JP4440881B2 - 細胞シート移送方法 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞シートを移送する方法及びその方法を実現可能な移送機器に関する。
近年、細胞や組織をインビトロ(生体外)で培養し、再び生体に適用することで治療を行う組織工学や再生医療が注目されている。特に、患者本人やドナーの皮膚あるいは口腔粘膜等の一部を採取し、シート状に培養してから生体に適用する技術に関しては、実用化の段階に至っている。例えば、皮膚の場合、母斑、潰瘍、熱傷、刺青等の治療や、移植用皮膚を採取した採皮部等に、培養上皮(表皮)細胞シートの移植が試みられている。また、口腔粘膜の場合、歯周病や悪性腫瘍などの口腔内疾患による歯肉および粘膜組織の創傷・欠損に対する治療として、口腔粘膜上皮細胞を用いた培養細胞シートの移植が試みられている。これらの培養細胞シートは組織工学の手法を用いて作製され、上皮(表皮)細胞が5〜10層に重層化した薄いシート状の構造となるように培養フラスコ内で培養した後、培養フラスコから剥離して移植に供されている。しかし、このような培養細胞シートの作製は培養操作が煩雑であり普通の医療機関で容易にできるわけではない。そのため、十分な培養設備が揃い、熟練した培養技術を有した大学病院などの専門施設でのみ、この培養細胞の移植治療が実施されているにすぎない。また、培養フラスコによる移送の場合、培養細胞シートの剥離作業を医療機関で行うことになるので、手術前に余分な手間が必要となり、術者の負担となる。このことから、専門施設で作製された培養細胞シートが適切に包装されて安定に移送することができれば、一般的な手術設備がある多くの医療機関で容易に移植治療を適用することが可能となり、大勢の患者が培養細胞の移植治療を享受することができる。この種の培養細胞シートの移送機器としては、例えば、特許2733800号公報に開示されているように、ガーゼなどの基質シートにクリップ止めした培養上皮細胞シートをトレイの窪み部の底面上に載せ、このトレイの窪み部に培地を入れたあとリッドによってトレイを密封したものが知られている。
しかしながら、上記公報に開示された移送機器では、細胞シートを基質シートにクリップ止めする際に細胞シートを傷つけるおそれがあるし、移送時に揺れた場合などにクリップによって細胞シートが傷つくおそれもある。また、一方、移送機器から細胞シートを取り出す際にピンセットを使っているため、移送後のハンドリング時に細胞シートを傷つけるおそれもある。
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、移送前の作業中や移送時に細胞シートを傷つけるおそれが少ない細胞シート移送方法及び移送機器を提供することを目的の一つとする。また、移送後のハンドリング時に細胞シートを容易に取り扱うことができ、傷つけるおそれが少ない細胞シート移送方法及び移送機器を提供することを目的の一つとする。
上述した目的の少なくとも一つを達成するために、本発明は以下の手法を採用した。
即ち、本発明の細胞シート移送方法は、磁性微粒子を保持した細胞シートを磁力により支持体に吸引した状態で移送するものである。このように細胞シートを磁力によって固定するため、細胞シートをクリップのような止め具で固定する場合に比べて移送前の作業中や移送時に細胞シートを傷つけるおそれが少ない。
ここで、磁性微粒子を保持した細胞シートとしては、磁性微粒子を保持した細胞を培養してシート化したものでもよいし、磁性微粒子を持たない細胞シートに磁性微粒子を取り込ませたものでもよい。細胞シートを構成する細胞としては、接着依存性細胞(培養面に直接又は間接的に接着したあとその接着面積を広げていきその後細胞***する細胞、足場依存性細胞ともいう)が好ましく、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サル等の温血動物から採取された種々の細胞が挙げられる。この温血動物の細胞としては、例えば、角化細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞(角膜上皮細胞、口腔粘膜上皮細胞、羊膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞などを含む)、内皮細胞、線維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞若しくは間質細胞、又はこれらの細胞の前駆細胞のほか、胚性幹細胞(ESC)や間葉系幹細胞(MSC)などの幹細胞や接着依存性のガン細胞が挙げられる。また、支持体としては、細胞シートに悪影響を与えないものであれば特に限定されないが、細胞が接着しにくいものが好ましい。このような支持体としては、例えばポリスチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、ポリエステルなどを材質とする支持体(メンブレンでもよい)や、アガロース、寒天、ゼラチン、コラーゲン、フィブリンなどでコーティングされた支持体(メンブレンでもよい)や、陽性荷電した支持体などが挙げられる。具体的には、コーニング社の超低接着性プレート(商品名)などが挙げられる。なお、細胞が接着しにくいとは、磁力を除去したときに軽く振れば磁性微粒子を保持した細胞シートが支持体から離れる程度の接着性を持つ性質をいう。
