以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る塩基配列自動解析装置の全体構成を示す概念図である。図1に示すように、塩基配列自動解析装置1は、チップカートリッジ11(塩基配列検出装置)と、このチップカートリッジ11と電気的に接続される測定系12、チップカートリッジ11に設けられた流路とインタフェース部を介して物理的に接続される送液系13及びチップカートリッジ11の温度制御を行う温度制御機構14から構成される。
これら測定系12、送液系13及び温度制御機構14は制御機構15により制御される。制御機構15は、コンピュータ16に電気的に接続されており、このコンピュータ16に備えられたプログラムにより、制御機構15が制御される。本実施形態では、チップカートリッジ11、測定系12、送液系13及び温度制御機構14を測定ユニット10と称する。
チップカートリッジ11には、DNAプローブが固定化される塩基配列検出チップ21が実装されたプリント基板22が取り付けられて用いられる。
以下の実施形態では、検出の目的とするDNAの塩基配列を標的塩基配列と呼ぶ。そして、この標的塩基配列とは相補性があり、この標的塩基配列と選択的に反応する塩基配列を標的相補塩配列と呼ぶ。この標的相補塩基配列を含むDNAプローブが塩基配列検出チップ21の作用極に固定化される。塩基配列検出チップ21のセル内に導入される試料(検体溶液)には、検査の対象となるDNAが含まれている。この検査の対象となるDNAの塩基配列を検体塩基配列と呼ぶ。
この実施形態の塩基配列検出装置は、この検体塩基配列と標的相補塩基配列をハイブリダイゼーションさせ、その反応の有無をバッファ、挿入剤導入後にモニタリングすることにより、試料中に標的塩基配列が含まれているか否かを判別する。
図2はチップカートリッジ11の詳細な構成を示す図であり、(a)は上面から見た図、(b)はA−A方向から見た図、(c)はB−B方向から見た部分透視断面図、(d)はチップカートリッジ11の一構成要素である支持体111を裏面から見た図を示している。
チップカートリッジ本体110は、プリント基板22を下部側から支持する支持体111と、この支持体111とともにプリント基板22を上部側から挟み込み固定支持するためのチップカートリッジ上蓋112からなる。
チップカートリッジ上蓋112の側部には2つの開口が設けられ、その開口のうちの1つにはインタフェース部113aが、他の1つにはインタフェース部113bが接続されている。これらインタフェース部113a及び113bは、送液系13とチップカートリッジ11のインタフェースとして機能する。
これらインタフェース部113a及び113bの内部にはそれぞれ流路114a及び114bが設けられている。流路114aを介して、送液系13上流側からの薬液やエアをチップカートリッジ11内部に送入する。流路114bを介して、チップカートリッジ11内の試料、薬液及びエアを送液系13下流側に送出する。
図2(a)乃至(c)では、流路114a及び114bは破線で示されている。これら流路114a及び114bは、インタフェース部113a及び113bからチップカートリッジ上蓋112内まで連通しており、さらには図2(a)で円形の破線で示されたセル115に通じている。セル115は、塩基配列検出チップ21とこの塩基配列検出チップ21に導入される各種溶液との電気化学反応を生じさせるために設けられる領域である。このセル115は、塩基配列検出チップ21が実装されたプリント基板22の四隅がこのチップカートリッジ11のチップカートリッジ上蓋112に基板固定ねじ25により固定化されている場合に、塩基配列検出チップ21とシール材24、チップカートリッジ上蓋112に囲まれた閉空間領域で定められる。塩基配列検出チップ21を実装したプリント基板22がチップカートリッジ上蓋112に固定化された状態で、支持体111とチップカートリッジ上蓋112によりプリント基板22がシール材24を挟んで保持される。さらに、上蓋固定ねじ117によりチップカートリッジ上蓋112が固定される。これにより、流路114aからセル115を介して流路114bまで連通した各種薬液やエアの注入・吐出経路が定められる。なお、塩基配列検出チップ21は、プリント基板22に封止樹脂23により封止されている。
セル115の上面に位置するチップカートリッジ上蓋112には、送入ポート116a及び送出ポート116bが設けられている。送入ポート116aは、チップカートリッジ上蓋112の側面から底面まで貫通し、セル孔部115aでチップカートリッジ上蓋112の底面に開口している。送出ポート116bは、チップカートリッジ上蓋112の別の側面から底面まで貫通し、セル孔部115bでチップカートリッジ上蓋112の底面に開口している。送入ポート116aが流路114aに、送出ポート116bが流路114bに接続されることにより、流路114aとセル115,流路114bとセル115が連通する。
プリント基板22表面であってセル115から離間した位置に、電気コネクタ22aが設定されている。電気コネクタ22aは、プリント基板22の基板本体のリードフレームと電気的に接続されている。また、この基板本体のリードフレームは、塩基配列検出チップ21の各種電極とリードなどにより電気的に接続されている。この電気コネクタ22aに測定系12の端子を接続することにより、塩基配列検出チップ21で得られる電気信号を、プリント基板22の所定の位置に設けられた所定の端子を介して、さらには電気コネクタ22aを介して測定系12に出力することができる。
図2(d)に示すように、支持体111はコの字型をしており、中央に切り込み部111aが設けられている。この切り込み部111aはプリント基板22よりも小さく、塩基配列検出チップ21よりも大きな形状となっている。これにより、支持体111によるプリント基板22の支持機能を保ちつつ、塩基配列検出チップ21に支持体111を介さずに温度制御機構14を接して配置することができる。117aはねじ孔であり、上蓋固定ネジ117が固定される。
塩基配列検出チップ21の温度を調節する温度制御機構14としては、例えばペルティエ素子が用いられる。これにより、±0.5℃の温度制御が可能である。DNAの反応は、室温に比較的近い温度範囲において行うのが一般的である。従って、ヒーターのみでの温度制御は安定性に乏しい。また、温度プロファイルにより、DNAの反応を制御する必要があるため、別に冷却機構が必要になってきてしまう。その点、ペルティエ素子は、電流の向きを変えることにより、加熱・冷却いずれも可能であるため、最適である。
図3は上蓋固定ねじ117で固定する前の支持体111とチップカートリッジ上蓋112を示す図である。図3に示すように、チップカートリッジ上蓋112に、塩基配列検出チップ21が実装されたプリント基板22の四隅が基板固定ねじ25で固定されている。チップカートリッジ上蓋112には、シール材24が一体化されている。従って、塩基配列検出チップ21上に、シール材24とチップカートリッジ上蓋112で囲まれたセル115が定められる。さらに、上蓋固定ねじ117で支持体111にチップカートリッジ上蓋112が固定されて用いられる。なお、基板固定ねじ25は、プリント基板22の裏面側から固定しても、表面側から固定してもよい。このように、チップカートリッジ上蓋112にプリント基板22を固定化することにより、塩基配列検出チップ21、シール材24及びチップカートリッジ上蓋112の間の密着性を確実に保持することができる。
図4は塩基配列検出チップ21を実装したプリント基板22の詳細な構成を示す図である。図4に示すように、プリント基板22上には、塩基配列検出チップ21が封止樹脂23により封止されている。塩基配列検出チップ21上には、例えば作用極や対極として動作する電極21aや、参照極として動作する電極21bが設けられている。電極21aは図4では電極21bで分けられる4つの領域に1つずつ設けられる場合を模式的に示してあるが、各領域に作用極と対極のそれぞれを1つあるいは複数設けてもよいことはもちろんである。また、電極21bの形状は図4に示したものに限定されない。また、参考のため、図4にはセル115が定められる領域を破線で示してある。図4に示すように、セル115は、電極21aや21bなどがセル115の領域内に位置するように定められる。
プリント基板22の端部には電気コネクタ22aが設置されている。塩基配列検出チップ21の電極21aや電極21bと電気コネクタ22aは、プリント基板22表面に設けられたリードフレームなどにより電気的に接続されている。電気コネクタ22aには、測定系12の信号インタフェースを接続することにより、塩基配列検出チップ21の各電極と測定系12とを電気的に接続することができる。
図5(a)は図2(a)に示すセル115及びセル115に通じる薬液供給系統をC−C方向から見た断面図、図5(b)はセル115近傍の上面図である。
図5(a)に示すように、例えばパッキンリングなどのシール材24は、チップカートリッジ上蓋112と塩基配列検出チップ21により狭着固定されることにより形成される閉空間がセル115である。セル115の底面は塩基配列検出チップ21の表面により定められる。セル115の側面はシール材24により定められ、セル115の上面はチップカートリッジ上蓋112の下面により定められる。シール材24の底面は、塩基配列検出チップ21と間隙無く接し、シール材24の上面は、チップカートリッジ上蓋112の下面と間隙無く接する。これにより、セル孔部115a及び115b以外は完全に密閉された閉空間が定められ、塩基配列検出チップ21と蓋120との液密が保持される。
セル115の断面形状は、上面から見ると図5(b)に示すような円形をなしている。この円形のセル115の外縁に断面が円形の送入ポート116a及び送出ポート116bがセル115の円の中心を挟んでほぼ対称の位置に設けられている。送入ポート116a及び送出ポート116bの外周は、セル115の外周にほぼ接している。また、送入ポート116a及び送出ポート116b円形断面の中心軸は、セル115の円形底面の中心を通る直線115c上に位置する。
送入ポート116a及び送出ポート116bは各々セル115の上面から上方に、セル底面に対してほぼ垂直な方向に所定の高さまで延びている。送入ポート116a及び送出ポート116bはさらにセル115の中心から互いに遠ざかる方向にその流路が折れており、流路114a及び114bにそれぞれ接続される。
図5(b)に示すように、送入ポート116a及び送出ポート116b、流路114a及び114bの各々の中心軸は、直線115c上にほぼ位置する。送出ポート116bは、セル底面に対してほぼ垂直な方向に所定の高さまで延び、さらにセル115の中心から遠ざかる方向にほぼ直角に折れているが、その折れ曲がり位置で2つの経路に分岐する。その一つの経路は、チップカートリッジ上蓋112の表面まで貫通し、試料注入口119に通じている。これにより、試料注入口119から注入された試料は、送出ポート116bを通ってセル115に導入される。試料注入口119と送出ポート116bの中心軸はほぼ一致しており、試料注入口119の口径は、送出ポート116bの口径よりも大きく設定されている。また、試料注入口119近傍に設けられた蓋120により試料注入口119を塞ぐことができる。これにより、試料注入口119を利用せず、薬液を流路114aからセル115を介して流路114bに循環させる場合に薬液が試料注入口119から流出するのを防止することができ、薬液の経路を確保することができる。また、蓋120にはシール材121が設けられており、試料注入口119を密閉することにより、薬液のわずかな漏出を防止できる。図5(a)の例では特に示していないが、送出ポート116bから流路114bに接続される経路のみを残して試料注入口119への経路を完全に塞ぐような深さのシール材121を用いれば、試料注入口119側への薬液やエアの滞留を低減することができる。
