率、低成形収縮率、高耐薬品性を確保しつつ、透明な部分と不透明な部分とを一体成形させ、部品点数及び工程数の削減、部品重量を低下させることができる。また、透明部と不透明部の一体形成により、従来分割されていた外形線が一つの連続するラインで形成できるため、部品外観の向上が図れる。より具体的には、透明性を必要とするヘッドランプはその周囲に存在するバンパ、フロントグリル、フェンダ、フードといった不透明の別の部品と接している。これらを一体成形すると部品点数の削減が可能となり、一体化された部品を組み付ければよいため、組み立て時の工程数も削減できる。特に、本発明の樹脂組成物は耐熱性に優れるため、ランプの熱源が近くて樹脂が溶融するなどの問題もない。従来のヘッドランプはポリカーボネート樹脂製でできているため耐光性が低く、太陽光に暴露されると黄変するため表層コーティングが必要であった。しかしながら、本発明の樹脂組成物を用いるとこのような問題も解決される。
【0065】
このような樹脂成形体の製造方法としては特に制限させるものではない。例えば、透明性が必要とされる部品として自動車用ガラスがあり、ドアに付属するサイドガラス、バックドアガラス、リアフェンダーとルーフに接着してあるリアクウォーターガラス、リアガラス等と称呼されている。本発明の樹脂組成物を用いることにより、これらとガラスとの一体成形部品を得ることができる。例えば、サイドガラスやバックドアガラスは、ドアアウターとドアインナーとの間にガラスが配置される構造である。予めドアアウターとドアインナーとを用いて内部に中空部を形成させ、該中空部に本発明の樹脂組成物を流し込むことで、ドアアウター・ドアインナー・ガラスを一体に成形することができる。同様にして、ピラーガーニッシュとリアクウォーターガラスとを一体化することもできる。本発明の樹脂成形体を図4で示すが、上記ピラーガーニッシュとリアクウォーターガラスとを一体化した樹脂成形体に限らず、ランプ・フード・フェンダー一体樹脂成形体41、ピラーガーニッシュ・ガラス一体樹脂成形体42、ルーフ・フェンダ・ガラス一体樹脂成形体43、バックドア・ガラス一体樹脂成形体44、ドア・ガラス一体樹脂成形体45等がある。なお、ドアロックやワイパーモーター等は後工程で部品の中空部に設置すればよい。
【0066】
また、例えば、自動車用内装材としてインストルメントパネルがあるが、従来から、計器類、その透明なカバー、クラスターリッドは別部品で作られている。しかしながら、本発明の樹脂組成物を用いることにより、透明樹脂部と不透明樹脂部が一体で成形できるため、予めインストルメントパネル51と計器類のカバー52を一体的に成形しておき、インストルメントパネルに数種の部品を集約することで、部品点数削減しかつ軽量化を図ることができる。このようなインストルメントパネルと計器類のカバーとの一体化の例を、図5に模式的に示す。
【0067】
また、本発明の樹脂組成物を使用して、樹脂成形体の一部が透明部であり他の部分が不透明である、高強度・高剛性を保持した部材とすることもできる。例えば、ルーフの一部に本発明の樹脂組成物を用いると該部分を透明にすることができ、ガラス製サンルーフを設けなくとも透明なルーフとすることができる。なお、上記樹脂成形体において、不透明部は着色していてもよい。
【0068】
本発明における透明部と不透明部とを有する樹脂成形体において、着色した不透明部の樹脂成形体を得るには、着色した原料樹脂を用いる方法、不透明部に塗装または印刷して着色する方法、または不透明樹脂として着色シートを使用する方法等がある。
【0069】
着色した原料樹脂の調製方法としては、原料樹脂に予め顔料を分散させておく方法の他、原料樹脂ペレットと顔料ペレットを同時に溶融・混練させ、射出成形機を用いて金型内に射出して着色樹脂を得る方法がある。該着色樹脂を用いて本発明の樹脂成形体を製造するには、続いて金型を開き、または溶融樹脂通過経路を新たに作り、別のシリンダを用いて金型の空隙部に透明溶融樹脂を射出すればよい。これによって透明部と着色した不透明部とを有する樹脂成形体を製造することができる。なお、不透明樹脂を先に射出するか透明樹脂を先に射出するかはどちらでも良い。
【0070】
塗装または印刷により着色した不透明部を形成するには、予め透明樹脂を溶融して目的の樹脂成形体を形成し、その後該樹脂成形体の表面または裏面から塗装または印刷を施して着色および不透明性を確保する方法である。溶融樹脂の賦形前に塗装または印刷を施し、その後に賦形することもできる。
【0071】
不透明樹脂として着色シートを使用する場合には、予め着色された不透明シートを予備賦形しておき金型内に配置し、続いて溶融透明樹脂を金型内に注入し、樹脂を冷却固化させ、その後に金型より取り出せば、本発明の樹脂成形体を得ることができる。
【0072】
また、上記方法によれば、例えばルーフ・フェンダ・ガラス一体樹脂成形体として、ガラス部が透明部であり、ルーフとフェンダとが不透明である樹脂成形体に限られず、ガラスの上部とルーフの一部が透明部であり、フェンダとガラスおよびルーフの残部が不透明の樹脂成形体とすることもできる。
【0073】
更に、本発明の透明部と不透明部とが一体成形された樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物と顔料とによって構成できるが、本発明の樹脂組成物と他の樹脂とを積層した多層積層体で構成することも可能である。このような多層積層体は少なくとも本発明の樹脂組成物から成る層を一層以上含んでいればよく、好ましくは積層体の最表面層と最下層、更に好ましくは中間層にも該樹脂組成物層を設けることができる。このように多層積層体とすることで本発明の樹脂組成物のみでは発現できないような付加機能をも付与することが可能となる。なお、多層を構成する他の樹脂の種類や各層の厚さは、樹脂成形体の用途に応じて適宜選択することができる。
【0074】
本発明の第七は、本発明の樹脂組成物を含んで成ることを特徴とする熱線付き樹脂製ウィンドウ、樹脂製ミラー、樹脂製ランプリフレクター、樹脂製エンジンルーム内カバーおよびケース、樹脂製冷却装置部品である。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、高剛性、高耐熱性であり、熱時/成形時の寸法安定性、耐薬品性、透明性にも優れるため、例えば樹脂製ウィンドウや樹脂製ミラー、ランプリフレクター、エンジンルーム内カバーおよびケース等の部品の用途に好適であり、部品点数、工程数、重量の低減が可能になる。更に本発明の樹脂組成物を透明材として用いることで、透明性が要求される部品の材料代替が可能になり、防曇性や視界の向上が図られる。例えば、図6に示すリアウィンドウ63、ドアウィンドウ62、フロントウィンドウ61などの樹脂製ウィンドウは、防曇機能を付与するため成形体の内部や表面に加熱可能な熱線ヒータを設けることがある。従来の透明樹脂材料を用いた場合には、熱線ヒータによる樹脂材料の耐熱性や熱膨張が課題となるが、本発明の樹脂組成物は加熱時/成形時の寸法安定性に優れるため、本発明の樹脂組成物を用いるとこれらの問題がない。また、本発明の樹脂組成物は高い剛性を有するので、フロントウィンドウ61、ドアウィンドウ62、リヤウィンドウ63等の大型部品に応用可能で軽量化することができる。尚、熱線ヒータの形成方法としては、特に制限されず、公知の方法が使用でき、例えば、フィルム化された熱線部をインサート成形する方法や、室内側表面に熱線部を蒸着・塗布・印刷法等により形成する方法等が挙げられる。