本発明で用いる磁性微粒子としては、細胞に保持されると共に保持されることで細胞に磁性を付加するものであればどのようなものでもよいが、例えば、マグネタイトなどの磁性微粒子をリポソームで封入した磁性微粒子封入正電荷リポソーム(MPCL,Magnetic particle cationic liposome)や抗体を固定化したリポソームで封入した磁性微粒子封入リポソーム(AML,Antibody−immobilized magnetoliposome)を構成する磁性微粒子であってもよいし、第一化学製品社のMACS(Magnetic Cell Sorting and Separation of Biomolecules)内の磁性マイクロビーズやベリタス社の磁性ナノパーティクル(商品名 EasySep)などであってもよい。これらの磁性微粒子のうち、MPCLやAMLのようにリポソームを含む磁性微粒子は、リポソームの存在によって細胞内に取り込まれるので一つの細胞が多くの磁性微粒子を取り込むことができ、磁力によって培養容器の底面に吸引され得る程度の磁気を容易に持つことができるため、好ましい。
MPCLは、図1に一例を示すようにマグネタイト等の磁性微粒子をリポソームで封入しリポソーム間に正電荷脂質を備えた構造を持つ。多くの細胞は負電荷を有しているため正電荷を持つMPCLと結合しやすく、またMPCLはリポソームを有しているため細胞内に取り込まれやすい。このため、本発明において磁性微粒子としてMPCLを採用すれば、種々の細胞の培養に適用することができる。MPCLは、例えばJpn.J.Cancer Res.第87巻第1179〜1183頁(1996年)に記載されたマグネタイト封入正電荷リポソーム(MCL,Magnetite cationic liposome)の製造方法を参照して調製すればよい。MPCLを細胞に取り込ませるときには、MPCLを1細胞当り磁性微粒子として1〜150pg、特に20〜150pg使用することが好ましく、また、培養しようとする細胞とMPCLとの接触を開始してから0.5〜8時間後、特に3〜5時間後に次工程へ進むことが好ましい。
AMLは、図2に一例を示すように、マグネタイト等の磁性微粒子をリポソームで封入しリポソーム間に抗体を備えた構造を持つ。抗体としては培養しようとする特定の細胞に特異的に結合するものを選択する。抗体と特異的に結合する部位を持つ細胞はAMLの抗体と結合しやすく、またAMLはリポソームを有しているため細胞内に取り込まれやすい。AMLは、例えばJ.Chem.Eng.Jpn.第34巻第66〜72頁(2001年)に記載された方法を参照して調製すればよい。AMLを細胞に取り込ませるには、AMLを1細胞当り磁性微粒子として1〜150pg、特に20〜150pg使用することが好ましく、また、磁性化工程では培養しようとする細胞とAMLとの接触を開始してから0.5〜8時間後、特に3〜5時間後に次工程へ進むことが好ましい。
本発明の細胞シート移送方法において、磁性微粒子を保持した細胞シートを磁力により支持体に吸引した状態で目的位置へ移送したあと該磁力を消失させることにより前記支持体から前記細胞シートを解放してもよい。こうすれば、移送したあとの細胞シートの固定を解く作業においても細胞シートを傷つけるおそれが少ない。目的位置は特に限定されるものではないが、例えば、治療時においては移植部位であり、パッケージ時においては移送用トレイが挙げられる。
本発明の細胞シート移送方法において、前記支持体は移送用トレイであってもよい。こうすれば、細胞シートを移送用トレイに固定した状態でこのトレイに培地を入れて移送することができる。あるいは、前記支持体はある位置に配置された前記細胞シートを持ち上げて目的位置へ移送する移送器具であってもよい。殊に、取り扱いが困難な脆弱な細胞シートや微小な細胞シートを、容易に目的位置まで移送することができる。
