JP4450510B2 - 改良臭素置換ポリスチレン系樹脂およびそれらの使用 - Google Patents
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Description
(発明の背景)
臭素置換ポリスチレン類は熱可塑性プラスチック用の充分に確立された難燃剤である。臭素置換ポリスチレン類の製造は、一般に、ポリスチレンと臭素化剤(brominating agent)(例えば臭素または塩化臭素)の間の反応を溶媒(例えばジクロロエタン)およびルイス酸触媒の存在下で行うことで成されている。本技術分野では、今まで、優れた臭素置換ポリスチレンをもたらすと主張されている方法が数多く提供された。米国特許第4,200,703;4,352,909;4,975,496および5,532,322号を参照のこと。
【0002】
以前から公知の臭素置換ポリスチレンである難燃剤は特定の特性が不充分なままである、言い換えれば、それらを用いた熱可塑性ポリマーブレンド物(blends)にポリマー加工条件を受けさせた時にそれが示す性能が充分でない。
【0003】
例えば、従来技術の臭素置換ポリスチレンポリマーに熱重量分析(TGA)を受けさせることで熱安定性に関して評価した時、それが1%重量損失を示す時の温度は336℃未満であり、大部分が1%重量損失を示す時の温度は約300℃である。そのように低い熱安定性は、特に臭素置換ポリスチレンポリマーと一緒に配合した難燃熱可塑性プラスチック(flame retarded thermoplastics)が加工中にさらされる温度が高い時、望ましいものでない。
【0004】
ハロゲン化水素が熱加工条件下で放出されることが原因で起こる金属加工装置、例えば溶融ブレンダー、押出し加工機および成形機などの腐食が、従来の臭素置換ポリスチレンである難燃剤を用いて作られた難燃熱可塑性ポリマーブレンド物の別の欠点である。水分が存在していると、前記ブレンド物に含まれる臭素置換ポリスチレンが加工温度でHClおよびHBrを放出する結果として酸が生じ、従って金属の腐食が起こる可能性がある。
【0005】
臭素置換ポリスチレンの臭素含有量は、(1)ポリマーの芳香部分に置換基として存在する臭素、(2)ポリマーの脂肪部分、例えばポリマーバックボーン(polymer backbone)またはポリマーの芳香部分のアルキル置換によって生じるアルキル置換基の置換基として存在する臭素、および(3)いくらか存在するイオン性臭素、例えばNaBrなどの臭素の総量である。臭素置換ポリスチレンに含まれる芳香環のアルキル置換では、当該臭素置換スチレン系ポリマー(brominated styrenic polymer)の製造で用いられるルイス酸触媒が触媒として作用し、そして反応用溶媒(通常は炭素原子数が1−3のジハロアルカン)がアルキル化剤(alkylating agent)として働く。本明細書では、前記(1)の臭素を芳香ブロマイド(aromatic bromide)と呼ぶ一方、前記(2)の臭素を脂肪ブロマイド(aliphatic bromide)と呼ぶ。イオン性臭素は全臭素含有量に貢献し得るが、それが全臭素含有量に貢献する度合は小さい。それにも拘らず、米国特許第5,328,983号の中に指摘されているように、臭素置換ポリスチレンに含まれるイオン性不純物はポリマー配合物を最終的な電気特性に関して悪化させる可能性があり、かつまた、結果として加工装置の腐食をもたらすか或は最終使用用途において金属部分の腐食をもたらす可能性もある。
【0006】
臭素置換ポリスチレンの塩素含有量も臭素含有量と同様に主に芳香および/または脂肪クロライド置換基としてポリマー構造の一部である。塩化臭素を臭素化剤として用いることが塩素含有量の最も大きな一因である。しかしながら、臭素置換ポリスチレンの製造で用いる塩素置換溶媒および/または塩素含有触媒もまた塩素含有量の一因になっている可能性もある。
【0007】
臭素置換ポリスチレンが脂肪ハライドを含有するのは望ましいことでない、と言うのは、脂肪ハライドは芳香ハライドほどには熱に安定でなく、従って脂肪ハライドは通常の最終使用加工条件下で容易にハロゲン化水素、例えばHBrまたはHClなどに変化し得るからである。脂肪ブロマイドおよびクロライドを本技術分野では一般にそれぞれ加水分解性ブロマイドおよび加水分解性クロライドと呼んで量化している、と言うのは、そのようなハライドは芳香ハライドに比較して容易に加水分解を受けるからである。
【0008】
臭素置換スチレン系ポリマーが熱加工条件下でハロゲン化水素を放出する傾向を評価する目的で米国特許第5,726,252号に記述されている方法を用いるが、この方法をそこでは熱安定性試験方法と呼んでいる。この方法では、本質的に、臭素置換ポリスチレンに含まれる芳香環に直接結合していない、従って高温時にポリマーからより容易に放出されるハロゲン原子の含有量が示される。この熱安定性試験を本明細書の以下により詳細に記述する。
【0009】
ハライドが芳香ハライドとして存在するか或は脂肪ハライドとして存在するか以外にまた臭素置換ポリスチレンが有する全塩素含有量を最小限にするのも望ましい、と言うのは、塩素は難燃成分(flame retardant constituent)として臭素ほどには有効でないか或は安定でないからである。
【0010】
追加的に、従来技術の臭素置換ポリスチレン製造方法ではポリマー鎖の有意な開裂がもたらされることが実証されている。このような開裂が起こると、結果として、生じた臭素置換ポリスチレンをゲル浸透クロマトグラフィーで測定した時にそれが示すMwは臭素置換ポリスチレンの計算した理論的Mwよりも有意に低くなる。この計算は臭素置換ポリスチレン生成物の臭素含有量(重量%)とポリスチレン反応体が反応開始時に示すMwを基にした計算である。GPCの誤差の±余裕度(margins)が一定であると仮定すると理論的Mwと生じる臭素置換ポリスチレンが示す実際のMwが互いに近いのが有利である、と言うのは、そのように近いことはポリマーの開裂が僅かであることの証拠であるからである。開裂が起こると結果として臭素置換ポリスチレンに含まれるアルキル末端基の数が増えそしてこのアルキル末端基がこの上で考察した望ましくない加水分解性ハライドを生じ易くする座(loci)を与えることから、開裂の度合は最小限でなければならない。逆に、架橋が起こると臭素置換ポリスチレンの分子量が増大し、それを制御しないと、そのような架橋の結果として不溶残渣が生じそして/または反応混合物のゲル化が起こる可能性がある。加うるに、そのように分子量が望ましくなく高くなると最終製品の使用に関連した粘度仕様が崩壊する可能性がある。
【0011】
臭素置換ポリスチレンの全ハロゲン含有量、特に全臭素含有量が別の重要な考慮である。Pyro−Chek(商標)68PB臭素置換ポリスチレン難燃剤(Ferro Corporation)の全ハロゲン含有量は約67重量%であると報告されている。Ferro Corporationの米国特許第5,637,650号および5,726,252号には、Pyro−Chek(商標)68PB難燃剤が有するバックボーンのハロゲンは3000から6000ppm、典型的には5000−6000ppmであると報告されている。かつ、Pyro−Chek(商標)68PB難燃剤に熱安定性試験を我々の実験室で受けさせた時、それが放出したHBrは1960ppmであった。Pyro−Chek(商標)68PB難燃剤に比べて溶融状態でより容易かつ有効に混ざり合う臭素置換ポリスチレンを提供する目的で、Ferro Corporationは、全ハロゲン含有量がより低い別の製品、即ちPyro−Chek(商標)60PB臭素置換ポリスチレン難燃剤を開発した。この製品の全臭素含有量は約61重量%であり、これはPyro−Chek(商標)68PB難燃剤に比べて低い温度で溶融しかつコンパウンド化および加工操作中により容易に流れると報告されている。しかしながら、そのような溶融状態の流れの改善は報告されているように芳香臭素含有量を10%下げることを伴って達成されている。従って、どちらかといえば、芳香臭素含有量を10%低くすることは、最良でもPyro−Chek(商標)68PB難燃剤に比較して熱安定性が全く改善せず、最悪の場合には熱安定性が低下すると言った警告が与えられる。
【0012】
臭素置換ポリスチレンの前記欠点の全部でないにしても大部分を回避することができるか或は少なくとも最小限にすることができれば、これは特に望ましいことである。例えば、熱安定性がより高くかつまたイオン性臭素含有量が適切に低い臭素置換スチレン系ポリマー、例えば臭素置換ポリスチレンを提供することができれば、特により良好な電気特性の達成にとってかなり有利である。理論的Mwと生じさせた臭素置換ポリスチレンの実際のMwが互いに近くかつイオン性臭素の含有量が電気用途で用いられるポリマー、例えばガラスが充填されているナイロンポリマーに含有させるに充分なほど低い臭素置換ポリスチレンであるスチレン重合体は、本技術分野で歓迎される別の貢献になるであろう。
【0013】
溶融状態の流れ特性の向上と熱安定性の向上の両方を示す臭素置換スチレン系ポリマー、例えば臭素置換ポリスチレンなどを提供することができれば、別の観点から望ましくかつ有利であろう。また、溶融状態の流れと熱安定性の向上を他の重要な特性を実質的に犠牲にすることなく達成することができかつ他の望ましい特性、例えば低いイオン性臭素含有量、最小限(たとえあったとしても)の塩素含有量および望ましい色および臭気特性を付随して与えることができれば、これも多大な利点になるであろう。
【0014】
また、臭素置換ポリスチレンで難燃性が与え(flame retarded)られていて向上した熱安定性と低下した金属腐食性を示す熱可塑性プラスチック、特にエンジニアリング(engineering)熱可塑性プラスチック、特にナイロン(別称はポリアミド)熱可塑性プラスチックも求められているままである。
【0015】
本発明は、臭素置換ポリスチレンの前記欠点の全部ではないにしても大部分を克服しないまでも少なくとも最小限にすると考えている。
【0016】
(発明の要約)
本発明に従い、イオン性臭素含有量が適切に低い新規な高品質の臭素置換スチレン系ポリマーを提供する。加うるに、この新規な臭素置換スチレン系ポリマーは、これをいろいろな種類の熱可塑性ポリマー(ガラスが充填されているポリエステルおよびガラスが充填されているナイロンを包含)用の難燃剤として用いる時の有用性を高める他の優れた特性または特徴を有するか或は示す。
【0017】
従って、本発明の1番目の面に従い、(i)TGAにおける1%重量損失の温度が340℃以上、好適には340℃から380℃の範囲、より好適には345℃から380℃の範囲でありかつ塩素含有量がたとえあったとしても約700ppm Cl未満、好適には500ppm Cl未満、より好適には100ppm Cl未満でありかつ(ii)イオン性臭素含有量が2000ppm以下、好適には1500ppm以下、より好適には1000ppm以下、最も好適には500ppm以下[前記ppmのレベルは全部当該臭素置換スチレン系ポリマーの全重量を基準にしたレベルである]である臭素置換スチレン系ポリマー、好適には臭素置換ポリスチレンを提供する。
【0018】
この1番目の面に従い、また、実際のMwが臭素置換スチレン系ポリマーの実際の臭素含有量と臭素置換スチレン系ポリマーの製造で用いたスチレン系ポリマー反応体のMwを基準にして計算した理論的Mwの約20%以内、好適には約10%以内でありかつイオン性臭素含有量が2000ppm以下、好適には1500ppm以下、より好適には1000ppm以下、最も好適には500ppm以下である臭素置換スチレン系ポリマー、好適には臭素置換ポリスチレンも提供する。前記臭素置換スチレン系ポリマーは、また、好適には(i)Clの含有量が約700ppm未満、好適には500ppm Cl未満、より好適には100ppm Cl未満でありそして/または(ii)TGAにおける1%重量損失の温度が340℃以上、好適には340℃から380℃の範囲、より好適には345℃から380℃の範囲であることを特徴とする。
【0019】
この1番目の面では、また、(a)塩化メチレン、(b)二塩化エチレンおよび特に(c)ブロモジクロロエタン、(d)ジブロモクロロエタン、(e)ジブロモジクロロエタン、(f)トリブロモクロロエタンおよび(g)前記の2種以上から成る任意混合物、特に(c)から(f)の少なくとも1つを含有する混合物から成る群から選択される不純物を本質的含まずかつイオン性臭素含有量が2000ppm以下、好適には1500ppm以下、より好適には1000ppm以下、最も好適には500ppm以下である臭素置換スチレン系ポリマー、好適には臭素置換ポリスチレンも提供する。追加的代替の好適な態様における前記臭素置換スチレン系ポリマーは、また、(i)Clの含有量がたとえあったとしても約700ppm未満、好適には500ppm Cl未満、より好適には100ppm Cl未満でありそして/または(ii)TGAにおける1%重量損失の温度が340℃以上、好適には340℃から380℃の範囲、より好適には345℃から380℃の範囲であり、そして/または(iii)本明細書の以下に記述する熱安定性試験における熱安定性が1500ppm HBr以下、好適には1000ppmのHBr以下、より好適には500ppmのHBr以下であり、そして/または(iv)実際のMwが臭素置換スチレン系ポリマーの実際の臭素含有量と臭素置換スチレン系ポリマーの製造で用いたスチレン系ポリマー反応体のMwを基準にして計算した理論的Mwの約20%以内、好適には約10%以内であることを特徴とする。
【0020】
この1番目の面の前記態様の各々における臭素置換スチレン系ポリマー、好適には臭素置換ポリスチレンは、追加的に、本明細書の以下に記述する熱安定性試験における熱安定性が1500ppm HBr以下、好適には1000ppmのHBr以下、より好適には500ppmのHBr以下、最も好適には200ppmのHBr以下(例えば100ppmのHBr以下の如く少ない)であり、ここで、前記ppmのレベルは全部当該臭素置換スチレン系ポリマーの全重量を基準にしたレベルである。
【0021】
この上に記述した本発明の1番目の面の臭素置換ポリマー組成物の各々が有する全臭素含有量は、好適には少なくとも50重量%、より好適には少なくとも60重量%、最も好適には少なくとも約67重量%(例えば約68−71重量%の範囲)である。
【0022】
本発明の2番目の面では、向上したメルトフロー(melt flow)特性と向上した熱安定性の両方を有する臭素置換スチレン系ポリマー、例えば臭素置換ポリスチレンを提供する。加うるに、本発明を用いると、そのような有益で有利な特性を他の重要な特性を実質的に犠牲にすることなく達成することができる。実際、本発明のこの面では、他の所望特性を有し、例えばイオン性臭素含有量が低く塩素含有量が最小限であり(たとえあったとしても)かつ所望の色および臭気特性を有する臭素置換スチレン系ポリマー、例えば臭素置換ポリスチレンを提供することができる。