【0076】
また、本発明の透明樹脂を用いて樹脂製サイドミラー64(図6参照)を製造すると、従来のガラスや透明樹脂を用いた場合に比べ軽量化ができ、これに熱線ヒータを設ければ防曇機能を付与することも可能になる。図6に示したサイドミラー以外にも車室内のルームミラー等にも適用可能である。
【0077】
また、図7に自動車ランプの横断面図を示す。車体側基体71に固定されたアウタ部材72の内部にリフレクター73が配置され、該リフレクター73にはバルブ74と光軸調整器75が連結し、該アウタ部材ははさらにアウタレンズ76が嵌合されている。従来の樹脂材料を用いてリフレクター73を構成すると、耐熱性・線膨張率・線膨張異方性に劣る場合があったが、本発明の樹脂組成物を用いるとこれらの問題が解決できる。特に、本発明の樹脂組成物は高い剛性を有するため軽量で高耐熱性が確保でき、かつ寸法安定性と表面平滑性に優れるランプリフレクターとでき、ヘッドランプ、フォグランプ、リアコンビランプ等のリフレクター、またはヘッドランプのサブリフレクター等に好適に使用できる。尚、反射部の形成方法としては、例えば該部材を製造する際に反射膜部をインサート成形する方法や、該部材を射出成形・プレス成形により成形後に、反射部に蒸着膜を形成させる方法等がある。
【0078】
また、本発明の樹脂組成物を使用して、エンジンルーム内カバーおよびケースに応用することができる。エンジンルーム内を図8および図9に示す。本発明の樹脂組成物は透明性、耐熱性、耐薬品性、剛性強度に優れるため、温度条件の厳しいエンジンルーム内において使用可能で、かつ軽量な部品とすることができる。このような部品としては、例えば、ラジエーター81、冷却液リザーブタンク82、ウオシャータンクインレット83、電気部品ハウジング84、ブレーキオイルタンク85、シリンダーヘッドカバー86、エンジンボディー91、タイミングチェーン92、ガスケット93、フロントチェーンケース94などがある。しかも、本発明の樹脂組成物は透明であるため、上記ウオッシャータンクインレット、電気部品ハウジング、ブレーキオイルタンク、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー等のタンクあるいはカバー内の視認性を向上させることができる。
【0079】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性、耐薬品性、剛性強度に優れたより軽量な部品とすることができることから、自動車エンジンルーム内で冷却水との接触下で使用される部品用途に好適に使用される。このような樹脂製冷却装置部品を図10、11に示す。例えば、図10に示すウォータパイプ101、O−リング102、ウォータポンプハウジング103、ウォータポンプインペラ(羽車)104、ウォータポンプ105、ウォータポンププーリ106、図11に示すウォータパイプ111、サーモスタットハウジング112、サーモスタット113、ウォータインレット114等のラジエタータンクのトップおよびベースなどのラジエタータンク部品、冷却液リザーブタンク、バルブなどの部品が挙げられる。該樹脂組成物を使用すると軽量化、耐薬品性向上、燃費向上が図られるため、その実用価値が高い。
【0080】
なお、本発明の上記各部品は、本発明の樹脂組成物のみでも構成できるが、例えば本発明の樹脂組成物を他の樹脂材料と積層した多層積層体で構成することも可能である。このような多層積層体は少なくとも本発明の樹脂組成物から成る層を一層以上含んでいればよく、好ましくは積層体の最表面層と最下層、更に好ましくは中間層にも該樹脂組成物層を設けることができる。多層積層体とすることで本発明の樹脂組成物のみでは発現できないような付加機能をも付与することが可能となる。なお、各層を構成する他の樹脂の種類や各層の厚さなどは、使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0081】
本発明の第八は、上記樹脂組成物を含んで成る、大気と連通した中空構造および/あるいは密閉された中空構造を有することを特徴とする樹脂一体成形体である。上記のように、本発明の樹脂組成物は、高剛性、高耐熱性であり、加熱時/成形時の寸法安定性にも優れるため、例えばドアやルーフ、フード等のような中空構造を有する部品の用途に好適である。本発明の樹脂一体成形体としては、自動車の外板および内外装部品が好ましく挙げられる。この際、自動車の外板および内外装部品は、鋼板と樹脂パネルより構成され、かつ部品内部に補機等を装着する中空構造を有している部品が多い。例えば、側面ドアおよびバックドアは、外側および内側を鋼板で中空構造を構成し、塗装を経て組み立て工程で内側鋼板に樹脂パネルを取り付け、中空構造内に各種補機等を取り付けている。また、ルーフ、フード、トランクリッド、バックドア等は、外板および補強レインホース等を鋼板で構成し、塗装後に内側に樹脂部品を取り付けている。これらの中空構造を有する部品は大型であり、剛性や寸法安定性も要求されるため、従来の樹脂材料では一体成形が難しかった。しかしながら、高剛性、低熱膨張率、低熱収縮率を有する本発明の樹脂組成物を使用すると一体成形が可能となり、これらの部品の部品点数、工程数、重量の低減が可能になる。
【0082】
本発明の樹脂一体成形体は、本発明の樹脂組成物のみでも構成できるが、例えば本発明の樹脂組成物を他の樹脂材料と積層した多層積層体で構成することも可能である。このような多層積層体は少なくとも本発明の樹脂組成物から成る層を一層以上含んでいればよく、好ましくは積層体の最表面層と最下層、更に好ましくは中間層にも該樹脂組成物層を設けることができる。多層積層体とすることで本発明の樹脂組成物のみでは発現できないような付加機能をも付与することが可能となる。多層積層体を構成する他の樹脂の種類や各層の厚さなどは、使用目的に応じて適宜選択することができる。なお、このような多層積層体として、本発明の熱可塑性樹脂積層体を使用することもできる。
【0083】
本発明の樹脂一体成形体は、最表面層に表皮材、意匠印刷層等の加飾層を設けることで意匠性、触感、質感を高め商品性を向上することができるため、一体成形体の最表層が加飾材で構成されることが好ましい。例えば、起毛シート、エンボス紋様シート、レーザー紋様シート、木目調シート等の表皮材を最表面層に設けた成形体は、ルーフ室内側、ピラーガーニッシュ類、インストルメントパネル等に用いることができる。前述の多層積層体を用いた場合には、意匠印刷層はその中間層に設けてもよく、表層を透明材とすることで光沢感、深み感を高めることができる。
【0084】
本発明の中空構造を有する一体成形体において、中空構造は、気体、液体若しくは固体またはこれらの混合物が充填、封入されることが好ましい。断熱性能、遮音性能を向上させることができるからである。充填、封入される材料は、特に制限されず、公知の充填・封入材が使用できるが、例えば、透明性が要求される場合には、窒素、アルゴン、二酸化炭素、空気等の気体が好ましく、透明性が要求されない場合には、前述の気体の他、封入時の加熱で液状を示しかつ封入後の常温では固体状になるパラフイン、ワックス等が好ましい。上記封入材により、夏期には車室内から冷熱の逃げ、外気の高熱の侵入を、冬期には温熱の逃げ、外気の冷熱の侵入を抑制し快適な車室内環境を維持できる。また二重壁で内に中空部を有する構造により、外部からの騒音エネルギーを緩和、あるいは吸収し静粛な車室内環境を達成できる。また、フードに本発明の樹脂一体成形体を適用することでエンジンルームからの放射音、放射熱を低減できる。
