JP4429410B2 - 新規生理活性物質、その製造法および用途 - Google Patents

新規生理活性物質、その製造法および用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オ−ファンG蛋白質共役型レセプター蛋白質であるAPJに対するリガンドポリペプチド、及びこれをコードするDNAに関する。
【0002】
【従来の技術】
多くのホルモンや神経伝達物質は細胞膜に存在する特異的なレセプターを通じて生体の機能を調節している。これらのレセプターの多くは共役している guanine nucleotide-binding protein(以下、G蛋白質と略称する場合がある)の活性化を通じて細胞内のシグナル伝達を行い、また7個の膜貫通領域を有する共通した構造をもっていることから、G蛋白質共役型レセプターあるいは7回膜貫通型レセプターと総称される。
このようなホルモンや神経伝達物質とG蛋白質共役型レセプターとの相互作用を通じて生体のホメオスタシスの維持、生殖、個体の発達、代謝、成長、神経系、循環器系、免疫系、消化器系、代謝系の調節などの生体にとって重要な機能調節が行われている。このように生体機能の調節には様々なホルモンや神経伝達物質に対するレセプター蛋白質が存在し、その機能調節に重要な役割を果たしていることがわかっているが、未知の作用物質(ホルモンや神経伝達物質など)およびそれに対するレセプターが存在するかどうかについては未だ不明なことが多い。
近年、G蛋白質共役型レセプター蛋白質がその構造の一部にアミノ酸配列の類似性を示すことを利用して、ポリメラーゼ・チェーン・リアクション(Polymerase Chain Reaction:以下、PCRと略称する)法によって新規レセプター蛋白質をコードするDNAを探索する方法が行われるようになり、数多くの、リガンドが不明ないわゆるオーファンG蛋白質共役型レセプター蛋白質がクローニングされている(Libert, F., et al. Science, 244, 569-572, 1989, Welch, S.K., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 209, 606-613, 1995, Marchese, A., et al., Genomics, 23, 609-618, 1994, Marchese, A., Genomics, 29, 335-344, 1995)。また、ゲノムDNAあるいはcDNAのランダムな配列決定によっても、新規G蛋白質共役型レセプター蛋白質が次々と見出されている(Nomura, N., et al., DNA Research 1巻、27-35頁、1994年)。これらのオーファンG蛋白質共役型レセプター蛋白質のリガンドを決定する一般的な手段としては、G蛋白質共役型レセプター蛋白質の一次構造上の類似性から推定するしかなかった。しかし、多くのオーファンG蛋白質共役型レセプター蛋白質は既知のレセプターとのホモロジーが低いものが多く、実際は既知リガンドのレセプターサブタイプである場合を除いては一次構造上の類似性だけでそのリガンドを推定することは困難であった。一方、遺伝子解析から多くのオーファンG蛋白質共役型レセプターがみつかっていることから対応する未知のリガンドがまだ数多く存在していることが推定されているが、これまで実際にオーファンG蛋白質共役型レセプターのリガンドを同定した例は数少ない。
【0003】
最近、動物細胞にオーファンG蛋白質共役型レセプター蛋白質をコードするcDNAを導入し、新規オピオイドペプチドを探索した例が報告されている(Reinsheid, R. K. et al. , Science、270巻、792-794頁、1995年、Menular, J.-C., et al. , Nature 377巻、532-535頁、1995年)。しかしこの場合は既知G蛋白質共役型レセプター蛋白質との類似性や組織分布から、容易にリガンドはオピオイドペプチドのファミリーに属することが予想されていた。オピオイドレセプターを介して生体に作用する物質の研究・開発の歴史は長く、種々のアンタゴニスト・アゴニストが開発されていた。そこで人為的に合成した化合物群の中からこの受容体に対するアゴニストを見出し、それをプローブとして受容体cDNA導入細胞における受容体の発現を検証した後に、アゴニストと同じ様な細胞内情報伝達系の活性化物質を探索し、これを精製し、リガンドの構造を決定している。
またカタツムリのオーファンG蛋白質共役型レセプター(GRL104)をコードするcDNAをCHO細胞に導入してレセプター発現細胞での特異的な細胞内遊離カルシウム濃度の上昇を指標として新規生理活性ペプチドを同定した例が報告されているが(Cox,K.J.A., et al., J. Neurosci., 17(4), 1197-1205, 1997)、この新規生理活性ペプチドは既知のleucokininと高い相同性を有し、GRL104は既知のleucokininとの反応性もあった。このようにオーファンG蛋白質共役型レセプター蛋白質の中でリガンドがおおよそ推定されうるものはほとんどなく、特に、既知のG蛋白質共役型レセプター蛋白質ファミリーと類似性が低い場合、リガンドに関する情報はほとんどなく、リガンドを推定することは困難であった。
オーファンG蛋白質共役型レセプターとして報告されているものの一つにAPJがある(O'Dowd, B.F., et al., Gene, 436, 355-359, 1993)。APJはアンギオテンシンレセプター(AT1)と低いホモロジーがあるが、CHO細胞でAPJを発現させてもアンギオテンシンIIとの反応が全く認められなかったためそのリガンドが何であるのかはこれまで不明であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
中枢神経系、循環器系、生殖器系、免疫系、消化器等で発現しているオーファンG蛋白質共役型レセプターであるAPJに対するリガンドは、医薬として有用であると考えられるが、これまでにその構造および機能については明らかにされていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、オーファンG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)をコードするcDNAを適当な手段で発現させた細胞を用い、特異的な細胞刺激(シグナル伝達)活性の測定等を指標に、該レセプター蛋白質がリガンドとして認識するポリペプチドをスクリーニングすることに成功した。
さらに、本発明者らは、該活性因子であるリガンドと上記レセプター蛋白質との結合性を変化させる化合物のスクリーニングを行なうことができることを見いだした。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対する結合能を有するポリペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(2)ポリペプチドが配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである上記(1)項記載のポリペプチド、
(3)ポリペプチドが配列番号:15、配列番号:38、配列番号:40または配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列を含有するポリペプチドである上記(1)項記載のポリペプチド、
(4)ポリペプチドが(a)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第6番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(b)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第40番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(c)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第42番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(d)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第47番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(e)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第61番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(f)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第65番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのN末端のアミノ酸(Gln)がピログルタミン酸化したアミノ酸配列を有するペプチド、(g)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第1番目から第25番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(h)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第6番目から第25番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(i)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第42番目から第64番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(j)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第61番目から第64番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(k)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第43番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(l)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第41番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(m)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第66番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(n)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第67番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(o)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第64番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(p)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第63番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(q)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第65番目から第76番目のアミノ酸配列を有するペプチドまたは(r)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第65番目から第75番目のアミノ酸配列を有するペプチドである上記(1)項記載のポリペプチド、
(5)ポリペプチドが配列番号:15、配列番号:38、配列番号:40または配列番号:42で表されるアミノ酸配列の第65番目から第77番目のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである上記(1)項記載のポリペプチド、
(6)ポリペプチドがpGlu Arg Pro Arg Leu Ser His Lys Gly Pro Met Pro Pheで表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドである上記(1)記載のポリペプチド、
(7)ポリペプチドが配列番号:15、配列番号:38、配列番号:40または配列番号:42で表されるアミノ酸配列の第42番目から第77番目のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである上記(1)項記載のポリペプチド、
(8)前駆体が、配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである上記(1)項記載のポリペプチド、
(9)前駆体が、配列番号:38で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである上記(1)項記載のポリペプチド、
(10)前駆体が、配列番号:40で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである上記(1)項記載のポリペプチド、
(11)前駆体が、配列番号:42で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである上記(1)項記載のポリペプチド、
(12)配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対する結合能を有するポリペプチドもしくはその前駆体をコードする塩基配列を有するDNAを含有するDNA、
(13)ポリペプチドが配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである上記(12)項記載のDNA、
(14)ポリペプチドが配列番号:15、配列番号:38、配列番号:40または配列番号:42で表されるアミノ酸配列の第65番目から第77番目のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである上記(12)項記載のDNA、
(15)ポリペプチドが配列番号:15、配列番号:38、配列番号:40または配列番号:42で表されるアミノ酸配列の第42番目から第77番目のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである上記(12)項記載のDNA、
(16)前駆体が、配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである上記(12)項記載のDNA、
(17)前駆体が、配列番号:38で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである上記(12)項記載のDNA、
(18)前駆体が、配列番号:40で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである上記(12)項記載のDNA、
(19)前駆体が、配列番号:42で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである上記(12)項記載のDNA、
(20)上記(12)項記載のDNAを含有する組換えベクター、
(21)上記(12)項記載のDNAまたは上記(20)項記載の組換えベクターを保持する形質転換体、
(22)上記(21)項記載の形質転換体を培養することを特徴とする上記(1)項記載のポリペプチド、その部分ペプチドまたはその塩の製造法、
(23)上記(1)項記載のポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる医薬、
(24)上記(12)項記載のDNAを含有してなる医薬、
(25)中枢神経機能調節剤、循環機能調節剤、心臓機能調節剤、免疫機能調節剤、消化器機能調節剤、代謝機能調節剤または生殖器機能調節剤である上記(23)項または上記(24)項記載の医薬、
(26)上記(1)項記載のポリペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(27)上記(26)項記載の抗体を含有してなる診断剤、
(28)上記(1)項記載のポリペプチドまたはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩と配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質を用いることを特徴とする配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質と上記(1)項記載のポリペプチドまたはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法などに関する。
【0007】
さらに、本発明は、
(29)哺乳動物由来である上記(1)項記載のポリペプチド、
および
(30)痴呆、鬱病、多動児(微細脳障害)症候群、意識障害、不安障害、精神***症、恐怖症、成長ホルモン分泌障害、過食症、多食症、高コレステロール血症、高グリセリド血症、高脂血症、高プロラクチン血症、糖尿病、癌、膵炎、腎疾患、ターナー症候群、神経症、リウマチ関節炎、脊髄損傷、一過性脳虚血発作、筋萎縮性側索硬化症、急性心筋梗塞、脊髄小脳変性症、骨折、創傷、アトピー性皮膚炎、骨粗鬆症、喘息、てんかん、不妊症、動脈硬化、肺気腫、肺水腫、乳汁分泌不全またはエイズなどの疾病の治療・予防剤である上記(23)または(25)項記載の医薬などを提供するものである。
【0008】
本発明におけるリガンドポリペプチドに対するG蛋白質共役型レセプター蛋白質に関して、具体的には、
(31)配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とするG蛋白質共役型レセプター蛋白質またはその塩、または
(32)蛋白質が、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列中の1個以上30個以下、好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列に1個以上30個以下、好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が付加した(または挿入された)アミノ酸配列、あるいは配列番号:3で表わされるアミノ酸配列中の1個以上30個以下、好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有する蛋白質である上記(31)項記載のG蛋白質共役型レセプター蛋白質またはその塩などに関する。
【0009】
本明細書において、「実質的に同一」とはタンパク質の活性、例えば、リガンドと受容体の結合活性、生理的な特性などが、実質的に同じことを意味する。アミノ酸の置換、欠失、付加あるいは挿入はしばしばポリペプチドの生理的な特性や化学的な特性に大きな変化をもたらさないが、こうした場合その置換、欠失、付加あるいは挿入を施されたポリペプチドは、そうした置換、欠失、付加あるいは挿入のされていないものと実質的に同一であるとされるであろう。該アミノ酸配列中のアミノ酸の実質的に同一な置換物としては、たとえばそのアミノ酸が属するところのクラスのうち他のアミノ酸類から選ぶことができうる。非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としてはグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としてはアルギニン、リジン、ヒスチジンなどが挙げられる。負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などがあげられる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のリガンドポリペプチドは、G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)に結合することができるものであればいかなるものでもよい。具体的には、▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチド、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチド、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチド、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチド、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチド、などを含有するポリペプチドなどがあげられる。
【0011】
本発明のリガンドポリペプチド(以下、単にポリペプチドと略称する場合がある)、その製造法および用途を以下にさらに詳細に説明する。
本発明の上記リガンドポリペプチドとしては、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる組織(たとえば、下垂体、膵臓、脳、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管、血管、心臓など)または細胞などに由来するポリペプチドであって、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドであれば如何なるものであってもよく、具体的には、▲1▼配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチド、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチド、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチド、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチド、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチドなどを含有するものであればよい。例えば、本発明のリガンドポリペプチドとしては、▲1▼配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するポリペプチドなどの他に、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と約50〜99.9%(好ましくは70〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.9%)の相同性を有するアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するポリペプチドと実質的に同質の活性を有するポリペプチド、▲2▼配列番号:15で表される前駆体の部分ペプチドと実質的に同質の活性を有するポリペプチド、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチドと実質的に同質の活性を有するポリペプチド、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチドと実質的に同質の活性を有するポリペプチドまたは▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する前駆体の部分ペプチドと実質的に同質の活性を有するポリペプチド、などが挙げられる。実質的に同質の活性としては、例えばレセプター結合活性、シグナル伝達活性などが挙げられる。
実質的に同質とは、レセプター結合活性などが性質的に同質であることを示す。したがって、レセプター結合活性の強さなどの強弱、ポリペプチドの分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
【0012】
本発明のポリペプチドとして具体的には、▲1▼配列番号:1で表わされるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列、などで表わされるアミノ酸配列を含有するマウス脳、ラット脳、ブタ脳、ブタ小腸、ウシ視床下部、ウシ胃、ヒト視床下部またはヒト肺由来のポリペプチドなどが挙げられる。
さらに、▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列などと同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはその部分ペプチドに対して1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加あるいは挿入されているアミノ酸配列を含有するポリペプチドは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとして挙げられる。例えば、▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列に1個以上20個以下、好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が付加した(または挿入された)アミノ酸配列、▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するポリペプチドなどである。
さらに、本発明のポリペプチドもしくは部分ペプチドには、GlnのN端側が生体内で切断され、該Glnがピログルタミン酸化したものなども含まれる。
本発明の前駆体とは、本発明のリガンドペプチドをその部分配列として含有する蛋白であればいかなるものであってもよく、具体的には、配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白などがあげられる(以下、前記のリガンドポリペプチドとともに本発明のポリペプチドまたはリガンドポリペプチドと称することがある)。
また、本発明のポリペプチドの分子量は約1000〜10000ダルトン、好ましくは約1000〜約5000ダルトン、より好ましくは、約1000〜約3000ダルトンである。
本明細書における(ポリ)ペプチドはペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列などを含有するポリペプチドはC末端が通常カルボキシル基(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)であるが、C末端がアミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)であってもよい。エステルのRとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリルなどのフェニル−C1-2アルキル、もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキルなどのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチルエステルなどが挙げられる。▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列などを含有するポリペプチドがC末端以外にカルボキシル基またはカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のポリペプチドに含まれる。この時のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
