JP4407539B2 - 単結晶インゴットの引上げ速度のシミュレーション方法 - Google Patents
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Description
このように構成された単結晶製造方法では、ヒータを長時間使用するうちに、融液とるつぼとの反応によって生成しかつ融液表面から蒸発して飛散するSiOガスがヒータと接触することにより、ヒータが徐々に劣化するため、即ちヒータがSiOガスの最初に降りかかる上部を中心に徐々に減肉化するため、ヒータの減肉部の電気抵抗値が上昇し、ヒータの発熱中心が上部に移動する。このため、ヒータの使用時間に応じたヒータの調整を、ヒータのるつぼに対する相対位置を下げることにより行う。この結果、本来の温度分布及び融液の対流とほぼ同じになるため、不純物濃度のばらつきを低減できるのみならず、単結晶育成の安定化を図ることもできる。またヒータのるつぼに対する相対位置の調整が、るつぼを上げるのではなく、ヒータを下げることにより行われるので、融液表面の位置が変らず、単結晶の直径制御など他の条件に影響を与えずに済むようになっている。
また、上記従来の特許文献1に示された単結晶製造方法では、ヒータの使用時間に応じてヒータ位置を調整しても、ヒータ自体の形状が異なり、発熱分布が異なるため、チャンバ内の温度分布及び融液の対流が本来の温度分布及び融液の対流と完全に一致させることができない問題点もあった。
本発明の目的は、引上げ機によってヒータの劣化の進行状況が異なっても、或いはヒータの劣化に伴ってヒータの発熱分布が異なっても、ヒータの総発熱量分布を正確に算出でき、これにより最適な単結晶インゴットの引上げ速度を決定でき、常に不純物濃度が低く無欠陥の単結晶インゴットを引上げることができる、単結晶インゴットの引上げ速度のシミュレーション方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、ヒータの総発熱量分布を、比較的容易にかつ短時間に、或いは正確に算出できる、単結晶インゴットの引上げ速度のシミュレーション方法を提供することにある。
その特徴ある構成は、単結晶インゴット15の引上げ中又は単結晶インゴット15の引上げ後のいずれか一方又は双方でヒータ18の劣化を測定する工程と、このヒータ18の劣化を考慮してヒータ18の総発熱量分布を算出する工程と、この総発熱量分布を総合伝熱解析プログラム及び融液対流解析プログラムに代入して軸方向温度勾配Gを予測する工程とを含むところにある。
この請求項1に記載された単結晶インゴットの引上げ速度のシミュレーション方法では、先ず測定されたヒータ18の劣化を考慮してヒータ18の総発熱量分布を算出し、次にこのヒータ18の総発熱量分布を総合伝熱解析プログラム及び融液対流解析プログラムに代入して数値シミュレーションを行うことにより軸方向温度勾配Gを予測し、更に予測前後の軸方向温度勾配Gの変化量ΔGに対し必要なインゴット15の引上げ速度Vの調整量ΔVを算出し、インゴット15の引上げ速度Vを決定する。この結果、ヒータ18の劣化をインゴット15の引上げ中に測定する場合、1本のインゴット15の引上げ中に所定時間毎に、不純物濃度が低く無欠陥のインゴット15を引上げるための最適な引上げ速度Vに決定されるので、1本のインゴット15を全長にわたって無欠陥に維持できる。またヒータ18の劣化をインゴット15の引上げ後に測定する場合、インゴット15の引上げ毎に、無欠陥のインゴット15を引上げるための最適な引上げ速度Vが決定されるので、無欠陥のインゴット15の収率を高く安定に保つことができる。
t=t0 2/t1 ……(1)
この請求項2に記載された単結晶インゴットの引上げ速度のシミュレーション方法では、ヒータ18の劣化後の換算厚さtを用いてヒータ18の総発熱量分布を算出するので、ヒータ18の単位体積当りの発熱量の変化を考慮しなくて済み、ヒータ18の総発熱量分布を比較的容易にかつ短時間に算出できる。
σ=σ0(t0/t)2 ……(2)
この請求項3に記載された単結晶インゴットの引上げ速度のシミュレーション方法では、実際のヒータ18の厚さの減少量及び実際のヒータ18の発熱量の増加量を用いてヒータ18の総発熱量分布を算出するので、ヒータ18の総発熱量分布を正確に算出できる。
