JP4428929B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも着色顔料インクをインクジェット記録によって付与するインクジェット記録方法に用いられ、とりわけ普通紙に対して高速印字が可能で定着性に優れ、記録濃度の高い記録物が得られる、少なくとも1の着色顔料インクと反応液とを独立に有するインクセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、記録液(インク)の小滴を飛翔させ、紙等の被記録材に付着させて記録を行うものである。特に、吐出エネルギー供給手段として電気熱変換体を用い、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させる方法(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)によれば、記録ヘッドの高密度マルチオリフィス化が容易に実現でき、高解像度、高品質の画像を高速で記録できる。
【0003】
しかしながら、従来のインクジェット記録に用いられるインクは、一般に水を主成分とし、これに乾燥防止、目詰まり防止等の目的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤を含有したものが一般的であるが、このようなインクを用いて普通紙に記録を行った場合に、インクが記録紙の内部に浸透してしまい十分な記録濃度が得られなかったり、記録紙表面の填料、サイズ剤の不均一な分布によると思われる画像濃度の不均一が生じたりすることがある。
【0004】
かかる課題に対し、特に着色剤にカーボンブラックを用いている着色インクの普通紙での記録物の記録濃度向上を目的とした、粒子径、DBP吸油量、pH及びこれら相互の関係が特定のインクを用いる提案がなされている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、このような特性を有するカーボンブラックを用いてなる着色インクで普通紙上に印字を行うと、記録紙に対する浸透性を落とし、定着性の悪いインクとしなければ十分な記録濃度をもつ記録物を得ることができなかった。即ち、上記提案に示されるようなインクを用いても、定着性と普通紙上での記録物の記録濃度の両者を向上させることは不可能であった。
【0005】
一方、上述した課題を解決するため、記録物の記録濃度の低下を抑制する方法として、記録インクの噴射に先立って記録紙上に画像を良好にせしめる液体を付着させる方法が種々提案されている。例えば、被記録媒体上に予めカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のポリマーの溶液を噴射してから印字する方法の提案があるが(例えば、特許文献5参照)、記録物の記録濃度は改善されるものの、溶液自体の乾燥性が悪く定着性が低くなる問題が懸念される。そして、これを改善するための提案が種々なされている。例えば、1分子当り2個以上のカチオン性基を有する有機化合物を含有する液体を付着させた後、アニオン染料を含有したインクを記録する方法(例えば、特許文献6参照)や、コハク酸等含有した酸性液体を付着させた後、インクを記録する方法(例えば、特許文献7参照)、更に、染料を不溶化する液体を記録前に付着させる方法(例えば、特許文献8参照)がある。
【0006】
しかし、これらの何れの場合においても、被記録媒体内に反応液が浸透して、被記録媒体中に存在、且つ被記録媒体表面からなくなった後の状態で着色インクを付与しているため、ほとんどの反応は被記録媒体中で起こっており、記録濃度が十分に向上しないという問題と、被記録媒体の裏面で着色剤が視認される、いわゆる裏抜けの問題があった。以上のように、反応液が被記録媒体上にあるときにインクと反応させると定着性が劣るという問題が懸念され、反応液が被記録媒体中にあるときにインクと反応させると、記録濃度が十分に向上しないという問題が懸念されている。
【0007】
又、多価金属イオンとカルボキシル基の反応を利用して記録濃度を向上する提案があるが(例えば、特許文献9参照)、この場合においても、多価金属イオンを含有した液体を被記録媒体に含浸させてから着色インクと反応させているために、特にカラー画像を形成した場合に生じるブリーディング(混色滲み)はある程度抑えられるものの、着色インクが被記録媒体に対して浸透性が高い場合には記録物の記録濃度の低下及び裏抜けの問題が懸念され、逆に浸透性が低い場合は定着に時間がかかるという問題が懸念される。更に又、顔料と樹脂エマルジョンと多価金属塩による反応によりブリーディングを改善する提案があるが(例えば、特許文献10参照)、基本的な概念は上記した特許文献9とほぼ同じである。
【0008】
一方、印字するタイミングに対する提案として、例えば、反応液を被記録媒体に塗布してから、塗布した部分の被記録媒体の調子を整えることで高品質な印字を得ることができる印字方法が開示されている(例えば、特許文献11参照)。しかし、かかる提案では、被記録媒体の調子を整えることについて、反応液が吸収と浸透を通して被記録媒体と相互作用するのに要する時間と定義し、前記時間が経過してから着色インクを被記録媒体に塗布するとしているが、相互作用に関する条件が明確に記述されていない。
【0009】
上記したように、これまでなされている提案では、定着性と記録物の記録濃度はトレードオフの関係にあり、両者を共に向上することのできる着色インクについての提案はなされていない。
【0010】
【特許文献1】
特公昭61−59911号公報
【特許文献2】
特公昭61−59912号公報
【特許文献3】
特公昭61−59914号公報
【特許文献4】
特開平7−316480号公報
【特許文献5】
特開昭56−89595号公報
【特許文献6】
特開昭63−29971号公報
【特許文献7】
特開昭64−9279号公報
【特許文献8】
特開昭64−63185号公報
【特許文献9】
特開平5−202328号公報
【特許文献10】
特開平9−207424号公報
【特許文献11】
特開平7−195823号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、インクジェット記録用として、普通紙に記録した場合にも、定着性と記録濃度が共に高い画像が得られるインクセットを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下に示す着色顔料インクを用いた場合に解決される。即ち、本発明は、[1]予め普通紙に反応液を付与させてから、着色顔料インクをインクジェット記録によって付与するインクジェット記録方法であって、該反応液は、多価金属イオンと、浸透促進剤として界面活性剤とを含み、該着色顔料インクは、カーボンブラックを含み、該カーボンブラックのDBP吸油量は、70ml/100g以上300ml/100g以下であり、該反応液中の多価金属イオンの総電荷密度は、該着色顔料インク中の該多価金属イオンと逆極性のイオンの総電荷密度よりも多く、該普通紙に対する反応液の浸透性は、該普通紙に対する着色顔料インクの浸透性よりも低く、該着色顔料インクの表面張力は、34mN/m以下であり、普通紙に対する反応液の濡れ時間Twは、75msec以上であり、Twと、反応液と着色顔料インクを普通紙に付与する時間差Tdが、Td<2.0×Twを満足し、且つ、該普通紙の上面又は上方で、該反応液と該着色顔料インクとが接触する第1ステップと、該反応液と該着色顔料インクとが接触した界面で瞬時にカーボンブラックの凝集膜を形成する第2ステップと、分散状態にあるカーボンブラックを該凝集膜上に凝集及び/又は堆積させるプロセスと、該普通紙に対する該反応液の浸透性を促進させるプロセスと、該凝集膜を該普通紙の表面に定着させるプロセスとをほぼ同時に進行させる第3ステップとが実行されて画像形成を行うことを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0015】