本発明のポリペプチドの塩としては、生理学的に許容される塩基(例えばアルカリ金属など)や酸(有機酸、無機酸)との塩が用いられるが、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のポリペプチドは、ヒトや温血動物の組織または細胞からポリペプチドを精製する方法によって製造することもできるし、後述のポリペプチド合成法に準じて製造することもできる。また、後述するポリペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。
ヒトや温血動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや温血動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行い、該抽出液を、塩析、透析、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0013】
上記したように本発明のポリペプチドは、自体公知のポリペプチドの合成法に従って、あるいは本発明のポリペプチドを含有するポリペプチドを適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のポリペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としてはたとえば、以下の▲1▼〜▲5▼に記載された方法が挙げられる。
▲1▼M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
▲2▼SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
▲3▼泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
▲4▼矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
▲5▼矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、たとえば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明のポリペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるポリペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0014】
ポリペプチドのアミド体は、アミド形成に適した市販のペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするペプチドの配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、必要に応じて高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のポリペプチドを取得する。
上記した保護されたアミノ酸の縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としてはDCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどが挙げられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBtなど)とともに保護されたアミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護されたアミノ酸の活性化を行ったのちに樹脂に添加することができる。保護されたアミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。たとえばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジンなどの三級アミン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5ないし4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化して、後の反応に影響を及ぼさないようにすることができる。
原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、たとえば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが挙げられる。カルボキシル基の保護基としては、たとえばRとして上記したC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C7-14アラルキル基の他、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシル基およびベンジルオキシカルボニルヒドラジド、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどが挙げられる。
セリンおよびスレオニンの水酸基は、たとえばエステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては例えばアセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素から誘導される基などが挙げられる。また、エーテル化に適する基としては、たとえばベンジル基、テトラヒドロピラニル基、ターシャリーブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、たとえばBzl、Cl2-Bzl、2−ニトロベンジル、Br-Z、ターシャリーブチルなどが挙げられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが挙げられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、たとえば対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(たとえば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、N-ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル]などが挙げられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、たとえば対応するリン酸アミドが挙げられる。
【0015】
保護基の除去(脱離)方法としては、たとえばPd黒あるいはPd炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども挙げられる。上記酸処理による脱離反応は一般に−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においてはアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護および保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。
ポリペプチドのアミド体を得る別の方法としては、まず、カルボキシル末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(またはアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ポリペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のポリペプチドのアミド体を得ることができる。
ポリペプチドのエステル体を得るにはカルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ポリペプチドのアミド体と同様にして所望のポリペプチドのエステル体を得ることができる。
【0016】
本発明のポリペプチドとしては、上記した▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列などと同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドと同様の作用(中枢神経機能調節作用、心臓機能調節作用、免疫機能調節作用、消化器機能調節作用、代謝機能調節剤または生殖器機能調節作用など)を有しているものであれば、どのようなペプチドであってもよい。このようなペプチドとしてはたとえば、上記した▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列などを有するペプチドから1個以上のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列を有するペプチドを挙げることができる。具体的には、(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目から第12番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(2)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目から第13番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(3)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目から第14番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(4)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目から第15番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(5)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目から第16番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(6) 配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するペプチドなどが好ましい。
なかでも、配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するペプチドなどが好ましい。
また、配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するポリペプチドとして具体的には、
(a)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第6番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(b)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第40番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(c)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第42番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(d)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第47番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(e)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第61番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(f)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第65番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのN末端のアミノ酸(Gln)がピログルタミン酸化したもの、(g)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第1番目から第25番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(h)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第6番目から第25番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(i)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第42番目から第64番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(j)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第61番目から第64番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(k)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第43番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(l)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第41番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(m)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第66番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(n)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第67番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(o)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第64番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(p)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第63番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(q)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第65番目から第76番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(r)配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第65番目から第75番目のアミノ酸配列を有するペプチド、などがあげられ、なかでも配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第65番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのN末端のアミノ酸(Gln)がピログルタミン酸化したものまたは配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第42番目から第77番目のアミノ酸配列を有するペプチドが好ましく用いられる。特に、配列番号:15、38、40または42で表されるアミノ酸配列の第65番目から第77番目のアミノ酸配列で表わされるペプチドまたはそのN末端のアミノ酸(Gln)がピログルタミン酸化したもの(pGlu Arg Pro Arg Leu Ser His Lys Gly Pro Met Pro Phe)が好ましい。さらにpGlu Arg Pro Arg Leu Ser His Lys Gly Pro Met Pro Pheで表されるアミノ酸配列の部分アミノ酸配列を有するペプチドも本発明の(ポリ)ペプチドとして好ましく用いられる。
本発明のポリペプチドはさらに抗リガンドポリペプチド抗体の調製のための抗原として用いることができる。このような抗原としてのポリペプチドは上記した本発明のポリペプチドの他に、上記本発明のポリペプチドのN末端ペプチド、C末端ペプチド、中央部分のペプチドなどの部分ペプチドなどが用いられる。
部分ペプチドとしては、個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
本明細書における部分ペプチドもC末端がアミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)であってもよい。ここでエステル基の例としては上記したポリペプチドの場合と同様である。該部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基またはカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ペプチドに含まれる。この時のエステルとしては、例えば、上記したC末端のエステルなどが用いられる。
本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチドは、さらに、機能あるいは性質がよく知られているタンパク質との融合タンパク質であってもよい。
本発明のポリペプチドの部分ペプチドの塩としては、前述のポリペプチドの塩と同様のものが用いられる。
本発明のポリペプチドの部分ペプチドまたはそのアミド、エステルもしくはその塩は、上記したポリペプチドの場合と同様の合成法に従って、あるいは本発明のポリペプチドを適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。
【0017】
本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対する結合能を有するDNAを含有するDNAであればいかなるものであってもよい。具体的には、本発明の▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した組織・細胞由来のcDNA、前記した組織・細胞由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターはバクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した組織・細胞よりRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction (以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
より具体的には、▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列、または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列を含有するマウス全脳、ラット全脳、ウシ視床下部、ウシ胃由来、ヒト視床下部またはヒト肺由来のポリペプチドをコードするDNAとしては、(1)▲1▼配列番号:2で表される塩基配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:16で表わされる塩基配列の部分配列、▲3▼配列番号:39で表される塩基配列の部分配列、▲4▼配列番号:41で表される塩基配列の部分配列、または▲5▼配列番号:43で表される塩基配列の部分配列を有するDNAを含有するDNA、(2)ストリンジェントな条件下で(1)で規定された配列とハイブリダイズする哺乳動物由来のDNA、(3)遺伝コードの縮重のため(1)および(2)に定められている配列とハイブリッド形成しないが、同一アミノ酸配列をもつポリペプチドをコードするDNAなどが用いられる。ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じた方法に従って行うことができる。上記ストリンジェントな条件としては、例えば42℃、50%ホルムアミド、4×SSPE(1×SSPE=150mM NaCl, 10mM NaH2PO4・H2O, 1mM EDTA pH7.4)、5×デンハート溶液、0.1%SDSである。
上記配列番号:2で表される塩基配列において、YはTまたはCを、NはT,C,AまたはGを、RはAまたはGを、MはCまたはAを、WはTまたはAを、SはCまたはGを示す。
また、本発明の▲1▼配列番号:1で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、▲2▼配列番号:15で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲3▼配列番号:38で表されるアミノ酸配列の部分配列、▲4▼配列番号:40で表されるアミノ酸配列の部分配列または▲5▼配列番号:42で表されるアミノ酸配列の部分配列などを含有するポリペプチドをコードするDNAの中で例えば6個以上51個以下(好ましくは9個以上30個以下、さらに好ましくは12個以上30個以下)の部分塩基配列を含有するDNA断片はDNA検出プローブとしても好ましく用いられる。
【0018】
本発明のポリペプチドをコードするDNAは以下の遺伝子工学的手法によっても製造することができる。
本発明のポリペプチドを完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のポリペプチドの部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いて自体公知のPCR法によって前記DNAライブラリー等から目的とするDNAを増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを例えば本発明のポリペプチドの一部あるいは全領域を有するDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば Molecular Cloning(2nd ed.;J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行われる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行う。
クローン化された本発明のポリペプチドをコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のポリペプチドの発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のポリペプチドをコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
【0019】
形質転換する際の宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどが利用できる。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、CHO(dhfr-)細胞を用いてDHFR遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、ポリペプチドまたはその部分ペプチドのN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、phoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、メイテイングファクターα(MFα)・シグナル配列、インベルターゼ・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、例えばインシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築されたポリペプチドをコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0020】
宿主としては、たとえばエシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫または昆虫細胞、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)〕,120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、たとえばバチルス・サチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
【0021】
酵母としては、たとえばサッカロマイセス セレビシエ(Saccaromyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87−11A,DKD−5D,20B−12などが用いられる。
昆虫としては、例えばカイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞〔以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィトロ(in Vitro),13巻,213−217頁(1977年)〕などが用いられる。
動物細胞としては、たとえばサルCOS−7細胞,Vero細胞,チャイニーズハムスター細胞CHO,DHFR遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(dhfr-CHO細胞),マウスL細胞,マウス3T3細胞、マウスミエローマ細胞,ヒトHEK293細胞、ヒトFL細胞、293細胞、C127細胞、BALB3T3細胞、Sp−2/O細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、たとえばプロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なわれる。
バチルス属菌を形質転換するには、たとえばモレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行われる。
酵母を形質転換するには、たとえばプロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)に記載の方法に従って行なわれる。
【0022】
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、たとえばバイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6巻, 47−55頁(1988年)などに記載の方法に従って行なわれる。
