以下、図面に基づいて実施形態を説明する。図1は自動車用エンジンマウントの正面図、図2はその平面図である。なお、図1のY矢示方向を左右方向、Z矢示方向を上下方向とする。Z方向は主たる振動の入力方向でもある。また、図2のX矢示方向を前後方向とする。XとYはZ方向と直交する平面内における直交2方向をなす。また、以下の説明では、インシュレータ、ダイアフラム及びストッパの各弾性材料としてゴムを用いた例を示す。
これらの図において、1はエンジン側へ連結される第1の取付部材、2は車体側へ取付けられる第2の取付部材である。3は上側ブラケット、4は下側ブラケットであり、それぞれ円筒状金具で構成され、上下に接続してカシメにより連結一体化されて第2の取付部材2を構成している。上側ブラケット3の内側には液封部Aが設けられ、下側ブラケット4の内側にはアクチュエータ部Bが設けられる。
5は後述する副液室を構成するダイアフラムであり、上側ブラケット3と第1の取付部材1の間に取付けられ、第1の取付部材1側は圧入リング6により第1の取付部材1へ圧入して連結一体化されている。7はダイアフラム5の側部に設けられた逃げ凹部である。
8は上側ブラケット3のフランジであり、その一部で逃げ凹部7と対応する位置にバウンドストッパ9が一体化されている。またダイアフラム5の外周部も一体化されている。10はフランジ8の下に重ねられた補強プレートである。フランジ8と補強プレート10の重なる部分で、図の左右位置にボルト11が上向きに設けられる。この左右のボルト11には、リバウンドアーム12の両端が重ねられ、ナット13により、フランジ8、補強プレート10及びリバウンドアーム12の3部材が一体に固定されている。
リバウンドアーム12は略アーチ状をなしてダイアフラム5及び第1の取付部材1の上方を横断し、その頂部にリバウンドストッパ14が一体化され、第1の取付部材1の一部として上方へ突出するボス15の上端部を当接支持するようになっている。
バウンドストッパ9及びリバウンドストッパ14はそれぞれ天然ゴム等の低動倍率となる弾性体からなり、第1の取付部材1側の過剰な下方移動をバウンドストッパ9で阻止し、逆に過剰な上方移動をリバウンドストッパ14で阻止するようになっている。
図2に示すように、ダイアフラム5は平面視略円形であり、圧入リング6も円形の輪状であり、第1の取付部材1に設けられた外周部が円形をなす取付段部16の外周へ圧入される。なお、圧入リング6は必ずしも円形である必要はなく、取付段部16の形状に応じて楕円や多角形などの非円形のものとすることができる。ボルト11は第1の取付部材1を挟んで反対位置に配置され、これらに両端を支持されるリバウンドアーム12は第1の取付部材1の上を横断している。
補強プレート10は略半円形をなし、ボルト11及びバウンドストッパ9が設けられている範囲でフランジ8の下側に重なり、ボルト11の近傍部で溶接によりフランジ8と一体化されている。17は下側ブラケット4の取付フランジ、18はその4隅に形成された取付穴である。
図3は図1の3−3線断面である。液封部Aは、上側ブラケット3の内側に嵌合された略円錐台状のインシュレータ20を備える。インシュレータ20は天然ゴム等の動倍率が低い弾性材料からなり、バウンドストッパ9及びリバウンドストッパ14とほぼ同様な材料とすることができる。
インシュレータ20の中心側は第1の取付部材1の周囲へ一体化され、下部側の外周部はオリフィス部材21と一体化される。オリフィス部材21は外方へ開放された断面略コ字状をなすリング状金具であり、上側ブラケット3とオリフィス部材21の間に環状空間を形成し、これをオリフィス通路22としている。
インシュレータ20の内側(図の下側)は主液室23をなし、インシュレータ20の外側(図の上側)はダイアフラム5とインシュレータ20で囲まれた空間である副液室24をなす。オリフィス通路22はオリフィス部材21の側部及びこれを覆う弾性部材を略水平に貫通形成された入り口25で主液室23と通じ、出口26で副液室24と通じている。出口26は、ダイアフラム5及びインシュレータ20の各外周部が重なり合う部分近傍となるオリフィス部材21の上部及びこれを覆う弾性部材を上下方向へ貫通形成されるととともに、副液室24側は略山形に斜め断面をなすインシュレータ20の上面に長く沿うように、斜めの通路として形成され、副液室24との間で液流動性を良好にしている。
