JP4413507B2 - ピンサー型金属錯体及びその製造方法、並びにピンサー型金属錯体触媒 - Google Patents

ピンサー型金属錯体及びその製造方法、並びにピンサー型金属錯体触媒 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピンサー型金属錯体及びその製造方法、並びに、炭素−炭素結合を形成する化学反応の触媒として有用なピンサー型金属錯体触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素−金属結合を有するメタラサイクル(metallacycle)型錯体は、熱や水、空気や酸素等に対して優れた安定性を示す一方、種々の化学反応にて高い触媒活性を示すことが知られている。そのため、近年、種々の構造を有するメタラサイクル型錯体が開発され、その触媒特性に関する研究が盛んに行われている(例えば、非特許文献1〜3等)。
【0003】
上記メタラサイクル型錯体の一種として知られているピンサー(Pincer)型錯体は、一般式(3)
【0004】
【化3】
Figure 0004413507
【0005】
(式中、Eは配位部位を表し、M’は金属を表し、R’は任意の置換基を表し、Lは任意の配位子を表し、pは自然数である)にて示される構造を有する錯体の総称として知られている(例えば、非特許文献4参照)。すなわち、ピンサー型錯体は、該ピンサー型錯体の中心金属と芳香族環の炭素とが結合するとともに、該芳香族環の2つのオルト位(2位及び6位)に位置する各置換基が上記中心金属に結合してなる。
【0006】
上記一般式(3)に示されるピンサー型錯体では、上記EやM’を変化させることによって、種々の特性や物性を有するピンサー型錯体を得ることができる。それゆえ、これまでに多種多様な構造を有するピンサー型錯体が合成され、その利用可能性が数多く研究されている(非特許文献4等参照)。
【0007】
例えば、非特許文献1〜5には、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルとオレフィンとの炭素−炭素間結合形成反応として知られるヘック(Heck)反応の触媒として、上記ピンサー型錯体を含むメタラサイクル型錯体が用いられることが記載されている。上記ヘック反応では、通常パラジウムを触媒として用いる。そのため、上記非特許文献1〜5には、メタラサイクル型錯体の中心金属としてパラジウム(Pd)を用いた場合に、上記ヘック反応にて、優れた触媒活性が得られることが報告されている。
【0008】
すなわち、例えば非特許文献3には、ヘック反応の触媒として用いた場合に、触媒活性の評価に一般的に用いられるターンオーバー数(turnover number;以下、TONと記載)が、100億(1010)回転となる、ピンサー型錯体ではないメタラサイクル型錯体が記載されている(該文献のTable 3等参照)。また、非特許文献4には、上記TONが890万回転となるピンサー型錯体が記載されている(該文献のTable 1参照)。
【0009】
【非特許文献1】
Dupont,J.等、「Palladacycles ― An Old Organometallic Family Revisited : New, Simple, and Efficient Catalyst Precursors for Homogeneous Catalysis」、Eur.J.Inorg.Chem.、p.1917-1927、2001年
【0010】
【非特許文献2】
Herrmann,W.A.等、「Application of palladacycles in Heck type reactions」、J.Organomet.Chem.、576巻、p.23-41、1999年
【0011】
【非特許文献3】
Alonso,D.A.等、「Oxime-Derived Palladium Complexes as Very Efficient Catalysts for the Heck-Mizoroki Reaction」、Adv.Synth.Catal.、344巻、2号、p.172-183、2002年
【0012】
【非特許文献4】
Albrecht,M.等、「Platinum Group Organometallics Based on ''Pincer'' Complexes : Sensors, Switches, and Catalysts」、Angew.Chem.Int.Ed.、40巻、p.3750-3781、2001年
【0013】
【非特許文献5】
Beletskaya,I.P.等、「The Heck Reaction as a Sharpening Stone of Palladium Catalysis」、Chem.Rev.、100巻、p.3009-3066、2000年
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ピンサー型錯体は、上記したように、中心金属に結合した芳香族環の炭素に対してオルト位に、それぞれ置換基を有し、該置換基が上記中心金属に結合してなる錯体である。それゆえ、その構造上の安定性により、メタラサイクル型錯体の中でも特に、熱や水、空気や酸素等に対して優れた安定性を示す。そのため、上記ピンサー型錯体は、常温常圧下にて取扱うことができるので、ピンサー型錯体以外のメタラサイクル型錯体に比べて、保存等の簡便性を備えている。
【0015】
また、上記したように、ピンサー型錯体以外のメタラサイクル型錯体を、ヘック反応における触媒として使用した場合に、TONが100億回転となる錯体の報告がある。一方、従来のピンサー型錯体をヘック反応の触媒として使用した場合には、TONは890万回転にとどまっている。それゆえ、ピンサー型錯体が有するTONについては、さらなる改良の余地が残されていると考えられ、上記にて説明した従来のピンサー型錯体が有するTONよりも、さらに優れたTONを実現し得るピンサー型錯体の開発が望まれる。
【0016】
従って、ピンサー型錯体を有機合成反応における触媒として利用して、高いTONを実現することができれば、保存等における取扱いを容易にすることができるとともに、有機合成反応プロセスを効率化することができる。また、有機合成反応プロセスを効率化することができれば、コストの削減にもつながる。さらに、有機合成反応プロセスの触媒として使用した場合に、高いTONを有していれば、使用済みの触媒の排出を低減することにも役立つため、近年社会問題の一つとなっている環境保全にも貢献することができる可能性がある。
【0017】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、炭素−炭素結合を形成する反応の触媒として、より優れた触媒回転を実現し得るピンサー型金属錯体触媒、及び該触媒となるピンサー型金属錯体、並びにその製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、メタラサイクル型錯体の一形態であるピンサー型金属錯体であって、ベンゼン環の炭素と遷移金属との間に結合を有し、かつ、該ベンゼン環のオルト位である2位及び6位に、それぞれ上記遷移金属に配位する配位部位を有する縮合複素環からなる多環式置換基が結合してなる新規なピンサー型金属錯体を見出すとともに、該ピンサー型金属錯体を該ピンサー型金属錯体触媒として用いることにより、炭素−炭素結合を形成する炭素間結合形成反応にて優れた触媒活性が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