またヒータの単位体積当りの発熱量をヒータの劣化に拘らず一定であると仮定し、ヒータの劣化に伴う部分的な薄肉化によるヒータの総発熱量分布の変化をヒータの厚さの変化に換算することにより、ヒータの劣化を考慮し、ヒータの劣化前の厚さをt0とし、ヒータの劣化後の実際の厚さをt1とするとき、ヒータの劣化後の換算厚さtをt=t0 2/t1から算出すれば、ヒータの単位体積当りの発熱量の変化を考慮しなくて済むので、ヒータの総発熱量分布を比較的容易にかつ短時間に算出できる。
図6に示すように、シリコン単結晶インゴット15の引上げ機10のチャンバ11内には、シリコン融液12を貯留する石英るつぼ13が設けられる。この石英るつぼ13は黒鉛サセプタ14及び支軸16を介してるつぼ駆動手段17に接続され、るつぼ駆動手段17は石英るつぼ13を回転させるとともに昇降させるように構成される。また石英るつぼ13の外周面は石英るつぼ13から所定の間隔をあけてヒータ18により包囲され、このヒータ18は保温筒19により包囲される。ヒータ18は、円筒状のカーボンに円周方向に所定の間隔をあけかつ上側及び下側から交互に鉛直方向に延びるスリット18aをそれぞれ設けることにより方形波状に形成され(図4)、石英るつぼ13に投入された高純度のシリコン多結晶体又はシリコン単結晶体のいずれか一方又は双方を加熱・溶融してシリコン融液12にする(図1)。またチャンバ11の上端には円筒状のケーシング21が接続され、このケーシング21には引上げ手段22が設けられる。引上げ手段22はインゴット15を回転させながら引上げるように構成される。更にシリコン融液12から引上げられたインゴット15へのヒータ18からの熱を遮蔽するために、インゴット15の外周面が所定の間隔をあけて熱遮蔽部材23により包囲される。なお、シリコン融液12表面からはSiOxガスが蒸発し、このSiOxガスはガス給排手段25のガス供給管26からチャンバ21の上方に導入された不活性ガスにより搬送され、ガス排出管27を通ってチャンバ21外に排出される。シリコン融液12表面から蒸発したSiOxガスが不活性ガスに搬送されてヒータ18の内周面及び外周面を通過するとき、SiOxガスにおける酸素とヒータ18中の炭素とが反応し、COとして不活性ガスとともに外部に排出されるため、ヒータ18の上部は徐々に薄肉化して、薄肉部18bが形成される(図4)。
インゴット15を引上げ機により引上げる前に、ヒータ18の発熱量と炉内部材の寸法及び物性値とを精密測定してコンピュータに入力する。ここで、炉内部材とは、シリコン融液12とこの融液12から引上げられるインゴット15との固液界面24近傍のインゴット15内の軸方向温度勾配Gに影響を与える部材をいい、具体的には、チャンバ11、黒鉛サセプタ14、ヒータ18、保温筒19、熱遮蔽部材23の他に、図示しないが水冷管、ヒータ等炉内部材の間接測定装置、ヒータの温度測定装置、ヒータの制御装置、結晶直径測定及び制御装置、引上げ速度の測定及び制御装置などが挙げられる。また精密測定とは、ヒータ18の発熱量や炉内部材の寸法及び輻射率を、間接測定ではなく、正確に直接測定することをいう。更に炉内部材の物性値としては、炉内部材の輻射率、熱伝導率、粘性率、体積膨張係数、密度及び比熱が挙げられる。
t=t0 2/t1 ……(1)
上記式(1)において、t0はヒータ18の劣化前の厚さであり、t1はヒータ18の劣化後の実際の厚さである。
上記式(1)は次のようにして求められる。図5から劣化前のヒータ18の微小体積要素ΔV0(=t0dΔH)内の発熱量ΔW0は次の式(3)で表される。
ΔW0=I2ΔR=I2ρΔH/(t0d) ……(3)
上記式(3)において、Iは電流であり、ρは比抵抗であり、dはヒータ18の幅である。また、図5から劣化後のヒータ18の微小体積要素ΔV1(=t1dΔH)内の発熱量ΔW1は次の式(4)で表される。
ΔW1=I2ΔR=I2ρΔH/(t1d) ……(4)
上記式(4)において、Iは電流であり、ρは比抵抗であり、dはヒータ18の幅である。なお、ヒータ18の幅はヒータ18の劣化の前後で変化しないとした。上記式(3)及び式(4)よりΔW0t0=ΔW1t1が成立ち、ΔW1/ΔW0=t0/t1が成立つ。従って、ヒータ18の単位体積当りの発熱量がヒータ18の劣化前後で変化しないとしたときのヒータ18の劣化後の換算厚さtは次の式(5)で表される。