【0023】
従って、本発明の2番目の面に従い、60から66重量%臭素の範囲の臭素含有量を有し、全塩素含有量がたとえあったとしても700ppm未満であり、GPCによる重量平均分子量が500,000から800,000の範囲であり、DSCによるガラス転移温度(Tg)が175℃未満でありかつ熱安定性試験における熱安定性が250ppm HBr以下である臭素置換スチレン系ポリマー、好適には臭素置換ポリスチレンを提供する。
【0024】
好適な態様では、前記熱安定性試験における熱安定性は150ppm HBr以下、より好適には100ppm以下である。前記Tgは好適には165℃以下、最も好適には160℃以下である。前記臭素含有量は好適には60から65重量%の範囲、最も好適には60から64重量%の範囲である。塩素含有量はたとえあったとしても好適には500ppm以下、より好適には200ppm以下、最も好適には100ppm以下である。前記GPCによる重量平均分子量は好適には500,000から700,000の範囲である。
【0025】
この2番目の面の更に他の好適な態様における臭素置換スチレン系ポリマー、好適には臭素置換ポリスチレンは、(i)(a)塩化メチレン、(b)二塩化エチレンおよび特に(c)ブロモジクロロエタン、(d)ジブロモクロロエタン、(e)ジブロモジクロロエタン、(f)トリブロモクロロエタンおよび(g)前記の2種以上から成る任意混合物、特に(c)から(f)の少なくとも1つを含有する混合物から成る群から選択される不純物を本質的含まずそして/または(ii)溶液ΔE色値(クロロベンゼン中10重量%)が20未満、好適には2から18の範囲、最も好適には2から15の範囲であり、そして/またはTGAによる1%重量損失の温度が約315℃を越え、より好適には約325℃以上である。
【0026】
本発明の3番目の面では、ブレンドする前に(i)約50重量%を越える(好適には約60重量%を越える、より好適には少なくとも約67重量%)の全臭素含有量を有し、(ii)TGAにおける1%重量損失の温度が340℃以上、好適には340℃から380℃の範囲、より好適には345℃から380℃の範囲でありかつ(iii)塩素含有量がたとえあったとしても約700ppm Cl未満(より好適には約500ppm Cl未満、更により好適には約100ppm Cl未満)である臭素置換スチレン系ポリマーが少なくとも難燃量(flame retardant amount)で混ざり合っている熱可塑性ポリマー、好適には熱可塑性エンジニアリング熱可塑性ポリマーを含んで成る組成物を提供する。
【0027】
本発明の3番目の面の別の態様は、ブレンドする前に(i)約50重量%を越える(好適には約60重量%を越える、より好適には少なくとも約67重量%)の全臭素含有量を有し、(ii)塩素含有量がたとえあったとしても約700ppm Cl未満(好適には約500ppm Cl未満、より好適には約100ppm Cl未満)でありかつ(iii)本明細書の以下に記述する加水分解性臭素試験における加水分解性臭素含有量が3600ppm Br以下、より好適には加水分解性臭素含有量が2800ppm Br以下である臭素置換スチレン系ポリマーが少なくとも難燃量で混ざり合っている熱可塑性ポリマー、好適には熱可塑性エンジニアリング熱可塑性ポリマーを含んで成る組成物である。
【0028】
この面の別の態様では、ブレンドする前に(i)約50重量%を越える(好適には約60重量%を越える、より好適には少なくとも約67重量%)の全臭素含有量を有し、(ii)TGAにおける1%重量損失の温度が340℃以上、好適には340℃から380℃の範囲、より好適には345℃から380℃の範囲でありかつ(iii)本明細書の以下に記述する加水分解性臭素試験における加水分解性臭素含有量が3600ppm Br以下、好適には加水分解性臭素含有量が2800ppm Br以下である臭素置換スチレン系ポリマーが少なくとも難燃量で混ざり合っている熱可塑性ポリマー、好適には熱可塑性エンジニアリング熱可塑性ポリマーを含んで成る組成物を提供する。この態様で用いるに特に好適な臭素置換スチレン系ポリマーは、ブレンド前の塩素含有量がたとえあったとしても約700ppm Cl未満(より好適には約500ppm Cl未満、更により好適には約100ppm Cl未満)であることをさらなる特徴とする臭素置換スチレン系ポリマーである。
【0029】
本発明の3番目の面のさらなる態様は、ブレンドする前に(i)約50重量%を越える(好適には約60重量%を越える、より好適には少なくとも約67重量%)の全臭素含有量を有し、(ii)本明細書の以下に記述する熱安定性試験における熱安定性が200ppm HBr以下、好適には150ppmのHBr以下、より好適には100ppmのHBr以下である臭素置換スチレン系ポリマーが少なくとも難燃量で混ざり合っている熱可塑性ポリマー、好適には熱可塑性エンジニアリング熱可塑性ポリマーを含んで成る組成物である。この態様で用いるに特に好適な臭素置換スチレン系ポリマーは、ブレンド前の塩素含有量がたとえあったとしても約700ppm Cl未満(より好適には約500ppm Cl未満、更により好適には約100ppm Cl未満)であることをさらなる特徴とする臭素置換スチレン系ポリマーである。
【0030】
更に別の態様は、ブレンドする前に(i)約50重量%を越える(好適には約60重量%を越える、より好適には少なくとも約67重量%)の全臭素含有量を有し、(ii)TGAにおける1%重量損失の温度が340℃以上、好適には340℃から380℃の範囲、より好適には345℃から380℃の範囲でありかつ(iii)本明細書の以下に記述する熱安定性試験における熱安定性が200ppm HBr以下、好適には150ppmのHBr以下、より好適には100ppmのHBr以下である臭素置換スチレン系ポリマーが少なくとも難燃量で混ざり合っている熱可塑性ポリマー、好適には熱可塑性エンジニアリング熱可塑性ポリマーを含んで成る組成物である。この態様で用いるに特に好適な臭素置換スチレン系ポリマーは、ブレンド前の塩素含有量がたとえあったとしても約700ppm Cl未満(より好適には約500ppm Cl未満、更により好適には約100ppm Cl未満)であることをさらなる特徴とする臭素置換スチレン系ポリマーである。
【0031】
本発明の3番目の面のさらなる態様は、ブレンドする前に(i)約50重量%を越える(好適には約60重量%を越える、より好適には少なくとも約67重量%)の全臭素含有量を有し、(ii)TGAにおける1%重量損失の温度が340℃以上、好適には340℃から380℃の範囲、より好適には345℃から380℃の範囲であり、(iii)本明細書の以下に記述する加水分解性臭素試験における加水分解性臭素含有量が3600ppm Br以下、より好適には加水分解性臭素含有量が2800ppm Br以下でありかつ(iv)本細書の以下に記述する熱安定性試験における熱安定性が200ppm HBr以下、好適には150ppmのHBr以下、より好適には100ppmのHBr以下である臭素置換スチレン系ポリマーが少なくとも難燃量で混ざり合っている熱可塑性ポリマー、好適には熱可塑性エンジニアリング熱可塑性ポリマーを含んで成る組成物である。この態様で用いるに特に好適な臭素置換スチレン系ポリマーは、ブレンド前の塩素含有量がたとえあったとしても約700ppm Cl未満(より好適には約500ppm Cl未満、更により好適には約100ppm Cl未満)であることをさらなる特徴とする臭素置換スチレン系ポリマーである。
【0032】
更に別の態様は、ブレンドする前に(i)約67重量%以上の全臭素含有量を有しかつ(ii)TGAにおける1%重量損失の温度が340℃以上、好適には340℃から380℃の範囲、より好適には345℃から380℃の範囲である臭素置換スチレン系ポリマーが少なくとも難燃量で混ざり合っている熱可塑性ポリマー、好適には熱可塑性エンジニアリング熱可塑性ポリマーを含んで成る組成物である。
【0033】
本発明の3番目の面の前記組成物の各々で好適に用いる臭素置換スチレン系ポリマーは、更に、
a)ブレンド前に含有するClの量が検出不能な量であり、そして/または
b)ブレンド前の実際のMwが臭素置換スチレン系ポリマーの実際の臭素含有量と臭素置換スチレン系ポリマーの製造で用いたスチレン系ポリマー反応体のMwを基準にして計算した理論的Mwの約20%以内、好適には約10%以内であり、そして/または
c)ブレンド前にブロモジクロロエタン、ジブロモクロロエタン、ジブロモジクロロエタンおよびトリブロモクロロエタンのいずれか1つ以上を検出可能な量で含有せず、
d)ブレンド前に示すΔE色値が20未満(好適には5から18の範囲内、最も好適には3から15の範囲内である)である、
ことをさらなる特徴とする。
【0034】
この上に記述した本発明の3番目の面の組成物は各々最も好適には更にまた補強用充填材または繊維、好適にはガラス繊維も補強量(reinforcing amont)で含みそして/または分散している難燃相乗剤(flame retardant synergist)も含んで成る。
【0035】
この上に記述した本発明の3番目の面の組成物の各々における熱可塑性ポリマーは、最も好適には、熱可塑性ポリエステルまたは熱可塑性ポリアミドである。
【0036】
この3番目の面の特徴は、従来技術の臭素置換ポリスチレンを用いて作られた相当する組成物に比較して高いポリマー加工温度で向上した熱安定性を示しかつ低下した金属腐食性を示す難燃組成物(flame retarded compositions)をここに提供することができるようになった点にある。加うるに、ここに、他の優れた特性、例えば高温時に低下した臭気および低下した着色を示す難燃組成物を提供することができる。
【0037】
本明細書に示すppmのレベルは全部当該臭素置換スチレン系ポリマーの全重量を基準にしたレベルである。
【0038】
以下に行う記述および添付請求の範囲から本発明の他の態様および特徴が更に明らかになるであろう。
【0039】
(本発明の1番目の面−さらなる説明)
臭素置換スチレン系ポリマー
この面の臭素置換スチレン系ポリマーは臭素置換スチレン系ポリマー(好適には臭素置換ポリスチレン)である。このような臭素置換スチレン系ポリマーの全臭素含有量は少なくとも50重量%、好適には60重量%を越え、より好適には少なくとも67重量%であり、そしてこれのイオン性臭素含有量は2000ppm以下、好適には1500ppm以下、より好適には1000ppm以下、最も好適には500ppm以下であり、ここで、重量%およびppmのレベルは全部特に明記しない限り当該臭素置換スチレン系ポリマーの全重量を基準にしている。更に、本発明の臭素置換スチレン系ポリマー(好適には臭素置換ポリスチレン)は特定の重要な追加的特性もしくは特徴を有し、このような特徴は、TGAにおける1%重量損失の温度、全塩素含有量(もしあれば)、本明細書の以下に記述する熱安定性試験における熱安定性、実際のMwが計算した理論的Mwに緊密に一致していること、そして特定の不純物内容物を含まないことの如き要因に関する。説明を進めるにつれて本発明の他の適切な臭素置換スチレン系ポリマーの特性が明らかになるであろう。
【0040】
この上に示したTGA特性を持たせた臭素置換スチレン系ポリマーの特徴である高いTGA温度は反応後の精製技術によるものでないと考えている。むしろ、そのような向上した熱安定性は本臭素置換スチレン系ポリマー自身の化学的構成によるものであると考えている。
【0041】
この上に示したMw特性を持たせた臭素置換スチレン系ポリマーに関して、実際のMwと理論的Mwの間の差がGPC分析の誤差の通常の±余裕度の外側にあることは、架橋が起こった(Mwが上昇した)か或はポリマー鎖の開裂が起こった(Mwが低下した)証拠である。前記特性を持たせた臭素置換スチレン系ポリマーに関して上述した20%の差には誤差の±余裕度が含まれる。好適な差は20%未満の差であり、10%未満の差が最も好適である。同じポリマーに試験を受けさせた場合にGPC技術が与える値は類似しているが異なる可能性があることから、試験を受けさせるべきポリマーのGPC測定を連続的に5回行って値の算術的平均を取ることで試験を最良に実施する。データの平均を取る他の技術、例えばGPC測定を連続的に10回行って高い値と低い値を廃棄することで取った平均を用いることなども適切であり、ただ1つの必要条件は得られる結果が正確で再現性があることにある。
【0042】
本発明は、また、下記の如き式(I):
【0043】
【化1】
【0044】
[式中、
各Xは、独立して、−Hまたはハライド原子であるが、各ポリマー単位毎の各Xのなりたち(identity)は、臭素置換ポリスチレンが含有するX型ハライド原子が6000ppm未満であるようななりたちであり、そして各ポリマー単位毎のnの値は、臭素置換ポリスチレンが臭素を少なくとも50重量%含有するような値である]
で表されるポリマー単位(polymer units)で構成されている新規な熱安定性臭素置換ポリスチレンも提供する。経済性および性能の観点から、臭素含有量が60重量%を越える値から70−71重量%(n=1.9から2.9−3.0)の範囲内、特に68重量%から71重量%(n=2.7から3.0)の範囲内であるのが好適である。
【0045】
ハライド原子Xに関して、好適な臭素置換ポリスチレンはXがブロマイドである臭素置換ポリスチレンである。前記ポリマーは塩素原子をいくらか含有する可能性はあるが、その量は僅かであり、通常は500ppm未満、恐らくは100ppm未満である。塩素が存在する場合、これの源は恐らく臭素置換ポリスチレンの製造で用いたルイス酸触媒または溶媒であろう。好適な臭素置換ポリスチレンポリマーは、X線蛍光分析に従う塩素含有量が500ppm未満の臭素置換ポリスチレンポリマーである。経済性および性能の観点から、X型ブロマイドの含有量が4000ppm未満、即ち1000ppmから3000ppmの範囲内であるのが有利である。X型ブロマイド含有量が0ppmから1500ppmの範囲内であるのが最も有利である。
【0046】
本発明のこの面の臭素置換ポリスチレンは、これの正に発端からこのポリマーが有するX型ハライド含有量がこの上で考察したように非常に低い点で独特である。これは重要な面である、と言うのは、X型ハライド含有量を下げる目的で前記ポリマーにさらなる処理を受けさせる必要がないからである。X型ハライドの含有量を下げる、即ち加水分解で下げるのは望ましいことでない、と言うのは、それによって構造内にヒドロキシル、エーテルおよび/またはオレフィン官能を有するポリマーがもたらされ、それによってポリマーの特性が変わる可能性があるからである。本発明の臭素置換ポリスチレンは加水分解残渣をほとんどか或は全く含有しない、即ちそれの含有量が500ppm未満、好適には100ppm未満であるのが好ましい。