すなわち、本発明のピンサー型金属錯体は、芳香族環を構成する1つの炭素が遷移金属に結合し、上記炭素に対してオルト位にある上記芳香族環の2つのオルト位炭素にはそれぞれ、環骨格を構成する少なくとも1つの原子が窒素原子である複素環構造を少なくとも1つ含む縮合複素環からなる多環式置換基が結合してなり、上記多環式置換基が有する上記窒素原子は、上記遷移金属に結合している構造を有することを特徴としている。
【0020】
上記芳香族環の2つのオルト位のオルト位炭素に結合する各多環式置換基は、互いに同一であってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。
【0021】
また、上記多環式置換基は、少なくとも1つの複素環構造を含む多環式の置換基であれば特に限定されないが、2環式置換基又は3環式置換基であることが好ましい。
【0022】
さらに、好ましくは、上記多環式置換基に含まれ、遷移金属に結合している窒素原子が、該多環式置換基を構成する少なくとも2つの環に共有される原子となって、縮合している縮合複素環であるとよい。
【0023】
具体的には、本発明のピンサー型金属錯体は、一般式(1)
【0024】
【化4】
Figure 0004413507
【0025】
(式中、Mは遷移金属を表し、R1は芳香族環に導入可能な任意の置換基を表し、X1はMに結合可能な原子,分子又はイオンからなる任意の配位部を表し、Y1,Y2はそれぞれ独立して、−O−,−S−,−N(R2)−(R2はH又は炭化水素基を表す)のうちのいずれかを表す)にて示される構造を有することが好ましい。
【0026】
また、上記遷移金属は、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、金、銀、銅、コバルト、オスミウム、タンタル、ケイ素、亜鉛のうちのいずれかの金属であることが好ましい。
【0027】
なお、本発明のピンサー型金属錯体は、例えば、上記一般式(1)で表されるように不斉原子を有する構造を有している場合、その不斉原子の立体配座は特に限定されない。
【0028】
上記のピンサー型金属錯体は、熱や水、空気や酸素等に対して優れた安定性を示し、常温常圧の空気雰囲気下においても、その特性や諸物性を損なうことがないので、保存等の取扱いが容易である。
【0029】
また、本発明のピンサー型金属錯体は、ヘック反応やクロスカップリング反応、カルボニル化反応等の炭素−炭素結合を形成する炭素間結合形成反応の触媒として用いることができる。本発明のピンサー型金属錯体を、ピンサー型金属錯体触媒として用いる場合、上記ピンサー型金属錯体をそのまま用いてもよく、あるいは適当な溶媒に溶解した溶液として用いてもよい。また、上記ピンサー型金属錯体を担持する担持体に固定して用いてもよい。
【0030】
本発明のピンサー型金属錯体触媒は、従来のピンサー型錯体よりも優れた触媒回転回数を示す。そのため、上記ピンサー型金属錯体をピンサー型金属錯体触媒して用いれば、化学反応プロセスを効率化するとともに、使用済みの触媒といった排出物の低減に役立つと考えられる。それゆえ、近年社会問題の一つとなっている環境保全に役立つ可能性がある。また、優れた触媒回転回数を示すため、化学反応プロセスのコストを削減することもできる。さらに、本発明のピンサー型金属錯体は、上記炭素間結合形成反応の反応終了後回収すれば、再度触媒として使用することができるので、化学反応プロセスにおける排出物のさらなる低減に有用である。
【0031】
また、一般式(1)にて表される構造を有するピンサー型金属錯体は、不斉元素を有する光学活性体であるため、不斉反応における触媒として使用することができる。特に、所望するキラリティを有するピンサー型金属錯体を用いれば、特定の光学異性体を実質的に100%の純度にて製造することができるので、生体物質等の生合成に際して有用である。
【0032】
また、本発明のピンサー型金属錯体の製造方法は、芳香族環を形成する炭素原子に結合するように、該芳香族環に遷移金属原子を導入して芳香族環−遷移金属化合物を形成するステップと、上記遷移金属原子に結合している上記炭素原子に対してオルト位にある2つのオルト位炭素原子に結合するように、かつ、上記遷移金属原子と結合するように、上記芳香族環−遷移金属化合物に分子内配位部を形成するステップとを含むことを特徴としている。
【0033】
具体的には、芳香族環を形成する炭素原子と遷移金属原子とが結合してなり、かつ該芳香族環の、遷移金属原子と結合している上記炭素原子に対してオルト位にある2つのオルト位炭素原子に、それぞれカルボニル基を含む官能基を有してなる芳香族環−遷移金属化合物と、上記カルボニル基を含む官能基と反応し得る反応部位、及び、上記遷移金属原子に結合する配位原子を有するカルボニル化合物とを反応させるとよい。
【0034】
上記芳香族環−遷移金属化合物は、例えば、上記オルト位に相当する位置にカルボニル基を含む官能基を有してなる芳香族化合物と、上記遷移金属原子を含んでなる遷移金属含有化合物とを反応させて得ることができる。
【0035】
上記の方法によれば、配位子の一部を構成する芳香族環と遷移金属とを結合してなる芳香族環−遷移金属化合物を用い、該芳香族環−遷移金属化合物と、上記配位子の残りの部分である分子内配位部を構成するようなカルボニル化合物とを反応させる。これにより、芳香族環−遷移金属化合物のカルボニル基を含む官能基とカルボニル化合物の上記反応部位とが脱水反応によって結合して分子内配位部を形成し、さらにカルボニル化合物の上記配位原子が遷移金属に結合する。これにより、配位子が形成され、ピンサー型金属錯体が得られる。
【0036】
従って、上記の製造方法を用いれば、多種多様な特性や物性を有するピンサー型金属錯体を得るために配位子の構造を変化させる場合、芳香族環−遷移金属化合物と反応させるカルボニル化合物を適宜選択することによって、種々の構造の分子配位部位を有するピンサー型金属錯体を得ることができる。
【0037】
つまり、本発明の製造方法では、あらかじめ調製された芳香族環−遷移金属化合物とカルボニル化合物とを反応させるので、種々の構造のカルボニル化合物を用いることによって、分子内配位部の構造を多様化して、配位子の構造を多様化することができる。それゆえ、ピンサー型金属錯体が有する分子配位部位の構造を多様化する場合にも、配位子を調製して金属との錯形成を行う従来公知の製造方法に比べて、製造工程数を低減することができる。その結果、多種多様な構造を有するピンサー型金属錯体の製造を容易にすることができる。
【0038】
すなわち、従来公知のピンサー型金属錯体の製造方法では、上記した非特許文献4等に記載されているように、まず配位子を調製した後、該配位子と金属との錯形成を行っている。そのため、従来公知の製造方法にて、上記分子配位部位の構造を多様化する場合、該分子配位部位の構造毎に配位子を調製する必要がある。それゆえ、従来の製造方法では、ピンサー型金属錯体の分子配位部位を多様化しようとすればするほど、その多様化に応じて種々の構造を有する配位子を調製する製造工程が必要となり、ピンサー型金属錯体の製造工程数が増大してしまう。
