JP4433535B2 - 発電型電気自動車の電池制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばエンジンと充放電可能な電池によって駆動する電気モータを組み合わせたハイブリッド自動車のように発電手段を搭載する発電型電気自動車における電池制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃費向上等の目的のため、エンジンと電池によって駆動するモータとを装備するHV(ハイブリッド)自動車が注目を集めている。HV自動車に搭載される電池は、主に、加速時等の高負荷運転時には電池から放電され、減速時や一定速度走行等の低負荷運転時には電池が充電される。このような電池の充放電を安定に行うにはSOC(State Of Charge/充電状態)を所定の一定値でバランスさせることが必要であるため、SOCの検出は電池制御において不可欠の技術となっている。
【0003】
電池のSOC(又は残存容量)を検出する方法としては、充放電電流の積算による方法(以下、電流積算方式ともいう)や、電池電圧に基づいてSOCを推定する方法(以下、電圧推定方式ともいう)が知られている。
【0004】
特開平10ー51906号公報は、中SOC領域において電圧変化が小さいことに鑑み、SOCの常用(許容)上限値或いは常用(許容)下限値における電流・電圧マップだけを予め記憶しておき、検出した電流・電圧がこのマップの条件に合致していれば電流積算で求めているSOCをリセットする。そして、推定SOCがあらかじめ設定されているSOCの常用上限値に達したら電池を放電する。その後、推定SOCがあらかじめ設定されているSOCの常用下限値に達したら電池を充電する充放電サイクルを強制的に繰り返す電池制御を提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、電流積算方式は、電池の充放電電流を逐次検出してこれをSOCの初期値に無限に累算(積算)する方法であるため、次第に積算処理誤差が累積してしまい、正確な検出値が得られいくいという問題があった。
【0006】
更に、上記従来公報では、電圧−容量特性の傾斜が大きく、比較的高精度に検出可能な高SOC値の場合と低SOC値の場合とで電圧・電流データに基づいてSOC(容量)検出を行い、その結果に基づいて、電池状態を高SOC値と低SOC値との間を強制的に往復させねばならないため、低SOC値側に強制シフトさせた場合には必要な電力が電池から得られにくくなり、高SOC値側に強制シフトさせた場合には回生電力を電池に貯蔵しにくくなり、電池の使い勝手が悪化し、走行機能の低下や燃費の悪化が問題となる。
【0007】
一方、電圧推定方式は、上記累積誤差をもたないものの、たとえばニッケル水素合金電池のように充電分極作用が大きく、電池電圧とSOCとの関係がその充放電履歴により大きく変化してしまうタイプの電池(大ヒステリシス電池ともいう)では、電池電圧とSOCとの関係、あるいは電池電圧と電流と容量との関係をマップとしてあらかじめ記憶していても、充放電履歴が異なるため、電圧データ又は電圧・電流データをこのマップに入れて容量を推定しても、期待した精度が得られないという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、精度及び使い勝手が優れた発電型電気自動車の電池制御方法を提供することをその目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための請求項1記載の発電型電気自動車の残存容量推定方法によれば、測定した電池の測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値または所定の基準電力値における電池電圧である基準状態電池電圧を演算し、演算した基準状態電池電圧が所定の目標電圧値Vcとなるように電池の充放電を制御する。
【0010】
更に詳しく説明すると、電気自動車の電池(走行電力蓄電用電池)では充放電電流状態あるいは充放電電力状態は刻々と変化する使用モードをもつ。一方、電池電圧は、電池の内部抵抗の影響によりその電流の大きさによって変動する。また、ニッケル水素電池のような大ヒステリシス電池では充電分極作用などの影響により放電中の起電圧と充電中の起電圧とが異なる。したがって、単に電池電圧と容量とのマップに測定した電池電圧データを導入するだけでは正確な容量推定が困難である。そこで、電池電圧と電流と容量とのマップを記憶し、これに電池電圧データと電流データデータとを導入して容量を推定することが考えられるが、この場合には、三次元マップを記憶しなければならずメモリの大規模化を招く。
【0011】
この問題を解決するために、本発明では、得られた電池電圧データと電流データを一度、基準電流状態又は基準電力状態における電池電圧データである基準状態電池電圧に換算する。そして、この基準電流値または基準電力値における常用容量範囲に対応する所定の目標電圧値Vcを設定しておく。
【0012】
このようにすれば、大規模メモリを必要とすることなく、この基準状態電池電圧と目標電圧値Vcとの差を解消するように充放電することにより、電流変動にかかわらず、電池の容量を常にこの目標電圧値Vcに対応する容量範囲に保持することができる。
【0013】
請求項1記載の構成によれば、発電型電気自動車の電池制御方法において更に、電池の略満充電状態からの放電時の容量と基準状態電池電圧との関係である容量ー電圧特性を示す放電時最小電圧特性線上の所定の常用最小容量値をPとし、かつ、電池の略完全放電状態からの充電時の容量と基準状態電池電圧との関係である容量ー電圧特性を示す充電時最大電圧特性線上の点、若しくは、Pから所定容量だけ充電した値である所定の常用最大容量値をQとする場合に、目標電圧値Vcを、常用最小容量値P及び常用最大容量値Qに個別に対応する常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの間の値とし、充放電を、常用最小容量値P及び常用最大容量値Qの間で行う。
【0014】