【0085】
本発明の中空構造を有する一体成形体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法が適用できるが、例えば、一般的な真空圧空成形法、射出成形法、ブロー成形法、プレス成形法等を用いることができる、また、例えば、下記方法が好適に用いられる。
【0086】
第一の方法としては、加圧流体導入経路を備えたホルダーに、2枚の本発明の樹脂組成物よりなる樹脂シートを固定し、公知の方法でホルダーをシールして2枚のシート間に密閉空間を形成する。各シートを荷重たわみ温度以上に加熱し、開放状態の金型に挿入した後に、軟化したシートの外周部を金型で押圧して溶着する。この際、外周部を溶着する前あるいは溶着しつつあるいは溶着した後に、好ましくは溶着する前あるいは溶着した後に、2枚のシート間の密閉空間に加圧流体を注入し、シートを拡張しつつ/または拡張後、金型を閉状態にして成形体が冷却するまで加圧流体圧を保持し、これにより中空構造を形成する。好ましくは、真空引き孔を設けた金型を用い、シート拡張時に真空吸引を併用して、金型面とシートとの密着性を高める。真空吸引を用いることによって、得られる一体成形体の転写性を向上できる。すなわち、本発明の第九は、本発明の樹脂組成物を含んでなる樹脂シート2枚を加熱し、これを開状態の金型に挿入し、シート外周部を押圧し、外周部を溶着する前あるいは溶着した後にシート間に加圧流体を注入し、シートを拡張しつつ/または拡張した後に、金型を閉状態にし、加圧流体圧を保持し中空構造を形成する、本発明の樹脂一体成形体の製造方法である。
【0087】
第二の方法としては、閉状態の金型内に溶融した本発明の樹脂組成物を充填しつつあるいは充填した後、金型を後退して、キャビティ容積を拡大しつつ溶融樹脂内部に加圧流体を注入し中空構造を形成する方法である。すなわち、本発明の第十は、閉状態の金型内に溶融した本発明の樹脂組成物を充填しつつ/または充填後、キャビティ容積を拡大しつつ加圧流体を溶融樹脂内に注入し中空構造を形成する、本発明の樹脂一体成形体の製造方法である。
【0088】
第三の方法としては、金型片面のキャビティ面に本発明の樹脂組成物よりなる樹脂シートを1枚インサートし、背面に溶融樹脂を充填しつつ、あるいは充填後に金型を後退しキャビティ容積を拡大しつつ溶融樹脂内部に加圧流体を注入し中空構造を形成する方法、あるいは2枚の樹脂シートを用い金型両面のキャビティ面にシートをインサートし、シート間に溶融樹脂を充填しキャビティ容積を拡大し加圧流体を注入し中空構造を形成する方法である。すなわち、本発明の第十一は、開状態の金型キャビティ面に本発明の樹脂組成物を含んでなる樹脂シートを1枚もしくは2枚インサートし、金型を閉状態で2枚のシート間もしくは1枚のシート背面に溶融樹脂を充填しつつまたは充填した後、キャビティ容積を拡大しつつ加圧流体を溶融樹脂内に注入し中空構造を形成する、本発明の樹脂一体成形体の製造方法を提供するものである。
【0089】
上記態様において、シートに充填される樹脂の種類は、本発明の樹脂組成物からなるシートと密着する樹脂であれば特に制限されないが、好ましくは、シートの樹脂組成物と接する樹脂種と同種の樹脂またはこれとSP値が近いものが使用される。このような充填樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、熱可塑性ポリウレタン樹脂等が挙げられ、特にポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。ここにポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAに代表される二価のフェノール系化合物から誘導される重合体で、ホスゲン法、エステル交換法、あるいは固相重合法のいずれにより製造されたものでもよい。更に、従来からあるポリカーボネート樹脂の他にエステル交換法で重合したポリカーボネート樹脂でもよい。
【0090】
本発明において、加圧流体しては、特に制限されず、樹脂シートの成分等を考慮して公知の加圧流体から選択される。例えば、空気、窒素ガス等の気体、水やシリコンオイル等の液体などが好ましく使用される。
【0091】
本発明の中空構造を有する樹脂一体成形体の適用部品としては、図12、13に示すように、例えば、フード121、ドア122、バックドア123、ルーフ124、フェンダー125、ウィンドウ126、トランクリッド127、センターコンソールボックス131、ピラーガーニッシュ132、インストルメントパネル133、ヘッドライニング等を挙げることができる。これらの部品はインナー/アウターおよび付帯する部品やレインホース等を同時にかつ一体で成形でき、部品数の低減および工程数を短縮することができる。更に中空部に気体、液体、固体あるいはこれらの混合物を封入することで、断熱性能、遮音性能等の付加的な機能を付与することができる。例えばフードではレインホースとの一体化や遮音・遮熱機能の付与が可能であり、ルーフではヘッドライニングとの一体化や断熱・遮音機能の付与が可能であり、ドアやフェンダーではインナー/アウターの一体化が可能である。
【0092】
本発明の第十二は、本発明の樹脂組成物を含んで成る、異なる機能を有する2種類以上の部品を統合することを可能にし、ひとつの部品に異なる2種類以上の機能が付与される一体成形部品である。ここに異なる機能とは、例えば、インストルメントパネルのような表示機能、エアコンダクトなどのような通風機能、ルーフレール等の固定機能などをいう。本発明の樹脂組成物は、高剛性、高耐熱性であり、加熱時/成形時の寸法安定性、耐薬品性等の多彩な機能を有するため、種々の機能の確保が期待される部材に応用することができ、これらを一体成形することで異なる機能を有する二種類以上の部品を統合し、ひとつの部品に二種類以上の機能が付与された一体成形部品とすることができる。これによって大型部品の一体化、いわゆるモジュール化やインテグレーション(統合化)に好適であり、高品質を維持しながら部品点数、工程数、重量の低減が可能になる。
【0093】
例えば、大型内装部品である図14に示すインストルメントパネルは、現在、パネル部141とエアコンのエアダクトやケース142、クロスカービーム(ステアリングクロスメンバー)を別々に作り、これらを車の製造ラインで組み立てている。従来の樹脂材料でパネル部とエアコンのエアダクトやケースを一体成形しようとすると、大型かつ複雑な形状の部品のため、成形収縮によるヒケや歪み、熱時の膨張などが課題となるが、本発明の樹脂組成物を用いることでこのような課題が解決可能となる。また、本発明の樹脂組成物は上記したように高耐熱性を有し、加熱時/成形時の寸法安定性に優れているので、このような一体成形により部品全体を構造体とすることが可能で、従来スチールが使用されているクロスカービーム(ステアリングクロスメンバー)を廃することが可能である。また本発明の樹脂組成物を用いることでスチールでは後付けする必要があったブラケット等も一体成形可能となる。また一体成形時に金型内に表皮材等の加飾材を投入しインサート成形することにより、加飾材との一体成形も可能になる。同様の効果は例えばドアに適用した場合でも得られる。現在のドアインナーパネルはスチール製が主で、ここにサイドウィンドウ用のガイドレールやレギュレータ、ドアロック、スピーカ等の各種部品が製造ラインで組み付けられる。本発明の樹脂組成物を用いることでドアインナーパネル、ガイドレール、スピーカハウジング等を一体成形することができる。