本発明にかかる上記インクジェット記録方法の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。[2]前記普通紙に対する反応液の濡れ時間Twと、前記反応液と前記着色顔料インクを前記普通紙に付与する時間差Tdとの関係が、Td<1.0×Twを満足する上記[1]に記載のインクジェット記録方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。本発明のインクセットは、予め被記録媒体に反応液を付与させてから、着色顔料インクをインクジェット記録によって付与するインクジェット記録方法に用いる、少なくとも反応液と1のインクとを独立に有するインクセットであるが、先ず、本発明で使用するインクジェット用の着色顔料インク(以下、単にインクと呼ぶ)について説明する。
【0017】
本発明で使用するインクは、後述する反応液と独立に組み合わせて構成されるが、少なくともカーボンブラックを用いたインクを含んで構成されていればよく、複数のインクを独立に有していてもよい。これらのインクに含有される顔料は、インクの全質量に対して、質量比で1〜20質量%、好ましくは2〜12質量%の範囲で用いる。
【0018】
本発明において使用されるカーボンブラックは、いずれのものでもよいが、DBP吸油量が70〜300ml/100gのものを用いることを要する。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックを用いることができる。上記DBP吸油量は、JIS K6217或いは、DIN 53 601により測定されるもので、カーボンブラックの一次粒子同士のつながりの程度を意味し、このDBP吸油量の増加は、一次粒子同士のつながりが大きいことを意味している。更に、本発明においては、一次粒子径が13〜40mμ(nm)、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9等の特性を有するものが好ましく用いられる。
【0019】
このような特性を有する市販品としては、例えば、No.2600、No.990、MA600、No.40、No.32、No.20、No.10(以上、三菱化成製)、Conductex 975 ULTRA(以上、コロンビア製)、VULCAN XC 72R、VULCAN XC 72(以上キャボット製)、Color Black FWl、Color Black FW18、Color Black S170、Color Black S160、Printex 90、Printex 80、Printex 60(以上、デグッサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。又、本発明で使用するカーボンブラックは上記のものに限定されず、その他、自己分散型のもの等、新たに製造されたカーボンブラックも、勿論、使用することが可能である。
【0020】
又、本発明にかかるインクセットは、カーボンブラックを含有するインクを有するが、その他に、カラー化のためにカーボンブラック以外の顔料を使用したインクを併用するものであってもよい。その際に使用する、イエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 109等が挙げられ、マゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122等が挙げられ、シアンの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられる。勿論、本発明は、これらに限られるものではない。又、以上の他、自己分散型顔料等、新たに製造された顔料も、勿論、使用することができる。
【0021】
上記した顔料の分散剤としては、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲の水性樹脂を使用することが好ましく、更に好ましくは、3,000〜15,000の範囲の水性樹脂を使用する。このような分散剤として、具体的には、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、又、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸等の酸性官能基を有するビニル化合物、更に、(メタ)アクリル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つは親水性の重合性単量体)からなるブロック共重合体、或いは、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。或いは、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく使用することができる。これらの顔料分散剤として用いられる樹脂は、インクの全質量に対して0.1〜5質量%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0022】
特に、上記したような顔料が含有されているインクの場合には、インクの全体が中性又はアルカリ性に調整されていることが好ましい。このようなものとすれば、顔料分散剤として使用される水性樹脂の溶解性を向上させ、長期保存性に一層優れたインクとすることができるので好ましい。但し、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、好ましくは、7〜10のpH範囲とするのが望ましい。この際に使用されるpH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。上記したような顔料及び分散剤である樹脂は、水性液媒体中に分散又は溶解される。
【0023】
本発明で使用されるインクに好適な水性液媒体としては、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
【0024】
上記したような水溶性有機溶剤のインク中の含有量は、一般的には、インクの全質量の3〜50質量%の範囲、より好ましくは3〜40質量%の範囲で使用する。又、使用される水の含有量としては、インクの全質量の10〜90質量%、好ましくは30〜80質量%の範囲とする。
【0025】
又、本発明におけるインクとしては、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を適宜に添加することができる。特に、浸透促進剤として機能する界面活性剤は、被記録媒体に反応液とインクの液体成分を速やかに浸透させる役割を担うため、本発明においては、かかる役割を果たすことのできる適量を添加させるようにすることが好ましい。添加量の例としては、0.05〜10質量%、更には0.5〜5質量%が好適である。
【0026】
この際に使用するアニオン性界面活性剤の例としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般に使用されているものを何れも好ましく使用することができる。更に、本発明者らの検討によれば、これらの界面活性剤を含有させる場合に下記の関係を満足するように、インクセットの構成を設計すれば、後述するように、本発明で規定する画像形成の際の第3ステップを実現し得るインクセットとなることがわかった
【0027】
上述したような、カーボンブラック等の顔料が含有されたインクの作製方法としては、先ず、分散剤としての水性樹脂と、水とが少なくとも混合された水性媒体に顔料を添加し、混合撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の分散液を得る。次に、この分散液にサイズ剤、及び、上記で挙げたような適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌して本発明で使用するインクとする。
