JP4410443B2 - 防汚染性被膜形成品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚染性を有する防汚染性被膜形成品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、4官能アルコキシドの加水分解物及び部分加水分解物と無機フィラーを用いた被膜やシリコーンレジンを主成分とし、光触媒(光半導体)を含有する被膜は、水に対する接触角が小さく、防汚効果が期待できるため、各種基材に適用されている。
【0003】
また、光半導体は、励起波長(例えば400nm)の光(紫外線)の照射を受けると、活性酸素が発生し、活性酸素は、有機物を酸化して分解することができるため、光半導体を基材の表面にコーティングした材料には、その表面に付着したカーボン系汚れ成分(例えば、自動車の排気ガス中に含まれるカーボン溜分や、タバコのヤニ等)を分解する自己洗浄効果、アミン化合物、アルデヒド化合物に代表される悪臭成分を分解する消臭効果、大腸菌、黄色ブドウ球菌に代表される菌成分の発生を防ぐ抗菌効果、防かび効果等が期待される。
【0004】
また、光半導体を基材の表面にコーティングした材料に、紫外線が照射されると、光半導体がその光触媒作用で、空気中の水分又は該材料表面に付着した水分を水酸化ラジカル化し、この水酸化ラジカルが、水をはじく有機物等を(該材料表面に付着したものと該材料表面中に含まれるもの)を分解除去することにより、該材料表面の水に対する接触角が低下して該材料表面が水に濡れやすく(馴染みやすく)なるという親水性(水濡れ性)の向上効果もある。この親水性向上から、屋内の部材においては、ガラスや鏡が水滴で曇りにくくなる防曇効果が期待され、屋外部材においては、付着した汚れが雨水によって洗浄される防汚効果が期待される。また、光半導体を基材表面にコーティングした材料は、光半導体の光触媒作用による帯電防止機能もあり、この機能によっても防汚効果が期待される。
【0005】
上記の従来技術では、シリコンレジンが主に4官能から構成されている場合、あるいは光半導体を含む被膜においては被膜表面が親水性となり、水に対する接触角が小さく、5°以下となり、雨水等が被膜表面にあたり、これにより従来は防汚効果が期待できると考えられていた(例えば特許第2756474号公報、特許第2924902号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、被膜表面にあたる水量が少ない場合には、防汚効果が現れず、また雨筋が線状に現れて、逆に汚れが際だつ場合があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、被膜表面にあたる水量が少ない場合にも防汚染性を維持し、且つ被膜表面にあたる水量が多い場合でも、高い防汚染性を維持することができる防汚性被膜形成品を提供することを目的とするものある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る防汚染性被膜形成品は、基材表面に被膜が形成された被膜形成品であって、前記被膜が、4官能加水分解性オルガノシランの部分加水分解物と全加水分解物のうち少なくともいずれかのみからなるシリコーン樹脂と、コロイダルシリカとを含有する被膜形成用の組成物にて形成されたものであり、屋外曝露条件においてこの被膜表面の水に対する接触角が5〜30°の範囲を三ヶ月以上維持し、平均表面粗さが5nm以下であることを特徴とするものである。
【0009】
また請求項2の発明は、請求項1において、前記被膜表面の水に対する接触角が8〜25°であることを特徴とするものである。
【0011】
また請求項の発明は、請求項1又は2において、被膜形成用の組成物中に、有機ジルコニウムを含有して成ることを特徴とするものである。
【0012】
また請求項の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、被膜形成用の組成物中に、光半導体を含有して成ることを特徴とするものである。
【0013】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、被膜形成用の組成物中に、光半導体を含有し、この被膜形成用の組成物中において、シリコーン樹脂の縮合物換算した固形分量と、コロイダルシリカ中の固形分としてのシリカとの総質量1に対する光半導体の配合質量比を、0.01以上0.4未満として成ることを特徴とするものである。
【0014】
また請求項6の発明は、請求項5において、被膜形成用の組成物中に、有機ジルコニウムをZrO2換算で、組成物中の全固形分100質量部に対して0.1〜10質量部含有して成ることを特徴とするものである。
【0015】
また請求項7の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、被膜形成用の組成物中において、シリコーン樹脂の縮合物換算した固形分量1に対する光半導体の配合質量比を、0.01以上0.4未満とし、被膜形成用の組成物中に、有機ジルコニウムをZrO2換算で、組成物中の全固形分100質量部に対して0.1〜10質量部含有して成ることを特徴とするものである。
【0016】
また請求項の発明は、請求項1乃至のいずれかにおいて、ガラス製の基材に被膜を形成して成ることを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
本発明は、基材表面に被膜が形成された被膜形成品であって、この被膜を、被膜表面の水に対する接触角が5〜30°となり、且つ平均表面粗さが5nm以下となるように形成したものであり、屋外曝露条件において降雨に曝されても、基材の垂直面に形成された被膜が三ヶ月以上、好ましくは一年以上、上記接触角の範囲を維持するように形成するものである。このとき、本発明の防汚染性向上の効果に影響が生じないような多少の期間であれば、接触角が上記範囲から外れても構わないものであり、上記期間の80%以上の期間において、接触角が維持されていれば良いものである。