本発明の細胞シート移送方法において、前記支持体は磁石を含んで形成されていてもよい。あるいは、前記支持体は磁界によって磁化された磁性体(例えば鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性体)で形成されていてもよい。この場合、支持体に細胞シートを固定するには磁性体を磁界によって磁化すればよく、支持体から細胞シートを解放するには磁界を消失させて磁性体の磁化を解けばよいため、細胞シートの支持体への固定・解放を簡単な操作で行うことができる。あるいは、前記支持体は前記細胞シートと接する非磁性体(例えば紙、プラスチック、アルミなど)製の支持面と該支持面の裏側に配置された磁石とを備えていてもよい。この場合、支持体に細胞シートを固定するには支持面の裏側に配置された磁石の磁界を細胞シートが受けるようにすればよく、支持体から細胞シートを解放するには支持面の裏側から磁石の磁界を除去すればよいため、細胞シートの支持体への固定・解放を簡単な操作で行うことができる。
本発明の細胞シート移送機器は、磁性微粒子を保持した細胞シートを支持する支持手段と、前記支持手段に前記細胞シートを磁力で吸引する吸引手段と、を備えたものである。この細胞シート移送機器は、磁性微粒子を保持した細胞シートを磁力により支持手段に吸引した状態で移送する。したがって、細胞シートをクリップのような接触型の止め具で固定する場合に比べて移送前の作業中や移送時に細胞シートを傷つけるおそれが少ない。
本発明の細胞シート移送機器は、前記吸引手段が電磁石のときには、該電磁石の励磁・消磁を切り替える切替手段を備えていてもよい。こうすれば、移送時には吸引手段を励磁して細胞シートを支持体に固定しておき、移送後には吸引手段を消磁して細胞シートを支持体から解放することができるため、細胞シートの固定を解く作業においても細胞シートを傷つけるおそれが少ない。
本発明の細胞シート移送機器において、前記支持手段は移送用トレイであってもよい。こうすれば、細胞シートを移送用トレイに固定した状態でこのトレイに培地を入れて移送することができる。あるいは、前記支持手段は、ある位置に配置された細胞シートを持ち上げて目的位置へ移送する移送器具であってもよい。
本発明の細胞シート移送機器において、前記吸引手段は前記細胞シートに磁界を付与可能な磁石であり、前記支持手段は該磁石の一面であってもよい。
本発明の細胞シート移送機器において、前記支持手段は磁界によって磁化される磁性体(例えば鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性体)からなる部材の一面であり、前記吸引手段は前記磁性体からなる部材に磁界を付与可能な磁石であってもよい。この場合、支持手段に細胞シートを固定するには磁性体からなる部材を磁界によって磁化すればよく、支持手段から細胞シートを解放するには磁界を消失させて磁性体からなる部材の磁化を解けばよいため、細胞シートの支持体への固定・解放を簡単な操作で行うことができる。
本発明の細胞シート移送機器において、前記支持手段は前記細胞シートと接する非磁性体(例えば紙、プラスチック、アルミなど)製の支持面であり、前記吸引手段は前記支持面の裏側に配置され該支持面を介して前記細胞シートに磁界を付与可能な磁石であってもよい。この場合、支持面に細胞シートを固定するには支持面の裏側に配置された磁石の磁界を細胞シートが受けるようにすればよく、支持体から細胞シートを解放するには支持面の裏側から磁石の磁界を除去すればよいため、細胞シートの支持面への固定・解放を簡単な操作で行うことができる。
なお、本発明において、磁石とは特に断りのない限り永久磁石であってもよいし電磁石であってもよい。また、磁力(又は磁界)を消失させるとは、磁力(又は磁界)をゼロにする場合を含むほか、細胞シートが支持手段から離れる程度の弱い磁力(又は磁界)にする場合も含む。また、支持手段には細胞シートを直接接触させてもよいし、介在物を介して間接的に接触させてもよい。介在物としては、編物、織布、不織布、紙、樹脂シートなどが挙げられ、具体的には滅菌ガーゼ、滅菌和紙、滅菌濾紙、滅菌不織布のほか、PVDF膜(ポリフッ化ビニリデン膜)やPTFE膜(ポリテトラフルオロエチレン膜)等の親水性膜(表面を親水処理したものを含む)や、シリコーンゴムなどの柔軟性のある高分子材料やポリグリコール酸、ポリ乳酸などの生分解性ポリマーや寒天培地やコラーゲンゲル、ゼラチンゲルなどのハイドロゲルなどをシート状にしたものなどが挙げられる。
図1は、磁性微粒子封入正電荷リポソーム(MPCL)の一例の模式図である。
図2は、抗体が固定化された磁性微粒子封入リポソーム(AML)の一例の模式図である。
図3は、細胞シート移送容器の一例を表す断面図である。
図4は、細胞シート移送器具の一例を表す断面図で、(a)は細胞シートを吸引する様子を表し、(b)は細胞シートを移送する様子を表し、(c)は細胞シートが離脱したときの様子を表す。
図5は、細胞シート移送器具の一例を表す斜視図で、(a)は細胞シートを吸引する様子を表し、(b)は細胞シートを移送する様子を表し、(c)は細胞シートが離脱したときの様子を表す。