【0028】
尚、分散剤として前記したような酸性官能基をもつ樹脂を使用する場合には、樹脂を溶解させるために塩基を添加すると分散安定性が向上する。この際の塩基類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミン、或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が好ましく使用される。
【0029】
又、顔料が含有されているインクの作製方法においては、顔料を含む水性媒体を攪拌し、分散処理する前に、プレミキシングを30分間以上行うのが効果的である。即ち、このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため、好ましい。
【0030】
上記した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル及びサンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
【0031】
又、インクジェット記録方法を用いて、上記したような成分からなるインクを被記録媒体に付与するためには、耐目詰り性等の要請から、最適な粒度分布を有する顔料を用いることが好ましい。この際に用いる、所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、例えば、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、処理時間を長くすること、吐出速度を遅くすること、粉砕後フィルタや遠心分離機等で分級すること、及びこれらの手法の組合せ等、の手法が挙げられる。
【0032】
次に、上記したインクとともに本発明にかかるインクセットを構成する反応液について説明する。本発明で用いる反応液は、インクと反応する反応剤を含有してなるが、最も好適な反応剤として多価金属塩が挙げられる。多価金属塩とは、二価以上の多価金属イオンと、これらの多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成されたもののことである。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+等の二価金属イオン、そして、Fe3+、Al3+等の三価金属イオンが挙げられる。又、陰イオンとしては、Cl-、NO3 -、SO4 2-等が挙げられる。本発明においては、インクと反応液を瞬時に反応させて凝集膜を形成することを可能とするために、反応液中の多価金属イオンの総電荷密度が、インク中の逆極性イオンの総電荷密度の2倍以上となるように構成することが望ましい。
【0033】
本発明における反応液に使用できる水溶性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の1価アルコール類の他、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルホキサイド等が挙げられる。本発明における反応液中における上記水溶性有機溶剤の含有量については特に制限はないが、反応液全質量の5〜60質量%、更に好ましくは、5〜40質量%が好適な範囲である。
【0034】
又、本発明で使用する反応液には、更にこの他、必要に応じて、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等の添加剤を適宜配合してもかまわないが、浸透促進剤として機能する界面活性剤の選択と添加量は、被記録媒体に対する反応液の浸透性を抑制する上で注意を要し、本発明の初期の目的を達成できるように添加することが好ましい。更に本発明で使用する反応液は、無色であることがより好ましいが、被記録媒体上でインクと混合された際に、各色インクの色調を変えない範囲の淡色のものでもよい。更に、以上のような本発明における反応液の各種物性の好適な範囲としては、25℃付近での粘度が1〜30cps.の範囲となるように調整されたものが好ましい。
【0035】
次に、上記したような構成の反応液とインクとをそれぞれ独立に有する本発明にかかるインクセットにより画像形成が行なわれる状況を、図5を用いて説明する。本発明にかかるインクセットは、予め被記録媒体に反応液を付与させ、その後にインクをインクジェット記録によって付与させて画像を形成する際に用いられるが、本発明にかかるインクセットは、(1)被記録媒体の上面又は上方で反応液とインクを接触させる第1ステップと、(2)反応液と上記インクが接触した界面で瞬時に凝集膜を形成させる第2ステップと、(3)分散状態にある顔料粒子を該凝集膜上に凝集及び/又は堆積させるプロセスと、被記録媒体に対する反応液の浸透性を促進させるプロセスと、凝集膜を被記録媒体の表面に定着させるプロセスとをほぼ同時に進行させる第3ステップとが実行されるように構成されているため、本発明にかかるインクセットを用いることで、定着性と記録濃度とが共に高い画像の形成が可能となる。
【0036】
図5は、本発明にかかるインクセットを用いることで達成される画像形成の基本的な概念を模式的に示したものである。図5(a)は、被記録媒体10の上面又は上方で、反応液20とインク30を接触させる第1ステップを表わしており、予め反応液20を付与してある被記録媒体10に、インク30を付与させて反応液20と接触した瞬間を示している。反応液20の付与方法は、本発明では特に規定しないが、従来技術であるインクジェット法による付与や、ローラによる塗布等の方法が好適に使用できる。
【0037】
又、上記第1ステップにおいて、被記録媒体10の上面及び上方で反応液20とインク30を接触させるためには、被記録媒体10に付与される反応液20が被記録媒体10に浸透する前にインク30を付与する必要がある。これに対して、反応液20が被記録媒体10に対して低い浸透性を有するものであれば、インク30を付与するまでの時間をある程度置くことができるので好適な印字条件の設定が可能となる。被記録媒体10に対して反応液20を低い浸透性にするには、例えば、浸透促進剤となる界面活性剤等の添加量を抑制することで達成することができる。
【0038】
被記録媒体10に対する反応液20の浸透性を適宜に設定する際に用いることのできる、被記録媒体10に対する反応液20の浸透性を評価する一つの手法としてブリストー法がある。ブリストー法は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.51の『紙及び板紙の液体吸収性試験方法』に記載され、濡れ時間Tw、吸収係数Ka(mL/m2・ms1/2)と粗さ指数Vr(mL/m2)が定義されており、多くの市販図書に説明があるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0039】
図4に吸収曲線の例のみを示した。図4に示したように、反応液20は、この濡れ時間Twが経過した頃から被記録媒体10に浸透を開始し始める。従って、反応液20の被記録媒体10への浸透が完全に終了しない時間までにインク30を付与して反応液20と接触させることで、被記録媒体の上方又は上面で、反応液20とインク30とを接触させることができることがわかる。
【0040】
よって、反応液20とインク30を被記録媒体10に付与する時間差をTdとしたときに、この濡れ時間Twとの関係が、
Td<2.0×Tw
である印字条件、好ましくは、反応液20が被記録媒体10に浸透を開始する前とした、
Td<1.0×Tw