【0019】
このため、本発明の被膜形成品では、乾燥状態において被膜に空気中の砂塵等の汚染物質が付着した後に降雨に曝された場合などに、被膜表面への水分の付着量が多いときには被膜表面に水の膜が形成されて汚染物質が洗い流され、被膜表面が汚染されにくいようにすることができる。また水分の付着量が少ない場合は、被膜表面に水滴が付着することによって被膜表面の汚染物質が水滴の外縁に局在化し、乾燥後の被膜表面に雨筋状の汚れが付着した外観となるおそれがあるが、このような場合でも、被膜表面において水滴が広がりすぎないようにして水滴の乾燥速度が速くなりすぎないようにすることにより、水滴の乾燥による汚染物質の残存量を低減することができ、また水滴が流れない場合であっても水滴が広がらないことから、乾燥後の被膜表面には鱗状あるいは雨筋状のうっすらとした汚染物質の局在化が生じるのみで、明確な汚れとしては認識されないようになるものである。
【0020】
ここで、上記の接触角が5°に満たないと、被膜に対する水の付着量が少ない場合には、被膜表面において水滴が大きく広がった状態で付着して、水滴が流れる場合には図2(b)に示すような濃い雨筋状の汚れが形成されることとなり、また水滴が流れない場合には図2(a)に示すような大径の鱗状の汚れが形成され、この汚れは大きく広がった水滴の領域の汚染物質が外縁に局在化することから、汚れが局在化している箇所としていない箇所とでの汚染物質の量の差が大きくなってコントラストが明確となり、明確な汚れとして認識されてしまうものである。また上記の接触角が30°を超えると、被膜に対する水分の付着量が多い場合であっても被膜表面に水の膜が形成されなくなって、被膜表面に付着した汚染物質が洗い流されることなく堆積してしまい、被膜表面の汚れが悪化してしまうものである。特にこの上記の接触角を8〜25°の範囲となるようにすると、特に良好な結果が得られる。
【0021】
また上記の平均表面粗さが5nmを超えると、被膜表面に汚染物質が付着しやすくなって、被膜表面に水分が付着した場合には乾燥後に残存する汚染物質によるコントラストが明確となり、また被膜表面に水の膜が形成されても汚染物質は被膜表面の凹凸に引っかかって流れにくくなり、防汚性が悪化するものである。この被膜表面の平均表面粗さの下限は特に制限されず、上記の範囲で水に対する接触角が維持されるならば、平均表面粗さがより小さい方が望ましい。
【0022】
このような被膜の成分に関しては、屋外において使用する場合は耐久性や接触角の維持等が要求されるため、シリコーン樹脂からなる被膜を形成する
【0023】
膜形成用の組成物中におけるシリコーン樹脂の形態は特に制限されず、溶液状のものでも分散液状(コロイド状)のものでも良い。またこのシリコーン樹脂は、加水分解性オルガノシランの部分加水分解物と全加水分解物のうち少なくともいずれかからなるものであり、且つケイ素原子に四個の反応性置換基(加水分解性置換基)を有する4官能加水分解性オルガノシランを用いるものであり、このようにすると被膜に適度の親水性を付与して水に対する接触角を維持できると共に被膜に充分な硬度を付与することができる。4官能加水分解性オルガノシランとしては、例えば下記化学式(1)に示されるような4官能性オルガノアルコキシシランを挙げることができる。
【0024】
Si(OR14 (1)
上記式中のアルコキシル基「OR1」中の官能基「R1」は、一価の炭化水素基であれば特に制限されないが、炭素数1〜8の一価の炭化水素基が好適であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基を挙げることができる。この炭化水素基のうち、炭素数が3以上のものについては、n−プロピル基、n−ブチル基、等のような直鎖状のものであっても良いし、またイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等のように分岐を有するものであっても良い。またアルコキシル基「OR1」は、一つの分子中において、複数種のものがケイ素原子に結合していても良い。また、上記のような4官能性オルガノアルコキシシランを部分加水分解物して得られるオルガノアルコキシシランを配合しても良い。
【0030】
被膜形成用の組成物(コーティング材)を調製するにあたっては、このような加水分解性オルガノシランを、水と混合した状態で加水分解することにより、部分加水分解物と全加水分解物の少なくともいずれかかならなるシリコーン樹脂が得られるものであり、また被膜形成時には、この被膜形成用の組成物を塗布し、加熱することによりシリコーン樹脂の縮重合反応により硬化して、成膜されるものである。
【0031】
被膜形成用の組成物の調製時に加水分解性オルガノシランの加水分解のために配合される水の量としては、特には制限されないが、例えば加水分解性オルガノシランが有する加水分解性基(オルガノアルコキシシランの場合はアルコキシル基OR2)に対する水(H2O)のモル当量(H2O/OR2)が、好ましくは0.3〜5.0の範囲、より好ましくは0.35〜4.0の範囲、更に好ましくは0.4〜3.5の範囲となるようにするものである。この値が0.3に満たないと加水分解が充分に進行しなくなって硬化した被膜が脆くなるおそれがある。またこの値が5.0を超えると、得られるシリコーン樹脂が短時間でゲル化する傾向にあるために貯蔵安定性が低下するおそれがある。
【0032】