以上のような構成により、薬液やエアは図5(a)の矢印で示される方向に、流路114a、送入ポート116a、セル115,送出ポート116b、流路114bの順に流れることができる。また、試料は、試料注入口119から注入され、矢印の方向に送出ポート116bを通ってセル115内に導入される。従って、試料は送出側から注入されることとなり、薬液の供給の流れと試料の注入経路が逆に設定されている。これにより、洗浄工程において、試料の洗浄効率を高めることができる。
図6(a)は図5(a)の破線で囲まれた部分の変形例であり、図6(b)は図6(a)の変形例におけるセル115を上面から見た図である。図6(a)に示すように、送入ポート116aはザグリ孔115dを有する。すなわち、送入ポート116aはザグリ孔115dに向けて口径が段階的に広がり、送入ポート116aの開口から離れた位置の口径はザグリ孔115dの口径に比べて小さくなっている。これを上面から見ると、図6(b)に示すような位置関係となる。ザグリ孔115dは送入ポート116aの口径d1よりも大きな口径d11を有する。送入ポート116aの外周とシール材24の内周はほぼ一致して配置されている。従って、ザグリ孔115dの外周の一部はセル115の周縁部と重なりを有するように位置している。なお、ザグリ孔115dの外周は円形である必要は無く、図6(b)に示すように、直線115cと平行な方向の孔幅がそれに垂直な方向の孔幅よりも小さく設定される楕円形状でもよい。
なお、この図6ではザグリ孔115dを送入ポート116aに設ける場合を示したが、送出ポート116bに同じようなザグリ孔を設けてもよい。
このように、セル115の開口部にザグリ孔115dを設けることにより、セル115への導入口がロート状の形状になり、薬液や気泡を吸い出しやすく、薬液や気泡がセル115内に残りにくいという効果を有する。
図7は、セル115近傍の各構成要素の位置関係のより詳細な構成を示す図であり、図7(a)は断面図、図7(b)は上面図である。図7(a)において、d4はシール材24の高さである。図7(b)において、d0はセル115の中心軸Oから外周までの距離、d3はシール材24の外径、d1,d2はそれぞれ送入ポート116a及び送出ポート116bのポート断面の半径であり、d1<d3,d2<d3である。送入ポート116a及び送出ポート116bの中心軸をそれぞれO1及びO2とし、軸Oと軸O1の距離をd01、軸Oと軸O2の距離をd02とすると、d01+d1=d0、d02+d2=d0が成立する。セル115の半径d0は、3mm〜30mm程度に設定され、送入ポート116a及び送出ポート116bの半径d2,d3はそれぞれ0.3mm〜2mm程度に設定される。シール材24の高さd4は0.5mm程度に設定される。
このように、底面が円形のセル115の上面の周縁部に送入ポート116a及び送出ポート116bを開口することにより、薬液の送液の際にセル115内をエアで置換するときに薬液がセル115内から抜け、薬液残りを防止できる。また、エアが充填されたセル115内に薬液を導入する場合にも、セル115内にエア残り無く充填することができる。また、試料注入口119も送出ポート116bに連通するように設けられているため、試料注入の際のセル115内へのエア残りを防止し、セル115内を試料で充填することができる。
これにより、DNAプローブの電気化学反応によりセル115内で得られる電流特性のセル115内の面内均一性が向上し、SNPs検出の信頼性が向上する。
図7(c)は、基板固定ねじ25でシール材24をチップカートリッジ上蓋112と塩基配列検出チップ21の間に狭着固定させる様子を示している。同図の矢印に示す方向に基板固定ねじ25の固定の際に押圧される。より具体的には、シール材24を塩基配列検出チップ21の上に載置した上でチップカートリッジ上蓋112を基板固定ねじ25で固定することによりシール材24上面とチップカートリッジ上蓋112との間が隙間無く接触し、シール材24下面と塩基配列検出チップ21表面との間が隙間無く接触し、セル115が定められる。
なお、チップカートリッジ上蓋112の送入ポート116a及び送出ポート116bの外周とシール材24の内周の位置決めのため、チップカートリッジ上蓋112のセル孔部115a及び115bの外側に受け孔を設けてもよい。これにより、受け孔にシール材24が嵌合してチップカートリッジ上蓋112に対してシール材24が位置決めされる。
図8は図7に示すセル115近傍の各構成要素の変形例を示す図である。図8(a)は断面図、図8(b)は上面図である。図7と共通する構成には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。図8が図7と異なるのは、チップカートリッジ上蓋112と一体型の高さd41のシール材24aを用いることと、チップカートリッジ上蓋112にシール材24aとほぼ同じ内径及び外径を有し、チップカートリッジ上蓋112の底面に設けられた高さd42のリング状凸部112aを設けることである。リング状凸部112aは、セル115の中心軸Oと同じ中心軸を有し、かつその内径はd0、外径はd3である。また、リング状凸部112aには例えばスクリーン印刷などにより予めシール材24aが印刷され、シール材24aと一体的に形成されている。これにより、図7に示す構成のようにシール材とチップカートリッジ上蓋との位置決めを行うことなくセル115を定めることができ、セル115の組み立て工程が簡便になる。
図8(c)に示すように、予め固定されたシール材24aを有するチップカートリッジ上蓋112を塩基配列検出チップ21に対して上蓋固定ねじ117を用いて矢印の方向に押圧して固定することにより簡単にセル115を定めることができる。また、高さd41及びd42を図7のシール材の高さd4に対してd4=d41+d42となるように設計することにより、図7の場合と同じ高さのセル115を定めることができる。また、シール材24aとリング状凸部112aとの一体化は、スクリーン印刷以外の手法を用いてもよい。例えば、シール材24aあるいはリング状凸部112aの一方に突起を設け、他方にこの突起と嵌合する孔部を設けることにより一体化を実現してもよい。この場合、シール材24aをチップカートリッジ上蓋112から自由に取り外すことができるという利点を有する。
セル115の形状の変形例の断面図を図9〜図11に示す。
図9(a)に示すように、セル115の断面(底面)は半径d0の円形をなし、このセル115を取り囲むように外径d3の円筒形状のシール材24が配置される。この図9(a)に示す構成は前述した図5や図7に示す構成と共通する。
図9(b)は、セル115の形状が多角形である。また、シール材24は外径d3の外周を有する点は共通するが、その内周はセル115の多角形状にあわせて多角形をなす。図9(b)では、送入ポート116aから送出ポート116bへの流路の方向とは垂直な方向の幅が、送入ポート116aと送出ポート116bの距離よりも小さく形成されている。これにより、流路の方向に若干細長のセル形状が定められる。これにより、送入ポート116aと送出ポート116bを結んだ直線115cから大きく離れた位置における薬液残りやエア残りが少なくなるため、測定のための各種電気化学反応の面内均一性が向上する。図9(b)では多角形の一形態として八角形の場合を示したが、これに限定されず、三角形、四角形、五角形…の多角形でもよいことはもちろんである。
図10(a)は、セル115の形状が楕円形である。シール材24の外周は外径d3の円形形状をなし、内周は楕円形状をなす。楕円の中心はOである。楕円の長軸は直線115c上に位置し、長軸の長さは2×d0で定められる。楕円の短軸は直線115cとは垂直でかつ中心軸Oを通る直線115e上に位置し、短軸の長さは2×d5で定められ、d5<d0が成立する。このように、楕円形状のセル115を用いると、図9(a)のような円形形状の場合に比較して送入ポート116aから送出ポート116bへの薬液の経路の幅が小さくなり、流路に沿って細長の形状となる。従って、薬液の経路の広がり位置の薬液残りやエア残りが少なくなるため、測定のための各種電気化学反応の面内均一性が向上する。
図10(b)は、セル115断面の外周のポート近傍が、多次数方程式により表現される曲線により定められる。シール材24の外周は外径d3の円形形状をなし、内周は多次数方程式により表現される曲線により定められる。セル115の中心Oから、セル115の外周と直線115cの交点までの距離はd0である。より具体的には、セル115の外周と直線115cの交点を原点とし、直線115cをy軸、直線115cと垂直に交わり、かつ前記原点を通る直線115fをx軸とすると、セル115の外周の形状は、所定の多次数方程式の曲線の形状に一致する。方程式は自由に設定可能であり、設定により例えば放物線の形状などに設定可能である。
なお、この曲線はセル115の送入ポート116a側の半分の外周のみを定めるもので、x軸を直線115gと定めて得られる同様の方程式の曲線により残り半分の送出ポート116b側のセル外周形状が定められる。これにより、送入ポート116aが設けられた上流側と送出ポート116bが設けられた下流側のセル115の外周形状が直線115eを境界として線対称の形状をなす。
図10(b)の例では、送入ポート116aの近傍のセル115の断面形状は、送出ポート116bに向かって広がる放物線の形状となっている。また、送出ポート116bの近傍のセル115の断面形状は、送入ポート116aに向かって広がる放物線の形状となっている。これにより、送入ポート116a及び送出ポート116b近傍でかつ送入ポート116aと送出ポート116bを結んだ経路から外れた領域、すなわちポート隅の領域が、図9(a)のような円形断面の場合に比較して狭くなる。その結果、ポート隅の領域にエアや薬液が残りにくくなり、測定の電流特性が向上する。また、送入ポート116aと送出ポート116bの距離に比較して、セル115の幅、すなわち流路とは垂直な方向の幅が狭くなっている点は図9(b)や図10(a)と同じである。
図11(a)は図10(b)の変形例である。図10(b)の場合、送入ポート116aが設けられた上流側と送出ポート116bが設けられた下流側のセル115の外周形状が互いに線対称の場合を示したが、この図11(a)の場合非対称の形状をなす。セル115の外周と直線115cの交点を原点とし、直線115cをy軸、直線115cと垂直に交わり、かつ前記原点を通る直線を115fをx軸とすると、セル115の外周の形状は、所定の多次数方程式の曲線の形状に一致する。
同図の場合、方程式は送入ポート116a側と送出ポート116b側とで異なる値に設定される。これにより、同図に示すように、直線115eを境界として薬液の上流側と下流側で非対称な形状のセルが構成される。送出ポート116b側が、セル115の外側に凸の形状となっており、送入ポート116a側はセル115の外側に若干凸の形状となっているが、その曲率は送出ポート116b側よりも大きい。
もちろん、送入ポート116a側と送出ポート116b側とでセル115の形状を図11(a)に示す場合とは逆にしてもよい。さらに後述するように、送出ポート116bの形成位置とシール材24の位置にわずかに間隙を設けてもよい。
