JP4434393B2 - X線ct装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線を媒介として被検体の断層画像を撮影するX線CT装置に係り、特に、X線発生装置のX線管に供給する電力を制御する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、X線CT装置のX線発生装置は、小型化、軽量化、大電力化の要請に伴い、従来のインバータを一台用いる方式に代えて、複数のインバータを用いて高電力をX線管に供給することが多くなってきている。
【0003】
また、X線管では、供給された電力に応じて加速・集束させた熱電子を陽極フィラメントに衝突させることによりX線を曝射するようになっており、X線発生装置は、X線管に供給する電力、すなわち電圧(以下「管電圧」という)と電流(以下「管電流」という)とを調整することで曝射するX線のエネルギー量を制御するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようなX線発生装置においては、複数のインバータのうちいずれかのインバータが何らかの原因により故障した場合には、出力が全く不可能になるか最大定格を保証できなくなることからX線の曝射を停止するようになっていた。
【0005】
このため、断層画像の撮影が途中で中断されてしまうばかりでなく、故障したインバータの修理が完了するまでの暫くの期間、断層画像の撮影が不可能となる問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一部のインバータが故障した場合でもX線発生装置によるX線の曝射を継続し得るX線CT装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の本発明に係るX線CT装置は、複数のインバータを同時に動作させてX線管に電力を供給しX線を曝射させるX線発生装置を有するX線CT装置において、インバータの故障の発生を検出する故障検出手段と、故障したインバータが供給していた電力を正常なインバータに補償させる電力補償手段と、を有することを要旨とする。
【0008】
本発明にあっては、X線管に電力を供給するインバータの故障の発生を検出し、故障したインバータが供給していた電力を他の正常に動作しているインバータに補償させるようにしたことで、一部のインバータが故障した場合でもX線の曝射を継続できるようにしている。
【0009】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載のX線CT装置において、正常なインバータの数に基づいて供給可能な電力を算出する算出手段と、X線の曝射を許可するか否かの判断を設定する設定手段とを有し、前記設定手段により許可の設定がされた場合には、X線管への電力の供給を続行させることを要旨とする。
【0010】
本発明にあっては、正常なインバータの数に基づいて供給可能な電力を算出して出力設定値と比較をし、X線の曝射を許可するか否かの判断をして、許可の設定がされた場合にはX線管への電力の供給をそのまま続行するようにしている。また、供給可能な電力が出力設定値を下回った場合でも出力設定値の再設定によりX線の曝射を継続できるようにしている。
【0011】
なお、X線の曝射の継続を許可するか否かの判断は、操作者が行ってもよいし、自動的に行うようにしてもよい。
【0012】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は2記載のX線CT装置において、故障したインバータに関する情報を保存する保存手段を有することを要旨とする。
【0013】
本発明にあっては、故障したインバータに関する情報を保存しておくことで、故障したインバータの修理に利用できるようにしている。例えば、当該情報をコンソールの表示部へ表示したり、ネットワークを介して修理技師(サービスエンジニア)に通知すること等を行うようにする。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本実施の形態に係るX線CT装置の概略の構成と動作について簡単に説明する。当該X線CT装置は、コンソールと架台を有する構成である。コンソールは、操作者が指示を入力するための操作パネルや、架台内部の機構部等の動作を制御する制御部、架台から伝送されてきたデータを処理するデータ処理部、断層画像やメッセージ等を表示する表示パネル等を有する構成である。一方、架台は、X線発生装置とX線検出器とが対向して設置された架台回転部と、X線発生装置とX線検出器との間に被検体を配置するための寝台と、コンソールからの指示に従って架台回転部を回転させる機構部等を有する構成である。