またこの加水分解時には必要に応じて触媒が用いられる。この触媒は特には制限されないが、製造工程にかかる時間を短縮するためには、酸性触媒を用いることが好ましく、例えば酢酸、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、蟻酸、プロピオン酸、グルタール酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、塩酸、硝酸、ハロゲン化シラン等の無機酸、酸性コロイダルシリカ、酸性チタニアゾル等の酸性ゾル状フィラー等が挙げられ、このような酸性触媒を、一種又は二種以上用いることができる。またこの加水分解は、必要に応じて、例えば40〜100℃に加熱した状態で行っても良い。
【0033】
オルガノアルコキシシランの加水分解は、必要に応じ、水と共に適当な溶媒で希釈して行っても良い。このときの希釈溶媒としては、特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチルグリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体類、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体類、及びジアセトンアルコール等の親水性有機溶媒を挙げることができ、これらの希釈溶媒を、一種のみ用いるほか、二種以上を併用することができる。
【0034】
また希釈溶媒としては、上記の親水性有機溶媒と併用して、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム等を一種又は二種以上用いることができる。
【0035】
オルガノアルコキシシランの全加水分解物又は部分加水分解物からなるシリコーン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、ポリスチレン換算で500〜1000の範囲であることが好ましく、重量平均分子量がこの範囲に満たないと、加水分解物が不安定となるおそれがあり、重量平均分子量がこの範囲を超えると被膜が充分な硬度を保てなくなるおそれがある。
【0036】
また、被膜形成用の組成物中に無機フィラーを添加することにより、被膜中に無機フィラーを含有させることができる。この無機フィラーとしては、シリカを使用する。この無機フィラーの固形分の総添加量は、シリコーン樹脂の縮合物換算した固形分量1に対する配合質量比が0.1〜9であることが好ましい。
【0037】
のシリカを被膜形成用の組成物中に配合するにあたっては、ゾル状のもの(コロイダルシリカ)を配合する。コロイダルシリカを配合する場合には、特に制限されないが、例えば水分散性コロイダルシリカあるいはアルコール等の親水性有機溶媒分散性コロイダルシリカが使用できる。一般にこのようなコロイダルシリカは、固形分としてのシリカを20〜50質量%含有しており、この値から、シリカ配合量を決定できる。
【0038】
このように被膜形成用の組成物中に上記のようなシリコーン樹脂を含有させると共にこの組成物中にコロイダルシリカを含有させると、親水性の高いコロイダルシリカによって被膜表面の親水性を維持することにより、被膜の水に対する接触角を長期に亘って所定の範囲に維持することが容易となるものである。また、被膜の硬度を向上させ、更に表面平滑性と耐クラック性を改善させることもできるものである。このときのコロイダルシリカのシリカ固形分の配合量は、シリコーン樹脂の組成にもよるが、シリコーン樹脂の縮合物換算した固形分量1に対する配合質量比が0.01〜9であることが好ましいものであり、配合量がこの範囲に満たないと被膜に対する適度な親水性の維持効果が弱くなるおそれがあり、またこの範囲を超えて添加すると被膜強度が極端に低下するおそれがある。
【0039】
た、水分散性コロイダルシリカ中に分散媒として存在する水を、加水分解性オルガノシランの加水分解に使用することができる。すなわち、被膜形成用の組成物の調製時に、加水分解性オルガノシランと水分散性コロイダルシリカとを配合すると、分散媒である水は加水分解性オルガノシランを加水分解してシリコーン樹脂を生成させるために使用され、シリコーン樹脂を含有する被膜形成用の組成物が調製できる。またこの加水分解時には、コロイダルシリカが酸性触媒として作用する。
【0040】
水分散性コロイダルシリカは、通常、水ガラスから得られるが、市販品として容易に入手することができる。
【0041】
また、有機溶媒分散性コロイダルシリカは、前記の水分散性コロイダルシリカの水を有機溶媒と置換することで、容易に調製することができる。このような有機溶媒分散性コロイダルシリカも、市販品として容易に入手できる。有機溶媒分散性コロイダルシリカにおいて、コロイダルシリカが分散される有機溶媒の種類は特には制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体類、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体類、並びにジアセトンアルコール等といった、親水性有機溶媒を挙げることができる。これらの有機溶媒は、一種単独で用いるほか、二種以上を併用することもできる。
【0042】
この有機溶媒分散性コロイダルシリカを用いる場合にも、加水分解性オルガノシランの加水分解時に有機溶媒分散性コロイダルシリカを配合すると、コロイダルシリカが酸性触媒として作用するものである。
【0043】
また、これらの親水性有機溶媒に加えて、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム等を、一種又は二種以上用いることもできる。
【0044】
また、他の無機フィラーとしては、特に制限されないが、例えばアエロジル等の粉体状シリカ、光半導体等の無機酸化物等の無機フィラーを挙げることができる。これらは、耐溶剤性、耐酸性等の化学的安定性、シリコーン樹脂への分散性等の点から好ましい。これらのフィラーは一種単独で用いるほか、二種以上を併用しても良い。
【0045】