動物細胞を形質転換するには、たとえばヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なわれる。
発現ベクターの細胞への導入方法としては、例えば、リポフェクション法〔Felgner, P.L. et al. プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proceedings of the Natinal Academy of Sciences of the United States of America),84巻,7413頁(1987年)〕、リン酸カルシウム法〔Graham, F. L. and van der Eb, A. J.ヴィロロジー(Virology),52巻,456−467頁(1973年)〕、電気穿孔法〔Nuemann, E. et al. エンボ・ジャーナル(EMBO J.),1巻,841−845頁(1982年)〕等が挙げられる。
このようにして、本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体が得られる。
なお、動物細胞を用いて、本発明のポリペプチド等を安定に発現させる方法としては、上記の動物細胞に導入された発現ベクターが染色体に組み込まれた細胞をクローン選択によって選択する方法がある。具体的には、上記の選択マーカーを指標にして形質転換体を選択する。さらに、このように選択マーカーを用いて得られた動物細胞に対して、繰り返しクローン選択を行なうことにより本発明のポリペプチド等の高発現能を有する安定な動物細胞株を得ることができる。また、dhfr遺伝子を選択マーカーとして用いた場合、MTX濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、dhfr遺伝子とともに、本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチド等をコードするDNAを細胞内で増幅させて、さらに高発現の動物細胞株を得ることもできる。
上記の形質転換体を本発明のポリペプチド等をコードするDNAが発現可能な条件下で培養し、本発明のポリペプチド等を生成、蓄積せしめることによって、本発明のポリペプチド等を製造することができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、たとえばアンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としてはたとえば塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0023】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えばグルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、たとえば3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、たとえばバークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、「プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、「プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0024】
宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、たとえば約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Seience),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Jounal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
特にCHO(dhfr-)細胞およびdhfr遺伝子を選択マーカーとして用いる場合には、チミジンをほとんど含まない透析ウシ胎児血清を含むDMEM培地を用いるのが好ましい。
【0025】
上記培養物から本発明のポリペプチドを分離精製するには、例えば下記の方法により行なうことができる。
本発明のポリペプチドを培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりポリペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用い得る。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのたんぱく変性剤や、トリトンX−100(登録商標。以下、TMと省略することがある。)などの界面活性剤が含まれていてもよい。
培養液中にポリペプチドが分泌される場合には、培養終了後、自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる本発明のポリペプチドの精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法やクロマトフォーカシングなどの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られる本発明のポリペプチドが遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生する本発明のポリペプチドを、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する本発明のポリペプチドの存在は特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
【0026】
本発明のポリペプチドをコードするDNAまたは本発明のポリペプチドは、▲1▼G蛋白質共役型レセプター蛋白質のリガンドの一部、あるいは全長の合成、▲2▼本発明のポリペプチドの有する生理作用の探索、▲3▼合成オリゴヌクレオチドプローブあるいはPCRのプライマーの作成、▲4▼G蛋白質共役型レセプター蛋白質のリガンドや前駆体蛋白質をコードするDNAの入手、▲5▼組換え型レセプター蛋白質の発現系を用いたレセプター結合アッセイ系の開発と医薬品候補化合物のスクリーニング、▲6▼抗体および抗血清の入手、▲7▼DNA、RNA、抗体または抗血清を用いた診断薬の開発、▲8▼中枢神経機能調節剤、循環機能調節剤、心臓機能調節剤、免疫機能調節剤、消化器機能調節剤、代謝機能調節剤あるいは生殖器機能調節剤などの医薬の開発、▲9▼遺伝子治療等に用いることができる。
特に、後述の組換え型G蛋白質共役型レセプター蛋白質の発現系を用いたレセプター結合アッセイ系によって、ヒトなどの温血動物に特異的なG蛋白質共役型レセプターアゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングすることができ、該アゴニストまたはアンタゴニストを各種疾病の予防・治療剤などとして使用することができる。
【0027】
さらに、上記▲8▼に関し、本発明のポリペプチドまたはそれをコードするDNAは中枢神経系、循環器系、心臓、免疫系、消化器系、代謝系または生殖器系などで発現しているG蛋白質共役型レセプター蛋白質がリガンドとして認識するものであるので、安全で低毒性な医薬として有用である。本発明のポリペプチドまたはそれをコードするDNAは中枢神経機能調節作用、循環機能調節作用、心臓機能調節作用、免疫機能調節作用、消化器機能調節作用、代謝機能調節作用あるいは生殖器機能調節作用などに関与していることから、たとえば老人性痴呆、脳血管性痴呆、系統変成型の退行変成疾患(例:アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、ハンチントン病など)に起因する痴呆、感染性疾患(例:クロイツフェルト−ヤコブ病などの遅発ウイルス感染症など)に起因する痴呆、内分泌性・代謝性・中毒性疾患(例:甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、アルコール中毒、各種薬剤・金属・有機化合物による中毒など)に起因する痴呆、腫瘍性疾患(例:脳腫瘍など)に起因する痴呆、外傷性疾患(例:慢性硬膜下血腫など)に起因する痴呆などの痴呆、鬱病、多動児(微細脳障害)症候群、意識障害、不安障害、精神***症、恐怖症、成長ホルモン分泌障害(例:巨人症、末端肥大症など)、過食症、多食症、高コレステロール血症、高グリセリド血症、高脂血症、高プロラクチン血症、糖尿病(例、糖尿病性合併症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症など)、癌(例:乳癌、リンパ性白血病、肺癌、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌など)、膵炎、腎疾患(例:慢性腎不全、腎炎など)、ターナー症候群、神経症、リウマチ関節炎、脊髄損傷、一過性脳虚血発作、筋萎縮性側索硬化症、急性心筋梗塞、脊髄小脳変性症、骨折、創傷、アトピー性皮膚炎、骨粗鬆症、喘息、てんかん、不妊症、動脈硬化、肺気腫、肺水腫または乳汁分泌不全などの疾病の治療・予防剤として用いることができる。さらに手術後の栄養状態改善剤、昇圧剤などとしても用いることができる。
加えて、HIV感染症、エイズ(AIDS(Acquired Immune Deficiency Syndrome):後天性免疫不全症候群)などの治療・予防剤として用いることができる。
本発明のポリペプチドまたはそれをコードするDNAを上述の医薬として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、必要に応じて糖衣や腸溶性被膜を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物またはその塩を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。本発明のDNAを用いる場合は、該DNAを単独またはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従がって実施することができる。
【0028】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施にしたがって処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノール)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(たとえばポリソルベート80(TM)、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えばヒトや哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、マントヒヒ、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
本発明のポリペプチドまたはそれをコードするDNAの投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人の肺気腫患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1から100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、たとえば注射剤の形では成人の肺気腫患者(体重60kgとして)への投与においては、一日につき約0.01から30mg程度、好ましくは約0.1から20mg程度、より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0029】
上記本発明のポリペプチドに対するG蛋白質共役型レセプター蛋白質としては、ヒトや温血動物(例えば、哺乳温血動物(例、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ウシ、ウマ、ブタ)、鳥類(例、ニワトリ、ハト、アヒル、ガチョウ、ウズラ)など)のあらゆる組織(例えば、下垂体、膵臓、脳、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管、血管、心臓など)または細胞などに由来するG蛋白質共役型レセプター蛋白質であって、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するものであれば如何なるものであってもよい。すなわち、G蛋白質共役型レセプター蛋白質としては、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質などの他に、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と約90〜99.9%の相同性を有するアミノ酸配列を含有し、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質などが挙げられる。
これらの蛋白質が示す活性としては、例えばリガンド結合活性、シグナル伝達などが挙げられる。実質的に同質とは、リガンド結合活性などが性質的に同質であることを示す。したがって、リガンド結合活性の強さなどの強弱、レセプター蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
【0030】
さらに、G蛋白質共役型レセプター蛋白質には、N末端のMetが保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、GlnのN端側が生体内で切断され、該Glnがピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
【0031】
G蛋白質共役型レセプター蛋白質の塩としては、上記したポリペプチドの塩と同様のものが挙げられる。
G蛋白質共役型レセプター蛋白質またはその塩またはその部分ペプチドは、ヒトや温血動物の組織または細胞から自体公知の蛋白質の精製方法によって製造することもできるし、前述のポリペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養する方法と同じ方法によっても製造することができる。また、前述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
G蛋白質共役型レセプター蛋白質の部分ペプチドとしては、例えば、G蛋白質共役型レセプター蛋白質分子のうち、細胞膜の外に露出している部位などが用いられる。すなわちG蛋白質共役型レセプター蛋白質の疎水性プロット解析において細胞外領域(親水性(Hydrophilic)部位)であると分析された部分を含むペプチドである。また、疎水性(Hydrophobic)部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
G蛋白質共役型レセプター蛋白質の部分ペプチドの塩としては、上記したリガンドポリペプチドの塩と同様のものが用いられる。
【0032】
G蛋白質共役型レセプター蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:3のアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するG蛋白質共役型レセプター蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、組織・細胞由来のcDNA、組織・細胞由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターはバクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、組織・細胞よりRNA画分を調製したものを用いて直接自体公知のRT-PCR法によって増幅することもできる。
具体的には、配列番号:3のアミノ酸配列を含有するG蛋白質共役型レセプター蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:4で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
【0033】
本発明のポリペプチド、該ポリペプチドをコードするDNAおよび抗体などの用途について、以下に具体的に説明する。
(1)リガンドポリペプチド欠乏症の予防・治療剤
G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)に対する本発明のポリペプチドが有する作用に応じて、本発明のポリペプチドをコードするDNAをリガンドポリペプチドまたはG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)欠乏症の予防・治療剤としても使用することができる。
例えば、生体内において、本発明のポリペプチドまたはG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)が減少しているためにリガンドの生理作用(中枢神経機能調節作用,循環機能調節作用、心臓機能調節作用、免疫機能調節作用、消化器機能調節作用、代謝機能調節作用あるいは生殖器機能調節作用など)が期待できない患者がいる場合に、(イ)本発明のポリペプチドをコードするDNAを該患者に投与し発現させることによって、あるいは(ロ)脳細胞などに本発明のポリペプチドをコードするDNAを挿入し発現させた後に、該脳細胞を該患者に移植することなどによって、該患者の脳細胞におけるリガンドポリペプチドの量を増加させ、リガンドポリペプチドの作用を充分に発揮させることができる。したがって、本発明のポリペプチドをコードするDNAは、安全で低毒性なリガンドポリペプチド欠乏症の予防・治療剤などとして用いることができる。
上記DNAを上記治療剤として使用する場合は、該DNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、上記した本発明のポリペプチドもしくはその部分ペプチドをコードするDNAを医薬として使用する場合と同様の手段に従って実施することができる。
【0034】
(2)リガンドポリペプチドに対するG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)の定量法
本発明のポリペプチドはG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)またはその塩や該レセプター蛋白質の部分ペプチドまたはその塩に対して結合性を有しているので、生体内におけるG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)もしくはその塩、または該レセプター蛋白質の部分ペプチドまたはその塩の濃度を感度良く定量することができる。
この定量法は、例えば競合法と組み合わせることによって用いることができる。すなわち、被検体を本発明のポリペプチドと接触させることによって被検体中のG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)もしくはその塩、またはG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)の部分ペプチドもしくはその塩の濃度を測定することができる。具体的には、例えば、以下の▲1▼または▲2▼などに記載の自体公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って用いることができる。
▲1▼入江寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)
▲2▼入江寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)
【0035】
(3)G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)と、本発明のポリペプチドまたはそれらのアミド、エステルもしくはそれら塩(以下、リガンドまたはリガンドポリペプチドと略称する場合がある。)との結合性を変化させる化合物のスクリーニング方法
G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)またはその塩や該部分ペプチドもしくはその塩を用いるか、または組換え型レセプター蛋白質(APJ)の発現系を構築し、該発現系を用いたレセプター結合アッセイ系を用いることによって、リガンドポリペプチドとG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)との結合性を変化させる化合物(例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)またはその塩をスクリーニングすることができる。このような化合物には、G蛋白質共役型レセプター(APJ)を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を有する化合物(即ちG蛋白質共役型レセプターアゴニスト)と該細胞刺激活性を有しない化合物(即ちG蛋白質共役型レセプターアンタゴニスト)などが含まれる。「リガンドとの結合性を変化させる」とは、リガンドとの結合を阻害する場合とリガンドとの結合を促進する場合の両方を包含するものである。
【0036】
すなわち、本発明は、(i)G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)もしくはその塩または該レセプター蛋白質の部分ペプチドもしくはその塩に、本発明のリガンドを接触させた場合と(ii)上記したG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)もしくはその塩または該レセプター蛋白質の部分ペプチドもしくはその塩に、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を接触させた場合との比較を行なうことを特徴とする本発明のポリペプチドと上記したG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)上記したG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)または該レセプター蛋白質の部分ペプチドに、本発明のポリペプチドを接触させた場合と(ii)上記したG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)または該レセプター蛋白質の部分ペプチドに、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を接触させた場合における、例えば該G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)または該レセプター蛋白質の部分ペプチドに対するリガンドの結合量、細胞刺激活性などを測定して、比較する。
【0037】
本発明のスクリーニング方法は具体的には、
▲1▼標識した本発明のポリペプチドを、上記したG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)もしくはその塩またはG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)の部分ペプチドまたはその塩に接触させた場合と、標識した本発明のポリペプチドおよび試験化合物をG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)もしくはその塩またはG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)の部分ペプチドもしくはその塩に接触させた場合における、標識した本発明のポリペプチドの該G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)もしくはその塩、または該部分ペプチドもしくはその塩に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
▲2▼標識した本発明のポリペプチドを、G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、標識した本発明のポリペプチドおよび試験化合物をG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、標識した本発明のポリペプチドの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
▲3▼標識した本発明のポリペプチドを、G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)に接触させた場合と、標識した本発明のポリペプチドおよび試験化合物をG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)に接触させた場合における、標識した本発明のポリペプチドの該G蛋白質共役型レセプター蛋白質に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
【0038】
▲4▼G蛋白質共役型レセプター(APJ)を活性化する化合物(例えば、本発明のポリペプチド)をG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)を含有する細胞に接触させた場合と、G蛋白質共役型レセプター(APJ)を活性化する化合物および試験化合物をG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)を含有する細胞に接触させた場合における、G蛋白質共役型レセプター(APJ)を介した細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
▲5▼G蛋白質共役型レセプター(APJ)を活性化する化合物(例えば、本発明のポリペプチドなど)をG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)に接触させた場合と、G蛋白質共役型レセプター(APJ)を活性化する化合物、および試験化合物をG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)に接触させた場合における、G蛋白質共役型レセプター(APJ)を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法などである。
【0039】
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いるG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)としては、上記のG蛋白質共役型レセプター蛋白質またはG蛋白質共役型レセプター蛋白質の部分ペプチドを含有するものであれば何れのものであってもよいが、ヒトや温血動物の臓器の膜画分などが好適である。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させたG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)などが適している。