上流側、あるいは下流側のいずれか一方のセル外周を多次数方程式で表現される曲線の形状にし、他方はそのような方程式で表現されない曲線の形状としてもよいし、双方とも多次数方程式で表現できない曲線の形状にしてもよい。
図11(b)は図9(b)の変形例である。図9(b)と同様に、セル115の外周形状が多角形であるが、図11(b)の場合正六角形である。この正六角形の中心に対して互いに点対称な位置にある2つの頂点が、直線115c上に位置している。そして、この2つの頂点近傍の正六角形外周に接するようにセル孔部115a及び115bが配置されている。また、送入ポート116aと送出ポート116bの距離に比較して、セル115の幅、すなわち流路とは垂直な方向の幅が狭くなっている点は図9(b)などと同じである。
なお、上述の図9(a)、(b)、図10(a)、(b)及び図11(a)、(b)では、参考のため送入ポート116a及び送出ポート116bの外周位置、すなわちセル孔部115a及び115bの外周位置がセル115の外周と接する場合を例に説明してあるが、送入ポート116a又は送出ポート116bとセル115の外周がセル115内に収まる場合や、セル115外にはみ出す場合(例えばザグリ孔115dが用いられる場合)にも適用可能である。
セル115と送入ポート116a及び送出ポート116bとの位置関係の変形例の断面図を図12〜図16に示す。なお、これら図12〜図16における送入ポート116a及び送出ポート116bの位置は、これらポートのセル孔部115a及び115bにおける外周位置、すなわちセル115に対する開口位置を示すものであり、ザグリ孔115dが用いられる場合には、ザグリ孔115dの断面の外周位置を示す。
位置関係は、送入側/送出側の別と、セル115断面の外周と送入ポート116a又は送出ポート116bが重なる場合/接する場合/離れている場合の別、送入ポート116aと送出ポート116bがセル115の中心軸Oに対して対称の位置にある場合/非対称の位置にある場合の別により、少なくとも18種類の組合せが考えられる。
また、図12〜図16では、図5、図7や図9(a)に示した場合と同様に、セル115の断面形状が円形形状の場合を例に説明するが、図9(b)や図10(a)、(b)、図11(a)、(b)に示す場合にもセル形状を変更するのみで同様に適用可能である。
図12(a)は、送入側、送出側ともにセル115断面の外周にポート外周が重なる場合を示す。図7(b)と同様に、d0を円形のセル115の中心Oからの外周までの距離、d3をシール材24の外径、d1,d2をそれぞれ送入ポート116a及び送出ポート116bのポート断面(セル孔部115a及び115b断面)の半径、送入ポート116a及び送出ポート116bの中心軸をO1及びO2とし軸Oと軸O1の距離をd01、軸Oと軸O2の距離をd02とすると、d01+d1>d0、d02+d2>d0が成立する。
図12(b)は、送入側はセル115断面の外周にポート外周が重なり、送出側はセル115断面の外周にポート外周が接する場合を示す。この例の場合、d01+d1>d0、d02+d2=d0が成立する。
図13(a)は、送入側はセル115断面の外周にポート外周が接し、送出側はセル115断面の外周にポート外周が重なる場合を示し、図12(b)の場合とは送入側の構成と送出側の構成が逆になった場合を示す。この例の場合、d01+d1=d0、d02+d2>d0が成立する。
図13(b)は、送入側はセル115断面の外周とポート外周が重なり、送出側はセル115断面の外周とポート外周が離れている場合を示す。この例の場合、d01+d1>d0、d02+d2<d0が成立する。
図14(a)は、送入側はセル115断面の外周とポート外周が離れており、送出側はセル115断面の外周とポート外周が重なる場合を示す。この例の場合、d01+d1<d0、d02+d2>d0が成立する。
図14(b)は、送入側はセル115断面の外周とポート外周が接し、送出側はセル115断面の外周にポート外周が接する場合を示す。この例の場合、d01+d1=d0、d02+d2=d0が成立する。この例は図7(b)に示した場合と共通する。
図15(a)は、送入側はセル115断面の外周とポート外周が接し、送出側はセル115断面の外周にポート外周が離れている場合を示す。この例の場合、d01+d1=d0、d02+d2<d0が成立する。
図15(b)は、送入側はセル115断面の外周とポート外周が離れており、送出側はセル115断面の外周とポート外周が接する場合を示す。この例の場合、d01+d1<d0、d02+d2=d0が成立する。
図16(a)は、送入側はセル115断面の外周とポート外周が離れており、送出側はセル115断面の外周にポート外周が離れている場合を示す。この例の場合、d01+d1<d0、d02+d2<d0が成立する。
以上、図12〜図15、図16(a)は、ポートとセルの重なりの有無による9つの変形例を示した。図16(b)は、これらポートとセルの重なりの有無による9つの変形例にさらに組み合わせて適用できる。これら9つの変形例は、送入ポート116aと送出ポート116bがセル115の中心Oに対して対称の位置にある場合を示したが、図16(b)は、送入ポート116aと送出ポート116bがセル115の中心Oに対して非対称の位置にある例を示す。従って、9つの変形例にさらにこの図16(b)を組み合わせることにより、少なくとも18の組合せが実現できる。
図16(b)に示すように、送入ポート116aと送出ポート116bを結んだ直線は、セル115の中心軸Oを通らない。すなわち、送入ポート116aの中心O1とセル115の中心Oを結んだ直線115hが、送出ポート116bの中心O1とセル115の中心Oを結んだ直線115cと一致しない。従って、送入ポート116aと送出ポート116bがセル115の中心Oに対して非対称の位置に設けられている。
図16(b)では、送液側はセル115断面の外周にポート外周が重なり、吐液側はセル115断面の外周にポート外周が接する場合、すなわちd01+d1>d0、d02+d2=d0が成立する場合(図12(b)に相当)を示しているが、図12(b)を除く図12〜図15、図16(a)に示す残り8つの変形例で示した位置関係を適用してもよいことはもちろんである。
以上図9〜図16に示したセル115の形状の組合せのうち最適と考えられる形状を図36(a)及び(b)に示す。図36(a)は、図11(a)のセル形状と図13(a)のポートの位置関係を組み合わせた例、図36(b)は、図10(a)のセル形状と図13(a)のポートの位置関係を組み合わせた例である。
図36(a)及び(b)に示すように、送入ポート116aから送出ポート116bへの流路を考えた場合、いずれも各ポート間の距離よりも流路の幅が狭い細長のセル形状となっている。これにより、送入ポート116aと送出ポート116bを結んだ直線から大きく離れた地点における薬液残りやエア残りが少なくなり、測定のための電気化学反応の面内均一性が向上する。
また、送入ポート116aのポート隅の領域は狭く、そのポート隅近傍におけるセル周縁を定める曲線の曲率は、送出ポート116bのポート隅近傍におけるセル周縁を定める曲線の曲率よりも大きくなっている。さらに、送入ポート116aの周縁部は、セル115上面の周縁部と接するか、あるいは重なるように形成されている。また、送出ポート116bの周縁部は、セル115上面の周縁部と離れて形成されている。これにより、薬液やエア送入の際に送入ポート116aのポート隅近傍に生じやすい薬液残りやエア残りを低減することができるとともに、薬液や送出の際に送出ポート116bのポート隅で生じる送液速度のばらつきを低減することができ、エア残りなどを低減することができる。
次に、前述した塩基配列検出チップ21及びプリント基板22の製造方法について図17の工程断面図に沿って説明する。
シリコン基板211を洗浄した後、シリコン基板211を加熱し、シリコン基板211表面に熱酸化膜212を形成する。シリコン基板211の代わりにガラス基板を用いてもよい。
次に、基板全面にTi膜213を例えば50nmの膜厚で、次いでAu膜214を例えば200nmの膜厚でスパッタリングにより形成する。ここで、Au膜214はその結晶面方位が<111>配向になっていることが好ましい。次に、後に電極や配線となる領域を保護するようにフォトレジスト膜210をパターニングし(図17(a))、Au膜214及びTi膜213膜をエッチングする(図17(b))。本実施形態ではAu膜214のエッチングにはKI/I2混合溶液を、TiのエッチングにはNH4OH/H2O2混合溶液を用いた。Au膜214のエッチングには、希釈した王水を用いる方法や、イオンミリングで除去する方法もある。Ti膜213のエッチングも、同様に、弗酸や、バッファード弗酸を用いてウェットエッチング処理する方法や、例えば、CF4/O2混合ガスによるプラズマを用いたドライエッチングによる方法も適用可能である。
次に、フォトレジスト膜210を酸素アッシングにより除去する(図17(c))。フォトレジスト膜210の除去工程は、溶剤を用いたり、レジストストリッパを用いたり、また、これらと酸素アッシング工程を併用したりして行うことも可能である。
次に、全面にフォトレジスト膜215を塗布し、電極部及びボンディングパッドを開口するようにパターニングする(図17(d))。その後、クリーンオーブン内で、例えば、200℃において、30分間ハードベイクを行う。ハードベイクの方法は、熱板を用いたり、また、処理条件も適宜変更可能である。ここでは、フォトレジスト膜215を保護膜として選択したが、フォトレジスト以外に、ポリイミド、BCB(ベンゾシクロブテン)等の有機膜を用いることも可能である。また、SiO、SiO2やSiNのような無機膜を保護膜に用いても良い。その場合、電極部を保護するようにフォトレジスト膜215を開口してSiO等を堆積し、リフトオフ法により、電極部以外の領域を保護したり、もしくは、全面にSiN等を形成した後、電極部のみを開口するようにフォトレジスト膜215をパターン形成し、エッチングにより電極上のSiN膜等を除去し、最後にフォトレジスト膜215を剥離することにより形成してもよい。
次に、ダイシングを行うことによりチップ化する。最後に、電極部表面を清浄化するため、CF4/O2混合プラズマによる処理を行う。これにより、塩基配列検出チップ21が得られる。そして、この塩基配列検出チップ21を電気コネクタ22aが実装されたプリント基板22上にマウントする。そして、塩基配列検出チップ21のボンディングパッドとプリント基板22上のリード配線とをワイヤボンディングにより接続する。その後、封止樹脂23を用いてワイヤボンディング部分を保護する。
以上の工程により、塩基配列検出チップ21を実装したプリント基板22を作製することができる。
作製された塩基配列検出チップ21の上面図を図18に示す。図18に示すように、チップ表面の中央近傍には、電極21aが複数設けられている。この図18における四角形状の電極21aは作用極及び対極として用いられる電極であり、これら作用極及び対極の集合をほぼ4分割するように縦方向と横方向にほぼ垂直に交わる十字型の電極21bが参照極として用いられる電極である。また、これら電極21a,21bが形成される領域は、破線で示されるセル115の底面に重なるようにして用いられる。また、チップ周辺部にはボンディングパッド221が配置される。そして、電極21aの各々と、電極21bは、それぞれボンディングパッド221に配線222で接続される。なお、この図18では示していないが、ボンディングパッド221の形成された周辺部分は前述の封止樹脂23により封止される。