図6は、細胞シート移送器具の一例を表す斜視図で、(a)は細胞シートを吸引する様子を表し、(b)は細胞シートを移送する様子を表し、(c)は細胞シートが離脱したときの様子を表す。
図7は、細胞シートの断面写真である。
図8は、培養時間とマグネタイト取り込み量との関係を表すグラフである。
図9は、培養時間と生存細胞数との関係を表すグラフである。
図10は、ヘマトキシリンとエオシンで染色したRPE(網膜色素上皮)細胞シートの断面を表す写真である。
図11は、RPE細胞シートを移送する様子を表す説明図で、(a)はシートがワイヤに付着する前の様子を表し、(b)はシートがワイヤに付着したときの様子を表し、(c)はシートがワイヤから外れたときの様子を表す。
[第1実施形態]
図3は、細胞シート移送容器の断面図である。この細胞シート移送容器20は、トレイ22、リッド24及び電磁石26から構成されている。
トレイ22は、材質がポリプロピレンであり、液体培地Mを貯留可能な窪み部22aと、この窪み部22aの外縁に沿って設けられたつば部22cとを備えている。リッド24は、材質がポリプロピレンであり、外縁部24cとトレイ22のつば部22cとを重ね合わせた状態で熱溶着可能に形成されている。電磁石26は、トレイ22の底面22bの裏側に固定され、スイッチ28をオンにすると図示しないソレノイドコイルに電流が流れて磁石として機能し、スイッチ28をオフにするとソレノイドコイルに電流が流れなくなり磁石として機能しなくなる。
次に、この細胞シート移送容器20に細胞シートSを入れて移送する作業について説明する。まず、電磁石26のスイッチ28をオフにした状態で、磁性微粒子を保持した細胞シートSを窪み部22aの底面22bの中央に配置する。この細胞シートSの具体的な製法については後の実施例1,2で説明する。続いて、液体培地Sを窪み部22aに投入し、リッド24でトレイ22の開口を覆い、リッド24の外縁部24cとトレイ22の鍔部22cとを重ね合わせた状態で熱溶着する。これにより、トレイ22の窪み部22aの内部は密閉される。なお、液体培地Mとしては、ここでは抗生物質含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いているが、移送期間中に細胞シートを構成する細胞が生存できる程度の栄養分を含んでいればどのような培地を用いてもよい。続いて、電磁石26のスイッチ28をオンにする。すると、電磁石26の磁力によって細胞シートSが底面22bに吸引される。この状態で、細胞シート移送容器20を別の場所へ移送する。移送期間中、細胞シートSは磁力によって底面22bに吸引され固定されているため細胞シートSの揺動を防止することができ、ずれることがない。
次に、別の場所への移送が完了した細胞シート移送容器20から細胞シートSを取り出す作業について説明する。まず、電磁石26のスイッチ28をオフにする。すると、電磁石26の磁力が消失するため細胞シートSは底面22bから解放される。続いて、リッド24の外縁部24とトレイのつば部22cとの熱溶着部分をナイフ又はハサミで切断し、リッド24を取り外す。そして、図4に示す細胞シート移送器具30を用いてトレイ22の中から細胞シートSを取り出す。細胞シート移送器具30は、トレイ22の窪み部22aに挿入可能な大きさに形成されたフェース部32と、このフェース部32から上方に延び出した後、略水平に曲げられた形状のハンドル部33と、このハンドル部33の先端に設けられスイッチ40を操作可能な把持部34と、フェース部32の下面に固定されスイッチ40のオン・オフ操作により図示しないソレノイドコイルへの通電・遮電が切り替わる電磁石36と、この電磁石36の下面を覆うように設けられた懸架用支持膜38(PVDF膜など)とを備えている。オペレータは、この細胞シート移送器具30の把持部34を手で掴み、図4(a)に示すようにスイッチ40をオンにした状態でフェース部32を懸架用支持膜38が下向きになるようにしてトレイ22の窪み部22aへ挿入する。すると、電磁石36の磁力によってトレイ22の底面22bに載置されていた細胞シートSが液体培地Mを浮き上がり、図4(b)に示すように懸架用支持膜38に吸引される。この状態で、フェース部22をトレイ22の窪み部22aから上方へ引き上げ、細胞シート移送器具30をそのまま目的位置まで移送する。この移送期間中、細胞シートSは磁力によって懸架用支持膜38に吸引され固定されているためずれることがない。そして、目的位置の上方に達したあと、スイッチ40をオフにする。すると、電磁石36の磁力が消失するため、図4(c)に示すように懸架用支持膜38に吸引されていた細胞シートSは目的位置へと落下する。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の細胞シート移送容器10において、トレイ22の底面22bが本発明の支持手段(非磁性体製の支持面)に相当し、電磁石26が吸引手段に相当し、スイッチ28が切替手段に相当する。また、細胞シート移送器具30において、懸架用支持膜38が支持手段(非磁性体製の支持面)に相当し、電磁石36が吸引手段に相当し、スイッチ40が切替手段に相当する。