主液室23の下方は仕切りプレート27で閉じられる。但し、仕切りプレート27の中央には開口28が設けられ、これを通して下方のアクチュエータ部Bにより主液室23の内圧をコントロールするようになっている。開口28は同心円上等に等間隔で複数設けた多孔形式にすることもできる。このようすると、アクチュエータ部B側からの入力を分散して共振をブロード化することができる。開口28の数や位置は目的に応じて自由に設定できる。
ダイアフラム5は内周側が圧入リング6と一体化し、外周側がフランジ8の上部と一体化している。圧入リング6が圧入される第1の取付部材1の取付段部16は、第1の取付部材1の上部を小径化した階段状段部の側面壁である。
第1の取付部材1に設けられたボス15の取付穴15aにエンジンから延出するハンガ29の取付部29aが嵌合して、ナット29bで固定されている。ハンガ29の一部には下方へ張り出す当接部29cが形成され、ここにバウンドストッパ9が当接可能になっている。当接部29cは下方へ凹をなす逃げ凹部7の中へ入り込むように形成され、ダイアフラム5の側面は逃げ凹部7により当接部29cを逃げて干渉を避けている。仮想線はダイアフラム5における一般面であり逃げ凹部7以外の部分を示す。
アクチュエータ部Bは、下側ブラケット4の内側へ嵌合されたカップ状のハウジング30と、仕切りプレート27で覆われるハウジング30の開口に取付けられる加振部材31を備える。加振部材31は周囲に広がる弾性シール膜32及びその外周部に一体化された加振部フランジ33を介してハウジング側へ浮動支持される。
加振部フランジ金具33の外周部はハウジング30のフランジ30aと、オリフィス部材21の下部である外向きの下フランジ21aとの間に挟持される。フランジ30aは下側ブラケット4の上端部に形成された外フランジ4aの上に重ねられ、計4枚の重なり合った部材が一まとめに上側ブラケット3の下部に形成されたコ字状をなすカシメ部3aにより一体化される。
加振部フランジ金具33の外周部には下側へ折り返された下向きフランジ33aが形成され、ハウジング30のフランジ30aにおける外周先端の外周側端面を若干のクリアランスをもって覆っている。加振部フランジ金具33の板厚をハウジング30のフランジ30aにおける板厚よりも薄くし、かつ下向きフランジ33aの高さ寸法をフランジ30aにおける板厚よりも若干小さくしてある。
これにより、外フランジ4aの上にフランジ30aと加振部フランジ金具33を重ねたとき、下向きフランジ33aの下端とフランジ4aとの間に若干のクリアランスを形成し、これら3部材の上にオリフィス部材21の下部を重ねてカシメ部3aによりカシメるとき、カシメ部3aに挟まれる部材の圧着性を高めている。
加振部材31は開口28に向かって上向きに開放されたカップ状部31aと、その中央から下方へ一体に延出する軸部31bを備える金属製部材である。カップ状部31aは弾性シール膜32と一体化されており、カップ状部31aの外周面から凹部内面まで弾性シール膜32の一部から連続する弾性部材が一体に覆い、カップ状部31aの図における上端面からもこの弾性部材の一部である上端突部32aが上方へ突出している。
仕切りプレート27は加振部材31が図の上方に向かう移動(これをマイナス側移動ということにする)時におけるストッパをなし、カップ状部31aの上端部を覆って上方へ突出する上端突部32aが当接するようになっている。したがって、上端面から突出する上端突部32aの突出量を調節すれば、ストッパとしての仕切りプレート27とのクリアランス調整ができる。
軸部31bはアーマチュア36の中央を上下方向へ貫通し、その内周側から中心方向へ延出するフランジ36aとカップ状部31aとの間に軸受けバネ34が設けられ、フランジ36aを図の下方へ付勢している。
軸部31bには右ネジ部31cと左ネジ部31dとを上下に配置した逆ネジ構造を設けてある。右ネジ部31cにはナット35aを締結し、このナット35aをアーマチュア36の軸心側へ突出する内向きのフランジ36aへ当接することにより、フランジ36aを軸受けバネ34とナット35aで上下に挟み、カップ状部31aとアーマチュア36を一体化し、かつ両部材の間隔を調節自在としている。さらに左ネジ部31dへナット35bを取付けてナット35aの緩みを防止している。