【0047】
本発明のこの面の最も好適な臭素置換ポリスチレン成分は、最も低いコストで最も高い臭素含有量を与えかつ最も低いX型ハライド含有量を示す成分であり、このような成分は、この上に示した所望特性を得るであろう。
【0048】
この面の臭素置換スチレン系ポリマーは、好適には、優れた追加的物性を示し、例えば色も臭気もほとんどか或は全く持たない。難燃剤にとって色は重要な特性であり、純白が最終的な目標である。全ての臭素置換方法でいろいろな着色体が生じることから、本産業では、白色に近い製品を容認されるとして受け入れて来た。従来技術の臭素置換ポリスチレンの色は、溶液ΔE値として表して一般に20から35の範囲内に入るであろう。区別として、本発明に従って用いる臭素置換ポリスチレンはΔE値(クロロベンゼン中10%)が典型的に20未満、好適には2から18の範囲内であることを特徴とする。最も好適には、前記ΔE値は2から15の範囲内であろう。
【0049】
この面の好適な臭素置換スチレン系ポリマーの別の物性は、これを150℃を越える温度に加熱した時に本質的に全く臭気を発しないか或は臭気が非常に僅かな点にある。比較として、Pyro−Chek(商標)68PB臭素置換ポリスチレン難燃剤(Ferro Corporation)は150℃で注目すべきほど強い臭気を発する。このような強い臭気はPyro−Chek(商標)68PB製品にブロモクロロエタン、例えばブロモジクロロエタン、ジブロモクロロエタン、ジブロモジクロロエタンおよびトリブロモクロロエタンなどが存在していることによるものであると考えている。本発明の臭素置換スチレン系ポリマーにはそのようなブロモクロロエタン類は検出可能量で見られない。
スチレン系ポリマー反応体
本発明のこの面の臭素置換スチレン系ポリマーを生じさせる目的で臭素置換を受けさせるスチレン系ポリマーは、ビニル芳香族モノマーから作られたホモポリマーおよびコポリマーである。好適なビニル芳香族モノマーは式:
H2C=CR−Ar
[式中、
Rは、水素原子、または炭素原子数が1から4のアルキル基であり、そしてArは、炭素原子数が6から10の芳香基(環がアルキルで置換されている芳香基を包含)である]
で表される。そのようなモノマーの例はスチレン、アルファ−メチルスチレン、オレソ−メチルスチレン、メタ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、パラ−エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、ビニルナフタレン、イソプロペニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ジメチルスチレン類、t−ブチルスチレン、数種のブロモスチレン類(例えばモノブロモ−、ジブロモおよびトリブロモ変異体)である。ポリスチレンが好適な反応体である。本臭素置換スチレン系ポリマーの製造を2種以上のビニル芳香族モノマーから作られたコポリマーの臭素置換で行う場合、スチレンが前記モノマーの1つでありかつスチレンが共重合性ビニル芳香族モノマーの少なくとも50重量パーセントを構成するのが好適である。臭素置換スチレン系ポリマーを製造する時の臭素置換でブロモスチレン系ポリマー(bromo styrenic polymer)を選択する場合、最初のブロモスチレン系ポリマーは、本発明の臭素置換スチレン系ポリマーに存在させるべき臭素の含有量よりも低い臭素含有量を有するべきである。これに関連して、本明細書および本明細書の請求の範囲で用いる如き用語「臭素置換スチレン系ポリマー」および「臭素置換ポリスチレン」は、前以て存在するスチレン系ポリマー、例えばポリスチレンまたはスチレンと他の少なくとも1種のビニル芳香族モノマーから作られたコポリマーの臭素置換で生じる臭素置換ポリマーを指し、これは1種以上の臭素置換スチレン系モノマーのオリゴマー化または重合で生じるオリゴマーまたはポリマーから区別され、後者のオリゴマーまたはポリマーの特性は数多くの点で臭素置換ポリスチレンとはかなり異なる。
【0050】
この1番目の面の臭素置換ポリスチレンの製造で用いるポリスチレン反応体は商業的に入手可能なポリスチレン反応体のいずれであってもよい。このポリスチレンのバックボーンは一般に水添を受けておらず、従って不飽和を持つであろう。EPO 0 201 411に教示されているようにアニオン的に生じさせたポリスチレンを用いて本発明の臭素置換ポリマーを生じさせる必要はなく、実際、このポリスチレン反応体はアニオン製造のポリスチレンでないのが好適である、と言うのは、そのようなポリスチレンポリマーは高価でありかつ容易には入手できないからである。このポリマーが有するペンダント型芳香構成要素(aromatic pendant constituents)はアルキルで置換されていてもよいが、大部分のケースで、そのような置換基を持たないであろう。本発明の臭素置換ポリスチレンを生じさせる時に用いるポリスチレンは、500から500,000の範囲内のMwを示しかつ1より高い値から4の範囲内の多分散性(polydispersity)を示すポリスチレンであろう。大部分の目的で用いるに適したポリスチレン反応体は100,000から300,000の範囲内のMwを示しかつ1.25から2.5の範囲内の多分散性を示すであろう。より低い分子量を有するポリスチレン反応体は500から100,000の範囲内のMwを示しかつ約10未満、好適には1を越える値から4の範囲内の多分散性を示すであろう。本発明のより高い分子量を有するポリマー反応体は300,000から500,000の範囲内のMwを示しかつ1を越える値から4の範囲内の多分散性を示す。Mwおよび多分散性の値は両方とも本明細書の以下に記述するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)技術を基にした値である。
【0051】
また、本臭素置換ポリスチレンである難燃剤を生じさせる時に用いるポリスチレンが如何なる添加剤も含有しないのが好適であり、例えばステアリン酸亜鉛、パラフィン、鉱油などを含有しないのが好適であることも確認した。非常に好適なポリスチレンは、Dow Chemical Companyが販売しているStyron(商標)612である。しかしながら、添加剤を含有するポリスチレン、例えばDow Chemical CompanyのStyron 668、Styron 677、Styron 680ばかりでなく、Hercules IncorporatedのPiccolastic A5、Piccolastic A75またはPiccolastic D125、そしてChevton Chemical CompanyのEA 3300、MB3200、MC3100またはEA3000、または他の製造業者の相当する材料を用いることも可能である。
臭素置換ポリスチレンの製造
簡潔さの目的で、本明細書の以下に行う説明の多くで臭素置換ポリスチレン、即ち本発明の好適な難燃剤の製造を言及する。この記述する原理および手順は他の臭素置換スチレン系ポリマーの製造にも適用可能である。
【0052】
本発明の臭素置換ポリスチレンの製造は通常通りではない。適切な方法は、一般に、ブロモクロロメタンとポリスチレンの溶液と臭素(ポリスチレン中の重合したスチレン1モル当たり2.5から5モルの臭素)の混合物をブロモクロロメタンがさらなる量で入っておりかつAlCl3が触媒量で入っている反応槽に供給することを含んで成る。ポリスチレンとブロモクロロメタンと臭素の混合物に臭素置換用触媒を実質的に含めない。この語句「臭素置換用触媒を実質的に含めない」は触媒の量が触媒有効量未満であることを意味すると解釈されるべきである。触媒をそのような低い量で用いると、触媒作用による臭素置換も架橋もほとんどか或は全く起こらない。そのような量は、一般に、存在させるポリスチレン反応体の重量を基準にして500ppm未満であろう。反応が起こる温度は−10℃から15℃の範囲内であろう。この反応を好適には−10℃から10℃の範囲の1つ以上の温度で実施する、と言うのは、そのようにすると最も高い品質の生成物がもたらされ、かつ驚くべきことに、反応自身がそのような低い温度でも工程が商業的生産要求に合致するような適切に速い速度で進行するからである。反応マス(reaction mass)が生じた後、それを通常は反応温度に5分から2時間の範囲、好適には5分から60分の範囲の時間維持する。この時間が経過した後、反応生成物に水を添加することで処理した後、沈降させることで酸性相を除去する。所望に応じて水洗浄を数回実施してもよい。次に、この反応マスを水酸化ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよび/またはナトリウムボロハイドライドなどの如き塩基(通常は水溶液)で処理することで反応物のpHを適切な塩基度レベルに調整して、いくらか残存する臭素化剤を失活させる。このような処理を行った後、反応マスを沈降させて、臭素置換スチレン系ポリマー生成物を溶質として含有する有機相と水相を含む2相反応マスを得る。その水相をデカンテーションで除去し、そして残存する有機相から溶媒成分を除去する。前記有機相をポンプ輸送して沸騰水に入れることでそのような除去を達成するのが最も便利である。溶媒が瞬間的に蒸発して出て行くにつれて臭素置換スチレン系ポリマー生成物が沈澱物を形成する。この沈澱物は如何なる液体−固体分離技術で回収されてもよく、例えば濾過または遠心分離などで回収可能である。次に、その回収した沈澱物を乾燥させる。望まれるならば、完成させた臭素置換ポリスチレン組成物に塩基を熱安定量で混合してもよい。即ち、その完成させた臭素置換ポリスチレン組成物を、この完成組成物のサンプルをブロモクロロメタンに溶解させそしてその結果として生じた溶液を水で抽出した時の水性抽出液が少なくとも約9.0のpH、好適には9.5から11の範囲のpH、より好適には10から10.5の範囲のpHを示すような量のアルカリ金属塩基をそれが含有するように処理してもよい。1998年4月24日付けで提出した共通所有の出願連続番号09/066,172に、結果として得る臭素置換ポリスチレンの熱安定性を向上させる目的で塩基水溶液を適切な量で用いる方法が記述されている。好適な方法は、完成させた臭素置換ポリスチレン内に残存する塩基の残存量が適切になるように触媒失活段階中に用いる塩基の量を適切に多くする方法である。
【0053】
ルイス酸触媒の存在下の沸点が100℃未満の炭化水素またはハロ炭化水素溶媒中でポリスチレンに臭素を用いた臭素置換を受けさせることで生じさせた反応マスからイオン性ハロゲン含有量(例えばイオン性臭素もしくはイオン性塩素含有量)が適切に低い精製された臭素置換ポリスチレンポリマー(または他の臭素置換スチレン系ポリマー)を回収することを確保するに好適な方法を用いることができる。そのような好適な方法は下記を含んで成る:
a)前記反応マスに水中でクエンチング(quenching)を受けさせることで水相と有機相を生じさせて前記有機相を回収し、
b)前記有機相と水を水相が有機相1体積部当たり0.02から0.6体積部であるような比率で10から100℃の範囲の温度で混合することで水性抽出相と抽出を受けた有機相を生じさせて前記抽出を受けた有機相を回収し、
c)場合によるが好適には、b)で抽出を受けた有機相を無機アルカリ金属塩基および水と一緒に混合することでアルカリ性混合物(この混合物中の水相のpHは7から14の範囲、好適には10から14の範囲である)を生じさせ、
d)c)で得たアルカリ性混合物を臭素捕捉剤および水と一緒に混合することで臭素を捕捉させた混合物を生じさせ、
e)d)で臭素を捕捉させた混合物を前記炭化水素またはハロ炭化水素溶媒の沸騰温度またはそれより高い温度に維持されている無機アルカリ金属塩基水溶液と一緒に混合することで臭素置換ポリスチレンを沈澱させ、そして
f)e)で沈澱物として生じさせた臭素置換ポリスチレンを回収する。
【0054】
この上に示した段階c)を進行させる前に、この上に示した段階b)を必要に応じてか或は適宜1回以上繰り返すことで、イオン性ハロゲン(例えばイオン性臭素)を所望通り低下させてもよい。別法として、液−液抽出装置、例えば液−液抽出塔などを用いた連続基礎を基にして段階b)を実施することも可能である。亜硫酸ナトリウムおよびナトリウムボロハイドライドがこの上に示した段階d)で用いるに好適な臭素捕捉剤である。しかしながら、他の水溶性無機硫化物を用いることも可能である。かつ、この上に示した段階d)で望まれるならば合体フィルター(coalescing filter)を用いて前記有機相から追加的水相を除去してもよく、それによって、完成品のイオン性ハロゲン含有量を更に低くすることも可能である。
【0055】
臭素置換ポリスチレンを製造する時、鉄の含有量を最小限、即ち鉄を約10ppm未満に保つことが重要である。反応流れおよび生成物流れに接触する装置が鉄製であると、それによって鉄が生成物の中に入り込むことが通常起こる。従って、鉄混入源として作用しない工程装置を用いるのが好適である。このような装置は例えばガラス内張り装置または耐食合金製装置であり得る。
【0056】
より詳細な工程説明を添付図を参照して以下に行う。
図を参照した臭素置換工程の詳細な説明
好適な臭素置換ポリスチレン製造工程技術を本明細書に記述する。本明細書に特に示さない限りまた本明細書の如何なる請求の範囲にも明記しない限り本発明がそのような好適な工程技術の全部の使用に限定されることはないことは理解されるであろう。
【0057】
このような好適な方法を用いて臭素置換ポリスチレンを生じさせる時に用いるに有用なポリスチレンはこの上に記述したポリスチレン類のいずれかである。また、この上に述べたように、ポリスチレンが添加剤を含まないのも好適である。
【0058】
この好適な方法で用いる触媒は、アルミニウムを基とする触媒のいずれかであり得、例えばAlCl3、AlBr3およびAlのいずれかであってもよい。また、アルミニウム触媒の混合物を用いることも可能である。この触媒を反応装置に添加した後、これは触媒活性を有意に失うことなくある種の反応を起こす可能性があり、例えばAlCl3はある程度ではあるがAlBr3に変わる可能性がある。入手性および価格が理由でAlCl3が選択した触媒であり、粉末グレードのAlCl3は分散が容易であることからこれが最も好適である。
【0059】
この触媒を求める触媒効果が得られるに充分な量で用いる。このような触媒量は当該触媒の活性に依存するであろうが、臭素置換を受けさせるスチレン系ポリマーの重量を基準にして一般に0.2から10重量パーセントの範囲、好適には0.5から5重量パーセントの範囲内に入るであろう。触媒の活性が高ければ高いほど使用量を少なくする一方、触媒の活性が低ければ低いほど使用量を多くする。AlCl3を触媒として用いる場合には、0.5から3重量パーセントの範囲内の量が好適である。
【0060】