以上詳述した細胞シート移送容器20によれば、細胞シートSを磁力によってトレイ22の底面22bに固定するため、細胞シートSをクリップのような止め具で固定する場合に比べて移送前の作業中や移送時に細胞シートSを傷つけるおそれが少ない。また、磁性微粒子を保持した細胞シートSを磁力によりトレイ22の底面22bに吸引した状態で目的位置へ移送したあと該磁力を消失させることにより底面22bから細胞シートSを解放するため、移送したあとの細胞シートの固定を解く作業においても細胞シートSを傷つけることがない。更に、スイッチ28のオン・オフという簡単な操作により細胞シートSを底面22bに固定したり解放したりすることができる。
また、細胞シート移送器具30によれば、細胞シートSを磁力によって懸架用支持膜38に固定するため、細胞シートSをクリップのような止め具で固定する場合に比べて細胞シートSを傷つけるおそれが少ない。また、磁性微粒子を保持した細胞シートSを磁力により懸架用支持膜38に吸引した状態で目的位置へ移送したあと該磁力を消失させることにより懸架用支持膜38から細胞シートSを解放するため、移送したあとの細胞シートの固定を解く作業においても細胞シートSを傷つけることがない。更に、スイッチ40のオン・オフという簡単な操作により細胞シートSを懸架用支持膜38に固定したり解放したりすることができる。
なお、上述した実施形態では、電磁石26,36を使用したが、これに代えて永久磁石を使用してもよい。この場合、スイッチ28,40は不要となり、永久磁石の磁力によって細胞シートSはトレイ22の底面22bや懸架用支持膜38に吸引され固定される。また、細胞シートSを底面22bや懸架用支持膜38から解放するには、永久磁石を底面22bの裏側や懸架用支持膜38の裏側から取り去ってしまえばよい。
[第2実施形態]
図5は、細胞シート移送器具50の説明図である。この細胞シート移送器具50は、有底筒状のプラスチックケース52と、このプラスチックケース52の底部52aの内面に対して接触・離間が可能な筒状の永久磁石54とを備えている。この細胞シート移送器具50を用いて培養容器56内の磁性微粒子を保持した細胞シートSを目的位置へ移送するには、まず、図5(a)に示すように、永久磁石54をプラスチックケース52の底部52aの内面に接触させた状態で、プラスチックケース52の底部52aの外面を細胞シートSに近づける。すると、永久磁石54の磁力によって培養容器56内の細胞シートSが、図5(b)に示すように底部52aの外面に吸引される。この状態で、細胞シート移送器具50をそのまま目的位置まで移送する。そして、目的位置の上方に達したあと、永久磁石54を底部52aの内面から離間させる。すると、永久磁石54の磁力が細胞シートSに及ばなくなるため、図5(c)に示すように底部52aの外面に吸引されていた細胞シートSは目的位置へと落下する。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。プラスチックケース52の底部52aの外面が支持手段(非磁性体製の支持面)に相当し、永久磁石54が吸引手段に相当する。
以上詳述した細胞シート移送器具50によれば、細胞シートSを磁力によって底部52aの外面に固定するため、細胞シートSをクリップのような止め具で固定する場合に比べて移送前の作業中や移送時に細胞シートSを傷つけるおそれが少ない。また、磁性微粒子を保持した細胞シートSを磁力により底部52aの外面に吸引した状態で目的位置へ移送したあと該磁力を消失させることにより細胞シートSを解放するため、移送したあとの細胞シートの固定を解く作業においても細胞シートSを傷つけることもない。更に、永久磁石54の位置を変えるという簡単な操作により細胞シートSを底部52aの外面に固定したり解放したりすることができる。
なお、上述した第2実施形態では永久磁石54を使用したが、これに代えて電磁石を使用してもよい。この場合、プラスチックケース52内に電磁石を配置して通電・遮電を切り替えればよいため、電磁石を動かす必要がない。
[第3実施形態]