【0039】
しかしながら、上記した本発明の製造方法を用いれば、ピンサー型金属錯体の構造を多様化する場合に、主に多様化される部位である上記分子配位部位を形成するカルボニル化合物を、芳香族環−遷移金属化合物に導入している。そのため、芳香族環−遷移金属化合物をあらかじめ大量に製造しておき、該芳香族環−遷移金属化合物に反応させるカルボニル化合物の種類を変化させれば、従来の製造方法よりも少ない製造工程数にて、多種多様な構造を有するピンサー型金属錯体を得ることができる。
【0040】
上記カルボニル化合物としては、例えば、一般式(2)
【0041】
【化5】
Figure 0004413507
【0042】
(式中、Y3,Y4はそれぞれ独立して、−OH,−SH,−NH−R2(R2はH又は炭化水素基を表す)のうちのいずれかを表す)で示される構造を有しているカルボニル化合物を挙げることができる。
【0043】
本発明の製造方法を利用すれば、ピンサー型金属錯体の分子内配位部としては立体的に嵩高いために、従来公知の製造方法では製造することができなかった、例えば上記一般式(2)に示されるカルボニル化合物によって形成される分子内配位部を有するピンサー型金属錯体の製造を行うことができる。すなわち、従来公知の製造方法では、多環式置換基を有する配位子等の立体的に嵩高い配位子を用いた場合、配位子と遷移金属との錯形成が、立体的に嵩高い配位子によって阻害される。
【0044】
これに対し、本発明の製造方法では、まず、芳香族環−遷移金属化合物を調製した後、該芳香族環−遷移金属化合物に対して、分子内配位部を形成し得るカルボニル化合物を導入しているので、立体的に嵩高い配位子を有するピンサー型金属錯体であっても、製造することができる。それゆえ、本発明の製造方法を用いれば、従来公知のピンサー型金属錯体のみならず、従来の製造方法では製造されることができなかった、立体的に嵩高い配位子を有するピンサー型金属錯体をも製造することができる。
【0045】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。
【0046】
1.本発明にかかるピンサー型金属錯体
本発明のピンサー型金属錯体(以下、ピンサー型錯体と記載する)は、芳香族環を構成する炭素(C)のうちの1つの炭素(以下、1位の炭素と記載する)が遷移金属に結合するとともに、この1位の炭素に対してオルト位にある上記芳香族環の2位及び6位の炭素にはそれぞれ、環骨格を構成する少なくとも1つの原子が窒素(N)原子である複素環構造を少なくとも1つ含む縮合複素環からなる多環式置換基が結合してなり、この多環式置換基が有する窒素原子が上記遷移金属に結合している構造を有している。
【0047】
上記芳香族環は、ベンゼン環を有していればよく、該ベンゼン環の1位・2位・6位以外の位置に、ベンゼン環に対して導入可能な任意の置換基を有していてもよい。
【0048】
また、上記多環式置換基は、ピンサー型錯体の中心金属である遷移金属に結合する窒素原子(以下、配位窒素原子と記載する)が環骨格を構成している複素環を少なくとも1つ含む多環式の置換基であれば特に限定されず、多環式置換基を構成する各環構造部位にそれぞれ1つ以上の官能基を有していてもよい。また、上記各環構造部位は、その骨格構造に、上記配位窒素原子以外に、窒素原子、酸素(O)原子、硫黄(S)原子等のヘテロ原子を1つ以上有していてもよい。
【0049】
上記多環式置換基は、好ましくは2又は3の環構造部位を有している2環式置換基又は3環式置換基であるとよい。また、上記多環式置換基は、上記配位窒素原子が、該多環式置換基を構成する少なくとも2つの環構造部位に共有される原子となって、縮合している縮合複素環であるとよい。
【0050】
上記多環式置換基が2環式置換基又は3環式置換基の縮合複素環であり、かつ上記配位窒素原子が少なくとも2つの環構造部位に共有される場合、該多環式置換基を形成する複数の環構造部位のうち、上記芳香族環に直接結合している側の環構造部位は、5員環又は6員環であることが好ましい。上記芳香族環に結合している側の環構造部位が5員環又は6員環である理由は、後述する本発明のピンサー型錯体の製造方法によって上記双環式置換基を形成した場合に、該双環式置換基を介して、上記芳香族環と遷移金属とを結合させて、安定な3座配位型の配位子を有するピンサー型錯体を得ることができるためである。
【0051】
また、上記多環式置換基を形成する環構造部位のうち、上記芳香族環に結合していない環構造部位の構造は特に限定されないが、4員環、5員環、6員環のうちのいずれかであることが好ましい。
【0052】
なお、上記芳香族環の2位及び6位の炭素に結合する各多環式置換基は、互いに同一であってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。
【0053】
上記の構造を有するピンサー型錯体として、例えば、一般式(1)
【0054】
【化6】
Figure 0004413507
【0055】
(式中、Mは遷移金属を表し、R1は芳香族環に導入可能な任意の置換基を表し、X1はMに結合可能な原子,分子又はイオンからなる任意の配位部を表し、Y1,Y2はそれぞれ独立して、−O−,−S−,−N(R2)−(R2はH又は炭化水素基を表す)のうちのいずれかを表す)にて示される構造を有するピンサー型錯体を挙げることができる。なお、式中の「*」は、不斉炭素を示す。
【0056】
上記一般式(1)にて表される構造を有するピンサー型錯体は、上記した配位窒素原子が、2環式置換基を構成する2つの環構造部位に共有される原子となっている。また、上記2環式置換基を形成する2つの環構造部位のうち、芳香族環に結合している側の環構造部位は5員環である。
【0057】
また、上記一般式(1)にて表される構造を有するピンサー型錯体は、4つの不斉炭素を有している光学活性体である。本発明のピンサー型錯体は、上記4つの不斉炭素の立体配座については特に限定されない。つまり、本発明のピンサー型錯体は、上記一般式(1)にて表される構造を有していれば、そのキラリティについては限定されない。
【0058】
上記Mは、遷移金属であれば特に限定されないが、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、コバルト(Co)、オスミウム(Os)、タンタル(Ta)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)のうちのいずれかであることが好ましい。このうち、平面四配位の錯体を形成するPd,Rh,Ni及び六配位の錯体を形成するPtが特に好ましい。
【0059】
上記R1は、ベンゼン環に導入可能な置換基であれば特に限定されないが、ハロゲン、炭化水素基、窒素(N)原子,リン(P)原子,酸素(O)原子,硫黄(S)原子等を含んでいてもよい炭化水素基、カルボニル基やカルボニル誘導基等を挙げることができる。
【0060】
具体的には、上記R1がハロゲンである場合、R1は、フッ素(F),塩素(Cl),臭素(Br),ヨウ素(I)のうちのいずれかであり、特にCl,Br,Iのうちのいずれかが好ましい。
【0061】