臭素化剤は好適には臭素である。臭素は2原子形態で商業的に入手可能であり、或はHBrの酸化でそれを生じさせることも可能である。Br2は液体または気体のいずれかで供給可能である。本方法で用いる臭素化剤の量は、供給する臭素化剤全体とスチレン系ポリマー全体の全体モル比が前記ポリマーに含まれるスチレン系モノマー単位当たりの臭素置換数が1から3になるようにすべきである。この臭素置換を受けさせたポリスチレンが臭素を少なくとも約60重量%、望ましくは臭素を少なくとも約68重量%、最も好適には臭素を69から71重量%の範囲で含有するようにするのが好適である。この方法で用いる臭素化剤の量は、所定スチレン系ポリマー毎に選択した工程パラメーター(process parameters)を用いて得ることができる最大の臭素含有量を考慮に入れて望まれる臭素含有量で決定されるであろう。要求される臭素含有量が高ければ高いほど臭素化剤を多く用いる必要がある。過臭素置換(perbromination)に近付くにつれて最後の臭素置換が困難になることを指摘する。臭素化剤を更により多い量で添加しても必ずしもそのような困難さが軽減されるとは限らない。化学量論は、求める1置換当たりに1モルのBr2が必要であるとして容易に決定される。実際、実施者は、求める臭素含有量を重量基準で決定した後、それを得るに必要な臭素化剤のモル数を理想化した基準を基にして計算するであろう。例えば、スチレン系ポリマーがポリスチレンでありそして求める臭素含有量が68重量%であるとすると、必要な臭素の量はスチレン系モノマー(styrenic monomer)単位当たり少なくとも2.7モルであろう(望まれるいくらかの化学量論的過剰量を含まない)。
【0061】
反応槽に臭素の全部をポリスチレン−ブロモクロロメタン溶液と一緒に添加してもよいか或は臭素の一部を前以て添加しておいてその残りを前記溶液と一緒に添加することも可能である。予備添加を用いる場合には、そのような前以て添加しておく部分を本方法で用いる臭素全体の0.5から20%の量にする。
【0062】
供給すべき混合物を、一般に、臭素化剤をスチレン系モノマー単位1モル当たり1から8モル用いて供給時間の間のいずれかの時点で生じさせる。この供給時間中の量関係は一定であってもよいか或は上述した範囲内で変えることも可能である[前記範囲外のいくらかの偏位(excursion)もそれが本方法の効率にも生成物の品質にも有意な害を与えない限り許され得る]。そのような供給混合物を生じさせる時の好適な範囲はスチレン系モノマー単位1モル当たり2.5から5モルの臭素化剤である。理解されるであろうように、スチレン系モノマー単位に対する臭素化剤のモル比がその選択した臭素化剤とスチレン系モノマー単位の全体的モル比よりも小さいか或は大きいと言った量で臭素化剤を供給混合物中で用いると、結果として、混合物成分としての臭素化剤またはスチレン系ポリマーのいずれかが他の成分が枯渇する前に枯渇してしまうであろう。例えば、臭素含有量が70重量%の臭素置換ポリスチレンを製造しようとする場合には臭素とスチレン系モノマー単位の全体的モル比を3.0:1にするのが適切である。しかしながら、臭素とスチレン系モノマー単位のモル比が1:1である供給混合物を生じさせると、必要な全体的量の臭素を得る前にポリスチレンの供給すべき量が完了してしまうであろう。この場合、実施者は最初に1:1の混合物を用いた後、ポリスチレン供給材料が枯渇した後に臭素供給材料のみを用いて継続することになる。他方、供給混合物中のモル比が5:1になるように選択した場合には、臭素が最初に枯渇し、そしてポリスチレン単独を用いて供給を終了させる必要があるであろう。一般的には、全体のモル比と供給混合物の比率を少なくともいくらか同様にするのが好適である。しかしながら、全てのケースで、初期の供給材料に含める臭素とスチレンモノマー単位のモル比を好適には少なくとも1:1にすべきである。
【0063】
本方法で用いる臭素は本質的に無水、即ち水の含有量が100ppm(重量を基準)未満でありかつ不純物、例えば油、グリース、カルボニル含有炭化水素または鉄などの含有量が10ppm以下であるのが好適である。入手可能な商業グレードの臭素はそのような不純物を含有している可能性がある。しかしながら、そのような臭素が入手不能な場合には、臭素と濃(94−98パーセントの)硫酸を3対1の体積比で一緒に混合することを通して臭素の有機不純物含有量および水含有量を便利に低くすることができる。2相混合物が生じ、これを10−16時間撹拌する。撹拌そして沈降させた後、不純物と水を伴う硫酸相を臭素相から分離する。臭素の純度を更に向上させる目的でその回収した臭素相に蒸留を受けさせることも可能である。
【0064】
臭素置換に好適な有機溶媒、即ちブロモクロロメタンを好適には本質的に無水にし、水の含有量(重量を基準)を100ppm未満にする。この溶媒の水含有量を実際に得ることができる少ない量、即ち0から30ppm(重量を基準)の範囲にするのが最も好適である。
【0065】
本方法では反応マスが無水の状態であると利点が得られる。水はアルミニウム触媒の触媒活性に影響を与える傾向があり、このような影響によってスチレン環の迅速な芳香臭素置換(aromatic bromination)が邪魔される可能性がある。ある理由で、実施者が水を工程に多い量で入れそして脱水を実施することができない時には、単に触媒の使用量を多くすることでそのような状況を克服することができる可能性がある。
【0066】
ブロモクロロメタンとスチレン系ポリマーの溶液を生じさせておくと、前記ポリマーの取り扱いが容易になりかつ臭素との混合が容易になる。このような溶液のポリマー含有量を好適には5から50重量%にする。ポリマー含有量が5から30重量%の溶液がより高度に好適である。
【0067】
臭素/スチレン系ポリマー混合物に送り込む臭素置換用触媒が溶液、スラリー、分散液または懸濁液の状態になり得るように前記触媒をブロモクロロメタンと一緒にしておくのが好適である。そのようにすると反応マスの混合が向上しかつ質量移動性質(mass transfer qualities)が向上するであろう。このブロモクロロメタンと触媒の混合物は懸濁液であるとして最良に記述される。ブロモクロロメタンをブロモクロロメタンと触媒の全重量を基準にして一般に95から99.9重量%、好適には99から99.8重量%の量で用いるのが適切である。
【0068】
工程装置が発熱過程に由来する熱負荷、発生するHBrおよび他の工程懸念を処理する能力を考慮に入れて、スチレン系ポリマー/臭素化剤の混合物の供給を迅速に行うべきである。簡単に述べると、決定的工程パラメーターから外れた偏位が起こらないようにしながら装置が許容する最も短い時間で供給を行うことができる。商業的規模のプラントの場合の供給時間は一般に0.5から3時間になると予測される。工程の規模が小さくなればなるほど供給時間が短くなると予測される。
【0069】
臭素置換反応は−20℃から60℃の範囲内の温度で実施可能である。望ましくは、臭素置換の温度を−10℃から15℃の範囲内に維持する。最も好適な温度は−10℃から0℃の範囲の温度である。最後に述べた範囲の温度を用いると品質が最高の生成物が生じ、かつ驚くべきことに、反応自身もそのような低い温度において工程が商業的生産要求に合致するような適切に速い速度で進行する。圧力は大気圧、大気圧以下または大気圧以上であってもよい。
【0070】
本方法を実施する時、容易に撹拌可能な懸濁液が得られるように臭素置換用触媒、好適には粉末にしたAlCl3を本質的に無水のブロモクロロメタンに入れて懸濁させる。この懸濁液の調製をガラス内張り撹拌反応槽内で行って−10℃から−5℃の範囲内の温度に持って行く。この反応槽内に入っている混合物を不活性な乾燥雰囲気下に維持する。スチレン系ポリマーとブロモクロロメタンが入っている溶液を生じさせた後、臭素の流れと密に混合することで均一な混合物を生じさせる。この混合物を前記反応槽内で撹拌している臭素置換用触媒懸濁液に供給する。このスチレン系ポリマー溶液と臭素の密な混合は数多くの方法で実施可能である。例えば、前記溶液と臭素を混合用装置、例えば反応槽内の懸濁液面の下方地点にまで伸びているディップチューブ(diptube)の下方末端の所に位置する混合用ノズルなどに供給してもよい。この混合用装置の設計を前記溶液と臭素の密な混合が得られるような設計にする。この混合用装置は、また、混合用エネルギーを前記密な混合物および触媒懸濁液に供給時点で与える働きもする。スチレン系ポリマー溶液と臭素化剤の密な混合を得る別の技術は、インラインミキサー(in−line mixer)、例えば衝突ミキサーなどが備わっている外部反応槽ループ(exterior reactor loop)を用いる技術である。このような外部反応槽ループの使用は、一般に、反応槽に最初に臭素置換用触媒のスラリー、即ち懸濁液を仕込んだ後、反応槽から流れを取り出し、その流れを次に反応槽の外側に位置するミキサーに送ることを包含する。また、少なくとも臭素とスチレン系ポリマーから生じさせた混合物も前記ミキサーに供給することで2番目の混合物を生じさせるが、これを前記2つの供給材料を前記ミキサーに送り込むことで生じさせる。次に、この2番目の混合物を前記反応槽に戻す。この反応槽から出て来る流れは、最初、触媒を含有しているであろう。この2番目の混合物を前記反応槽に供給して工程を実施した後に取り出される流れは触媒と一緒に臭素置換ポリスチレンを含有し始めるであろう。
【0071】
図1を参照して、反応槽であるジェットミキサーの使用を実証するが、図1に、番号10で一般的に表示する反応槽を示す。反応槽10は撹拌反応槽であり、これに触媒とブロモクロロメタンを含んで成る懸濁液を最初に入れる。再循環流れを反応槽10から反応槽排出導管40に通してポンプ50に送る。この流れはポンプ50で加圧されて導管70を通って強制的に反応槽10に戻る。臭素を導管20に通してポンプP1に送ると同時にポリスチレンとブロモクロロメタンの溶液を導管22に通してポンプP2に送る。ポンプP1およびP2は、臭素とポリスチレンと溶媒の密な混合物が得られるように、それぞれ、ライン26および28を通してジェットミキサー24への供給を行う。この密な混合物は、反応槽内容物の完全な混合が確保されるように、撹拌機30の近くで反応マスの中に送り込まれる。反応槽10からの内容物の取り出しおよび反応槽10へ戻す再循環かつまたジェットミキサー24への新鮮な反応体の供給を、臭素およびポリスチレン/ブロモクロロメタン溶液の少なくとも実質的に全部が反応マスの中に送り込まれるまで継続する。
【0072】
理解されるであろうように、反応槽10の内容物は前記臭素とブロモクロロメタンの溶液を供給している間に組成の点で変化する。反応槽10の内容物は、最初、触媒と溶媒を含んで成る。この過程が進むにつれて、反応槽の内容物は臭素置換を受けたポリスチレンを含むようになりかつそれの量が豊富になって来る。
【0073】
ディップチューブミキサーを用いるか或は外部衝突ミキサー(exterior impingement mixer)を用いるかに拘らず、スチレン系ポリマーの臭素置換によってHBrが主要な副生成物として生じるであろう。この過程で生じるHBrは最初に溶媒を飽和状態にした後、HBrはそこから出て反応槽内容物の上のヘッドスペース(head space)の中に入り込む。このHBrを除去して水スクラバー(water scrubber)に送り込むか或は乾燥HBrとして貯蔵するのが好適である。反応槽内容物の上の詰物(pad)として乾燥した不活性ガス、例えば窒素などを用いることでそこに存在する水の量を最小限にすることができる。
【0074】
前記スチレン系ポリマーおよび/または臭素化用供給材料(brominating feed)を供給している間、前記反応槽を、全てのケースで、好適には低い温度、例えば−10℃から10℃の温度に維持するが、場合により、最も好適には−10℃から5℃に維持してもよい。また、この供給が終了した後も反応槽を反応温度(望ましくは−10℃から15℃の範囲、好適には−10℃から10℃の範囲)に5分から2時間、好適には5から60分間維持する。前記供給が終了した後のそのような追加的時間は、臭素置換を所望度合の臭素置換が達成されるまで続けるためのものである。そのような時間は、臭素−ポリスチレン供給中の反応パラメーターが穏やかな臭素置換条件を与える場合の方が、前記供給中の選択したパラメーターがより過激な臭素置換条件を与える場合よりも長くなるであろう。また、高い度合の臭素置換(例えば臭素置換ポリスチレンに含まれる臭素が69重量%を越える)が求められる場合にも前記時間を長くする。前記供給が終了した後の追加的時間の間、反応マスを反応槽内に保持しておいてもよい。また、このような保持時間を用い、不活性な気体による清掃を用いることで、反応マスからHBrをより多い量で除去することも可能である。
【0075】
所望度合の臭素置換が達成された時点で、適切に低いイオン性ハロゲン含有量を有する精製臭素置換ポリスチレンポリマーを回収する好適な方法[この上に記述した段階a)からf)を伴う]を用いることができる。反応マスを処理する別の同様な方法は、反応マスを水で処理して触媒を失活させる方法である。次に、この反応マスを沈降させてHBr水溶液相を除去する。次に、いくらか残存する臭素化剤を除去する目的で亜硫酸ナトリウムまたはナトリウムボロハイドライドを典型的には水溶液として添加してもよく(好適には添加し)、次に、水酸化ナトリウムを再び典型的には水溶液として添加することで、反応マスのpHを調整してもよい。亜硫酸ナトリウムおよびナトリウムボロハイドライドがいくらか残存する臭素化剤の除去で用いるに好適な臭素捕捉剤ではあるが、他の水溶性無機硫化物、例えば亜硫酸リチウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アンモニウムなど、または他の水溶性ボロハイドライド、例えばリチウムボロハイドライドまたはカリウムボロハイドライドなどを用いることも可能である[そのような亜硫酸塩またはボロハイドライドアニオンが捕捉機能を遂行する限りそして/またはそのような無機亜硫酸塩もしくはボロハイドライドを水に溶解させた時に他の如何なる種が生じようとも]。このような亜硫酸塩またはボロハイドライドの水溶液に溶解している無機亜硫酸塩またはボロハイドライドの濃度は適切な如何なる濃度であってもよく、そして用いる水溶性亜硫酸塩もしくはボロハイドライド塩の量は、処理を受けさせるべき混合物に存在する残存量の臭素化剤と反応する(を分解させる)に少なくとも充分な量でなければならない。亜硫酸塩またはボロハイドライドを大過剰量、例えば約2−3モル%過剰量を越える量で用いる必要はなくまた推奨もしない、と言うのは、そのような過剰分は有効な目的で働かない廃棄材料に相当するからである。前記臭素化剤を捕捉させた後、望まれるならば追加的水酸化ナトリウムまたは他のアルカリ金属塩基を前記臭素置換ポリスチレンの安定剤として働くに適切な量で好適には水溶液の形態で添加してもよい。そのような安定剤を用いるか否かに拘わらず、反応マスを沈降させることで、臭素置換を受けたスチレン系ポリマー生成物を溶質として含有する有機相と水相を含む2相反応マスを得る。その水相をデカンテーションで除去し、そして残存する有機相から溶媒成分を除去する。前記有機相を沸騰しているか或はほぼ沸騰している水の中に注ぎ込むことを通してそのような除去を達成するのが最も便利である。前記溶媒が瞬間的に蒸発して出て行くにつれて、その残りの液相中に臭素置換スチレン系ポリマー生成物粒子が沈澱物として生じてそれから分離し、それと同時に、望まれるならば、その粒子状の臭素置換ポリスチレンが生成する時に塩基を前記臭素置換ポリスチレンの中に適切な量で取り込ませてもよい。望まれるならば、界面活性剤、例えばスルホこはく酸ジオクチルのナトリウム塩などを前記熱水に添加してもよい。スルホこはく酸ジオクチルを用いる場合、これの量は水と界面活性剤の全重量を基準にして0.01から0.05重量%の範囲内であってもよい。前記沈澱物は如何なる液体−固体分離技術で回収されてもよく、例えば濾過、遠心分離などで回収可能である。次に、この回収した沈澱物を乾燥させる。