このようにすれば、充放電履歴による電池電圧と容量との関係の変動を低減して、容量を簡単かつ精度よく上記PーQの範囲内に維持して、過充電や過放電を回避することができる。
【0015】
更に詳しく説明する。
【0016】
電気自動車の電池(走行電力蓄電用電池)では充放電電流状態あるいは充放電電力状態は刻々と変化する使用モードをもつ。一方、電池電圧は、ニッケル水素電池のような大ヒステリシス電池では充電分極作用などの影響により放電中の起電圧と充電中の起電圧とが異なるとともに、放電電圧ー容量特性及び充電電圧ー容量特性が大きく変動する。充電分極の大きさは、過去の充放電履歴に依存するので、結局、電池電圧は、電流のみならず過去の充放電履歴(過去の充放電電流または充放電電力の変動実績)に大きく影響される。
【0017】
この問題に対し、本発明者らは多数の実験の結果、次の知見を得た。
【0018】
基準電流または基準電力の充放電状態(すなわち、電流変動による電池電圧降下の変動の影響を無視できる充放電状態)では、基準状態電池電圧(電池電圧)に対する容量のばらつきは、後述するように所定範囲に収束させることができる。
【0019】
この容量のばらつきの収束を実現するには、略満充電状態(ここでは95%以上の容量状態をいう)からの放電時の容量ー電圧特性(放電時最小電圧特性線)上の常用最小容量値Pと、電池の略完全放電状態(ここでは5%未満の容量状態をいう)からの充電時の容量ー電圧特性(充電時最大電圧特性線)上の所定の常用最大容量値Qとの間で充放電を行えばよい。具体的な制御としてはたとえば、基準状態電池電圧を、P、Qに個別に対応する常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの間に保持する電圧制御を行う。なお、充放電履歴の開始は、上記略満充電状態乃至上記略完全放電状態から行う。
【0020】
このようにすれば、充放電状態の変動の繰り返しにかかわらず、容量を常用最小容量値P及び常用最大容量値Qの間に維持することができる。
【0021】
これは、大ヒステリシス電池においても、基準状態電池電圧とそれに対応する容量は、常用最小容量値Pとそれに放電時最小電圧特性線上で対応する常用最小電圧値Vpとで決定される座標点と、常用最大容量値Qとそれに充電時最大電圧特性線上で対応する常用最大電圧値Vqとで決定される座標点とを両先端とする三日月形状の領域内に存在するという知見に基づくものである。
【0022】
更に好適には、請求項2記載のように、基準状態電池電圧を、上記常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの間の所定の目標電圧値Vcに収束させる制御を行う。このようにすれば、充放電状態の変動の繰り返しにかかわらず、容量を常用最小容量値Pと常用最大容量値Qの間の一層狭い領域に保持することができる。
【0023】
特に、目標電圧値Vcを、常用最大電圧値Vqと常用最小電圧値Vpの間の中央値近傍(中央値の上下にそれぞれ20%の範囲)の値に設定することにより、基準状態電池電圧を目標電圧値Vcに収束させる充放電制御を行うだけで、容量を常用最小容量値Pと常用最大容量値Qとの間の中央値近傍の領域に維持することが可能となる。
【0024】
請求項3記載の構成によれば請求項1又は2記載の発電型電気自動車の電池制御方法において更に、上述の基準状態電池電圧による容量値収束技術を電流積算容量による充放電制御技術と組み合わせるので、後者で容量推定を行うとともに、その累積誤差を簡単にキャンセルすることができる。
【0025】
更に詳しく説明すれば、電流積算容量が所定の参照容量値に一致する時点にて、この参照容量値に対応する所定の参照電圧値(正確には所定の基準状態電池電圧値)と実際の基準状態電池電圧との差を算出し、この差を電流積算誤差と見なして、この差を解消するべく補正充放電を行う。当然、この差は電流積算誤差と見なしているので、この補正充放電は電流積算容量の算出のための電流積算をしない。
【0026】
これにより、電流積算誤差を精度よくキャンセルして次の電流積算容量算出に進むことができる。
【0027】
請求項4記載の構成によれば請求項3記載の発電型電気自動車の電池制御方法において更に、参照電圧値は前記目標電圧値Vcとされ、参照容量値は、常用最小容量値Pと前記常用最大容量値Qとの間の中央値近傍の所定の目標容量値とされる。そして、電流積算容量を目標容量値に収束させる充放電制御を行う。
【0028】
すなわち、電流積算容量を目標容量値に収束させる充放電制御を行うとともに、電流積算容量が目標容量値に達したら、その時点の基準状態電池電圧と目標電圧値Vcとの差をキャンセルする補正充放電制御を行う。
【0029】
このようにすれば、上記電流積算誤差の補正のための充放電動作がそのまま容量を目標容量に収束させる動作となるので、一石二鳥となる。
【0030】
請求項5記載の構成によれば請求項1乃至4のいずれか記載の発電型電気自動車の電池制御方法において更に、電池はニッケル水素電池とする。
【0031】
このようにすれば、大ヒステリシス特性を有するニッケル水素電池を精度よく所定の常用容量範囲で運用することができる。
【0032】
請求項6記載の構成によれば請求項2記載の発電型電気自動車の電池制御方法において更に、初期容量値に充放電電流積算分を累算して電池の電流積算による容量である電流積算容量を算出し、測定した電池の測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値又は所定の基準電力値における電池電圧である基準状態電池電圧を演算し、常用最大容量値Qと常用最小容量値Pの間の中央値近傍の値である所定の目標容量値及び目標電圧値とで規定される中央座標点Aを設定し、基準状態電池電圧と容量との二次元平面上にてメモリ効果がない場合に常用最大容量値Qから常用最小容量値Pへ放電する場合の電圧特性線43を設定し、動作点が電圧特性線43に達するか又は低電圧側に逸脱する場合に、動作点を前記中央座標点Aに復帰させる中央復帰処理を行う。
【0033】