G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)を製造するには、前述の方法などが用いられる。
本発明のスクリーニング方法において、G蛋白質共役型レセプター蛋白質を含有する細胞あるいは該細胞膜画分などを用いる場合、後述の調製法に従えばよい。
G蛋白質共役型レセプター蛋白質を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法はそれ自体公知の方法に従って行うことができる。
G蛋白質共役型レセプター蛋白質を含有する細胞としては、G蛋白質共役型レセプター蛋白質を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、前述の大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。
膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1分〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したG蛋白質共役型レセプター蛋白質と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
【0040】
該G蛋白質共役型レセプター蛋白質を含有する細胞や膜画分中のG蛋白質共役型レセプター蛋白質の量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0041】
本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプターとの結合性を変化させる化合物をスクリーニングする前記の▲1▼〜▲3▼を実施するためには、適当なG蛋白質共役型レセプター画分と、標識した本発明のポリペプチドが用いられる。G蛋白質共役型レセプター画分としては、天然型のG蛋白質共役型レセプター画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型G蛋白質共役型レセプター画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性などを示す。標識したリガンドとしては、標識したリガンド、標識したリガンドアナログ化合物などが用いられる。例えば〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識されたリガンドなどを利用することができる。
具体的には、本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプター蛋白質との結合性を変化させる化合物のスクリーニングを行うには、まずG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりレセプター標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとレセプターとの結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるレセプターや本発明のポリペプチドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01ml〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(5000cpm〜500000cpm)の標識した本発明のポリペプチドを添加し、同時に10-4〜10-1μMの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識の本発明のポリペプチドを加えた反応チューブも用意する。反応は0℃から50℃、望ましくは4℃から37℃で20分から24時間、望ましくは30分から3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B0)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B0−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0042】
本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする前記の▲4▼〜▲5▼の方法を実施するためには、G蛋白質共役型レセプター蛋白質を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。具体的には、まず、G蛋白質共役型レセプター蛋白質を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行うにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当なG蛋白質共役型レセプター蛋白質を発現した細胞が必要である。本発明のG蛋白質共役型レセプター蛋白質を発現した細胞としては、前述の組換え型G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)発現細胞株などが望ましい。
試験化合物としては、例えばペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0043】
本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キットは、G蛋白質共役型レセプター蛋白質またはその塩、G蛋白質共役型レセプター蛋白質の部分ペプチドまたはその塩、G蛋白質共役型レセプター蛋白質を含有する細胞、あるいはG蛋白質共役型レセプター蛋白質を含有する細胞の膜画分、および本発明のポリペプチドを含有するものである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
▲1▼測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
▲2▼G蛋白質共役型レセプター(APJ)標品
G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
▲3▼標識リガンド
3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識したリガンド
適当な溶媒または緩衝液に溶解したものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
▲4▼リガンド標準液
本発明のポリペプチドを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
【0044】
2.測定法
▲1▼12穴組織培養用プレートにて培養したG蛋白質共役型レセプター蛋白質を発現させた細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
▲2▼10-3〜10-10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識した本発明のペプチドを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物のかわりに10-3Mのリガンドを5μl加えておく。
▲3▼反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識リガンドを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
▲4▼液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式〔数1〕で求める。
[数1]
PMB=[(B−NSB)/(B0−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の値
NSB:Non-specific Binding(非特異的結合量)
0 :最大結合量
【0045】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプター(APJ)との結合を変化させる(結合を阻害あるいは促進する)化合物であり、具体的にはG蛋白質共役型レセプターを介して細胞刺激活性を有する化合物またはその塩(いわゆるG蛋白質共役型レセプターアゴニスト)、あるいは該刺激活性を有しない化合物(いわゆるG蛋白質共役型レセプターアンタゴニスト)である。
該化合物としては、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記G蛋白質共役型レセプターアゴニストであるかアンタゴニストであるかの具体的な評価方法は以下の(i)または(ii)に従えばよい。
(i)前記▲1▼〜▲3▼のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、本発明のポリペプチドとG蛋白質共役型レセプターとの結合性を変化させる(特に、結合を阻害する)化合物を得た後、該化合物が上記したG蛋白質共役型レセプターを介する細胞刺激活性を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩はG蛋白質共役型レセプターアゴニストであり、該活性を有しない化合物またはその塩はG蛋白質共役型レセプターアンタゴニストである。
(ii)(a)試験化合物をG蛋白質共役型レセプター蛋白質を含有する細胞に接触させ、上記G蛋白質共役型レセプターを介した細胞刺激活性を測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩はG蛋白質共役型レセプターアゴニストである。
(b)G蛋白質共役型レセプターを活性化する化合物(例えば、本発明のポリペプチドまたはG蛋白質共役型レセプターアゴニストなど)をG蛋白質共役型レセプター蛋白質を含有する細胞に接触させた場合と、G蛋白質共役型レセプターを活性化する化合物および試験化合物をG蛋白質共役型レセプター蛋白質を含有する細胞に接触させた場合における、G蛋白質共役型レセプターを介した細胞刺激活性を測定し、比較する。G蛋白質共役型レセプターを活性化する化合物による細胞刺激活性を減少させ得る化合物またはその塩はG蛋白質共役型レセプターアンタゴニストである。
該G蛋白質共役型レセプターアゴニストは、G蛋白質共役型レセプター蛋白質に対する本発明のポリペプチドが有する生理活性と同様の作用を有しているので、本発明のポリペプチドと同様に安全で低毒性な医薬として有用である。
逆に、G蛋白質共役型レセプターアンタゴニストは、G蛋白質共役型レセプター蛋白質に対する本発明のポリペプチドが有する生理活性を抑制することができるので、該レセプター活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のポリペプチドは中枢神経機能調節作用、循環機能調節作用、心臓機能調節作用、免疫機能調節作用、消化器機能調節作用、代謝機能調節作用あるいは生殖器機能調節作用などに関与していることから、上記したアゴニストあるいはアンタゴニストをたとえば老人性痴呆、脳血管性痴呆、系統変成型の退行変成疾患(例:アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、ハンチントン病など)に起因する痴呆、感染性疾患(例:クロイツフェルト−ヤコブ病などの遅発ウイルス感染症など)に起因する痴呆、内分泌性・代謝性・中毒性疾患(例:甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、アルコール中毒、各種薬剤・金属・有機化合物による中毒など)に起因する痴呆、腫瘍性疾患(例:脳腫瘍など)に起因する痴呆、外傷性疾患(例:慢性硬膜下血腫など)に起因する痴呆などの痴呆、鬱病、多動児(微細脳障害)症候群、意識障害、不安障害、精神***症、恐怖症、成長ホルモン分泌障害(例:巨人症、末端肥大症など)、過食症、多食症、高コレステロール血症、高グリセリド血症、高脂血症、高プロラクチン血症、低血糖症、下垂体機能低下症、下垂体性小人症、糖尿病(例:糖尿病性合併症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症など)、癌(例:乳癌、リンパ性白血病、肺癌、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌など)、膵炎、腎疾患(例:慢性腎不全、腎炎など)、ターナー症候群、神経症、リウマチ関節炎、脊髄損傷、一過性脳虚血発作、筋萎縮性側索硬化症、急性心筋梗塞、脊髄小脳変性症、骨折、創傷、アトピー性皮膚炎、骨粗鬆症、喘息、てんかん、不妊症、動脈硬化、肺気腫、肺水腫または乳汁分泌不全などの疾病の治療・予防剤として用いることができる。さらに催眠鎮静剤、手術後の栄養状態改善剤、昇圧剤、降圧剤などとしても用いることができる。
加えて、HIV感染症、エイズ(AIDS(Acquired Immune Deficiency Syndrome):後天性免疫不全症候群)などの治療・予防剤として用いることができる。
上記のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物の塩としては、例えば、薬学的に許容可能な塩などが用いられる。例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などがあげられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩あげられる。
無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などとの塩があげられる。
有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸などとの塩があげられる。
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルチニンなどとの塩があげられ、酸性アミノ酸との好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩があげられる。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩を上述の医薬として使用する場合、上記の本発明のポリペプチドを医薬として実施する場合と同様にして実施することができる。
【0046】
(4)本発明のポリペプチドに対する抗体または抗血清の製造
本発明のポリペプチドに対する抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体)または抗血清は、本発明のポリペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
例えば、ポリクローナル抗体は、後述の方法に従って製造することができる。
【0047】
[ポリクローナル抗体の作製]
本発明のポリペプチドに対するポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(ポリペプチド等抗原)とキャリアー蛋白質との複合体をつくり、後述のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物(例えば、哺乳温血動物(例、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ウシ、ウマ、ブタ)、鳥類(例、ニワトリ、ハト、アヒル、ガチョウ、ウズラ)など)に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のポリペプチドに対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテン(本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチド)との混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオピリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、上記温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取される。
抗血清中の本発明のポリペプチドに対する抗体価の測定は、後述のハイブリドーマ培養上清の抗体価の測定と同様にして測定できる。抗体の分離精製は、後述のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0048】
また、モノクローナル抗体は、後述の方法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクロナール抗体産生細胞の作製
本発明のポリペプチドは、温血動物(例えば、哺乳温血動物(例、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ウシ、ウマ、ブタ)、鳥類(例、ニワトリ、ハト、アヒル、ガチョウ、ウズラ)など)に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。
【0049】
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された上記の温血動物、たとえばマウスなどから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば後記の標識化ポリペプチドまたはその部分ペプチドと抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することによりなされる。融合操作は既知の方法、たとえばケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕等に従い実施できる。融合促進剤としてはポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としてはたとえばNS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などがあげられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
本発明のポリペプチドに対する抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、たとえば本発明のポリペプチド抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識した本発明のポリペプチドを加え、固相に結合した本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を検出する方法などがあげられる。
本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なわれる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なわれる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の本発明のポリペプチドに対する抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0050】
(b)モノクロナール抗体の精製
本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体の分離精製は通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行われる。
上記の(a)および(b)の方法に従って製造させる本発明のポリペプチドに対する抗体は、それぞれ本発明のポリペプチドを特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のポリペプチドの定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。すなわち、本発明は、例えば、
(i)本発明のポリペプチドに反応する抗体と、被検液および標識した本発明のポリペプチドとを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識した本発明のポリペプチドの割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明のポリペプチドの定量法、
(ii)被検液と担体上に不溶化した抗体および標識化された抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のポリペプチドの定量法において、一方の抗体が、本発明のポリペプチドのN端部を認識する抗体で、他方の抗体が本発明のポリペプチドのC端部に反応する抗体であることを特徴とする被検液中の本発明のポリペプチドの定量法を提供する。
【0051】
本発明のポリペプチドを認識するモノクローナル抗体を用いて本発明のポリペプチドの測定を行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')2 、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。本発明の抗体を用いる測定法は、 特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えばリガンドポリペプチド量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが挙げられる。放射性同位元素としては、例えば〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが、上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えばβ−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等が、蛍光物質としては、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが、発光物質としては、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどがそれぞれ挙げられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0052】
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常蛋白質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等が挙げられる。
サンドイッチ法においては不溶化した抗リガンドポリペプチド抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化抗リガンドポリペプチド抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中のリガンドポリペプチド量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。
標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による本発明のポリペプチドの測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる抗リガンドポリペプチド抗体は本発明のポリペプチドの結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。即ち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のポリペプチドのC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC末端部以外、例えばN末端部を認識する抗体が用いられる。
【0053】
本発明のポリペプチドに対する抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原と(F)と抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0054】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチドの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ〕(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ〕(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)など参照〕。
以上のように、本発明のポリペプチドに対する抗体を用いることによって、本発明のポリペプチドを感度良く定量することができる。
また、本発明のポリペプチドに対する抗体は、たとえば老人性痴呆、脳血管性痴呆、系統変成型の退行変成疾患(例:アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、ハンチントン病など)に起因する痴呆、感染性疾患(例:クロイツフェルト−ヤコブ病などの遅発ウイルス感染症など)に起因する痴呆、内分泌性・代謝性・中毒性疾患(例:甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、アルコール中毒、各種薬剤・金属・有機化合物による中毒など)に起因する痴呆、腫瘍性疾患(例:脳腫瘍など)に起因する痴呆、外傷性疾患(例:慢性硬膜下血腫など)に起因する痴呆などの痴呆、鬱病、多動児(微細脳障害)症候群、意識障害、不安障害、精神***症、恐怖症、成長ホルモン分泌障害(例:巨人症、末端肥大症など)、過食症、多食症、高コレステロール血症、高グリセリド血症、高脂血症、高プロラクチン血症、低血糖症、下垂体機能低下症、下垂体性小人症、糖尿病(例:糖尿病性合併症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症など)、癌(例:乳癌、リンパ性白血病、肺癌、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌など)、膵炎、腎疾患(例:慢性腎不全、腎炎など)、ターナー症候群、神経症、リウマチ関節炎、脊髄損傷、一過性脳虚血発作、筋萎縮性側索硬化症、急性心筋梗塞、脊髄小脳変性症、骨折、創傷、アトピー性皮膚炎、骨粗鬆症、喘息、てんかん、不妊症、動脈硬化、肺気腫、肺水腫または乳汁分泌不全などの診断剤(薬)として用いることができる。
加えて、HIV感染症、エイズ(AIDS(Acquired Immune Deficiency Syndrome):後天性免疫不全症候群)などの診断剤(薬)として用いることができる。
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commision on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
【0055】
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
Y :チミンまたはシトシン
N :チミン、シトシン、アデニンまたはグアニン
R :アデニンまたはグアニン
M :シトシンまたはアデニン
W :チミンまたはアデニン