分析方法
臭素置換スチレン系ポリマーはテトラヒドロフラン(THF)などの如き溶媒中で良好な溶解度を示すか或は少なくとも容認される溶解度を示すことから、臭素置換スチレン系ポリマーの全臭素含有量の測定は通常のX線蛍光技術を用いて容易に達成される。分析を受けさせるサンプルは希釈サンプル、即ち臭素置換ポリスチレンを60mLのTHFに0.1±0.05g入れたサンプルである。XRF分光測定装置はPhillips PW1480 Spectrometerであってもよい。ブロモベンゼンがTHFに入っている標準溶液を較正標準として用いる。本明細書に記述しそして本実施例に報告する全臭素値は全部XRF分析方法を基にした値である。
【0076】
臭素置換スチレン系ポリマーのイオン性臭素含有量を測定する時に用いる手順は、当該ポリマーのサンプルを適切な有機溶媒に溶解させそしてその溶液を硝酸銀の標準溶液で滴定することを伴う。特に、臭素置換スチレン系ポリマーのサンプルを0.1mg最寄りで2.0グラム重量測定して600mLのビーカーに入れた後、テトラヒドロフラン(THF)を200mLおよび撹拌子を入れる。固体が完全に溶解するまで撹拌を行う。この溶液にトルエンを50mL加えて、この混合物を撹拌する。滴定を実施する直前に前記サンプルの混合物にアセトンを50mLに続いてイソプロピルアルコールを50mLそして次に氷酢酸を10mL加える。次に、自動電位差滴定装置、例えばMetrohm 670、716もしくは736または相当物を用いて、標準化した0.01NのAgNO3で前記サンプルを直ちに滴定する。この手順で試薬等級(A.C.S.)のTHF、トルエン、イソプロピルアルコールおよび酢酸を用いる。サンプルを重複して用いて分析を実施することに加えて、ポリマーを用いない以外は同じ様式でブランクサンプルの測定も実施した。イオン性臭素とイオン性塩素の両方が存在している場合にはブロマイドが最初に滴定される。屈曲点間の差がクロライド滴定量である。2サンプルの測定値の平均を報告する。しかしながら、2サンプルが互いの10%以内で一致しない場合には、追加的反復サンプルを同じ方法で分析し、この3分析の平均を3有意デジット(three significant digits)に報告する。イオン性臭素もしくは塩素の計算は下記の通りである:
イオン性臭素(ppm)=[AgNO3のmLxAgNO3の規定濃度x(7.99)x104]/サンプルの重量(グラム)
イオン性塩素(ppm)=[AgNO3のmLxAgNO3の規定濃度x(3.545)x104]/サンプルの重量(グラム)
AgNO3のmL=(サンプルに要したmL)−(ブランクに要したmL)。
【0077】
本発明の臭素置換ポリマーの色属性を測定する時にも臭素置換スチレン系ポリマーが入手が容易な溶媒、例えばクロロベンゼンなどに溶解し得ることを再び利用する。用いる分析方法は極めて簡単である。臭素置換ポリスチレンを5g±0.1g量り取って50mLの遠心分離管に入れる。この管にまたクロロベンゼンも45g±0.1g加える。この管を密封してリストアクション(wrist action)の振とう機で1時間振とうする。この1時間の振とう時間後、前記溶液を溶解しなかった固体に関して検査する。曇りが存在している場合、前記溶液の遠心分離を4,000rpmで10分間行う。この溶液がそれでも透明でない時には、遠心分離を追加的に10分間行う。この溶液が曇ったままの場合には、正確な測定を行うのは不可能であるとしてそれを廃棄すべきである。しかしながら、透明が溶液が得られたならば(ほとんどの場合得られる)、これに、HunterLab ColorQuest Sphere Spectrocolorimeterを用いた試験を受けさせる。透過長が20mmの透過用セルを用いる。比色計を「Delta E−lab」に設定して、色をΔEとして報告しかつ色値を「L」、「a」および「b」で示す。TA Instruments DSC Model 2920を用いてDSC値を得た。サンプルを窒素下10℃/分で25℃から400℃にまで加熱した。
【0078】
熱重量分析(TGA)を用いて本発明の臭素置換スチレン系ポリマーが示す熱挙動を試験する。TA Instruments Thermogravimetric Analyzerを用いてTGA値を得る。各サンプルをPt製鍋の上に置いて、50−60ml/分の窒素流を用い、10℃/分で25℃から600℃にまで加熱する。
【0079】
サンプルの熱安定性を測定しかつ腐食の可能性を推定する目的で米国特許第5,637,650号に記述されている如き下記の試験手順を用いた。各サンプルの実験を重複して行う。2.00±0.01gのサンプルを新しい奇麗な20x150mmの試験管に入れる。ネオプレン製ストッパーとビトン(Viton)(商標)フルオロエラストマー製配管を用いて、前記試験管から出る気体が3個の250mLサイドアームフィルターフラスコ(sidearm filter flasks)(各々に0.1NのNaOHが200mLとフェノールフタレンが5滴入っている)に入っている表面下気体分散用フリット(subsurface gas dispersion frits)の中に連続的に送られるように前記試験管を窒素パージライン(purge line)につなげる。0.5 SCFHの一定窒素パージを用いて、前記試験管を溶融塩浴液(molten salt bath)(51.3%KNO3/48.7%NaNO3)中で300℃に15分間加熱した後、周囲温度に5分間置く。次に、このサンプルが入っている試験管を奇麗な乾燥した試験管に置き換えた後、この空の試験管を300℃の塩浴液に入れながら前記器具を窒素で追加的に10分間パージ洗浄する。この試験管、配管および気体分散用管の全部を脱イオン水で濯いだ後、この濯ぎ液を前記3個の収集用フラスコに入っている溶液と定量的に(quantitatively)一緒にする。この一緒にした溶液を1:1のHNO3で酸性にした後、自動電位差滴定装置(Metrohm 670、716、736または相当品)を用いて、前記溶液を0.01NのAgNO3で滴定する。結果をHBrのppm、HClのppmおよびHBr相当物のppmとして下記の如く計算する:
ppm HBr=(EP1)(N)(80912)/(サンプル重量)
ppm HCl=(EP2−EP1)(N)(36461)/(サンプル重量)
ppm HBr相当物=(EP2)(N)(80912)/(サンプル重量)
ここで、EP(x)=終点xに到達するまでに用いたAgNO3のmL;そしてN=AgNO3のモル規定。
前記配管を次の分析を行う前に窒素で徹底的に乾燥させる。実験日毎に1番目のサンプルを実験する前に3個の空の奇麗な試験管をブランクとして実験することで、系内に残存ハロゲン化水素が全く存在しないことを確かめる。
【0080】
Watersモデル510 HPLCポンプを用いかつWaters Refractive Index Detector, Model 410およびPrecision Detector Light Scattering Detector, Model PD 2000を検出器として用いたGPCでMw値を得た。カラムはWaters,μStyragel,500Å,10,000Åおよび100,000Åであった。オートサンプラーはShimadzu,Model Sil 9Aであった。常規通りポリスチレン標準(Mw=185,000)を用いて光散乱データの精度を調べた。使用した溶媒はHPLCグレードのテトラヒドロフランであった。用いた試験手順は、0.015−0.020gのサンプルを10mLのTHFに溶解させることを伴っていた。この溶液の一定分量を濾過して50μLを前記カラムに注入する。Precision DetectorsがPD 2000 Light Scattering Detectorで供給しているソフトウエアを用いて分離物の分析を行った。
【0081】
式:
BrPSの理論的Mw=PSのMw+[(PSのMw)(Brの原子重量−Hの原子重量)(Styのモル重量)(0.01)(Brの重量%)]/[(Brの原子重量)(Styのモル重量)−(Brの原子重量−Hの原子重量)(Styのモル重量)(0.01)(Brの重量%)]
に従って計算した理論的Mw値を得た。
【0082】
本出願全体に渡って、「PS」を用いる場合、これをポリスチレンを表示する目的でそれと互換的に用い、これはポリスチレンを意味する一方、「Sty」はスチレンを意味する。用語「Mw」は、この上に記述したGPCで測定(光散乱検出器)した時の重量平均分子量を意味する。
ポリマー基質、他の成分、比率
本発明のさらなる態様に従って前記臭素置換スチレン系ポリマーと一緒にブレンド可能な個々の熱可塑性プラスチックには、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、それらの2種以上のブレンド物または混合物、そして類似の共重合体である熱可塑性ポリエステル(特に補強用充填材、例えばガラス繊維などが充填またはそれらで補強されている時)が含まれる。好適な熱可塑性ポリエステルはポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートである。ポリアミドである熱可塑性プラスチック、例えばポリアミド6、ポリアミド6,6、またはポリアミド12(再び好適にはガラスが充填されている時)などにも同様な様式で有効に難燃性を与えることができる。このような配合に適宜通常の添加剤、例えば難燃相乗剤、抗酸化剤、UV安定剤、染料、顔料、衝撃改良剤、充填材、酸捕捉剤、可塑剤、流れ助剤、発泡剤などを含めることも可能である。本発明の好適なポリマーブレンド物は、難燃相乗剤またはガラス繊維である充填材または補強剤を含有させたブレンド物であり、最も好適には、相乗剤と補強用繊維および/または充填材の両方を含有させたブレンド物である。
【0083】
本発明の臭素置換スチレン系ポリマーである難燃剤を難燃量で用いるが、これは典型的に5から20重量%の範囲であり、この重量%は、熱可塑性ポリマー配合またはブレンド物の全重量を基準にした重量%である。ガラス繊維などの如き補強用充填材を用いる場合、これの量を典型的には完成組成物の全重量を基準にして約50重量%以下の範囲にする。難燃相乗剤、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム、酸化鉄、ホウ酸亜鉛または同様な相乗剤などを用いる場合、これの量を一般に完成組成物の全重量を基準にして約12重量%以下の範囲にする。
【0084】
また、基質である熱可塑性ポリマー以外の成分は適切な相対的比率で存在するが基質であるポリマーのブレンド量はより少ない量であるマスターバッチ組成物も本発明の範囲内である。従って、本発明は、本発明の臭素置換スチレン系ポリマー(好適には臭素置換ポリスチレン)と一緒に例えば1:99から70:30の範囲の重量比(基質ポリマー:臭素置換ポリスチレン)で混ざり合っている少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、例えばポリアルキレンテレフタレートまたはナイロンポリマーなどを含んで成る組成物を包含する。そのようなマスターバッチブレンド物に、必要ではないが、また、充填材または補強用繊維および/または少なくとも1種の難燃相乗剤、例えば酸化鉄、ホウ酸亜鉛または好適には酸化アンチモンである相乗剤、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムまたはアンチモン酸カリウムなどを含有させておくことも可能である。使用可能な補強剤または充填材の典型的な例には、低アルカリのE−ガラス、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラス球もしくはミクロバルーン、ホイスカ、タルク、ウォラストナイト、カオリン、チョーク、焼成カオリンおよび同様な物質が含まれる。望まれるならば、そのような補強剤もしくは充填材と一緒にサイジング剤を用いることも可能である。適切なガラス充填ポリアルキレンテレフタレートまたはナイロン成形用組成物は数多く開放市場で入手可能であり、それらを本発明の組成物の調製で用いることができる。
【0085】
本発明では、また、本発明の臭素置換スチレン系ポリマーと相乗剤で構成させた添加剤ブレンド物、例えば臭素置換ポリスチレンが75重量部で相乗剤、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム、酸化鉄、ホウ酸亜鉛または類似相乗剤が25重量部のブレンド物なども提供する。典型的には、そのようなブレンド物に本臭素置換ポリスチレンを70から98重量部の範囲で含有させかつ前記相乗剤を30から2重量部の範囲で含有させる[この2成分の総量は100重量部である]。そのような添加剤ブレンド物にまた他の適切な添加剤成分を適切な量で含めることも可能である。
【0086】
本発明のそのような追加的組成物を構成するブレンド物または配合物を生じさせる時、いろいろな公知手順を用いることができる。例えば、ポリアルキレンテレフタレートポリマーまたはナイロンポリマーと本臭素置換スチレン系ポリマー、例えば臭素置換ポリスチレンと完成ブレンド物に添加すべき他の任意の成分もしくは材料を粉末形態で一緒にブレンドした後、押出し加工、圧縮成形または射出成形などで成形してもよい。同様に、前記成分をバンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、ロールミル、ニーダーまたは他の同様な混合装置で一緒に混合した後、例えば押出し加工などで所望形態もしくは構造に成形した後、粉砕して粒状物またはペレットにしてもよいか或は他の公知方法を行ってもよい。
【0087】