このようにすれば、メモリ効果が大きくなったり又は充電分極がなんらかの原因で解消したりすることにより特異的に電圧低下現象が生じたかどうかを、上述のように動作点が電圧特性線43に達するか又は低電圧側に逸脱したことにより判定することができるので、逸脱した場合にには充放電処理すなわちここでいう中央復帰処理を行って動作点を再度、上記目標容量値及び目標電圧値とで規定される中央座標点Aの近傍に復帰させることができる。
【0034】
請求項7記載の構成によれば請求項6記載の発電型電気自動車の電池制御方法において更に、動作点が電圧特性線43よりも低電圧側に所定電圧幅以上逸脱したかどうかを判断し、逸脱した場合には大メモリ効果が生じていると判断して所定SOC値以下までの深放電によりメモリ効果解消と、その後の前記中央復帰処理とを要求するので、基準状態電池電圧の低下が充電分極解消のためか、それともメモリ効果増大のためかを判定することができ、メモリ降下増大による場合にだけ深放電とその後の動作点の中央復帰処理により、動作点を元の中央座標点A近傍への復帰を行うことができる。
【0035】
請求項8記載の構成によれば請求項6又は7記載の発電型電気自動車の電池制御方法において更に、この中央復帰処理は、電圧特性線43又は電圧特性線43よりも低電圧側に逸脱した際の最小SOCの座標Cと目標容量値との間の容量差Xを算出し、次に容量差Xに増倍充電係数α(1より大きく2より小さい値)を掛けて増倍充電容量X’を算出し、次に座標Cから増倍充電容量X’だけ充電し、次に目標容量値近傍まで放電する処理で構成される。
【0036】
このようにすれば、動作点を良好に中央座標点A近傍に復帰させることができる。
【0037】
請求項9記載の構成によれば請求項6又は7記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、この中央復帰処理は、電圧特性線43又は電圧特性線43よりも低電圧側に逸脱した際の最小SOCの座標Gと目標容量値との間の容量差Xを算出し、次に容量差Xだけ充電してこの時の基準状態電池電圧VM’を目標電圧値と書き直す処理で構成される。
【0038】
このようにすれば、動作点を良好に中央座標点A近傍に復帰させることができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施態様を以下の実施例を参照して説明する。
【0040】
なお、発電型電気自動車としては、上述のハイブリッド車の他、燃料電池及びその発電電力と負荷の要求電力とのアンバランスを吸収する電池とをもつ燃料電池車などがある。
【0041】
【実施例】
本発明の電池制御方法を用いたパラレルハイブリッド自動車の構成例を図1に示す。
【0042】
11はエンジン、12はエンジン11の駆動力の一部で発電する交流形式の発電機、13は発電機12から出力される交流電力を直流電力に変換するインバータ、14はニッケル水素電池で構成した組み電池からなる電池装置(単に電池ともいう)である。エンジン11の出力は、トルク分配機15、ギヤ17を介して、車輪18に伝えられる。インバータ13は、発電機12及び電池14から給電されてモータ16を駆動し、あるいはモータ16で回生された電力で電池14を充電する。
【0043】
図2は、図1に示したハイブリッド車の電池14を示すブロック図である。
【0044】
電池14において、21は電池パック、22は互いに直列接続されて電池パック22を構成する多数の電池モジュール、23は温度センサ、24は各電池モジュール22の電圧を検出する検出回路、25は温度検出回路、26は電流検出回路、27は、電圧検出回路24、温度検出回路25、電流検出回路26からの信号に基づいて電池14の容量を検出するための電池制御マイコン(電池コントローラともいう)である。28は、電池14からのSOC信号などに基づいて電池パック21の充放電を実際に制御する車両コントローラであり、車両コントローラ28は、電池制御マイコン27や車両各部からの入力情報に基づいて、エンジン11、発電機12、インバータ16を制御する。
【0045】
この実施例で用いたニッケル水素電池(単セル)の車両実走行時の電圧−電流特性を図3に示す。
【0046】
図3中、特性線Lは、所定の定電力(電圧×電流=一定)曲線で、この実施例では、このハイブリッド自動車システムにおける電池パック21の最大放電電力値を電池1セル当たりに換算して示したものである。
【0047】
図3中、破線31は電池容量が満充電状態である場合の電流、電圧特性であり、破線32は、電池容量が、最大放電電力値で放電する場合に電池電圧が最低動作保障電圧V_minに達する値である場合の電流、電圧特性を示す。このように電流、電圧特性は満充電付近では特性31に示すように電圧が高く、電池容量が低下すると特性32のように電圧が低下する。
【0048】
ここで、特性31では電流=0Aの座標点が容量P_max’、電圧V_max’の点で、特性32では電流=0Aの座標点が容量P_min’,電圧V_min’の点である。このように、走行中の電流、電圧特性を測定し、予め定めた定電流値(例えば電流=0A)となるように電圧値を換算してこれを基準状態電池電圧とし、これらの容量値と基準状態電池電圧値とを用いれば、電流変化における電圧変動の影響を取り除くことができる。
【0049】
或いは、満充電付近の電流、電圧特性31では、所定の定電力放電時(ここでは最大放電電力値時)の点がP_max、電圧V_maxで、特性32では上記定電力放電時の点がP_min,電圧V_minの点である。このように、走行中の電流、電圧特性を測定し、予め定めた定電力値となるように電圧値を換算してこれを基準状態電池電圧とし、これらの容量値と基準状態電池電圧値とを用いれば、電力変化における電圧変動の影響を取り除くことができる。
【0050】
このようにして、所定の定電力時(あるいは定電流時)における基準状態電池電圧と容量との関係を求めることができる。
【0051】
定電力放電時(ここでは最大放電電力値時)の基準状態電池電圧と容量との関係を図4に示し、定電流時の一例として電流=0A時の基準状態電池電圧(開放電圧)と容量との関係を図5に示す。両者はほとんど同じであるので、以下、図4の場合について説明する。
【0052】
図4において、41はSOC100%の状態から放電傾向にあるときに測定した電圧特性(放電時最小電圧特性線)、42は完全放電に近い状態から充電傾向にあるときに測定した電圧特性(充電時最大電圧特性線)である。41と42の特性は大きくずれており、放電傾向と充電傾向の特性には大きなヒステリシスが生じることがわかる。
