JP4439622B2 - タイヤ補強用スチールコード - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は自動車用タイヤに使用されるタイヤ補強用スチールコード(以下、単に「コード」という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種のコードには、図3に示すような3本の素線4を密着に撚り合わせた、所謂クローズド撚りコード5が使用されている。
そして、上記コード5は、複数本が平行に引揃えられた状態でゴムにより被覆され、自動車用タイヤの補強材として使用されている。
ところで、タイヤ補強材として必要不可欠な要件は、耐疲労性に優れることである。すなわち、コードが強度に優れ、しかもゴムとの完全な複合体となって耐疲労性に優れると、タイヤの寿命を大巾に延長させるとともに安全性を高めることとなり、タイヤ補強材としての役割を充分に果たすことができる。
しかしながら、上記コード5にあっては、コードを構成する各素線4が密着して撚り合わされているため、コードとゴムとの複合体シート成形時に、ゴムが各素線4、4間よりコード内部へ浸透することができず、単にコード外周を覆うだけであり、コード内部には空洞部Eがコード長手に亘り連続して存在することとなる。
【0003】
このため、このコード5をタイヤに使用すると、ゴムとコードとの接着が充分ではなくなるため、自動車の走行時にコードとゴムとが剥離する、所謂セパレーション現象を起こしてタイヤの機能を著しく低下させ、またゴム中の水分やタイヤの切り疵より浸入した水分がコード内部の空洞部E内へ至り、コード長手に伝播してコードを腐食させ、コードの機械的強度の低下を招き、耐疲労性を大巾に低下させることとなる。
【0004】
上記事情に鑑みて、コードとゴムとの接着性を改善し得る構造のコードが種々提案されている。
【0005】
例えば、特開昭55−90692号公報には、図4に示すような各素線6、6間に隙間Hを設けながら撚り合わせた撚りの甘い、所謂オープン撚りコードと称されるコード7が開示されている。
【0006】
上記コード7において、コード内部へゴム材が充分に浸入するためには、各素線6、6間の隙間Hを0.01mm以上とする必要がある。
しかしながら、上記隙間Hを充分にとると、各素線6の移動できる自由空間が大きくなり、コード製造時に撚り構造が不安定になり易く、素線6の片寄りが生じたり、撚りが不均一になったりする。
【0007】
また、このコード7は、低荷重での伸びが大きいため、取扱性および複合体シート成形時の作業性が悪いばかりか、複合体シート成形時に加えられる低荷重の張力によって、上記隙間Hが減少し、結局図3に示すコード5と同様となり、コード内部へゴムが充分に浸入せず、したがってゴムとの完全な複合体とはならず、前述の如き弊害を招くこととなっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなしたものであり、撚り構造が安定し、ゴム浸入性に優れ、かつ取扱作業性に優れたコードを提供することを課題とする。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のタイヤ補強用スチールコードは、くせ付け装置上に設けた複数個のピン間に3本の素線のうちの1本の素線を通し、かつその素線を軸芯として上記くせ付け装置を回転させることによって撚り合わせのくせとは異なる小さなスパイラル状の小さなくせを当該素線に施し、小さなくせを施した1本の素線と小さなくせを施してない他の2本の素線を複数のくせ付けコーンピン間を通すことにより当該3本の素線に撚りのためのスパイラル状のくせを施し、上記3本の素線を同時に撚り合わせて断面円形のスチールコードを作製し、当該スチールコードに押圧加工を施すことにより得られる、3本の素線からなる1×3扁平オープン構造で、断面形状が長手方向に同一向きの楕円形状になしたスチールコードであって、短径側の面におけるコード長手方向の中心軸に対して、2本の素線1、1は相差を有する正弦波状であり、他の1本の素線2は押圧加工により前記小さなスパイラル状の小さなくせが伸長された台形波状であり、長径側の面においていずれか2本の素線が接触することを特徴とする。
【0010】
本発明のコードは、その短径側の面において、2本の素線が略正弦波状であり、他の1本が略台形波状であるので、その形状の違いによりゴムが浸入できる充分なる隙間が形成される。
【0011】
また、長径側の面において、いずれか2本の素線がほぼ接触するので、素線が移動できる自由空間が制限され、荷重が付加された時の伸びを抑えることができ形状が安定する。
【0012】
本発明のコードは、1本の素線に撚り合わせのくせとは異なる小さなスパイラル状のくせを予め施し(この素線を以下、「スパイラル素線」という)、この素線と他の2本の小さなくせを有さない素線(以下、「真直素線」という)とを同時に撚り合わせて断面円形のコードを形成し、このコードを押圧加工して製造することができる。このとき、スパイラル素線は略台形波状となり、真直素線が略正弦波状となる。
【0013】
スパイラル素線が押圧加工により略台形波状となるのは、1撚りピッチにおける素線の実質長さがスパイラル素線と真直素線とで異なる(スパイラル素線が長い)ことによる。
すなわち、押圧加工によってコードの断面形状は偏平形状となるが、スパイラル形状も押圧加工を受け変形するので、この変形による伸長で略台形波状となる。
【0014】
