JP4453008B2 - 光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物、その硬化物及び光半導体 - Google Patents
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Description
近年、青色光や近紫外光といった短波長の光を発するLEDが開発され、黄色蛍光体と組み合わせることにより白色光が容易に得られるようになった。これによってLEDの用途は著しく広がったが、その反面、発光素子を保護する目的で用いられる封止材にはより高度な耐光性、すなわち高エネルギーの光を長時間照射しても劣化を起こさない特性が必要とされるようになってきた。
また、発光素子の改良によって小型化及び大電流化が進むにつれ、長時間の発熱にも着色しない耐熱性の要求も厳しくなってきている。
従来、赤色及び緑色のLEDの封止材としては、主にエポキシ樹脂が用いられてきた。酸無水物とエポキシ化合物から得られるエポキシ樹脂硬化物は、安価で、透明性、電気絶縁性、耐湿性、接着性などに優れている。しかし、青色の発光素子からなる白色LEDの封止材にエポキシ樹脂を使用した場合、短波長の光が長時間照射されることによって劣化し、着色してしまうという問題が発生する。封止材の樹脂が着色してしまうと、発光素子そのものが充分な光を発していたとしてもLEDから取り出される光は著しく減衰してしまい、結果としてLEDの寿命は短くなってしまう。また、同様の着色はLEDを長時間点灯させた場合に発生する熱によっても引き起こされる。
このような光や熱による封止材の劣化を抑制することは、LEDのさらなる普及において重要な課題となっている。このような課題に対して、エポキシ樹脂組成物(特許文献1)等の種々の提案がされている。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、透明性、耐光性及び耐熱性に優れる硬化物を与える光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物、その硬化物及び光半導体を提供するものである。
すなわち、本発明は、[1] 以下の(A)〜(D)成分を含む光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物に関する。
(A)側鎖にエポキシ基を有する飽和のアクリル系重合体
(B)次の成分(b1)及び(b2)を必須成分とする混合モノマー
(b1)アクリル酸及び/またはメタクリル酸
(b2)アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル
(C)ラジカル重合開始剤
(D)酸化防止剤
また、本発明は、[2] アクリル系重合体(A)が、エポキシ基及び共重合可能な不飽和結合を有するモノマー5〜50重量%、メチルメタクリレート50〜95重量%及びこれらと共重合可能な他のアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル0〜45重量%からなる共重合体である上記[1]に記載の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[3] アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が5,000〜200,000である上記[1]または上記[2]に記載の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[4] アクリル系重合体(A)と混合モノマー(B)との合計の配合量を100重量部としたとき、アクリル系重合体(A)の配合量が20〜60重量部、混合モノマー(B)の配合量が40〜80重量部、酸化防止剤(D)の配合量が0.1〜1.2重量部、かつ、ラジカル重合開始剤(C)の配合量が混合モノマー(B)に対して0.1〜1重量%であり、さらにアクリル酸及び/またはメタクリル酸(b1)の配合量がアクリル系重合体(A)中に含まれるエポキシ基1モルあたり1.0〜1.2モルである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[5] 酸化防止剤(D)がペンタエリスリトールジホスファイト及び/またはアルキルジアリールホスファイトである上記[1]ないし上記[4]のいずれかに記載の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[6] 上記[1]ないし上記[5]のいずれかに記載の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物に関する。
さらに本発明は、[7] 上記[6]記載の硬化物にて封止された光半導体に関する。
本発明は、以下の(A)〜(D)成分を含む光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物である。
(A)側鎖にエポキシ基を有する飽和のアクリル系重合体
(B)次の成分(b1)及び(b2)を必須成分とする混合モノマー
(b1)アクリル酸及び/またはメタクリル酸
(b2)アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル
(C)ラジカル重合開始剤
(D)酸化防止剤
本発明における(A)成分は、側鎖にエポキシ基を有する飽和のアクリル系重合体であり、具体的には、エポキシ基及び共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルとの共重合体が好ましく、芳香族環等の不飽和結合を含まない共重合体である必要がある。(A)成分中に不飽和結合が含まれていると、硬化物としたときの耐光性及び耐熱性が低下してしまう。
(A)成分の側鎖にエポキシ基を有する飽和のアクリル系重合体を製造するための方法には特に制限は無く、公知の重合方法を適用することができる。例えば、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法、溶液重合法等のいずれの方法であってもよい。
これらの配合量は、(A)成分に用いるモノマー全体に対して5〜50重量%とするのが好ましく、15〜40重量%とするのがより好ましい。配合量が5重量%未満であると、熱硬化性樹脂組成物としたときに架橋反応点が不足し、硬化物が十分に硬化しないかまたは十分な強度が得られなくなるおそれがある。また、配合量が50重量%を超えると、熱硬化性樹脂組成物としたときに得られる硬化物が脆くなってしまうおそれがある。
