JP4432748B2 - 熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートの製造方法 - Google Patents
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Description
このろう付けの際、ろう付けされるアルミニウム表面の酸化皮膜を除去するために、非腐食性のフッ化物系フラックスが使用されている。
すなわち、特許文献1では、芯材に耐孔食性向上を目的としたAl−Mn系の合金を使用しているが、強度、特にろう付け後の強度が十分でない。また芯材の電位が貴にならず、耐食性も不十分である。犠牲陽極材も耐食性の観点でのみ成分調整されているため、かしめ部の疲労特性の点で不十分である。さらにろう材に関しても、ろうの流動性に対する検討が不十分である。
このため、ろう付け性に優れるとともに、ろう付け後にあっても耐食性に優れるばかりでなく、繰り返し加圧を受けても亀裂が発生し難いので優れた耐食性を維持することができる。しかも、芯材として用いられるアルミニウム合金が予め適正に均質化処理されており、特にろう付け後に適正な強度が得られるため、かしめ構造で用いられても、かしめ部における亀裂の発生が抑制される。
したがって、本発明により、耐食性や疲労特性に優れた熱交換器をろう付け法で製造する際の好適な素材を提供することができる。
その結果、まず熱交換器を構成するアルミニウム合金となる三層構造クラッド材の芯材としては、Si:0.3〜1.0質量%,Fe:0.3〜0.8質量%,Mn:0.8〜1.6質量%,Cu:0.5〜0.9質量%を含み、不純物としてのMgを0.05質量%以下に規制し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金が好ましいことを見出した。
Siは、強度向上に寄与する元素である。マトリックス中に固溶したり、MnやFeと金属間化合物を作ったりして強度を向上させる。ただし、その含有量が0.3質量%に満たないと、所望の強度、特にろう付け後の強度が十分でない。また逆に1.0質量%を超えて多量に含有させると、ろう付け加熱時にろうの拡散を大きくしたり、芯材の溶融開始温度を低下させたりして、ろう付け性を低下させることになる。したがって、強度向上及びろう付け性確保の観点から、Si含有量は0.3〜1.0質量%の範囲とする。好ましくは0.3〜0.8質量%である。
このような合金組成に限定した理由は次の通りである。
このような合金組成に限定した理由は次の通りである。
また、O材調質のブレージングシートにはプレス成形等により成形時に歪みが加わるために、その部分がろう付け加熱時に亜結晶組織が生じ、エロージョン(芯材の融解)が局所的に生じる。ブレージングシート芯材のエロージョンを防止するためには、低歪みの領域でもろう材溶融前に再結晶しやすい組織とすることが必要である。
均質化処理温度が580℃に満たないと、微細な金属間化合物が高い密度で存在することになる。このため、O材調質で使用される場合に、最終焼鈍時に粗大な結晶粒となり、また引張強度も高くなってしまう。逆に、均質化処理温度が620℃よりも高温では、金属間化合物粒子が固溶してしまって好ましくないばかりか、エネルギーロスとなってしまう。
引き続き440〜480℃の温度に降温して保持することで、固溶しているMn,Si,Fe,Cu等の元素が析出してある程度粗大な金属間化合物がより大きくなり、より好ましい。保持温度が440℃に満たないと固溶元素の析出が十分でなく、ある程度粗大化した金属間化合物のさらなる粗大化が起きないばかりか、降温に時間がかかりすぎエネルギーロスになってしまう。逆に480℃よりも高温だと、その前の均質化処理温度との温度差がなく、固溶元素の析出が十分に進行しないためにある程度粗大化した金属間化合物のさらなる粗大化は起きない。
また、降温・保持時間が1時間に満たないと、固溶元素の析出が十分ではなくある程度粗大化した金属間化合物粒子がより大きくなることはない。一方、長時間行うことはエネルギーロスとなり好ましくない。
ブレージングシートは、芯材の両面にろう材と犠牲陽極材を配し、熱間圧延でクラッドされるが、この熱延前の加熱は通常500℃以下の温度で行われる。この温度の選定理由は、ろう材の固相線温度が577℃程度であるために、ろう材を溶融させることのない温度に止める必要があるからである。この熱延前の加熱温度は、前記した均質化処理温度の内、低すぎるために均質化処理効果が得られなかった温度範囲と一致し、前記所定値未満の温度で均質化処理を行ったと同様に、芯材の金属組織には微細な金属間化合物が高い密度で存在することになって、最終焼鈍時に粗大な結晶粒となり、また引張強度も高くなってしまう。すなわち、好ましいブレージングシートは得られない。