また、上記R1が炭化水素基である場合、アルキル基,アリール基,アラルキル基,ヒドロキシル基,アルコキシル基,アルキルアミノ基等を挙げることができる。上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n(ノルマル)−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖状アルキル基;i(イソ)−プロピル基、s(セカンダリー)−ブチル基、t(ターシャリー)−ブチル基、i−ペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、エチルプロピル基、メチルペンチル基、ジメチルブチル基、エチルブチル基等の分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;等を挙げることができる。また、アリール基としては、フェニル基,o(オルト)−トリル基,m(メタ)−トリル基,p(パラ)−トリル基,p−アニシル基,キシリル基等を挙げることができる。さらに、アラルキル基としては、ベンジル基,p−メトキシベンジル基,フェネチル基等を挙げることができる。
【0062】
また、アルコキシル基としては、メトキシ基,エトキシ基,i−プロポキシ基,n−ブトキシ基,ベンジルオキシ基等を挙げることができる。さらに、アルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基,ピロリジル基,ピペリジル基等を挙げることができる。
【0063】
また、カルボニル基又はカルボニル誘導基としては、−COOH基、上記炭化水素基にカルボニル基が導入されてなるカルボニル炭化水素基等を挙げることができる。
【0064】
上記X1は、ピンサー型錯体の中心金属である遷移金属に結合可能な原子,分子又はイオンからなる配位部である。具体的には、遷移金属に配位可能な一酸化炭素やオレフィン等の配位子;F,Cl,Br,Iといったハロゲン;アセテートやトリフレート等のオキソ化合物;ホスフィンやホスファイト等のリン化合物;アミン,ニトリル,イソニトリル等の窒素化合物;水,アセトニトリル,THF(テトラヒドロフラン)等の溶媒等を挙げることができる。
【0065】
上記Y1,Y2は、上記2環式置換基を形成する2つの環構造部位のうち、芳香族環に結合している側の環構造部位に含まれ、それぞれ独立して、−O−,−S−,−N(R2)−(R2はH又は炭化水素基を表す)のうちのいずれかである。ここで、R2の炭化水素基としては、メチル基,エチル基,i−プロピル基,n−ブチル基等のアルキル基;フェニル基,p−トリル基,p−アニシル基等のアリール基;ベンジル基,p−メトキシベンジル基,フェネチル基等のアラルキル基等を挙げることができる。
【0066】
また、上記2環式置換基を形成する2つの環構造部位のうち、芳香族環に結合していない側の環構造部位は、上記したように、4員環、5員環、6員環、あるいはこれらの縮合環のうちのいずれかであることが好ましい。また、その骨格構造に、上記配位窒素原子以外に、N,O,S等のヘテロ原子を1つ以上有していてもよく、さらに、1つ以上の官能基を有していてもよい。
【0067】
すなわち、上記一般式(1)にて表されるピンサー型錯体が有する2環式置換基としては、例えば、下記式(4)・(5)
【0068】
【化7】
Figure 0004413507
【0069】
(式中、Y1は、−O−,−S−,−N(R2)−(R2はH又は炭化水素基を表す)のうちのいずれかを表し、R3は炭化水素基を表す)にて表される各構造を有するものを挙げることができる。なお、上記では、説明の便宜上、芳香族環に結合している側の環構造部位と、結合していない側の環構造部位とを区別して説明している。そのため、上記一般式(5)に示す構造を有する多環式置換基も2環式置換基として示しているが、一般式(5)に示される芳香族環に結合していない側の環構造部位に縮合環を有している多環式置換基は、3環式置換基に相当する。
【0070】
2.本発明にかかるピンサー型金属錯体の製造方法
次に、本発明のピンサー型錯体の製造方法について説明する。
【0071】
本発明のピンサー型錯体の製造方法では、まず、芳香族環を形成する1つの炭素原子(1位の炭素)に結合するように、該芳香族環に遷移金属原子を導入して芳香族環−遷移金属化合物を調製する。次いで、この芳香族環−遷移金属化合物の芳香族環の、上記1位の炭素に対してオルト位にある2位及び6位の炭素原子に結合するとともに、芳香族環−遷移金属化合物の芳香族環の遷移金属原子に結合するように、上記芳香族環−遷移金属化合物に分子内配位部を形成してピンサー型錯体を得る。
【0072】
具体的には、まず、芳香族環を構成する炭素(C)のうちの1つの炭素(1位の炭素)が遷移金属原子に結合するとともに、この1位の炭素に対してオルト位にある上記芳香族環の2位及び6位の炭素に、それぞれカルボニル基を含む官能基が形成されてなる、芳香族環−遷移金属化合物を調製する。次いで、この芳香族環−遷移金属化合物と、該芳香族環−遷移金属化合物のカルボニル基を含む官能基と反応し得る反応部位、及び、上記遷移金属原子に結合する配位原子を有するカルボニル化合物とを反応させることによって、ピンサー型錯体を得る。
【0073】
すなわち、本発明のピンサー型錯体の製造方法では、まず中心金属となる遷移金属原子に配位する配位子の一部を構成する芳香族環と遷移金属原子とが結合した芳香族環−遷移金属化合物を調製しておく。その後、上記配位子の残りの部分である分子内配位部を形成し得るカルボニル化合物と、上記芳香族環−遷移金属化合物とを反応させて配位子を形成し、ピンサー型錯体を製造する。
【0074】
上記芳香族環−遷移金属化合物は、芳香族環の2位及び6位の位置の炭素にカルボニル基を含む官能基を有してなる芳香族化合物と、ピンサー型錯体の中心金属となる遷移金属原子を含んでなる遷移金属含有化合物との酸化的付加反応を行うことによって得ることができる。
【0075】
この酸化的付加反応に用いる上記芳香族化合物は、ベンゼン環を有し、該ベンゼン環の2位及び6位の炭素に、カルボニル基を含む官能基が結合している構造を有していればよい。また、ベンゼン環の3位〜5位の少なくとも1つに、ベンゼン環に導入可能な置換基が1つ以上結合していてもよい。このような芳香族化合物は、具体的には、一般式(6)
【0076】
【化8】
Figure 0004413507
【0077】
(式中、R1は芳香族環に導入可能な任意の置換基を表し、R4,R5はそれぞれ独立して、−CHO,−COOH,−R6−CHO,−R7−COOH(R6,R7はそれぞれ独立して炭化水素鎖を表す)のうちのいずれかを表す)にて示される構造を有していればよい。
【0078】
上記R6及びR7は、炭化水素鎖であれば特に限定されないが、例えばアルキル鎖等を挙げることができる。
【0079】
上記アルキル鎖としては、具体的には、メチレン鎖、エチレン鎖、トリメチレン鎖等の直鎖状アルキル鎖;プロピレン鎖等の分岐状アルキル鎖等を挙げることができる。
【0080】
上記構造を有する芳香族化合物としては、例えば、イソフタルアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−メチル−1,3−ベンゼンジカルボキシアルデヒド等を挙げることができるが、文献(Lindoy,L.F.等、Synthesis、p.1029、1998年)に基づいて適宜調製してもよい。