【0094】
図15に本発明の一体成形部品の他の例を示す。図15に示すように、大型外装部品であるルーフレール151を例にすると、前述した本発明の樹脂組成物製のルーフパネル152との一体成形が可能となる。ルーフレールは重量がかかり、また温度的にも厳しい環境で使用されるため、従来の樹脂材料では特に剛性と耐熱性が課題となっていた。しかしながら、本発明の樹脂組成物を用いるとこのような課題が解決可能となる。同様の効果は例えばスポイラーに適用した場合でも得られ、前述した本発明の樹脂組成物製のトランクリッドとの一体成形が可能である。
【0095】
また、大型車体部品であるラジエタコア(図16)を例にすると、現在フロントエンドモジュールとして樹脂製のラジエタコアが世に出つつあるが、本発明の樹脂組成物を用いることで更に耐熱性、耐薬品性、剛性強度に優れた、より軽量な部品とすることができ、またファンシュラウドやブラケット等も一体成形可能となる。また、本発明では、樹脂組成物を透明材として用いることも可能であり、このような場合には、例えば、ラジエタのリザーバタンク、ヘッドランプカバー等の透明部材の一体成形も可能である。さらに、従来は別体であったバンパ補強材の一体化も可能となる。
【0096】
また、エンジンルーム内部品であるエアクリーナーやスロットルチャンバー等を例にすると、耐熱性と耐薬品性に優れ低線膨張の本発明の樹脂組成物を用いることで、これらの一体成形が可能となる。従来よりこのような一体化は試みられているが、エンジンルーム内は高温かつオイル等の薬品による厳しい環境であり、従来の樹脂材料ではこの対策が課題になるが、本発明の樹脂組成物を用いることでこのような課題が解決可能となる。同様の効果はインテークマニホールドやシリンダヘッドカバーに適用した場合でも得られ、前述の部品とともに一体成形することも可能である。
【0097】
本発明の一体成形部品は、本発明の樹脂組成物のみでも構成できるが、本発明の樹脂組成物を他の樹脂材料と積層した多層積層体で構成することも可能である。このような多層積層体は少なくとも本発明の樹脂組成物から成る層を一層以上含んでいればよく、好ましくは積層体の最表面層と最下層、更に好ましくは中間層にも該樹脂組成物層を設けることができる。多層積層体とすることで本発明の樹脂組成物のみでは発現できないような付加機能をも付与することが可能となる。このような多層積層体として、上記熱可塑性樹脂積層体がある。
【0098】
本発明の樹脂組成物は、高剛性、高耐熱性であり、加熱時/成形時の寸法安定性にも優れるため、例えば、スロットルチャンバーのような可動部と非可動部を有する部品の用途に好適である。したがって、本発明の第十三は、本発明の樹脂組成物を含んで成る可動部と非可動部を有する成形体である。
【0099】
自動車の吸排気系部品やエアコンユニット内には、可動部と非可動部を有する部品が多数用いられている。これらの部品は、主に空気などの気体の流れを制御するためのものであり、非可動部としての、気体を流路となる、即ち、流動気体を導入する筒状の部品(成形体)と、可動部としての、気体流動を制御する開閉可能な蓋から構成され、例えば、スロットルチャンバーやエアコンユニット内の各ドアが挙げられ、これらの部品では気密性が重要となる。
【0100】
従来の樹脂材料を用いてこれらの部品の筒状部分と蓋部分を成形しようとすると、成形収縮率や熱膨張率が大きいため、寸法精度が上げられず、開閉部分の気密性が課題であった。また、特にエンジンルーム内の部品に適用する場合、耐熱性も要求されるため、この点も課題となった。しかしながら、低熱膨張率、低熱収縮率、高耐熱性を有する本発明の樹脂組成物を用いることで、これらの課題が解決可能となり、気密性に優れた部品とすることができる。また、本発明の樹脂組成物は高剛性であるため、これらの樹脂組成物を用いることにより、部品の軽量化とそれによるレスポンスの向上が可能となる。
【0101】
本発明の可動部と非可動部を有する成形体の製造方法は、特に制限されず公知の方法が使用できる。本発明の可動部と非可動部を有する成形体は、例えば、射出成形法を用いて可動部と非可動部を別々に成形した後、これらを組み立てる方法を使用してもよいが、例えば、二色成形法等の方法で可動部と非可動部を一体成形することが好ましい。気密性がより向上し、また工程数や部品数の低減が可能になるためである。図17に示すスロットルチャンバーを例に取ると、例えば、下記方法で製造可能である。
【0102】
スロットルチャンバーは、非可動部である筒状のチャンバー部171と可動部である開閉バルブ172および開閉バルブシャフト173とを有する。まず、二色成形用金型内に、開閉バルブ用金属製シャフトをセットし、次に円筒状のチャンバーを射出成形し、続いて円盤状の開閉バルブを成形するためにスライドコアを後退して円盤状の開閉バルブを射出成形する。このとき金属製シャフトと円盤状の開閉バルブが一体化される。本発明によれば、可動部が気体流動を制御する開閉蓋であり非可動部は流動気体を導入する筒状成形品にも、好ましく応用することができる。
【0103】
本発明の樹脂組成物は、炭化水素系燃料の遮断性、ガスバリア性、耐薬品性に優れるため、炭化水素系燃料を収納する部品または容器、炭化水素系燃料を収納する部品または容器、例えば、燃料タンク等の炭化水素系燃料を収納する車両用の一連の燃料系部品、灯油容器等の家庭用品の用途に好適である。したがって、本発明の第十四は、本発明の樹脂組成物を含んで成る炭化水素系燃料を収納する部品あるいは容器である。
【0104】
図18に、このような部品や容器である、自動車等の車両における樹脂製燃料タンクを示す。フィラーチューブ181を介して炭化水素系燃料であるガソリンが燃料タンク182に注入・貯蔵され、ついで当該ガソリンが燃料ポンプ183によりエンジン(図示せず;付号184としてのみ表示する)に圧送される形式の燃料系システムとなっている。燃料系部品において本発明の樹脂組成物が適用できる部品としては、燃料タンク182、フィラーキャップ185、ベントチューブ186、フューエルホース187、フューエルカットオフバルブ、デリバリーパイプ、エバポチューブ、リターンチューブ、フューエルセンダーモデュール等が挙げられる。燃料タンクはこれら車両の燃料系システム部品の中で最大規模の部品である。近年樹脂化が進み、部品形状の自由度増の効果により金属製に比べ貯蔵燃料量が約10リットルほど増大、かつ重量も25%程度軽減された。この利点から燃料タンクの樹脂化への期待が一層高まっている。
【0105】