S :シトシンまたはグアニン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
TFA :トリフルオロ酢酸
EIA :エンザイムイムノアッセイ
GlyまたはG :グリシン
AlaまたはA :アラニン
ValまたはV :バリン
LeuまたはL :ロイシン
IleまたはI :イソロイシン
SerまたはS :セリン
【0056】
ThrまたはT :スレオニン
CysまたはC :システイン
MetまたはM :メチオニン
GluまたはE :グルタミン酸
AspまたはD :アスパラギン酸
LysまたはK :リジン
ArgまたはR :アルギニン
HisまたはH :ヒスチジン
PheまたはF :フェニルアラニン
TyrまたはY :チロシン
TrpまたはW :トリプトファン
ProまたはP :プロリン
AsnまたはN :アスパラギン
GlnまたはQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Bom :ベンジルオキシメチル
NMP :N−メチルピロリドン
PAM :フェニルアセトアミドメチル
【0057】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Tos:p−トルエンスルフォニル
HONB:N−ヒドロキシ−5−ノルボルネンー2,3−ジカルボキシイミド
Bzl:ベンジル
Z:ベンジルオキシカルボニル
Br−Z:2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Cl−Z:2−クロルベンジルオキシカルボニル
Boc:t−ブチルオキシカルボニル
HOBt:1−ヒドロキシベンズトリアゾール
DCC:N、N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド
TFA:トリフルオロ酢酸
Fmoc:N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
DNP:ジニトロフェニル
Bum:ターシャリーブトキシメチル
Trt:トリチル
MeBzl:4−メチルベンジル
【0058】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ウシ型リガンドポリペプチドのアミノ酸配列(N末端から17配列)を示す。
〔配列番号:2〕
配列番号:1で表されるポリペプチドをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)cDNAにコードされるG蛋白質共役型レセプター蛋白質の全アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)cDNAの全塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
G蛋白質共役型レセプター蛋白質をコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:6〕
G蛋白質共役型レセプター蛋白質をコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:7〕
G蛋白質共役型レセプター蛋白質をコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:8〕
G蛋白質共役型レセプター蛋白質をコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:9〕
マウス型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:10〕
マウス型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:11〕
マウス型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:12〕
マウス型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:13〕
マウス型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:14〕
マウス型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:15〕
マウス型リガンドポリペプチドをコードするcDNAにコードされるアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:16〕
マウス型リガンドポリペプチドをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:18〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:19〕
ラット型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:20〕
ラット型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:21〕
ラット型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:22〕
ラット型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:23〕
ヒト型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:24〕
ヒト型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:25〕
ヒト型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:26〕
ヒト型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:27〕
ヒト型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:28〕
ヒト型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:29〕
ヒト型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:30〕
ヒト型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:31〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:32〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:33〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:34〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:35〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:36〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:37〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNA。
〔配列番号:38〕
ラット型リガンドポリペプチドをコードするcDNAにコードされるアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:39〕
ラット型リガンドポリペプチドをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:40〕
ヒト型リガンドポリペプチドをコードするcDNAにコードされるアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:41〕
ヒト型リガンドポリペプチドをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:42〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAにコードされるアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:43〕
ウシ型リガンドポリペプチドをコードするcDNAの塩基配列を示す。
後述の実施例11で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pmA10L-13は平成9年12月22日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−6214として寄託されている。
後述の実施例13で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/prSHe-1は平成10年1月20日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−6228として寄託されている。
後述の実施例14で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/phSuN-4は平成10年1月20日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−6229として寄託されている。
後述の実施例15で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBovA10prec24は平成10年1月20日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−6230として寄託されている。
後述の実施例35で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)BL21(DE3)/pTB960-13は平成10年12月2日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−6590として寄託されている。また平成10年11月11日から受託番号IFO16220として財団法人発酵研究所(IFO)に寄託されている。
【0059】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0060】
【参考例1】
G蛋白質共役型レセプター蛋白質をコードするDNAを増幅させるための合成DNAプライマーの製造
公知のヒト由来TRHレセプター蛋白質(HTRHR)、ヒト由来RANTESレセプター蛋白質(L10918、HUMRANTES)、ヒトバーキットリンパ腫由来リガンド不明レセプター蛋白質(X68149、HSBLR1A)、ヒト由来ソマトスタチンレセプター蛋白質(L14856、HUMSOMAT)、ラット由来μ−オピオイドレセプター蛋白質(U02083、RNU02083)、ラット由来κ−オピオイドレセプター蛋白質(U00442、U00442)、ヒト由来ニューロメジンBレセプター蛋白質(M73482、HUMNMBR)、ヒト由来ムスカリン作動性アセチルコリンレセプター蛋白質(X15266、HSHM4)、ラット由来アドレナリンα1Bレセプター蛋白質(L08609、RATAADRE01)、ヒト由来ソマトスタチン3レセプター蛋白質(M96738、HUMSSTR3X)、ヒト由来C5aレセプター蛋白質(HUMC5AAR)、ヒト由来リガンド不明レセプター蛋白質(HUMRDC1A)、ヒト由来リガンド不明レセプター蛋白質(M84605、HUMOPIODRE)およびラット由来アドレナリンα2Bレセプター蛋白質(M91466、RATA2BAR)の第1膜貫通領域付近のアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を比較し、類似性の高い部分を見いだした。
また、公知のマウス由来リガンド不明レセプター蛋白質(M80481、MUSGIR)、ヒト由来ボンベジンレセプター蛋白質(L08893、HUMBOMB3S)、ヒト由来アデノシンA2レセプター蛋白質(S46950、S46950)、マウス由来リガンド不明レセプター蛋白質(D21061、MUSGPCR)、マウス由来TRHレセプター蛋白質(S43387、S43387)、ラット由来ニューロメジンKレセプター蛋白質(J05189、RATNEURA)、ラット由来アデノシンA1レセプター蛋白質(M69045、RATA1ARA)、ヒト由来ニューロキニンAレセプター蛋白質(M57414、HUMNEKAR)、ラット由来アデノシンA3レセプター蛋白質(M94152、RATADENREC)、ヒト由来ソマトスタチン1レセプター蛋白質(M81829、HUMSRI1A)、ヒト由来ニューロキニン3レセプター蛋白質(S86390、S86371S4)、ラット由来リガンド不明レセプター蛋白質(X61496、RNCGPCR)、ヒト由来ソマトスタチン4レセプター蛋白質(L07061、HUMSSTR4Z)およびラット由来GnRHレセプター蛋白質(M31670、RATGNRHA)の第6膜貫通領域付近のアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を比較し、類似性の高い部分を見いだした。
上記の( )内の略語はDNASIS Gene/Proteinシークエンスデータベース(CD019、日立ソフトウエアエンジニアリング)を用いて GenBank/EMBL Data Bank を検索した際に示される整理番号であり、それぞれ通常Accession Numberおよびエントリーネームと呼ばれるものである。ただし、HTRHRは特開平7−304797号に記載されている配列である。
特に、多くのレセプター蛋白質をコードするcDNAで一致する塩基部分を基準とし、その他の部分においてもなるべく多くのレセプターcDNAと配列の一致性を高めるために混合塩基の導入を計画した。この配列をもとに、共通する塩基配列に相補的である配列番号:5および配列番号:6で表わされる塩基配列を有する合成DNA2本を作成した。
〔合成DNA〕
5'−CGTGG(GまたはC)C(AまたはC)T(GまたはC)(GまたはC)TGGGCAAC(A、G、CまたはT)(CまたはT)CCTG−3'(配列番号:5)
5'−GT(A、G、CまたはT)G(AまたはT)(AまたはG)(AまたはG)GGCA(A、G、CまたはT)CCAGCAGA(GまたはT)GGCAAA−3'(配列番号:6)
( )内は合成時に複数の塩基に混合して合成する。
【0061】
【実施例1】
ヒト扁桃核由来cDNAを用いたPCR法によるG蛋白質共役型受容体cDNAの増幅
ヒト扁桃核由来cDNA(QuickClone、クロンテック社)を鋳型として用い、参考例1で合成したDNAプライマーを用いてPCR法による増幅を行った。反応液の組成は、合成DNAプライマー(配列:5’プライマー配列および3’プライマー配列)各1μM、鋳型cDNA 1ng、0.25mM dNTPs、Taq DNA polymerase 1μlおよび酵素に付属のバッファーで、総反応溶液量は100μlとした。増幅のためのサイクルはサーマルサイクラー(パーキン・エルマー社)を用い、96℃・30秒、45℃・1分、60℃・3分のサイクルを30回繰り返した。Taq DNA polymerase を添加する前に、残りの反応液を混合し、95℃・5分、65℃・5分の加熱を行った。増幅産物の確認は1.2%アガロースゲル電気泳動およびエチジウムブロマイド染色によって行った。
PCR後の反応産物の一部(1μl)を用いて、TAクローニングキット(インビトロゲン社)の処方に従い、増幅したDNAをプラスミドベクターpCRTMII(TMは登録商標を意味する)へサブクローニングした。これを大腸菌INVαF' competent cell(インビトロゲン社)に導入して形質転換したのち、cDNA挿入断片を持つクローンをアンピシリンおよびX−galを含むLB寒天培地中で選択し、形質転換体の指標である白色を呈するクローンのみを滅菌したつま楊枝を用いて分離して多数の形質転換体を得た。個々のクローンをアンピシリンを含むLB培地で一晩培養し、自動プラスミド抽出装置(クラボウ社)を用いてプラスミドDNAを調製した。調製したDNAの一部を用いてEcoRIによる切断を行い、挿入されているcDNA断片の大きさを確認した。残りのDNAの一部をさらにRNase処理、フェノール・クロロフォルム抽出し、エタノール沈殿によって濃縮した。塩基配列の決定のための反応は DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(ABI社)を用いて行い、蛍光式自動シーケンサーを用いて解読し、得られた塩基配列の情報はDNASIS(日立システムエンジニアリング社)を用いて行った。
塩基配列の解析をもとに多数の形質転換体のなかからG蛋白質共役型受容体の1種であるAPJ受容体の第1膜〜第6膜に相当するcDNAのPCR産物が挿入されたクローン E.coli INV αF'/pA10を見いだした。
その塩基配列は、O'Dowd, B. F. et al.によって報告されたAPJ受容体遺伝子の塩基配列(Gene 第136巻, 355-360頁, 1993年)の318番目から993番目までの部分に相当するが、変性プライマーを用いたPCR産物であるため、プライマー部分の配列はAPJとは異なり、また、N末端およびC末端が欠けている。
【0062】
【実施例2】
ヒト扁桃核由来cDNAライブラリーからのレセプター蛋白質の全コード領域を含むcDNAのクローニング
完全長のAPJ受容体をコードするDNAを入手するため、ヒト扁桃核由来cDNAライブラリーを実施例1で得られたAPJ受容体cDNA断片をプローブとしてスクリーニングを行った。ヒト扁桃核由来cDNAライブラリーとしては、クローンテック社製のλgt11ファージベクターを使ったライブラリーを用いた(クローンテック、CLHL30086)。2×106pfu(プラーク・フォーニング・ユニット)分のヒト扁桃核cDNAライブラリーを、硫酸マグネシウムで処理した大腸菌Y1090-と混ぜ、37℃、15分間インキュベートした後、0.5%アガロース(ファルマシア社)LBを加え、1.5%寒天(和光純薬社)LBプレート(50μg/ml Ampicilin含有)に播いた。42℃にて一晩培養してプラークのできたプレートにニトロセルロースフィルターを置き、フィルター上にプラークを転写した。このフィルターをアルカリ処理することによって変性させた後、80℃、3時間の加熱によってDNAの固定を行った。
このフィルターを、50% formamide,4×SSPE,5×Denhardt's溶液,0.1% SDS,100μg/ml salmon sperm DNAを含むバッファー中で以下に述べるプローブと42℃で一晩インキュベートし、ハイブリダイズさせた。プローブとしては、実施例1で得られたプラスミドpA10に挿入されたDNA断片をEcoRIで切断し、回収後、ランダムプライムDNAラベリングキット(アマシャム社)を用いて〔32P〕dCTP(デュポン社)を取り込ませることによって標識して用いた。洗浄は、2×SSC,0.1% SDSで55℃、1時間行い、その後、−80℃でオートラジオグラフィーを行ってハイブリダイズするプラークを検出した。
このスクリーニングにより、4個の独立したプラークにハイブリダイゼーションのシグナルが認められた。これらの4個のクローンからそれぞれDNAを調製し、EcoRIで消化したものをアガロース電気泳動後、スクリーニングに用いたものと同じプローブを用いてサザンブロットにより解析を行ったところ、各々約1.2kb,1.2kb,1.3kb,1.6kbのところにそれぞれハイブリダイズするバンドを生じ、このうち約1.6kbのバンドを生じるものを選択した(λ34)。λ34のファージDNAを調製した後、ハイブリダイズするサイズのEcoRI断片をプラスミドpUC118のEcoRIサイトにサブクローニングし、このプラスミドで大腸菌JM109を形質転換して、形質転換体 E. coli JM109/pUC118−λ34を得た。このプラスミドの塩基配列を実施例1で示した方法と同様に決定したところ、G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)の全長をコードするDNAを保持していることが分かった。またコードされているアミノ酸配列は、O'Dowd, B. F. et al.によって報告されているもの(Gene 第136巻, 355-360頁, 1993年)と同一であった。(GenBank accession number:U03642)そのDNA配列とアミノ酸配列を〔図1〕に示す。
【0063】
【実施例3】
ノーザンハイブリダイゼーションによるAPJ受容体mRNAのヒト組織における発現・分布の検出
実施例2で得られたプラスミドpUC118−λ34にコードされるAPJのヒト組織における発現をmRNAレベルで検出するため、ノーザンブロットを行った。ノーザンブロット用のフィルターはHuman MTN Blot I,II(CL7760−1,CL7759−1)を用い、プローブは実施例1で用いたものと同じものを用いた。ハイブリダイゼーションは、上に述べたフィルターとプローブを50% formamide,5×SSPE,10×Denhardt's溶液,2% SDS,100μg/ml salmon sperm DNAを含むバッファー中で、42℃で一晩インキュベートして行った。フィルターの洗浄は、0.1×SSC,0.1% SDSで50℃にて行い、風乾後3日間−80℃でX線フィルム(XAR5,コダック)に感光させた。その結果を〔図2〕に示した。〔図2〕から、pUC118−λ34がコードするレセプター遺伝子はヒトの心臓、脳、胎盤、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、卵巣、小腸、大腸で発現していることが明らかになった。特に脾臓, 心臓, 胎盤において強く発現している。
【0064】
【実施例4】
APJ受容体発現CHO細胞の作製
pUC118−λ34にコードされるcDNA断片は約0.2kbの5'側非翻訳領域を有し、発現効率を高めるためにはこの部分をできるだけ除去したほうが良いと考えられた。また、発現ベクターのクローニングサイトに対応した制限酵素サイトをcDNA部分の両端に付加する必要があった。そのため、5'側と3'側の2本のcDNA断片を以下の方法によって別々に処理し、動物細胞用発現ベクターpAKKO−111HのSRαプロモーターの下流に挿入してpAKKO−A10を構築した。まず、5'側非翻訳領域内とコード領域に各1カ所存在するBstXIサイトでpUC118−λ34を切断し、末端をT4DNAポリメラーゼを用いて修復した後、SalIリンカーをライゲーションによって付加した。SalI−SacI二重消化後、電気泳動によって分離し、約0.6kbの断片を回収した。次に、pUC118−λ34に挿入されたcDNA部分の両端をEcoRI消化によって切断し、T4DNAポリメラーゼによって末端を修復した後、ClaIリンカーをライゲーションによって付加した。5'側部分に相当する断片と区別するためにEcoRVで消化、さらにClaI−SacI二重消化後、電気泳動によって分離し、約0.8kbの断片を回収した。さらに、動物細胞用の発現ベクターであるpAKKO−111Hはマルチクローニングサイト部分の制限酵素サイトSalIおよびClaIによって消化後、電気泳動を行い、ベクター部分を回収した。以上の操作によって調製したAPJ受容体cDNAの5'側、3'側断片および発現ベクターをライゲーションによって連結し、大腸菌DH5を形質転換してE. coli DH5/pAKKO−A10を得た。
形質転換体E. coli DH5/pAKKO−A10を培養し、プラスミドpAKKO−A10のDNAを大量に調製した。
そのプラスミドDNAのうちの20μgを1mlの生理的食塩水(PBS)に溶解後、ジーントランスファー(和光純薬)のバイアルに注入し、ボルテックスミキサーを用いて激しく撹拌してDNAを含有するリポソームを形成させた。CHOdhfr-細胞1ないし2×106個を直径35mmの細胞培養用シャーレに播種し、20時間培養した後に培養液を新鮮なものに交換した。各シャーレに対して0.5μgのDNAに相当する量(25μl)のリポソーム液を滴下し、16時間インキュベーションを行ってプラスミドDNAの導入を行った。さらに新鮮な培地に交換して1日間培養した後、選択培地に交換して3日間培養を続け、最後にトリプシン消化を行って分散させた細胞を低密度で選択培地(deoxyribonucleosidesおよびribonucleosidesを含有しないminimum essential medium,alpha mediumに10%透析ウシ血清を加えたもの)中に播種し、形質転換体の選択を行った。形質転換体のみが選択培地中で増殖することが可能であり、継代を繰り返すことによって選択を重ね、CHO−A10細胞を樹立した。
【0065】
【実施例5】
CHO−A10細胞株での全長レセプター蛋白質の発現量の転写レベルでの確認
Fast Track kit(Invitrogen社)を用い、キットの処方にしたがってCHO−A10細胞とコントロールのCHO細胞からpoly(A)+RNAを調製した。このpoly(A)+RNAを0.02μg用い、RNA PCR kit(宝酒造)を用いてcDNAの合成を行った。用いたプライマーの種類はrandom 9merで、反応液の全容量は40μlとした。また、cDNA合成のネガティブコントロールとして、リバーストランスクリプターゼを添加しない反応液も準備した。最初、30℃で10分間のインキュベートを行ってプライマーからの伸長反応をある程度行わせた。その後、42℃で30分間インキュベートして十分に逆転写反応を進行させ、99℃で5分間加熱して酵素を失活し、さらに5℃で5分間冷却した。
逆転写反応終了後に反応液の一部を回収し、蒸留水で希釈した後、フェノール/クロロフォルム抽出、ジエチルエーテル抽出を行った。これをエタノール沈殿し、一定量の蒸留水に溶解したものをcDNAの試料とした。このcDNA溶液およびプラスミドDNA(pAKKO−A10)を段階的に希釈したものを作成し、全長レセプター蛋白質に特異的なプライマーを用いてPCRを行った。全長レセプター蛋白質のコード領域の塩基配列に基づいて作成したプライマーの配列は、
5'−CAGACAACCAGTCTGAGTGTGAGT−3'(配列番号:7)
5'−ATGGATTTCTCGTGCATCTGTTCT−3'(配列番号:8)
である。
PCR反応は、プライマー各1μMおよびTaq DNA polymerase(宝酒造)0.5μl、酵素に添付の反応バッファーおよびdNTPsと10μlの鋳型DNA(cDNAあるいはプラスミド溶液)を用いて全容量100μlで行った。最初に94℃で2分間熱処理を行って鋳型DNAの変性を十分に行った後に、95℃で30秒、65℃で30秒、72℃で60秒のサイクルを25回行った。反応終了後に10μlの反応液を用いてアガロールゲル電気泳動を行い増幅産物の検出および量的な比較を行った。その結果全長レセプター蛋白質をコードするcDNAの配列から推定される大きさ(約1.1kb)のPCR産物が、検出された〔図3〕。リバーストランスクリプターゼを添加しなかった逆転写反応産物を鋳型として用いたPCR反応液のレーンに特異的なバンドは検出されず、CHO細胞のゲノムDNA由来のPCR産物である可能性は除外され、また、コントロールの細胞のレーンにも特異的なバンドが出現しないことから、CHO細胞にもとから発現しているmRNA由来ではないことが確認された〔図3〕。
【0066】
【実施例6】