【0081】
また、上記遷移金属含有化合物は、上記酸化的付加反応によって、上記芳香族化合物の芳香族環の1位の炭素と遷移金属原子とが結合し得るものであれば特に限定されない。具体的には、ジベリジリデンアセトン(dba)、トリフェニルホスフィン、シクロオクタジエン等を配位子とする遷移金属の配位化合物;塩素、臭素、ヨウ素、酢酸イオン等と遷移金属との塩等の金属化合物等を挙げることができる。
【0082】
上記芳香族化合物と遷移金属含有化合物との酸化的付加反応は、例えば文献(Collman,J.P.、Acc.Chem.Res.、1巻、p.136、1968年;Halpern,J.、Acc.Chem.Res.、3巻、p.386、1970年)に記載されている従来公知の手法で行えばよく、使用する溶媒等の各種添加物、反応条件についても特に限定されない。
【0083】
具体的には、上記溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、アセトン、トルエン、THF等を挙げることができる。また、添加物としては、塩化リチウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム等を挙げることができる。さらに、反応温度は、20℃〜100℃が好ましく、反応時間は0.5時間〜24時間が好ましい。
【0084】
上記酸化的付加反応を行って得られる芳香族環−遷移金属化合物は、芳香族環の1位の炭素に遷移金属原子が結合していればよく、遷移金属原子には、上記酸化的付加反応に際して用いられた溶媒や添加物に由来する物質や原子・分子が結合していてもよい。
【0085】
上記のようにして得られた芳香族環−遷移金属化合物を、該芳香族環−遷移金属化合物のカルボニル基を含む官能基と反応し得る反応部位、及び、上記遷移金属原子に結合する配位原子を有しているカルボニル化合物と反応させることによって、ピンサー型錯体が得られる。
【0086】
上記カルボニル化合物は、上記反応部位及び上記配位原子を有していれば特に限定されるものではない。上記反応部位としては、−OH,−SH,−NH−R2(R2はH又は炭化水素基を表す)を挙げることができる。また、上記配位原子としては、N,O,S,P等を挙げることができる。このようなカルボニル化合物としては、例えば、プロリン、ヒドロキシプロリン、ピペコリン酸や、アミノ酸から文献(Uozumi,Y.等、Tetrahedron Lett.、42巻、p.407、2001年)に基づいて調製されるアミノ酸のアミド化合物等を挙げることができる。
【0087】
また、多環式置換基を含む分子内配位部を形成するためには、例えば、下記一般式(2)
【0088】
【化9】
Figure 0004413507
【0089】
(式中、Y3,Y4はそれぞれ独立して、OH,SH,NH−R2(R2はH又は炭化水素基を表す)のうちのいずれかを表す)で示される構造を有するカルボニル化合物を用いればよい。
【0090】
上記一般式(2)で表される構造を有するカルボニル化合物を用いた場合には、該カルボニル化合物の反応部位であるY3又はY4と芳香族環−遷移金属化合物のカルボニル基を含む官能基とが脱水反応により結合する。また、このとき、上記カルボニル化合物に含まれる配位原子である窒素原子が遷移金属原子に結合する。これにより、上記分子内配位部が形成される。
【0091】
なお、上記脱水反応に使用する溶媒や、反応条件については特に限定されず、従来公知の溶媒や反応条件を適用すればよい。具体的には、上記溶媒としては、例えば、アセトニトリル、メタノール、エタノール、トルエン等を挙げることができる。また、反応温度は、20℃〜100℃が好ましく、反応時間は1時間〜100時間が好ましい。
【0092】
以上のように、本発明のピンサー型錯体の製造方法では、配位子を調製した後に錯形成を行う従来公知のピンサー型錯体の製造方法とは異なり、まず遷移金属原子に配位する配位子の一部を含む芳香族環−遷移金属化合物を調製した後、上記配位子の残りの部分である分子内配位部を形成している。それゆえ、ピンサー型錯体の配位子の構造を変化させる場合、多種多様な配位子を調製することなく、配位子の中で主に多様化される部位である分子配位部を形成するカルボニル化合物を適宜選択することによって、所望する構造を有するピンサー型錯体を得ることができる。これにより、従来公知のピンサー型錯体の製造方法では、種々の構造を有する配位子を調製するために必要となっていた膨大な製造工程数を低減して、容易にピンサー型錯体を製造することが可能になる。
【0093】
また、本発明のピンサー型錯体の製造方法を用いれば、立体的に嵩高い多環式置換基を有するピンサー型錯体の製造を好適に行うことができる。すなわち、本発明のピンサー型錯体の製造方法では、配位子のうち、立体的に嵩高い構造部分を、カルボニル化合物を用いて分子内配位部として導入している。それゆえ、本発明のピンサー型錯体の製造方法を用いれば、従来公知の製造方法では配位子が立体的に嵩高いために錯形成が阻害され、製造することが困難であったピンサー型錯体を製造することができる。
【0094】
3.本発明にかかるピンサー型金属錯体の利用
本発明のピンサー型錯体は、ヘック反応やクロスカップリング反応、カルボニル化反応等の炭素−炭素結合を形成する炭素間結合形成反応(以下、化学反応プロセスと記載する)の触媒として用いることができる。本発明のピンサー型錯体を化学反応プロセスにおけるピンサー型錯体触媒(ピンサー型金属錯体触媒)として用いる場合、固体状のピンサー型錯体を直接反応媒体中に添加してもよく、あるいは、固体状のピンサー型錯体を適当な溶媒に溶解した溶液として添加してもよい。また、上記ピンサー型錯体を担持する担持体に固定して用いてもよい。
【0095】
ピンサー型錯体を溶解する溶媒としては、ピンサー型錯体を溶解し得る溶媒であれば特に限定されないが、例えば、NMP(N-Methylpyrrolidinone)、DMF(N,N-Dimethylformaido)、THF、トルエン等の有機溶媒を挙げることができる。
【0096】
また、ピンサー型錯体を担持体に固定化する場合には、ピンサー型錯体のベンゼン環の4位の位置(一般式(1)等参照)に、上記担持体に対して固定化が可能な官能基を導入しておけばよい。ベンゼン環の4位の位置に置換基が導入されている場合には、該置換基に担持体に対して固定化が可能な官能基を導入すればよい。このような官能基としては、カルボン酸、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン等を挙げることができる。
【0097】
また、上記担持体としては、ピンサー型錯体のベンゼン環に導入された上記官能基と結合可能な官能基を有する担持体であればよい。具体的には、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン−ポリエチレングリコール共重合樹脂、ポリエチレングリコール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等にアミノ基又はアミノアルキル基を導入してなる樹脂や、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、ガラス等を用いればよい。