【0015】
当該X線CT装置は、操作者がコンソールを用いて被検体の断層画像の撮影を指示すると、機構部により架台回転部を高速に回転させるとともに、X線発生装置にX線を曝射させ、被検体を透過したX線をX線検出器で検出して透過データを得る。そして、透過データをコンソールに伝送し、データ処理部で所定の画像再構成処理を行うことにより、被検体の断層画像を得るものである。
【0016】
以下、本実施の形態の特徴であるX線発生装置について図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るX線発生装置の概略の構成を示すブロック図である。同図のX線発生装置10は、コンソール11からの指示に従ってインバータ1a乃至1nを制御するインバータ制御回路5と、インバータ制御回路5の指示に従ってAC−DCコンバータ7から供給されてきた直流電力を所定の周波数の交流電力に変換する複数のインバータ1a乃至1nと、インバータ1a乃至1nがそれぞれ出力する電圧を各インバータに対応する高電圧トランスにより変圧して高電圧を発生する高電圧発生器2と、高電圧発生器2が発生した高電圧の供給を受けてフィラメント8から熱電子を高速に放出して陽極ターゲット9に衝突させることによりX線を曝射するX線管3と、高電圧発生器2が発生した高電圧を直列に接続した抵抗4aと4bとの抵抗比で分圧して出力するデバイダ4と、デバイダ4が出力した電圧をデジタル信号に変換してインバータ制御回路5へ伝送するA/Dコンバータ6を有する構成である。
【0018】
コンソール10は、操作者が操作パネルを用いて被検体の撮影開始を指示すると、被検体の撮影部位の大きさ、厚さ、架台の回転速度等に基づいて、X線管3に供給する管電圧、管電流を設定する。そして、この設定値の他、撮影開始の指示やX線を曝射するタイミング等をインバータ制御回路5へ伝送する。
【0019】
インバータ制御回路5は、コンソール10から伝送されてきた撮影開始の指示に従って、各インバータに別個に接続された駆動信号線61を介して各インバータをそれぞれ駆動するとともに、X線管3に供給する電力の設定値に基づいて各インバータに供給させる電力を算出し、コンソールからの曝射タイミングに従って各インバータに電力を供給させる。また、A/Dコンバータ6の出力結果に基づいて負帰還制御を行うことにより、X線管3に供給する電力が安定して設定値を維持するようにする。また、各インバータに別個に接続された故障検出信号線62を介して各インバータの故障の発生を検出するようになっている。
【0020】
図2は、各インバータの内部の構成を示す回路図である。直流電圧源21の正極性端子がヒューズ22を介して抵抗R1の一方の端子に接続され、抵抗R1の他方の端子がフォトカプラ23に接続されている。フォトカプラ23は、フォトダイオードPD1のアノード端子が抵抗R1に接続されており、正常時にフォトダイオードPD1が導通して発光した光信号をフォトトランジスタPT1が受信して故障検出信号線62に電流を流すようになっている。抵抗R1に接続されたヒューズ22の端子には、さらにトランジスタT1とT3のコレクタ端子がそれぞれ接続され、トランジスタT1のエミッタ端子にはトランジスタT2コレクタ端子が接続され、トランジスタT3のエミッタ端子にはトランジスタT4のコレクタ端子が接続されている。トランジスタT2、T4のエミッタ端子、およびフォトダイオードPD1のカソード端子は直流電圧源21の負極性端子に接続されている。駆動信号線61はバス線となっており、トランジスタT1乃至T4のそれぞれのベース端子に接続され、各トランジスタに独立した駆動信号を供給するようになっている。また、トランジスタT1のエミッタ端子に接続された接続線63は高電圧トランスの一次側トランスの一方の端子に接続され、一次側トランスの他方の端子は、接続線64を介してトランジスタT3のエミッタ端子に接続されている。
【0021】
このようなインバータを作動させる場合には、まず、トランジスタT1とT4を駆動して導通状態とし、トランジスタT2とT3を非導通状態にする。この場合、トランジスタT1と接続線63とを介して高電圧トランスに電流が流れ、その電流は接続線64を介してトランジスタT4に流れる。次に、トランジスタT2とT3を導通状態とし、トランジスタT1とT4を非導通状態とする。この場合には、トランジスタT3と接続線64を介して高電圧トランスに電流が流れ、この電流が接続線63を介してトランジスタT2に流れる。このようにして高電圧トランスに交流電力を供給するようになっている。