ここで、燃料タンクの樹脂化の現状と課題について詳述する。従来から、母材樹脂としてオレフィン系のHDPE(高密度ポリエチレン)が使用され、その工法として吹き込み法で成形が行われてきた。これらの材料と工法には大きな変化はなかったが、タンクの層構造は大きく変化した。例えば、当初は単層型燃料タンクであったが、炭化水素の蒸散規制法の施行に伴い、炭化水素の透過低減のため燃料タンクの多層化が余儀なくされた。その結果、現在燃料タンクはHDPE/PA(ポリアミド)またはHDPE/EVOH(エチレン酢酸ビニル共重合体)の両端をHDPEで構成する3種5層からなる多層構造タンクが主流となっている。この場合の成形は、従来と同じ吹き込成形である。
【0106】
単層型燃料タンクにおいて、タンクより多くの炭化水素系燃料が透過するのは両者の相溶性が良いのが原因である。相溶の尺度である溶解度パラメータ(以下SP値)はHDPEが7.9、炭化水素系燃料が6〜8であり、両者は同じ領域にある。一方、多層タンクに用いるPAのSP値は13.6で、炭化水素系燃料とのSP値の開きが大きい、換言すれば相溶性が悪い領域にある。これらより多層燃料タンクにおけるPA材は炭化水素系燃料のタンク外への透過を阻止するバリアー層として設置されたものである。当該多層燃料タンクの創出により炭化水素の蒸散規制法を満たす技法が確立されたものの成形工程が煩雑となって大幅な価格上昇を招いた。上記問題に加えて、複数の樹脂の積層構造としたため、リサイクルの円滑性が失われ、リサイクル社会という時代の要請に応えがたい新たな課題を残した。
【0107】
これに対して、本発明の樹脂組成物中の表面改質シリカ組成物はシラノール基を残しているためSP値は11を超え、前述のPAやEVOHに相当する炭化水素系燃料の透過阻止の機能がある。また、本発明の樹脂組成物の主たる成分は、アクリル等の極性基を有するSP値が11以上の樹脂が主体であり、炭化水素系燃料としてのガソリンとは馴染みにくい、換言すれば相溶性が悪い材料構成となっているため、燃料タンクとしてより望ましい状態の材料である。従って、本発明の樹脂組成物を用いれば、単層型でも炭化水素の蒸散法規制を満たす車両用の燃料タンクを提供することができる。これにより課題である製造コストの低減が図れ、かつリサイクルの社会的要請に応えることできるようになる。この際、本発明の樹脂組成物は、単層型または必要であれば多層型のいずれの場合であっても、従来と同様、吹き込成形によって車両用燃料タンクに成形することが使用できる。
【0108】
なお、車両用の燃料タンクに比べるとは効果はやや低いものの、本発明の樹脂組成物は灯油容器等の家庭用品に用いることもできる。これにより灯油の大気への蒸散が軽減され、地球環境の保全に寄与することができる。
【0109】
上記したように本発明では、更に、顔料等の着色剤をナノ複合樹脂組成物に混練したり、着色層を挿入して所望の色調を有する部品を得ることも可能である。このため、上記記載の自動車以外でも美観、平滑性、透明感等の外観品質が要求され、かつ高剛性や表面の耐擦傷性を求められる用途、例えば建造物の外装材、内装材、鉄道車両の内装材等にも使用できる。
【0110】
このような車両用部品や建築用内装材などを含む各種部材の製造方法としては、上記で詳述したが、射出成形、真空圧空成形等を部品や用途に合わせて適宜選択すればよい。一般的なガラス繊維強化樹脂は、せん断応力を繰り返し受けることによってガラス繊維が壊れるためにその物性が徐々に低下しリサイクル性も低いが、本発明のナノ複合樹脂組成物は上記表面改質シリカ組成物を用いているためせん断応力を受けにくく、物性の低下を抑えることができる。
【0111】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各種評価は以下の方法により、特記しない場合には、「部」は質量部を、「%」は質量%を示す。
【0112】
(ナノ複合樹脂組成物の評価方法)
(1)水素結合の状態は、赤外分光光度計(日本分光(株)製 FT−IR620)で計測した。
【0113】
(2)全光線透過率は、ヘイズメータ(村上色彩研究所製 HM―65)で計測した。75%以上を合格とした。
【0114】
(3)シリカの分散状態は、透過電子顕微鏡(日立製作所(株)製 H−800)で観測した。
【0115】
(4)曲げ強度・弾性率は、オートグラフ(島津製作所(株)製 DCS−10T)で計測した。曲げ強度130MPa以上を合格とし、また、曲げ弾性率3GPa以上を合格とした。
【0116】
(5)線膨張係数は、熱機械測定装置(セイコー電子工業(株)製 TMA120C)で計測した。線膨張係数6×]10-5/℃以下を合格とした。
【0117】
実施例1:乾式製法粉を用いたナノ複合樹脂組成物I
ステップI:表面改質Aシリカ組成物の製造
平均一次粒径が20nmの微粒子シリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル#90G)20部を、恒温水槽に浸漬してある80℃の恒温状態の三口フラスコに入れた。なお、当該アエロジル#90Gの赤外吸収特性を計測したところ、シラノール基に係わるその自由水酸基(−OH)の吸収ピーク波数は3740cm-1であった。次に、連結されているもう一方の三口フラスコに樹脂モノマーとしてアクリル酸を10部入れ、80℃に加温し、設定温度に達した後に両フラスコ間にある開閉コックを開き、アクリル酸の蒸気をシリカのフラスコ内に導入、ついでコックを閉じて系を密閉とした。1時間後、脱気コックを開いて未反応のアクリル酸の蒸気を除去し、アクリル酸モノマーで表面が修飾された表面改質シリカ組成物(以下、Aシリカ組成物と呼称)を得た。
【0118】
このようにして得られたAシリカ組成物の色は白色で、処理前後の概観上の色調変化は認められなかった。また、Aシリカ組成物について赤外吸収特性を計測したところ、シリカのシラノール基に係わる3740cm-1の自由水酸基吸収ピークが消失し、新たに波数3311cm-1に水素結合に起因する水酸基(−OH)の吸収ピークが出現した。これは、シラノール基の−OHとアクリル酸の持つカルボニル基(−C=O)との間に水素結合が形成されたためであると考えられる。この結果、樹脂モノマーにより表面修飾(水素結合形成)によりAシリカ組成物のシラノール基の水酸基は429cm-1低波数側にシフトした。
【0119】
ステップII:ナノ複合樹脂組成物の製造
フラスコに、有機溶媒としてトルエン50部、母材樹脂モノマーとしてメタクリル酸メチル(MMA)20部、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.05部、および上記ステップIで得られたAシリカ組成物を2部加え、攪拌子で攪拌し、混合溶液とした。やや乳白色の曇りのある溶液であった。次に、フラスコ内の空気を窒素等の不活性ガスで置換して系内を密封し、この溶液を80℃の温度下で24時間処理してメタクリル酸メチルとAシリカ組成物上の樹脂モノマーとしてのアクリル酸を共重合させた。反応終了後、ヘキサンを滴下して沈殿させ、本発明に係わるPMMA系のナノ複合樹脂組成物(以下、A複合樹脂組成物と呼称)を得た。
【0120】
ステップIII:A複合樹脂組成物の特性評価
上記ステップIIで得られたA複合樹脂組成物を乾燥して粒とし、これを押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られた成形シートについて全光線透過率、曲げ強度、曲げ弾性率及び線膨張係数を計測した。結果を表1に示す。
【0121】
実施例2〜6:乾式製法粉を用いたナノ複合樹脂組成物B〜F
ステップI:表面改質B〜Fシリカ組成物の製造
