JP4436348B2 - 塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、塗装焼付硬化性能(BH)、常温遅時効性、成形性を兼ね備えた鋼板及びその製造方法に関するものである。本発明が係わる鋼板とは、自動車、家庭電気製品、建物などに使用されるものである。そして、表面処理をしない狭義の熱延鋼板と、防錆のために合金化溶融Znめっき、電気めっきなどの表面処理を施した広義の熱延鋼板を含むものである。
本発明による鋼板は、塗装焼付硬化性能を有する鋼板であるので、使用に当たっては、今までの鋼板より板厚を減少できる、すなわち、軽量化が可能となる。したがって、地球環境保全に寄与できるものと考えられる。さらに、本発明による鋼板は、衝突エネルギー吸収特性にも優れているので、自動車の安全性の向上にも寄与するものである。
溶鋼の真空脱ガス処理の最近の進歩により、極低炭素鋼の溶製が容易になった現在、良好な加工性を有する極低炭素鋼板の需要は益々増加しつつある。この中でも、例えば、特許文献1等に開示されているTiとNbを複合添加した極低炭素鋼板は、極めて良好な加工性を有し、塗装焼付硬化(BH)性を兼備し、溶融亜鉛めっき特性にも優れているので、重要な位置を占めつつある。
しかしながら、そのBH量は通常のBH鋼板のレベルを超えるものではなく、さらなるBH量を付与しようとすると、常温非時効性が確保できなくなるという欠点を有する。高BH性と常温遅時効性とを兼ね備えた鋼板に関する技術については、例えば、特許文献2がある。
これは、極低炭素鋼に多量のNbとB、さらにはTiを複合添加して、焼鈍後の組織をフェライト相と低温変態生成相との複合組織とし、高r値、高BH、高延性及び常温非時効性を兼ね備えた冷延鋼板を得るものである。
しかしながら、この技術には、以下、1)及び、2)のような実操業上の問題点があることが明らかとなった。
1)多量のNb、BさらにはTiを含有する成分の鋼では、α→γ変態点が低下するわけではなく、複合組織を得るためには、極めて高い温度の焼鈍が必須となり、連続焼鈍時に板破断等のトラブルの原因となる。
2)α+γの温度領域が極めて狭いため、板幅方向に組織が変化し、結果として材質が大きくばらついたり、数℃の焼鈍温度の変化によって、複合組織になる場合とならない場合があり、製造がきわめて不安定である。
また、特許文献3には、Nbを添加した極低炭素冷延鋼板において、焼鈍後の冷却速度を制御することによって粒界中の炭素濃度を高めて、高BHと常温遅時効性との両立が可能であることが示されている。しかしながら、これによっても高BHと常温遅時効性とのバランスは十分とは言えない。
さらに、従来のBH鋼板では、BHの熱処理条件が170℃−20分であれば所定のBH量を得ることができるが、この条件が、160℃−10分や150℃−10分ではBHが低下してしまうという問題がある。
特開昭59−31827号公報 特公平3−2224号公報 特開平7−300623号公報
上述のとおり、従来のBH鋼板は、安定的な製造が困難であったり、BH量を増加させると同時に常温遅時効性が失われるという欠点を有していた。また、塗装焼付の温度が現状の170℃に対して160℃ないし150℃のような低温になると、十分なBH量が得られないという問題がある。
本発明は、高BH性と常温遅時効性とを兼ね備え、また、BHの温度が低温となっても十分なBH量を有する熱延鋼板及びその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上記の目標を達成するために、鋭意、研究を遂行し、以下に述べるような従来にはない知見を得た。即ち、固溶Nの残存する鋼にCr、Mo、V等を添加することにより、高BHで常温遅時効性を有し、かつ、塗装焼付条件が低温短時間となっても、高BH性を確保することが可能であることを見いだしたものである。