【0022】
同図のインバータが故障する原因としては、トランジスタT1乃至T4のいずれかかがショートすることが殆どである。かかる場合には、大電流が流れてヒューズ22が溶解し、フォトダイオードPD1が非導通状態となるので、フォトトランジスタPT1も非導通状態となり、故障検出信号線62に電流が流れなくなる。これをインバータ制御回路5が認識することにより、インバータの故障の発生を検出するようになっている。
【0023】
図3は、高電圧発生回路2の内部の構成を示す回路図である。同図の高電圧発生回路2は、インバータ1a乃至1nに対応する高電圧トランス3a乃至3nを有しており、各インバータが出力した電圧を変圧するようになっている。この高電圧トランス3a乃至3nのそれぞれの2次側トランスは、整流器31に接続され、複数のダイオードを介して直列に接続されており、最大で150kV程度の直流高電圧を発生できるようになっている。また、それぞれの2次側のトランスと整流器31とを接続する接続線には共振用コンデンサ5a乃至5nがそれぞれ挿入されており、効率を高めている。
【0024】
次に、このようなX線発生装置10において、インバータ1a乃至1nのいずれかが故障した場合の処理について説明する。
【0025】
通常、コンソールで設定した電力をX線管3に供給する際に、各インバータが最大定格で電力を供給しなければならないことは殆どなく、大抵の場合はある程度の余裕を有している。インバータの最大定格には、電圧・電流・電力の3つの要素があるが、この最大定格を超えない範囲であれば、インバータの負担を増加させることは可能である。
【0026】
そこで、インバータ制御回路5では、まず、管電圧、管電流、電力の設定値と、各インバータの最大定格とに基づいて、各インバータを最大定格で使用した場合のインバータの必要最小数量を求める。
【0027】
そして、一部のインバータが故障した場合に、正常なインバータの数が必要最小数量よりも多い場合には、故障したインバータが供給していた電力を他の正常に動作しているインバータに補償させるようにする。具体的には、故障したインバータが出力していた電圧を他の正常なインバータの数で割った電圧を、正常なインバータに出力させるようにする。このようにして管電圧がインバータの故障前の値に戻ると、高電圧トランスのそれぞれの2次側トランスが整流器31を介して直列に接続されていることから、管電流もインバータの故障前の値に戻り、結果として電力が復帰することとなる。
【0028】
図4は、X線管3に供給される管電圧の波形を示す図である。横軸は時間[s]、縦軸は管電圧[V]である。管電圧は時間0[s]で供給され始め、一定期間経過後に設定値に安定するようになっている。
【0029】
管電圧が安定した後、いずれかのインバータに故障が発生すると、インバータ制御回路5は、前述したように故障検出信号線62に電流が流れなくなったことを認識することで、故障の発生を検出する。そして、故障したインバータを停止させるとともに、前述したように故障したインバータが出力していた電圧を他の正常なインバータに出力させる。これにより、同図に示す波形のように、インバータの故障が発生した時点で管電圧は一時的に低下するが、一定期間の経過後に元の電圧値に復帰することとなる。
【0030】
インバータが故障してから管電圧が復帰するまでの期間をTとすると、この期間内においては、X線の曝射量は一定の状態ではないので、全てのインバータを一時的に停止してX線の曝射を停止するようにしてもよいし、継続するようにしてもよい。
【0031】
また、インバータ制御回路5では、故障したインバータが何番目のものであるか等の当該インバータに関する情報を所定の記憶装置に記憶させて保存しておくようにする。これにより、この情報をコンソールの表示パネルに適宜表示させたり、あるいは、ネットワークを介して修理技師(サービスエンジニア)に通報することができ、当該情報を故障したインバータの修理に利用することができる。
【0032】
その一方、正常なインバータの数が必要最小数量よりも少ない場合には、インバータ制御回路5は、正常なインバータの数に基づいて供給可能な管電圧と管電流を算出し、この算出結果をコンソール11の表示パネルに表示させる。操作者は、かかる条件下でX線の曝射を許可するか否かの判断をコンソール11を用いて設定する。操作者は、許可の設定をする場合には、当該条件を満足するように管電圧もしくは管電流の少なくとも一方を低く再設定するようにする。
【0033】