またフィラーとして光半導体を用いる場合には、光半導体効果による各種機能を得ることができると共に、被膜の水に対する接触角を所望の値に長時間維持させることができる。
【0046】
すなわち、光半導体は、励起波長の光(例えば波長400nmの紫外線)の照射を受けると水からスーパーオキシドイオンや水酸ラジカルなどの活性酸素を生成することが知られており、この活性酸素は有機物を酸化分解することができるため、被膜中に光半導体を含有させると、被膜が光半導体の励起波長の光の照射を受けた際に、空気中の水分や被膜表面に付着した水分から活性酸素が生成され、被膜表面に付着したカーボン系の汚染物質(例えば自動車の排気ガス中に含まれるカーボン留分や、タバコのヤニ等)を分解する自己洗浄作用、アミン化合物、アルデヒド化合物に代表される悪臭成分を分解する消臭作用、大腸菌、黄色ブドウ球菌に代表される菌成分の発生を防ぐ抗菌作用、あるいは防かび作用等が期待できる。また、このような光触媒作用によって、被膜から水をはじく有機物等(これは、被膜に付着したものと、被膜中に含まれているものとを含む)が分解除去されることにより、被膜表面の水に対する接触角を所定の値に長期間維持することが可能となる。特に、基材に被膜を形成した被膜形成品を屋外部材として用いると、被膜形成品の表面に雨水が付着した際に、その水分によって、上記のような光触媒効果による防汚性効果が期待できる。またこのような光半導体の光触媒作用により被膜表面にOH基が増加し、これによっても被膜表面の親水性が維持される。またこのように被膜表面が親水化することにより被膜の表面抵抗値が小さくなって、被膜が帯電防止機能を有することとなり、これによっても防汚作用が期待される。
【0047】
光半導体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化ニッケル、酸化レニウム等の単金属酸化物の他、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。これらのなかでも、上記の単金属酸化物を用いることが、実用的に容易に利用可能な点で好ましい。また単金属酸化物のなかでも、特に酸化チタンは、光触媒性能及び安全性が高く、入手が容易であり、またコストの面での優位性を有する点で、好ましい。尚、酸化チタンは結晶型がアナタース型(アナターゼ型)であるものを用いる方が、高い光触媒性能と、被膜形成時の高い硬化促進性能を有するものであり、しかも被膜の水に対する接触角を更に長期間維持することができると共に、分解性等の光触媒性能が短時間で発現するため、好ましい。これらの光半導体は一種のみを用いるほか、二種以上を併用することができる。また、これらの光半導体には、銀、銅、鉄、ニッケル等のような光半導体の電荷分離を促進する金属をドーピングしておくことが好ましい。尚、チタンアルコキシド等のような、最終的に光半導体の性質を有するものの原料となるものも配合することができる。
【0048】
光半導体を被膜形成用の組成物中に配合するにあたっては、粉末、微粒子粉末、溶液分散ゾル粒子等、組成物中に分散可能であれば、いかなる形態のものを配合しても良いが、溶液分散ゾル粒子等のゾル状のもの、特にpH7以下のゾル状のものであれば、被膜形成時の硬化をより短時間で進行させることができ、使用する上での利便性に優れるものである。ゾル状の光半導体を配合する場合には、使用される分散媒は、光半導体の微粒子を均一に分散させることができるものであれば特に制限されず、水単独、有機溶媒単独、水と有機溶媒の混合分散媒のいずれでも用いることができる。水と有機溶媒の混合分散媒を用いる場合は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪酸アルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコール誘導体類、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体類、ジアセトンアルコール等の一種又は二種以上の親水性有機溶媒と水との混合分散媒を用いることができる。このような混合分散媒を用いる場合には、特に水−メタノール混合分散媒を用いると、光半導体微粒子の分散安定に優れ、且つ、溶剤形成時の分散媒の乾燥性に優れる点で好ましい。また、このように水単独、あるいは水と有機溶媒の混合分散媒で、かつ酸性安定のゾル状の光半導体を用いると、このゾル状の光半導体を加水分解性オルガノシランの加水分解のための酸性触媒として利用すると共に、分散媒として存在する水を、加水分解性オルガノシランの加水分解に使用することができる。すなわち、被膜形成用の組成物の調製時に、加水分解性オルガノシランとゾル状の光半導体とを配合すると、分散媒である水は加水分解性オルガノシランを加水分解するために利用されると共に、この加水分解が酸性触媒としてのゾル状の光半導体によって促進されて、加水分解性オルガノシランの部分加水分解物又は全加水分解物が生成されるものである。
【0049】
また有機溶媒単独のゾル状の光半導体を配合する場合には、使用される有機溶媒単独の分散媒は特に制限されないが、例えば上記の水と有機溶媒の混合分散媒系のゾル状の光半導体に使用される親水性有機溶媒の分散媒や、トルエン、キシレン等の疎水性有機溶媒等のうちの、一種又は二種以上を用いることができる。これらの有機溶媒の分散媒のうち、特にメタノールを用いると、光半導体微粒子の分散安定に優れ、且つ、溶剤形成時の分散媒の乾燥性に優れる点で好ましい。
【0050】
また、特に被膜形成用の組成物中に有機ジルコニウムを添加することにより、被膜中に有機ジルコニウムを含有させると、被膜の水に対する接触角を調整してこの接触角が5〜30°、好ましくは8〜25°となるようにすることができる。また、特に被膜形成用組成物中にシリコーン樹脂を含有させる場合には、この有機ジルコニウムを添加することにより、被膜形成時のシリコーン樹脂の縮合反応を促進し、被膜中の架橋密度を向上したり、被膜と基材との密着性を向上したりする効果や、被膜に疎水性、耐水性、耐アルカリ性を付与する効果も得られる。