芯材用のアルミニウム合金として、表1に示す成分組成を有する各種の合金溶湯を溶製し、セラミック製フィルターを通過させてDC鋳造によりスラブを得た。この芯材用スラブを,50℃/hrで昇温して600℃で10時間保持した後に50℃/hrで冷却して450℃で5時間保持する均質化処理を施して放冷した。
さらに、表2にLで示す犠牲陽極材用アルミニウム合金及び表3にRで示すろう材用アルミニウム合金を、それぞれ個別に面削,均質化処理,熱間圧延した。
さらに冷間圧延を施して1.5mm厚とした後、400℃まで50℃/hrの速度で昇温して同温度2時間保持した後50℃/hrの冷却速度で100℃まで冷却して軟化させる最終焼鈍を施した。
(1)素材引張試験
クラッド材から、圧延方向にJIS 5号試験片を切り出し、引張試験を行って抗張力及び耐力を測定した。
クラッド材を、ろう付け条件を想定して、窒素ガス雰囲気中で25℃/hrの速度で昇温して600℃になったところで3.5分保持し、その後100℃/hrの冷却速度で室温まで冷却する加熱処理を施した。その後、圧延方向にJIS 5号試験片を切り出し、引張試験を行って抗張力及び耐力を測定した。また、加熱処理を施したクラッド材のろう材面をマスキングした後に、Cl-:195ppm,SO4 2-:60ppm,Cu2+:1ppm,Fe2+:30ppmの室温の溶液中に4週間浸漬した後の最大孔食深さを、光学顕微鏡の焦点深度法で測定した。さらに粒界腐食の有無も観察した。
溶剤脱脂後、それぞれの表面にKAlF4とK3AlF6の混合組成からなる非腐食性フッ化物系フラックスを2g/m2塗布したJIS A3003アルミニウム合金板を基板としてそれぞれ実施例及び比較例により得られた高さ25mm,長さ40mmの板を垂直に固定し、いわゆる逆T字試験形状にして、以下の条件でろう付けした。窒素ガス雰囲気炉中において、50℃/分の昇温速度で加熱し、600℃になったところで5分間保持した後、ろう付け炉から取り出して室温まで空冷した。
冷却後、ろう付け面を観察し、芯材の侵食状態を調べた。芯材の侵食が軽微なものを良(○)とし、芯材の侵食が激しくろう材と芯材の共融が顕著であったものを不良(×)とした。
ろう付け後に、ラジエータコアのヘッダープレート部を、ゴムパッキンを用いて樹脂製タンク部材との間でかしめたときの、ヘッダープレートの割れの有無を目視にて観察した。割れがないものを良(○)とし、割れが発生したものを不良(×)とした。
なお、ラジエータコアの作製は、それぞれの表面にKAlF4とK3AlF6の混合組成からなる非腐食性フッ化物系フラックスを2g/m2塗布した後、窒素ガス雰囲気炉中において、25℃/分の昇温速度で加熱し、600℃になったところで5分間保持した後、100℃/分の冷却速度で空冷するろう付けで行った。また、ラジエータコアは、実施例のブレージングシートをヘッダープレートとして成形加工し、成形加工されたフィン材として、JIS 3N03合金の板厚70μmの板を、偏平チューブ材として、JIS 3003合金芯材にJIS 4045合金ろう材とJIS 7072合金犠牲陽極材をクラッドしたB型のチューブを用いた。
それぞれの評価試験結果を表4に併せて示す。
これに対して、比較例No.1のブレージングシートは、芯材のSi含有量が少なすぎたために、ろう付け前後の強度が低く、高強度が要求される熱交換器用ブレージングシートとしては適しない。
比較例No.3のブレージングシートは、芯材のFe含有量が少ないために、ろう付け前の強度が不足するばかりでなく、ろう付け後の強度も不足して、高強度が要求される熱交換器用ブレージングシートとして適していない。しかも、熱間圧延性が悪く、熱間圧延時に曲がりが生じた。
比較例No.5のブレージングシートは、芯材のCu含有量が少なすぎたために、ろう付け前後の強度が低く、高強度を要求される熱交換器用ブレージングシートとしては適しない。さらに、耐食性試験で最大孔食深さが深かったことから、熱交換器用ブレージングシートとしては適当でない。
比較例No.6のブレージングシートは、芯材のCu含有量が多すぎるために、ろう付け前の強度が高すぎて成形性が悪いばかりでなく、ろう付け後の強度も高すぎてコアかしめ時に割れが生じていた。また、ろう付け性も良くない。さらに耐食性試験で最大深さが深く、しかも粒界腐食も認められることから、熱交換器用ブレージングシートとしては適当でない。