図6は、細胞シート移送器具60の説明図である。この細胞シート移送器具60は、鉄などの強磁性体からなる円柱部材62と、この円柱部材62の上面62aと磁力でくっついている円柱状の棒磁石64とを備えている。このとき、円柱部材62は棒磁石64の磁界を受けて磁化している。この細胞シート移送器具60を用いて培養容器66内の磁性微粒子を保持した細胞シートSを目的位置へ移送するには、まず、図6(a)に示すように、円柱部材62の下面62bを細胞シートSに近づける。すると、培養容器56内の細胞シートSは図6(b)に示すように円柱部材62の下面62bに吸引される。この状態で、細胞シート移送器具60をそのまま目的位置まで移送する。そして、目的位置の上方に達したあと、棒磁石64を円柱部材62から離間させる。すると、円柱部材62は磁化しなくなり磁力が細胞シートSに及ばなくなるため、図6(c)に示すように下面62bに吸引されていた細胞シートSは目的位置へと落下する。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。円柱部材62の下面62bが支持手段(磁性体からなる部材)に相当し、棒磁石64が吸引手段に相当する。
以上詳述した細胞シート移送器具60によれば、細胞シートSを磁力によって下面62bに固定するため、細胞シートSをクリップのような止め具で固定する場合に比べて移送前の作業中や移送時に細胞シートSを傷つけるおそれが少ない。また、磁性微粒子を保持した細胞シートSを磁力により下面62bに吸引した状態で目的位置へ移送したあと該磁力を消失させることにより下面62bから細胞シートSを解放するため、移送したあとの細胞シートの固定を解く作業においても細胞シートSを傷つけることがない。更に、円柱部材62に棒磁石64をくっつけたり離したりするという簡単な操作により細胞シートSを下面62bに固定したり解放したりすることができる。
なお、上述した第3実施形態では棒磁石64を使用したが、これに代えて電磁石を使用してもよい。この場合、電磁石への通電・遮電を切り替えればよいため、円柱部材62に対して電磁石を移動する必要がない。
次に、本発明を具現化した実施例について説明する。
実施例1として、表皮細胞(ケラチノサイト)を培養して培養表皮シートを作製する場合について説明する。
(1)使用細胞
正常ヒト表皮角化細胞は研究用として市販されているクラボウ社製のものを用いた。表皮角化細胞の培地としては、増殖用培地として無血清培地HuMedia−KG2(クラボウ社製)を使用し、分化誘導培地としてHuMedia−KG2に塩化カルシウムを添加して総カルシウム濃度を1.0mMに調整したものを使用した。
(2)マグネタイト封入正電荷リポソーム(MCL,Magnetite cationic liposome)の調製
MCLは、Jpn.J.Cancer Res.第87巻第1179〜1183頁(1996年)に記載された方法により調製した。具体的には、まず3種類のリン脂質、即ちN−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジドデシル−D−グルタメート クロリド(相互薬工社製)、ジラウロイルホスファチジルコリン(シグマケミカル社製)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(シグマケミカル社製)をモル比1:2:2で含むリポソーム膜を作成し、続いて1mLのコロイド状マグネタイト(マグネタイト量20mg、マグネタイトは戸田工業社製)を添加して、周知のボルテックス法にてMCLを作成した。マグネタイト濃度はチオシアン酸カリウム法で測定したところ、18mg/mlであった。
(3)表皮角化細胞へのMCLの取り込み
表皮角化細胞を増殖用培地に懸濁して細胞懸濁液を調整し、組織培養皿(旭テクノグラス社)に1×10個/cmとなるように播種した。細胞が細胞培養皿の底面に接着するまで静置した後、増殖用培地を加えてCOインキュベータ内で培養した。培養は37℃、5%COを含む加湿空気環境下で行った。1回目の培地交換では、馴化期間を過ぎ、対数増殖期にある表皮角化細胞の培地を交換したが、この際、交換用の新鮮な増殖用培地にはMCLを含ませたものを使用した。MCL濃度は表皮角化細胞の細胞数に対して1細胞当りマグネタイトとして50pgになるように添加した。この後、MCL含有増殖用培地で培養することによって、MCLを表皮角化細胞に取り込ませた。
(4)磁石を用いた細胞培養方法
MCLを取り込んだ表皮角化細胞がほぼコンフルエント状態に至ったあと、トリプシン処理によって組織培養皿の底面から細胞を剥離し、非接着性の底面を有する24ウェル超低接着プレート(Corning社製)に播種した。播種細胞数は2×10個/ウェルとなるように播種した。一方、コントロールとしてMCLを取り込ませていない表皮角化細胞を24ウェル超底接着プレートに2×10個/ウェルとなるように播種した。