【0051】
この有機ジルコニウムとしては、特に限定されるものではないが、例えば次の化学式(10)に示されるものを用いることができる。
【0052】
ZrOn3 m(OR1p (10)
(m,pはpは0〜4の整数、nは0又は1、n=0の場合はm+p=4、n=1の場合はm+p=2)
上記式中のアルコキシル基「OR1」中の官能基「R1」は、式(1)(2)におけるものと同様のものである。また式中の「R3」は、例えばC572であるもの(アセチルアセトネート錯体)や、C693であるもの(エチルアセトアセテート鎖体)が挙げられる。また「OR1」、「R3」としては、一つの分子中に複数種のものが存在していてもよい。特に有機ジルコニウムとして、Zr(OC493(C572)及びZr(OC492(C572)(C693)のうちの少なくともいずれかを用いると、被膜の強度を一層向上することができるものであり、例えば被膜形成時の温度が比較的低温である100℃程度であっても、300℃における硬化温度に相当する被膜強度が得られる。この有機ジルコニウムの添加量は、ZrO2換算で、被膜形成用の組成物中における固形分全量に対して0.1〜10質量%とすることが好ましい。
【0053】
また、既述の光半導体の固形分量の配合量は、シリコーン樹脂の組成にもよるが、シリコーン樹脂の縮合物換算した固形分量と、コロイダルシリカ中の固形分としてのシリカとの総質量1に対する配合質量比が0.01以上、0.4未満であることが好ましいものであり、配合量がこの範囲に満たないと充分な光触媒作用が得られなくなるおそれがあり、またこの範囲を超えて添加すると被膜表面の水に対する接触角が5°未満となるおそれがあり、また被膜の透明性が失われたり被膜の強度が極端に低下したりするおそれがある。
【0054】
また、より好ましくは、光半導体の固形分量の配合量は、コロイダルシリカを除くシリコーン樹脂の縮合物換算した固形分量1に対する配合質量比が0.01以上、0.4未満となるようにすることが好ましい。配合量がこの範囲に満たないと充分な光触媒作用が得られなくなるおそれがあり、またこの範囲において特に優れた被膜強度が得られるものであって、この範囲を超えて添加すると被膜強度が低下する傾向があり、使用用途が限定される場合がある。
【0055】
また、このような配合量で光半導体を配合する場合に、更に有機ジルコニウムを添加すると共に、この有機ジルコニウムの添加量をZrO2換算で、被膜形成用の組成物中における固形分全量に対して0.1〜10質量%となるようにすると、更に接触角の維持効果が高くなって、好ましいものであり、添加量がこの範囲に満たないと上記のような効果が充分に得られないおそれがあり、またこの範囲を超えて添加すると被膜形成時に被膜形成組成物のゲル化や凝集が生じて被膜形成が困難となるおそれがある。
【0056】
上記のような各種のフィラーを被膜形成用の組成物中に分散させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホモジナイザー、ディスパー、ペントシェイカー、ビーズミル等を用いた通常の各種分散法を用いることができる。
【0057】
被膜形成による防汚性の向上の効果は、透明部材からなる基材に被膜を形成する場合に特に効果が発揮されるものであり、特にガラス製の基材を用いると、被膜形成温度の選択範囲の幅が大きくなって低温から高温まで選択でき、被膜強度の向上が容易となるものである。またガラス製のもの以外としては、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等からなる基材を用いることができる。
【0058】
基材に被膜を形成するにあたっては、被膜の形成に先立って、被膜が均一に塗装できるようにしたり、あるいは被膜と基材との密着性を向上するために、前処理(前洗浄)を施すことが好ましい。このような前処理としては、例えばアルカリ洗浄、フッ化アンモニウム洗浄、プラズマ洗浄、UV洗浄、酸化セリウム洗浄等が挙げられる。
【0059】
基材に対する被膜の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば刷毛塗り、スプレーコート、浸漬(ディッピング又はディップコートともいう)、ロールコート、フローコート、カーテンコート、ナイフコート、スピンコート、バーコート、蒸着、スパッタリング等の、通常行われる適宜の方法を選択することができる。特に、シリコーン樹脂を含む被膜形成用の組成物を用いる場合には、既述のように基材に対してこの被膜形成用の組成物を塗布し、必要に応じて加熱することにより、組成物中のシリコーン樹脂の縮重合反応により硬化して、成膜されるものである。
【0060】
また、被膜形成後に、被膜表面に水に対する接触角を5〜30°、好ましくは8〜25°にするための後処理を行っても良い。この後処理としては、蒸気処理、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理、研磨等が挙げられるが、特に限定されるものではない。そしてこれらの後処理において、処理時間や処理温度等の処理条件を変更させることにより、被膜表面の、水に対する接触角が5〜30°、好ましくは8〜25°となるようにするものである。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0062】