比較例No.8は、芯材のMn含有量が多すぎるために、鋳造時に巨大晶出物が生成して、鋳造時に割れが発生していた。
芯材用のアルミニウム合金として、表1にAで示す成分組成を有する合金溶湯を溶製し、セラミック製フィルターを通過させてDC鋳造によりスラブを得た。この芯材用スラブを,50℃/hrで昇温して600℃で10時間保持した後に50℃/hrで冷却して450℃で5時間保持する均質化処理を施して放冷した。
さらに、表2に示す各種の犠牲陽極材用アルミニウム合金及び表3にRで示すろう材用アルミニウム合金を、それぞれ個別に面削,均質化処理,熱間圧延した。
さらに冷間圧延を施して1.5mm厚とした後、400℃まで50℃/hrの速度で昇温して同温度2時間保持した後50℃/hrの冷却速度で100℃まで冷却して軟化させる最終焼鈍を施した。
上記手段で得た各種クラッド材について、以下に示すような繰り返しの加圧試験、及び実施例1と同じろう付け温度加熱後の耐食性試験を行って、曲げ疲労強度及びろう付け後の耐食性を評価した。
ろう付けコアを用いて、水圧による繰り返し加圧を行い、ヘッダープレート部とゴムパッキンを用いてプラスチック製部材との間でかしめられた部分の割れ、漏れの評価を行った。なお、ラジエータコアの作製は、それぞれの表面にKAlF4とK3AlF6の混合組成からなる非腐食性フッ化物系フラックスを2g/m2塗布した後、窒素ガス雰囲気炉中、25℃/分の昇温速度で加熱し、600℃になったところで5分間保持した後、100℃/分の冷却速度で空冷するろう付けで行った。また、ラジエータコアは、実施例のブレージングシートをヘッダープレートとして成形加工し、成形加工されたフィン材として、JIS 3N03合金の板厚70μmの板を、偏平チューブ材として、JIS 3003合金芯材にJIS 4045合金ろう材とJIS 7072合金犠牲陽極材をクラッドしたB型のチューブを用いた。
その評価結果を表5に併せて示す。
これに対して、比較例No.9のブレージングシートは、犠牲陽極材のZn含有量が多すぎたために、繰り返し加圧試験で繰り返し回数が少ない段階で割れが生じてしまい、曲げ疲労強度が十分ではなかった。このため、熱交換器用のブレージングシートとして適していない。
比較例No.10のブレージングシートは、犠牲陽極材のZn含有量が少なすぎたために、耐食性試験で最大孔食深さが深くなり、熱交換器用のブレージングシートとして適していない。
比較例No.11のブレージングシートは、犠牲陽極材のMg含有量が多すぎたために、耐食性試験で最大孔食深さが深く、しかも粒界腐食が認められ、熱交換器用のブレージングシートとして適していない。
比較例No.12は、犠牲陽極材のMg含有量が少なすぎたために、耐食性試験で最大孔食深さが深くなり、熱交換器用のブレージングシートとして適していない。
芯材用のアルミニウム合金として、表1に示す成分組成を有する各種の合金溶湯を溶製し、セラミック製フィルターを通過させてDC鋳造によりスラブを得た。この芯材用スラブを,50℃/hrで昇温して600℃で10時間保持した後に50℃/hrで冷却して450℃で5時間保持する均質化処理を施して放冷した。
さらに、表2にLで示す犠牲陽極材用アルミニウム合金及び表3に示す各種のろう材用アルミニウム合金を、それぞれ個別に面削,均質化処理,熱間圧延した。
さらに冷間圧延を施して1.5mm厚とした後、400℃まで50℃/hrの速度で昇温して同温度2時間保持した後50℃/hrの冷却速度で100℃まで冷却して軟化させる最終焼鈍を施した。
上記手段で得た各種クラッド材について、以下に示すようなコアのろう付け試験、及び実施例1と同じ逆T字試験片によるろう付け試験を行って、コアのろう付け性及び逆T字ろう付け性を評価した。
それぞれの表面にKAlF4とK3AlF6の混合組成からなる非腐食性フッ化物系フラックスを2g/m2塗布した後、窒素ガス雰囲気炉中、25℃/分の昇温速度で加熱し、600℃になったところで5分間保持した後、100℃/分の冷却速度で空冷するろう付けで行った。
冷却後、ヘッダープレートとチューブの嵌合部やB型チューブの合わせ部のろう付け状態を、目視観察及び断面マクロ観察した。そして、フィレットが均一に形成されて芯材が侵食(ろう材と芯材の共融による芯材の融解)されておらず、しかもB型チューブの合わせ部に侵食凹部(ろう材と芯材の共融による芯材の融解・流出に伴って形成された凹部)がないものを良(○)とし、フィレットが均一に形成されていなかったり、芯材が侵食されていたり、或いは例えば図1(a)に示すようにB型チューブの合わせ部に侵食凹部が顕著であったりしたものを不良(×)とした。図1(b)が正常品である。なお、ラジエータコアは、実施例のブレージングシートをヘッダープレートとして成形加工し、成形加工されたフィン材として、JIS 3N03合金の板厚70μmの板を、偏平チューブ材として、JIS 3003合金芯材にJIS 4045合金ろう材とJIS 7072合金犠牲陽極材をクラッドしたB型のチューブを用いた。