組織抽出物に含まれるCHO−A10細胞を特異的に刺激する活性のサイトセンサーによる検出
ウシ胃,ブタ小腸・脳から、基本的に以下に述べる方法によって抽出物を調製し、冷凍保存したものを細胞刺激活性のスクリーニング用のサンプルとした。
組織を煮沸、破砕したものを0.5M 酢酸を用いて抽出し、抽出物を濾過後にarginic acidに吸着させ、0.2M 塩酸によって溶出した画分に含まれる物質をさらに塩析法によって収集し、メタノールにて洗浄後に真空乾燥させた。これを蒸留水に再溶解してpH7.2に調整した後、2倍量のエタノールを添加し、生成した沈殿物を濾過法によって収集した。再び蒸留水に溶解し、pH4.2に調製して生成した沈殿物を除去した後、凍結乾燥した。この凍結乾燥物を0.2M 酢酸に溶解した後、セファデックスG−25カラムにてゲル濾過による分画を行い、各フラクションを凍結乾燥した。
また、ウシ視床下部を煮沸、破砕したものを1M 酢酸を用いて抽出し、遠心分離した上清に0.05% TFAを添加した後にC18カラムに吸着させ、10%、30%、50%濃度のアセトニトリルによって段階的に溶出した。それぞれの溶出液を20mM 酢酸アンモニウム−10% アセトニトリル(pH4.5)でそれぞれ調製後、CMセファロース陽イオン交換カラム(HiPrep CM Sepharose FF,ファルマシア)に吸着させた。100mM、250mM、500mM、1000mM酢酸アンモニウム溶出画分およびカラムの素通り画分をSep−Pak C18カラムを用いて濃縮・脱塩を行った後、凍結乾燥して細胞刺激活性のスクリーニング用のサンプルとした。
細胞刺激活性は、サイトセンサー(モレキュラー・デバイシズ社製)を用いて、細胞外pHの変化率を指標にして測定した。CHO−A10細胞あるいはコントロールの細胞をトリプシン消化によって分散させ、3×105個/mlの細胞懸濁液に調製したものをサイトセンサー用のカプセル1個あたり0.9mlずつ分注し、一晩培養した。細胞の入ったカプセルをセンサーチャンバーに移し、さらにサイトセンサーのワークステーションにセットした。サイトセンサーに組み込まれたポンプを用いてポンプON(1分20秒間)とポンプOFF(40秒間)を繰り返して行い、ポンプOFF後8秒から38秒の間(30秒間)の細胞外pHの変動を測定し、各サイクルごとのpHの変化率を算出させた。pHの変化率が安定した値となるまで(約2時間)細胞を馴化させた後、2系統ある流路の一方にサイトセンサー用の培地に溶解したサンプルをセットした。流路の切り換えによって7分2秒間細胞にサンプルの入った培地を暴露し、細胞外pHの変化率の変動を測定した。
上述の方法でウシ胃、ブタ小腸、ブタ脳より調製した組織抽出・精製物の凍結乾燥品に、10mgあたり1mlの蒸留水を添加し、不溶物を遠心分離によって除去した後、0.1% ウシ血清アルブミン(Sigma,A-2153,fraction V)を添加したサイトセンサー用のlow buffered RPMI1640培地に1/40量添加して測定用のサンプルとした(終濃度0.25mg/ml)。サンプルによっては培地のpHを大きく変化させるものがあるため、培地に含有されるフェノールレッドの色を指標としてpHの調節を行った。CHO−A10およびコントロールの細胞にこのサンプルを投与し、細胞の反応の差を指標として細胞刺激活性を含有するサンプルをスクリーニングした。また、クロマトグラフィーによって分離・精製したサンプルについては、サンプルを効率良く溶解するために少量のDMSOに溶解した後、0.1% ウシ血清アルブミン(Sigma, A-2153,fraction V)を添加したサイトセンサー用のlow buffered RPMI1640培地に溶解した。この場合、サンプルを加えない培地についても同量(0.2%)のDMSOを添加して細胞をあらかじめ順化させておいた。
ウシ胃、ブタ小腸、ブタ脳より上記の方法にしたがって調製したサンプルについてサイトセンサーを用いて細胞外pHの変化率を指標に細胞刺激活性を測定した結果、〔図4および図5〕に示すようにコントロールの細胞に比べてAPJ受容体導入CHO細胞(CHO−A10)を特異的に活性化(細胞外pHの変化率を上昇)させるサンプル(B3,B4,S1,S2,S3,S4,G4,G6)を見いだした。また、ウシ視床下部より調製したサンプルについても同様の測定を行った結果、〔図6および図7〕に示すようにFr.10(C18カラムのアセトニトリル30%溶出画分をCMセファロースイオン交換カラムに吸着させ、1000mM酢酸アンモニウムで溶出させた画分)に特異的な細胞刺激活性(細胞外pHの変化率を上昇させる活性)を検出した。
【0067】
【実施例7】
細胞刺激活性の強さを指標としたAPJ受容体高発現細胞の選択
CHO−A10細胞は、発現ベクターpAKKO−A10を導入して得た形質転換細胞を、選択培地中で培養を続けることによって樹立したものである。そのため、個々の細胞によっては導入されたcDNAのコピー数などが異なり、そのために細胞上に発現しているAPJ受容体の数に差が生じている可能性がある。そのような集団の中から機能的な受容体の高産生細胞をクローニングによって樹立すれば、高感度で安定的なアッセイの結果が行えるようになることが期待される。そこで、ウシ視床下部から実施例8に示すウシ胃の場合と同様の方法で調製したRESOURCE RPCによる逆相クロマトグラフィー後の活性画分の一部を集めて標準サンプルとし、サイトセンサーによって測定される細胞刺激活性を指標としてAPJ受容体高発現細胞の選択を行った。8個の独立したクローンについて細胞刺激活性を測定したところ〔図8〕に示すようにクローン番号1,3,4,6に対し顕著な細胞刺激活性を検出した。これらのクローンのうちNo.6クローン(CHO−A10,clone 6)をさらに培養し、以降の細胞刺激活性の測定に使用した。
【0068】
【実施例8】
ウシ胃からのCHO−A10細胞株から特異的に細胞外pHの変化率を上昇させる活性物質(ペプチド)の精製
CHO−A10細胞株から特異的に細胞外pHの変化率を上昇させる活性物質についてウシ第一胃および第二胃から精製した代表例を以下に具体的に述べる。ウシ第一胃1.0kgおよび第二胃1.0kgを小片化し、蒸留水4.0L中で20分間煮沸した。氷上にて急冷した後、終濃度1.0Mとなるように酢酸280mlを加え、ポリトロン(12,000rpm、12min)にてホモジナイズした。ホモジェネートを一晩撹拌した後、遠心(9,500rpm、20min)にて上清を得た。沈殿物は1.0M酢酸2.0Lに懸濁し、ポリトロンにてホモジナイズし遠心にて再度上清を得た。上清を一つにまとめ、終濃度0.05%となるようにTFAを加え、逆相C18カラム(Prep C18 125Å 100ml;ミリポア)に添加した。添加後、0.05%TFA/dH2O(以下、dH2Oは蒸留水を示す) 200mlでカラムを洗浄後、10%、30%、50%CH3CN/0.05%TFA/dH2Oで3段階に溶出した。30%CH3CN/0.05%TFA/dH2O溶出画分に2倍量の20mM CH3COONH4/dH2Oを加え、陽イオン交換カラムHiPrep CM-Sepharose FF20ml(pharmacia)に添加した。20mM CH3COONH4/10%CH3CN/dH2Oでカラムを洗浄後、100mM,200mM,500mM,1000mM CH3COONH4/10% CH3CN/dH2Oで4段階に溶出した。1000mM CH3COONH4溶出画分にCHO−A10細胞株から特異的に細胞外pHの変化率を上昇させる活性が見いだされたので、この溶出画分に3倍量のアセトンを加え、除タンパク質およびエバポレーションによる濃縮を行った。濃縮された画分にTFA(終濃度0.1%)を加え、逆相カラムRESOURCE RPC 1ml(Pharmacia)に添加した。12.5%−20.0%CH3CN濃度勾配による溶出で、15.5%−16.5%および17.0%−17.5% CH3CNの二つの画分(活性画分をそれぞれP−1、P−2とする)にCHO−A10細胞株から特異的に細胞外pHの変化率を上昇させる活性が検出された〔図9〕。二つに分離した活性のうち17.0−17.5% CH3CNの溶出画分(P−2)を凍結乾燥の後、DMSOに溶解し、0.1% TFA/dH2Oに懸濁し、逆相カラムdiphenyl 219TP5415(Vydac)またはSephasil C8 SC 2.1/10(Pharmacia)に添加した。
diphenyl 219TP5415においては、14.0%−20.0%CH3CN濃度勾配による溶出で、17.0% CH3CNの画分にCHO−A10細胞株に対して特異的に細胞外pHの変化率を上昇させる活性が検出された〔図10〕。また、Sephasil C8 SC 2.1/10においては、18.0%−24.0% CH3CN濃度勾配による溶出で19.5% CH3CNの画分にCHO−A10細胞株に対して特異的に細胞外pHの変化率を上昇させる活性が検出された〔図11〕。diphenyl 219TP5415およびSephasil C8 SC 2.1/10の活性画分をそれぞれ凍結乾燥した後、DMSOに溶解し、0.1% TFA/dH2Oに懸濁し、逆相カラムμRPC C2/C18 SC 2.1/10(Pharmacia)に添加した。diphenyl 219TP5415由来の活性画分は、16.0%CH3CN均一濃度での溶出で19.0−20.5minに溶出される一つのピークに、Sephasil C8 SC 2.1/10由来の活性画分は、16.0% CH3CN均一濃度での溶出で18.0−20.0minに溶出される一つのピークにそれぞれCHO−A10細胞株に特異的に細胞外pHの変化率を上昇させる活性が検出された〔図12および図13〕。
【0069】
【実施例9】
ウシ胃からのCHO−A10細胞株に特異的に細胞外pHの変化率を上昇させる活性物質(ペプチド)のアミノ酸配列決定
実施例8で精製されたCHO−A10細胞株に特異的に細胞外pHの変化率を上昇させる活性ペプチド(P−2)のアミノ酸配列の決定を行った。逆相カラムμRPC C2/C18 SC 2.1/10で活性と一致した二つのピークの画分を凍結乾燥後、ペプチドシークエンサー(ABI.492)によるアミノ酸配列の分析を行った。
その結果、どちらのピークからも同じアミノ酸配列(N末端から17配列)が得られた〔配列番号:1〕。
【0070】
【実施例10】
ウシ胃由来ペプチド断片のマウス型をコードする遺伝子断片の同定
実施例9の精製産物のN末端アミノ酸分析によって得られた17アミノ酸のウシ胃由来ペプチド断片を塩基配列に翻訳し〔配列番号:2〕、遺伝子配列解析ソフトGene Bright(日立ソフトウエア)を用いてGenBank/EMBL に登録されているExpressed Sequence Tag(EST)のデータベースに対してホモロジーサーチを行った。その結果、accession number がW33327として登録されていた機能未知のマウス由来ESTをアミノ酸に翻訳した配列に対し、配列番号:1で表される配列の一部が高い相同性を示し、該ESTがウシ胃由来ペプチド断片17アミノ酸の後半部分から下流のマウス型をコードしていることを見いだした(図14)。
【実施例11】
実施例9で得られたN末端アミノ酸分析によって得られた17アミノ酸のウシ胃由来ペプチド断片のマウス型をコードするリガンド遺伝子の全長クローニング
実施例10で得たESTの配列を基に W33-F1(5'- CTGGCAGGGAGGCAGGAGGAA -3')〔配列番号:9〕、W33-F2(5'-GCAGGAGGAAATTTCGCAGACAGC-3')〔配列番号:10〕、 W33-R1(5'-GAAGAGAATTCATCTGTGGAGTA-3')〔配列番号:11〕、W33-R2(5'-ACCGGCACCGGGAGGGCACTT-3')〔配列番号:12〕をそれぞれ合成した。またBALB/C マウスの全脳から、Isogen (Nippon gene) を用いてtotal RNAを、つづいてオリゴ(dT)セルロースカラム(mRNA Purification Kit, Pharmacia)を用いて、それぞれマニュアルに従って poly(A)+RNA を調製した。調製した1μgの poly(A)+RNA からの Rapid Amprification of cDNA Ends (RACE)法で使用する二本鎖cDNA を Marathon cDNA Amplification Kit(Clontech)のマニュアルに従って合成し10μlの蒸留水に溶解した。 これをさらにTE buffer で50倍に希釈したものを鋳型としてPCRを行った。DNA polymerase として EX Taq (Takara)を使用し、添付の10x EX Taq buffer を2.5 μl、dNTP mixture (各2.5mM)を1μl、TaqStart Antibody (Clontech)と等量混合した EX Taq を 0.5μlにMarathon cDNA Amplification Kit に付属のアダプタープライマー AP1 またはAP2(それぞれ10μM)を0.5μlと遺伝子特異的なプライマーW33-F1,W33-F2、 W33-R1、またはW33-R2(それぞれ10μM)を0.5μl、および鋳型cDNAを加え、蒸留水で25μlとして反応液を調製した。1回目のRACEは、鋳型cDNA 溶液2.5μlを反応液に加え、3’RACE ではW33-F1とAP1を、また5’RACE では W33-R1とAP1の組合せで、94℃・2分の熱処理後、98℃・10秒、72℃・2分のサイクルを5回、98℃・10秒、70℃・2分のサイクルを5回、続いて98℃・10秒、68℃・2分のサイクルを25回のPCRを行った。この一回目のPCR産物2.5μlを2回目のPCRの鋳型として用いた。その際3’RACE ではプライマーの組合せをw33-F2とAP2 に、また5’RACE ではw33-R2とAP2にそれぞれ変更した。PCR反応は94℃・2分の熱処理後、98℃・10秒、72℃・2分のサイクルを5回、98℃・10秒、70℃・2分のサイクルを5回、続いて98℃・10秒、68℃・2分のサイクルを30回とした。PCR産物を1.2%アガロース電気泳動、エチジウムブロマイド染色し、3’RACEでは約300bpのバンドを、また5’RACEでは約600bpのバンドをそれぞれ剃刀で切りだし、フィルター(UltraFree, Millipore)で遠心濾過後、フェノール抽出、エタノール沈澱をしてDNA 断片を回収した。これらの断片を Dye Terminator Cycle Sequencing Kit (ABI)でマニュアルに従って反応し、DNA sequencer Prism 377 (ABI)で塩基配列を解析し、全長配列を得た。この全長配列を含むDNA 断片を一本の断片として得るために、3’RACEと5’RACEで得られた配列情報を基に 2本のプライマーmF(5'- GAGAGTCGCGGGCAGAGCAGCGTCAG-3')〔配列番号:13〕とmR(5'-GAAATCATCCAAGTGAGGGGCGAGAC-3')〔配列番号:14〕をそれぞれ合成した。鋳型には、先に調製したマウス全脳 poly(A)+RNA 80ng からRNA PCR kit(Takara)により以下の方法で合成したcDNAを用いた。キット付属の random primer(9 mer)またはoligo(dT) 20-M4 adaptor primer をそれぞれ終濃度2.5 μMで用い、MgCl2を終濃度 5mM 、10x RNA PCR buffer 2μl、dNTP mixture(各2.5mM)を8μl、 RNase Inhibitor 20 U、AMV reverse transcriptase 5 U を加え、蒸留水で20μlとした。これらを30℃、10分(ただし random primer を用いたときのみ)の処理後、42℃で30分間cDNA合成をい、それぞれ5μlの蒸留水に溶解した後に混合して鋳型とした。PCRの反応液は、DNA polymerase として EX Taq を使用し、添付の10x EX Taq buffer を2.5μl、dNTP mixture(各2.5mM)を1μl、TaqStart Antibody(Clontech)と等量混合した EX Taq を 0.5μl、10μMのプライマーmF と mRをそれぞれ0.5μlおよび鋳型cDNAを1μl加え、蒸留水で25μlとして調製した。
PCR反応は94℃・2分の熱処理後、98℃・10秒、68℃・30秒のサイクルを30回繰り返した。PCR産物は2%アガロース電気泳動後、上記と同様の方法で約750bpのバンドを回収し、プラスミドベクターpCR2.1(Invitrogen)へサブクローニングし、さらに E.coli JM109 へ導入し、 E.coli JM109/pmA10L−13を得た。得られた形質転換体に挿入されたcDNA 断片の配列を解析した結果、このcDNA 断片はリガンドポリペプチドcDNA の全コード領域を含む断片であることが確認され、その遺伝子配列を図15に示した。配列番号1に示したウシ胃由来のペプチド断片との比較(図16)から、このマウス由来アミノ酸配列はウシ型断片のマウス型であると考えられた。
【実施例12】
ウシ型ペプチドをコードするcDNA断片の取得
RNA PCR Kit (AMV) Ver.2(宝酒造)の処方に従い、ウシ視床下部のpoly(A)+RNA画分0.35 μgを鋳型としてランダム9merおよびオリゴdTプライマーについてそれぞれ5本の反応液を調製した。逆転写反応は、30℃で10分間、42℃で30分間行ない、99℃で5分間の加熱によって反応を停止させた。反応液を一つにまとめてエタノール沈殿を行ない、合成したcDNAを反応液より回収した後、40μlの蒸留水に溶解した。このcDNA溶液2μlを鋳型とし、下記の配列の合成DNAプライマーの10μM水溶液各0.5μl、5’−GAATCTGAGTTTCTGCGTGCAGGC−3’〔配列番号:17〕、5’−TTAGAAAGGCATGGGGCCCTTATG−3’〔配列番号:18〕およびdNTP mixture (各2.5mM) 1μl、TaKaRa EX Taq(宝酒造)1.25 unit、付属の反応バッファーを用いて25μlの反応液を調製した。この反応液を95℃で2分間加熱した後、98℃・10秒間、62℃・20秒間、72℃・10秒間のサイクルを40回繰り返し、72℃・30秒間インキュベート後に4℃に冷却した。反応後の液をアガロースゲル電気泳動によって解析したところ、エチジウムブロマイド染色によって約230bpの大きさのcDNAのバンドが検出された。この部分に含まれるDNAをゲルより回収し、同じプライマーセットを用いて再PCR(25回)を行なった。増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって分離した後、ゲルからDNAを回収し、それぞれのプライマーを用いてABI PRISM DyeTerminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(パーキンエルマー・アプライドバイオシステムズ社)によるシーケンス反応を行なった。ABI PRISM 377 DNA Sequencer を用いてこのcDNAの配列を解析したところ、その一部に実施例9で決定したアミノ酸配列と同じ配列LVQPRGPRSGPGPWQGGをコードする部分を見出した。
【実施例13】
ラット型ペプチドをコードするcDNAの取得
Wistar ラットの全脳から、Isogen (Nippon gene) を用いてtotal RNAを、つづいてオリゴ(dT)セルロースカラム(Pharmacia mRNA purification Kit)を用いて、それぞれマニュアルに従って poly(A)+RNA を調製した。調製した1μgの poly(A)+RNA からMarathon cDNA Amplification Kit ( Clontech )のマニュアルに従ってcDNA を合成し10μlの蒸留水に溶解した。これをさらにTE bufferで50倍に希釈したものを鋳型として実施例11(マウスの全長クローニングの実施例)で行ったRACEと同様の方法でPCR を行った。ただしプライマーセットは3’RACE では1回目のPCRで w33-F1とAP1、2回目のPCRではw33-F2とAP1 を使用して約800 bpのバンドを、また5’RACE では1回目のPCRで w33-R1とAP1、2回目のPCRではw33-R2とAP1 を使用し約600 bpのバンドをそれぞれ回収した。これら回収した断片配列を、やはり実施例11と同様の方法で解析し約1300bpの全長配列を明らかにした。
明らかになった配列のうち、アミノ酸に翻訳されると考えられる領域のみを含むDNA 断片を一本の断片として得るために、3’RACEと5’RACEで得られた配列情報を基に2本のプライマーrFA10(5’−GTAGTTGGGAGTCGCGGGCAGAGCAC−3’)〔配列番号:19〕とrRA10(5’−TAGAACCATGTCAGGATCAGCACTTT−3’)〔配列番号:20〕をそれぞれ合成した。鋳型には、先に調製したラット全脳 poly(A)+RNA 160g からRNA PCR kit(Takara)により以下の方法で合成したcDNAを用いた。すなわちキット付属の random primer(9 mer) を終濃度2.5 μMで用い、MgCl2を終濃度 5mM 、10x RNA PCR buffer 4μl、dNTP mixture(各2.5mM)を16μl、 RNase Inhibitor 40 unit、AMV reverse transcriptase 10 unitを加え、蒸留水で40μlとし、これらを30℃ 10分の処理後、42℃で30分間cDNA合成を行い、40μlの蒸留水に溶解した。PCRの反応液は、DNA polymerase として EX Taq を使用し、添付の10x EX Taq buffer を2.5 μl、dNTP mixture(各2.5mM)を1μl、TaqStart Antibody(Clontech)と等量混合した EX Taq を 0.5μl、10μMのプライマーrFA10 と rRA10をそれぞれ0.5μlおよび鋳型cDNAを1μl加え、蒸留水で25μlとして調製した。PCR反応は94℃ 2分の熱処理後、98℃ 10秒、68℃ 45秒のサイクルを30回繰り返した。PCR産物は1.2%アガロース電気泳動後、前述の方法でバンドを回収し、プラスミドベクターpCR2.1-TOPO(Invitrogen)へサブクローニングし、さらに E.coli JM109 へ導入した。得られた形質転換体に挿入されたcDNA 断片の配列を解析し、プライマーを含めた約1270bpの塩基配列を確定した。
さらにそれぞれ開始コドンと終止コドンを含む 2本のプライマーrFSal(5’−AGTCGACGCATGAATCTGAGTTTCTG−3’)〔配列番号:21〕とrRNhe(5’−GAGCCCTTCAAGCTAGCTTTAGAAAG−3’)〔配列番号:22〕を合成した。下線を引いた部分に制限酵素SalIあるいはNheIの認識配列を導入してある。これらのプライマーを用いて、上記で得られたrFA10 と rRA10で増幅された断片を含む形質転換体から調製したプラスミド約20ng を鋳型として、これまでと同様EX TaqをDNA polymeraseとして使用し、94℃ 2分の熱処理後、98℃ 10秒、68℃ 30秒のサイクルを24回繰り返す条件でPCRを行った。得られた約260bpのバンドを回収し、プラスミドベクターpCR2.1-TOPO(Invitrogen)へサブクローニングし、さらに E.coli JM109 へ導入し、E.coli JM109/prSHe-1を得た。得られた形質転換体に挿入されたcDNA 断片の配列を解析した結果、このcDNA 断片はラット型ペプチドの全コード領域を含むことが確認された(図17)。
【実施例14】
ヒト型ペプチドをコードするcDNAの取得
実施例11および13で得られたマウスとラット型の配列間でよく保存されている領域にプライマーAF2(5’−GTGCCACTGATGCTGCCTCCAGATGG−3’)〔配列番号:23〕とAR1(5’− TTAGAAAGGCATGGGTCCCTTATG−3’)〔配列番号:24〕を合成した。またClontech社より購入したヒト肺poly(A)+RNA 5μgより、プライマーとして random primer(9 mer、GIBCO BRL)を加え、モロニーマウス白血病ウィルス逆転写酵素(GIBCO BRL)で、添付のバッファーとともに42℃で1時間の反応を行ってcDNAを合成し、30μlのTE bufferに溶解した。このcDNA 1μl を鋳型としてPCRを行った。PCRの反応液は実施例11と同様にDNA polymerase として EX Taq を使用し、AF2とAR1のプライマーを用いて調製し、94℃ 2分の後、98℃ 10秒、62℃ 20秒, 72℃ 5秒のサイクルを35回繰り返した。得られた約150bpのバンドを回収し、塩基配列を解析した。その結果、この断片はヒト型ペプチドの断片をコードしていることが明らかになった。
この配列をもとに3’RACE用にh3R1(5’−ACGGCAATGTCCGCCACCTGGTGC−3’)〔配列番号:25〕とh3R2(5’−CCCTGGCAGGGAGGTCGGAGGAAA−3’)〔配列番号:26〕、5’RACE用にh5R1(5’−GGGCCGCTGGCGGCGGAATTTCCT−3’)〔配列番号:27〕とh5R2(5’−GCTGCACCAGGTGGCGGACATTGC−3’)〔配列番号:28〕を合成した。またMarathon cDNA Amplification Kit (Clontech)のマニュアルに従って、Clontech社より購入したヒト視床下核および肺poly(A)+RNA各1μgよりcDNAを合成し、それぞれ10μlの蒸留水に溶解、これをさらにTE bufferで50倍に希釈してRACEに用いる鋳型cDNAを調製した。プライマーの組み合わせを3’RACEではh3R1とAP1を、また5’RACEでは5R1とAP1を用いて実施例11と同様に反応液を調製し、94℃ 2分の熱処理後、98℃ 10秒、72℃ 45秒のサイクルを5回、98℃ 10秒、70℃ 45秒のサイクルを5回、続いて98℃ 10秒、68℃ 45秒のサイクルを25回繰り返すPCR反応を行った。これらの反応物をTE bufferで50倍に希釈したもの2.5μlを2回目のPCRの鋳型として使用し、プライマーの組み合わせを3’RACEではh3R2とAP1またはAP2を、また5’RACEでは5R2とAP1にそれぞれ変更して、94℃ 2分の熱処理後、98℃ 10秒、72℃ 45秒のサイクルを5回、98℃ 10秒、70℃ 45秒のサイクルを5回、続いて98℃ 10秒、68℃ 45秒のサイクルを35回繰り返す反応を行った。その結果、視床下核の5’RACEから得られた約500bpのバンド、肺の3’RACEから得られた約200bpのバンドをそれぞれ回収、約570bpの塩基配列を調べた結果、ヒト型ペプチドをコードするcDNAであることが分かった。