ここで、以下の記載において、特に断らない限りは「部」は「質量部」を、「%」は質量百分率を表す。また、分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したものであり、このとき測定機として東ソー株式会社製の型番「HLC8020」を用い、標準ポリスチレンで検量線を作成し、その換算値として測定したものである。また平均表面粗さは、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメント株式会社製の「ナノピクス1000」)を用いて測定したものである。
【0063】
参考例1)
テトラエトキシシラン208部にメタノール356部を加え、更に水18部及び0.01mol/Lの塩酸18部を混合し、ディスパーを用いて充分に混合した。次いで、得られた液を60℃の恒温槽中にて2時間加熱することにより、重量平均分子量が950のシリコーン樹脂を得た。
【0064】
このシリコーン樹脂に、フィラーとして酸化チタンゾル(分散媒:水、固形分量:21%、平均一次粒子径:20nm)を、縮合物換算したシリコーン樹脂の固形分1に対する酸化チタン固形分の配合質量比が0.39となるように添加し、固形分が1%となるようにメタノールで希釈して、被膜形成用の組成物を得た。
【0065】
この被膜形成用の組成物を1時間放置した後、ワイヤーバーコータ(No.10)にてガラス製の基材に塗布し、200℃で10分間焼成して被膜を形成した。
【0066】
この被膜が形成されたガラス基材の破断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、被膜の膜厚は100nmであった。また平均表面粗さは3.4nmであった。
【0067】
(実施例
参考例1と同様にして得られたシリコーン樹脂に対して、シリカゾル(分散媒:メタノール、粒径:10〜20nm、製造元:日産化学工業株式会社、品番:MA−ST)を、縮合物換算したシリコーン樹脂の固形分1に対するシリカ固形分の配合質量比が4.0となるように添加し、固形分が1%となるようにメタノールで希釈して、被膜形成用の組成物を得た。
【0068】
この被膜形成用の組成物を用いて、参考例1と同様にして、被膜が形成されたガラス基材を得た。
【0069】
この被膜が形成されたガラス基材の破断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、被膜の膜厚は100nmであった。また平均表面粗さは1.5nmであった。
【0070】
参考例2
参考例1と同様にして得られたシリコーン樹脂に対して、フィラーとして酸化チタンゾル(分散媒:水、固形分量:21%、平均一次粒子径:20nm)を、縮合物換算したシリコーン樹脂の固形分1に対する酸化チタン固形分の配合質量比が0.39となるように添加し、Zr(OC493(C572)を、ZrO2換算で組成物中の全固形分量に対する配合量が1%となるように添加し、更に固形分が1%となるようにメタノールで希釈して、被膜形成用の組成物を得た。
【0071】
この被膜形成用の組成物を用いて、参考例1と同様にして、被膜が形成されたガラス基材を得た。
【0072】
この被膜が形成されたガラス基材の破断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、被膜の膜厚は100nmであった。また平均表面粗さは3.0nmであった。
【0073】
(実施例
参考例1と同様にして得られたシリコーン樹脂に対して、フィラーとして酸化チタンゾル(分散媒:水、固形分量:21%、平均一次粒子径:20nm)と、シリカゾル(分散媒:メタノール、粒径:10〜20nm、製造元:日産化学工業株式会社、品番:MA−ST)とを、酸化チタン固形分1に対するシリカ固形分の配合質量比が0.5となると共に、縮合物換算したシリコーン樹脂の固形分1に対する全フィラー固形分の配合質量比が0.56となるように添加し、固形分が1%となるようにメタノールで希釈して、被膜形成用の組成物を得た。
【0074】
この被膜形成用の組成物を用いて、参考例1と同様にして、被膜が形成されたガラス基材を得た。
【0075】
この被膜が形成されたガラス基材の破断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、被膜の膜厚は100nmであった。また平均表面粗さは2.5nmであった。
【0076】
(実施例
参考例1と同様にして得られたシリコーン樹脂に対して、フィラーとして酸化チタンゾル(分散媒:水、固形分量:21%、平均一次粒子径:20nm)と、シリカゾル(分散媒:メタノール、粒径:10〜20nm、製造元:日産化学工業株式会社、品番:MA−ST)とを、酸化チタン固形分1に対するシリカ固形分の配合質量比が0.5となると共に、縮合物換算したシリコーン樹脂の固形分1に対する全フィラー固形分の配合質量比が0.56となるように添加し、Zr(OC493(C572)を、ZrO2換算で被膜形成用の組成物中に、組成物中の全固形分量に対する配合量が1%となるように添加し、更に固形分が1%となるようにメタノールで希釈して、被膜形成用の組成物を得た。
【0077】
この被膜形成用の組成物を用いて、参考例1と同様にして、被膜が形成されたガラス基材を得た。
【0078】
この被膜が形成されたガラス基材の破断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、被膜の膜厚は100nmであった。また平均表面粗さは2.6nmであった。
【0079】
(実施例
参考例1と同様にして得られたシリコーン樹脂に対して、シリカゾル(分散媒:メタノール、粒径:10〜20nm、製造元:日産化学工業株式会社、品番:MA−ST)を、縮合物換算したシリコーン樹脂の固形分1に対するシリカ固形分の配合質量比が1.5となるように添加し、固形分が1%となるようにメタノールで希釈して、被膜形成用の組成物を得た。
【0080】
この被膜形成用の組成物を用いて、参考例1と同様にして、被膜が形成されたガラス基材を得た。
【0081】