本発明は、このような思想と新知見に基づいて構築された、従来にはない全く新しい熱延鋼板及びその製造方法であり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)質量%で、C=0.0001〜0.20%、Si=2.0%以下、Mn=3.0%以下、P=0.15%以下、S=0.015%以下、Al=0.20%以下、N=0.001〜0.10%、固溶N=0.0005〜0.004%、及び、0.52Al/N<10を満たすようにAlとN含有し、かつ、Cr、Mo、Vのうち1種又は2種以上を、それぞれ、Cr=2.5%以下、Mo=1.0%以下、V=0.1%以下、及び、(Cr+3.5Mo+39V)≧0.1を満たすように含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、2%引張変形後170℃にて20分間の熱処理を施すことによって評価されるBH170が45MPa以上で、かつ、2%引張変形後160℃にて10分間の熱処理を施すことによって評価されるBH160及び2%引張変形後150℃にて10分間の熱処理を施すことによって評価されるBH150がいずれも35MPa以上で、さらに、100℃にて1時間の熱処理を施した後の引張試験における降伏点伸びが0.6%以下であることを特徴とする塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
)質量%で、Caを0.0005〜0.01%含有することを特徴とする前記(1)記載の塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
)質量%で、Bを0.0001〜0.001%含有することを特徴とする前記(1)又は2)記載の塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
)質量%で、Nbを0.001〜0.03%含有することを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
)質量%で、Ti=0.0001〜0.10%、及び、N−0.29Ti>0.0005を満たすようにTiを含有することを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
)質量%で、Sn、Cu、Ni、Co、Zn、W、Zr及びMgの1種又は2種以上を、合計で0.001〜1.0%含有することを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
)前記(1)〜()のいずれかに記載の熱延鋼板に溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき又は電気亜鉛めっきを施したことを特徴とする塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた亜鉛めっき熱延鋼板。
)前記(1)〜()のいずれかに記載の化学成分を有するスラブを、(Ar3点−100)℃以上の温度で熱間圧延し、熱間圧延終了温度から600℃以下の温度までを平均冷却速度10℃/s以上で冷却し、次いで、550℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板の製造方法。
本発明により、高BH性と常温遅時効性とを兼ね備え、また、BHの温度が低温となっても、十分なBH量を有する熱延鋼板及び亜鉛めっき鋼板を得ることができた。
ここに、本発明において鋼組成及び製造条件を上述のように限定する理由についてさらに説明する。なお、%は質量%を意味する。
Cは、安価に強度を増加させる元素であるので、その添加量は狙いとする強度レベルに応じて変化するが、Cを0.0001%未満とするのは製鋼技術上困難で、コストアップとなるばかりか、溶接部の疲労特性が劣化するので、C添加量は、0.0001%を下限とする。
一方、C量が0.20%を超えると成形性の劣化を招いたり、溶接性を損なうだけでなく、本発明で重要な高BH性と常温非時効性を両立することが困難となるので、C添加量は、0.20%を上限とする。深絞り成形性を必要とする部材に本発明を適用する場合には、C量を0.0001〜0.0020%、又は、0.012〜0.024%の範囲とすることが好ましい。
固溶C量は0.0020%以下とすることが好ましい。本発明においては、主としてNによって、高BH性と常温遅時効性とを確保するので、固溶C量が多すぎると、常温遅時効性を確保することが困難となる。固溶Cは0.0010%未満とすることとが、より好ましい。固溶C量の調整は、全C量を上述の上限以下としてもよいし、巻取温度や、過時効処理条件によって、所定のレベルまで低減してもよい。