ハウジング30の内側には、電磁コイル37と、その内側こ配置されて磁路を形成する磁極38が設けられる。電磁コイル37の励磁によりアーマチュア36が磁極38へ吸着されて、加振部材31が図の下方へ移動する(この移動をプラス移動ということにする)。電磁コイル37を消磁すると、弾性シール膜32の復元弾性により加振部材31が上動復帰する。
電磁コイル37の励磁と消磁を図示しない制御手段により主液室23の内圧変動と同期して加振部材31が上下動するように制御することにより、主液室23の内圧変動を抑制し、低動バネにして入力振動の振動伝達を能動的に阻止する。この制御は公知方法によることができる。
磁極38は略円錐形をなして上方へ突出し、その外側に所定のクリアランスをもってアーマチュア36の下部が嵌合する。磁極38の外周側下部にはゴム板等からなるクッション材38aが設けられ、アーマチュア36の接触音発生を防止している。磁極38の中央部には外部へ通じる貫通穴38bが設けられる。貫通穴38bは、ここに挿入されたキャップ39により閉塞される。キャップ39はCクリップ等の簡便な係止具39aで簡単に抜け止めされる。
図4は、液封部Aとアクチュエータ部Bとの組立方を示し、アクチュエータ部Bと液封部Aは分離してそれぞれ小組立体として組み立てられる。このとき、液封部Aのカシメ部3aはコ字状断面ではなく、端末部3bがカシメ完了時とは反対側へ曲げられて末広がり状に拡開されている。この組立工程は、予め封入液が満たされた液中にて行われる。以下の説明では、液封部Aとアクチュエータ部Bをそれぞれ図3の状態に対して上下逆転させた状態とし、液封部Aへアクチュエータ部Bを圧入してからカシメにより一体化するものとする。但し、上下方向についての表現は図3と統一するため、特に断らない限り原則として図3の状態を基準として表現する。
図4に示すアクチュエータ部Bの圧入時において、アクチュエータ部Bにおける下側ブラケット4の外フランジ4a及びその上に重なるフランジ30a及び加振部フランジ金具33,さらには弾性シール膜32の外周部近傍で加振部フランジ金具33上に重ねた仕切りプレート27を一緒にして、端末部3bの内側へ圧入する。端末部3bは末広がり状に図の上側が開いているのでアクチュエータ部Bを容易に嵌合でき、この嵌合後に端末部3bの端部を内側へ折り曲げて外フランジ4aの下側へ折り重ねてカシメることによりアクチュエータ部Bと液封部Aが一体化される。
このとき、予め加振部フランジ金具33の下向きフランジ33aにおける周方向形状を多角形にするか、外周面の一部に凹溝を形成することにより、アクチュエータ部Bを端末部3b及びカシメ部3aの内側へ圧入するとき、下向きフランジ33aの外周面と端末部3b及びカシメ部3aの間に、主液室23と連通する間隙が形成されるので、予め主液室23に充填されている作動液の余剰分をこの間隙から排出しつつ圧入できる。したがって、組立時における余剰液排出が容易になる。
仕切りプレート27の外周部には、同心円上に等間隔で切り起こし状の爪27aが設けられ、その外側にオリフィス部材21の内周側被覆部20aの下部に形成された段部20bに仕切りプレート27の外周部を嵌合したとき、内周側被覆部20aの下端部を爪27aの外側へ嵌合して、液封部Aと仕切りプレート27の相対位置を簡単な構造で位置決めするようになっている。爪27aは切り起こした端部が中心方向へ傾斜しており、内周側被覆部20aの嵌合を容易にしている。
内周側被覆部20aは、インシュレータ20の外周部にオリフィス部材21を埋設一体化するとき、オリフィス部材21の内周面に沿ってインシュレータ20と連続一体に設けられる。段部20bには下部被覆20cが連続して設けられてオリフィス部材21の下フランジ21aの内周側を覆う。下部被覆20cにはリング状のシール突部20dが一体に突出して設けられる。オリフィス部材21は立て壁部21b及び上フランジ21cを一体に形成してあり、上フランジ21cの外方突出量は下フランジ21aよりも小さい。下フランジ21aと立て壁部21bとのコーナー部には、段部20bの略寸法分だけ図4の下方へ窪む凹部21dが設けられる。この凹部21dは下部被覆20cにより埋められている。