さらに予測されたコーディング領域全体を1本のcDNAとして増幅するために、コーディング領域の両端にプライマーhFA10(5’−TTGGCCTCCGGGCGCCCGACCTCT−3’)〔配列番号:29〕とhRA10(5’−GACATAACCGCAGGGGGTGGGCACTTG−3’)〔配列番号:30〕を合成した。鋳型cDNA はRACEに用いたのと同じ視床下核のcDNAを用いた。PCRの反応液は、DNA polymerase として KlenTaq (Clontech)を使用し、添付の10x KlenTaq bufferを2.5 μl、dNTP mixture(各2.5mM)を1μl、KlenTaqを 0.5μl、10μMのプライマーhFA10と hRA10をそれぞれ0.5μlおよび鋳型cDNAを1μl加え、蒸留水で25μlとして調製した。PCR反応は94℃ 2分の熱処理後、98℃ 10秒、68℃ 30秒のサイクルを30回繰り返した。PCR産物は2%アガロース電気泳動後バンドを回収し、プラスミドベクターpCR2.1-TOPO(Invitrogen)へサブクローニングし、さらに E.coli JM109 へ導入し、E.coli JM109/phSuN-4を得た。得られた形質転換体に挿入されたcDNA 断片の配列を解析した結果、このcDNA 断片はヒト型ペプチドの全コード領域を含むことが確認され、その遺伝子配列を図18に示した。
【実施例15】
ウシ型ペプチドをコードするcDNAの取得
実施例12で取得したPCR産物の塩基配列をもとに、5'および3'RACEに使用する特異的プライマーをそれぞれ数本作成した。また、ウシ肺poly(A)+RNAを1μg使用してMarathon cDNA Amplification Kit(Clontech)のマニュアルに従ってcDNAを合成し、最終ステップでアダプターを付加したcDNA溶液を蒸留水にて50倍に希釈したものを調製した。この50倍に希釈したcDNA溶液2.5μl、下記の配列番号:31ないし34などで表わされる特異的プライマー(10μM)0.5μl、AP1プライマー(酵素に付属、10μM)0.5μl、TaqStart Antibody(Clontech)と等量混合したEXTaq DNA polymerase(宝酒造)0.5μl、×10 EXTaq buffer 2.5μl、dNTPs 1μl(いずれも酵素に付属)を加えた25μlの反応液を調製し、95℃ 2分間の熱処理後、98℃ 10秒、72℃ 1分のサイクルを5回、98℃ 10秒、70℃ 1分のサイクルを5回、98℃ 10秒、68℃ 1分のサイクルを25回行なった後、さらに68℃ 1分間加熱して行なった。この反応液1μlを用い、プライマーの組み合わせを別のものにかえた反応液を調製して同様の条件(但し最後の増幅のサイクル数を25回から35回に増やす)にて2回目のPCRを行なった。
各種のプライマーの組み合わせによるPCR産物のうち、1回目のPCRをFF1(5’−CCTGCTGCTCTGGCTCTGCCTGAG−3’)〔配列番号:31〕とAP1(5’−CCATCCTAATACGACTCACTATAGGGC−3’)〔配列番号:32〕の組み合わせで行ない、さらにその反応液の1μlを使用して2回目のPCRをFF2(5’−GCGGTGTGCGGAGGACCCCTGCTG−3’)〔配列番号:33〕とAP2(5’−ACTCACTATAGGGCTCGAGCGGC−3’)〔配列番号:34〕のプライマーの組み合わせで行なったPCRの主要産物について、アガロースゲル電気泳動後にゲルから回収して配列決定を行なった。実施例11で得られたマウスのcDNAと比較することによって、解析した3'RACE産物は翻訳終止コドンからさらに下流の配列を有するcDNA断片であることが判明した。この3'RACEによって明らかになったウシ型ペプチドcDNAの配列をもとに、3'非翻訳領域部分に相当するプライマーを合成した。
また、既に他の動物種で判明しているcDNAの5'非翻訳領域の配列をもとにプライマーを合成した。ウシ視床下部poly(A)+RNA 150ngに相当するcDNAを鋳型として、プライマー(10μM)各0.5μl、TaqStart Antibody(Clontech)と等量混合したEXTaq DNA polymerase(宝酒造)0.5μl、×10 EXTaq buffer 2.5μl、dNTPs 1μl(いずれも酵素に付属)を加えた25μlの反応液を調製し、95℃ 2分間の熱処理後、98℃ 10秒、62℃ 20秒、72℃ 30秒のサイクルを40回、さらに72℃ 30秒間インキュベーションした後、アガロースゲル電気泳動によって反応産物を分離した。主要なPCR産物についてはゲルから回収した後に塩基配列の解析を行なった。NCR4(5’−GGCCGCGGCGGCCCAAGGAGCAGC−3’)〔配列番号:35〕とRV1(5’−GCGTGTGGTGGCCCCTTCGGTCCT−3’)〔配列番号:36〕あるいは RV2(5’−AATCACAGGGGGTGGGCGTGTGGT−3’)〔配列番号:37〕の組み合わせで行なったPCRの主要産物の塩基配列の解析から、完全長の翻訳領域を有するcDNAが増幅されていることが明らかになった。そこで、Original TA Cloning Kit(Invitrogen)を用いてpCR2.1プラスミドベクターにサブクローニングし、さらにE.coli JM109へ導入し、E.coli JM109/pBovA10prec24を得た。得られた形質転換体に挿入されたcDNA断片の配列を解析した結果、このcDNA断片はウシ型ペプチドの全コード領域を含むことが確認された(図19)。
また実施例11、13、14および15で明らかになったマウス、ラット、ヒトおよびウシ型ペプチドのアミノ酸配列を比較し図20に示した。
【実施例16】
APJ受容体に作用するペプチドpGlu-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
市販のBoc-Phe-OCH2-PAM樹脂(0.72 m mole/g resin) 0.5 m mole 分をペプチド合成機ABI 430Aの反応曹に入れ、自体公知のBoc-strategy(NMP-HOBt)ペプチド合成方法でBoc-Pro, Boc-Met, Boc-Pro, Boc-Gly, Boc-Lys(Cl-Z), Boc-His(Bom), Boc-Ser(Bzl), Boc-Leu, Boc-Arg(Tos), Boc-Pro, Boc-Arg(Tos), Boc-Glnを順に導入し、目的の保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂0.22gをp-クレゾール0.43gと共に無水弗化水素5 ml中、0℃ 60分撹袢した後、弗化水素を減圧留去し、残留物へ酢酸水を加えペプチドを酢酸水に抽出した。抽出液を十分に濃縮後、蒸留水とジエチルエ−テルを加え分液抽出し、水層を集め凍結乾燥し、少量の50%酢酸水に溶解後、同溶媒で充填したセファデックス(登録商標)G-25カラム(2.0 x 80 cm)に付し、同溶媒で展開、主要画分を集め凍結乾燥し、白色粉末約50mgを得た。此れを50%酢酸水5mlに溶解し、60℃の湯浴中で1時間保持、HPLCで13.9分の主要ピークが消失し、15.6分前後のピ−クに全て変化したことを確認後、室温に戻し LiChroprep(登録商標) RP-18を充填した逆相クロマトカラム(2.6 x 60 cm)に付け、0.1%TFA水 200mlで洗浄、0.1%TFA水 300mlと0.1%TFA含有33%アセトニトリル水 300mlを用いた線型勾配溶出を行い、アセトニトリル濃度20%前後の画分を集め凍結乾燥し、白色粉末28mgを得た。
質量分析による(M+H)+1533.953 (計算値 1533.811)
HPLC溶出時間 15.7分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【実施例17】
APJ受容体に対するペプチドpGlu-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheのリガンド活性の測定
実施例16で得られたペプチドおよび配列番号:40の第42番目ないし第77番目で表わされるアミノ酸配列で表わされるペプチドを滅菌蒸留水を用いて1x10-3Mの濃度に溶解した後、0.1%BSAを含むサイトセンサー用培地を用いて、それぞれのペプチドを10-8、10-9、10-10、10-11Mに希釈したものを調製した。実施例6と同様にして準備したAPJ受容体cDNA導入CHO細胞をサイトセンサーのワークステーションにセットし、各細胞のAcidification Rateが安定したところでペプチド希釈液をサイトセンサーの流路の一つに導入し、流路の切り換えによって細胞に7分2秒間作用させた。細胞の反応が最大となったサンプル導入3サイクル目のAcidification Rateの変化量をBasal levelの値を100%として算出し、その結果を図21に示した。
【実施例18】
Val-Gln-Pro-Arg-Gly-Pro-Arg-Ser-Gly-Pro-Gly-Pro-Trp-Gln-Gly-Gly-Arg-Arg-Lys-Phe-Arg-Arg-Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
市販Boc-Phe-OCH2-PAM樹脂(0.72 m mole/g resin) 0.5 m mole 分をペプチド合成機ABI 430Aの反応曹に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Pro, Boc-Met,Boc-Gly, Boc-Lys(Cl-Z), Boc-His(Bom), Boc-Ser(Bzl), Boc-Leu, Boc-Arg(Tos), Boc-Gln, Boc-Phe, Boc-Trp(CHO), Boc-Valをアミノ酸配列に基づき導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。 この樹脂0.17gをp-クレゾール1.0g、1,4-ブタンジチオール1.0 mlと共に無水弗化水素8 ml中、0℃ 60分撹袢した後、弗化水素を減圧留去し、残留物へ酢酸水を加えペプチドを酢酸水に抽出した。抽出液を十分に濃縮後、蒸留水とジエチルエ−テルを加え分液抽出し、水層を集め凍結乾燥し、少量の50%酢酸水に溶解後、同溶媒で充填したセファデックスTMG-25カラム(2.0 x 80 cm)に付し、同溶媒で展開、主要画分を集め凍結乾燥し、白色粉末約約70mgを得た。此れをLiChroprepTM RP-18を充填した逆相クロマトカラム(2.6 x 60 cm)に付け0.1%TFA水 200mlで洗浄、0.1%TFA含有10%アセトニトリル水 300mlと0.1%TFA含有30%アセトニトリル水 300mlを用いた線型勾配溶出を行い、主要画分を集め凍結乾燥し、白色粉末33mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 4064.6(計算値 4064.2)
HPLC溶出時間 16.0分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【実施例19】
Leu-Val-Gln-Pro-Arg-Gly-Pro-Arg-Ser-Gly-Pro-Gly-Pro-Trp-Gln-Gly-Gly-Arg-Arg-Lys-Phe-Arg-Arg-Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
実施例18で得た樹脂へ更にBoc-Leuを導入した後、実施例1と同様に弗化水素処理とクロマト精製を行い、主要画分を集め凍結乾燥し、白色粉末23mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 4177.7(計算値 4177.3)
HPLC溶出時間 16.2分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜4
5/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【実施例20】
Leu-Val-Gln-Pro-Arg-Gly-Ser-Arg-Asn-Gly-Pro-Gly-Pro-Trp-Gln-Gly-Gly-Arg-Arg-Lys-Phe-Arg-Arg-Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
市販 2-chlorotrityl resin (Clt resin,1.3mmol/g) にFmoc-Phe-OH を導入したFmoc-Phe-O-Clt resin (0.32mmol/g) 0.25mmol分をペプチド合成機ABI 433A の反応曹に入れ、 Fmoc/ DCC/ HOBt法を用い、固相合成を行った。Fmocアミノ酸の側鎖保護基はArgにはPbf基、SerにtBu基、Trp、LysにBoc基、His、Asn、GlnにTrt基を用いた。他のアミノ酸は側鎖無保護のものを用い、上記に示す配列のPheからN末端方向へ順にLeuまでペプチド鎖を導入し、目的の保護ペプチド樹脂を得た。
この樹脂50mg(4.45mmol)をTFA, thioanisole, m-cresol, H2O, ethandithiol(82.5:5:5:5:2.5)の混合液1ml中で室温、2時間攪拌した後、反応溶液にエーテルを加え、白色粉末を析出させ遠心分離後、上清を除く操作を3回繰り返した。残渣を水で抽出後、凍結乾燥し白色粉末を23.1mg得た。得られた粗ペプチドをTSK GEL ODS 120T カラム(20 x 300mm)を用いた分取HPLCで、A液: 0.1%TFA-水、B液: 0.1%TFA含有アセトニトリルによるA/B: 85/15〜75/25への直線型濃度勾配溶出(60分)を行い、目的物を含む分画を集め凍結乾燥し白色粉末10.2mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 4194.8 (計算値4194.3)
HPLC溶出時間 16.5 分
溶出条件
カラム YMC A-301-3 (4.6 x 100mm)
溶離液 A液: 0.1%TFA-水、B液: 0.1%TFA含有アセトニトリルを用い、A/B: 100/0〜50
/50へ 直線型濃度勾配溶出(25分)
流速 1.0ml/分
【実施例21】
His-Leu-Val-Gln-Pro-Arg-Gly-Ser-Arg-Asn-Gly-Pro-Gly-Pro-Trp-Gln-Gly-Gly-Arg-Arg-Lys-Phe-Arg-Arg-Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
実施例20で得た樹脂に更にFmoc-His(Trt)を縮合した後、実施例20と同様に処理精製し白色粉末10mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 4331.2(計算値4331.4)
HPLC溶出時間 16.3 分
溶出条件
カラム YMC A-301-3 (4.6 x 100mm)
溶離液 A液: 0.1%TFA-水、B液: 0.1%TFA含有アセトニトリルを用い、A/B: 100/0〜50
/50へ 直線型濃度勾配溶出(25分)
流速 1.0ml/分
【実施例22】
Leu-Val-Lys-Pro-Arg-Thr-Ser-Arg-Thr-Gly-Pro-Gly-Ala-Trp-Gln-Gly-Gly-Arg-Arg-Lys-Phe-Arg-Arg-Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
市販Boc-Phe-OCH2-PAM樹脂(0.72 m mole/g resin)を用い追加例1と同様にBoc-Pro, Boc-Met,Boc-Gly, Boc-Lys(Cl-Z), Boc-His(Bom), Boc-Ser(Bzl), Boc-Leu, Boc-Arg(Tos), Boc-Gln, Boc-Phe, Boc-Trp(CHO), Boc-Ala, Boc-Thr(Bzl), Boc-Valをアミノ酸配列に基づき導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂を追加例1と同様に弗化水素処理し、取り出したペプチドを同様に精製し白色粉末25mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 4199.0 (計算値4199.3)
【実施例23】
Tyr-Leu-Val-Lys-Pro-Arg-Thr-Ser-Arg-Thr-Gly-Pro-Gly-Ala-Trp-Gln-Gly-Gly-Arg-Arg-Lys-Phe-Arg-Arg-Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
実施例22の樹脂へさらにBoc-Tyr(Br-Z)を縮合した後同様に処理、精製し白色粉末12mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 4362.7 (計算値4362.4)
【実施例24】
Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
市販Boc-Phe-OCH2-PAM樹脂(0.72 m mole/g resin)を用い、Boc-Pro, Boc-Met, Boc-Pro, Boc-Gly, Boc-Lys(Cl-Z), Boc-His(Bom), Boc-Ser(Bzl), Boc-Leu, Boc-Arg(Tos), boc-Proを順位縮合した後、樹脂をp−クレゾール共存下弗化水素処理、実施例18と同様に精製し白色粉末54mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 1266.4 (計算値1266.7)
【実施例25】
Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
実施例24の樹脂にBoc-Arg(Tos)を縮合後、同様に処理、精製し白色粉末30mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 1422.6 (計算値1422.8)
【実施例26】
Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
実施例25の樹脂にBoc-Glnを縮合後、同様に処理、精製し希塩酸水から凍結乾燥し白色粉末21mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 1551.1 (計算値1550.8)
【実施例27】
Arg-Arg-Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
実施例26の樹脂にBoc-Arg(Tos)を2回縮合後、同様に処理、精製し白色粉末17mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 1862.8 (計算値1863.0)
【実施例28】
Cys-Phe-Arg-Arg-Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
実施例27の樹脂にBoc-Phe, Boc-Cys(MeBzl)を縮合後、同様に処理、精製し白色粉末30mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 2113.2 (計算値2113.1)
HPLC溶出時間 16.0 分
溶出条件
カラム YMC A-301-3 (4.6 x 100mm)
溶離液 A液: 0.1%TFA-水、B液: 0.1%TFA含有アセトニトリルを用い、A/B: 100/0〜50/50へ 直線型濃度勾配溶出(25分)
流速 1.0ml/分
【実施例29】
Arg-Arg-Lys-Phe-Arg-Arg-Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
実施例27の樹脂にBoc-Phe, Boc-Lys(Cl−Z), Boc-Arg(Tos), Boc-Aarg(Tos)を順に縮合後、同様に処理、精製し白色粉末13mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 2450.4 (計算値2450.4)
HPLC溶出時間 15.7 分
溶出条件
カラム YMC A-301-3 (4.6 x 100mm)
溶離液 A液: 0.1%TFA-水、B液: 0.1%TFA含有アセトニトリルを用い、A/B: 100/0〜50/50へ 直線型濃度勾配溶出(25分)
流速 1.0ml/分
【実施例30】
pGlu-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Proの製造
市販Boc-Pro-OCH2-PAM樹脂(0.63 m mole/g resin)を用い、Boc-Met, Boc-Pro, Boc-Gly, Boc-Lys(Cl-Z), Boc-His(Bom), Boc-Ser(Bzl), Boc-Leu, Boc-Arg(Tos),Boc-Pro, Boc-Arg(Tos), Z-Gluを順位縮合した後、樹脂をp−クレゾール共存下弗化水素処理、実施例18と同様に精製し白色粉末56mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 1386.4 (計算値1386.7)
HPLC溶出時間 12.7分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【実施例31】
pGlu-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Metの製造
市販Boc-Met-OCH2-PAM樹脂(0.66 m mole/g resin)を用い、Boc-Pro, Boc-Gly, Boc-Lys(Cl-Z), Boc-His(Bom), Boc-Ser(Bzl), Boc-Leu, Boc-Arg(Tos),Boc-Pro, Boc-Arg(Tos), Z-Gluを順位縮合した後、樹脂をp−クレゾール共存下弗化水素処理、実施例18と同様に精製し白色粉末29mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 1289.9 (計算値1289.7)
HPLC溶出時間 11.8分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【実施例32】
Met-Leu-Val-Gln-Pro-Arg-Gly-Ser-Arg-Asn-Gly-Pro-Gly-Pro-Trp-Gln-Gly-Gly-Arg-Arg-Lys-Phe-Arg-Arg-Gln-Arg-Pro-Arg-Leu-Ser-His-Lys-Gly-Pro-Met-Pro-Pheの製造
実施例20の樹脂に更にFmoc-Metを縮合後、同様に処理精製し白色粉末5mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 4324.9 (計算値4325.3)
HPLC溶出時間 16.8 分
溶出条件
カラム YMC A-301-3 (4.6 x 100mm)
溶離液 A液: 0.1%TFA-水、B液: 0.1%TFA含有アセトニトリルを用い、A/B: 100/0〜50/50へ 直線型濃度勾配溶出(25分)
流速 1.0ml/分
【実施例33】
ホルスコリン刺激cAMP産性の抑制活性の測定
24-well組織培養プレートにCHO-A10 clone 6細胞を3×105cells/wellで播種し、一晩培養した。0.2mM 3-isobutyl-1-methylxantine (IBMX)、0.05%ウシ血清アルブミンを含有するHanks' balanced salt solution (HBSS)をアッセイバッファーとして準備し、各wellを500μlのアッセイバッファーで2回洗浄した後、37℃で30分間プレインキュベーションを行なった。さらに500μlのアッセイバッファーで1回洗浄した後、1μMのホルスコリンを添加したアッセイバッファーに溶解したサンプルを500μlずつ各wellに添加し、37℃で30分間インキュベーションを行なった。細胞の基礎的cAMP産性量(basal level)を知るためにホルスコリンを加えないアッセイバッファーでインキュベーションしたwellを、また、ホルスコリン刺激による最大cAMP産性量(maximum level)を知るためにホルスコリンを添加したアッセイバッファーでインキュベーションしたwellも同様に用意した。インキュベーション終了後に各wellを500μlのアッセイバッファーで1回洗浄した後、各wellにAmersham社のcAMP EIA systemに付属のlysis buffer 1Bを500μlを加え、cAMPの抽出を行なった。キットの処方に従い、各抽出液のうち100μlを用いてcAMP量の測定をおこなった。cAMPの産性抑制活性量は、maximum levelとサンプルを添加したwellのcAMP量の差(cAMPの産性抑制量)を求め、さらにホルスコリンに刺激によるcAMP産性増大量(maximum levelとbasal levelの差)に対する百分率として算出し、その結果を図22に示した。
【実施例34】
ヒトアペリン−36(Leu Val Gln Pro Arg Gly Ser Arg Asn Gly Pro Gly Pro Trp Gln Gly Gly Arg Arg Lys Phe Arg Arg Gln Arg Pro Arg Leu Ser His Lys Gly Pro Met Pro Phe)構造遺伝子の調製
CTAGAAAGGA GATATCATAT GCTGGTTCAA CCGCGTGGTT CT(#1:グライナー・ジャパン社)、CGTAATGGTC CGGGTCCATG GCAAGGTGGT CGTCGTAAAT TTCGTC(#2:キコーテック社)、
GTCAACGTCC GCGTCTGTCT CATAAAGGTC CGATGCCGTT TTGCC(#3:アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)GACCATTACG AGAACCACGC GGTTGAACCA GCATATGATA TCTCCTTT(#4:アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)、GGACGTTGAC GACGAAATTT ACGACGACCA CCTTGCCATG GACCCG(#5:グライナー・ジャパン社)、TCGGGGCAAA ACGGCATCGG ACCTTTATGA GACAGACGC(#6:キコーテック社)を用いてアペリン−36の構造遺伝子を調製した。
a)DNAオリゴマーのリン酸化
5'末端になるべき#1及び#6を除いた4種類のオリゴマー各1μgを100 μLのリン酸化反応液[50mM Tris-HCl (pH7.6), 10mM MgCl2, 1mM スペルミジン、10mM ジチオスレイトール、0.1mg/mLウシ血清アルブミン、1mM ATP、10ユニット T4ポリヌクレオチドキナーゼ(日本ジーン)]中で37℃、1時間反応させ、5'末端のリン酸化を行った。フェノール処理を行った後、水層を回収し2倍量のエタノールを加え、−70℃に冷却した後、遠心でDNAを沈殿させた。
b)DNAフラグメントの連結
上記a)で得られたリン酸化DNAフラグメントと#1及び#2各1μgを合わせ120μLとした。この混合液を80℃で10分間保った後、室温まで徐冷しアニーリングを行った。TaKaRa DNA Ligation Kit ver.2 (宝酒造)を用いてライゲーション反応を行った。アニーリング液30 μLにII液30 μLを加え良く混合した後、I液60 μLを加え、37℃、1時間反応させ、ライゲーションを行った。フェノール処理を行った後、水層を回収し2倍量のエタノールを加え、ー70℃に冷却した後、遠心でDNAを沈殿させた。
c)5'末端のリン酸化