この被膜が形成されたガラス基材の破断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、被膜の膜厚は100nmであった。また平均表面粗さは1.5nmであった。
【0082】
(比較例1)
参考例1と同様にして得られたシリコーン樹脂に、フィラーとして酸化チタンゾル(分散媒:水、固形分量:21%、平均一次粒子径:20nm)を、縮合物換算したシリコーン樹脂の固形分1に対する酸化チタン固形分の配合質量比が1.0となるように添加し、固形分が1%となるようにメタノールで希釈して、被膜形成用の組成物を得た。
【0083】
この被膜形成用の組成物を用いて、参考例1と同様にして、被膜が形成されたガラス基材を得た。
【0084】
この被膜が形成されたガラス基材の破断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、被膜の膜厚は100nmであった。また平均表面粗さは4.5nmであった。
【0085】
(比較例2)
参考例1と同様にして得られたシリコーン樹脂に対して、シリカゾル(分散媒:メタノール、粒径:10〜20nm、製造元:日産化学工業株式会社、品番:MA−ST)を、縮合物換算したシリコーン樹脂の固形分1に対するシリカ固形分の配合質量比が1.0となるように添加し、固形分が1%となるようにメタノールで希釈して、被膜形成用の組成物を得た。
【0086】
この被膜形成用の組成物を用いて、参考例1と同様にして、被膜が形成されたガラス基材を得た。
【0087】
この被膜が形成されたガラス基材の破断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、被膜の膜厚は100nmであった。また平均表面粗さは1.6nmであった。
【0088】
(比較例3)
参考例1と同様にして得られたシリコーン樹脂に対して、フィラーとして酸化チタンゾル(分散媒:水、固形分量:21%、平均一次粒子径:20nm)と、シリカゾル(分散媒:水、粒径:40〜50nm、製造元:日産化学工業株式会社、品番:ST−OL)とを、酸化チタン固形分1に対するシリカ固形分の配合質量比が0.5となると共に、縮合物換算したシリコーン樹脂の固形分1に対する全フィラー固形分の配合質量比が0.67となるように添加し、固形分が1%となるようにメタノールで希釈して、被膜形成用の組成物を得た。
【0089】
この被膜形成用の組成物を用いて、参考例1と同様にして、被膜が形成されたガラス基材を得た。
【0090】
この被膜が形成されたガラス基材の破断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、被膜の膜厚は100nmであった。また平均表面粗さは8.1nmであった。
【0091】
(比較例4)
ガラス基材に対して、被膜形成を施さなかった。このガラス基材の平均表面粗さは1.0nm以下であった。
【0092】
以上の各実施例及び比較例の、被膜中における各成分の含有量を表1にまとめて示す。
【0093】
【表1】
Figure 0004410443
【0094】
(評価試験)
実施例1〜4、参考例1,2及び比較例1〜3で得られた被膜が形成されたガラス基材、並びに比較例4のガラス基材を、屋外に垂直に立てた状態で設置し、12ヶ月間曝露した。
【0095】
そして、これらの被膜が形成されたガラス基材並びに被膜が形成されていないガラス基材の、目視による汚染状況及び汚染の仕方の変化を観察し、次の評価基準により評価した。この結果を表2に示す。
【0096】
尚、表中において、小雨とは表面に水滴がかかる程度で水膜は形成されない程度の雨量をいい、大雨とは表面全体に水がかかって水膜が形成される程度の雨量をいう。
【0097】
・汚染状況
○:汚れていることが認識できない。
△:かすかに汚れている。
×:明らかに汚れている。
【0098】
・汚染の仕方
鱗状:汚れが図2(a)に示すような鱗状に形成された。尚、図2(a)は、比較例1において、12ヶ月後での外観を撮影した結果を示す。
雨筋:汚れが図2(b)に示すような雨筋状に形成された。尚、図2(b)は、比較例4において、12ヶ月後での外観を撮影した結果を示す)。
【0099】
【表2】
Figure 0004410443
【0100】
表2に示される結果のように、実施例1〜4、参考例1,2ではいずれも比較例1〜4よりも高い防汚染性を有するものであり、例えば参考例1では12ヶ月後の外観は図1に示すように汚れていることが認識できないものであるのに対して、比較例1では図2(a)に示すような鱗状の汚れが、比較例4では図2(b)に示すような雨筋状の汚れが現出して、明らかに汚れていると認識される外観となった
【0101】
また、参考例1並びに比較例1,3,4につき、上記の屋外曝露後、3ヶ月後と6ヶ月後のものについて、雨滴の付着の様子及び汚れの様子を詳しく観察した。この結果を表3に示す。
【0102】
【表3】
Figure 0004410443
【0103】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係る防汚染性被膜形成品は、基材表面に被膜が形成された被膜形成品であって、屋外曝露条件においてこの被膜表面の水に対する接触角が5〜30°の範囲を三ヶ月以上維持し、平均表面粗さが5nm以下であるため、被膜表面に付着する水の量の多少に係わらず優れた防汚性を有し、特に屋外に設置する場合に好適に用いることができるものである。
また、4官能加水分解性オルガノシランの部分加水分解物と全加水分解物のうち少なくともいずれかのみからなるシリコーン樹脂と、コロイダルシリカとを含有する被膜形成用の組成物にて被膜を形成するため、4官能加水分解性オルガノシランによって被膜に適度の親水性を付与すると共に親水性の高いコロイダルシリカによって被膜表面の親水性を維持することにより、被膜の水に対する接触角を長期に亘って所定の範囲に維持することが容易となるものであり、また、被膜の硬度を向上させ、更に表面平滑性と耐クラック性を改善させることもできるものである。