図5は、ダイアフラム5と圧入リング6及び上側ブラケット3が一体化された小組立体Cを、インシュレータ20及び第1の取付部材1とオリフィス部材21が一体化された小組立体Dに対して、圧入一体化する状態を示す。
小組立体Cにおいて、ダイアフラム5の内周厚肉端部40は厚肉部をなし、図6に図5のE部を拡大して示すように、圧入リング6の外周へ一体化されている。圧入リング6の外周には外方へ突出する突部6aが一体に形成され、この周囲を包むように内周厚肉端部40が結合する。突部6aは内周厚肉端部40の結合部をなすとともに、内周厚肉端部40と圧入リング6の相対的な抜け止めをなしている。
圧入リング6はアルミダイカスト等、適宜材料及び方法により形成され、好ましくはアルミ等の軽合金で軽量かつ極力小型に形成されている。圧入リング6の軸線方向において、圧入リング6の軸方向幅は内周厚肉端部40の幅よりも若干長くなっており、下端面は内周厚肉端部40の下端面よりも寸法dなる段差を形成する。圧入リング6の下端部6bは内周側が斜めにカットされたテーパー面からなる末広がり状の逃げ部をなし、第1の取付部材1に対する圧入時のガイドをなし圧入作業を容易にしている。また、突出量d相当分だけ内周厚肉端部40の下面よりも長く下方へ突出しているので、第1の取付部材1の肩部1a上へ金属同士で当接し、圧入エンドを高精度で位置決めする。
圧入リング6の図6における上端部には径方向の溝である位置決め部6cが形成されている。この位置決め部6cは圧入リング6を圧入するとき、第1の取付部材1に対して正確に位置決めするためのものである。位置決め部6cの溝底部は内周厚肉端部40の上端面40aよりも高い位置になっており、第1の取付部材1へ圧入リング6を一体化したとき、上方からかかる水が矢示のように速やかに下方へ流れ、上部に水が溜まらないようになっている。なお、位置決め部6cは溝に限らず種々な形状にすることができる。
内周厚肉端部40の底面の一部から中心をリング状に囲むシール突部41が下方へ一体に突出している。シール突部41は肩部被覆20fへ密着されて内周厚肉端部40と第1の取付部材1との間をシールする。このシールは圧入リング6の圧入後の固定力によって強固に維持される。またシール突部41をダイアフラム5側へ設けたので、ダイアフラム5の弾性変形に伴うシール突部41の変形は肩部被覆20fとの間でせん断変形することになり、長期使用によるへたりを防止できる。このため、耐へたり性が向上し、シール力が向上する。
また、圧入リング6の軸方向幅は取付段部16との間に発生する圧入荷重及び抜け荷重の程度を決定するため、必要程度に応じて適宜設定する。なお、エンジン側からの入力は第1の取付部材1へ加わり、圧入リング6には直接加わらない。したがって、圧入リング6を抜き取るに必要な力である抜け荷重は、ダイアフラム5から圧入リング6へ加わる反力に対応できる程度だけであり、比較的小さなもので足りる。
図10は、図6に示す断面構造をなす圧入リング6の圧入状態示す図であり、Aとして、図5に示すようにして一体化した圧入状態の拡大断面を示し、Bとして、組み行け方を示す。圧入リング6の下端部6bは、第1の取付部材1の肩部1aの内周側で肩部被覆20fに覆われずに露出する部分へ金属同士で当接し、内周厚肉端部40の下面40bへ一体に形成されたシール突部41は肩部被覆20fへ押しつけれて密着し、内周厚肉端部40と肩部被覆20fの間を液密にシールする。
再び図5において、ダイアフラム5の外周部が一体化する上側ブラケット3は、下側の外フランジ3c、図の上下方向へ延びる小径部3d、上側の外フランジ8を連続して形成してある。ダイアフラム5の外周部は段部42をなして、ここから外フランジ8上に重なって延びるフランジ部43と小径部3dの内周に沿って延びる内周被覆44とに別れる。内周被覆44下端部は外フランジ3cの下面と同じ高さである。
また、フランジ8の一部にはバウンドストッパ9が一体化しており、フランジ部43との間に間隙からなる不連続部45が設けられ、ダイアフラム5とバウンドストッパ9が独立して分離され、成形時に双方の注入溶融材料が混合しないようになっている。