【0053】
また、43はSOC80%の座標P_Hi(常用最大容量値Q)点からSOC40%の座標P_Lo(常用最小容量値P)点まで放電したときの電圧特性線、44はSOC40%の座標P_Lo点からSOC80%の座標P_Hi点まで充電したときの電圧特性線である。電圧特性線43と44の特性で囲まれたヒステリシスは、電圧特性線41と42に囲まれたヒステリシスに対して、格段に小さくなっていることがわかる。なお、座標P_Hi点の電圧はV_Hi(常用最大電圧値Vq),座標P_Lo点の電圧はV_Lo(常用最小電圧値Vp)である。
【0054】
更に説明すると、SOC80%の座標P_Hi点は、略完全放電状態からの充電時の容量ー電圧特性を示す充電時最大電圧特性線42上でSOC80%の点と略みなすことができ、したがって、略完全放電状態からSOC80%まで(又はV_Hiまで)充電することにより達することができる。同様に、SOC40%の座標P_Lo点は、略満充電状態からの放電時の容量ー電圧特性を示す放電時最小電圧特性線43上でSOC40%の点と略みなすことができ、したがって、略満充電状態からSOC40%まで(又はV_Loまで)放電することにより達することができる。
【0055】
図4において、43は、座標P_Hi点から放電する場合の基準状態電池電圧の変化を示す線(常用最小電圧特性線)であり、44は、座標P_Lo点から充放電する場合の基準状態電池電圧の変化を示す線(常用最大電圧特性線)である。したがって、一度、座標P_Hi点又は座標P_Lo点に達した後、容量40〜80%またはそれに相当する基準状態電池電圧V_Hi又はV_Loの間で電池の充放電(以下、標準充放電ともいう)を行う場合には、電池の基準状態電池電圧と容量との関係は、図3の斜線内にあることがわかる。
【0056】
次に、本発明でいう目標電圧値Vc又は参照電圧値として、上記斜線領域のほぼ中心点として、容量60%、基準状態電池電圧(単に電池電圧ともいう)VMの点を設定する。
【0057】
したがって、標準充放電を行っていれば、電池電圧がVMであるということは、過去の充放電履歴にかかわらず、VMと常用最小電圧特性線43との交点の容量値約55%から、VMと常用最大電圧特性線44との交点の容量値約65%まで容量の変動幅は10%に限定できることがわかる。
【0058】
図5においても同様であり、上記VMに対応するVM’を適当にとれば、電流=0Aの時の電圧がVM’であれば、過去の充放電履歴にかかわらず、容量変動幅を約55%から約65%までと推定できることがわかる。
【0059】
次に図4における特性線43、44内の充放電特性(基準状態電池電圧ー容量特性)について、更に詳細に調べた結果を図6に示す。
【0060】
61は、座標P_Hi点から放電する場合の常用最小電圧特性線43上の所定点P1からP2まで充電する場合の特性線、62は、P2からP3まで放電する場合の特性線である。
【0061】
図6から、座標P1から充電傾向で容量が推移する場合の特性線61は座標P_Hi点に収束すること。更に言えば、特性線43上の任意の点から充電する場合は座標P_Hi点に収束することがわかる。一方、座標P2から放電傾向で容量が推移する場合の特性線62は座標P1に収束することがわかる。
【0062】
すなわち、特性線43と44とで囲まれる常用領域内の所定点からの放電は、それ以前の上記所定点までの充電における充電開始点が特性線43上にあればそこに向かうことがわかる。
【0063】
同様に、特性線43と44とで囲まれる常用領域内の所定点からの充電は、それ以前の上記所定点までの放電における放電開始点が特性線44上にあればそこに向かうことがわかる。
【0064】
すなわち、この常用領域内では、ある状態から一旦放電、或いは充電した後、SOCを基に戻そうとすると、電圧も元の値に戻ろうとすることがわかる。これは、ニッケル水素電池に限らず、充電可能な2次電池全てに共通する特徴で、分極現象と呼ばれている。
【0065】
ここで、特性線43上で電圧VM時の容量値をSOC1、特性線44上で電圧VM時の容量値をSOC2とする。電圧VMは、目標電圧値Vcとして、容量60%を中心にSOC1とSOC2がプラスマイナス均等になるように定める。
【0066】
この状態で、いま座標P_Hi点から走行を開始した場合を想定する。ハイブリッド自動車の走行中に定電力放電時の電池電圧(基準状態電池電圧)がVMになるように発電機12をコントロ−ルすると、座標P_Hi点は特性43上を推移し、SOCは80%から特性43が電圧VMと交わるSOC1に推移して安定することが、図6からわかる。
【0067】
その後、運転者が電池容量を消費するような走行を行い、例えば座標P1点のSOCまで到達する場合には、今度は特性線61上を電圧VMまで電圧が回復するため、ほぼSOCは60%で安定することがわかる。
【0068】
即ち、容量の変動範囲をSOC80%〜40%に限定(又は電池電圧をV_Hi〜V_Loに限定)して、電池特性のヒステリシスを小さくすることで、少なくともSOC1からSOC2の範囲でSOCが維持される。更に、充放電を繰り返すと、容量は徐々に目標電圧値Vc(VM)に対応する目標容量値(SOC60%)に収束される。
【0069】
なお、電池のヒステリシス特性が小さい鉛電池等は、電池容量の使用範囲を限定することなく目標とする容量を維持することが可能である。また、電圧VMは電池容量を維持したい容量に対して設定することで、維持する容量を本実施例の60%ではなく任意の容量に変更することが可能である。
【0070】
(充放電制御例1)
上記充放電制御を用いた実現するハイブリッド自動車の電池容量制御装置の一例を以下に説明する。
【0071】
まず、検出電圧と検出電流とのペアから定電力時の基準状態電池電圧(又は定電流時の基準状態電池電圧)を算出する。動作点を特性線43上、又は44上に上述の方法でもってきた後、電池電圧がV_Hi〜V_Loの範囲を逸脱しないようにその充放電を制御する。具体的には、電池電圧V_Hiに達したら充電を禁止し、電池電圧がV_Loに達したら放電を禁止する。これとは別に電流の積算によって仮のSOCを算出しておく。次に、前記比較結果に基づきSOCを補正する。