その評価結果を表6に併せて示す。
これに対して、比較例No.13のブレージングシートは、逆T字試験片形状のろう付けでは侵食が認められなかったが、ろう材のFe含有量が多すぎたために、コア形状のろう付け時には、ろうの流動性が十分でないことに起因してろう付けされていない箇所もあった。このため、熱交換器用のブレージングシートとして適していない。
比較例No.14〜16のブレージングシートは、ろう材のSi含有量が多すぎたために、逆T字試験片形状のろう付けでも侵食が認められるばかりでなく、コア形状のろう付けでも、ろうの流動性が高くなりすぎてB型チューブの合わせ部に侵食凹部が認められ、ろう付け性が十分でなかった。このため、熱交換器用のブレージングシートとして適していない。
芯材用のアルミニウム合金として、表1にBで示す成分組成を有する合金溶湯を溶製し、セラミック製フィルターを通過させてDC鋳造によりスラブを得た。
本発明例6では、この芯材用スラブを,50℃/hrで昇温して600℃で10時間保持した後に50℃/hrで冷却して450℃で5時間保持する均質化処理を施して放冷した。また本発明例7では、同芯材用スラブを,50℃/hrで昇温して600℃で10時間保持した後に、均質化処理炉より放出して空冷した。
一方、比較例No.17では、上記芯材用スラブを、50℃/hrで昇温して480℃で10時間保持した後に、均質化処理炉より放出して空冷した。さらに、比較例No.18では、この芯材用スラブの均質化処理を実施しなかった。
その後、さらに冷間圧延を行って1.5mm厚とした後、速度50℃/hrで昇温し、400℃で2時間保持した後、冷却速度50℃/hrで100℃まで冷却する最終焼鈍を施して軟化させた。
これらの手段で得られた本発明例及び比較例のクラッド材をブレージングシートとして、実施例1と同じ引張強度,ろう付け温度加熱後の引張強度,及びコアのかしめ割れの評価をそれぞれ行った。
その結果を表7に示す。
これに対して、比較例No.17のブレージングシートは、芯材の均質化処理温度が低すぎるために、ろう付け前の強度が高く、また芯材の結晶粒サイズも粗大となって、成形性は良くなかった。さらに、ろう付け加熱後にヘッダープレートに部分的にエロージョンが認められるばかりか、コアにかしめ割れが発生してしまう。このため、比較例No.17のブレージングシートは、ろう付けされる熱交換器用の素材として適していない。
また、比較例No.18のブレージングシートは、芯材の均質化処理を行っていないために、ろう付け前の強度が高く、また芯材の結晶粒サイズも粗大となって、成形性は良くなかった。さらに、ろう付け加熱後にヘッダープレートに部分的にエロージョンが認められるばかりか、コアにかしめ割れが発生してしまう。このため、比較例No.17のブレージングシートは、ろう付けされる熱交換器用の素材として適していない。
Claims (1)
- Si:0.3〜1.0質量%,Fe:0.3〜0.8質量%,Mn:0.8〜1.6質量%,Cu:0.5〜0.9質量%を含み、不純物としてのMgを0.05質量%以下に規制し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を580〜620℃で1〜15時間、さらに引き続き440〜490℃で1〜6時間加熱する均質化処理を施した後、当該アルミニウム合金を芯材とし、その片面に、Mg:0.2〜0.6質量%,Zn:0.1〜0.3質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を犠牲陽極材として、他の片面に、Si:6.5〜8.5質量%,Fe:0.15〜0.6質量%を含み、不純物としてのMgを0.05質量%以下に規制し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金をろう材として配置し、クラッド圧延することにより三層構造のアルミニウム合金クラッド材を得ることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
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