播種後、各ウェルの底面外側にネオジ磁石(外形3.0cmφ、表面磁束密度0.45T)を設置したあと1日間培養し、表皮角化細胞がシート化して未分化細胞シートを形成するか否かを観察した。更に培地を分化誘導培地に交換したあとネオジ磁石を設置したままの状態で1日間培養し、表皮角化細胞が分化して重層化細胞シートを形成するか否かを観察した。その結果、MCLを取り込んでいないコントロールの表皮角化細胞は、ウェルの底面に接着せず、未分化細胞シートを形成しなかった。これに対して、MCLを取り込んだ表皮角化細胞は、5層に重層化した未分化細胞シートを形成した(図7(a)参照)。この未分化細胞シートは、ウェルの底面外側に設置したネオジ磁石を外した後、親水処理したPVDF膜(ポリフッ化ビニリデン膜)を先端に付着させた棒状のアルニコ磁石(外形1.0cmφ、残留磁束密度1.27T)を上方から培養液面に近づけることで磁力によって細胞シートを培養液面に浮上させPVDF膜を介して磁石に吸引しそのまま引き上げることにより、容易に回収しそのまま移送することができた。また、未分化細胞シートを分化誘導培地で更に1日間培養したところ、未分化細胞の一部が分化した10層の重層化細胞シートを形成した(図7(b)参照)。この重層化細胞シートは、分化によってシートが収縮しており、ウェルの底面外側に設置したネオジ磁石を外すと培地中に浮遊し、容易にウェルの底面から剥離した。また、この重層化細胞シートは、ピンセットを用いて扱うことができるほどの強度を持っていた。
ところで、図7(c)はグリーンらの培養方法により得られた従来の細胞シートの断面図であり、書籍「人体再生」(立花隆著、中央公論新社、2000年6月10日発行)の229頁に掲載されているものである。このグリーンらの培養方法では、細胞が容器底面に接着することで自動的に分化が発生し、図7(c)のような角化した層の多い重層化細胞シートが得られたものと考えられる。これに対して、上述した実施例では、培養容器に直接接着させずに磁力で吸引して培養したため未分化のまま細胞同士が重層化したものと考えられる。ちなみに、図7(a)ではほぼすべての細胞層が未分化細胞層であり、図7(b)でも図7(c)に比べて多くの細胞層が未分化細胞層となっている。
実施例2として、網膜色素上皮細胞(Retinal Pigment Epithelial Cell,以下RPE細胞という)を培養してシートを作製する場合について説明する。
(1)使用細胞等
正常なヒトRPE細胞として、ATCC(American Type Culture Collection)のARPE−19細胞を用いた。培養は37℃、5%COを含む加湿空気環境下で行った。また、培地として、DMEM/HAM’sF12に10%のウシ胎児血清と抗生物質(濃度100U/mlのペニシリンと濃度0.1mg/mlのストレプトマイシン)を添加したものを使用した。
(2)MCLの調製
MCLは、上述した実施例1の(2)と同様にして調製した。
(3)RPE細胞へのMCLの取り込み
ARPE−19細胞を培地に懸濁して細胞懸濁液を調製し、組織培養皿(旭テクノグラス社)に6×10個/cmとなるように播種した。24時間培養したのち、MCL(マグネタイト濃度25pg/cell又は50pg/cell)を含む培地に交換し、再び培養した。マグネタイト取り込みの分析を行うため、定期的にサンプリングし、チオシアン酸カリウム法で鉄分濃度を測定すると共にトリパンブルーを利用した色素排除法により生存細胞数を確認した。
ARPE−19細胞によるマグネタイトの取り込みは急速に起こった。MCLを含む培地による培養開始から8時間後、マグネタイト濃度25pg/cell、50pg/cellの培地において、細胞のマグネタイト濃度はそれぞれ10pg/cell、27pg/cellと最高値に達した(図8参照)。その後、細胞のマグネタイト濃度は細胞増殖によって希釈し、培養開始から48時間後には濃度がわずかに薄くなった。
また、MCLを含む培地(マグネタイト濃度25pg/cell、50pg/cell)におけるARPE−19細胞の増殖と、MCLを含まない培地におけるARPE−19細胞の増殖を比較し、ARPE−19細胞に対するMCLの有害性を調べた。しかし、いずれの濃度においても、MCLがARPE−19細胞の増殖を抑制することはなかった(図9参照)。したがって、その後の実験においてARPE−19細胞にマグネタイトを取り込ませる際には、マグネタイト濃度50pg/cellの培地で行った。
(4)磁石を用いた細胞培養方法
磁力によりARPE−19細胞を集積させた状態で培養することにより4mm以下の重層化細胞シートを作製した。具体的には以下の手順により細胞シートを作製し、評価した。即ち、MCLを添加してから4時間後、細胞数3×10の細胞を24ウェル超低接着プレート(コーニング社)の中央に配した2.4mm径のクローニングリング(高さ10cm、内部面積4mm、旭テクノグラス社)の内側に播種した。なお、細胞密度に換算すると、8×10cells/mmとなり、これはコンフルエント状態の細胞を十重にした密度に相当する。プレートの表面は親水性ヒドロゲル層である。次に超低接着プレートの培養表面の裏側中央に、円柱状ネオジ磁石(直径22mm、高さ10mm、4000ガウス)を配置し、プレート底面に対し垂直な磁力が発生している状態で1日培養したところ、1mmのシート状構造を形成していた。得られたRPE細胞シートが重層化していることを確認するためその断面を観察すると、MCLを含むARPE−19細胞が厚さ60μmで15層に重層していることがわかった(図10参照)。また、ヘマトキシリン染色とエオシン染色では、RPE細胞シート内に目立った壊死部分は見られなかった。