本発明において、コードをオープン構造としたのは、素線間の隙間を大きくしてゴム浸入性を向上させるためでなく、偏平加工を容易にし、かつ隙間をより大きくするためである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明の実施の形態を示す、1×3構造の断面形状が略楕円形状のコードの短径側の面を示した概略平面図で、図1(b)は、各素線の配置を示す部分断面図である。
また、図2(a)、(b)は、上記図1における各素線の状態を示した概略説明図である。
【0017】
図1(a)および、図2(a)、(b)に示すように、素線1はコード長手方向の中心軸Lに対し略正弦波状であり、素線2は略台形波状である。
また図1(b)に示すように、長径側の面においていずれか2本の素線がほぼ接触しているコードである。
【0018】
本発明のコードは、図1に示すように素線1と素線2との間に大きな隙間Sが形成されているので、この隙間Sからゴムが容易に浸入する。また、長径側において素線同士が略接触するので、素線が移動できる自由空間が制限され荷重が付加された時の伸びを抑えることができ、形状が安定する。
【0019】
【実施例】
次に本発明の実施例を、従来例と比較し、具体的に説明する。
【0020】
表1は、表面にブラスメッキを施した複数本の素線を撚り合わせた各種構成のコードの試験結果を示したものである。この試験結果は、本発明のコードと従来例のコードを製造し、それぞれのコードにおいて、ゴム浸入性、耐疲労性、撚りの安定性および作業性を比較したものである。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明のコードは、3本の素線のうちの1本に撚り合わせのくせとは異なる小さなスパイラル状の小さなくせを施し、他の2本の素線とバンチャー型撚り線機で撚り合わせたのち、小径のフラットローラを千鳥状に配列した矯正機を通すことで押圧加工し、コードの断面を略楕円形状とした。
上記小さなくせ付けは、くせ付け装置上に設けた複数個のピン間に素線を通し、かつその素線を軸芯として、そのくせ付け装置を高速回転させて施した。
小さなくせ付けを施した1本の素線と小さなくせを施さない他の2本の素線には、撚りの集合点前に設けられた3本のくせ付けコーンピン間を通すことにより、撚りのためのスパイラル状のくせ付けを行ってあるが、押圧加工によって偏平形状にしやすくするため、コードがオープン構造となるようやや過大なくせを施した。
【0023】
ゴム浸入率は、各コードに5kgの引張り荷重をかけた状態でゴムに埋設して加硫した後、コードを抜き取り、その素線を引き剥がして素線全周を観察し、ゴム材と接触した面積率を表示した。
【0024】
耐疲労性は、各コードを複数本ゴムシートに埋め込み、このシートで3点曲げ疲労試験機により評価し、実験No.1のクローズド撚りコードを100として指数表示した。数値が大きいほど耐疲労性に優れる。
【0025】
また、撚りの安定性、コード取扱作業性および撚線加工性も合わせて評価した。
評価は、実験No.1のクローズド撚りコードと比較して、非常に劣るものを×、少し劣るものを△、差がないものを○として評価した。
【0026】
表1より明らかなように本発明のコードは評価項目を全て満足し、ゴム製品の補強材として最適である。
【0027】
【発明の効果】
本発明のタイヤ補強用スチールコードは上記構成であるため、コード短径側に大きな隙間が形成され、この隙間がコード内部へのゴムの浸入路となってゴムが充分に浸入する。したがって、セパレーション現象、錆によるコード強力の低下を防止できる。
また、撚り構造が安定しており、素線の片寄りが生じたり、撚りが不均一になったりすることがなく、低荷重での伸びも小さいため、取扱性および複合体シート成形時の作業性も優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスチールコードの実施の形態を示し、(a)は概略平面図、(b)は部分断面図である。
【図2】本発明のスチールコードの素線の状態を示し、(a)は素線2の概略説明図、(b)は素線1の概略説明図である。
【図3】従来のスチールコードの例を示し、(a)は概略平面図、(b)は部分断面図である。
【図4】従来のスチールコードの別の例を示し、(a)は概略平面図、(b)は部分断面図である。
【符号の説明】
1、2、4、6 素線
3、5、7 スチールコード
H、S 隙間
E 空洞部
L コード長手方向の中心軸
Claims (1)
- くせ付け装置上に設けた複数個のピン間に3本の素線のうちの1本の素線を通し、かつその素線を軸芯として上記くせ付け装置を回転させることによって撚り合わせのくせとは異なる小さなスパイラル状の小さなくせを当該素線に施し、小さなくせを施した1本の素線と小さなくせを施してない他の2本の素線を複数のくせ付けコーンピン間を通すことにより当該3本の素線に撚りのためのスパイラル状のくせを施し、上記3本の素線を同時に撚り合わせて断面円形のスチールコードを作製し、当該スチールコードに押圧加工を施すことにより得られる、3本の素線からなる1×3扁平オープン構造で、断面形状が長手方向に同一向きの楕円形状になしたスチールコードであって、短径側の面におけるコード長手方向の中心軸に対して、2本の素線1、1は相差を有する正弦波状であり、他の1本の素線2は押圧加工により前記小さなスパイラル状の小さなくせが伸長された台形波状であり、長径側の面においていずれか2本の素線が接触することを特徴とするタイヤ補強用スチールコード。
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