また、(A)成分に用いるメタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸鎖状アルキルエステル、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート等のメタクリル酸環状アルキルエステル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能メタクリル酸エステルなどが挙げられる。
これらのアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルは、単独または二種類以上併用して用いることができる。
(A)成分としては、エポキシ基及び共重合可能な不飽和結合を有するモノマー5〜50重量%、メチルメタクリレート50〜95重量%及びこれらと共重合可能な他のアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル0〜45重量%からなる共重合体が特に好ましい。
(A)成分のアクリル系重合体の重量平均分子量を調節するための方法には特に制限は無く、公知の方法を適用することができる。
本発明で、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定し標準ポリスチレン換算した値を用いている。
(b1)成分のアクリル酸及び/またはメタクリル酸は、本発明における光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を加熱して硬化させる際に上記(A)成分中に含まれるエポキシ基と反応して架橋構造を形成させるために用いる。(b1)成分としては、アクリル酸もしくはメタクリル酸のいずれか一方、または両者の任意の割合の混合物を用いることができる。
(b1)成分の配合量は、本発明における光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物に用いるアクリル系重合体(A)中に含まれるエポキシ基1モルあたり1.0〜1.2モルとするのが好ましく、1.0〜1.05モルとするのがより好ましい。配合量が1.0モル未満であると、(A)成分中のエポキシ基が理論的に完全には消費されなくなってしまう。また、配合量が1.2モルを超えると、光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物としたときに得られる硬化物の中に残存するカルボキシル基が多くなってしまい、その結果、吸水率が高くなって封止する光半導体素子等の性能を損ねてしまうおそれがある。
(b2)成分のアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルとは、上記(A)成分の製造に用いるアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルと同じ範囲の中から目的に応じて任意に選ばれる単独または二種類以上の混合物である。中でもアクリル酸又はメタクリル酸の鎖状アルキルエステル、環状アルキルエステルが好ましく、鎖状アルキルエステルがより好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
また、(b2)成分のアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル以外のモノマを用いても良いが、アクリル酸及び/またはメタクリル酸(b1)とアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル(b2)とからなる混合モノマーであることが好ましい。
本発明における熱硬化性樹脂組成物を製造するにあたり、(B)成分の配合量は、上記(A)成分の配合量によって決まるものであり、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して40〜80重量部とするのが好ましく、50〜70重量部とするのがより好ましい。
本発明における熱硬化性樹脂組成物を製造するにあたり、(C)成分の配合量は、(B)成分に対して0.1〜1重量%とするのが好ましく、0.2〜0.6重量%とするのがより好ましい。配合量が0.1重量%未満であると、光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物が十分に硬化しないおそれがある。また、配合量が1重量%を超えると、加熱して硬化させる際にクラックが入りやすくなったり、得られる硬化物の強度が十分でなくなったりするおそれがある。
(D)成分に用いるペンタエリスリトールジホスファイトとしては、ジエチルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等のジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のジアリールペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
これらのペンタエリスリトールジホスファイト及びアルキルジアリールホスファイトは、単独または二種類以上併用して用いることができる。
本発明における熱硬化性樹脂組成物を製造するにあたり、(D)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.1〜1.2重量部とするのが好ましく、0.3〜0.7重量部とするのがより好ましい。配合量が0.1重量部未満であると、硬化物としたときに十分な耐光性及び耐熱性が得られなくなるおそれがある。また、配合量が1.2重量部を超えると、効果の向上が見られなくなる。
本発明における熱硬化性樹脂組成物を製造する際に、上記(A)〜(D)成分の他にも、得られる硬化物の特性を損ねない範囲で各種添加剤を目的に応じて加えることができる。添加剤としては、例えば、硬化物の耐光性及び耐熱性をさらに向上させるための酸化防止剤、硬化におけるラジカル重合反応を制御するための連鎖移動剤、一般にエポキシ樹脂の硬化反応において用いられている硬化促進剤、硬化物の機械的物性、接着性、取扱い性を改良するための充填剤、可塑剤、低応力化剤、離型剤、カップリング剤、消泡剤、チキソトロピー性付与剤、染料、光散乱剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
本発明における熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることにより、光半導体の封止材に適した硬化物を得ることができるが、その製造方法には特に制限は無く、公知の方法を適用することができる。
本発明の硬化物は、耐熱性、透明性、耐光性のいずれにも優れる。本発明の光半導体は、発光ダイオード素子、フォトダイオード素子等を前記硬化物で封止されたものであり、特に、封止材の特性要求が過酷である白色発光ダイオードとして、耐熱性、透明性、耐光性のいずれにも優れるものである。