なお、MCLを含まないARPE−19細胞を用いた場合や、MCLを取り込んだARPE−19細胞をプレート下の磁石なしで培養した場合には、細胞シートは形成されず、クローニングリングを取り除くと細胞が分散してしまった。
(5)磁石を利用した回収と移送
培養開始から1日で、24ウェル超低接着プレートの裏面の磁石を取り除いた。すると、RPE細胞シートがウェルの底面から剥離した。次に、細胞シート移送器具として、図11に示すように、円柱状ネオジ磁石10(直径30mm、高さ15mm、4000ガウス)の中央に磁力で引きつけられている鉄のワイヤ12(直径2mm、長さ40mm)を用意した。このワイヤ12の先端を培地の表面に付けると、磁力によってRPE細胞シート14が表面まで破壊されることなく浮上し、ワイヤ12の先端に付着した。なお、ワイヤ12の先端の磁束密度は1100ガウスであった。そして、このワイヤ12に付着したRPE細胞シート14を、10mlの培養液の入った100mm径の組織培養皿(旭テクノグラス社)に移し、そこで磁石10をワイヤ12から外しワイヤ12を軽く叩くと、RPE細胞シートがワイヤから離れて培養液の表面に落ちた。この結果から、この移送器具によってRPE細胞シートの回収や移送が可能であると判断した。その後、その組織培養皿でRPE細胞シートを培養した。1日培養したのちには、RPE細胞シートは組織培養皿に付着した。その後更にRPE細胞シートを培養すると、16日後には細胞シートから出てきた細胞が活発に増殖していた。
なお、本発明は上記実施例に何等限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
また、本発明における細胞シートの概念は、厳密なシート形状を意味するものではない。通常、厚み(幅)に対して大きな面積を有する形状をシート形状と定義するが、本発明の移送方法を適用する細胞シートが微小なものである場合には、面積に対して比較的厚みを有する三次元形状の培養組織をも含む。
さらにまた、上述の説明では低接着性の培養面上において磁性微粒子を保持させた細胞を磁力で吸引しながら培養して作製した細胞シートを例に挙げたが、本発明の移送方法及び移送機器に適用できる細胞シートは、これに限定されるものではない。具体的には、通常の培養容器(接着性の培養面)において磁性微粒子を保持させた細胞を培養して作製した細胞シートを酵素処理により剥離したものや、通常の培養容器(接着性の培養面)において作製した通常の細胞シートに磁性微粒子を保持させた後に酵素処理で剥離したものなどが挙げられる。
産業上の利用の可能性
本発明は、生体外(in vitro)で細胞を培養する細胞培養技術において利用可能であり、例えば細胞シートのような身体の各部分のための代替物を医療用具とする医療機器産業に利用可能である。

Claims (6)

  1. (a)マグネタイト封入正電荷リポソーム(MCL)を取り込んだ接着依存性細胞を非接着性の底面を有するプレートに播種し、その後、前記プレートの底面の外側に磁石を設置して前記底面に前記接着依存性細胞を磁力で吸引しながら培地中で培養することにより前記MCLを保持した細胞シートを形成し、その後、前記底面の外側の磁石を外して前記細胞シートを前記底面から剥離させる工程と、
    (b)前記工程(a)で得られた細胞シートを磁石の磁力により支持体に吸引した状態で移送する工程と、
    を含む細胞シート移送方法。
  2. 請求項1記載の細胞シート移送方法であって、
    前記工程(b)では、前記細胞シートを前記磁石の磁力により前記支持体に吸引した状態で目的位置へ移送したあと前記磁石の磁力を消失させることにより前記支持体から前記細胞シートを解放する、細胞シート移送方法。
  3. 前記支持体は移送用トレイである、請求項1又は2記載の細胞シート移送方法。
  4. 前記支持体はある位置に配置された前記細胞シートを持ち上げて目的位置へ移送する移送器具である、請求項1又は2記載の細胞シート移送方法。
  5. 前記支持体は磁石を含んで形成されている、
    請求項1〜4のいずれか記載の細胞シート移送方法。
  6. 前記支持体は前記細胞シートと接する非磁性体製の支持面と該支持面の裏側に配置された磁石とを備える、
    請求項1〜4のいずれか記載の細胞シート移送方法。
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