図5のF部及びG部の各拡大図を図7及び図8として示す。図5のF部は図7に拡大して示すように、段部42の一部から下方へシール突部46が突出している。さらに、図5のG部を図8に拡大して示すように、内周被覆44の下端部からシール突部47が下方へ突出している。これらのシール突部は主液室の周囲をリング状に囲むように設けられている。
再び図5において、小組立体Dは、インシュレータ20が第1の取付部材1及びオリフィス部材21と一体に成形され、その内周側は第1の取付部材1の取付段部16を形成する肩部1a上に重なる肩被覆20fをなす。肩部被覆20fの内周側端部は圧入リング6の外周側に位置して肩部1aを露出させ、圧入リング6と第1の取付部材1とによる上記金属同士の当接を可能にしている。インシュレータ20の下端である外周にはオリフィス部材21が埋設一体化され、上フランジ21cを包む部分は内側被覆20eと連続する上部被覆20gをなす。上部被覆20gの外周面にはその一部から径方向外方へ突出するシール突部20hがリング状をなして一体に形成されている。
そこで、小組立体Cを小組立体Dに対して圧入一体化すると、圧入リング6を取付段部16の周囲へ嵌合するよう圧入することにより、圧入リング6が取付段部16の外周部へ圧入一体化され、圧入リング6の内周面と取付段部16の外周面とからなる結合面が主たる振動の入力方向Zと平行に形成されるとともに、内周厚肉端部40が第1の取付部材1の肩部1a上へ一体化された肩被覆20fと密着される。
このように、圧入リング6は第1の取付部材1側へ圧入だけで一体化するため、ボルト等の回転部材による締結を要さず、回転によるズレが生じず正確に位置決めできる。そのうえ緩みも生じにくい。さらにボルトやナット等の別な取付部材を必要としないから、部品点数を削減して、軽量かつ安価に製造できる。
また、上側ブラケット3をオリフィス部材21の外周側へ嵌合すると、段部42に上部被覆20gが嵌合し、シール突起46が上部被覆20gの上面へ密着し、シール突起20hが内周被覆44へ密着する。下側の外フランジ3cは下フランジ21aへ重なり、シール突部47が下フランジ21aへ密着する。これにより、周囲を確実にシールされたオリフィス通路22が形成される。
さらに、ダイアフラム5とバウンドストッパ9は異なるゴム材料からなり、共通の上側ブラケット3上へ同時一体に形成される。本例では、副液室24と外気の間において空気の通過を阻止することが求められるダイアフラム5は耐エア透過性に優れたゴム材料、例えばブチルゴム、ヒドリンゴム、CRゴム等であり、衝撃荷重の吸収を良好にすることが求められるバウンドストッパ9は、低動倍率のゴム材料、例えば、天然ゴム等である。
このように、ダイアフラム5とバウンドストッパ9を備えた液封防振装置において、ダイアフラム5を耐エア透過性ゴム材料で形成し、バウンドストッパ9を低動倍率のゴム材料で形成するとともに、それぞれを共通の部材である上側ブラケット3上へ一体化したので、全く要求される特性が異なるダイアフラム5とバウンドストッパ9を共通部材の上ブラケット3上へ一体化させることができ、構成部品点数及び加工工数を削減でき、液封防振装置の製造が効率的になる。しかも、ダイアフラム5とバウンドストッパ9を、後述する方法により一段成形で成形できる。
図9はこの成形方法を示す。上型50,下型51及び側型52によりダイアフラム5に相当する第1のキャビティ53及びバウンドストッパ9に相当する第2のキャビティ54を形成し、その間に不連続部45に相当する不通部を形成するための区画部55を設け、第1のキャビティ53と第2のキャビティ54を不連続にする。
この第1のキャビティ53内へ圧入リング6と上側ブラケット3を入れ、さらに第1のキャビティ53と第2のキャビティ54へそれぞれ別々にダイアフラム5及びバウンドストッパ9の溶融ゴム材料を注入すると、それぞれが独立しているため異なる溶融ゴム材料が相互に混合しないので、そのまま加硫を行うと、異なるゴム材料を共通の部材である上側ブラケット3と一体化した小組立体C(図5)が得られる。
すなわち、異なる材料からなる一体成形品を一段成形で加硫できる。ここで一段成形とは、型換えせずに異なる溶融ゴム材料を注入でき、かつ材質の異なる溶融ゴム材料毎に加硫条件を変えることなく同一条件(同一設備かつ同一金型温度)で加硫を行うことを意味する。