【0098】
また、上記担持体に担持されるピンサー型錯体の担持量は、ピンサー型錯体/担持体として、0.01mmol/g以上50mmol/g以下であることが好ましく、0.05mmol/g以上10mmol/g以下であることがより好ましい。担持量が0.01mmol/g未満であると、ピンサー型錯体を固定化した担持体の合成が困難となり、50mmol/gを超えると、担持体の物理的強度が低下して、好ましくない。
【0099】
このように、ピンサー型錯体を担持体に固定化して、ピンサー型錯体触媒として利用することにより、反応媒体中に含まれるピンサー型錯体を、担持体の回収と同時に一挙に回収することができるので、ピンサー型錯体の回収を容易に行うことができる。本発明のピンサー型錯体は、ピンサー型錯体触媒として用いられた後、回収して再利用することが可能である。従って、ピンサー型錯体を反応生成物と効率よくかつ好適に分離することができれば、化学反応プロセスにて排出される排出物を低減し、また、コストを削減することもできる。さらに、反応生成物の精製を容易に行うことも可能となる。
【0100】
本発明のピンサー型錯体触媒が用いられる化学反応プロセスのうち、上記ヘック反応は、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルと、オレフィンとの反応であり、例えば、前述した非特許文献1〜5に記載されている各種の反応を挙げることができる。また、クロスカップリング反応は、文献(『有機金属化合物−合成法と利用法−』、東京化学同人;『Metal-catalyzed Cross-coupling Reaction』、WILLY-VCH;『Handbook of Palladium-catalyzed Organic Reactions』、Academic Press)に記載されている反応を挙げることをできる。さらに、カルボニル化反応は、例えば、ハロゲン化アリールやハロゲン化アルキル等のCO挿入等によるカルボニル基又はカルボキシル基やアミド基等の形成反応である。
【0101】
上記の炭素間結合形成反応は、上記した各文献に記載の反応条件を適用すればよい。本発明のピンサー型錯体は、熱や酸素に対して安定性を示すため、炭素間結合形成反応を、高温の空気雰囲気下にて行った場合にも、触媒として好適に用いることができる。
【0102】
また、本発明のピンサー型錯体が不斉原子を有し、光学活性体である場合には、不斉合成反応の触媒としても好適に用いることができる。すなわち、所定のキラリティを有するピンサー型錯体を触媒として用いれば、100%の純度で所望するキラリティを有する反応生成物を得ることができる。上記不斉合成反応としては、上記非特許文献4に記載されている反応等を挙げることができる。
【0103】
上記の各化学反応プロセスにて、本発明のピンサー型錯体を触媒として用いる場合、その添加量は、反応物(基質)に対して、下限値が10-10mol%以上であることが好ましく、10-7mol%以上であることがより好ましい。また、上限値は10mol%以下であることが好ましく、2mol%以下であることがより好ましい。上記ピンサー型錯体の添加量が10-10mol%未満であると、上記化学反応プロセスの反応速度が低下するので好ましくなく、10mol%より多くなると、ピンサー型錯体の回収操作が煩雑となって好ましくない。
【0104】
また、本発明のピンサー型錯体は、触媒として、優れた触媒回転数(ターンオーバー数(TON)やターンオーバー周波数(turnover frequency;TOF))を示すため、上記化学反応プロセスを効率化することができる。また、上記化学反応プロセスの終了後、ピンサー型錯体を回収すれば、再度上記化学反応プロセスの触媒として利用することができる。
【0105】
また、本発明のピンサー型錯体は、上記化学反応プロセスにおける触媒としての用途以外に、ガスセンサやスイッチング素子としての利用が期待される。すなわち、ピンサー型錯体の中心金属にガスが配位して、ピンサー型錯体の配位数が変化すると、ピンサー型錯体の色が変化する。ピンサー型錯体へのガスの配位は可逆的に生じるため、ピンサー型錯体の色の変化を検知すれば、該ピンサー型錯体をガスセンサとして利用することができる可能性がある。ピンサー型錯体に配位可能なガスとしては、二酸化硫黄,三酸化硫黄等の硫黄酸化物;硫化水素,メチルサルファイド等の硫黄化合物;亜酸化窒素,一酸化窒素,二酸化窒素等の窒素化合物;アンモニア,メチルアミン等のアミン類;ダイオキシン類;塩化水素等の含塩素化合物;一酸化炭素等を挙げることができる。
【0106】
また、種々の酸化数を有する遷移金属を中心金属として有するピンサー型錯体の場合、中心金属の酸化数の変化により酸化還元的な挙動を得ることができると考えられる。従って、酸化還元的な挙動を有する配位子を用いて、2つのピンサー型錯体をベンゼン環の4位の位置で連結し、2核錯体とすれば、この2つのピンサー型錯体が酸化還元的に相互作用して、2核錯体としての構造が変化する。酸化還元の挙動は可逆的に生じるので、この構造変化を利用すれば、本発明のピンサー型錯体をスイッチング素子として利用することができる可能性がある。本発明のピンサー型錯体をスイッチング素子として利用する場合には、中心金属として、Ru,Rh等の遷移金属を用いることが好ましい。
【0107】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
〔実施例1〕
以下の手順にて、本発明のピンサー型金属錯体である、クロロ(2,6−ビス[(3S,7aS)−2−フェニルヘキサヒドロ−1H−ピロロ[1,2−c]イミダゾール−1−オン−3−イル]フェニルパラジウム錯体(後述のピンサー型錯体(F))を得た。
【0109】
<芳香族化合物の調製>
下記反応式(7)の反応を行って、芳香族化合物(4−t−ブチル−2,6−ジホルミルフェニルトリフルオロメタンスルホン酸エステル)(C)を得た。
【0110】
【化10】
Figure 0004413507
【0111】
なお、上記反応式(7)中のTfは、トリフルオロメタンスルホニル基(CF3SO2−)を表す。
【0112】
すなわち、文献(Lindoy,L.F.等、Synthesis、p.1029、1998年)に記載の手法に従って、下記反応式(7)に示されるフェノール誘導体(2−ヒドロキシ−5−t−ブチル−1,3−ベンゼンジカルボキシアルデヒド)(A)を調製し、該フェノール誘導体(A)1.72g(8.34mmol)をジクロロメタン(CH2Cl2)50mLに溶解し、ピリジン1.20mL(14.8mmol)を加えた後、0℃まで冷却した。続いて、この冷却した溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(B)を10分間かけて滴下した後、室温で30分間撹拌して反応混合物を得、該反応混合物を0℃に冷却して、塩酸(1.5M)を40mL加えた。
【0113】