【0072】
このSOC補正について更に詳しく説明すると、電流積算により求めた容量が目標容量値60%に達した場合に、基準状態電池電圧と目標電圧値VcとしてのVMとの差を求め、この差が0になるまで補償充放電としての充電又は放電を行う。なお、この差は電流積算誤差とみなせるので、電流積算容量の値に累算しない。
【0073】
このようにすれば、その後、次に、電流積算により求めた容量が目標容量値60%に達するまで、積算誤差なしに電流積算容量を用いて容量推定し、この電流積算容量と目標容量値との差に基づいて、この差を解消するように充放電制御することにより、容量を目標容量値に収束させることができる。
【0074】
なお、この例では、上述した電池電圧がV_Hi〜V_Loの範囲を逸脱しないようにその充放電を制御する代わりに、電流積算容量がP_Hi〜P_Loの範囲を逸脱しないように充放電制御してもよい。
【0075】
図7〜図11は、上記充放電制御例2を用いてハイブリッド自動車の走行時に電池の充放電制御を行った場合の実際の走行データである。図7は走行時に電池パック21に流れた電力、図8は電池温度である。図9は走行中の残存容量(SOC)の推移を示したもので、831は充放電制御例2で求めた容量値(SOC検出値ともいう)、832は予め容量を測定した後に電流の積算によって求めた真値である。図10は図9で求めたSOC検出値を真値との差、即ち検出誤差である。検出誤差は+4〜−4%程度であり、高精度の検出を実現できたことがわかる。図11において、851は制御目標電圧VM、852は移動平均法によって求めた走行中の定電力放電時(電池パック212全体で21kW)の電池電圧(すなわち基準状態電池電圧)である。図11から、走行中は定電力放電電圧が目標電圧VMになるように制御されていることがわかる。
【0076】
次に、上述の充放電制御例2の具体的な制御動作を図12〜図16を参照して以下に説明する。
【0077】
図12は、車両コントローラ28の充放電制御を示す。
【0078】
車両コントローラ28は、走行状態及び操作状態に基づいて算出した車両負荷と、電池コントローラ27から受信したSOC信号(電池の現在容量を示す信号)との合計値とエンジン11の出力とが一致するように、エンジン11を制御する原動機コントローラ(図示せず)に指令する制御を行う。
【0079】
車両コントローラ28による、電池14の充放電制御に関する部分の具体的な制御を図12に示す。
【0080】
ステップ1000では電池コントローラ27からSOCを読み込み、ステップ1002では読み込んだSOCとあらかじめ目標とする目標SOCとの差を求めて、これを電池要求電力値とする。
【0081】
ステップ1004では、算出した電池要求電力値にあらかじめ算出した走行負荷電力を加算して合計負荷電力とし、エンジン出力要求値をこの合計負荷電力に一致させる。ハイブリッド車におけるこの制御自体はこの実施例の要旨ではないのでこれ以上の説明は省略する。
【0082】
また、車両コントローラ28はエンジン出力と走行負荷電力との差を算出してその差だけ、発電機12又はモータ16を駆動する制御を行うが、この制御もこの実施例の要旨ではないので、説明を省略する。
【0083】
図13〜図15は、電池コントローラ(電池制御マイコン)27により行われる制御動作であり、以下に説明する。
【0084】
なお、過去において、動作点は以前に特性線43上、又は44上へ上述の方法で設定された後、電池電圧がV_Hi〜V_Loの範囲を逸脱しないようにその充放電を制御されることにより、特性線43と44との間にあるものとする。
【0085】
図13では、まず、ステップ901で走行中の電圧VB、電流IB、温度TBを検出し、電圧VBと電流IBの複数ペアを基に最小2乗法によって内部抵抗Rkを算出し、それを基に基準状態電池電圧として所定電力放電時の電圧VBwを算出する(S902)。
【0086】
VB0=VB+Rk×IB
VBw={VB0+(VB02 −4×Rk×α)0.5}×0.5
なお、αは用いた定電力(ここでは21kW)である。
【0087】
次に、ステップ903によって電流積算法によりSOCを算出し、電池容量制御装置が目標とする目標容量値(ここでは60%)に対して非常に近いSOC(−57〜+63%)内に回復させているかどうかを調べ(S904)、そうでなければステップ907へ進み、そうであればステップ906を経由してステップ907へ進む。
【0088】
ステップ906では、基準状態電池電圧VBwと目標電圧VMとを比較し、VBwがVMより低い場合にはステップ903で求めたSOCを補正する。この時、VBw<VMならば充電する必要があるため、SOCを電流積算で求めた上記約60%よりも小さい値に書き換え、これにより、車両コントローラ28はSOCを60%とするように各部に指令し、結果として充電が生じる。
【0089】
VBw>VMならば放電する必要があるため、SOCを電流積算で求めた上記約60%より高くなる方へ書き換え、これにより、後述のステップで車両コントローラ28はSOCを60%とするように各部に指令し、結果として放電が生じる。一回の補正量は1〜0.01%で良く、繰り返し補正することで徐々に正確な値に直していくことが可能である。
【0090】
ステップ907では、演算された上記SOCを発電機12等を制御している車両コントローラ28に実際に出力する。ステップ908では、SOCが上限80%と下限40%の範囲かどうかを監視する。このサブルーチンを図14、図15を参照して以下に説明する。
【0091】
図14において、ステップ1001では、求めたSOCが80%を超えた場合を判別し、ステップ1002によってそれ以上の充電を禁止する充電制限指令をコントローラ12に出力する。ステップ1003では、求めたSOCが40%を下回った場合を判別し、ステップ1004によってそれ以上の放電を禁止する放電制限指令をコントローラ12に出力する。
【0092】
他の方法として図15に示すように、基準状態電池電圧によりSOCの上限、下限を監視してもよい。
【0093】