次に、送液系13の具体的な構成の一例を図19を用いて説明する。この送液系13は、カセット11の流路114a側に設けられた供給系統と、流路114b側に設けられた排出系統に大別される。
配管404の最上流には、エア供給源401が接続されている。このエア供給源401の下流側には、エア以外の薬液などが配管404を介してエア供給源401に逆流するのを防止する逆止弁402が設けられ、さらに下流側には2方電磁弁403(Va)が設けられている。これにより配管404からチップカートリッジ11の方へ流れ込むエアの流量が制御される。
配管414には、薬液の一つとしてのミリQ水を収容したミリQ水供給源411が接続されている。このミリQ水供給源411の下流側には、ミリQ水以外の薬液やエアなどがミリQ水供給源411に逆流するのを防止する逆止弁412が設けられ、さらに下流側には3方電磁弁413(Vwa)が設けられている。この3方電磁弁413により、配管404と配管415の連通と、配管414と配管415の連通の切替が行われる。すなわち、3方電磁弁413の非通電時には配管404を配管415に連通させ、通電時には配管414を配管415に連通させる。これにより、配管415へのエアとミリQ水の供給切替が行える。
配管424には、薬液の一つとしてのバッファ(緩衝液)を収容したバッファ供給源421が接続されている。このバッファ供給源421の下流側には、バッファ以外の薬液やエアなどがバッファ供給源421に逆流するのを防止する逆止弁422が設けられ、さらに下流側には3方電磁弁423(Vba)が設けられている。この3方電磁弁423により、配管424と配管425の連通と、配管415と配管425の連通の切替が行われる。すなわち、3方電磁弁423の非通電時には配管415を配管425に連通させ、通電時には配管424を配管425に連通させる。これにより、配管425へのバッファの供給と、エアあるいはミリQ水の供給の切替が行える。
配管434には、薬液の一つとしての挿入剤を収容した挿入剤供給源431が接続されている。この挿入剤供給源431の下流側には、挿入剤以外の薬液やエアなどが挿入剤供給源431に逆流するのを防止する逆止弁432が設けられ、さらに下流側には3方電磁弁433(Vin)が設けられている。この3方電磁弁433により、配管434と配管435の連通と、配管425と配管435の連通の切替が行われる。すなわち、3方電磁弁433の非通電時には配管425を配管435に連通させ、通電時には配管434を配管435に連通させる。これにより、配管435への挿入剤の供給と、エア、ミリQ水あるいはバッファの供給の切替が行える。
以上、エアや薬液の供給系統において、2方電磁弁403及び3方電磁弁413,423及び433を制御することにより、配管435を介してチップカートリッジ11に供給されるエアや、ミリQ水、バッファ及び挿入剤などの薬液の供給の切替を行い、また供給されるエアやこれら薬液の流量を制御することができる。
配管435の上流側は前述した3方電磁弁433が連通し、その下流側は3方電磁弁441(Vcbin)が連通している。3方電磁弁441により、配管435が配管440及びバイパス配管446に分岐させることができる。3方電磁弁441は、非通電時には配管435をバイパス配管446に連通させ、通電時には配管435を配管440に連通させる切替を行う。また、3方電磁弁445は、非通電時にはバイパス配管446を配管450に連通させ、通電時には配管440を配管450に連通させる切替を行う。これら3方電磁弁441及び445により、各種薬液やエアなどの供給をバイパス配管446及び配管440に切替えることができる。
配管440には、3方電磁弁441から見て下流側に向かって順に2方電磁弁442(V1in)、チップカートリッジ11、液センサ443、2方電磁弁444(V1out)、3方電磁弁445(Vcbout)が設けられている。2方電磁弁442側には、チップカートリッジ11の送入系統に相当する流路114aが連通し、2方電磁弁444側には、チップカートリッジ11の送出系統に相当する流路114bが連通している。これにより、チップカートリッジ11の送入系統に配管440を介して薬液やエアなどが供給され、チップカートリッジ11の送出系統からこれら薬液やエアなどを排出することができる。また、2方電磁弁442及び444により、この送液及び吐液の経路における薬液やエアなどの流量を制御することができる。また、液センサ443により、チップカートリッジ11に流れ込み、あるいはチップカートリッジ11から排出される薬液の流量をモニタすることができる。
配管450には、3方電磁弁445から見て下流側に向かって順に2方電磁弁451(Vvin)、減圧領域452、2方電磁弁453(Vout)、送液ポンプ454、3方電磁弁455(Vww)が設けられている。2方電磁弁451及び453は、減圧領域452前後の経路における薬液やエアの逆流を防止する。また、送液ポンプ454はチューブポンプからなり、チップカートリッジ11から見て送出側(下流側)の排出系統に設けられている点が特徴である。すなわち、チューブポンプを用いることにより、薬液がチューブ壁以外の機構に接しないため、汚染防止の観点から好ましい。また、チップカートリッジ11への薬液やエアの供給及び排出を吸引動作により行うことにより、チップカートリッジ11内部での薬液とエアの置換が潤滑に行うことができるのみならず、万一の場合として配管に緩みが生じたり、もしくはチップカートリッジ11が配管440から外れたりした場合にも、液漏れが生じない。これにより、装置設置の安全性が向上する。
もちろん、ポンプをチップカートリッジ11上流側の配管に設け、このポンプによりチップカートリッジ11にエアや薬液を押し出す構成としてもよい。また、ポンプは、チューブポンプに限ることなく、シリンジポンプ、プランジャポンプ、ダイアフラムポンプ、マグネットポンプ等を用いることもできる。
3方電磁弁455は、非通電時には配管450を配管461に連通させ、通電時には配管450を配管463に連通させるように切替を行う。配管461には廃液タンク462が設けられ、配管463には挿入剤廃液タンク464が設けられている。これにより、挿入剤以外のミリQ水、バッファなどの薬液を3方電磁弁455の切替により廃液タンク462に導き、挿入剤を挿入剤廃液タンク464に導くことができる。これにより、挿入剤を分別回収することが可能となる。
なお、各電磁弁の間は、テフロン(登録商標)チューブ等の配管で接続してもよいが本実施形態では、チップカートリッジ11に対してその上流側と下流側でそれぞれ電磁弁と流路を一体型構造としたマニフォールド構造で構成している。これにより、配管内の容量が少なくなることから、必要な薬液量を大幅に削減できる。また、配管内における薬液流れが安定するため、検出結果の再現性や安定性が向上する。
この図19に示す送液系13を用いた塩基配列検出のための送液工程を図20のフローチャートを用いて説明する。
まず、電極21a上に固定化されたDNAプローブと試料とのハイブリダイゼーション反応をセル115内で実行させる(s21)。このハイブリダイゼーション反応の実行では、例えばチップカートリッジ11の底面、すなわちプリント基板22の底面が45℃程度となるように温度制御機構14を制御し、例えば60分間保持する。
このハイブリダイゼーション反応と並行して、薬液ラインの立ち上げを行う(s22)。具体的には、3方電磁弁441及び445を制御することによりバイパス配管446側を利用し、3方電磁弁433を通電させることで挿入剤供給源431から挿入剤を例えば10秒程度供給する。3方電磁弁455は通電させ、配管450からの挿入剤は挿入剤廃液タンク464に収容される。次いで、挿入剤とエアを交互に例えば5秒ずつ程度繰り返し配管435からバイパス配管446に導入する。次いで、エアのみを配管435からバイパス配管446に導入する。この段階で廃液タンク462に廃液切替を行う。そして、バッファをバッファ供給源421からバイパス配管446に導入する。その後、ミリQ水とエアを交互に例えば5秒ずつ程度繰り返し配管435からバイパス配管446に導入する。
この薬液ラインの立ち上げが終了し、ハイブリダイゼーション反応が終了すると、配管内洗浄が行われる(s23)。配管内洗浄は、例えば温度制御機構14によりプリント基板22の温度を25℃程度とした上で、ミリQ水でバイパス配管446をパージした後、エアとミリQ水を交互に例えば5秒ずつ程度繰り返し導入する。次に、チップカートリッジ内洗浄が行われる(s24)。チップカートリッジ内洗浄は、薬液導入経路をバイパス配管446から配管440に切り替え、エアとミリQ水を交互に例えば5秒ずつ程度繰り返し配管440に導入する。そして、液センサ443によりチップカートリッジ11内に水が充填されたことを確認した上で、導入経路をバイパス配管446に切り替える。
次に、配管内バッファパージが行われる(s25)。配管内バッファパージでは、バッファとミリQ水が混合しないようにまずエアをバイパス配管446に導入する。次に、エアとバッファを交互に例えば5秒ずつ程度繰り返しバイパス配管446に導入する。そして、バイパス配管446に設けられた液センサ447によりバイパス配管446がバッファで置換されたことを確認する。
次に、チップカートリッジ内バッファ注入が行われる(s26)。チップカートリッジ内バッファ注入では、まずバイパス配管446から配管440に切り替え、エアとバッファを交互に例えば5秒ずつ程度繰り返しチップカートリッジ11内に導入する。
次に、チップカートリッジ11へのバッファ充填が行われる(s27)。バッファ充填では、液センサ443でチップカートリッジ11内の状態を監視しながらバッファをチップカートリッジ11に導入し、例えば60℃で30分間放置することにより、不要な試料の洗浄を行う(s28)。不要な試料の洗浄工程後、配管440からバイパス配管446に切り替え、ミリQ水を導入することにより配管内洗浄が行われる(s29)。この配管内洗浄では、さらにエアとミリQ水が交互に例えば5秒程度ずつ繰り返し導入される。
次に、チップカートリッジ内洗浄が行われる(s30)。チップカートリッジ内洗浄では、バイパス配管446からチップカートリッジ11に切り替えられ、エアと水が交互に例えば5秒程度ずつ繰り返し導入される。その後、液センサ443によりチップカートリッジ11内にミリQ水が充填されたことを確認した上でバイパス配管446に切り替えられる。
次に、測定が開始される。測定では、まず配管内挿入剤パージが行われる(s31)。この配管内挿入剤パージでは、バイパス配管446にエアを導入しながら廃液を挿入剤廃液タンク464に切り替える。次に、エアと挿入剤を交互に例えば5秒程度ずつ繰り返しバイパス配管446に供給した後、バイパス配管446が挿入剤で置換されたかを液センサ447を用いて検出する。
次に、チップカートリッジ11内挿入剤注入が行われる(s32)。この工程では、先ずバイパス配管446からチップカートリッジ11側に切り替えられた後、エアと挿入剤が交互に例えば5秒ずつ程度繰り返し導入される。
次に、液センサ443での監視の下、チップカートリッジ11への挿入剤充填が行われる(s33)。その後測定が行われる(s34)。
測定が終了すると、バイパス配管446にミリQ水を導入し、次いでエアとミリQ水を交互に例えば5秒程度ずつ導入した後エアで置換して配管内洗浄が行われる(s35)。