Siは、固溶体強化元素として強度を増加させる働きがある他、マルテンサイトやベイナイト、さらには残留γ等を含む組織を得るためにも有効である。Si添加量は、狙いとする強度レベルに応じて変化するが、2.0%超となると、プレス成形性が劣悪となったり、化成処理性の低下を招いたりするので、Si添加量は、2.0%を上限とする。
合金化溶融亜鉛めっきを施す場合には、めっき密着性の低下、合金化反応の遅延による生産性の低下などの問題が生ずるので、0.8%以下とする。下限は、特に設けないが、0.001%以下とすると、製造コストが高くなるので、0.001%が実質的な下限である。また、Al量の制御の観点で、Al脱酸を行うことが困難な場合には、Siで脱酸することもあり得、この場合には0.04%以上のSiが含有されることになる。
Mnは、固溶体強化元素として有用である他、MnSを形成し、熱延時のSによる耳割れを抑制したり、熱延板組織を微細にしたり、マルテンサイトやベイナイト、さらには、残留γ等を含む組織を得るためにも有効である。さらに、Mnは固溶Nに起因する常温時効を抑制する効果を有するので、0.3%以上を添加することが好ましい。
ただし、深絞り性を必要とする場合には、0.15%以下、さらには、0.10%未満とすることが好ましい。一方、添加量が3.0%を超えると、強度が高くなりすぎて延性が低下したり、亜鉛めっきの密着性が阻害されたりするので、Mn添加量は、3.0%を上限とする。
Pは、Siと同様に、安価に、強度を上昇する元素として知られており、強度を増加する必要がある場合には、さらに、積極的に添加する。また、Pは、熱延組織を微細にし、加工性を向上する効果も有する。
ただし、添加量が0.15%を超えると、スポット溶接後の疲労強度が劣悪となったり、降伏強度が増加し過ぎて、プレス時に面形状不良を引き起こす。さらに、連続溶融亜鉛めっき時に、合金化反応が極めて遅くなり、生産性が低下する。また、2次加工性も劣化する。したがって、P添加量の上限を0.15%とする。
Sは、0.015%超では、熱間割れの原因となったり、加工性を劣化させるので、S添加量は、0.015%を上限とする。
Alは、脱酸調製剤として使用してもよい。ただし、Alは、Nと結合しAlNを形成し、BH性を低下せしめるので、その添加は、製造技術上無理のない範囲で、必要最小限にとどめることが望ましい。
熱延鋼板の場合には、Alが、Nに対して原子比で1以上であっても、熱延後急冷すれば、固溶Nを確保することが可能であるので、Alの上限は0.20%でよい。Alが、0.05以下、さらには0.02%以下となれば、製造がより一層容易となる。
Nは、本発明において重要な元素である。即ち、本発明においては、主として、Nによって高BH性を達成する。したがって、0.001%以上の添加が必須である。一方で、Nが多すぎると、常温遅時効性を確保し難くなったり、加工性が劣化したりするので、0.10%を上限とする。好ましくは、0.002〜0.020%、より好ましくは、0.002〜0.008%である。
さらに、NはAlと結合してAlNを形成し易いので、BHに寄与するNを確保するために、0.52Al/Nを一定値以下とする必要がある。熱延鋼板においては、以下のように限定する。
0.52Al/Nが10以上となると、熱延後の冷却過程や巻取中に、容易にAlNが析出するので、0.52Al/Nは、10未満を上限とする。0.52Al/Nが10未満であれば、熱延後の冷却速度や巻取温度に配慮して、AlNの過度の析出を避けることができるので、高BH性を得ることができる。0.52Al/Nのより好ましい上限は5である。
Cr、Mo、Vは、本発明において重要な元素である。これらの元素の中から1種又は2種類以上を添加することが必須である。これらの元素の添加によって、初めて、高BH性と耐常温時効性とを両立させることが可能となる。
Nは、Cよりも拡散速度が大きいため、所定量以上のNが存在すると、耐常温時効性を確保することが困難であることが知られている。このため、自動車の外板パネル等、外観が重視される部材には、Nを活用したBH鋼板は適用されていない。
しかしながら、Cr、Mo、Vを積極的に添加することで、常温遅時効性を、BH性を損なうことなく得ることが可能であることを、新たに見いだした。これらの元素によって耐常温時効性が向上する機構は、必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