t=t0ΔW1/ΔW0=t0t0/t1 ……(5)
この結果、上記式(1)が求まる。この算出方法では、ヒータ18の劣化後の換算厚さtを用いてヒータ18の総発熱量分布を算出するので、ヒータ18の単位体積当りの発熱量の変化を考慮しなくて済み、ヒータ18の総発熱量分布を比較的容易にかつ短時間に算出できる。
σ=σ0(t0/t)2 ……(2)
上記式(2)において、t0はヒータ18の劣化前の厚さであり、tはヒータ18の劣化後の厚さであり、σ0はヒータ18の劣化前の単位体積当りの発熱量である。ヒータ18の劣化前の単位体積当りの発熱量σ0は次の式(6)で表される。
σ0=ΔW0/ΔV0=I2ρ/(t0d)2 ……(6)
ヒータ18の劣化後の単位体積当りの発熱量σ1は次の式(7)で表される。
σ1=ΔW1/ΔV1=I2ρ/(t1d)2 ……(7)
上記式(6)及び式(7)から、ヒータ18の劣化前後の厚さの差により発生した発熱量の比率は次の式(8)で表される。
σ1/σ0=(t0d0/t1d1)2 ……(8)
式(8)においてヒータ18の円周方向の劣化は殆ど発生しないため、ヒータ18の厚さ方向の劣化のみを考慮すると、d1=d0となり、上記式(2)が成立つ。この算出方法では、実際のヒータ18の厚さの減少量及び実際のヒータ18の発熱量の増加量を用いてヒータ18の総発熱量分布を算出するので、計算時間が延びるけれども、ヒータ18の総発熱量分布を正確に算出できる。
なお、上記第1及び第2の実施の形態では、単結晶としてシリコン単結晶を挙げたが、GaAs単結晶,InP単結晶,ZnS単結晶若しくはZnSe単結晶でもよい。
また、上記実施の形態では、単結晶インゴットの引上げ中及び単結晶インゴットの引上げ後の双方でヒータの劣化を測定したが、単結晶インゴットの引上げ中又は単結晶インゴットの引上げ後のいずれか一方でヒータの劣化を測定してもよい。
<実施例1>
図6に示すように、1台の引上げ機10により直径200mmのインゴット15を50本引上げた。具体的には、先ずインゴットの引上げ前に経験値からインゴットの引上げ速度を決定した。次いでインゴット15の引上げ毎に、ヒータの劣化(ヒータの薄肉化)を精密測定し、このヒータの劣化(ヒータの薄肉化)を考慮してヒータの総発熱量分布をコンピュータにより算出した。劣化を考慮したヒータ18の総発熱量分布を上記第3の方法(式(2)を用いた方法)により算出した。次にこの総発熱量分布を総合伝熱解析プログラム及び融液対流解析プログラムに代入して数値シミュレーションを行うことにより軸方向温度勾配Gを精密予測した。更に精密予測前後の軸方向温度勾配Gの変化量ΔGに対し必要なインゴット15の引上げ速度Vの調整量ΔVを算出し、インゴット15の引上げ速度Vを決定した。なお、1本のインゴットの引上げ中に、ヒータの劣化を考慮したインゴットの引上げ速度の所定時間毎の決定は行わず、また石英るつぼは1本のインゴットの引上げ毎に新品に交換した。
1台の引上げ機により直径200mmのインゴット15を50本引上げた。具体的には、先ずインゴットの引上げ前に経験値からインゴットの引上げ速度を決定した。次にインゴットの引上げ毎に、ヒータの劣化(ヒータの薄肉化)を精密測定せず、ヒータの劣化(ヒータの薄肉化)考慮しないで50本のインゴットを引上げた。即ち、引上げ当初の引上げ速度で50本のインゴットを引上げた。なお、石英るつぼは1本のインゴットの引上げ毎に新品に交換した。
<比較例2>
1台の引上げ機により直径200mmのインゴットを50本引上げた。具体的には、先ずインゴットの引上げ前に経験値からインゴットの引上げ速度を決定した。次いでインゴットの引上げ毎に、ヒータの劣化(ヒータの薄肉化)を精密測定し、このヒータの劣化(ヒータの薄肉化)を考慮したけれども、ヒータの単位体積あたりの発熱量の変化を考慮せずに、ヒータの総発熱量分布をコンピュータにより算出した。次にこの総発熱量分布を総合伝熱解析プログラム及び融液対流解析プログラムに代入して数値シミュレーションを行うことにより軸方向温度勾配Gを精密予測した。更に精密予測前後の軸方向温度勾配Gの変化量ΔGに対し必要なインゴット15の引上げ速度Vの調整量ΔVを算出し、インゴット15の引上げ速度Vを決定した。なお、1本のインゴットの引上げ中に、ヒータの劣化を考慮したインゴットの引上げ速度の所定時間毎の決定は行わず、また石英るつぼは1本のインゴットの引上げ毎に新品に交換した。