である印字条件によって、被記録媒体10の上面又は上方で反応液20とインク30を接触させることが達成される。但し、本発明における濡れ時間Twの算出方法は、図4に示すように、吸収係数Kaを算出するための最小二乗法による近似直線Aと、液体の転移量V、粗さ指数Vrで表されるV=Vrの直線Bとの交点ABまでの時間としている。
【0041】
次ぎの図5(b)及び(c)は、反応液20とインク30とが接触した界面で、瞬時に凝集膜31bを形成させる第2ステップを表している。第2ステップは、第1ステップ直後、瞬時に凝集膜31bを形成するものであり、本発明の特徴の一つである。反応液20とインク30とが接触した界面で瞬時に凝集膜31bを形成させるには、反応液20中の反応剤が、インク30中に含有されている成分と反応して凝集を起こさせるようにする必要がある。かかる方法としては、反応液中に、多価金属イオンを含有させて凝集させる方法がある
【0042】
この際、凝集膜31bを瞬時に形成させるためには、反応液20に含有される多価金属イオン21の総電荷密度を、インク30中の逆極性イオンの総電荷密度よりも多く含有させることが有効である。即ち、凝集膜31bは、反応液20中の多価金属イオン21と、インク30中の、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、或いはリン酸イオン等とが衝突して反応を起こすことによって形成されるため、上記のように構成して、これらの衝突確率を高めることで達成される。ここでの総電荷密度とは、反応液では単位質量あたりにおける多価金属イオンの数を、インクでは、単位質量あたりにおけるカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、或いはリン酸イオン等の逆極性イオンの数で定義している。
【0043】
以上のようにすることで、図5(a)に示した反応液20とインク30とが接触した直後の接触界面では、インク30が反応液20に衝突する衝撃により、インク30と反応液20のそれぞれを構成する組成成分が界面近傍で混合される。図5(b)に示したように、高い衝突確率のために、瞬時に、インク30中のカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、或いはリン酸イオン等と、反応液20中の多価金属イオンの結合が起こり、分散状態にある顔料粒子31の電気的斥力を消失させた顔料粒子31aができる。そして、図5(c)に示したように、顔料粒子31a同士の間に働くファンデルワールス引力により急速に顔料粒子31a同士による凝集膜31bが形成される。
【0044】
本発明にかかるインクセットでは、このとき、インク30中に含有される顔料粒子として、少なくとも、DBP吸油量70ml/100g〜300ml/100gのカーボンブラックが使用されているので、電気的斥力を消失させた顔料粒子31aの1粒子当たりの表面積が大きくなり、衝突確率がよりいっそう高まるため、凝集膜31bの形成が促進され、より大きな凝集膜31bが形成される。瞬時に形成された凝集膜31bの特徴は、顔料粒子同士が凝集したものであることから完全に何も通さない膜ではなく、顔料粒子間を通って、顔料粒子よりも小さいインク30中の界面活性剤32、溶媒、そして反応液20中の多価金属イオン21、溶媒は少なくとも通すことができる。
【0045】
図5(c)に続く、図5(d)、(e)及び(f)は、インク30中の分散状態にある顔料粒子31を、凝集膜31b上に凝集及び/又は堆積させるプロセスと、被記録媒体10に対する反応液20の浸透性を促進させるプロセスと、凝集膜31bを被記録媒体10の表面に定着させるプロセスを、ほぼ同時に進行させる第3ステップを時系列的に表したものである。
【0046】
図5(d)に示したように、インク30中の分散状態にある顔料粒子31は、反応液20中の余剰にある多価金属イオン21と順次衝突して反応し、電気的斥力を消失して、顔料粒子同士がファンデルワールス力により凝集膜31b上に、凝集及び/又は堆積する(図中の31a)。これと並行して、インク30中に含有される界面活性剤32に代表される浸透促進剤と溶媒が、凝集膜31bを介して反応液20中に拡散していき、この拡散に伴って、被記録媒体10に対して低い浸透性を有している反応液20は、普通紙への浸透性が高まり、反応液20中の溶媒成分及びインク30中の溶媒成分が、被記録媒体10に速やかに浸透していく。
【0047】
このような浸透促進剤の拡散と反応液の浸透性の変化が、本発明のもう1つの特徴である。そして、このプロセスが進行した状態が図5(e)であり、最終的には図5(f)に示したように、凝集膜31bが被記録媒体10の表面に覆い被さるように定着される。以上のようなプロセスからなる第3ステップによって、反応液20とインク30の混合液体成分が被記録媒体10に速やかに浸透していくこと、即ち、速い定着が達成でき、更に、被記録媒体の表面に覆い被さるように定着された顔料粒子からなる凝集物31aによって、高い記録濃度を達成でき、この結果、画像の高い定着性と高い記録濃度、という2つの課題を同時に満足することが可能となる。
【0048】
ここで、上記で述べた、本発明にかかるインクセットによって実現することができる画像形成方法の特徴が、それぞれ欠落した場合について説明する。先ず、被記録媒体10の上面又は上方で反応液20とインク30を接触させる第1ステップにおいて、反応液20とインク30との接触が、被記録媒体10の上面又は上方でない部分で起こった場合について説明する。反応液20を被記録媒体10に含浸させてインク30と反応させると、ほとんどの反応は被記録媒体10中で起こるため、顔料粒子の分布は被記録媒体10の表面よりも内部に多くなるが、このことにより発色性が低下するという問題が発生する。又、被記録媒体の裏面から着色剤が透けてみえる裏抜け問題も発生する。
【0049】
又、被記録媒体10に対して反応液20の浸透性が高い場合、インクを付与するまでの時間を短くしなければならない。このことは、印字条件の条件設定範囲を狭くすることを意味している。例えば、反応液20を付与した後に、黒色顔料インク、複数のカラーインクを順次付与させていく記録方法において、黒色顔料インクと複数のカラーインクの全てを短い時間に付与しなければならなくなるので、記録装置の駆動を高速に行わなければならない等の不都合が生じてくる。更に、反応液20の浸透性は、被記録媒体10により異なるため、異なる被記録媒体10では被記録媒体10に依存した画像が形成される可能性があり、安定した記録物が得られないことが懸念される。更に、黒色顔料インク、カラーインクとの反応速度の違いにより、被記録媒体10の上面又は上方で反応液20とインク30とを接触させたとしても、被記録媒体10の表面ではなく、被記録媒体に浸透してから反応が終了する可能性もあり、この場合にもまた、安定した記録物が得られなくなる可能性がある。
【0050】
次に、本発明にかかるインクセットで実現する画像形成方法の特徴の一つである凝集膜31bが瞬時に形成されることについて、もしも凝集膜31bが瞬時に形成されなかったとした場合について説明する。この場合には、顔料粒子が電気的斥力を消失して凝集しても膜状にならず、いくつかの顔料粒子同士が集まった細かい凝集物を形成する場合がある。発明者らの検討では、この凝集物の大きさは10μm以下の場合が多く、このように形成された細かい凝集物は、反応液20とインク30の液体成分が浸透するに伴って、ほとんどの凝集物が液体成分と一緒に被記録媒体10の繊維間に流れていくことが分かっている。このため定着性は優れていても、発色性が低下した記録物になってしまうといった問題が生じる恐れがある。
【0051】