以下に示す実施例は説明の目的で示すものであり、本発明の範囲に制限を課すと解釈されるべきでない。実施例1−3に本発明の臭素置換ポリスチレンを生じさせるに好適な一般的手順を示す。
【0088】
(実施例)
実施例1
5Lのジャケット付きガラス製反応槽に機械的パドル撹拌機、コンデンサおよびサーモウエル(thermowell)を取り付けて、前記反応槽内でブロモクロロメタン(BCM、水が9ppm)が770.0gで粉末にしたAlCl3が2.775gの混合物を調製した。この反応槽の入り口にジャケット付きガラス製混合用T字管を取り付けて、それに臭素(533.35g、3.337モル)そして134.00g(1.287/nモル)のポリスチレン(Mitsubishi Kasei Polytex、Mw=270,000)が1204gのBCMに入っている溶液をそれぞれ8.74g/分および20.27g/分の平均速度でポンプ輸送した。前記反応槽および混合用T字管を1時間の供給時間および次の1時間の処理(cook)時間の全体に渡って循環グリコール浴で冷却して0℃から2℃の温度に維持した。次に、この反応混合物を水で洗浄した後、グルコン酸ナトリウム水溶液と亜硫酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合物で中和した。その有機相を追加的BCM(1450g)で希釈した後、この溶液を、スルホこはく酸ジオクチルのナトリウム塩(界面活性剤)が0.25g入っている1.8Lの熱(90℃−94℃)水に滴下することで、生成物を沈澱させかつ溶媒を留出させた。このスラリーを濾過して、オフホワイト(off−white)の固体を水で洗浄した。乾燥を150℃で一定重量になるまで行うことで389.8g得た。この生成物の全臭素含有量は69.5%で加水分解性臭素含有量は1300ppmであった。
【0089】
実施例2
5Lのジャケット付き反応フラスコを前記ジャケットにグリコール浴液を循環させることで0℃に冷却しながら、この反応フラスコに乾燥(水が10ppm)ブロモクロロメタン(BCM)を1549.83g入れ、これに粉末にした塩化アルミニウムを7.209g分(54.1ミリモル)懸濁させた(250rpmで撹拌)。PS(360.96g、3.4657/nモル)が乾燥BCMに10.00重量%入っている溶液(3250.44g)を2番目の5Lフラスコ内で調製した。用いたPSはMwが190,000のDow Styron(商標)612であった。このPSの溶液をこの供給材料の貯蔵装置に備わっている下部のバルブから前記反応フラスコに取り付けられているグリコール冷却ジャケット付き混合用T字管にポンプ輸送した。それと同時に、臭素を風袋を量っておいた供給材料貯蔵槽から前記同じ混合用T字管にポンプ輸送することで前記ポリスチレン溶液と一緒にした後、前記反応フラスコ内で撹拌している触媒懸濁液に滴下した。Masterflex(商標)7550−90ポンプを2つ用いた。PS供給装置では全体がテフロン(Teflon)製の供給ラインを用い、ポンプヘッド77390を60rpmの一定速度で作動させた。それによって1分当たり21.02/nミリモル(21.89g/分)のPSから成る一定の供給速度が得られた。臭素供給装置では、テフロン製配管とビトン製配管の組み合わせを用い、ポンプヘッド7518−10を最初の18分間は70.05ミリモル/分の速度で作動させ、18−23分間は38.80ミリモル/分の速度で作動させそして23−165分間は56.75ミリモル/分の速度で作動させた。両方の供給とも165分で終了した。Br2/PSの全体のモル比は2.70であった。ポリマーが反応フラスコに完全に移送されるのを確保する目的でPS溶液供給装置の濯ぎで乾燥BCMを260.95g用いた。この添加全体そして次の2.3時間の処理全体に渡って反応温度を0℃から4℃に維持した(反応槽の塔頂部分を窒素でパージ洗浄しながら)。排出ガス用の苛性スクラバーの重量上昇は665.4gであった(HBrの理論値の87.8%)。10重量%のグルコン酸ナトリウム水溶液を125.0g添加することで触媒を失活させた。10重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液を63.41g分加えた後、10重量%のNaOH水溶液を423.0g加えることでpHを14に調整した。BCM(1334.6g)を用いた希釈を行った後、その有機相を分離して水(1011.8g)で洗浄した。この有機相を激しく撹拌している熱(90℃−94℃)水(これにスルホこはく酸ジオクチルのナトリウム塩を1.23g添加しておいた)に加えることを通して、生成物を回収した。溶媒が前記熱水から留出することで、臭素置換ポリスチレン生成物が水に入っているスラリーが残存した。このオフホワイトの固体を吸引で濾過した後、水で濯ぎ、真空オーブンに入れて1085.98g(97.9%の収率)の一定重量になるまで乾燥(150℃/2トール/5時間)させた。このようにして生じさせた臭素置換ポリスチレンのイオン性臭素含有量はほんの88ppm(重量)であった。
【0090】
実施例3
2Lのフラスコを用いて、ポリスチレンを40g用い、AlCl3の重量%(ポリスチレンを基準)を2.0重量%にし、ポリスチレンに対する臭素の供給モル比を3.33にし、臭素の全当量を2.78にし、温度の範囲を0℃から5℃にし、臭素/ポリスチレンの供給時間を32分/38分にしそして処理時間を150分にする以外は実施例2の手順に従った。
【0091】
実施例4に、臭素置換ポリスチレンを製造している過程中にこのポリマーからイオン性臭素を除去するに好適な精製過程を説明し、ここで、部は特に明記しない限り全部体積である。
【0092】
実施例4
塩化アルミニウムを触媒として用いてポリスチレンがブロモクロロメタン(BCM)に10重量%入っている溶液と臭素を反応させることで生じさせた臭素置換ポリスチレン反応マス(1500部)を450部の水に入れることでそれにクエンチングを受けさせた後、混合を徹底的に15分間行った。このクエンチングを受けさせた反応マスのサンプル(サンプルA)を取り出して、以下に記述する精製過程で用いた。水相と有機相を沈降させた後、この水相をデカンテーションで除去した。次に、前記有機相に新鮮な水を50部および25重量%の水酸化ナトリウム溶液を25部添加することでpHを12に持って行った。この混合物を徹底的に混合した。この混合物にナトリウムボロハイドライドが23重量%の水酸化ナトリウム水溶液に6.9重量%入っている溶液を1.7部添加することで、いくらか残存する臭素を捕捉させた後、徹底的に混合した。その結果として生じた有機相のサンプル(サンプルB)を取り出して、以下に示す精製過程を用いないで、臭素置換ポリスチレンを回収した。
【0093】
サンプルAへの精製過程の適用を下記の如く実施した:サンプルAを1000mLのガラス製分液漏斗に注ぎ込んだ。水相と有機相の分離を5分間起こさせた。前記有機相を前記漏斗の下部から取り出した(325.2グラム)。前記水層を回収した(71.0グラム)。前記有機相を等しく2分割して2個の8オンスジャーに入れた。各ジャーに新鮮な水を入れて2番目の水洗浄を行った(46.1グラム)。この水のレベルは水が反応マス1500部に対して850部であると言った比率に相当する。両方のジャーをBurrell Wrist Action Shakerで30分間振とうした。両方のジャーの内容物を1000mLの分液漏斗に注ぎ込んで一緒にした後、分離を5分間起こさせた。有機相を下部から回収し(319.5グラム)、そして前記漏斗には水相が95.3グラム残存していた。pH指示紙片を用いたpH読みを補助する目的で前記有機相に新鮮な水(12.8グラム)を加えた。この有機相のpHは5であった。25重量%の水酸化ナトリウム水溶液(2.4グラム)を加えることで前記pHを14まで上昇させた。ナトリウムボロハイドライドが23重量%の水酸化ナトリウム水溶液に6.9重量%入っている溶液(0.5グラム)を添加することで余分な臭素を捕捉させた。水を1500グラムと25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を12.6グラム用いて生じさせた混合物に臭素置換スチレン生成物を入れることで沈澱を起こさせることを通してサンプルAから生成物を回収した。この沈澱操作を行う時、水−水酸化ナトリウム混合物を邪魔板が備わっている3000mLのガラス製反応槽に入れて100℃に加熱した。この槽の撹拌を500rpmに設定した撹拌機を用いて行った。この反応槽に前記有機相を42rpmに設定したぜん動性ポンプで1/8”のポリプロピレン製配管に通して供給することで水の中に入れた。この供給点は水表面下約1/2”の所であった。BCMを塔頂部で凝縮させて除去した。前記有機相を送り込んだ後、水の温度を100℃に戻すことで、いくらか残存するBCMを除去した後、冷却した。生成物である臭素置換ポリスチレンを2000mLのフリット付きガラスフィルターで真空濾過した。これを約1000mLの温水で3回洗浄した。この固体を真空オーブンに入れて140℃で一晩乾燥させた。サンプルAから得た最終的臭素置換ポリスチレン生成物で検出されたイオン性臭素のレベルは222ppmであった。
【0094】
前記精製過程を用いないで、上述した沈澱手順を用いてサンプルBから臭素置換ポリスチレン生成物を回収した。この沈澱では水を1500グラムおよび25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を13.0グラム用い、その後に温水を用いた洗浄を3回行った。サンプルBから回収した最終的臭素置換ポリスチレン生成物で検出されたイオン性臭素のレベルは1810ppmであった。
【0095】
実施例4に示した精製過程を実施する時、合体フィルターおよび/または液−液抽出カラムを有効に用いることができる。そのような装置の設計および操作に関係した原理は公知であり、文献に報告されている。そのような情報の入手に興味を持つ人は、例えばI.Bartik,Liquid/Liquid Separation Through The Use of Coalescence[1977年2月8日にThe Filtration Society, New England Chapter,Sturbridge,Massachusetts 01566で提示された論文]、そしてMcCabeおよびSmith,Unit Operations of Chemical Engineering,Third Edition,McGraw−Hill Book Companyの619−627頁または他の同様な源を参考にすることができる。液−液抽出塔を用いる時には、水抽出液が前記塔の上方部分から取り出されかつ抽出を受けた有機相が前記塔の下方部分から取り出されるように、水を、前記塔に向流で流れ込ませる粗有機相の流れの下方からカラムの中に導入すべきである。
【0096】
比較実施例EC−1およびEC−2には、1996年に発行された米国特許第5,532,322号の教示に従う臭素置換ポリスチレンの製造を記述する。
【0097】
比較実施例EC−1
5Lのジャケット付きガラス製反応槽に機械的パドル撹拌機、コンデンサおよびサーモウエルを取り付けて、前記反応槽内で75.10g(0.721/nモル)のポリスチレン(Mitsubishi Kasei Polytex、Mw=270,000)が750gの1,2−ジクロロエタン(EDC、水を12ppm含有)が入っている溶液を調製した。前記反応槽に備わっているジャケットにエチレングリコール浴液を循環させることで反応温度を制御した。前記ポリスチレン溶液を15℃に冷却した後、それに酸化アンチモン(III)を11.03g加えた。149.7g(0.937モル)の臭素と66.3g(0.935モル)の塩素が505gの冷(−5℃)EDCに入っている溶液(前以て調製)を冷却されている塩化臭素供給用貯蔵槽に取り付けられているディップチューブに通して前記反応槽内の液面下に加えた。この2時間の添加中に反応温度がゆっくりとと10℃から25℃にまで上昇した。次に、この混合物を30℃にハロゲン化水素の発生が終了[前記反応槽の排出ガスラインに取り付けた苛性スクラバーの重量上昇が完了することで示されるように(1.5時間)]するまで保持した。この反応混合物を水で洗浄した後、亜硫酸ナトリウム水溶液と苛性で中和した。次に、その有機相を3.5Lのメタノールに滴下することで、生成物を沈澱させた。このスラリーを濾過して、固体をメタノールで洗浄した。真空乾燥を150℃で行った後、明黄色の固体(生成物1)の重量は203.7gであった。
【0098】
比較実施例EC−2
230.8g(2.00モル)の市販塩化臭素と80.20g(0.770/nモル)のポリスチレンと11.77gのSb2O3を用いて比較実施例EC−1を繰り返した。水で洗浄して中和した有機相を等しく2分割した。一方を実施例EC−1と同様に1.5Lのメタノールに加えることで、乾燥を150℃で一定重量になるまで行った後に101.6gの明黄色固体(生成物A)を得た。もう一方を1.9Lの熱(89℃−94℃)水に滴下することで、生成物を沈澱させかつ溶媒を留出させた。乾燥させた明黄色の固体(生成物B)の重量は100.3gであった。
【0099】
表1に、実施例1−3そしてEC−1およびEC−2で生じさせた臭素置換ポリスチレン生成物の特性の編集を示す。加うるに、Ferro CorporationのPyro−Chek 68PB難燃剤の特性も示す。Pyro−Chek 68PB難燃剤は米国特許第4,352,909号の教示に従って作られた難燃剤であると考えている。
【0100】
【表1】
【0101】
1 この上に記述した如き米国特許第5,637,650号の方法を用いて測定。
2 Pyro−Chek 68PBに用いられたポリスチレン反応体のMwを知らないことから、68PBに関しては、計算した理論的Mwの決定は不可能であった。
3 Tg=ガラス転移温度
実施例5、6および7に、本発明の臭素置換ポリスチレンを生じさせることができる追加的手順を説明する。
【0102】
実施例5