詳しく説明すると、ステップ1101で定電力放電時の基準状態電池電圧VBwがSOC80%の電圧に相当するV_Hiを越えた場合、ステップ1102によってそれ以上の充電を防止するために充電制限指令を出力する。ステップ1103で定電力放電時の基準状態電池電圧VBwかSOC40%の電圧に相当するV_Loを下回った場合、ステップ1104によってそれ以上の放電を防止するために放電制限指令を出力する。なお、この場合、定電力放電時の基準状態電池電圧VBwで上下限を検出するほか、定電流放電時の基準状態電池電圧(例えば、電流=0A時の電圧)VBoで上下限を検出しても良い。図13において、ステップ909で走行が終了すれば、ステップ910によって演算の結果を次回の走行開始時の初期値とするために図示しないメモリ等に保存し、一連の制御を終了する。
【0094】
次に、上述の充放電制御によるSOC変化の測定例を図16を用いて説明する。
【0095】
走行開始から点121までは、SOCの電流積算検出値が57〜63%の範囲内に入っているので、ステップ906によってSOC検出値が正確な値へ補正される。運転者が電池電力を大きく消費するような走行を行うと、SOCは点121から点122の間に示すようにSOC57%未満に減少するため、ステップ903で算出されるSOCがコントローラ28に出力される。
【0096】
点122では、SOC下限値40%まで到達したので、ステップ908によって放電が制限され、122〜123点のような容量が回復される。そして、点123まで到達すると、SOC57〜63%の範囲に入るので、再びステップ906によってSOC検出値が正確な値へ補正される。
【0097】
このように、SOCが変動しても目標SOCに速やかに戻すことができ、かつ、累積誤差の発生する電流積算によって求めたSOC検出値を補正することが可能である。
【0098】
(充放電制御例2)
上記充放電制御を用いた実現するハイブリッド自動車の電池容量制御装置の他例を以下に説明する。
【0099】
まず、検出電圧と検出電流とのペアから定電力時の基準状態電池電圧(又は定電流時の基準状態電池電圧)を算出する。次に、動作点を特性線43上、又は44上に上述の方法でもってきた後、電池電圧がV_Hi〜V_Loの範囲を逸脱しないようにその充放電を制御する。具体的には、電池電圧V_Hiに達したら車両コントローラ28に充電を禁止する指令を出し、電池電圧がV_Loに達したら放電を禁止する指令を出す。次に、基準状態電池電圧と目標電圧値Vcである電圧VMとの差を求め、差解消方向への充放電が生じるように指令して、基準状態電池電圧をVMに一致させる。
【0100】
このようにすれば、容量を図6に示すSOC1とSOC2との間に保持することができる。
【0101】
(特異的電圧低下現象からの回復処理1)
次に、メモリ降下が増大したり、大きな充電分極解消が生じたことに起因して、特異的に動作特性が変化した場合の対策について以下に説明する。
【0102】
まず、この特異的電圧低下現象について説明する。
【0103】
上記説明したように実施例の充放電制御では、図17に示すように、充放電を常用最小容量値Pと常用最大容量値Qとの範囲内で行う間中は基準状態電池電圧を、常用最小電圧値Vpと常用最大電圧値Vqとの常用最小電圧値Vpの間の中央値(目標電圧値)VM、かつ、目標容量値であるSOC60%の座標すなわち中央座標点Aに収束させている。
【0104】
しかし、メモリ効果の増加や充電分極量の減少により測定する基準状態電池電圧が低下することに起因して、放電時における動作点が、図17に示すように、容量(SOC)と基準状態電池電圧(21KW放電電圧)とで規定される二次元平面上の電圧特性線43(Qから放電する場合の特性を示す)よりも下方に逸脱することがあることがわかった。また、メモリ効果は発生せず、充電分極解消だけが生じると動作点は電圧特性線43上に達する。以下、この現象を、特異的電圧低下現象というものとする。
【0105】
たとえば、この特異的電圧低下現象が生じると、図18に示すように、中央座標点Aから電圧特性線43上の座標B、放電時最小電圧特性線41上の座標P’を通ってSOC40%の座標P”に達し、正常な放電経路106を辿って座標(常用最小容量値P)Pに達しない。
【0106】
この特異的電圧低下現象が生じると、その後、基準状態電池電圧を元の中央値VMに復帰させても、上記二次元平面上の動作点は、電圧特性線44(Pから充電する場合の特性を示す)と中央値VMとの交点O’の容量である中央最小容量値SOCmminと、放電時最小電圧特性線と中央値VMとの交点Oの容量である中央最大容量値SOCmmaxとの間の真ん中の容量値すなわち中央座標点Aの容量値60%に復帰しないので、以降の制御に大きな狂いが生じる。
(特異的電圧低下現象からの復帰法1)
そこで、本制御では、上記特異的電圧低下現象が生じた場合に、図19の特性図及び図21のフロ−チャ−トに示す中央復帰動作を行う。このフローチャートは所定タイミングで図13のメインル−チンに割り込んで実行される。
【0107】
まず、動作点(VBw,現在のSOC値)が、図19のマップ上にて予め記憶する電圧特性線43上又はそれより低電圧側かどうかを調べ(1100)、否であればメインル−チンへリタ−ンする。
【0108】
動作点(VBw,現在のSOC値)が電圧特性線43上又はそれより低電圧側であれば、その後の動作点をモニタし、放電から充電に転換した場合の動作点C(図19参照)の容量値(最小SOC値)と目標容量値(60%)との容量差Xを算出する(1102)。
【0109】
次に、Xに予め記憶する増倍充電係数α(1より大きく2より小さい値)を掛けて増倍充電容量X’を求めてこの増倍充電容量X’だけ充電し、動作点を座標Cから座標Dに移動させる(1104)。
【0110】
次に、放電を行い、中央値VMまで放電を行い座標A近傍へ動作点を復帰させる(1106)。
【0111】
この制御の特徴は、動作点が電圧特性線43に達するか又はそれより低電圧側へ逸脱したら、通常の制御ではXだけ充電するのに代えて、Xより増倍充電係数αだけ大きい増倍充電を行い、その後、中央値VMへ収束させる点にある。
【0112】
このようにすれば、上記特異的電圧低下現象が生じても、動作点を簡単に中央座標点A近傍に復帰させることができる。