次いで、有機層を分離し、水層の抽出を、ジクロロメタンを各30mLずつ用いて2回行った後、抽出液を先に分離した有機層に合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、さらにシリカゲルを用いて濾過した。また、濾過に用いたシリカゲルをジクロロメタン100mLで洗浄した。上記濾過によって得られた濾液と、上記シリカゲルの洗浄によって得られた洗液とを混合して減圧濃縮し、得られた残渣を、ヘキサンを用いて再結晶し、白色結晶を収量2.63g(収率:93%)にて得た。
【0114】
得られた白色結晶を重水素化クロロホルムCDCl3に溶解し、TMS(テトラメチルシラン)を基準として、1H−NMR測定(500MHz)及び13C−NMR測定(126MHz)を行った。その結果を表1及び表2に示す。なお、表中のsはスペクトルのピークが一重線であることを示し、qはスペクトルのピークが四重線であることを示す。
【0115】
【表1】
Figure 0004413507
【0116】
【表2】
Figure 0004413507
【0117】
また、上記白色結晶について、質量分析計(6890 GC system with 5973 Mass Selective Detector、Hewlett Packard社製)を用いて質量分析を行った結果、m/zが338(M+)であった。さらに、元素分析装置(MT-6、ヤナコ分析工業社製)を用いて元素分析を行った結果、C:H:S=45.89:3.87:9.64であることが分かった。元素分析によって得られた結果は、芳香族化合物(C)の化学式C131335Sから計算される結果C:H:S=46.15:3.87:9.48にほぼ一致した。
【0118】
以上の結果より、得られた白色結晶は、芳香族化合物(C)であることが確認できた。
【0119】
<芳香族環−遷移金属化合物の調製>
下記反応式(8)の反応を行って、芳香族環−遷移金属化合物(トランス−クロロ(4−t−ブチル−2,6−ジホルミルフェニル)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム)(D)を得た。
【0120】
【化11】
Figure 0004413507
【0121】
なお、上記反応式(8)中のPhは、フェニル基(C65−)を表す。
【0122】
すなわち、上記にて得られた芳香族化合物(C)を2.03g(6.00mmol)と、遷移金属含有化合物であるトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム付加体Pd2(dba)3・CHCl3(dba;ジベンジリデンアセトン)を3.11g(3.00mmol)と、トリフェニルホスフィン3.15g(12.0mmol)とを、ジクロロメタン60mLに溶解し、窒素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、塩化リチウム2.73g(64mmol)、及び、アセトン−水(10:1)混合液60mLを加えて室温で10時間撹拌した後、減圧濃縮を行って得られた残渣をクロロホルムに溶解した。該クロロホルム溶液の有機層を、50mLの水で2回洗浄し、続いて50mLの飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、さらに減圧濃縮を行った。析出した固体を、アセトニトリルを用いて再結晶し、黄色結晶を収量4.71g(収率:92%)にて得た。
【0123】
得られた黄色結晶を重水素化クロロホルムCDCl3に溶解し、TMSを基準として、1H−NMR測定(500MHz)及び13C−NMR測定(126MHz)を行った。その結果を表3及び表4に示す。また、31P−NMR測定(202MHz)を行い、化学シフト21.0ppmに、一重線のピークを確認した。なお、表中のs,d,tはそれぞれ、スペクトルのピークが一重線,二重線,三重線であることを示す。
【0124】
【表3】
Figure 0004413507
【0125】
【表4】
Figure 0004413507
【0126】
また、上記黄色結晶について、前述した元素分析装置を用いて元素分析を行った結果、C:H:N=66.81:5.21:1.03であることが分かった。元素分析によって得られた結果は、芳香族環−遷移金属化合物(D)の化学式C4843ClO22Pd・CH3CNから計算される結果C:H:N=66.97:5.17:1.56にほぼ一致した。
【0127】
以上の結果より、得られた黄色結晶は、芳香族環−遷移金属化合物(D)であることが確認できた。
【0128】
<ピンサー型錯体の調製>
下記反応式(9)の反応を行って、ピンサー型錯体(F)を得た。
【0129】
【化12】
Figure 0004413507
【0130】
すなわち、上記にて得られた芳香族環−遷移金属化合物(D)1.71g(2.00mmol)と、アミノ酸であるL−プロリンから文献(Uozumi,Y.等、Tetrahedron Lett.、42巻、p.407、2001年)に従って調製したアミド化合物であるアニリド((S)−2−アニリノカルボニルピロリジン)(E)3.80g(20.0mmol)とを、アセトニトリル60mLに懸濁させた。この懸濁液を酸素雰囲気下で94時間加熱還流し、冷却後、反応溶液を減圧濃縮して残渣を得た。この残渣にメタノール−エーテル混合液を加え、薄黄色粉末を沈殿として得、該沈殿物を濾過した。この沈殿物を、薄層クロマトグラフィー(TLC)で洗液にアニリド(E)が検出されなくなるまでエーテルで洗浄した後、真空乾燥して、薄黄色固体を収量1.33g(収率:98%)にて得た。
【0131】
得られた薄黄色固体を重水素化クロロホルムCDCl3に溶解し、TMSを基準として、1H−NMR測定(500MHz)及び13C−NMR測定(126MHz)を行った。その結果を表5及び表6に示す。なお、表中のmは、スペクトルのピークが多重線であることを示し、s,dは上記したとおりである。
【0132】
【表5】
Figure 0004413507
【0133】
【表6】
Figure 0004413507
【0134】
また、上記薄黄色固体について、前述した元素分析装置を用いて元素分析を行った結果、C:H:N=60.30:5.74:8.03であることが分かった。元素分析によって得られた結果は、ピンサー型錯体(F)の化学式C3437ClN42Pdから計算される結果C:H:N=60.45:5.52:8.29にほぼ一致した。
【0135】
さらに、上記薄黄色固体をジクロロメタンに溶解し、旋光光度計(p-1020、日本分光社製)を用いて旋光度を測定した結果、[α]D 24=−161(c1.0)であり、光学活性であることが分かった。
【0136】
また、上記薄黄色固体について、X線構造解析を行った結果を表7及び図1に示す。
【0137】
【表7】
Figure 0004413507
【0138】
以上の結果より、得られた薄黄色固体は、ピンサー型錯体(F)であることが確認できた。
【0139】
また、得られたピンサー型錯体(F)を140℃の温度条件下で24時間放置したが、配位子の脱離や、ピンサー型錯体(F)の分解は見られず、該ピンサー型錯体(F)が安定性に優れていることが分かった。
【0140】
〔実施例2〜13〕
実施例1にて得られたピンサー型錯体(F)を用い、下記反応式(10)の反応を行った。
【0141】
【化13】
Figure 0004413507
【0142】
なお、上記反応式(10)中のR8及びX2は、表8に示すとおりである。
【0143】