次に、本発明にかかるインクセットで実現する画像形成方法の特徴のもう一つとして挙げた第3ステップにおける、凝集膜31bを介してインク30中の浸透促進剤が反応液20中に拡散することと、反応液の浸透性の変化であるが、もしも上記で凝集膜31bを形成しても、該凝集膜31bを介して浸透促進剤が反応液20中に拡散しなかった場合は、反応液20の浸透性が変化しなく、そしてインク30の液体成分も凝集膜31b上に保持されるために、印字部は長時間かけて溶媒を乾燥させることになり、定着性が低くなってしまうという問題が発生してしまう。浸透促進剤がない場合は、反応液20の浸透性は変化しないために、印字部は、長時間に渡って液体を保持することになり、定着性が低下するといった問題が発生する。本発明者らの検討によれば、被記録媒体に対する反応液の吸収係数Kasと、前記被記録媒体に対するインクの吸収係数Kaiとの関係が、先に説明した条件を満足するものであることが好ましいことがわかった。
【0052】
以上に述べてきたように、本発明にかかるインクセットで実現する画像形成方法の3つのステップは、そのうち一つが欠けても、本発明の目的である、高い定着性と高い発色性を両立しつつ、ブリーディングを改善することができなくなり、上記した3つのステップの全てが揃って初めて本発明の目的を満足する。
【0053】
次に、上記した構成を有する本発明にかかるインクセットを使用し得る、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及び、これらの装置に好適に用いられる液体吐出ヘッドの構成の具体例について説明する。図1は、本発明に好適な、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式のインクジェット記録ヘッドとしての液体吐出ヘッド、及び、このヘッドを用いる液体吐出装置としてのインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
【0054】
図1において、インクジェットプリンタは、ケーシング1008内に長手方向に沿って設けられる被記録媒体としての用紙1028を、図中に示した矢印Pで示す方向に間欠的に搬送する搬送装置1030と、該搬送装置1030による用紙1028の搬送方向Pに略直交する矢印S方向に略平行に、ガイド軸1014に沿って往復運動せしめられる記録部1010と、記録部1010を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部1006とを含んで構成されている。
【0055】
移動駆動部1006は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ1026a、及び、該プーリ1026bに巻きかけられるベルト1016、ローラユニット1022a、及び、該ローラユニット1022bに略平行に配置され記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されるベルト1016を順方向及び逆方向に駆動させるモータ1018、とを含んで構成されている。
【0056】
モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図1の矢印R方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは、図1の矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。又、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図中に示した矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは、図1の矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。更に、移動駆動部1006の一端部には、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が、記録部1010のインク吐出口配列に対向して設けられている。
【0057】
記録部1010は、インクジェットカートリッジ(以下、単にカートリッジと記述する場合がある)1012Y、1012M、1012C及び1012Bが各色、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック顔料を含有したインクとして、1012Sが反応液として、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられる。
【0058】
図2は、上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示す。本例におけるカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、インクジェット記録ヘッド100と、インク等の液体を収容する液体タンク1001とで主要部が構成されている。
【0059】
インクジェット記録ヘッド100は、液体を吐出するための多数の吐出口832が形成されており、反応液等の液体は、液体タンク1001から図示しない液体供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室(図3参照)へと導かれるようになっている。図2に示したカートリッジ1012は、インクジェット記録ヘッド100と液体タンク1001とを一体的に形成し、必要に応じて液体タンク1001内に液体を補給できるようにしたものであるが、この液体吐出ヘッド100に対し、液体タンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。
【0060】
このような構成のインクジェットプリンタに搭載され得る上述の液体吐出ヘッドの具体例を、以下に更に詳しく説明する。図3は、本発明のインクジェット記録装置に好適な液体吐出ヘッドの要部を模式的に示した概略斜視図である。尚、これらの図において、電気熱変換素子を駆動するための電気的な配線等は省略している。
【0061】
本発明で使用する液体吐出ヘッドにおいては、例えば、図3に示されるような、ガラス、セラミックス、プラスチック或いは金属等からなる基板934が用いられる。このような基板の材質は、本発明の本質ではなく、流路構成部材の一部として機能し、インク吐出エネルギー発生素子、及び後述する液流路、吐出口を形成する材料層の支持体として、機能し得るものであれば特に限定されるものではない。そこで、本例では、Si基板(ウエハ)を用いた場合で説明する。このような基板934上にインク吐出口を形成するが、その方法としては、レーザー光による形成方法の他、例えば、後述するオリフィスプレート(吐出口プレート)935を感光性樹脂として、MPA(Mirror Projection Aliner)等の露光装置により、吐出口を形成する方法も挙げられる。
【0062】
図3において、934は、電気熱変換素子(以下、ヒータと記述する場合がある)931、及び、共通液室部としての長溝状の貫通口からなるインク供給口933を備える基板であり、該インク供給口933の長手方向の両側には、熱エネルギー発生手段であるヒータ931がそれぞれ1列ずつ千鳥状に、電気熱変換素子の間隔が、例えば、300dpiで配列されている。又、この基板934には、インク流路を形成するためのインク流路壁936が設けられている。このインク流路壁936には、更に吐出口832を備える吐出口プレート935が設けられている。
【0063】
ここで、図3においては、インク流路壁936と吐出口プレート935とは、別部材として示されているが、このインク流路壁936を、例えば、スピンコート等の手法によって基板934上に形成することにより、インク流路壁936と吐出口プレート935とを同一部材として同時に形成することも可能である。ここでは、更に、吐出口面(上面)935a側は撥水処理が施されている。
例示した装置では、図1の矢印S方向に走査しながら記録を行うシリアルタイプのヘッドを用い、例えば、1,200dpiで記録を行う。駆動周波数は10kHzであり、一つの吐出口では、最短時間間隔100μs毎に吐出を行うことになる。