1Lのジャケット付きフラスコを前記ジャケットにグリコール浴液を循環させることで0℃に冷却しながら、このフラスコに乾燥(水が13ppm)ブロモクロロメタン(BCM)を190g入れ、これに粉末にした塩化アルミニウムを0.910g(6.82ミリモル)部懸濁させた(250rpmで撹拌)。ポリスチレン(403.1/nミリモル)が乾燥BCMに10.00重量%入っている溶液(419.86g部)を8.46g/分(8.13ミリモル/分)の一定速度で前記反応フラスコに取り付けられているグリコール冷却ジャケット付き混合用T字管にポンプ輸送した。それと同時に、臭素を6.09g/分(38.1ミリモル/分)の一定速度で前記同じ混合用T字管にポンプ輸送することで前記ポリスチレン溶液と一緒(Br2/PSの供給モル比は4.69である)にした後、前記反応フラスコ内で撹拌している触媒懸濁液に滴下した。30.0分後に臭素の供給を止め(1143.5ミリモル)、そして49.6分後にポリスチレン溶液の供給を止めた(Br2/PSの全体モル比は2.84である)。ポリマーが反応フラスコに完全に移送されるのを確保する目的でポリスチレン溶液供給装置の濯ぎで乾燥BCMを160g用いた。この添加全体そして次の2時間の処理全体に渡って反応温度を0℃−5℃に維持した。10重量%のグルコン酸ナトリウム水溶液を16.4g添加することで触媒を失活させた後、10重量%のNaOH水溶液を60.7g加えることでpHを14に調整した。この反応混合物を10重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した後、水で洗浄した。この有機相を激しく撹拌している熱(90℃)水(スルホこはく酸ジオクチルのナトリウム塩である界面活性剤が0.02重量%入っている)に加えることを通して、生成物を回収した。溶媒が前記熱水から留出することで、臭素置換ポリスチレン生成物が水に入っているスラリーが残存した。粉末状の固体を濾過して水で濯いだ後、真空オーブンに入れて一定重量になるまで乾燥(150℃/2トール/5時間)させた。この乾燥させた固体の重量は127.08g(95%収率)であった。この生成物はBrを全体で69.6重量%含有していた。この上に示した熱安定性試験で前記生成物が300℃で15分間に放出したHBrの量は174ppmであった。HunterLab溶液色(クロロベンゼン中10重量%)値はL=94.58、a=−2.79、b=17.29、デルタE=18.34であった。
【0103】
実施例6
冷却用ジャケットが備わっているY字形の混合装置に供給用ラインを2つ取り付けて、それらの各々をポンプにつなげた。前記供給用ラインの1つは臭素搬送用でありそしてもう一方はPSとBCMの溶液を搬送するためのラインであった。臭素(93.3g、31.3mL、即ち0.583モル)を1mL/分(19.4ミリモル/分)の速度で搬送しかつPS/BCM溶液(PSが22.4g、即ち0.215モルで無水BCMが97ml、即ち194g)を4ml/分(7.17ミリモル/分)で搬送して、それらを個々の供給用ラインから同時に前記冷却(5℃)されているY字形混合装置に送り込んだ。次に、その結果として生じた密な混合物を前記混合装置から0.45g(PSを基準にして2重量%)の粉末にした塩化アルミニウムが49mL(98g)の無水BCMに入っている冷(5℃)懸濁液に送り込んだ。この反応中に発生したHBrを苛性溶液で洗浄した。前記供給は35分で完了し、そしてその混合物を5℃で2時間処理した。水洗浄そして亜硫酸ナトリウム洗浄を行った後、この上に記述したように500mLの熱(90℃)水を用いて沈澱を起こさせることで固体状のBrPSを単離した。BrPSを全体で66g(97%収率)得た。この生成物はBrを全体で68.4重量%含有していた。この上に示した熱安定性試験で前記生成物が300℃で15分間に放出したHBrの量は71ppmであった。HunterLab溶液色(クロロベンゼン中10重量%)値はL=96.74、a=−1.90、b=15.99、デルタE=16.44であった。
【0104】
実施例7
1Lのジャケット付きフラスコを前記ジャケットにグリコール浴液を循環させることで0℃に冷却しながら、このフラスコに乾燥(水が13ppm)ブロモクロロメタン(BCM)を190g入れ、これに粉末にした塩化アルミニウムを0.910g分(6.82ミリモル)懸濁させる(250rpmで撹拌)。ポリスチレン(403.1/nミリモル)が乾燥BCMに10.00重量%入っている溶液(419.86g部)を8.46g/分(8.13ミリモル/分)の一定速度で前記反応フラスコに取り付けられているグリコール冷却ジャケット付き混合用T字管にポンプ輸送する。それと同時に、臭素を6.09g/分(38.1ミリモル/分)の一定速度で前記同じ混合用T字管にポンプ輸送することで前記ポリスチレン溶液と一緒(Br2/PSの供給モル比は4.69である)にした後、前記反応フラスコ内で撹拌している触媒懸濁液に滴下する。30.0分後に臭素の供給を止め(1143.5ミリモル)、そして30分後にポリスチレン溶液の供給を止める(Br2/PSの全体モル比は2.84である)。ポリマーが反応フラスコに完全に移送されるのを確保する目的でポリスチレン溶液供給装置の濯ぎで乾燥BCMを160g用いる。この添加全体そして次の45分間の処理全体に渡って反応温度を0℃−5℃に維持する。水を16.4g添加することで触媒を失活させる。粗有機相と水相を沈降させた後、酸性の水相を除去する。次に、10重量%のNaOH水溶液を加えることでpHを14に調整した後、ナトリウムボロハイドライドを添加していくらか過剰量で存在する臭素を捕捉させる。次に、前記有機相を激しく撹拌している熱(90℃)水に加えることを通して、それから生成物を回収する。溶媒が前記熱水から留出することで、臭素置換ポリスチレン生成物が水に入っているスラリーが残存する。粉末状の固体を濾過して水で濯いだ後、真空オーブンに入れて一定重量になるまで乾燥(150℃/2トール/5時間)させる。
【0105】
実施例8−21に、本発明の臭素置換ポリスチレンを生じさせるに好適な追加的手順を示す。
【0106】
実施例8−21
これらの実施例では下記の手順を用いた。ジャケット付き1Lの3つ口丸底フラスコ内で塩化アルミニウム(Aldrich、無水)が1.44g(10.8ミリモル)で乾燥(モレキュラーシーブを用いて乾燥させた後、水が10−60ppm)ブロモクロロメタン(BCM)が310gの混合物をテフロン(商標)ポリマー製のパドルを350rpmで用いて撹拌した。冷エチレングリコールを前記ジャケットの中に通して循環させることで前記フラスコの内容物を所望温度に冷却した。Dow Styron 612ポリスチレン(72.2g、0.69当量)が乾燥BCMに10重量%入っている溶液(650g)を別の容器(500mLの目盛り付き滴下漏斗)に仕込んだ。この供給材料貯蔵装置の底から前記ポリスチレン溶液を前記反応フラスコに取り付けられているジャケット付き真空混合用T字管にポンプ輸送した。前記フラスコから出るエチレングリコールを前記T字管に循環させることを通して、このT字管を反応混合物と同じ温度に維持した。前記ポリスチレン溶液を前記貯蔵槽からポンプ輸送すると同時に臭素(295.5g、1.85モル)を125mLの目盛り付き滴下漏斗から前記同じ混合用T字管にポンプ輸送することで、それを前記ポリスチレン溶液と一緒にした。その結果として生じた赤色溶液をジャケット付き螺旋カラム(長さが約12”)に通して前記撹拌している触媒懸濁液の表面の上に流れ出させた。前記混合用T字管への供給でMasterflexポンプを2つ用いた。ポリスチレン用装置ではCole−Palmer 77390ポンプヘッドが備わっている全部がテフロン製のラインを用いた。臭素供給装置ではテフロン製配管とビトン製配管の組み合わせを用い、この後者をMasterflex7518−10ポンプヘッドと一緒に用いた。両方の供給とも約32−35分で終了した。完全な添加を同時に達成するには供給速度を絶えず注意する必要があった。Br2/PSの全体モル比は2.7であった。ポリマーが反応フラスコに完全に移送されるのを確保する目的でポリスチレン溶液供給装置の濯ぎで乾燥BCMを57g用いた。この添加が終了した後、反応物を窒素で清掃しながら 温度で45分間撹拌した後、10重量%の亜硫酸ナトリウム溶液を13g添加することで、それにクエンチングを受けさせた(quenched)。このクエンチング中、前記材料を450rpmで撹拌し、この速度で撹拌を5分間行った。前記亜硫酸塩を添加している間に反応物の色が赤色/褐色からクリーム色(明黄褐色)に変わった。この反応物を5分間放置した後、反応フラスコの下部のバルブを用いて相分離を行った。水相を前記反応槽から除去した後、有機層を前記反応槽に戻し、そして10重量%のNaOH水溶液(100−200g)を用いてpHを14に調整した。追加的BCM(267g)を加え、その混合物を分液漏斗に移した後、相分離を起こさせた。以下に示すようにして有機相を熱水に添加することで生成物を回収した。2Lの3つ口水きり付き(creased)フラスコに機械的撹拌機、125mLの滴下漏斗、温度計、およびコンデンサ付きDean−Starkトラップを取り付け、このフラスコに水を700mL仕込んだ後、加熱用マントルで92−94℃に加熱した。前記滴下漏斗を前記分液漏斗の下方相に由来する内容物で満たした。この滴下漏斗から出る供給速度を前記Dean−Starkトラップに付いているコンデンサが過負荷にならないようにかつ水の温度が91℃より下にならないように管理した。BCMといくらかの水が塔頂から出て行く一方で、生成物が水中で白色から黄色がかった白色固体として沈澱して来た。材料を前記フラスコに連続的に流し込む必要に応じて前記滴下漏斗を再び満たした。この滴下が終了した後、BCMの完全な除去を確保する目的でスラリーを温度で約10分間撹拌した。このスラリーを約65℃に冷却した後、ブフナー漏斗に取り付けた#2濾紙に通す吸引濾過で集めた。熱水を約300mL用いて前記フラスコおよびフィルターケーキを濯いだ。その固体を2Lのビーカーに移し、400mLの水と一緒に徹底的に混合した後、吸引濾過で再び単離した。この固体を一晩空気乾燥させた後、真空オーブン(1−5mmHg)に入れて150℃で一定重量(180−200g)に到達するまで乾燥させた。この生成物を乳鉢と乳棒で粉末状にした後、分析を行った(表2を参照)。
【0107】
【表2】
【0108】
1 この上に記述した如き米国特許第5,637,650号の方法を用いて測定。
【0109】
【表3】
【0110】
1 この上に記述した如き米国特許第5,637,650号の方法を用いて測定。
【0111】
実施例14で生じさせた臭素置換ポリスチレンのイオン性臭素含有量を測定して、ほんの320ppm(重量)であることを確認した。
【0112】
1998年4月24日付けで提出した共通所有の出願連続番号09/066,172には、結果として得る臭素置換ポリスチレンの熱安定性を向上させる目的で塩基水溶液を適切な量で用いる方法が記述されている。そのような方法の使用は望ましいが本発明に従う場合には必要でないことを注目すべきである、と言うのは、そのような方法で生じさせた臭素置換ポリスチレンを用いなくても本明細書の上に示した優れた結果が達成されたからである。従って、前記共通所有の同時係属中出願に詳細に記述されている工程手順は、本発明の臭素置換ポリスチレンを生じさせようとする時に極めて適切な手順ではあるが、任意選択を構成する。
【0113】
実施例8−21の臭素置換ポリスチレンの中にNaOHまたはKOHの如き無機アルカリ金属塩基を適切な量で混入させることを、好適には、下記の実施例22に実質的に記述する様式で、臭素置換ポリスチレンをBCMから沈澱させる時にNaOH(またはKOH)の水溶液を適切な過剰量で用いそして最終的な水洗浄段階を行わないか或は最終洗浄液として代わりにNaOH(またはKOH)水溶液を用いることで達成する。別法として、あまり好適ではないが、実施例8−21に記述したように微細もしくは粉末形態で生じさせた臭素置換ポリスチレンを適切な量の粉末にしたアルカリ金属塩基、例えば水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムまたは水酸化カリウムなどと一緒に粉末ブレンドすることも可能である。
【0114】
実施例22
実施例1の手順を繰り返し、そして反応混合物を水で洗浄した後にグルコン酸ナトリウム水溶液と亜硫酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合物で中和する段階で用いる水酸化ナトリウム水溶液の量を、この過程で生じる臭素置換ポリスチレン組成物の乾燥サンプルに以下に記述するpH測定手順を受けさせた時に9.3のpHを示す水抽出液が得られるような量にする。臭素置換ポリスチレン組成物のpHを測定する手順は下記の通りである:ビーカーに典型的なサンプルを1グラムから1.5グラム量り取って(0.1グラム最寄りで)入れ、それを50mLのBCMに溶解させる。次に、二酸化炭素が出て行くように沸騰させておいたpHが7の水を50mL加える。その結果として生じた混合物を磁気撹拌機で2つの液相が密に混ざり合うように激しく2から5分間撹拌する。次に、前記ビーカーに入っている2相が分離するように撹拌機の速度を下げ、そしてpH電極を下げて上方の層のみに入れる。同じ日に較正を受けさせておいたHach EC−10 pHメーター(または相当品)を用いて上方の層のpHを測定する。
【0115】
(本発明の2番目の面−さらなる説明)
以下に特に記述しない限り、本発明の2番目の面の材料、施設、操作条件、分析方法、試験条件、基質ポリマー、割合および他の全ての詳細は本発明の1番目の面に関連してこの上に記述した通りである。
臭素置換スチレン系ポリマー
この面の臭素置換スチレン系ポリマー(好適には臭素置換ポリスチレン)の全臭素含有量は60から66重量%、より好適には60から65重量%、最も好適には60から64重量%の範囲である。加うるに、本発明の臭素置換スチレン系ポリマー、好適には臭素置換ポリスチレンは指定した最小限の全塩素含有量(たとえあったとしても)、指定したGPC重量平均分子量(Mw)、指定したDSCガラス転移温度(Tg)を示しかつ前記熱安定性試験で指定した熱安定性を示す[これらは全部この上に示した本発明の要約で挙げた通りである]。
【0116】
この上に示した式(I)を参照して、この2番目の面のポリマーが有する各ポリマー単位毎の各Xの成り立ちは臭素置換ポリスチレンが含有するX型ハライド原子が実質的に約5000−6000ppm未満であるような成り立ちであり、そして各ポリマー単位毎のnの値は臭素置換ポリスチレンの臭素含有量が60から66重量%の範囲であるような値(n=1.9から2.5)である。経済性および性能の観点から、臭素含有量は60重量%から65重量%(n=1.9から2.4)の範囲内、特に60から65重量%(n=1.9から2.3)の範囲内であるのが好適である。
【0117】
本臭素置換ポリスチレンポリマーは、好適には、X線蛍光分析に従う塩素含有量が500ppm未満、最も好適には100ppm未満のポリマーである。
【0118】
以下に示す実施例は本発明の2番目の面を説明する目的で示すものであり、本発明の範囲に限定を課すとして解釈されるべきでない。実施例23および24では共供給手順を用いる一方、実施例25−30では予備混合手順を用いて実施した。これに関連して米国特許第5,767,203号を参照のこと。
【0119】
実施例23