[アクリル系重合体(A)の調製]
(1)メチルメタクリレート442.8g及びグリシジルメタクリレート157.2gの混合物に、ラウロイルパーオキサイド(パーロイルL:日本油脂株式会社製)3.6g及びn−オクチルメルカプタン(チオカルコール08:花王株式会社製)9.0gを加えて均一に溶解させ、65℃で6時間加熱した後に120℃で2時間加熱してアクリル系重合体(I)を得た。重量平均分子量は約22,800であった。
(2)メチルメタクリレート412.8g、ジシクロペンタニルアクリレート(FA−513A:日立化成工業株式会社製)30.0g及びグリシジルメタクリレート157.2gの混合物に、ラウロイルパーオキサイド(パーロイルL:日本油脂株式会社製)3.6g及びn−オクチルメルカプタン(チオカルコール08:花王株式会社製)4.8gを加えて均一に溶解させ、65℃で6時間加熱した後に120℃で2時間加熱してアクリル系重合体(II)を得た。重量平均分子量は約48,200であった。
なお、本実施例において、重量平均分子量の測定条件(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)は次の通りである。
測定装置 株式会社日立製作所製、カラム ゲルパックGL-A100M(日立化成工業株式会社製)を2本直列に接続)、溶離液 テトラヒドロフラン(流量1.0ml分)、検出器RI(Shodex SE-61)、標準ポリスチレン PS706
アクリル系重合体(I)40g、ラウロイルパーオキサイド(パーロイルL:日本油脂株式会社製)0.24g、(D)成分のアルキルジアリールホスファイトとしてジフェニルデシルホスファイト(アデカスタブ135A:旭電化工業株式会社製)0.5g、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(アデカスタブAO−60:旭電化工業株式会社製)0.1g、アクリル酸5.32g、メチルメタクリレート54.67gを混合し、室温(25℃)で24時間攪拌して均一に溶解させた。得られた光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物に窒素ガスを3分間バブリングした後に直ちに金型中に流し込んで密閉し、60℃で9時間、120℃で3時間、180℃で5時間の順で加熱して硬化させ、厚さ約1mmの硬化物を得た。
アクリル系重合体(I)40g、ラウロイルパーオキサイド(パーロイルL:日本油脂株式会社製)0.24g、(D)成分のペンタエリスリトールジホスファイトとしてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカスタブPEP−36:旭電化工業株式会社製)0.7g、アクリル酸5.32g、メチルメタクリレート54.67gを混合し、室温で24時間攪拌して均一に溶解させた。以下、実施例1と同様にして硬化物を得た。
アクリル系重合体(II)40g、ラウロイルパーオキサイド(パーロイルL:日本油脂株式会社製)0.24g、ジフェニルデシルホスファイト(アデカスタブ135A:旭電化工業株式会社製)0.5g、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(アデカスタブAO−60:旭電化工業株式会社製)0.1g、アクリル酸5.32g、メチルメタクリレート54.67gを混合し、室温で24時間攪拌して均一に溶解させた。以下、実施例1と同様にして硬化物を得た。
アクリル系重合体(I)40g、ラウロイルパーオキサイド(パーロイルL:日本油脂株式会社製)0.24g、アクリル酸5.32g、メチルメタクリレート54.67gを混合し、室温で24時間攪拌して均一に溶解させた。以下、実施例1と同様にして硬化物を得た。
・クラック:硬化物のクラックの有無を目視にて確認し、無し、多いとして評価した。
・380nm透過率 :分光光度計(日本分光株式会社製V−570)を用いて、硬化物の380nmにおける透過率を測定した。
・耐熱性:硬化物を250℃で3時間加熱した後、色差測定器(日本電色工業株式会社製 COH−300A)を用いてイエローネス インデックス(YI)を測定し、着色の程度を調べた。
黄色味を示す黄変度(YI)は測定した透過スペクトルを用い、標準光Cの場合の三刺激値XYZを求め、式(1)から求めた。
Claims (7)
- 以下の(A)〜(D)成分を含む光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
(A)側鎖にエポキシ基を有する飽和のアクリル系重合体
(B)次の成分(b1)及び(b2)を必須成分とする混合モノマー
(b1)アクリル酸及び/またはメタクリル酸
(b2)アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル
(C)ラジカル重合開始剤
(D)酸化防止剤 - アクリル系重合体(A)が、エポキシ基及び共重合可能な不飽和結合を有するモノマー5〜50重量%、メチルメタクリレート50〜95重量%及びこれらと共重合可能な他のアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル0〜45重量%からなる共重合体である請求項1に記載の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
- アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が5,000〜200,000である請求項1または請求項2に記載の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
- アクリル系重合体(A)と混合モノマー(B)との合計の配合量を100重量部としたとき、アクリル系重合体(A)の配合量が20〜60重量部、混合モノマー(B)の配合量が40〜80重量部、酸化防止剤(D)の配合量が0.1〜1.2重量部、かつ、ラジカル重合開始剤(C)の配合量が混合モノマー(B)に対して0.1〜1重量%であり、さらにアクリル酸及び/またはメタクリル酸(b1)の配合量がアクリル系重合体(A)中に含まれるエポキシ基1モルあたり1.0〜1.2モルである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
- 酸化防止剤(D)が、ペンタエリスリトールジホスファイト及び/またはアルキルジアリールホスファイトである請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
- 請求項6記載の硬化物にて封止された光半導体。
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