インバータ制御回路5では、許可の設定がされた場合には、正常なインバータに可能なだけ電力を供給させ、許可しない設定がされた場合には、全てのインバータの駆動を停止してX線管3への電力の供給を停止する。
【0034】
許可の設定がされ、X線管3に供給される電力が低下した状態では、X線管3が曝射するX線量が減少する。このため、X線検出器で検出するX線量も減少し、S/N比が低下して断層画像の画質に劣化が生じることとなる。そこで、かかる場合には、架台回転部の回転速度を遅くしてX線検出器によるX線の検出時間を長くすることで、検出されるX線量を相対的に増加させて画質の劣化を防止するようにしてもよい。
【0035】
したがって、本実施の形態によれば、インバータ1a乃至1nの故障の発生をインバータ制御回路5により検出し、故障したインバータが供給していた電力を他の正常に動作しているインバータに補償させるようにしたことで、一部のインバータが故障した場合でもX線の曝射を継続させることができる。
【0036】
また、正常に動作するインバータの数に基づいて供給可能な電力を算出し、X線の曝射を許可するか否かの判断を設定して、許可の設定がされた場合にはX線管3への電力の供給を続行するようにしたことで、供給可能な電力が設定値を下回った場合でもX線の曝射を継続させることができる。
【0037】
なお、本実施の形態においては、正常なインバータの数が必要最小数量よりも少ない場合には、X線の曝射を許可するか否かを操作者が判断することとしたが、コンソール11やインバータ制御回路5等に判断させるようにしてもよい。
【0038】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1記載の本発明によれば、X線管に電力を供給するインバータの故障の発生を検出し、故障したインバータが供給していた電力を他の正常に動作しているインバータに補償させるようにしたことで、一部のインバータが故障した場合でもX線の曝射を継続させることができる。
【0039】
請求項2記載の本発明によれば、正常なインバータの数に基づいて供給可能な電力を算出し、X線の曝射を許可するか否かの判断を設定して、許可の設定がされた場合にはX線管への電力の供給を続行するようにしたことで、供給可能な電力が設定値を下回った場合でもX線の曝射を継続させることができる。
【0040】
請求項3記載の本発明によれば、故障したインバータに関する情報を保存しておくことで、故障したインバータの修理に利用することができる。例えば、当該情報をコンソールの表示部へ表示したり、ネットワークを介してサービスエンジニアに通知すること等を行うようにする。
【図面の簡単な説明】
【図1】X線発生装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】各インバータの内部の構成を示す回路図である。
【図3】高電圧発生回路の内部の構成を示す回路図である。
【図4】X線管3に供給される管電圧の波形を示す図である。
【符号の説明】
1a〜1n…インバータ
2…高電圧発生器
3…X線管
4…デバイダ
4a,4b…抵抗
5…インバータ制御回路
6…A/Dコンバータ
7…AC−DCコンバータ
8…フィラメント
9…陽極ターゲット
21…直流電圧源
22…ヒューズ
23…フォトカプラ
PD1…フォトダイオード
PT1…フォトトランジスタ
T1,T2,T3,T4…トランジスタ
R1…抵抗
3a〜3n…高電圧トランス
5a〜5n…共振用コンデンサ
31…整流器
61…駆動信号線
62…故障検出信号線
63,64…接続線
Claims (3)
- 複数のインバータを同時に動作させてX線管に電力を供給しX線を曝射させるX線発生装置を有するX線CT装置において、
インバータの故障の発生を検出する故障検出手段と、
故障したインバータが供給していた電力を正常なインバータに補償させる電力補償手段と、
を有することを特徴とするX線CT装置。 - 正常なインバータの数に基づいて供給可能な電力を算出する算出手段と、
X線の曝射を許可するか否かの判断を設定する設定手段とを有し、
前記設定手段により許可の設定がされた場合には、X線管への電力の供給を続行させることを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。 - 故障したインバータに関する情報を保存する保存手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載のX線CT装置。
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