平均一次粒径が20nmの微粒子シリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル#90G)20部を、恒温水槽に浸漬してある80℃の恒温状態の三口フラスコに入れた。次に、表面改質用の樹脂モノマーとしてメタクリル酸、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミドおよび2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の5種を用いてそれぞれシリカの表面改質を行なった以外は、実施例1と同一の条件で同様の操作を行なうことによって、それぞれ、メタクリル酸を樹脂モノマーとして使用したメタクリル酸系改質シリカ組成物(以下、Bシリカ組成物と呼称)、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステルを樹脂モノマーとして使用したアクリル酸ジメチルアミノエチルエステル系改質シリカ組成物(以下、Cシリカ組成物と呼称)、2−ヒドロキシエチルアクリレートを樹脂モノマーとして使用した2−ヒドロキシエチルアクリレート系改質シリカ組成物(以下、Dシリカ組成物と呼称)、アクリルアミドを樹脂モノマーとして使用したアクリルアミド系改質シリカ組成物(以下Eシリカ組成物と呼称)及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を樹脂モノマーとして使用した2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸系改質シリカ組成物(以下、Fシリカ組成物と呼称)の5種の表面改質シリカ組成物を得た。
【0122】
このようにして得られたB〜Fシリカ組成物色はいずれも白色で、上記Aシリカ組成物同様、処理前後の概観上の色調変化は認められなかった。また、これらシリカ組成物について赤外吸収特性を計測したところ、実施例1と同様、シリカのシラノール基に係わる3740cm-1の自由水酸基吸収ピークが消失し、新たに表1に示す位置に水素結合に起因する水酸基(−OH)の吸収ピークが出現した。これは、実施例1と同様、シラノール基の有する水酸基(−OH)と樹脂モノマーの有するカルボニル基(−C=O)との間に水素結合が形成されたためであると考えられる。
【0123】
ステップII:ナノ複合樹脂組成物の製造
フラスコに、有機溶媒としてトルエン50部、母材樹脂モノマーとしてメタクリル酸メチル(MMA)20部、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.05部、および上記ステップIで得られたB〜Fシリカ組成物を各々2部加え、攪拌子で攪拌し、混合溶液とした。いずれもやや乳白色の曇りのある溶液であった。次に、実施例1と同一の条件でメタクリル酸メチルとB〜Fシリカ組成物上の樹脂モノマーとしてのアクリル酸を共重合させた。反応終了後、ヘキサンを滴下して沈殿させ、それぞれ、メタクリル酸系ナノ複合樹脂組成物(以下、B複合樹脂組成物と呼称)、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル系ナノ複合樹脂組成物(以下、C複合樹脂組成物と呼称)、2−ヒドロキシエチルアクリレート系ナノ複合樹脂組成物(以下、D複合樹脂組成物と呼称)、アクリルアミド系ナノ複合樹脂組成物(以下、E複合樹脂組成物と呼称)及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸系ナノ複合樹脂組成物(以下、複合樹脂組成物Fと呼称)の5種のナノ複合樹脂組成物を得た。
【0124】
ステップIII:B〜F複合樹脂組成物の特性評価
上記ステップIIで得られたB〜F複合樹脂組成物を乾燥して粒とし、これを押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られた成形シートについて全光線透過率、曲げ強度、曲げ弾性率及び線膨張係数を計測した。結果を表1に示す。
【0125】
実施例7、8:湿式製法粉を用いたナノ複合樹脂組成物a,e
ステップI:表面改質G,Hシリカ組成物の製造
平均一次粒径15nm、濃度20wt%の水分散型のコロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、スノーテックスST20)100部を、恒温水槽に浸漬してある攪拌機を備えたフラスコに入れた。次に、攪拌機で攪拌しながら、この溶液に樹脂モノマーとしてアクリル酸を10部加え、80℃で、1時間、反応処理を行なった。所定時間処理した後、水を除去して乾燥し、アクリル酸モノマーで表面が修飾された表面改質シリカ組成物(以下、aシリカ組成物と呼称)を得た。
【0126】
別途、樹脂モノマーとしてアクリルアミドを用いる以外は、上記と同様の条件で操作を行なうことによって、アクリルアミドモノマーで表面が修飾された表面改質シリカ組成物(以下、eシリカ組成物と呼称)を得た。
【0127】
これらのa及びeシリカ組成物両者の赤外吸収特性を計測したところ、表1の結果が得られ、その特性は、それぞれ、前記Aシリカ組成物およびFシリカ組成物とほぼ同じであった。
【0128】
ステップII:ナノ複合樹脂組成物の製造
Aシリカ組成物の代わりに、aシリカ組成物及びeシリカ組成物をそれぞれ使用する以外は、実施例1におけるステップIIと同一の条件でメタクリル酸メチルとAシリカ組成物上の樹脂モノマー(それぞれ、アクリル酸及びアクリルアミド)との共重合を行ない、反応終了後、ヘキサンを滴下して沈殿させることによって、それぞれ、アクリル酸系ナノ複合樹脂組成物(以下、a複合樹脂組成物と呼称)およびアクリルアミド系ナノ複合樹脂組成物(以下、e複合樹脂組成物と呼称)の2種のナノ複合樹脂組成物を得た。
【0129】
ステップIII:a,e複合樹脂組成物の特性評価
上記ステップIIで得られたa,e複合樹脂組成物の2種を各々乾燥して粒となし、これを押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られたシートついて全光線透過率、曲げ強度、曲げ弾性率そして線膨張係数を計測したところ表1の結果が得られた。
【0130】
実施例9,10:非両親媒性の樹脂モノマーを用いたナノ複合樹脂組成物I,J
ステップI:表面改質I,Jシリカ組成物の製造
平均一次粒径が20nmの微粒子シリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル#90G)20部を、恒温水槽に浸漬してある80℃の恒温状態の三口フラスコに入れ、表面改質用の樹脂モノマーとしてメタクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルをそれぞれ使用する以外は、実施例1と同一の条件で操作することにより、それぞれ、メタクリル酸メチル系改質シリカ組成物(以下、Iシリカ組成物と呼称)およびアクリル酸エチル系改質シリカ組成物(以下、Jシリカ組成物と呼称)の2種の改質シリカ組成物を得た。
【0131】