最後に、バイパス配管446からチップカートリッジ11に置換してエアとミリQ水を交互に例えば5秒程度ずつ導入し、チップカートリッジ11内をさらにエアで置換してチップカートリッジ内洗浄が行われ(s36)、一連の送液工程が終了する。
このように、図19の送液系13を用いた図20に示した工程によれば、薬液の置換を効率的に行うため、薬液/エア/薬液/エアというように、配管内をエアと薬液が交互に流れるシーケンスを作って送液することができる。このような送液方法とすることにより、薬液交換において、古い薬液と新しい薬液の混合を最小限にすることが可能である。その結果、液交換の遷移状態が減り、最終的な電気化学特性の再現性を向上することができる。更に、薬液交換の効率化による、送液時間の短縮・薬液量の削減を実現することが出来る。また、このような薬液/エアシーケンス送液により、反応セル115内の薬液濃度を常に一定に保つことが出来るので、電流特性の面内均一性が向上、即ち検出の信頼性が向上する。
また、セル115内への薬液充填の方法として、気泡が混入してしまう場合の対処として、チップカートリッジ出口バルブとしての2方電磁弁444を閉じた状態で、チップカートリッジ下流側の配管440内を減圧状態にして(ポンプ454を動作させた状態で、2方電磁弁451を制御することにより、減圧領域452を減圧してから2方電磁弁453を制御して、減圧領域452の減圧状態を保つ)から、2方電磁弁444を開けることにより、チップカートリッジ反応セル115内に薬液を導入することができる。
なお、この図20に示した送液のタイミングはほんの一例にすぎず、測定の目的、対象、条件などに応じて種々変更することができる。
図21は、測定系12の具体的な構成を示す図である。この図21に示す測定系12は、対極502の入力に対して参照極503の電圧を負帰還させることにより、セル115内の電極や溶液などの各種条件の変動によらずに溶液中に所望の電圧を印加する3電極方式のポテンシオ・スタット12aである。
より具体的には、ポテンシオ・スタット12aは、作用極501に対する参照極503の電圧をある所定の特性に設定されるように対極502の電圧を変化させ、挿入剤の酸化電流を電気化学的に測定する。
作用極501は、標的塩基配列とは相補的な標的相補塩基配列を有するDNAプローブが固定化される電極であり、セル115内の反応電流を検出する電極である。対極502は、作用極501との間に所定の電圧を印加してセル115内に電流を供給する電極である。参照極503は、参照極503と作用極501との間の電圧を所定の電圧特性に制御すべく、その電極電圧を対極502に負帰還させる電極であり、これにより対極502による電圧が制御され、セル115内の各種検出条件に左右されない精度の高い酸化電流検出が行える。
電極間を流れる電流を検出するための電圧パターンを発生させる電圧パターン発生回路510が配線512bを介して参照極503の参照電圧制御用の反転増幅器512(OPc)の反転入力端子に接続されている。
電圧パターン発生回路510は、制御機構15から入力されるデジタル信号をアナログ信号に変換して電圧パターンを発生させる回路であり、DA変換器を備える。
配線512bには抵抗Rsが接続されている。反転増幅器512の非反転入力端子は接地され、出力端子には配線502aが接続されている。反転増幅器512の反転入力端子側の配線512bと出力端子側の配線502aは配線512aで接続されている。この配線512aには、フィードバック抵抗Rff及びスイッチSWfからなる保護回路500が設けられている。
配線502aは端子Cに接続されている。端子Cは、塩基配列検出チップ21上の対極502に接続されている。対極502が複数設けられている場合には、各々に対して並列に端子Cが接続される。これにより、1つの電圧パターンにより複数の対極502に同時に電圧を印加することができる。
配線502aには、端子Cへの電圧印加のオンオフ制御を行うスイッチSW0が設けられている。
反転増幅器512に設けられた保護回路500により、対極502に過剰な電圧がかからないような構成となっている。従って、測定時に過剰な電圧が印加され、溶液が電気分解されてしまうことにより、所望の挿入剤の酸化電流検出に影響を及ぼすことが無く、安定した測定が可能となる。
端子Rは配線503aにより電圧フォロア増幅器513(OPr)の非反転入力端子に接続されている。電圧フォロア増幅器の反転入力端子は、その出力端子に接続された配線513bと配線513aにより短絡している。配線513bには抵抗Rfが設けられており、配線512bの抵抗と、配線512aと配線512bの交点との間に接続されている。これにより、電圧パターン発生回路510により生成される電圧パターンに、参照極503の電圧をフィードバックさせた電圧を反転増幅器512に入力させ、そのような電圧を反転増幅した出力に基づき対極502の電圧を制御する。
端子Wは配線501aによりトランス・インピーダンス増幅器511(OPw)の反転入力端子に接続されている。トランス・インピーダンス増幅器511の非反転入力端子は接地され、その出力端子に接続された配線511bと配線501aとは配線511aにより接続されている。配線511aには抵抗Rwが設けられている。このトランス・インピーダンス増幅器511の出力側の端子Oの電圧をVw、電流をIwとすると、Vw=Iw・Rwとなる。この端子Oから得られる電気化学信号は制御機構15に出力される。作用極501は複数あるため、端子W及び端子Oは作用極501のそれぞれに対応して複数設けられる。複数の端子Oからの出力は後述する信号切替部により切り替えられ、AD変換されることにより各作用極501からの電気化学信号をデジタル値としてほぼ同時に取得することができる。なお、端子W及び端子Oの間のトランス・インピーダンス増幅器511などの回路は、複数の作用極501で共有してもよい。この場合、配線501aに複数の端子Wからの配線を切り替えるための信号切替部を備えればよい。
この図21のポテンシオ・スタット12aを用いた測定系12の効果を従来のポテンシオ・スタットを用いた場合と比較して説明する。従来のポテンシオ・スタットを図22に示す。図22に示すように、従来のポテンシオ・スタット12a’の構成は、図21の示すポテンシオ・スタット12aとほぼ共通する。異なるのは、反転増幅器512に保護回路500が設けられていない点である。電圧パターン発生回路510の出力端子Iにおける電圧をVrefin、端子Cにおける電圧をVc、端子Rの電圧をVrefoutとする。参照極503の負帰還により、Vrefout=Rf/Rs・Vrefinが成立する。
この場合、電圧Vrefin、スイッチSW0やSWfのスイッチ切替状態、電圧Vc及び電圧Vrefoutの電圧特性やスイッチ切替状態の一例をポテンシオ・スタット12aについて示したのが図23、ポテンシオ・スタット12a’について示したのが図24である。
図23で、(a)は電圧Vrefinの電圧波形、(b)はスイッチSW0のスイッチ切替状態、(c)はスイッチSWfのスイッチ切替状態、(d)は電圧Vcの電圧波形、(e)は電圧Vrefoutの電圧波形である。
図24で、(a)は電圧Vrefinの電圧波形、(b)はスイッチSW0のスイッチ切替状態、(c)は電圧Vcの電圧波形、(d)は電圧Vrefoutの電圧波形である。
従来のポテンシオ・スタット12a’における測定手法を図24を用いて説明する。
例えば図24(a)に示すように、時間t1からt3まで一定の電圧を与え、その後時間t4に電圧0となるように線形的に電圧を減少させるような電圧パターンを電圧パターン発生回路510で発生させる。そして、例えば図24(b)に示すように、時間t1から所定の時間経過した時間t2において、スイッチSW0を閉じて対極502に電圧を付与する場合を想定する。この場合、測定の開始時、すなわちスイッチSW0を閉じるまではスイッチSW0が開いた状態となっている。
反転増幅器512の利得は非常に大きいため、スイッチSW0がONされフィードバックループが構成される前に、反転増幅器512の反転入力端子に多少の電圧が印加されていれば、反転増幅器512の出力は飽和状態となる。一方、電圧Vrefinが0Vでも、反転増幅器512の入力オフセット電圧のために飽和状態となる。この場合、入力オフセット電圧の反対の極性に飽和する。
このように、反転増幅器512の出力電圧は反転増幅器512の電源電圧の近傍まで飽和状態となっている。従って、スイッチSW0が閉状態になったとき、対極502に過剰な電圧が印加される。この過剰な電圧は、図24(c)の斜線で示した部分に相当する。この過剰電圧により、セル115内の溶液に電気分解などの意図しない電気化学反応が生じる。その結果、本来意図すべき電気化学反応の測定に悪影響を及ぼす。
この従来のポテンシオ・スタット12a’の不都合を解消すべく、本実施形態のポテンシオ・スタット12aでは、保護回路500を用いる。本実施形態のポテンシオ・スタット12aの場合、測定を開始する前、すなわち時間taよりも前の初期状態では、電圧Vrefinを0V、スイッチSWfを閉状態、かつスイッチSW0を開状態とする。まず、時間taでスイッチSW0を閉状態にする。この状態では、スイッチSWfは閉状態であり、保護回路500は機能している。反転増幅器512は常に負帰還をかけた状態で用いられるので、対極502には過剰な電圧が印加されない。
この時間taから所定の時間後の時間tbで、スイッチSWfを開状態とし、保護回路500を解除させる。その後、時間t1から電圧パターン発生回路510で発生させた電圧Vrefinを印加する。この電圧Vrefinにより、所望の電圧が参照極503に設定されるので、その応答は一次遅れの特性を持ち、対極502には過剰に電圧がかかることは無い。
図25はポテンシオ・スタット12aと12a’における対極502に印加される電流/電圧特性曲線を示す図である。図25に示すように、従来のポテンシオ・スタット12a’の場合、電流及び電圧ともに大きくマイナスになる特性を持つのに対して、本実施形態のポテンシオ・スタット12aの場合、電圧がマイナスになっても電流が一定値におさまる。電圧がマイナスの値になると、セル115の溶液中の意図しない電気分解が進行してしまう。これにより、例えば電極に気泡が発生したり、電極の組成が変わってしまうなどの弊害があった。これに対して本実施形態の例のように保護回路500を設けることにより、意図しない電圧が対極502に印加されるのを防止することができるため、意図しない電気分解がセル115内の薬液中で生じるのを回避することができる。従って、所望の挿入剤の酸化電流検出に影響を及ぼすことがなく、安定した測定が可能である。
図21に示す測定系12としてのポテンシオ・スタット12aの変形例を図26〜図29に示す。図26及び図27は測定系12として3電極方式のポテンシオ・スタットが用いられる例を、図28及び図29は測定系12として4電極方式のポテンシオ・スタットが用いられる例を示す。
図26に示すポテンシオ・スタット12bは、図21に示すポテンシオ・スタット12aと基本的な構成は共通する。同一構成には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。ポテンシオ・スタット12bは、配線512aを含めて保護回路500が設けられていない点がポテンシオ・スタット12aと異なる。この保護回路500の代わりに、配線502aに抵抗Rcが設けられている。このように、対極502側の反転増幅器512の出力に直列に抵抗Rcを接続することにより、電気二重層容量により対極にかかる電圧は一次遅れとなる。これにより、セル115中の薬液に対する影響を少なくすることができる。