なお、このような一段成形で異材(動倍率などの動特性や加硫反応速度等が異なる材料)の組合せを一段成形で行う方法としては、他に種々可能である。すなわち、第1のキャビティ53と第2のキャビティ54に対する材料の注入時間をずらし、注入完了時間を一定にしてもよい。また、金型を加硫温度に加熱した状態で、金型の各キャビティに対して注入タイミングをずらすことにより、各キャビティ内で同時に加硫が完了するように調整してもよい。
また、第1のキャビティ53と第2のキャビティ54のボリュームを調整することにより、加硫時間を一定化することもできる。さらに、ゴム等の注入材料の組成につき、加硫促進剤を変更してそれぞれの加硫反応速度を異ならせ、結果として同時に加硫が完了するように設定することもできる。この場合は、速い方の加硫時間を加硫の遅い方へ近付けるようにする。また、注入材料の選定・組合せにより、加硫時間を合わせてもよい。
より具体的には、金型内へゴム等の材料を射出により注入する場合、注入材料の異なる第1のキャビティ53と第2のキャビティ54において、同一加硫条件にて、同時に加硫が完了するように設定する。このように加硫反応速度を調節するためには次の方法1〜5が考えられる。
方法1:射出成形機側における注入材料自体の温度を相違させ、同一加硫条件で同時加硫できるように注入時の第1のキャビティ53及び第2のキャビティ54内における材料温度を異ならせる。
方法2:射出速度を変化させて、上記と同様にする。
方法3:注入口の口径を変化させて、上記と同様にする。
方法4:加硫反応速度の異なる材料の組合せにより、上記と同様にする。
方法5:加硫促進剤の調整により、上記と同様にする。
次に、本例の作用を説明する。図5に示すように、ダイアフラム5を圧入リング6により第1の取付部材1の取付段部16の外周へ圧入して連結一体化するので、従来のようにボルト及びナットにより締結するように回転力を加えないため、締結時の位置ズレを防ぐことができ、かつ正確に位置決めできる。また、組立を迅速化することができる。圧入時に加える力を比較的小さくすることができるから、圧入作業を容易にできる。しかも、長期使用によっても緩みを生じにくくすることができる。
また、圧入リング6は抜け荷重に耐えることが求められるだけであって、後述するように比較的小型・軽量に形成できるから、ダイアフラム5の溶融ゴム材料を圧入リング6の周囲に注入して一体化するとき、溶融ゴムから圧入リング6が奪う熱量が少なくなる。その結果、溶融ゴム材料の温度低下を少なくするから、加硫開始時における溶融ゴム材料の温度分布を均一化し、加硫時間を短縮化させることができる。
また、圧入リング6を第1の取付部材1に対して主たる振動の入力方向Zと平行に圧入して取付けたので、エンジンからの振動は第1の取付部材1へ入力され、圧入リング6へは直接入力されず、ダイアフラム5からの反力が圧入リング6へ加わるだけとなる。したがって、圧入リング6の抜け荷重は比較的小さなもので足り、その結果、圧入荷重を小さくして圧入を容易にできるとともに、圧入リング6を小型・軽量化できる。
さらに、ダイアフラム5の圧入リング6近傍部分を厚肉の内周厚肉端部40とし、ここへ一体に設けたシール突部41を、第1の取付部材1の表面を覆う弾性部材である肩被覆部20fに密着させたので、ダイアフラム5と第1の取付部材1間におけるシールを確実にすることができる。また、シール突部41はダイアフラム5側に設けられるため、ダイアフラム5の変形に伴ってせん断変形することになり、耐へたり性が向上する。このため耐久性が向上し、シール力も向上する。
また、圧入リング6を取付段部16へ圧入したとき、その圧入方向端部である下端部6bを、肩被覆部20fで覆われていない第1の取付部材1の肩部1aに対して金属同士で当接させて位置決めしたので、圧入位置を正確に位置決めでき、圧入精度を高めることができる。その結果、組立時におけるシールを一定にでき、シール品質を高めることができる。
そのうえ、圧入リング6の外周側に径方向外方へ突出する突部6aを設け、内周厚肉端部40に埋設一体化したので、この突部6aを圧入リング6と内周厚肉端部40との結合強化手段にできるとともに、下面40b及びシール突部41を肩部被覆20fへ密着させるシール維持手段とすることができる。また内周厚肉端部40をシールに利用できる。