このようにして得られたI,Jシリカ組成物色はいずれも白色で、上記Aシリカ組成物同様、処理前後の概観上の色調変化は認められなかった。また、これらシリカ組成物について赤外吸収特性を計測したところ、実施例1と同様、シリカのシラノール基に係わる3740cm-1の自由水酸基吸収ピークが消失し、新たに表1に示す位置に水素結合に起因する水酸基(−OH)の吸収ピークが出現したが、両者とも波数の低波数側へのシフト量は、A〜Hに比べ相対的に少なかった。これは、カルボキシル基がエステル化され、シリカとの水素結合力が低下したためであると考えられる。
【0132】
ステップII:ナノ複合樹脂組成物の合成
フラスコに、有機溶媒としてトルエン50部、母材樹脂モノマーとしてメタクリル酸メチル(MMA)20部、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.05部、および上記ステップIで得られたI,Jシリカ組成物を各々2部加え、攪拌子で攪拌し、混合溶液とした。いずれもやや乳白色の曇りのある溶液であった。次に、実施例1と同一の条件でメタクリル酸メチルとI,Jシリカ組成物上の樹脂モノマーとしてのアクリル酸を共重合させた。反応終了後、ヘキサンを滴下して沈殿させ、それぞれ、メタクリル酸メチル系ナノ複合樹脂組成物(以下、I複合樹脂組成物と呼称)およびアクリル酸エチル(以下、J複合樹脂組成物と呼称)の2種のナノ複合樹脂組成物を得た。
【0133】
ステップIII:I,J複合樹脂組成物の特性評価
上記ステップIIで得られたI,J複合樹脂組成物を乾燥して粒とし、これを押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られた成形シートについて全光線透過率、曲げ強度、曲げ弾性率及び線膨張係数を計測した。結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
Figure 0004456798
【0135】
表1の結果に示されるように、シリカ赤外吸収ピーク波数と物性の間には密接な関係があり、低波数側へのシフト量が大きくなれば物性が向上する傾向が認められる。これは、既述のように、シリカと樹脂モノマーとの相互作用(水素結合形成)のためであると考えられる。総合的には、波数の低波数側へのシフト量は330cm-1以上とする必要がある。
【0136】
比較例1
粒状のポリメチルメタクリレート樹脂(三菱レイヨン(株)製アクリペットVH)を押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られたシートついて、全光線透過率、曲げ強度、曲げ弾性率及び線膨張係数を計測した。結果を表1に示す。表1に示されるように、このシートは、高い透明性を有するが、物性が目標値を満たさず、不合格である。
【0137】
実施例11:表面改質シリカ組成物の適正配合量について
ステップI
フラスコに、有機溶媒としてトルエン250部、母材樹脂モノマーとしてメチルメタクリレート(MMA)100部、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)25部及び実施例2と同様にして製造されたメタクリル酸系改質シリカ組成物(Bシリカ組成物)を、それぞれ、1、5、10、20、40、60、80、100、及び120部加え、それぞれについて、攪拌子で攪拌し、ついでフラスコ内の空気を窒素等の不活性ガスで置換して系内を密封し、この溶液を80℃の温度下で24時間処理して、Bシリカ組成物のメタクリル酸とMMAとを重合させた。反応終了後、ヘキサンを滴下して沈殿させ、本発明に係わる10種のメタクリル酸系ナノ複合樹脂組成物を得た。
【0138】
ステップII
上記ステップIで得られた10種のメタクリル酸系ナノ複合樹脂組成物を乾燥して粒とし、これを押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られた成形シートについて、全光線透過率、シリカ組成物の分散状態、曲げ強度、曲げ弾性率及び線膨張係数を計測した。結果を表2に示す。なお、表面改質シリカ組成物を配合しないものを比較例2とした。結果を表2に示す。
【0139】
【表2】
Figure 0004456798
【0140】
表2の結果に示されるように、配合量が3部未満では、比較例2の表面改質シリカ組成物を配合しなかったポリメチルメタクリレート樹脂と比較した際の、線膨張係数の低減効果が低く、また、曲げ強度や曲げ弾性率の改善の効果が薄い。また、配合量が100部を超えると、線膨張係数の低減効果ならびに曲げ強度及び曲げ弾性率の改善効果などの物性改善の効果が認められず、逆に、全光線透過率が合格ラインである75%を下回り、透明性が低下する。これに対して、シリカ組成物の配合量を3〜100質量部の範囲では、透明性を損なうことなく、ナノ複合透明樹脂組成物の熱膨張率の低減、ならびに曲げ強度及び曲げ弾性率の改善が達成できる。このため、本発明では、表面改質シリカ組成物の配合量は、母材樹脂モノマー100質量部に対して、3〜100質量部である必要がある。また、表面改質シリカ組成物の配合量が増えるにつれてナノ複合透明樹脂組成物の比重が増すため、部材の質量が増加することが考えられ、樹脂ウィンドウ等の軽量化が求められる用途によっては好ましくない場合がある。このような点を考慮すると、表面改質シリカ組成物の配合量を、母材樹脂モノマー100質量部に対して、3〜40質量部の範囲とするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る樹脂組成物の車両用外装部品用途の一例を示す説明図である。
【図2】 図2a、図2bは、本発明に係る樹脂組成物の車両用外板用途の一例を示す説明図である。
【図3】 図3は、本発明に係る樹脂製ワイパーシステの模式図である。
【図4】 図4は、本発明に係る樹脂製ドアミラーステイの車両用外装部品用途の一例を示す説明図である。
【図5】 図5は、本発明に係る透明樹脂部と不透明樹脂部とを一体で成形したインストルメントパネルを示す図である。
【図6】 図6は、本発明に係る樹脂製ミラー、樹脂製ウィンドウを示す図である。
【図7】 図7は、本発明の樹脂製ランプリフレクターを用いたヘッドランプ部を示す横断面図である。
【図8】 図8は、本発明に係る樹脂組成物を用いたエンジンルーム内部品の一例を示す説明図である。
【図9】 図9は、本発明に係る樹脂組成物を用いたエンジンルーム内部品の一例を示す説明図である。
【図10】 図10は、本発明に係る樹脂組成物を用いた樹脂製冷却装置部品の一例を示す図である。
【図11】 図11は、本発明に係る樹脂組成物を用いた樹脂製冷却装置部品の一例を示す図である。
【図12】 図12は、本発明に係る樹脂組成物を用いた中空構造を有する樹脂一体成形体の一例を示す図である。
【図13】 図13は、本発明に係る樹脂組成物を用いた中空構造を有する樹脂一体成形体の一例を示す図である。
【図14】 図14は、本発明に係る樹脂組成物を用いた一体成形部品の一例を示す説明図である。
【図15】 図15は、本発明に係る樹脂組成物を用いた一体成形部品の一例を示す説明図である。
【図16】 図16は、本発明に係る樹脂組成物を用いた一体成形部品の一例を示す説明図である。
【図17】 図17は、本発明に係る樹脂組成物を用いた可動部と非可動部を有する成形体の一例を示す図であり、図18Aは該成形体の横断面図、図18Bは該成形体の上面図である。