【0104】
また請求項2の発明は、請求項1において、前記被膜表面の水に対する接触角が8〜25°であるため、防汚性を一層向上させることができるものである。
【0106】
また請求項の発明は、請求項1又は2において、被膜形成用の組成物中に、有機ジルコニウムを含有するため、被膜の水に対する接触角を容易に調整することができるものである。
【0107】
また請求項の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、被膜形成用の組成物中に、光半導体を含有するため、光半導体の光触媒作用により被膜から水をはじく有機物等を分解除去して、被膜表面の水に対する接触角を所定の値に長期間維持することができ、また防汚染性被膜形成品を屋外部材として用いると、被膜形成品の表面に雨水が付着した際に、その水分によって光触媒効果による防汚性効果が期待できるものである。
【0108】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、被膜形成用の組成物中に、光半導体を含有し、この被膜形成用の組成物中において、シリコーン樹脂の縮合物換算した固形分量と、コロイダルシリカ中の固形分としてのシリカとの総質量1に対する光半導体の配合質量比を、0.01以上0.4未満とするため、充分な光触媒作用が得られると共に、被膜表面の水に対する接触角を所定の値に維持することができ、また被膜に充分な透明性及び強度を付与することができるものである。
【0109】
また請求項6の発明は、請求項5において、被膜形成用の組成物中に、有機ジルコニウムをZrO2換算で、組成物中の全固形分100質量部に対して0.1〜10質量部含有するため、更に接触角の維持効果が高くなると共に、被膜形成時における被膜形成組成物のゲル化や凝集を防止して被膜形成を容易に行うことができるものである。
【0110】
また請求項7の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、被膜形成用の組成物中において、シリコーン樹脂の縮合物換算した固形分量1に対する光半導体の配合質量比を、0.01以上0.4未満とし、被膜形成用の組成物中に、有機ジルコニウムをZrO2換算で、組成物中の全固形分100質量部に対して0.1〜10質量部含有するため、優れた光触媒作用が得られると共に、高い被膜強度を得ることができ、更に接触角の維持効果が高くなると共に、被膜形成時における被膜形成組成物のゲル化や凝集を防止して被膜形成を容易に行うことができるものである。
【0111】
また請求項の発明は、請求項1乃至のいずれかにおいて、ガラス製の基材に被膜を形成するため、防汚染性の向上の効果が特に効果的に発揮されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1において、屋外曝露12ヶ月後での外観を撮影したものを示す、プリントアウトしたカラー印刷物である。
【図2】(a)は比較例4において、屋外曝露12ヶ月後での表面に鱗状の汚れが形成された外観を、(b)は比較例1において、屋外曝露12ヶ月後での表面に雨筋状の汚れが形成された外観をそれぞれ撮影したものを示す、プリントアウトしたカラー印刷物である。

Claims (8)

  1. 基材表面に被膜が形成された被膜形成品であって、前記被膜が、4官能加水分解性オルガノシランの部分加水分解物と全加水分解物のうち少なくともいずれかのみからなるシリコーン樹脂と、コロイダルシリカとを含有する被膜形成用の組成物にて形成されたものであり、屋外曝露条件においてこの被膜表面の水に対する接触角が5〜30°の範囲を三ヶ月以上維持し、平均表面粗さが5nm以下であることを特徴とする防汚染性被膜形成品。
  2. 前記被膜表面の水に対する接触角が8〜25°であることを特徴とする請求項1に記載の防汚染性被膜形成品。
  3. 被膜形成用の組成物中に、有機ジルコニウムを含有して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の防汚染性被膜形成品。
  4. 被膜形成用の組成物中に、光半導体を含有して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防汚染性被膜形成品。
  5. 被膜形成用の組成物中に、光半導体を含有し、この被膜形成用の組成物中において、シリコーン樹脂の縮合物換算した固形分量と、コロイダルシリカ中の固形分としてのシリカとの総質量1に対する光半導体の配合質量比を、0.01以上0.4未満として成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の防汚染性被膜形成品。
  6. 被膜形成用の組成物中に、有機ジルコニウムをZrO2換算で、組成物中の全固形分100質量部に対して0.1〜10質量部含有して成ることを特徴とする請求項5に記載の防汚染性被膜形成品。
  7. 被膜形成用の組成物中において、シリコーン樹脂の縮合物換算した固形分量1に対する光半導体の配合質量比を、0.01以上0.4未満とし、被膜形成用の組成物中に、有機ジルコニウムをZrO2換算で、組成物中の全固形分100質量部に対して0.1〜10質量部含有して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の防汚染性被膜形成品。
  8. ガラス製の基材に被膜を形成して成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の防汚染性被膜形成品。
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