しかも、リング状取付部の嵌合方向端部に、第1の取付部材の結合面から離れるテーパー面を形成したので、リング状取付部の嵌合時におけるガイドとすることができ、組立をスムーズにできる。
そのうえ、予め小組されたアクチュエータ部Bと液封部Aを上側ブラケット3のカシメにより一体化するので、アクチュエータ部Bと液封部Aを迅速・簡単に一体化して組立できる。しかも、液封部Aは、アクチュエータ部Bと連結せず、かつ開口28を有する仕切りプレート27に代えて開口28の無い部材により密閉すれば、液封部A単独で能動制御部の無い通常の液封防振装置にすることができる。
したがって、能動的防振装置とするときのみ、アクチュエータ部Bを一体化すればよいから、通常の液封防振装置と、能動型防振装置のように、仕様を随時変更して組立でき、共用化の幅が広がる。そのうえ、液封部Aとしてはインシュレータ20を挟んで主液室23と副液室24を反対側に配置することにより、Z方向における高さを縮小し、コンパクト化を実現できる。
しかも、ダイアフラム5を一体化した小組立体Cはバウンドストッパ9も一段成形で一体化している。このため、部品点数を削減し、かつ組立工数も低減できる。しかも、用途に応じて、適正な特性を有する異種材料の組合せを容易かつ確実に実現できる。
さらに、フランジ8上へ、補強プレート10及びリバウンドアーム12とを3枚重ねにして重ね、ボルト11とナット13で締結したので、バウンドストッパ9及びリバウンドストッパ14に加わる大荷重に対しても十分な強度を得ることができるとともに、フランジ8を特別に厚肉化する必要がなく、全体の重量増加を抑制できる。
なお、本願発明は上記実施例に限定されず種々に変形や応用が可能であり、液封防振装置はエンジンマウントに限らず、種々の防振装置に適用できる。
また、ダイアフラムのリング状取付部である圧入リング6は、圧入で取付けるばかりではなく、圧入リング6を取付段部16の外側へ緩く嵌合し、その後圧入リング6を縮径させて第1の取付部材1側と一体化させることもできる。この場合、図6に示すように、圧入リング6の上端部側が内周厚肉端部40の上端面40aより上方へ突出しているので、この突出部を利用して縮径できる。
また、圧入リング6を取付段部16の外周へ圧入した後からさらに上記部分を縮径して、圧入リング6と取付段部16の密着結合をより確実にしてもよい。このようにすると強固に一体化することができる。このような圧入又は縮径の場合は、圧入又は縮径時に加える力を比較的小さくすることができるから、圧入や縮径作業を容易にできる。そのうえ、締結に比べて緩みにくいから、長期間安定して使用できる。
図11〜14は、圧入リング6及びその圧入構造に関する変形例であり、各図はAに図10と対応する同様断面部位を示し、B部に組み付け状態を示している。なお、符号は図10と共通する部分につて共通符号を用いるものとする。
図11は第1の変形例を示す。この例では、圧入リング6の断面形状が異なり、圧入リング6の上部外周に外方へ突出する突部6aが一体に形成され、これより下方の外周部は湾曲面でつながる小径部6dをなし、下端部6bは第1の取付部材1の肩部1aの内周側で肩部被覆20fに覆われずに露出する部分へ金属同士で当接する。
内周厚肉端部40の下部も小径部6dの外周を覆っており、この部分の下面40bも肩部被覆20fに覆われない肩部1aの上面へ密接する。このとき、下面40bへ一体に形成されたリング状のシール突部41が肩部1aの金属面へ押しつけれて密着し、内周厚肉端部40と肩部被覆20fの間を液密にシールする。このようにすると、下面40bをシール面に利用でき、かつシール突部41によりさらに確実なシールが可能になる。
図12は第2の変形例を示す。この例では、圧入リング6の外周側下部に小径部6dが設けられ、小径部6dと外方へ突出する突部6aとの間に下向き平面をなす段部6eが形成されている。圧入リング6の突部6aより上側の外周部は上端まで連続する斜面6fをなしている。内周厚肉端部40は圧入リング6の外周を覆って一体化し、その下面40bは段部6eの下向き面と同じ高さ又は若干下方へ張り出しているが、段部6eの下向き表面まで回り込んでいない。