図27に示すポテンシオ・スタット12cは、ポテンシオ・スタット12aや12bとは構成が若干異なる。このポテンシオ・スタット12cでは、電流検出抵抗Rcを対極502側に設け、その検出電流を高入力インピーダンス差動アンプ520で電圧に変換する。以下、その構成をより詳細に説明する。
図27に示すように、電極間を流れる電流を検出するための電圧パターンを発生させる電圧パターン発生回路510が配線512bを介して反転増幅器512(OPc)の反転入力端子に接続されている。この配線512bには抵抗Rsが接続されている。反転増幅器512の非反転入力端子は接地され、出力端子には配線512fが接続されている。反転増幅器512の出力端子と反転入力端子は保護回路500で接続されている。
配線512fは端末Cへの電圧印加のオンオフ制御を行うスイッチSW0が設けられている。また、配線512fには、交点512cで2つの配線521a及び521bに分岐している。配線521aは、高入力インピーダンス差動アンプ520のうちの増幅器522の非反転入力端子に接続されている。
配線521bには、電流検出抵抗Rcが設けられている。さらにこの配線521bは交点521dで配線502aと配線521eに分岐している。配線502aは端子Cに接続され、配線521eは高入力インピーダンス差動アンプ520における増幅器523の非反転入力端子に接続されている。
参照極503側の端子Rから反転増幅器512の反転入力端子に電圧をフィードバックさせるための電圧フォロア増幅器513、配線513a及び513b、抵抗Rfの構成は図21と共通する。
作用極501側の端子Wは、配線501aにより接地される。
高入力インピーダンス差動アンプ520は、電流検出抵抗Rcを経ない配線521aからの出力と、電流検出抵抗Rcを経た配線521eの出力の差動電圧を増幅して端子Oに出力する。増幅器522及び523の各々の反転入力端子は抵抗R1を有する配線522aで接続される。増幅器522の反転入力端子と出力端子は抵抗R2を有する配線522bにより接続される。増幅器523の反転入力端子と出力端子は抵抗R3を有する配線523aにより接続される。増幅器522の出力は抵抗R4を介して増幅器524の反転入力端子に接続される。増幅器523の出力は抵抗R5を介して増幅器524の非反転入力端子に接続される。増幅器524の非反転入力端子は、抵抗R6を介して接地される。増幅器524の反転入力端子と出力端子は抵抗R7を有する配線522dにより接続される。増幅器524の出力端子は配線524bにより端子Oに接続される。
このポテンシオ・スタット12cの場合、作用極501ではなく対極502側から酸化電流を検出する。
このように、図27に示すようなポテンシオ・スタット12cを用いても、ポテンシオ・スタット12aと同様の効果を得ることができる。
図28に示す4電極方式のポテンシオ・スタット12dの対極502側及び作用極501側の構成は図21のポテンシオ・スタット12aの構成と共通する。ポテンシオ・スタット12dの場合、2つの参照極5031及び5032からの電圧を高入力インピーダンス差動アンプ520を用いて差動増幅し、その出力電圧を対極502側の反転増幅器512にフィードバックさせる。このように、2つの参照極間の電位差を検出し、その値が所定の電圧特性となるように対極502からの供給電流を制御する。
図28に示すように、参照極5031側の端子R1は、増幅器523の非反転入力端子に接続されている。参照極5032側の端子R2は増幅器522の非反転入力端子に接続されている。高入力インピーダンス差動アンプ520は、これら増幅器522及び523の各々の非反転入力端子の2つの電圧を差動増幅して出力する。その出力側には抵抗Rfを介して配線512bに接続されている。
このように、図28に示すポテンシオ・スタット12dを用いても、ポテンシオ・スタット12aと同様の効果を得ることができる。
図29に示す4電極方式のポテンシオ・スタット12eは、図27に示すポテンシオ・スタット12cと基本的な構成は共通する。ポテンシオ・スタット12cと異なるのは、ポテンシオ・スタット12eは参照極取り出し電圧を2つにした点、その2つの電圧を差動増幅し、対極502側にフィードバックさせる点である。対極502側及び作用極501側の構成はポテンシオ・スタット12cと共通するので詳細な説明は省略する。なお、520’は前述した高入力インピーダンス差動アンプ520と同じ構成の高入力インピーダンス差動アンプである。
図29に示すように、ポテンシオ・スタット12eは、2つの参照極5031側の端子R1と、参照極5032側の端子R2の出力をそれぞれ増幅器523の非反転入力端子及び増幅器522の非反転入力端子に接続する。前述の通り、高入力インピーダンス差動アンプ520はこれら2つの入力を差動増幅して出力する。その出力側には抵抗Rfが接続され、この抵抗Rfを介して配線512bに接続される。これにより、高入力インピーダンス差動アンプ520の出力が反転増幅器512の反転入力側にフィードバックされる。
図30は制御機構15及びコンピュータ16の他の構成要素との関連性を示す概念図である。図30に示すように、コンピュータ16は、メインプロセッサ16aとインタフェース16bから構成される。このインタフェース16bを介してローカルバス17を通じて複数の制御機構15との間でデータの送受信を行うことができる。制御機構は測定制御機構本体15aと、この測定制御機構本体15aにより取り扱われるデータを格納するデータメモリ15bから構成される。制御機構15は、測定ユニット10の各々に対して1つずつ設けられている。このように、複数接続された測定ユニット10を1つのメインプロセッサ16aに接続することにより、メインプロセッサ16aの負荷を軽減することができる。
図31は制御機構15の詳細な構成の一例を示す図である。図31に示すように、測定制御機構本体15aは、ローカルバス17に接続された初期値レジスタ151、刻み値レジスタ152、終了値レジスタ153、インターバルレジスタ154及び動作設定レジスタ155を有する。
初期値レジスタ151、刻み値レジスタ152、終了値レジスタ153、インターバルレジスタ154及び動作設定レジスタ155は、それぞれメインプロセッサ16aにより設定可能な初期値、刻み値、終了値、測定時間間隔、動作モードを格納する。これら初期値、刻み値、終了値、測定時間間隔、動作モードが設定されるとデータ測定動作が開始される。
初期値、刻み値及び終了値は、電圧パターン発生回路510で発生させる電圧パターンの電圧値に相当する値を示しており、初期値から終了値まで刻み値毎にデジタル値として電圧パターンが設定される。例えば、時間t1から時間t5まで所定の波形の電圧パターンを生成する場合、時間t1における電圧値は初期値に相当し、その時間t1から測定時間間隔Δt毎に刻み値だけ電圧値が変動していき、このような電圧値が終了値まで刻み続けられる。
セレクタ158は、初期値レジスタの出力値と加算機156の出力値のうち、測定開始時のみ初期値を選択して出力し、次データからは加算器156の加算結果を選択して出力する。このセレクタ158の出力値がタイミング発生器161からの出力信号に同期して測定系12の電圧パターン発生回路510に出力される。電圧パターン発生回路510は、セレクタ158からの出力値に相当する電圧値の電圧を発生させる。これにより、前述した図23(a)に示す電圧波形の電圧パターンを発生させることができる。
加算レジスタ157は、セレクタ158の出力値をタイミング発生器161の出力信号に同期して一時格納する。
加算器156は、初期値レジスタ151の初期値に刻み値レジスタ152の刻み値を加算してセレクタ158及び比較器159に出力する。加算レジスタ157に格納されている値は測定系12に出力される電圧値に相当するため、加算器156はその測定系12への出力電圧値に刻み値を加算した電圧値に相当する値を出力する。比較器159は、加算器156の加算結果と終了値レジスタ153からの終了値を比較し、加算結果が終了値を超えた場合にカウンタ160にカウントの終了を示す信号を出力する。
カウンタ160は、インターバルレジスタ154からの測定時間間隔で定められた時間期間だけ動作設定レジスタ155からの動作設定モードに基づき、比較器159からカウントの終了を信号が入力されるまでクロックをカウントし続ける。動作設定モードには、例えば作用極の同時測定個数に応じて単独測定モード、4極設定モード、8極設定モードなどが設定可能である。例えば単独測定モードが設定されている場合、カウンタ160は測定時間間隔で定められた時間期間だけカウントをし、カウント値をタイミング発生器161に出力する。4極設定モードが設定されている場合、測定時間間隔を4分割した時間期間ごとにカウントして、カウント値をタイミング発生器161に出力する。このように、複数極設定モードが設定されている場合には、測定時間間隔をその極数分だけ分割した時間期間ごとにカウントする。
タイミング発生器161は、クロックをカウントしながらカウンタ160からのカウント値の出力タイミングに同期してアドレス信号及び書込信号をデータメモリ15bに出力する。また、タイミング発生器161は、動作設定レジスタ155からの動作設定モードに応じて信号検出部162の信号切替部163を切り替える。
信号切替部163には、測定系12の複数の作用極501の端子Oの各々に接続されている。複数の作用極501で同時に端子Oから挿入剤による電気化学信号が検出できるが、この信号切替部163により、複数の作用極501からの電気化学信号を選択的に検出することができる。
信号検出部162は、タイミング発生器161により制御された信号切替部163で切り替えられた作用極501からの電気化学信号をAD変換してデータバス164を介してデータメモリ15bに出力する。これにより、データメモリ15bには、タイミング発生器161からの書込信号が入力されるごとにその書込信号ごとに与えられたアドレス位置にデータバス164からのデータを順次書き込むことができる。
例えば単極設定モードの場合、測定時間間隔が10msecであれば、タイミング発生器161から書込信号及び1つのアドレスが10msecに1度データメモリ15bに出力されるとともに、信号検出部162からデータバス15bを介して電気化学信号のデジタル変換値が1つデータメモリ15bに出力される。
4極設定モードの場合、測定時間間隔が10msecであれば、タイミング発生器161から書込信号および4つのアドレスが10msecに4度データメモリ15bに出力されるとともに、信号検出部162からデータバス15bを介して電気化学信号のデジタル変換値が4つシーケンシャルにデータメモリ15bに出力される。これにより、測定時間間隔ごとにほぼ同時に検出された電気化学信号をデータとして格納できる。
なお、測定の精度を向上させるため、複数極設定モードの場合に、測定時間間隔を等間隔に分割したタイミングに同期させずに、複数の作用極501からの信号検出のタイミングを短縮することもできる。例えば、信号切替部163の切替信号を測定時間間隔の中のわずかな時間に複数生成することにより、測定時間間隔に左右されない測定精度を保持することができる。例えば測定時間間隔が10msecであれば、最初の9msecまでは切替信号を生成せず、9msecから10msecまでの1msecに4つの切替信号を生成して信号切替部163に出力するようにタイミング発生器161をプログラムしておく。これにより、4つの作用極501からの電気化学信号を1msec内に検出することができる。従って、測定時間間隔を長く設定してもそれによる測定時間間隔のばらつきが生じず、高い精度を保持できる。