すなわち、反応容器に、ハロゲン化ベンゼン(G)0.1molと、オレフィン(H)0.13molと、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)0.11mol(9.24g)と、NMP(N-Methylpyrrolidinone)50mLとを入れ、さらに、0.1mMのピンサー型錯体(F)のNMP溶液を上記ハロゲン化ベンゼン(G)に対して、表8に示す触媒量で添加し、アルゴン雰囲気下で、上記反応容器を密栓し、140℃で22時間加熱した後、冷却した。次いで、この反応混合液に水500mLを加え、250mLのエーテルで3回抽出を行って、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル混合液を溶媒として使用)で精製することにより、化合物(J)を得た。
【0144】
【表8】
Figure 0004413507
【0145】
得られた化合物(J)の収率を表8に示す。また、上記反応式(10)の反応で使用したピンサー型錯体(F)の触媒回転回数TON及びTOFを表8に示す。
表8に示されるように、実施例2〜7では、化合物(J)が80%以上の高い収率で得られているため、反応物であるハロゲン化ベンゼン(G)がほぼ完全に反応していると考えられる。それゆえ、TONは1000万回転未満となっている。しかしながら、実施例8・9では、1000万回転以上の優れたTONを示すことが確認されている。特に実施例9では、化合物(J)の収率が50%であり、反応物であるハロゲン化ベンゼン(G)が全て反応していないと考えられる条件下にて、TONが約5億回転となっていることから、上記ピンサー型錯体(F)が、従来のピンサー型錯体よりも優れた触媒活性を示すことが分かる。
【0146】
従って、実施例10〜13にて行った反応においても、優れたTONが得られる可能性があると考えられる。
【0147】
〔実施例14〜17〕
上記実施例2〜5で行った反応を、アルゴン雰囲気下ではなく空気中で行った以外は、上記実施例2〜5と同様の操作を行った。その結果、上記ピンサー型錯体(F)の触媒活性は、実施例2〜5とほぼ同じであることが分かった。
【0148】
この結果から、上記ピンサー型錯体(F)は、空気(酸素)に対して、安定であることが分かる。
【0149】
〔実施例18〜24〕
実施例1にて得られたピンサー型錯体(F)を用い、下記反応式(11)の反応を行った。
【0150】
【化14】
Figure 0004413507
【0151】
上記反応式(11)中のR9は、表9に示すとおりである。
【0152】
【表9】
Figure 0004413507
【0153】
なお、実施例2で用いたハロゲン化ベンゼン(G)に代えて、ヨウ化アリール(K)を用い、ピンサー型錯体(F)の触媒量を10-4mol%とした以外は、実施例2と同様の操作手順で上記反応を行った。化合物(M)の収率、上記反応におけるピンサー型錯体(F)のTON及びTOFは、表9に示すとおりである。
【0154】
【発明の効果】
本発明のピンサー型金属錯体は、以上のように、芳香族環を構成する1位の炭素が遷移金属に結合するとともに、この1位の炭素に対してオルト位にある上記芳香族環の2位及び6位の炭素にはそれぞれ、環骨格を構成する少なくとも1つの原子が窒素原子である複素環構造を少なくとも1つ含む縮合複素環からなる多環式置換基が結合してなり、この多環式置換基が有する窒素原子が上記遷移金属に結合している構造を有している。
【0155】
本発明のピンサー型金属錯体は、熱や水、空気や酸素等に対して優れた安定性を示し、常温常圧の空気雰囲気下においても、その特性や諸物性を損なうことがなく保存することができ、取扱いが容易である。
【0156】
また、本発明のピンサー型金属錯体は、ヘック反応やクロスカップリング反応等の炭素−炭素結合を形成する炭素間結合形成反応の触媒として用いた場合に、優れた触媒回転回数を示す。それゆえ、化学反応プロセスを効率化するという効果を奏する。また、上記ピンサー型金属錯体は、化学反応プロセスの終了後回収すれば、触媒として再利用することができるので、排出物の低減に役立つと考えられる。
【0157】
また、本発明のピンサー型金属錯体の製造方法は、芳香族環を構成する1位の炭素に結合するように、この芳香族環に遷移金属原子を導入して芳香族環−遷移金属化合物を形成するステップと、上記1位の炭素に対してオルト位にある2位及び6位の炭素に結合するように、かつ、遷移金属原子と結合するように、上記芳香族環−遷移金属化合物にカルボニル化合物を導入するステップとを含む方法である。
【0158】
それゆえ、多種多様な配位子を有するピンサー型金属錯体を製造する場合、配位子を調製して金属との錯形成を行う従来公知の製造方法に比べて、製造工程数を低減することができるという効果を奏する。また、本発明のピンサー型金属錯体の製造方法を用いれば、従来公知の製造方法では製造することができなかった、立体的に嵩高い配位子を有するピンサー型金属錯体を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例にて調製した本発明にかかるピンサー型錯体のX線構造解析によって得られた結晶構造図である。

Claims (7)

  1. 式(1)
    Figure 0004413507
    …… (1)
    で示される構造を有することを特徴とするピンサー型金属錯体。
  2. トランス−クロロ(4−t−ブチル−2,6−ジホルミルフェニル)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと、アニリド((S)−2−アニリノカルボニルピロリジン)とを反応させることを特徴とするピンサー型金属錯体の製造方法。
  3. 上記トランス−クロロ(4−t−ブチル−2,6−ジホルミルフェニル)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムは、4−t−ブチル−2,6−ジホルミルフェニルトリフルオロメタンスルホン酸エステルに、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム付加体Pd (dba) ・CHCl (dba;ジベンジリデンアセトン)と、トリフェニルホスフィンとを反応させて得られることを特徴とする請求項2記載のピンサー型金属錯体の製造方法。
  4. 上記4−t−ブチル−2,6−ジホルミルフェニルトリフルオロメタンスルホン酸エステルは、2−ヒドロキシ−5−t−ブチル−1,3−ベンゼンジカルボキシアルデヒドと、トリフルオロメタンスルホン酸無水物とを反応させて得られることを特徴とする請求項3記載のピンサー型金属錯体の製造方法。
  5. L−プロリンから上記アニリド((S)−2−アニリノカルボニルピロリジン)を得ることを特徴とする請求項2ないし4の何れか1項に記載のピンサー型金属錯体の製造方法。
  6. 請求項1記載のピンサー型金属錯体を含んでなることを特徴とするピンサー型金属錯体触媒。
  7. ヘック反応、クロスカップリング反応、不斉合成反応の触媒として用いることを特徴とする請求項6記載のピンサー型金属錯体触媒。
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