下端部6bは第1の取付部材1の肩部1aの内周側で肩部被覆20fに覆われずに露出する部分へ金属同士で当接する。肩部被覆20fの内周側表面にも中心をリング状に囲むシール突部60が上方へ突出して一体に形成され、段部6eの表面へ圧接されることにより、肩部被覆20fと段部6eの間を液密にシールする。このとき、下面40bも肩部被覆20fへ密着する。なお、下面40b又は肩部被覆20fもしくは双方へシール突部を設け、下面40bと肩部被覆20fのシール性を向上させることは任意にできる。このようにすれば、肩部被覆20fを弾性シールとして利用し、突部6aの段差6eをシール面に利用でき、かつシール突部60によりさらに確実なシールが可能になる。
図13は第3の変形例を示す。この例は図12をさらに一部変形したものに相当する。この例では、下面40bは内周側が小径部6dの外周を覆う小径部被覆40cへ連続する。小径部被覆40cの下面40dは小径部6dと共に、第1の取付部材1の肩部1aの内周側で肩部被覆20fに覆われずに露出する部分上へ当接し、小径部6dの下端部6bは肩部1aと金属同士で当接する。
このとき、下面40dも肩部1aと密接するが、下面40dには下向きに突出するリング状のシール突部41が予め一体に形成されており、これが肩部1aへ押しつぶされて密着されることによりシール性が高まる。
なお、下面40bは小径部被覆40cと段差状をなして肩部被覆20fの上へ密着するが、肩部被覆20fの表面にもリング状のシール突部60が上方へ突出して一体に形成され、下面40bの表面へ圧接されることにより、肩部被覆20fと下面40bの間を液密にシールする。したがって、2カ所のシール突部41と60によるダブルシール構造をなすので、シール性がさらに向上する。
図14は第4の変形例を示す。この例は圧入リング6の外周側にて圧入するようにしたものである。すなわち圧入リング6は内周側をえぐるようにして略L字状断面に形成し、外周側に圧入部6gを設け、その内周面を第1の取付部材1の最大外径をなす外周面1cへ圧入するようになっている。このとき、圧入部6gの内周側に位置する段部6hが肩部1aの外周側表面上へ金属同士で当接する。なお、この例では、上記各例におけるような肩部被覆20fは設けられず、インシュレータ20の一端部が圧入部6gの下方となる第1の取付部材1の外周面16を覆っているに過ぎない。
また、圧入リング6の上部は径方向内方へ突出する突部6aをなし、突部6aは内周厚肉端部40及び内周被覆部48内に埋設一体化され、圧入リング6と内周厚肉端部40及び内周被覆部48との結合強化手段になっている。内周厚肉端部40と一体に形成されている内周被覆部48の内周側に貫通穴48aが設けられている。貫通穴48aの内周面は内径が肩部1aの中心部に形成されている小径部1bの外径よりも小さな内周シール面48bをなす。貫通穴48aに小径部1bを通して、内周被覆部48を小径部1bの周囲へ圧入すると、内周シール面48bが押しつぶされて小径部1bの外周面へ密着する。
下面48cにも下向きに突出するリング状のシール突部48dが予め一体に形成されており、これが肩部1aへ押しつぶされて密着される。シール突部48dは好ましくは図示のように同心円状に複数形成される。したがって、内周被覆部48の下面48c部分自体及びこの下面48cに突出形成されたシール突部48dによりシールできる。
このようにすると、圧入リング6の外周側を第1の取付部材1に対して圧入により固定でき、圧入部表面積の増大により、圧入部の結合力を高めることができる。そのうえ、シール面積が増大するとともに、内周シール面48bとシール突部48dがダブルシール構造をなすので、シール性がさらに向上する。
なお、 内周被覆部48は内周厚肉端部40と同一又は異なるゴム等の適宜弾性材料を用いて別体に形成することもできる。もしくは省略することもできる。この場合は、圧入リング6の上部内周側も小径部1bへ圧入するようにしてもよい。
1:第1の取付部材、2:第2の取付部材、3:上側ブラケット、4:下側ブラケット、5:ダイアフラム、6:圧入リング、7:逃げ凹部、8:フランジ、9:バウンドストッパ、10:補強プレート、16:取付段部、20:インシュレータ、21:オリフィス部材、22:オリフィス通路、23:主液室、24:副液室、25:入り口、26:出口、27:仕切りプレート、28:開口、29:エンジンハンガ