データメモリ15bに格納された測定データはコンピュータ16のメインプロセッサ16aにより読み出され、各種信号解析に用いられる。
このように、測定された複数の電気化学信号をタイミング発生器161により測定時間間隔よりも短時間で切り替えて選択的に検出することで、作用極501の各々の信号をほぼ同時に測定することができる。
次に、測定データに基づきコンピュータ16により信号解析を行う測定データ解析手法の一例を説明する。ここでは、ターゲットDNAのSNP位置の塩基がG型(ホモ型)か、T型(ホモ型)か、あるいはGT型(ヘテロ型)かを判定する型判定の解析手法を図32のフローチャートを用いて説明する。なお、図1や図30などでは特に示していないが、コンピュータ16のメインプロセッサ16aは、型判定フィルタリング、型判定処理、判定結果出力などを行うための複数の指令からなる解析プログラムを実行することにより、型判定フィルタリング、型判定処理、判定結果出力を実行する。また、前述した制御機構15の制御は、別途制御プログラムが設けられている。これら解析プログラムや制御プログラムは、コンピュータ16に設けられた記録媒体読取装置が記録媒体に格納された解析プログラムを読み取ることにより実行されてもよいし、コンピュータ16に設けられた磁気ディスクなどの記憶装置から読み出されて実行されてもよい。
この測定データ解析を行う前提として、まず、検出の目的とされる標的塩基配列をSNP位置の塩基をA,G,C,Tとして4種類用意し、その標的塩基配列と相補的な塩基配列を有する標的相補DNAプローブを各種類について複数ずつ各作用極501に固定化させる。また、これら4種類の標的相補DNAプローブとは異なる塩基配列を有するDNAプローブ(以下、ネガティブコントロールと称する)を別の作用極501に複数固定化させる(s61)。なお、作用極501に固定化されるDNAプローブの種類は原則1つである。
次に、上述した標的相補DNAプローブが固定化された塩基配列検出チップに検体DNAプローブを含む試料を注入してハイブリダイゼーション反応などの電気化学反応を生じさせ(s62)、バッファによる洗浄、挿入剤の導入を経て測定系12を用いて代表電流値を算出する(s63)。
代表電流値とは、各DNAプローブのハイブリダイゼーション反応の発生を定量的に把握するために有効な数値を指し、一例としては、検出される信号の電流値の最大値(ピーク電流値)などが該当する。ピーク電流値の算出は、各作用極501上に固定化されたDNAプローブにハイブリダイゼーションした2本鎖DNAに結合した挿入剤からの酸化電流信号を測定し、その電流値のピークを得ることで導出される。ピーク電流値の検出には、挿入剤からの酸化電流信号以外のバックグラウンド電流を差し引くことにより行うのが望ましい。
もちろん、信号処理の精度や目的に応じていかなる値を代表電流値と定めてもよいが、例えば酸化電流信号の積分値などが該当する。もちろん、電流値に限らず、電圧値、これら電流や電圧に対して数値解析処理を行った値などを代表値と定めることもできる。
SNP位置の塩基をA,G,C,T型とした標的DNAに関する測定データ、すなわち代表電流値をそれぞれXa、Xg、Xc、Xtと定義し、ネガティブコントロールのDNAプローブの代表電流値をXnと定義する。また、代表電流値は、各種別に応じて複数得られるので、それぞれを互いに識別すべく、1番目のXaをXa1、2番目のXaをXa2、…というように定義する。
また、SNP位置の塩基をA,G,C,T型としたターゲットDNAの得られる代表電流値の個数をna、ng、nc、nt個、ネガティブコントロールについて得られる代表電流値の個数をnn個と定義する。
次に、得られた代表電流値Xa、Xg、Xc、Xt、Xnのうち、明らかに異常なデータを除去すべく、型判定フィルタリング処理を実行する(s64)。
この型判定フィルタリング処理のフローチャートを図33に示す。この図33の型判定フィルタリング処理は、Xa、Xg、Xc、Xt、Xnについてそれぞれ別個に行われる。例えばXaを例にとると、Xaについて得られたna個の代表電流値のうち、明らかに異常なデータと思われる代表電流値をこの型判定フィルタリングで排除する。Xg、Xc、Xt、Xnについても同様に行われる。
なお、この図33の説明では、データ種別に応じて同様の処理が行われるため、Xaのフィルタリングを例に説明する。
具体的には、図33に示すように、まず測定グループまず測定グループの全測定データの設定、すなわちデータセットの設定を行う(s81)。例えばXaであれば、Xa1、Xa2、…、Xanaをデータセットとして設定する。
次に、これら測定データXa1、Xa2、…、XanaについてのCV値(以下、CV0)を算出する(s82)。このCV0は、測定データXa1、Xa2、…、Xanaの標準偏差を平均値で除算することにより得られる。そして、得られた値CV0が10%、すなわち0.1以上か否かを判定する(s83)。
10%以上であれば、測定データのうち最小値を除いたna−1個のデータセットのCV値(以下、CV1)を算出する(s84)。10%未満であれば、明らかに異常なデータは無いと判定し、後述する型判定に進む。
CV1を算出した後、CV0≧2×CV1か否かを判定する(s85)。この不等式が成立すれば、(s86)に進み、さらに測定データのうち最小値を除いたna−2個のデータセットを新たにデータセットと定義し、(s82)に戻り、異常データのフィルタリングを繰り返し行う。
不等式が成立しなければ、最小値側ではなく最大値側に異常なデータがあると判定し、測定データのうち最大値を除いたna−2個のデータセットのCV値(以下、CV2)を算出する(s87)。そして、CV0≧2×CV2が成立するか否かを判定する(s88)。成立すれば、さらに測定データのうち最大値を除いたna−3個のデータセットを新たにデータセットと定義し、(s82)に戻り、異常データのフィルタリングを繰り返し行う。成立しなければ、明らかに異常なデータは無いと判定し、後述する型判定に進む。
以上に示した型判定フィルタリングをXg、Xc、Xt、Xnについても行う。
次に、得られた型判定フィルタリング結果を用いて型判定処理を実行する(s65)。この型判定処理の一例を図34のフローチャートを用いて説明する。なお、図34の例では、ターゲットDNAのSNP位置の塩基がG型か、T型か、あるいはGT型かを判定する型判定の場合を示している。また、この型判定処理は、大別して最大グループ判定アルゴリズム、2標本t検定アルゴリズムからなる。
図34に示すように、まず各グループ毎の代表電流値の平均値を抽出する(s91)。グループとは、Xa、Xg、Xc、Xt、Xnなど、標的塩基配列が異なるものは別グループ、標的塩基配列が一致するものは同一グループとする。(s64)で型判定フィルタリングにより明らかに異常なデータが排除された測定データが抽出される。もちろん、(s64)の型判定フィルタリング以外のフィルタリングにより以上データを排除した測定データを抽出してもよいし、何らフィルタリングを行わない測定データを抽出してもよい。なお、代表電流値の平均値ではなく、これら統計値から統計処理して得られた別の統計処理値を求めてもよい。
標的DNAのSNP位置の塩基がA,G,C,Tの場合をそれぞれグループA〜T、ネガティブコントロールをグループNとして説明する。また、得られた平均値をXa、Xg、Xc、Xt、Xnそれぞれのグループについて、Ma、Mg、Mc、Mt、Mnとする。
次に、得られた平均値Ma、Mg、Mc、Mt、Mnについて、最大はグループGの平均値Mgか否かを判定する(s92)。最大であれば(s93)へ、最大でなければ(s97)に進む。
(s97)では、平均値Ma、Mg、Mc、Mt、Mnについて、最大はグループTの平均値Mtか否かを判定する。最大であれば(s98)へ、最大でなければグループG、Tともに最大でないこととなり、判定不能として再検査が行われる。
(s93)では、グループGの測定データXg1、Xg2、…と、グループNの測定データXn1、Xn2、…との間に差があるか否かを判定する。差があるか否かは、例えば2標本t検定が用いられる。具体的には、2標本T検定で求めた確率Pと有意水準αとの代表関係を比較し、
H0:P≧αならば、有意差無し(帰無仮説)
H1:P<αならば、有意差あり(対立仮説)
と判定する。有意水準αは、コンピュータ16を用いてユーザが設定できる。この(s93)の例では、グループGの測定データとグループNの測定データの値に差があるかというH1の設問を提起し、この設問に対し、これら2つのグループの間に差が無いと仮定するH0という仮説を設定する。そして、グループGの測定データの平均値MgとグループNの測定データの平均値Mnに2つのグループの差が要約されているとして、確率を求める。確率の算出は、グループGの統計値Xg1、Xg2、…とグループNの統計値Xn1,Xn2、…に基づき統計定数t、自由度φを算出し、t分布の確率密度変数の積分値から確率Pを求める。
得られた確率Pについて、P≧αなら、H0を棄却できず、判定を保留する。すなわち、差が無いと判定する。P<αならH0を棄却し仮説H1を採用し、差があると判定する。
このようにして判定結果が「差がある」と判定された場合には(s94)に進み、「差が無い」と判定された場合には判定不能として再検査される。
(s94)では、グループGとグループAについて(s93)と同様の2標本t検定を用いて2つのグループに差があるか否かを判定する。差があれば(s95)に進み、差が無ければ判定不能として再検査される。
(s95)では、グループGとグループCについて(s93)と同様の2標本t検定を用いて2つのグループに差があるか否かを判定する。差があれば(s96)に進み、差が無ければ判定不能として再検査される。
(s96)では、グループGとグループTについて(s93)と同様の2標本t検定を用いて2つのグループに差があるか否かを判定する。差があればグループG型と決定する。グループG型が平均値最大、かつ他の測定グループと差があるためである。差が無ければグループGT型と決定する。グループG型が平均値最大であるが、グループG型とグループT型に測定結果に差が無いからである。
(s98)では、グループTとグループNについて(s93)と同様の2標本t検定を用いて2つのグループに差があるか否かを判定する。差があれば(s99)に進み、差が無ければ判定不能として再検査される。
(s99)では、グループTとグループAについて(s93)と同様の2標本t検定を用いて2つのグループに差があるか否かを判定する。差があれば(s100)に進み、差が無ければ判定不能として再検査される。
(s100)では、グループTとグループCについて(s93)と同様の2標本t検定を用いて2つのグループに差があるか否かを判定する。差があれば(s101)に進み、差が無ければ判定不能として再検査される。
(s101)では、グループTとグループGについて(s93)と同様の2標本t検定を用いて2つのグループに差があるか否かを判定する。差があればグループT型と決定する。グループT型が平均値最大、かつ他の測定グループと差があるためである。差が無ければグループGT型と決定する。グループT型が平均値最大であるが、グループT型とグループG型に測定結果に差が無いからである。
以上の判定結果はコンピュータ16に設けられた図示しない表示装置に表示される(s66)。このような型判定アルゴリズムを用いることにより、ヘテロ型の判定をすることが可能となる。