【0064】
次に、上述の構成のインクジェット記録ヘッドによる液体の吐出動作については、例えば特開2002−201390公報の図16〜図23、及びその説明に記載されている。
【0065】
そして上記特開2002−201390公報に図示した例の液体吐出ヘッドでは、気泡が最大体積に成長した後の体積減少段階で液体を吐出する際に、吐出口の中心に対して分散した複数の溝により、吐出時の主液滴の方向を安定化させることができる。その結果、吐出方向のヨレのない、着弾精度の高い液体吐出ヘッドを提供することができる。又、高い駆動周波数での発泡ばらつきに対しても吐出を安定して行うことができることによる、高速高精細印字を実現することができる。
【0066】
特に、図示した例の液体吐出ヘッドでは、気泡の体積減少段階で、この気泡を始めて大気と連通させることで液体を吐出することにより、気泡を大気に連通させて液滴を吐出する際に発生するミストを防止できるので、所謂、突然不吐出の要因となる、吐出口面に液滴が付着する状態を抑制することもできる。本発明に好適に使用できる、上記したような吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の記録ヘッドの他の実施態様としては、例えば、特許第2783647号公報に記載のように、いわゆるエッジシュータータイプが挙げられる。
【0067】
本発明のインクの記録方法は、特にインクジェット記録方式の中でも、熱エネルギーを利用して飛翔的液滴を形成し、記録を行うインクジェット方式の記録ヘッドや記録装置において、優れた効果をもたらすものである。その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書及び同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。
【0068】
この方式は、いわゆるオンデマンド型及びコンティニュアス型の何れにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて膜沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的に、この駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長及び収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの液滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0069】
この際のパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4,463,359号明細書及び同第4,345,262号明細書に記載されているようなものが適している。尚、上記熱作用面の温度上昇率についての発明に関する米国特許第4,313,124号明細書に記載されている条件を採用すると、更に、優れた記録を行なうことができる。
【0070】
本発明のインクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置を構成する記録ヘッドの構成としては、上記に挙げた各明細書に開示されているような吐出口、液路及び電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角状液流路)の他に、熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4,558,333号明細書及び米国特許第4,459,600号明細書を用いた構成のものを使用することも好ましい。
【0071】
加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても有効である。
【0072】
更に、記録装置が記録できる最大範囲の被記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成の何れでもよい。
【0073】
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、或いは記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いることもできる。
【0074】
又、本発明のインクジェット記録装置に設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段等を付加することは、本発明の効果を一層安定できるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或いは吸引手段、電気熱変換体或いはこれとは別の加熱素子、或いはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを行うことも安定した記録を行うために有効である。
【0075】
【実施例】
次に、実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。
【0076】
先ず、下記に述べるようにして、カーボンブラックとアニオン性化合物とを含むブラックインクK1を調製した。
(インクの調製)
<顔料分散液の作製>
Figure 0004428929
【0077】
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。この溶液に新たに試作されたDBP吸油量が131ml/100gのカーボンブラック(MA600、三菱化学製)17部、イソプロピルアルコール1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:1mm径のジルコニウムビーズ
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
更に、遠心分離処理(12,000rpm.で20分間)を行い、粗大粒子を除去して顔料分散液1とした。
【0078】
<インクK1の作製>
上記で得た顔料分散液1を使用し、下記の組成比で各成分を混合してカーボンブラックを含有する実施例及び参考例で使用するインクK1を作製した。得られたインクK1の表面張力は、34mN/mであった。
・顔料分散液1 30.0部
・グリセリン 10.0部
・エチレングリコール 5.0部
・N−メチルピロリドン 5.0部
・エチルアルコール 2.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
1.0部
・イオン交換水 47.0部
【0079】
<インクK2の作製>
顔料分散液1の作製の際に使用したカーボンブラックを、DBP吸油量が95ml/100gであるPrintex 90(デグッサ製)に代えた以外はインクK1の場合と同様にして、実施例で使用するインクK2を作製した。得られたインクK2の表面張力は、34mN/mであった。
【0080】
<インクK3の作製>
顔料分散液1の作製の際に使用したカーボンブラックを、DBP吸油量が77ml/100gであるNo.2600(三菱化学製)に代えた以外はインクK1の場合と同様にして、実施例で使用するインクK3を作製した。得られたインクK3の表面張力は、34mN/mであった。
【0081】
<インクK4の作製>
顔料分散液1の作製の際に使用したカーボンブラックを、DBP吸油量が56ml/100gであるNo.900(三菱化学製)に代えた以外はインクK1の場合と同様にして、比較例で使用するインクK4を作製した。得られたインクK4の表面張力は、34mN/mであった。
【0082】
<インクK5の作製>
顔料分散液1の作製の際に使用したカーボンブラックを、DBP吸油量が380ml/100gであるPrintex XE2(デグッサ製)に代えた以外はインクK1の場合と同様にして、比較例で使用するインクK5を作製した。得られたインクK5の表面張力は、34mN/mであった。