常温付近では、これらの元素とNとがペアやクラスターを形成し、Nの拡散を抑えるので、耐常温時効性が確保される。これに対し、150〜170℃での塗装焼付処理においては、Nが、これらのペアやクラスターから脱出し、転位を固着するので、高BH性が発現する。
Cr、Mo、Vの添加量の上限は、加工性の確保とコストの点から決定され、それぞれ、2.5%、1.0%、0.1%である。
Vは、添加量が多すぎると窒化物を形成し、固溶Nの確保が困難となるので、0.04%以下とするのが好ましい。耐常温時効性を確保するためには、Cr、Mo、Vを、(Cr+3.5Mo+39V)≧0.1を満たすように添加しなければならない。(Cr+3.5Mo+39V)≧0.4が、より好ましい範囲である。
また、耐常温時効性を確保するためには、Cr、Mo、Vを単独で添加するよりも、2種類以上を組み合わせて添加することが、より一層効果的である。
固溶Nは、合計で0.0005〜0.004%とする。ここで、固溶Nとは、単独でFe中に存在するNだけでなく、Cr、Mo、V、Mn、Si、Pなどの置換型固溶元素とペアやクラスターを形成するNも含む。
固溶N量は、水素気流中加熱抽出法によって求めるのがよい。この方法は試料を200〜500℃程度の温度域に加熱し、固溶Nと水素とを反応させてアンモニアとし、アンモニアを質量分析し、その分析値を換算して固溶N量を求めるものである。
さらに、固溶N量は、全N量から、AlN、NbN、VN、TiN、BN等などの化合物として存在するN量(抽出残査の化学分析から定量)を差し引いた値から求めることもできる。また、内部摩擦法やFIM(Field Ion Microscopy)によって求めてもよい。
固溶Nが0.0005%未満では、十分なBH性を得ることができない。また、固溶Nが0.004%を超えると、BH性は向上しても、常温遅時効性を得ることが困難となる。固溶N量は、より好ましくは、0.0012〜0.003%である。
Caは、脱酸元素として有用であるほか、硫化物の形態制御にも効果を奏する元素であるので、0.0005〜0.01%の範囲で添加してもよい。0.0005%未満では、添加効果が十分でなく、0.01%を超えて添加すると、加工性が劣化するので、Caの添加量は、0.0005〜0.01%の範囲とする。
Bは、2次加工脆化の防止に有効な元素であるので、必要に応じて、0.0001〜0.001%の範囲で添加する。添加量が0.0001%未満では添加効果がほとんどなく、0.001%を超えて添加しても、添加効果が飽和するだけでなく、BNが形成され易くなり、固溶Nを確保することが困難となる。0.0001〜0.0004%が、より望ましい範囲である。
Nbは、加工性の向上や高強度化、さらには組織の微細化と均一化に有効な元素であるので、必要に応じて、0.001〜0.03%の範囲で添加する。しかし、その添加量が0.001%未満では、添加効果が発現せず、一方、0.03%を超えて添加すると、NbNを形成し易くなり、固溶Nの確保が困難となる。0.001〜0.012%が、より好ましい範囲である。
Tiも、Nbと同様の効果を有する元素であるので、必要に応じて、0.0001〜0.10%の範囲で添加する。しかし、その添加量が0.0001%未満では、添加効果が発現せず、一方、0.10%を超えて添加すると、多量のNがTiNとして析出又は晶出して、固溶Nの確保が困難となる。0.001〜0.020%が好ましく、0.001〜0.012%がより好ましい範囲である。
さらに、Tiは、固溶Nを確保するために、N−0.29Ti>0.0005を満たす範囲内で添加しなければならない。より好ましくは、N−0.29Ti>0.0010である。
これらを主成分とする鋼に、Sn、Cu、Ni、Co、Zn、W、Zr及びMgの1種又は2種以上を、合計で0.001〜1.0%の範囲で含有しても構わない。しかしながら、ZrはZrNを形成するので、Zrの添加量は0.01%以下とすることが好ましい。次に、製造条件の限定理由について述べる。
熱間圧延に供するスラブは、特に、製造条件で限定されるものではない。即ち、連続鋳造スラブや薄スラブキャスターなどで製造したものであればよい。また、鋳造後に、直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直接圧延(CC−DR)のようなプロセスで製造したスラブも本発明に適合する。熱延鋼板を最終製品とする場合には、以下のように、製造条件を限定する必要がある。