全体がジャケットで覆われている5Lの5つ口反応フラスコ内で塩化アルミニウム(4.804g、36.0ミリモル、PSを基準にして1.2重量%)を無水ブロモクロロメタン(BCM、1824.6g)と一緒にした。この混合物を撹拌しながらグリコール循環浴で−2℃に冷却した後、臭素(Aldrich、99.5%)を臭素が全体で1273.92g(7.972モル)入っている500mLの目盛付き滴下漏斗から前記フラスコに42mL(0.815モル)部ポンプ輸送した。この反応混合物を激しく撹拌しながらポリスチレン[Dow Styron(商標)612、Mw=190,000]が3735.6gの無水BCMに415.2g(スチレン繰り返し単位を基準にして3.986モル)入っている溶液を192分でポンプ輸送する(21.6g/分の平均輸送速度)と同時に前記滴下漏斗に入っている残りの臭素(370mL)も前記反応フラスコに個別の流れとしてポンプ輸送した(5.97g/分の平均輸送速度)。この反応混合物を共供給している間−3℃から0℃の範囲に保持した後、1時間処理した。次に、水を添加して触媒を失活させた後、10重量%のNa2SO3水溶液および10重量%のNaOH水溶液を添加した。有機相を分離して水で洗浄した。この有機相に熱(88−92℃)水を添加することで溶媒を留出させて固体状の臭素置換ポリスチレンが水に入っているスラリーを残存させることを通して、生成物を前記有機相から回収した。このスラリーを吸引濾過した。この湿っているケーキを水で濯いだ後、真空オーブン(150℃/2トール)に入れて一定重量になるまで乾燥させることで、白色の臭素置換ポリスチレン生成物を1017.9g(97%収率)得た。
【0120】
実施例24
PSの臭素置換を、反応槽に供給する材料の量を適切に調整して反応を3Lの反応槽内で実施する以外は実質的に実施例23に記述した如く繰り返した。
【0121】
実施例25
冷媒が循環するジャケットが備わっているY字形のガラス製混合装置に供給用ラインを2つ取り付けて、それらの各々をポンプにつなげた。前記供給用ラインの1つは臭素搬送用でありそしてもう一方はBCM中PSの溶液を搬送するためのラインであった。臭素(1253.2g、7.842モル)およびPS/BCM溶液(404.9gのStyron(商標)612PSが3604.3gの無水BCMに入っている)を、全体がジャケットで覆われている5Lの5つ口反応フラスコに取り付けられている冷却(0℃)Y字形混合装置に同時にポンプ輸送した。このミキサー内で生じた臭素/PS/BCMの緊密な冷混合物を前記反応フラスコに滴下すると、これは、無水AlCl3(4.91g、PSを基準にして1.2重量%)と無水BCM(1675.0g)の混合物(これは循環冷媒で−2℃から0℃に保持されておりかつ撹拌している)と一緒になる。臭素の平均供給速度を10.44g/分にしかつPS/BCMの平均供給速度を33.4g/分にすると両方の供給とも120分で完了した。撹拌を0℃で5分間行った後、水を添加して触媒を失活させた。この混合物を10重量%のNa2SO3水溶液で処理した後、10重量%のNaOH水溶液で中和した。有機相を分離して水で洗浄した。この有機相を熱(88−92℃)水に送り込んで溶媒を留出させて固体状の臭素置換ポリスチレンが水に入っているスラリーを生じさせることを通して、生成物を単離した。吸引濾過後の固体を水で濯いだ後、真空オーブンに入れて乾燥させることで、白色の生成物を991.1g(96%収率)得た。
【0122】
実施例26−30
これらの実施例の各々で実施例25の一般的手順を用いた。実施例26−30では、臭素の使用量を1253.2g(7.842モル)からそれぞれ1347.4g(8.431モル),1500.2g(9.388モル),1509.9g(9.448モル),1653.3g(10.346モル),および1659.6g(10.385モル)にまで多くした。また、臭素搬送速度も適切に調整した(各実験でPS/BCM搬送時間に合致するように)。
【0123】
表3に、実施例23−30で用いた臭素置換反応条件を要約し、そして表4に、実施例23−30の個々の生成物の分析データを挙げる。
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
本発明の2番目の面の臭素置換スチレン系ポリマーが優れた溶融安定(melt stability)特性を有することをキャピラリーレオメトリー(capillary rheometry)溶融安定試験で示し、この試験では、ガラスを充填したナイロン6,6と本発明の臭素置換ポリスチレンのブレンド物が示す溶融粘度(melt viscosities)を測定して、同じガラスを充填したナイロン6,6(本臭素置換ポリスチレンを含まない)が示すメルトフロー特性と比較した。基礎のナイロン6,6混合物はナイロン6,6を70重量%とガラス繊維を30重量%含有していた。本発明の臭素置換ポリスチレン(臭素を61.5重量%含有する)を19.85重量%ブレンドすることを通して、本発明の組成物を生じさせた。この試験を、Kayeness LCR 6000 Capillary Rheometerを285℃において500 l/秒のせん断速度で操作することで実施した。キャピラリーレオメーターに備わっているダイスの直径は1mmで長さは20mmであった。このキャピラリーを加熱して、これに押出し加工したペレットを約12グラム押し込んだ。この材料を前以て6分間加熱しておいた。この材料に991Nの充填力(packing force)をかけた。6分間の予熱時間が終了した時点で、100mmの開始ラム(ram)位置から120mmのラム位置に至らせることで材料を前記ダイスから強制的に押出した。前記ラムを41mm/分の移動速度で移動させた。これに要した時間は約30秒であった。この時間の間、前記材料の粘度、応力および力を測定した。6分後、前記材料を120mmのラム位置から140mmのラム位置に至らせる(各時間とも同じ速度)ことで前記材料を前記ダイスに通して押出した。再び粘度、応力および力を測定した。このサイクルを全体で5測定行い、キャピラリー内に存在する時間は32.4分であった。データ点は下記の通りであった:
ガラス充填ナイロン6,6配合:
ラム位置=120mm, 時間= 6.5分, 粘度=208.8Pa−s
ラム位置=140mm, 時間=13.0分, 粘度=203.2Pa−s
ラム位置=160mm, 時間=19.4分, 粘度=210.2Pa−s
ラム位置=180mm, 時間=25.9分, 粘度=207.8Pa−s
ラム位置=200mm, 時間=32.4分, 粘度=185.2Pa−s
Brが62%の低Brサンプルである臭素置換ポリスチレンを含有させたガラス充填ナイロン6,6配合
ラム位置=120mm, 時間= 6.5分, 粘度=181.8Pa−s
ラム位置=140mm, 時間=13.0分, 粘度=174.1Pa−s
ラム位置=160mm, 時間=19.4分, 粘度=169.2Pa−s
ラム位置=180mm, 時間=25.9分, 粘度=153.4Pa−s
ラム位置=200mm, 時間=32.4分, 粘度=151.3Pa−s
この上に示したデータから、本臭素置換ポリスチレンを含有させた本発明のブレンド物の方が全てのケースで本臭素置換ポリスチレンを含有させなかった同じ配合に比較して粘度が低い(このことはメルトフローが良好であり、相当して溶融安定性が良好であることを示す)ことが分かるであろう。
【0127】
(本発明の3番目の面−さらなる説明)
以下に特に記述しない限り、本発明の3番目の面の材料、施設、操作条件、分析方法、試験条件、割合および他の全ての詳細は本発明の1番目の面に関連してこの上に記述した通りである。
熱可塑性ポリマー成分
いろいろな熱可塑性ポリマー、例えばポリオレフィンポリマー、スチレン系ポリマー、ABSおよび他の同様な熱可塑性プラスチックに本発明の3番目の面に従う難燃処理を受けさせる(flame retarded)ことができる。難燃処理を受けさせることができるポリオレフィンポリマーの例には、1−オレフィンのホモポリマー類、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなど、そしてエチレンおよび/またはプロピレンと1種以上の高級1−オレフィンおよび/またはジオレフィン系モノマーから作られたコポリマー類が含まれる。ポリスチレン(ゴムによる修飾を受けているか否かに拘わらず)そして2種以上のスチレン系モノマー、例えばスチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどから作られたコポリマー類、環がアルキルで置換されているビニル芳香族モノマー、例えば個別または混合ar−メチルスチレン異性体、個別または混合ar−エチルスチレン異性体、アルファ−メチルスチレンの個別または混合ar−メチル異性体などから作られたホモポリマー、そして2種以上の前記ビニル芳香族モノマーから作られたコポリマー類が、本発明のこの面に従って難燃処理を受けさせることができるスチレン系ポリマーの例である。
【0128】
好適な組成物は、難燃処理を受けさせる基質ポリマーがエンジニアリング熱可塑性ポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ナイロンなど(特に補強用充填材、例えばガラス繊維などが充填されているか或はそれで補強されている時)である組成物である。本発明の最も好適な態様に従うエンジニアリング熱可塑性プラスチック基質はナイロンであるエンジニアリング熱可塑性プラスチック(別称ポリアミド)、例えばポリアミド6、ポリアミド6−6、ポリアミド12、ポリアミド4−6、そして相当する熱可塑性ポリアミド類であり、それには2種以上の前記熱可塑性ポリアミド樹脂のブレンド物が含まれる。本発明の実施で使用可能な適切なナイロンであるエンジニアリング熱可塑性プラスチックは商業品として入手可能である。
【0129】
本明細書または本明細書の請求の範囲のどこかで化学名または化学式を用いて成分を言及する場合、この言及が単数であるか或は複数であるかに拘らず、それらが別の物質[化学名または化学タイプで言及する](例えば別の成分または溶媒)に接触する前にそれらが存在するようにそれらを同定する。結果として生じる混合物または溶液中でどんな予備的化学変化、変換および/または反応(もしあれば)が起ころうとも問題でない、と言うのは、そのような変化、変換および/または反応は特定の成分を本開示に従って要求する条件下で一緒にする結果として自然に起こる事であるからである。このように、所望操作の実施に関連してか或は所望組成物を生じさせる時に一緒にすべき材料であるとして成分を同定する。本明細書の請求の範囲で物質、成分および/または材料を現在時制(「含んで成る」または「である」)で言及することがあり得るかもしれないが、そのような言及は、本開示に従ってそれを他の1種以上の物質、成分および/または材料に最初に接触、ブレンドまたは混合する直ぐ前の時間にそれが存在していたように当該物質、成分または材料を指すものである。接触、ブレンドまたは混合操作を化学者の常識および通常の技術を適用して本開示に従って実施するとその過程中に物質、成分または材料が化学反応または変換を通してそれの元々の同定を失う可能性はあるが、これは、従って、本開示および本明細書の請求の範囲の真の意味および内容の正確な認識および理解にとって全く重要ではない。
【0130】
本発明は本発明の実施においてかなりの変形を受け易い。従って、この上に行った説明は本発明をこの上に示した特別な例示に限定することを意図するものでなく、限定として解釈されるべきでない。むしろ、保護することを意図する事項は本請求の範囲に挙げる如き事項である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の各面の好適な臭素置換ポリスチレンを生じさせる時に用いるに適した方法を示す図式図である。
Claims (14)
- 臭素置換スチレン系ポリマーであって、全臭素含有量が少くとも60重量%であり、イオン性臭素含有量が2000ppm以下であり、かつ下記のa)、b)およびc)の追加的特徴;
a)TGAにおける1%重量損失の温度が340℃以上でありかつ塩素含有量がたとえあったとしても700ppm Cl未満であること、
b)実際のMwが臭素置換スチレン系ポリマーの実際の臭素含有量と臭素置換スチレン系ポリマーの製造で用いたスチレン系ポリマー反応体のMwを基準にして計算した理論的Mw の20%以内であること、
c)ブロモジクロロエタン、ジブロモクロロエタン、ジブロモジクロロエタン、トリブロモクロロエタンおよび二塩化エチレンから成る群から選択される不純物を本質的に全く含有しないこと、
の少なくとも2つを有する臭素置換スチレン系ポリマー。 - 前記ポリマーが熱安定性試験における熱安定性が1500ppm HBr以下であることを特徴とする請求項1記載の臭素置換スチレン系ポリマー。
- 前記ポリマーが少なくとも追加的特徴a)およびc)を有する請求項2記載の臭素置換スチレン系ポリマー。
- 前記ポリマーが前記追加的特徴の3つ全部を有する請求項1記載の臭素置換スチレン系ポリマー。
- 前記ポリマーが前記追加的特徴の3つ全部を有しかつ追加的に前記熱安定性試験で1000ppm HBr以下の熱安定性を示す請求項1記載の臭素置換スチレン系ポリマー。
- 前記ポリマーが少くとも67重量%の全臭素含有量を有する請求項1〜5のいずれかに記載の臭素置換スチレン系ポリマー。
- 前記ポリマーが臭素置換ポリスチレンである請求項1〜5のいずれかに記載の臭素置換スチレン系ポリマー。
- 前記ポリマーが少くとも67重量%の全臭素含有量を有する臭素置換ポリスチレンであり、イオン性臭素含有量が1500ppmであり、
TGAにおける1%重量損失の温度が340℃〜380℃であり、
塩素含有量がたとえあったとしても100ppm Cl未満であり、
熱安定性試験における熱安定性が1500ppm HBr以下であり、そして、
ブロモジクロロエタン、ジブロモクロロエタン、ジブロモジクロロエタンおよびトリブロモクロロエタンから成る群から選択される不純物を本質的に全く含有しない、
ことを特徴とする請求項1記載の臭素置換スチレン系ポリマー。 - イオン性臭素含有量が1000ppm以下であり、
TGAにおける1%重量損失の温度が345℃〜380℃であり、
塩素含有量がたとえあったとしても500ppm Cl未満であり、
熱安定性試験における熱安定性が1000ppm HBr以下である、
請求項8記載の臭素置換スチレン系ポリマー。 - 前記臭素置換ポリスチレンを製造するために使用されるポリスチレンが100,000から300,000の範囲内のM w を示し、かつ1.25から2.5の範囲内の多分散性を示す、請求項8又は9のいずれかに記載の臭素置換スチレン系ポリマー。
- 請求項1記載の臭素置換スチレン系ポリマーが難燃量で混ざり合っている熱可塑性ポリマーを含んで成る組成物。
- 請求項8又は9記載の臭素置換スチレン系ポリマーが難燃量で混ざり合っている熱可塑性ポリマーを含んでなる組成物。
- 請求項11記載の組成物から生じさせた型製もしくは押出し加工製品もしくは形材。
- 請求項12記載の組成物から生じさせた型製もしくは押出し加工製品もしくは形材。
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