【0083】
<インクK6の作製>
顔料分散液1を使用し、下記の組成比で各成分を混合し、DBP吸油量が131ml/100gであるカーボンブラックを含有する、比較例で使用するインクK6を作製した。得られたインクK6の表面張力は、51mN/mであった。
Figure 0004428929
【0084】
(反応液Sの調製)
<反応液S1の作製>
次に、下記の各成分を混合溶解した後、更にポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルター(商品名:フロロポアフィルター、住友電工製)にて加圧濾過し、pHが3.8に調整されている反応液S1を作製した。
Figure 0004428929
【0085】
<反応液S2の作製>
反応液S1の場合と同様の方法で、下記の組成からなる反応液S2を作製した。
Figure 0004428929
【0086】
<反応液S3の作製>
反応液S1の場合と同様の方法で、下記の組成からなる反応液S3を作製した。
Figure 0004428929
【0087】
<反応液S4の作製>
反応液S1の場合と同様の方法で、下記の組成からなる反応液S4を作製した。
Figure 0004428929
【0088】
<反応液S5の作製>
反応液S1の場合と同様の方法で、下記の組成からなる反応液S5を作製した。
Figure 0004428929
【0089】
<反応液S6の作製>
反応液S1の場合と同様の方法で、下記の組成からなる反応液S6を作製した。
Figure 0004428929
【0090】
(反応液Sの特性)
次に、上記で得られた各反応液S1〜S6について、濡れ時間Tw(msec)をブリストー法により測定した。測定には、動的浸透性試験装置(東洋精機製作所製)を用いて吸収係数Kaと粗さ指数とともに測定した。測定した濡れ時間Tw(msec)の結果を下記表1に示した。ここで濡れ時間Twの算出方法は、図4に示したように、吸収係数Kaを算出するための最小二乗法による近似直線Aと、液体の転移量V、粗さ指数Vrで表されるV=Vrの直線Bとの交点Cまでの時間とした。
【0091】
Figure 0004428929
【0092】
[実施例1]
上記で調製した反応インクS1と、インクK1とをセットで用い、普通紙であるPB用紙(キヤノン製)に反応液S1を先に付与させた後、反応液S1と接するようにK1のインクをそれぞれ付与させて印字物1Aを作成した。反応液S1を付与した後、インクK1を付与させるまでの時間差Tdが5ミリ秒となるように調整し、その状態でインクK1を反応液S1と接するように付与した。この際に、1,200dpiの記録密度を有する記録ヘッド用い、駆動条件は、駆動周波数15kHzとした。又、1ドットあたりの吐出体積が4plのヘッドを使用した。又、印字テストの際の環境条件は、25℃/55%RHに統一して行なった。
【0093】
作成した印字物1Aを目視にて観察したところ、ブリーディングの発生に対する評価は良好であった。更に、印字してから約5秒経過後に別の紙のエッジ部で印字部を擦って、印字の定着性を調べたところ、印字画像が流れることはなく良好であった。又、印字物1Aの印字部の光学濃度を反射濃度計RD−19I(GretagMacbeth製)で測定したところ、1.5の高い反射濃度が得られた。
【0094】
[実施例2]
実施例1で行なったと同様の方法で、インクK1の代わりにインクK2を用いて印字物1Bを作成した。そして、印字物1Bについて実施例1と同様な評価をしたところ、印字物1Bのブリーディングは良好で、印字画像が流れることがなく、定着性も良好であった。又、印字物1Bの印字部の反射濃度は、1.4であった。
【0095】
[実施例3]
実施例1で行なったと同様の方法で、インクK1の代わりにインクK3を用いて印字物1Cを作成した。そして、印字物1Cについて実施例1と同様な評価をしたところ、印字物1Cのブリーディングは良好で、印字画像が流れることがなく、定着性も良好であった。又、印字物1Cの印字部の反射濃度は、1.4であった。
【0096】
[比較例1]
画像形成に反応液を使用することなく、実施例1〜3で用いたと同様のインクK1、K2及びK3をそれぞれ単独に用いて、普通紙であるPB用紙(キヤノン製)に付与して印字物11A、11B、11Cを作成した。そして、これらの印字物について実施例1と同様な評価を行なったところ、印字画像が流れることはなかったが、インクK1、K2、K3による各印字物の反射濃度は、それぞれ0.90、0.90、0.90と低かった。このように、同様のインクを用いた実施例の場合と比べると、明らかに実施例の方が得られる印字物の記録濃度が高く、又、画像形成に反応液を用いないと、使用するインクによる印字物の反射濃度の値に差が出ないことが分かった。
【0097】
[比較例2]
次に、反応液S1と、インクK4とをセットで用い、普通紙であるPB用紙(キヤノン製)に反応液S1を先に付与させた後、反応液S1の付与後、インクK4を付与させるまでの時間差Tdが5ミリ秒となるように調整し、その状態でインクK4を反応液S1と接するように、インクK4を付与させて印字物11Dを作成した。得られた印字物11Dについて実施例1と同様な評価を行なったところ、印字画像が流れることはなかったが、インクK4による印字物11Dの印字部の反射濃度は1.2であり、実施例1で得られた印字物1Aと比べると、明らかに実施例1で得られた印字物の方が記録濃度が高いことが分かった。
【0098】
[比較例3]
インクK5を用い、実施例1と同様にして印字物を作成しようとしたが、インクK5は、記録ヘッドから吐出することができなかった。そこで、インクK5をビーカーに注ぎ、ビーカーを静置したところ、液の上部が透明になってきた。以上のことから、インクK5は、分散安定性が確保されないことがわかった。
【0099】
[比較例4]
次に、インクK1の代わりにインクK6を用いる以外は、実施例1で行なったと同様な手法で印字物11Eを作成した。得られた印字物11Eについて、実施例1で行なったと同様に別の紙のエッジ部で印字部を擦ったところ、印字画像が流されて画像が乱れた。更に、印字物11Eを作成してから60秒後に、上記と同様にして印字部を擦ったところ、この場合でも印字画像は乱れた。よって定着性が低い結果となった。
【0100】
そこで、実施例1で使用したインクセットについて、PB紙に対する反応液S1の吸収係数Kasと、インクK1の吸収係数Kaiをブリストー法によって求めたところ、これらの比(Ka/Ka)は2.6であった。これにより、実施例で使用したインクセットは、PB紙に対して、反応液S1の吸収係数が、インクK1の吸収係数に対し小さい値を示す組み合わせであることが確認された。これに対し、比較例4で使用したインクセットでは、上記と同様のPB紙に対する反応液S1とインクK6の吸収係数の比(Ka/Ka)は1.0であった。この吸収係数の比の違いから、比較例4の場合は、インクK6の浸透性に対して、反応液の浸透性が変わらない組み合わせであったために、得られた印字物の定着性が劣るものとなったと考えられる。
【0101】
参考
次に、反応液S1に代えて反応液S6を用いる以外は実施例1と同様な方法により印字物11Fを得た。そして、実施例1と同様な評価を行なったところ、印字画像が流れることはなく、定着性は良好であった。しかし、インクK1による印字物11Fの印字部の反射濃度は、0.95だった。又、反応液S6とインクK1との組み合わせからなるインクセットで作成した印字物11Fのブリーディングは、反応液を用いない比較例1で作成した印字物よりも良かったが、記録濃度は、上記した通り、同様にインクK1を用いた実施例1の場合と比べると、明らかに実施例1の方が高くなることがわかった。
【0102】
実施例1〜3、参考例1及び比較例1〜4の画像形成条件を下記表2にまとめて示した。