即ち、熱延の仕上げ温度は、(Ar3−100)℃以上とする。(Ar3−100)℃未満では、加工性を確保するのが困難であったり、板厚精度の問題を生じたりする。Ar3点以上がより好ましい範囲である。熱延の仕上げ温度の上限は特に定めないが、結晶粒の粗大化を防止したり、熱延ロールを保護する観点から、1100℃以下とすることが好ましい。
なお、熱延の加熱温度は特に限定するものではないが、固溶Nを確保するためにAlNを溶解させる必要がある場合には、1200℃以上とすることが望ましい。
熱延後は、熱間圧延終了温度から少なくとも600℃までは、平均冷却速度が10℃/sとなるように冷却する必要がある。これは、AlNの析出を抑制するためである。
また、NがAlに対して過剰に添加されている場合、即ち、0.52Al/N<1の場合にも、この冷却速度は、10℃/s以上とすることが、高BH性と耐常温時効性とを確保するために重要であることを見いだした。冷却速度が30℃/s以上であれば、BH性と耐常温時効性に対して、より一層好ましい。冷却速度の上限は特に定めないが、生産性の観点から、200℃/s以下とすることが好ましい。
巻取温度は、AlNの析出を抑制するために、550℃以下とする。好ましくは、450℃以下である。本発明によって得られる熱延鋼板の組織は、フェライト又はベイナイトを主相とするが、両相が混在していても構わないし、これらに、マルテンサイト、オーステナイト、炭化物、窒化物が存在していてもよい。すなわち、要求特性に応じて組織を作り分ければよい。
熱延後は、必要に応じて酸洗し、その後、インライン又はオフラインで、圧下率10%以下のスキンパス、又は、圧下率40%程度までの冷間圧延を施しても構わない。
本発明によって得られる鋼板は、BH170が45MPa以上、BH160及びBH150が、いずれも35MPa以上である。BH170が60MPa以上、BH160及びBH150が50MPa以上が、より好ましい範囲である。BHの上限は特に限定しないが、BH170が140MPaを超え、また、BH160及びBH150が130MPaを超えると、耐常温時効性を確保することが困難となる。
なお、BH170とは、2%引張変形後170℃にて20分間の熱処理を施すことによって評価されるBH、BH160は2%引張変形後160℃にて10分間の熱処理を施すことによって評価されるBH、さらに、BH150は2%引張変形後150℃にて10分間の熱処理を施すことによって評価されるBHを表す。
耐常温時効性は、人工時効後の降伏点伸びによって評価される。本発明によって得られる鋼板は、100℃にて1時間熱処理後の引張試験における降伏点伸びが0.6%以下である。好ましくは、0.4%以下、さらに好ましくは、0.3%以下である。また、40℃にて70日間の熱処理後の降伏点伸びは、0.5%以下、好ましくは、0.3%以下、さらに好ましくは、0.2%以下である。
次に、本発明を実施例にて説明する。
<実施例1>
表1に示す組成を有する鋼を溶製し、表2に示す条件で熱間圧延を施した。このとき、加熱温度は全て1250℃とした。調質圧延率は1.0%とし、JIS5号引張試験片を採取して、BH及び人工時効後の降伏点伸びの測定を行った。得られた組織及び機械的性質を表2に示す。
これより明らかなとおり、本発明の化学成分を有する鋼を適正な条件で熱間圧延した場合には、高BH性と耐常温時効性とを両立させることができた。
Figure 0004436348
Figure 0004436348
<参考例1>
表1の鋼のうちA、C、D、E、F、I、N、O及びPの鋼を、スラブ加熱温度1250℃、仕上げ温度930℃、巻取り温度650℃で熱間圧延し、4.0mm厚の鋼帯とした。
酸洗後、80%の圧下率の冷間圧延を施し、0.8mm厚の冷延板とし、次いで、連続焼鈍設備にて、加熱速度10℃/s、最高到達温度800℃とする焼鈍を行い、その後、表3中に示す種々の冷却速度で冷却し、また、過時効処理温度も変化させた。
なお、過時効処理時間は、300秒(一定)とした。さらに、1.0%の圧下率の調質圧延をし、JIS5号引張試験片を採取し、BHと人工時効後の降伏点伸びの測定を行った。
結果を表3に示す。これより明らかなとおり、本発明の化学成分を有する鋼を適正な条件で焼鈍した場合には、高BH性と耐常温時効性とを両立させることができた。