沈殿をTE緩衝液(10mM Tris-HCl(pH8.0), 1mM EDTA)10 μLに溶解し、100 μLのリン酸化反応液[50mM Tris-HCl (pH7.6), 10mM MgCl2, 1mM スペルミジン、10mM ジチオスレイトール、0.1mg/mLウシ血清アルブミン、1mM ATP、10ユニット T4ポリヌクレオチドキナーゼ(日本ジーン)]中で37℃、1時間反応させ、5'末端のリン酸化を行った。フェノール処理を行った後、水層を回収し2倍量のエタノールを加え、−70℃に冷却した後、遠心でDNAを沈殿させ、20μLのTE緩衝液に溶解した。
【実施例35】
ヒトアペリン−36発現プラスミドの調製
pTB960-2(EP-A-499990:小山ら、ジャーナル・オブ・バイオテクノロジー、32巻、273頁)をXbaI及びAvaIで消化し、1%アガロース電気泳動を行い約4.4KbpのDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社)を用いて抽出し、25μLのTE緩衝液に溶解した。このpTB960-2のXbaI, AvaI断片と上記により調製したヒトアペリン−36の構造遺伝子をTaKaRa DNA Ligation Kit ver.2 (宝酒造)を用いてライゲーション反応を行った。すなわちpTB960-2のXbaI, AvaI断片溶液1μLとヒトアペリン−36の構造遺伝子溶液4μLを混合し、I液5 μLを加え、16℃、30分間反応させ、ライゲーションを行った。ライゲーション液10 μLを用いてE. coli JM109コンピテントセル(東洋紡)を形質転換し、10μg/mLのテトラサイクリンを含むLB寒天培地上に播き、37℃で1日培養し、生じたテトラサイクリン耐性コロニーを選んだ。この形質転換体をLB培地で一晩培養し、QIAprep8 Miniprep Kit(キアゲン社)を用いてプラスミドpTB960-13を調製した。このヒトアペリン−36構造遺伝子部分の塩基配列をアプライドバイオシステムズ社モデル377DNAシークエンサーを用いて確認した。プラスミドpTB960-13を大腸菌BL21(DE3)株(Novagen社)に形質転換を行い、10μg/mLのテトラサイクリンを含むLB寒天培地上に播き、37℃で1日培養し、ヒトアペリン−36-CS23融合蛋白質発現株BL21(DE3)/pTB960-13を得た。この形質転換大腸菌BL21(DE3)/pTB960-13は受託番号FERM BP-6590で1998年12月2日付で通産省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託された。また1998年11月11日付で受託番号IFO16220として財団法人発酵研究所(IFO)に寄託された。
【実施例36】
実施例35で得られた形質転換細胞を、5.0mg/Lのテトラサイクリンを含むLB培地(1%ペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム)1Lを用いて、2リットル容フラスコ中で37℃、8時間振とう培養した。得られた培養液を19リットルの主発酵培地(1.68%リン酸1水素ナトリウム、0.3%リン酸2水素カリウム、0.1%塩化アンモニウム、0.05%塩化ナトリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.02%消泡剤、0.00025%硫酸第一鉄、0.00025%塩酸チアミン、1.5%ブドウ糖、1.5%カザミノ酸)を仕込んだ50L容発酵槽へ移植して、30℃で通気撹拌培養を開始した。培養液の濁度が約500クレット単位になった時点で、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドの最終濃度が12mg/Lになるように添加し、さらに4時間培養を行った。培養終了後、培養液を遠心分離し、約660gの湿菌体を取得し、−80℃で凍結保存した。
【実施例37】
ヒトアペリン−36の取得
実施例35で得た菌体550gに10mM EDTA+1mM(p-アミジノフェニル)メタンスルホニルフルオリド塩酸塩(pH6.0)溶液1500mlを加え、超音波処理(BRANSON SONIFIER MODEL450)した後、遠心分離(10000rpm、60min)を行った。上澄液はプールし、沈殿は再び同様の操作を行った。プールした上澄液はpH6.0に調整し、50mM リン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したAF-Heparin Toyopearl 650Mカラム(30mmID×500mmL、東ソー)に通液し、吸着、洗浄した後、0−100%B(B=50mM リン酸緩衝液+2M NaCl、pH6.0)の段階勾配で溶出を行い、530mlのヒトアペリン−36−CS23融合タンパク質画分を得た。
この溶出液をペリコンミニカセット(ミリポア社)で0.1M酢酸を加えながら濃縮を行い、ヒトアペリン−36−CS23融合タンパク質の0.1M酢酸溶液を得た。この溶液に最終濃度6Mとなるように尿素を添加した後、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウム塩(DMAP−CN)35mgを加えて、室温で15分間反応した。反応終了後、反応液を10%酢酸で平衡化したSephadex G−25カラム(46mmID×600mmL、ファルマシア)に通液し、平衡化に用いた10%酢酸を6ml/minの流速で展開し、S−シアノ化されたヒトアペリン−36−CS23融合タンパク質画分を得た。この溶出液をペリコンミニカセット(ミリポア社)で濃縮・脱塩を行い、ヒトアペリン−36−CS23融合タンパク質の脱塩液を得た。この脱塩液に最終濃度6Mとなるように尿素を添加した後、さらに、0.06N濃度となるように1N苛性ソーダを加え、0℃で15分間反応した。反応終了後、酢酸でpH6.0に調整し、ヒトアペリン−36を得た。この反応液を3M尿素を含む50mMリン酸緩衝液(pH6.5)で平衡化したSP−5PW(21.5mmID×150mmL、東ソー)に通液し、吸着、洗浄した後、0−40%B(B=50mM リン酸緩衝液+1M NaCl+3M尿素、pH6.5)の段階勾配で溶出を行い、ヒトアペリン−36を画分を得た。このヒトアペリン−36画分を、さらに0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)で平衡化したC4P−50(21.5mmID×300mmL、昭和電工)に通液し、吸着、洗浄した後、15−30%B(B:80%アセトニトリル/ 0.1%TFA)の段階勾配で溶出を行い、ヒトアペリン−36画分をプールした後、凍結乾燥を行い、ヒトアペリン−36凍結乾燥粉末を得た。
a)アミノ酸組成分析
アミノ酸組成をアミノ酸分析計(日立L−8500A Amino Acid Analyzer)を用いて決定した。
その結果、N末端にメチオニンの付加したヒトアペリン−36のDNA塩基配列から予想されるアミノ酸組成と一致した(表1)。
(表1)
アミノ酸組成分析
Figure 0004429410
b)N末端アミノ酸配列分析
N末端アミノ酸配列を気相プロテインシーケンサー(アプライドバイオシステムズ モデル477A)を用いて決定した。その結果、得られたヒトアペリン−36のN末端にはメチオニンが付加していることのほかはDNA塩基配列から予想されるN末端アミノ酸配列と一致した(表2)。
(表2)
N末端アミノ酸配列
Figure 0004429410
c)C末端アミノ酸分析
C末端アミノ酸をアミノ酸分析計(日立L−8500A Amino Acid Analyzer)を用いて分析した(表3)。
(表3)
C末端アミノ酸分析
Figure 0004429410
以上の結果から実施例4で得られたヒトアペリン−36は、そのN末端にメチオニンが付加した分子種(Met−ヒトアペリン−36)であることがわかった。
【実施例38】
(生物活性測定)
実施例37で取得したMet−ヒトアペリン−36を用いて、実施例6に記載の方法(サイトセンサー)で活性を測定し、合成品と同等の活性を有することを確認した。
【実施例39】
N末端メチオニンの除去
実施例37で取得したMet−ヒトアペリン−36 4mgを3M尿素溶液0.8mlに溶解した後、80mM硫酸銅 0.05ml、グリオキシル酸 0.046g、ピリジン 0.1mlの混合液を加え、25℃で1時間反応した。反応終了後、反応液を2.5M尿素+10mMリン酸緩衝液(pH5.5)で平衡化したセファデックス(Sephadex)G−25カラム(10mmID×250mmL)に通液し、平衡化に用いた溶液を0.5ml/分の流速で展開し、Met−ヒトアペリン−36のジケトン体画分をプールした。続いてこの画分に等量の 4M酢酸、4M酢酸ナトリウム、3M尿素溶液を加えた後、o-フェニレンジアミンを40mM濃度になるように添加して、脱気、窒素ガスシールを行い、25℃で5日間反応した。反応終了後、反応液を50mMリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したセファデックスG−25カラム(25mmID×600mmL)に通液し、平衡化に用いた緩衝液を4ml/分の流速で展開し、N末端にメチオニンの付加していないヒトアペリン−36画分をプールした。プールしたヒトアペリン−36画分をpH6.0に調整し、50mMリン酸緩衝液+0.1M NaCl+2.5M尿素(pH5.0)で平衡化したCM−5PW(7.5mmID×75mmL、東ソー(株))に吸着した後、0−100%B(B=50mMほう酸緩衝液+0.1M NaCl+2.5M尿素、pH9.0)の段階勾配で40分間、0.8ml/分の流速で溶出を行い、ヒトアペリン−36画分をプールした。さらに、ヒトアペリン−36を0.1%TFAで平衡化した C4P−50(10mmID×250mmL、昭和電工(株))に吸着した後、15−30%B(B=80%アセトニトリル/0.1%TFA)の段階勾配で40分間、2ml/分の流速で溶出した。 ヒトアペリン−36のフラクションをプールした後、凍結乾燥を行い、ヒトアペリン−36L取得した。
a)アミノ酸組成分析
アミノ酸組成をアミノ酸分析計(日立L−8500A Amino Acid Analyzer)を用いて決定した。
その結果、hA10LのDNA塩基配列から予想されるアミノ酸組成と一致した(表4)。
(表4)
アミノ酸組成分析
Figure 0004429410
b)N末端アミノ酸配列分析
N末端アミノ酸配列を気相プロテインシーケンサー(アプライドバイオシステムズ モデル477A)を用いて決定した。その結果、得られたヒトアペリン−36のDNA塩基配列から予想されるN末端アミノ酸配列と一致した(表5)。
(表5)
N末端アミノ酸配列
Figure 0004429410
c)C末端アミノ酸分析
C末端アミノ酸をアミノ酸分析計(日立L−8500A Amino Acid Analyzer)を用いて分析した(表6)。
(表6)
C末端アミノ酸分析

Figure 0004429410
【実施例40】
生物活性測定
実施例39で取得したヒトアペリン−36を用いて、実施例6に記載の方法(サイトセンサー)で活性を測定し、合成品と同等の活性を有することを確認した。
【0071】
【配列表】
【配列番号:1】
Figure 0004429410
【配列番号:2】
Figure 0004429410
【0072】
【配列番号:3】
Figure 0004429410
Figure 0004429410
【0073】
【配列番号:4】
Figure 0004429410
【0074】
【配列番号:5】
Figure 0004429410
【0075】
【配列番号:6】
Figure 0004429410
【0076】
【配列番号:7】
Figure 0004429410
【0077】
【配列番号:8】
Figure 0004429410
【配列番号:9】
Figure 0004429410
【配列番号:10】
Figure 0004429410
【配列番号:11】
Figure 0004429410
【配列番号:12】
Figure 0004429410
【配列番号:13】
Figure 0004429410
【配列番号:14】
Figure 0004429410
【配列番号:15】
Figure 0004429410
【配列番号:16】
Figure 0004429410
【配列番号:17】
Figure 0004429410
【配列番号:18】
Figure 0004429410
【配列番号:19】
Figure 0004429410
【配列番号:20】
Figure 0004429410
【配列番号:21】
Figure 0004429410
【配列番号:22】
Figure 0004429410
【配列番号:23】
Figure 0004429410
【配列番号:24】
Figure 0004429410
【配列番号:25】
Figure 0004429410
【配列番号:26】
Figure 0004429410
【配列番号:27】
Figure 0004429410
【配列番号:28】
Figure 0004429410
【配列番号:29】
Figure 0004429410
【配列番号:30】
Figure 0004429410
【配列番号:31】
Figure 0004429410
【配列番号:32】
Figure 0004429410
【配列番号:33】
Figure 0004429410
【配列番号:34】
Figure 0004429410
【配列番号:35】
Figure 0004429410
【配列番号:36】
Figure 0004429410
【配列番号:37】
Figure 0004429410
【配列番号:38】
Figure 0004429410
【配列番号:39】
Figure 0004429410
【配列番号:40】
Figure 0004429410
【配列番号:41】
Figure 0004429410
【配列番号:42】
Figure 0004429410
【配列番号:43】
Figure 0004429410
【0078】
【発明の効果】
本発明のポリペプチドは中枢神経機能調節作用、循環機能調節作用、心臓機能調節作用、免疫機能調節作用、消化器機能調節作用、代謝機能調節作用あるいは生殖器機能調節作用などに関与していることから、上記したアゴニストあるいはアンタゴニストをたとえば老人性痴呆、脳血管性痴呆、系統変成型の退行変成疾患(例:アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、ハンチントン病など)に起因する痴呆、感染性疾患(例:クロイツフェルト−ヤコブ病などの遅発ウイルス感染症など)に起因する痴呆、内分泌性・代謝性・中毒性疾患(例:甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、アルコール中毒、各種薬剤・金属・有機化合物による中毒など)に起因する痴呆、腫瘍性疾患(例:脳腫瘍など)に起因する痴呆、外傷性疾患(例:慢性硬膜下血腫など)に起因する痴呆などの痴呆、鬱病、多動児(微細脳障害)症候群、意識障害、不安障害、精神***症、恐怖症、成長ホルモン分泌障害(例:巨人症、末端肥大症など)、過食症、多食症、高コレステロール血症、高グリセリド血症、高脂血症、高プロラクチン血症、低血糖症、下垂体機能低下症、下垂体性小人症、糖尿病(例:糖尿病性合併症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症など)、癌(例:乳癌、リンパ性白血病、肺癌、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌など)、膵炎、腎疾患(例:慢性腎不全、腎炎など)、ターナー症候群、神経症、リウマチ関節炎、脊髄損傷、一過性脳虚血発作、筋萎縮性側索硬化症、急性心筋梗塞、脊髄小脳変性症、骨折、創傷、アトピー性皮膚炎、骨粗鬆症、喘息、てんかん、不妊症、動脈硬化、肺気腫、肺水腫または乳汁分泌不全などの疾病の治療・予防剤として用いることができる。さらに催眠鎮静剤、手術後の栄養状態改善剤、昇圧剤、降圧剤などとしても用いることができる。
加えて、HIV感染症、エイズ(AIDS(Acquired Immune Deficiency Syndrome):後天性免疫不全症候群)などの治療・予防剤として用いることができる。
【0079】
【図面の簡単な説明】
【図1】G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)cDNAの塩基配列およびそれにコードされるアミノ酸配列を示す。
【図2】G蛋白質共役型レセプター蛋白質(APJ)mRNAのNorthern blotによる組織分布の解析結果を示す。
【図3】CHO−A10細胞株での全長レセプター蛋白質の発現量の転写レベルでの確認。
レーン1〜7はプラスミドDNA(pAKKO−A10)を段階的に希釈(1, 1/4, 1/16, 1/256, 1/1024, 1/4096)したもの、レーン8〜11はCHO−A10細胞より調製したcDNAを段階的に希釈(1, 1/10, 1/100, 1/1000)したもの、レーン12はリバーストランスクリプターゼを加えなかったもの、レーン13は鋳型となるmRNAを使用しなかったもの、レーン14はコントロールのCHO細胞より同様の処理をおこなったもの、レーン15はコントロールのCHO細胞よりリバーストランスクリプターゼを使用せずに同様の処理を行ったものである。
MはDNAのサイズマーカーを示し、左側はλファージDNAをStyI消化したもの、右側はφχ174DNAをHincIIで消化したものである。
【図4】ブタ脳、ウシ胃の抽出物に含まれるCHO−A10細胞を特異的に刺激する活性のサイトセンサーによる検出。
B1〜B4はブタ脳より調製したサンプル、S1〜S4はウシ胃より調製したサンプルの測定結果を表す。それぞれCHO−A10細胞(白丸)とコントロール細胞(黒丸)の各測定サイクルの細胞外pHの変化率(Acidification Rate)の経時的変化をbasal levelに対する変化率で表示している。
サンプルはサイクル4〜7の間、細胞に暴露した。
【図5】ブタ小腸の抽出物に含まれるCHO−A10細胞を特異的に刺激する活性のサイトセンサーによる検出(図6に続く)。
G1〜G8はブタ小腸より調製したサンプルの測定結果を表す。それぞれCHO−A10細胞(白丸)とコントロール細胞(黒丸)の各測定サイクルの細胞外pHの変化率(Acidification Rate)の経時的変化をbasal levelに対する変化率で表示している。
サンプルはサイクル4〜7の間、細胞に暴露した。
【図6】ウシ視床下部の抽出物に含まれるCHO−A10細胞を特異的に刺激する活性のサイトセンサーによる検出(図7に続く)。F1〜F5はC18カラム10%アセトニトリル溶出画分、F6〜F10は30%アセトニトリル溶出画分、F11〜F15は50%アセトニトリル溶出画分のサンプルである。それぞれをさらにCMセファロースイオン交換カラムにおいて素通り画分(Fr.1,6,11)、酢酸アンモニウム濃度100mM溶出画分(Fr.2,7,12)、250mM溶出画分(Fr.3,8,13)、500mM溶出画分(Fr.4,9,14)および1000mM溶出画分(Fr.5,10,15)の合計15画分に分画し、各サンプルに含まれる細胞刺激活性を測定した。
それぞれ、CHO−A10細胞(白丸)およびコントロールの細胞(黒丸)に対してサイクル4〜7の間サンプルを暴露し、細胞外pHの変化率の経時的変化をbasal levelを100%として表示した。
表の縦軸はAcidification Rate (% of Basal level)を、横軸はサイクルを示す。
【図7】ウシ視床下部の抽出物に含まれるCHO−A10細胞を特異的に刺激する活性のサイトセンサーによる検出(図6の続き)。F1〜F5はC18カラム10%アセトニトリル溶出画分、F6〜F10は30%アセトニトリル溶出画分、F11〜F15は50%アセトニトリル溶出画分のサンプルである。それぞれをさらにCMセファロースイオン交換カラムにおいて素通り画分(Fr.1,6,11)、酢酸アンモニウム濃度100mM溶出画分(Fr.2,7,12)、250mM溶出画分(Fr.3,8,13)、500mM溶出画分(Fr.4,9,14)および1000mM溶出画分(Fr.5,10,15)の合計15画分に分画し、各サンプルに含まれる細胞刺激活性を測定した。
それぞれ、CHO−A10細胞(白丸)およびコントロールの細胞(黒丸)に対してサイクル4〜7の間サンプルを暴露し、細胞外pHの変化率の経時的変化をbasal levelを100%として表示した。
表の縦軸はAcidification Rate (% of Basal level)を、横軸はサイクルを示す。
【図8】細胞刺激活性の強さを指標としたAPJ受容体高発現細胞の選択。
CHO−A10細胞よりクローン化した1〜8の細胞に対して同一のサンプルを暴露した後、4サイクル目の細胞外PHの変化率のbasal levelに対する変化量(%)を表示したものである。
表の縦軸はChange of Acidification Rate (% of Basal level)を、縦軸はCHO−A10細胞よりクローン化した細胞の番号を示す。
【図9】ウシ胃からのペプチド粗画分のRESOURCE RPCにおける分離パターンとCHO−A10に特異的な活性の検出を示す。
【図10】RESOURCE RPCにおけるP−2活性のVydac diphenyl 219TP5415における分離パターンとCHO−A10に特異的な活性の検出を示す。
【図11】RESOURCE RPCにおけるP−2活性のSephasil C8 SC 2.1/10における分離パターンとCHO−A10に特異的な活性の検出を示す。
【図12】Vydac diphenyl 219TP5415における活性画分のμRPC C2/C18 SC 2.1/10における分離パターンとCHO−A10に特異的な活性の検出を示す。
【図13】Sephasil C8 SC 2.1/10における活性画分のμRPC C2/C18 SC 2.1/10における分離パターンとCHO−A10に特異的な活性の検出を示す。
【図14】マウス由来EST(Mouse EST)と配列番号:1(Bovine)で示されるウシ胃由来ペプチド断片との相同性を示す。
【図15】マウス型リガンドポリペプチドのcDNAの塩基配列およびそれにコードされるアミノ酸配列を示す。
【図16】マウス型リガンドポリペプチド(mouse)と配列番号:1(Bovine parti)で示されるウシ胃由来ペプチド断片との相同性を示す。
【図17】ラット型リガンドポリペプチドのcDNAの塩基配列およびそれにコードされるアミノ酸配列を示す。
【図18】ヒト型リガンドポリペプチドのcDNAの塩基配列およびそれにコードされるアミノ酸配列を示す。
【図19】ウシ型リガンドポリペプチドのcDNAの塩基配列およびそれにコードされるアミノ酸配列を示す。
【図20】ウシ、マウス、ラットおよびヒト型リガンドポリペプチドのcDNAの塩基配列にコードされるアミノ酸配列の比較を示す。
【図21】実施例16で得られたペプチドと配列番号:42の第42番目ないし第77番目のアミノ酸配列で表わされるペプチドのAcidification Rateの変化量を示す図を示す。
図中、○−○は実施例16で得られたペプチドのAcidification Rateの変化量、●−●は配列番号:42の第42番目ないし第77番目のアミノ酸配列で表わされるペプチドのAcidification Rateの変化量を示す。
【図22】実施例33で行われたホルスコリン刺激cAMP産生の抑制活性の測定結果を示す図を示す。
図中、○−○は配列番号:42の第42番目ないし第77番目のアミノ酸配列で表わされるペプチド、●−●は配列番号:40の第65番目ないし第77番目のアミノ酸配列で表わされるペプチドを示す。

Claims (12)

  1. 配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対する結合能を有するポリペプチドであって、次のいずれかのポリペプチドまたはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩
    c)配列番号:40で表されるアミノ酸配列の第42番目から第77番目のアミノ酸配列を含有するペプチド
    e)配列番号:40で表されるアミノ酸配列の第61番目から第77番目のアミノ酸配列を含有するペプチド、または
    (f)配列番号:40で表されるアミノ酸配列の第65番目から第77番目のアミノ酸配列を含有するペプチドまたはそのN末端のアミノ酸(Gln)がピログルタミン酸化したアミノ酸配列を含有するペプチド。
  2. ポリペプチドが配列番号:40で表されるアミノ酸配列の第65番目から第77番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項1記載のポリペプチド。
  3. ポリペプチドが配列番号:40で表されるアミノ酸配列の第42番目から第77番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項記載のポリペプチド。
  4. 配列番号:40で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項1記載のポリペプチド。
  5. 配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対する結合能を有するポリペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含有するDNAであって、該ポリペプチドは次のいずれかであるDNA
    c)配列番号:40で表されるアミノ酸配列の第42番目から第77番目のアミノ酸配列を含有するペプチド
    e)配列番号:40で表されるアミノ酸配列の第61番目から第77番目のアミノ酸配列を含有するペプチド、または
    (f)配列番号:40で表されるアミノ酸配列の第65番目から第77番目のアミノ酸配列を含有するペプチド。
  6. ポリペプチドが配列番号:40で表されるアミノ酸配列の第65番目から第77番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項記載のDNA。
  7. ポリペプチドが配列番号:40で表されるアミノ酸配列の第42番目から第77番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項記載のDNA。
  8. ポリペプチドが、配列番号:40で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項記載のDNA。
  9. 請求項記載のDNAを含有する組換えベクター。
  10. 請求項記載のDNAまたは請求項記載の組換えベクターを保持する形質転換体。
  11. 請求項10記載の形質転換体を培養することを特徴とする請求項1記載のポリペプチドまたはその塩の製造法。
  12. 請求項1記載のポリペプチドまたはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩と配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質を用いることを特徴とする配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質と請求項1記載のポリペプチドまたはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
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