Figure 0004428929
【0103】
次に、被記録媒体の上面又は上方で反応液とインクを接触させることが、どのようなタイミングで達成されるかについて、下記のようにして検討した。具体的には、インクK1を用い、被記録媒体に対する濡れ時間の異なるS1〜S5を用い、反応液を先に付与させた後、反応液とインクを付与させるまでの時間差Tdを種々に変化させて検討した。
【0104】
[検討例1]
先に述べたようにして作製したインクK1と、反応液S1とを組み合わせて用いて、普通紙であるPB用紙(キヤノン製)に反応液S1を先に付与させた後、反応液S1とインクK1を付与させるまでの時間差Tdの条件を、下記のように変化させながら、反応液S1に接するようにしてインクK1を付与させて、いくつかの印字物を作成した。変化させた時間差Tdは、5、10、20、50、80、140、180ミリ秒とした。上記印字物の作成には、1,200dpiの記録密度を有する記録ヘッドを用い、駆動条件は、駆動周波数15kHzとした。又、1ドットあたりの吐出体積は、それぞれ4plのヘッドを使用した。又、印字テストの際の環境条件は、25℃/55%RHに統一した。
【0105】
[検討例2]
検討例1で用いたと同様な手法で、反応液S1をS2に代えて、時間差Tdを5、10、20、50、80、140ミリ秒として印字物を作成した。
【0106】
[検討例3]
検討例1で用いたと同様な手法で、反応液S1をS3に代えて、時間差Tdを5、10、20、50ミリ秒として印字物を作成した。
【0107】
[検討例4]
検討例1で用いたと同様な手法で、反応液S1をS4に代えて、時間差Tdを5、10ミリ秒として印字物を作成した。
【0108】
[検討例5]
検討例1で用いたと同様な手法で、時間差Tdを300ミリ秒として印字物を作成した。
【0109】
[検討例6]
検討例2と同様な手法で、時間差Tdを180、300ミリ秒として印字物を作成した。
【0110】
[検討例7]
検討例3と同様な手法で、時間差Tdを80、140、180、300ミリ秒として印字物を作成した。
【0111】
[検討例8]
検討例4と同様な手法で、時間差Tdを20、50、80、140、180、300ミリ秒として印字物を作成した。
【0112】
[検討例9]
検討例1と同様な手法で、反応液S1をS5に代えて、時間差Tdを5、10、20、50、80、140、180、300ミリ秒として印字物を作成した。
【0113】
[評価]
次に、検討例1〜9で作成した印字物を下記の評価方法及び評価基準で評価を行った。
1.画像濃度(記録濃度)
検討例1〜9で作成したベタ画像について、反射濃度を反射濃度計にて測定した。その結果を下記表3に示した。評価基準は以下の通りである。
◎:反射濃度が、1.3以上
○:反射濃度が、1.0以上1.3未満
×:反射濃度が、1.0未満
【0114】
Figure 0004428929
【0115】
2.裏抜け
画像濃度の測定に使用したと同様の印字物について裏抜けの評価を行った。但し、測定する個所は、被記録媒体の印字部の裏面の反射濃度を測定した。結果を下記表4に示した。評価基準は以下の通りである。
◎:反射濃度が、0.2未満
○:反射濃度が、0.2以上0.6未満
×:反射濃度が、0.6以上
【0116】
Figure 0004428929
【0117】
以上をまとめると、画像濃度と裏抜けには相関があることが分かった。又、反応液S1〜S5と被記録媒体の物性を表した表1と、印字物の評価結果を表した表3と表4とから、下記の関係が確認できた。即ち、被記録媒体に対する反応液S1〜S5の濡れ時間Twと、インクK1と反応液S1〜S5とを付与させるまでの時間差Tdとの関係が、
Td<2.0×Tw
であり、より好ましくは、
Td<1.0×Tw
である検討例1〜4においては、画像濃度の高い、裏抜けが抑制された優れた品位の画像を得ることができることが分かった。これに対して、上記の関係を満たさない検討例5〜9においては、得られる記録物は、裏抜けに問題があり、高い画像濃度を達成できなかった。
【0118】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のインクセットを用いることにより、普通紙に対して高い記録濃度で、ブリーディングのない、普通紙に対する裏抜けのない高画質なカラー画像が得られると同時に、定着性、印字品位ともに良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェットプリンタの一例を示す概略斜視図である。
【図2】インクジェットカートリッジの一例を示す概略斜視図である。
【図3】液体吐出ヘッドの一例を示す模式的概略斜視図である。
【図4】ブリストー法における吸収曲線である。
【図5】本発明にかかるインクセットを用いることによって達成されるインクジェット記録の基本的な概念を模式的に示した説明図である。
【符号の説明】
10:被記録媒体
10a:被記録媒体の印字表面
20:反応液
21:多価金属イオン
30:着色顔料インク
31:分散状態にある顔料粒子
31a:電気的斥力を消失した顔料粒子
31b:凝集状態にある顔料粒子(凝集膜)
32:浸透促進剤
100:インクジェット記録ヘッド
832:吐出口
931:電気熱変換素子(ヒータ、インク吐出エネルギー発生素子)
933:インク供給口(開口部)
934:基板
935:オリフィスプレート(吐出口プレート)
935a:吐出口面
936:インク流路壁
940:吐出口部
1001:液体タンク
1006:移動駆動部
1008:ケーシング
1010:記録部
1010a:キャリッジ部材
1012:カートリッジ
1012Y、M、C、B、S:インクジェットカートリッジ
1014:ガイド軸
1016:ベルト
1018:モータ
1020:駆動部
1022a、1022b:ローラユニット
1024a、1024b:ローラユニット
1026:回復ユニット
1026a、1026b:プーリ
1028:用紙
1030:搬送装置
P:用紙の搬送方向
R:ベルトの回転方向
S:用紙の搬送方向と略直交する方向

Claims (2)

  1. 予め普通紙に反応液を付与させてから、着色顔料インクをインクジェット記録によって付与するインクジェット記録方法であって、
    該反応液は、多価金属イオンと、浸透促進剤として界面活性剤とを含み、
    該着色顔料インクは、カーボンブラックを含み、
    該カーボンブラックのDBP吸油量は、70ml/100g以上300ml/100g以下であり、
    該反応液中の多価金属イオンの総電荷密度は、該着色顔料インク中の該多価金属イオンと逆極性のイオンの総電荷密度よりも多く、
    普通紙に対する反応液の浸透性は、該普通紙に対する着色顔料インクの浸透性よりも低く、該着色顔料インクの表面張力は、34mN/m以下であり、
    普通紙に対する反応液の濡れ時間Twは、75msec以上であり、Twと、反応液と着色顔料インクを普通紙に付与する時間差Tdが、Td<2.0×Twを満足し、且つ、該普通紙の上面又は上方で、該反応液と該着色顔料インクとが接触する第1ステップと、
    該反応液と該着色顔料インクとが接触した界面で瞬時にカーボンブラックの凝集膜を形成する第2ステップと、
    分散状態にあるカーボンブラックを該凝集膜上に凝集及び/又は堆積させるプロセスと、該普通紙に対する該反応液の浸透性を促進させるプロセスと、該凝集膜を該普通紙の表面に定着させるプロセスとをほぼ同時に進行させる第3ステップとが実行されて画像形成を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 上記TwとTdが、Td<1.0×Twを満足する請求項1に記載のインクジェット記録方法。
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