なお、図32〜図34では、G型、T型あるいはGT型のいずれに該当するかを判定する手法を示したが、A型,G型,C型,T型のうちのいずれか2つの型、あるいはそれらのヘテロの判定に適用できることはもちろんである。また、必ずしもA型,G型,C型,T型のグループの4種類について測定データを取得する必要は無く、SNPの考えられ得る2つの塩基に関する2グループのみについて取得するのみでもよいし、その2グループにネガティブコントロールの1グループを加えてもよい。
前述した塩基配列検出装置を用いた塩基配列の自動解析手法について図35のシーケンス図を用いて説明する。
図35に示すように、まずコンピュータ16を用いて自動解析のための自動解析条件パラメータの設定を行い、設定された自動解析条件パラメータに基づく自動解析の実行をコンピュータ16にユーザが指示する(s301)。自動解析条件パラメータは、制御機構15を制御するための制御パラメータである。制御機構15で用いられる制御パラメータは、測定系12を制御するための測定系制御パラメータ、送液系13を制御するための送液系制御パラメータ、温度制御機構14を制御するための温度制御機構制御パラメータからなる。
測定系制御パラメータは、前述した図31に示す初期値レジスタ151、刻み値レジスタ152、終了値レジスタ153、インターバルレジスタ154及び動作設定レジスタ155に格納される入力設定パラメータであり、初期値、刻み値、終了値、測定時間間隔、動作モードからなる。
送液系制御パラメータは、図19に示す電磁弁403,413,423,433,441,442,444,445,451,453,463を制御する電磁弁制御パラメータ、液センサ443,447を制御するセンサ制御パラメータ、ポンプ454を制御するポンプ制御パラメータを有する。これら電磁弁制御パラメータ、センサ制御パラメータ、ポンプ制御パラメータは、図20の(s22)〜(s36)に示すような一連の工程をシーケンシャルに実行するための条件として、制御対象の制御量、制御対象の制御タイミング、制御対象を制御する制御条件などをパラメータの詳細として含む。
温度制御パラメータは、原則として送液系制御パラメータに付随して与えられるものである。すなわち、送液系制御パラメータを設定することにより、送液系13の動作に対応して温度制御パラメータが設定される。これにより、送液系13と連動した温度制御機構14の温度制御が可能になる。
自動解析の実行により、自動解析条件パラメータは、制御機構15に送信される(s302)。制御機構15は、受信した自動解析条件パラメータのうち、測定系制御パラメータに基づき測定系12を制御し、送液系制御パラメータに基づき送液系13を制御し、温度制御機構制御パラメータに基づき温度制御機構14を制御する。また、制御機構15はこれら測定系12,送液系13及び温度制御機構14を制御するタイミングを各制御パラメータに含まれる制御タイミングや制御条件に基づき管理する。従って、制御のシーケンスはユーザにより設定された自動解析条件パラメータにより自由に定められるが、この図35では代表的な一例について説明する。
なお、この自動解析とは別に、ユーザはチップカートリッジ11を用意する。これはまず所望のDNAプローブが作用極501に固定化された塩基配列検出チップ21が封止されたプリント基板22を基板固定ねじ25によりチップカートリッジ11の支持体111に固定化し、チップカートリッジ11への取り付けを行っている(s401)。そして、シール材24を塩基配列検出チップ21の所定の位置に載置した状態で、上蓋固定ねじ117によりチップカートリッジ上蓋112と支持体111を固定化し、セル115を形成された状態で準備されている(s402)。チップカートリッジ11に対して、試料注入口119から試料を注入する(s403)。チップカートリッジ11を装置本体に装着して、開始操作を行うことにより、ハイブリダイゼーション反応(s21)が開始される。なお、注入する試料の容量は、セル115の容積よりも若干多い量にするのが望ましい。これにより、セル115内をエア残り無く試料で完全に充填することができる。
制御機構15は、コンピュータ16から受信した測定系制御パラメータに基づき測定系のタイミングの制御を開始する(s303)。
また、制御機構15は、コンピュータ16から受信した送液系制御パラメータに基づき送液系13の各構成要素を順次制御する(s304)。また、図35では特に図示しないが、この送液系13の制御と連動して、温度制御機構制御パラメータに基づき温度制御機構14の温度制御を行う。この制御により、送液系13は図20の(s21)〜(s36)(s34を除く)に示したハイブリダイゼーション反応を含む送液工程を自動実行する(s305)とともに、その送液工程で指定された温度に塩基配列検出チップ21が設定されるように温度制御機構14を自動制御する。
制御機構15は、この送液工程の中途の(s34)の測定工程のタイミングに同期して測定系12に測定指令を行う(s305)。すなわち、送液工程の(s34)の測定工程のタイミングで、制御機構15の初期値レジスタ151、刻み値レジスタ152、終了値レジスタ153、インターバルレジスタ154及び動作設定レジスタ155に初期値、刻み値、終了値、測定時間間隔、動作設定モードを格納する。なお、前述の(s303)の測定系タイミング制御をこの(s305)と同時に行わせてもよい。
測定系12は、この測定指令に基づき例えば電圧パターンを発生させて測定を行い(s306)、得られた測定信号は端子Oから制御機構15に出力される(s307)。制御機構15は、受信した測定信号を信号処理し、測定データとしてデータメモリ15bに格納する(s308)。この測定データは、コンピュータ16にローカルバス17を介して出力される(s309)。コンピュータ16はこの測定データを受信する(s310)。
このようにして必要な測定データが得られると、コンピュータ16は測定データに基づき図33で示される(s64)の型判定フィルタリングを実行する。型判定フィルタリングが終了すると、フィルタリングされたデータに基づき図34に示される型判定処理を実行する(s65)。最後に、得られた判定処理結果をコンピュータ16に備え付けの表示装置に表示する(s66)。
このように本実施形態によれば、セル115の形状が最適化されているため、セル115内における面内均一性を向上させることができる。
また、検体DNA溶液をチップカートリッジ11に注入した後は、ハイブリダイゼーションから、バッファ溶液による非特異吸着DNAの洗浄、挿入剤の注入、電気化学測定、測定データの格納、測定データに基づく標的塩基配列の判定までを、自動で行うことができる。これにより、検出信号の再現性・検出精度を向上させ、結果導出までの時間を短縮できる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
作用極501に固定化するプローブはDNAプローブとする場合を示したが、DNA以外の他の核酸からなるプローブでもよいし、核酸以外でも所定の塩基配列を有するプローブであればよい。
コンピュータ16と制御機構15の処理の分担は上述したものに限定されない。例えば、測定系12、送液系13、温度制御機構14がコンピュータ16からの指令を解釈し各構成要素を実行するプロセッサを有していれば、制御機構15は省略されてもよい。この場合、図31に示すような制御機構15の機能はコンピュータ16が実行する。
測定系12、送液系13、温度制御機構14のタイミングの管理は、これら測定系12、送液系13、温度制御機構14がタイミングを管理するプロセッサを有していれば、そのプロセッサの管理するタイミングに基づき各処理を実行する。この場合、コンピュータ16はこれら測定系12、送液系13,温度制御機構14に自動解析条件パラメータを送信すれば、タイミングを管理する必要が無い。
また、コンピュータ16が測定系12、送液系13,温度制御機構14、制御機構15のタイミング制御を行ってもよい。
また、試料注入口119は送出ポート116bに連通させる例を示したが、送入ポート116aに連通させるようにしてもよい。また、送入ポート116aと送出ポート116bの数はそれぞれ1つずつ設ける場合を示したが、これに限定されない。例えば、送入ポート116aをセル115の中心に1つ設け、送出ポート116bをセル115の周縁部に複数放射状の位置に設けるというように、ポートの数はいくつに増やしてもよい。更に、送入ポート116a及び送出ポート116bが、セル底面に対して垂直に伸びている例を示したが、これに限定されるものではなく、セル底面に対して平行に伸びる構成になっていてもよい。また、塩基配列検出チップ21上の電極21a、21bやボンディングパッド221はTiやAuの積層構造で示したが、他の材料を用いた電極やパッドを用いてもよい。また、電極21a、21bの配置は図18に示したものに限定されない。作用極501、対極502、参照極503の各々の電極数も図示したものに限定されない。
また、送液系13は図19に示したものに限定されない。例えば、反応の種類に応じてエア、ミリQ水、バッファ、挿入剤以外の薬液や気体を供給する供給系を付加することにより、セル115内におけるより複雑な反応を実行させることができる。また、各配管同士の薬液やエアの供給経路、供給量の制御は、電磁弁以外で行ってもよい。図20に示した送液系13の動作はほんの一例にすぎず、反応の目的などに応じて種々変更することができる。
また、図32〜図34では、この塩基配列自動解析装置1を型判定に用いる場合を示したが、ほんの一例にすぎず、他の解析目的に用いられてもよい。また、図35に示した自動化手法もほんの一例にすぎず、チップカートリッジ11、測定系12、送液系13,温度制御機構及び制御機構15の構成を種々変更することによりその自動化シーケンスも種々変更される。
作用極501、対極502及び参照極503のいずれも塩基配列検出チップ21上に配置される場合を示したが、これに限定されない。例えば、作用極501のみを塩基配列検出チップ21上に配置し、対極502及び参照極503はチップカートリッジ上蓋112側に形成してもよいし、対極502及び参照極503のいずれかは塩基配列検出チップ21上に配置してもよい。このように、これら作用極501、対極502及び参照極503を異なる平面に三次元的に配置してもよい。
また、塩基配列検出チップ21とチップカートリッジ上蓋112側の関係を上下逆転させて用いてもよい。
1…塩基配列検出装置、10…測定ユニット、11…チップカートリッジ、12…測定系、12a,12b,12c,12d,12e…ポテンシオ・スタット、13…送液系、14…温度制御機構、15…制御機構、16…コンピュータ、17…ローカルバス、21…塩基配列検出チップ、21a…電極(作用極、対極)、21b…電極(参照極)、22…プリント基板、22a…電気コネクタ、23…封止樹脂、24,24a…シール材、25…基板固定ねじ、110…チップカートリッジ本体、111…支持体、112…チップカートリッジ上蓋、113a,113b…インタフェース部、114a,114b…流路、115…セル、115a,115b…セル孔部、115c,115e,115f,115g,115h…直線、115d…ザグリ孔、116a…吐液ポート、116b…送液ポート、117…上蓋固定ねじ、117a…ねじ孔、119…試料注入口、120…蓋、121…シール材、500…保護回路、501…作用極、502…対極、503…参照極、510…電圧パターン発生回路