(変形例)
なお、座標Cから座標Dへの増倍充電を連続して行わずに充放電を繰り返しながら達してもよい。
【0113】
また、その後の座標Dから中央値VMへの放電も連続して行わずに充放電を繰り返しながら達してもよい。
【0114】
更に、座標Cから座標Dへの復帰時に車両運転制御の事情により動作点がDに達しない場合、動作点がD近傍に達した場合にこの動作点から座標Dを推定するようにしてもよい。
(特異的電圧低下現象からの復帰法2)
他の復帰法を以下に説明する。本復帰法では、上記特異的電圧低下現象が生じた場合に、図20の特性図及び図22のフロ−チャ−トに示す中央復帰動作を行う。このフローチャートは所定タイミングで図13のメインル−チンに割り込んで実行される。
【0115】
まず、動作点(VBw,現在のSOC値)が、図20のマップ上にて予め記憶する電圧特性線43上又はそれより低電圧側かどうかを調べ(1100)、否であればメインル−チンへリタ−ンする。
【0116】
動作点(VBw,現在のSOC値)が電圧特性線43上又はそれより低電圧側であれば、その後の動作点をモニタし、放電から充電に転換した場合の動作点G(図20参照)の容量値(最小SOC値)と目標容量値(60%)との容量差Xを算出する(1102)。
【0117】
次に、この容量差Xだけ充電することにより、SOCを中央座標点AのSOC値60%に相当する座標Hに戻す(1204)。
【0118】
次に、この時の基準状態電池電圧VM’に中央値VMを書き換える(1206)。
【0119】
この制御の特徴は、動作点が電圧特性線43に達するか又は動作点が電圧特性線43外に逸脱したら、通常の制御では容量Xだけ充電するのに代えて、更にその後、Xだけ充電して中央座標点Aの容量値に達した場合の基準状態電池電圧VM”を新たに中央値VMに書き換える点にある。
【0120】
このようにすれば、上記特異的電圧低下現象が生じても、動作点を簡単に中央座標点A近傍に復帰させることができる。
(変形例)
なお、座標Gから座標Hへの充電を連続して行わずに充放電を繰り返しながら達してもよい。
【0121】
また、座標Gから座標Hへの復帰時にの車両運転制御の事情により動作点がHに達しない場合、動作点がH近傍に達した場合にこの動作点から座標Hを推定するようにしてもよい。
(特異的電圧低下現象からの復帰法3)
本制御では、大メモリ効果と充電分極解消とを判別し、前者の場合に機会をみて深放電を実施してメモリ効果の除去を行う。
【0122】
制御例を図23を参照して説明する。
【0123】
まず、放電により電圧特性線43より低電位側に所定電圧値以上低下したかどうかを調べ(1302)、低下した場合に大メモリ効果が生じていると判定して今後それが可能な期間における深放電処理を要求する(1304)。
【0124】
この深放電処理は、SOC10%以下までの深い放電によるメモリ効果を解消する公知のメモリ効果解消法であり、この深放電処理は、それが完了した後のたとえば上記復帰法1又は2の方式での中央座標点A近傍への復帰処理を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池制御方法を用いたパラレルハイブリッド自動車の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示したハイブリッド車の電気系統を示すブロック図である。
【図3】この実施例で用いたニッケル水素電池(単セル)の車両実走行時の電圧−電流特性を示す図である。
【図4】図3に基づいて作成した定電力状態における電圧−容量特性を示す図である。
【図5】図3に基づいて作成した定電流状態における電圧−容量特性を示す図である。
【図6】図4における充放電軌跡を示す定電力状態における電圧−容量特性を示す図である。
【図7】走行時に電池パック21に流れた電力の推移を示すタイミングチャートである。
【図8】走行時の電池パック21の電池温度変化を示すタイミングチャートである。
【図9】走行時の電池パック21のSOC変化を示すタイミングチャートである。
【図10】走行時の電池パック21のSOC検出誤差を示すタイミングチャートである。
【図11】走行時の電池パック21の基準状態電池電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【図12】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
【図13】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
【図14】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
【図15】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
【図16】この実施例の電池制御方法を用いたハイブリッド車の実走行時のSOC変化を示すタイミングチャートである。
【図17】この実施例の電池制御方法を示す基準電力(21KW)充放電での電池電圧と容量との関係を示す電池特性図である。
【図18】特異的電圧低下現象を示す電池特性図である。
【図19】特異的電圧低下現象を起こした電池を中央座標点A近傍に復帰させる処理の一例を示す電池特性図である。
【図20】特異的電圧低下現象を起こした電池を中央座標点A近傍に復帰させる処理の他例を示す電池特性図である。
【図21】特異的電圧低下現象を起こした電池を中央座標点A近傍に復帰させる処理の一例を示すフローチャートである。
【図22】特異的電圧低下現象を起こした電池を中央座標点A近傍に復帰させる処理の他例を示すフローチャートである。
【図23】特異的電圧低下現象を起こした電池を中央座標点A近傍に復帰させる処理の更に他例を示すフローチャートである。
Claims (9)
- 発電手段と、前記発電手段が発電した電力を貯蔵するとともに走行モータに給電する電池とを備える電気自動車の電池制御方法において、
測定した電池の測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値または所定の基準電力値における電池電圧である基準状態電池電圧を演算し、