<比較例3>
1台の引上げ機により直径200mmのインゴットを50本引上げた。具体的には、先ずインゴットの引上げ前に、インゴットの引上げ速度変化テストを行って、無欠陥のインゴットを引上げるための引上げ速度(通常はピュアマージンの中心)を決定した。ここで、インゴットの引上げ速度変化テストとは、インゴットの引上げ速度をV(mm/分)とし、シリコン融液及びインゴットの固液界面近傍におけるインゴット鉛直方向の温度勾配をG(℃/mm)とするとき、引上げ速度を徐々に低下させてV/G(mm2/分・℃)を連続的に低下させた後に、引上げ速度を徐々に上昇させてV/G(mm2/分・℃)を連続的に上昇させることにより、熱酸化処理を行った際にリング状に発生するOSFがウェーハ中心部で消滅して、無欠陥領域のみからなるインゴットを引上げるためのV/G(mm2/分・℃)の値を決めるテストをいう。次に10本のインゴットを引上げる毎に、上記の引上げ速度変化テストを実施し、実際に無欠陥のインゴットを引上げるための引上げ速度を決定した。なお、石英るつぼは1本のインゴットの引上げ毎に新品に交換した。
実施例1及び比較例1〜3のインゴットの引上げ本数の変化に対するインゴットの引上げ速度の変化を図7に示す。
図7から明らかなように、比較例1及び2のインゴットの引上げ速度は、比較例3のインゴットの引上げ速度、即ち実際に無欠陥のインゴットを引上げたときの引上げ速度と大きく異なったけれども、実施例1のインゴットの引上げ速度は、比較例3のインゴットの引上げ速度、即ち実際に無欠陥のインゴットを引上げたときの引上げ速度とほぼ一致した。
12 シリコン融液
15 シリコン単結晶インゴット
18 ヒータ
24 固液界面
Claims (3)
- チャンバ(11)内のヒータ(18)により融解された融液(12)から引上げられる単結晶インゴット(15)内の固液界面(24)近傍の軸方向温度勾配Gを、総合伝熱解析プログラム及び融液対流解析プログラムを用いてコンピュータにより予測し、更に予測前後の軸方向温度勾配Gの変化量ΔGに対し必要な前記単結晶インゴット(15)の引上げ速度Vの調整量ΔVを算出して、前記単結晶インゴット(15)の引上げ速度をシミュレーションにより決定する方法であって、
前記単結晶インゴット(15)の引上げ中又は前記単結晶インゴット(15)の引上げ後のいずれか一方又は双方で前記ヒータ(18)の劣化を測定する工程と、
前記ヒータ(18)の劣化を考慮して前記ヒータ(18)の総発熱量分布を算出する工程と、
前記総発熱量分布を前記総合伝熱解析プログラム及び前記融液対流解析プログラムに代入して前記軸方向温度勾配Gを予測する工程と
を含むことを特徴とする単結晶インゴットの引上げ速度のシミュレーション方法。 - ヒータ(18)の単位体積当りの発熱量を前記ヒータ(18)の劣化に拘らず一定であると仮定し、前記ヒータ(18)の劣化に伴う部分的な薄肉化による前記ヒータ(18)の総発熱量分布の変化を前記ヒータ(18)の厚さの変化に換算することにより、前記ヒータ(18)の劣化を考慮し、
前記ヒータ(18)の劣化前の厚さをt0とし、前記ヒータ(18)の劣化後の実際の厚さをt1とするとき、前記ヒータ(18)の劣化後の換算厚さtを次の式(1)により算出する請求項1記載の単結晶インゴットの引上げ速度のシミュレーション方法。
t=t0 2/t1 ……(1) - ヒータ(18)の劣化に伴って前記ヒータ(18)が薄肉化し、このヒータ(18)の薄肉化による前記ヒータ(18)の単位体積当りの発熱量の増大を考慮し、
前記ヒータ(18)の劣化前の厚さをt0とし、前記ヒータ(18)の劣化後の厚さをtとし、前記ヒータ(18)の劣化前の単位体積当りの発熱量をσ0とするとき、前記ヒータ(18)の劣化後の単位体積当りの発熱量σを次の式(2)により算出する請求項1記載の単結晶インゴットの引上げ速度のシミュレーション方法。
σ=σ0(t0/t)2 ……(2)
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