【図18】 図18は、本発明に係る樹脂組成物の車両用外装部品用途の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…ドアモール、2…ドアミラーのフレーム枠、3…ホイールキャップ、
4…スポイラー、5…バンパー、6…ウィンカーレンズ、
7…ピラーガーニッシュ、8…リアフィニッシャー、
21…フロントフェンダー、22…ドアパネル、23…ルーフパネル、
30…ワイパーシステム、31…ワイパーアーム、
32…ワイパーブレード、33…ワイパーアーム固定用ナット穴、
41…ランプ・フード・フェンダー一体樹脂成形体、
42…ピラーガーニッシュ・ガラス一体樹脂成形体、
43…ルーフ・フェンダ・ガラス一体樹脂成形体、
44…バックドア・ガラス一体樹脂成形体、
45…ドア・ガラス一体樹脂成形体、
51…インストルメントパネル、52…計器類のカバー、
61…フロントウィンドウ、62…ドアウィンドウ、
63…リアウィンドウ、64…サイドミラー、
71…車体側基体、72…アウタ部材、73…リフレクター、
74…バルブ、75…光軸調整器75、76…アウタレンズ、
81…ラジエーター、82…冷却液リザーブタンク、
83…ウオシャータンクインレット、84…電気部品ハウジング、
85…ブレーキオイルタンク、86…シリンダーヘッドカバー、
91…エンジンボディー、92…タイミングチェーン、
93…ガスケット、94…フロントチェーンケース、
101…ウォータパイプ、102…O−リング、
103…ウォータポンプハウジング、
104…ウォータポンプインペラ(羽車)、105…ウォータポンプ、
106…ウォータポンププーリ、
111…ウォータパイプ、112…サーモスタットハウジング、
113…サーモスタット、114…ウォータインレット、
121…フード、122…ドア、123…バックドア、124…ルーフ、
125…フェンダー、126…ウィンドウ、127…トランクリッド、
131…センターコンソールボックス、132…ピラーガーニッシュ、
133…インストルメントパネル、
141…パネル部、142…エアコンのエアダクトやケース、
151…ルーフレール、152…ルーフパネル、
171…チャンバー部、172…開閉バルブ、
173…開閉バルブシャフト、
181…フィラーチューブ、182…燃料タンク、
183…燃料ポンプ、185…フィラーキャップ、
186…ベントチューブ、187…フューエルホース、188…空気室。

Claims (7)

  1. 赤外線吸収特性において、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm−1低波数側にシフトさせる水素結合性官能基と不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて水素結合を介してシリカの表面が修飾されてなる表面改質シリカ組成物と母材樹脂モノマーからなり、該母材樹脂モノマーは該樹脂モノマーと重合しており、および該表面改質シリカ組成物は母材樹脂モノマー100質量部に対して3〜100質量部配合されるナノ複合樹脂組成物を含んでなる車両用内外装部品成形体
  2. 透明部と不透明部を有する樹脂成形体において、少なくとも透明部が赤外線吸収特性において、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm −1 低波数側にシフトさせる水素結合性官能基と不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて水素結合を介してシリカの表面が修飾されてなる表面改質シリカ組成物と母材樹脂モノマーからなり、該母材樹脂モノマーは該樹脂モノマーと重合しており、および該表面改質シリカ組成物は母材樹脂モノマー100質量部に対して3〜100質量部配合されるナノ複合樹脂組成物を含んでなることを特徴とする樹脂成形体。
  3. 赤外線吸収特性において、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm −1 低波数側にシフトさせる水素結合性官能基と不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて水素結合を介してシリカの表面が修飾されてなる表面改質シリカ組成物と母材樹脂モノマーからなり、該母材樹脂モノマーは該樹脂モノマーと重合しており、および該表面改質シリカ組成物は母材樹脂モノマー100質量部に対して3〜100質量部配合されるナノ複合樹脂組成物を含んでなる樹脂製冷却装置部品。
  4. 赤外線吸収特性において、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm −1 低波数側にシフトさせる水素結合性官能基と不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて水素結合を介してシリカの表面が修飾されてなる表面改質シリカ組成物と母材樹脂モノマーからなり、該母材樹脂モノマーは該樹脂モノマーと重合しており、および該表面改質シリカ組成物は母材樹脂モノマー100質量部に対して3〜100質量部配合されるナノ複合樹脂組成物を含んでなる、大気と連通した中空構造および/または密閉された中空構造を有する樹脂一体成形体。
  5. 赤外線吸収特性において、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm −1 低波数側にシフトさせる水素結合性官能基と不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて水素結合を介してシリカの表面が修飾されてなる表面改質シリカ組成物と母材樹脂モノマーからなり、該母材樹脂モノマーは該樹脂モノマーと重合しており、および該表面改質シリカ組成物は母材樹脂モノマー100質量部に対して3〜100質量部配合されるナノ複合樹脂組成物を含んでなる、異なる機能を有する2種類以上の部品を統合し、ひとつの部品に該異なる2種類以上の機能が付与される一体成形部品。
  6. 赤外線吸収特性において、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm −1 低波数側にシフトさせる水素結合性官能基と不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて水素結合を介してシリカの表面が修飾されてなる表面改質シリカ組成物と母材樹脂モノマーからなり、該母材樹脂モノマーは該樹脂モノマーと重合しており、および該表面改質シリカ組成物は母材樹脂モノマー100質量部に対して3〜100質量部配合されるナノ複合樹脂組成物を含んでなる可動部と非可動部を有する成形体。
  7. 赤外線吸収特性において、シリカの有するシラノール基の自由水酸基(−OH)の吸収ピークを330〜450cm −1 低波数側にシフトさせる水素結合性官能基と不飽和二重結合基を有する樹脂モノマーを用いて水素結合を介してシリカの表面が修飾されてなる表面改質シリカ組成物と母材樹脂モノマーからなり、該母材樹脂モノマーは該樹脂モノマーと重合しており、および該表面改質シリカ組成物は母材樹脂モノマー100質量部に対して3〜100質量部配合されるナノ複合樹脂組成物を含んでなる炭化水素系燃料を収納する容器。
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