Figure 0004436348
<参考例2>
表1の鋼のうちA及びDの鋼を、スラブ加熱温度1250℃、仕上げ温度930℃、巻取り温度650℃で熱間圧延し、4.0mm厚の鋼帯とした。
酸洗後、80%の圧下率の冷間圧延を施し0.8mm厚の冷延板とし、次いで、連続溶融亜鉛めっき設備にて、加熱速度10℃/s、最高到達温度800℃とする焼鈍を行い、その後、表4中に示す種々の冷却速度で冷却し、460℃の亜鉛浴に浸漬させた後、15℃/sにて500℃まで再加熱し、15秒間保持を行った。
さらに、0.8%の圧下率の調質圧延をし、JIS5号引張試験片を採取し、AI、BHと人工時効後の降伏点伸びの測定を行った。
結果を表4に示す。これより明らかなとおり、適正な条件で製造した場合には、高BH性と耐常温時効性とを両立させることができた。
Figure 0004436348

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C=0.0001〜0.20%、Si=2.0%以下、
    Mn=3.0%以下、 P=0.15%以下、
    S=0.015%以下、 Al=0.20%以下、
    N=0.001〜0.10%、固溶N=0.0005〜0.004%、及び、0.52Al/N<10を満たすようにAlとN含有し、かつ、Cr、Mo、Vのうち1種又は2種以上を、それぞれ、Cr=2.5%以下、Mo=1.0%以下、V=0.1%以下、及び、(Cr+3.5Mo+39V)≧0.1を満たすように含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、2%引張変形後170℃にて20分間の熱処理を施すことによって評価されるBH170が45MPa以上で、かつ、2%引張変形後160℃にて10分間の熱処理を施すことによって評価されるBH160及び2%引張変形後150℃にて10分間の熱処理を施すことによって評価されるBH150がいずれも35MPa以上で、さらに、100℃にて1時間の熱処理を施した後の引張試験における降伏点伸びが0.6%以下であることを特徴とする塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
  2. 質量%で、Caを0.0005〜0.01%含有することを特徴とする請求項1記載の塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
  3. 質量%で、Bを0.0001〜0.001%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
  4. 質量%で、Nbを0.001〜0.03%含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
  5. 質量%で、Ti=0.0001〜0.10%、及び、N−0.29Ti>0.0005を満たすようにTiを含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
  6. 質量%で、Sn、Cu、Ni、Co、Zn、W、Zr及びMgの1種又は2種以上を、合計で0.001〜1.0%含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の熱延鋼板に溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき又は電気亜鉛めっきを施したことを特徴とする塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた亜鉛めっき熱延鋼板。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化学成分を有するスラブを、(Ar3点−100)℃以上の温度で熱間圧延し、熱間圧延終了温度から600℃以下の温度までを平均冷却速度10℃/s以上で冷却し、次いで、550℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする塗装焼付硬化性能と耐常温時効性に優れた熱延鋼板の製造方法。
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