前記基準電流値または基準電力値における常用容量範囲に対応する所定の目標電圧値を設定し、
演算した前記基準状態電池電圧と前記目標電圧値との差を解消するように前記電池の充放電を制御し、
前記電池の略満充電状態からの放電時の容量と前記基準状態電池電圧との関係である容量ー電圧特性を示す放電時最小電圧特性線上の所定の常用最小容量値をPとし、かつ、前記電池の略完全放電状態からの充電時の前記容量と前記基準状態電池電圧との関係である容量ー電圧特性を示す充電時最大電圧特性線上の点、若しくは、前記Pから所定容量だけ充電した値である所定の常用最大容量値をQとする場合に、前記目標電圧値を、前記常用最小容量値P及び常用最大容量値Qに個別に対応する常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの間の値とし、充放電を、上記常用最小容量値P及び常用最大容量値Qの間で行うことを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。 - 請求項1記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、
前記目標電圧値を、前記常用最大電圧値Vqと前記常用最小電圧値Vpの間の中央値近傍の値とすることを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。 - 請求項1又は2記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、
初期容量値に充放電電流積算分を累算して前記電池の電流積算による容量である電流積算容量を算出し、
測定した電池の測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値又は所定の基準電力値における電池電圧である基準状態電池電圧を演算し、
前記電池の所定の参照容量値とそれに対応する所定の参照電圧値とを記憶し、
前記電流積算容量と前記参照容量とが略一致する場合における前記基準状態電池電圧と前記参照電圧値との差を解消する補正充放電を行うとともに前記電流積算による容量を補正することを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。 - 請求項3記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、
前記参照電圧値は前記目標電圧値とされ、
前記参照容量値は、前記常用最小容量値Pと前記常用最大容量値Qとの間の中央値近傍の所定の目標容量値とされ、
前記電流積算容量を前記目標容量値に収束させる充放電制御を行うことを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。 - 請求項1乃至4のいずれか記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、前記電池はニッケル水素電池であることを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。
- 請求項2記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、
初期容量値に充放電電流積算分を累算して前記電池の電流積算による容量である電流積算容量を算出し、
測定した電池の測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値又は所定の基準電力値における電池電圧である基準状態電池電圧を演算し、
前記常用最大容量値Qと前記常用最小容量値Pの間の中央値近傍の値である所定の目標容量値と、前記目標電圧値とで規定される中央座標点Aを設定し、
前記基準状態電池電圧と前記容量との二次元平面上にて、メモリ効果がない場合に前記常用最大容量値Qから前記常用最小容量値Pへ放電する場合の電圧特性線43を設定し、
動作点が前記電圧特性線43に達するか、又は低電圧側に逸脱する場合に、前記動作点を前記中央座標点Aに復帰させる中央復帰処理を行うことを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。 - 請求項6記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、
前記動作点が前記電圧特性線43よりも低電圧側に所定電圧幅以上逸脱したかどうかを判定し、
逸脱した場合に大メモリ効果が生じていると判断して所定SOC値以下までの深放電によりメモリ効果解消とその後の前記中央復帰処理とを要求することを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。 - 請求項6又は7記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、
前記中央復帰処理は、前記電圧特性線43又は前記電圧特性線43よりも低電圧側に逸脱した際の最小SOCの座標Cと前記目標容量値との間の容量差Xを算出し、
次に、前記容量差Xに予め記憶する増倍充電係数α(1より大きく2より小さい値)を掛けて増倍充電容量X’を算出し、
次に、前記座標Cから前記増倍充電容量X’だけ充電し、
次に、前記目標容量値近傍まで放電することを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。 - 請求項6又は7記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、
前記中央復帰処理は、前記電圧特性線43又は前記電圧特性線43よりも低電圧側に逸脱した際の最小SOCの座標Gと前記目標容量値との間の容量差Xを算出し、
次に、前記容量差Xだけ充電して、この時の基準状態電池電圧VM’を前記目標電圧値と書き直すことを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。
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