次に、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。図1は本発明のロータリコンプレッサの実施例として、第1及び第2の回転圧縮要素32、34を備えた内部中間圧型多段(2段)圧縮式のロータリコンプレッサ10の縦断面図、図2はロータリコンプレッサ10の正面図、図3ロータリコンプレッサ10の側面図、図4はロータリコンプレッサ10のもう一つの縦断面図、図5はロータリコンプレッサ10の更にもう一つの縦断面図、図6はロータリコンプレッサ10の電動要素14部分の平断面図、図7はロータリコンプレッサ10の回転圧縮機構部18の拡大断面図をそれぞれ示している。
各図において、10は二酸化炭素(CO2)を冷媒として使用する内部中間圧型多段圧縮式のロータリコンプレッサで、このロータリコンプレッサ10は鋼板からなる円筒状の密閉容器12と、この密閉容器12の内部空間の上側に配置収納された電動要素14及びこの電動要素14の下側に配置され、電動要素14の回転軸16により駆動される第1の回転圧縮要素32(1段目)及び第2の回転圧縮要素34(2段目)からなる回転圧縮機構部18にて構成されている。
尚、実施例のロータリコンプレッサ10の高さ寸法は220mm(外径120mm)、電動要素14の高さ寸法は約80mm(外径110mm)、回転圧縮機構部18の高さ寸法は約70mm(外径110mm)で、電動要素14と回転圧縮機構部18との間隔は約5mmとなっている。また、第2の回転圧縮要素34の排除容積は第1の回転圧縮要素32の排除容積よりも小さく設定されている。
密閉容器12は実施例では厚さ4.5mmの鋼板より構成され、底部をオイル溜とし、電動要素14と回転圧縮機構部18を収納する容器本体12Aと、この容器本体12Aの上部開口を閉塞する略椀状のエンドキャップ(蓋体)12Bとで構成され、且つ、このエンドキャップ12Bの上面中心には円形の取付孔12Dが形成されており、この取付孔12Dには電動要素14に電力を供給するためのターミナル(配線を省略)20が取り付けられている。
この場合、ターミナル20周囲のエンドキャップ12Bには、座押成形によって所定曲率の段差部12Cが環状に形成されている。また、ターミナル20は電気的端子139が貫通して取り付けられた円形のガラス部20Aと、このガラス部20Aの周囲に形成され、斜め外下方に鍔状に張り出した金属製の取付部20Bとから構成されている。
取付部20Bの厚さ寸法は2.4±0.5mmとされている。そして、ターミナル20は、そのガラス部20Aを下側から取付孔12Dに挿入して上側に臨ませ、取付部20Bを取付孔12Dの周縁に当接させた状態でエンドキャップ12Bの取付孔12D周縁に取付部20Bを溶接することで、エンドキャップ12Bに固定されている。
電動要素14は、密閉容器12の上部空間の内周面に沿って環状に取り付けられたステータ22と、このステータ22の内側に若干の間隙を設けて挿入配置されたロータ24とからなる。このロータ24は中心を通り鉛直方向に延びる回転軸16に固定されている。
ステータ22は、ドーナッツ状の電磁鋼板を積層した積層体26と、この積層体26の歯部に直巻き(集中巻き)方式により巻装されたステータコイル28を有している(図6)。また、ロータ24もステータ22と同様に電磁鋼板の積層体30で形成され、この積層体30内に永久磁石MGを挿入して構成されている。
前記第1の回転圧縮要素32と第2の回転圧縮要素34との間には中間仕切板36が挟持されている。即ち、第1の回転圧縮要素32と第2の回転圧縮要素34は、中間仕切板36と、この中間仕切板36の上下に配置されたシリンダ38、シリンダ40と、この上下シリンダ38、40内を180度の位相差を有して回転軸16に設けた上下偏心部42、44に嵌合されて偏心回転する上下ローラ46、48と、この上下ローラ46、48に当接して上下シリンダ38、40内をそれぞれ低圧室側と高圧室側に区画する後述する上下ベーン50(下側のベーンは図示せず)と、上シリンダ38の上側の開口面及び下シリンダ40の下側の開口面を閉塞して回転軸16の軸受けを兼用する閉塞部材としての上部支持部材54と下部支持部材56にて構成される。
上部支持部材54および下部支持部材56には、吸込ポート161、162にて上下シリンダ38、40の内部とそれぞれ連通する吸込通路58、60と、凹陥した吐出消音室62、64が形成されると共に、これら両吐出消音室62、64の開口部はそれぞれカバーにより閉塞される。即ち、吐出消音室62はカバーとしての上部カバー66、吐出消音室64はカバーとしての下部カバー68にて閉塞される。
この場合、上部支持部材54の中央には軸受け54Aが起立形成されており、この軸受け54A内面には筒状のブッシュ122が装着されている。また、下部支持部材56の中央には軸受け56Aが貫通形成されており、この軸受け56A内面にも筒状のブッシュ123が装着されている。これらブッシュ122、123は後述する如き摺動性の良い材料にて構成されており、回転軸16はこれらブッシュ122、123を介して上部支持部材54の軸受け54Aと下部支持部材56の軸受け56Aに保持される。
この場合、下部カバー68はドーナッツ状の円形鋼板から構成されており、周辺部の4箇所を主ボルト129・・・によって下から下部支持部材56に固定され、吐出ポート41にて第1の回転圧縮要素32の下シリンダ40内部と連通する吐出消音室64の下面開口部を閉塞する。この主ボルト129・・・の先端は上部支持部材54に螺合する。下部カバー68の内周縁は下部支持部材56の軸受け56A内面より内方に突出しており、これによって、ブッシュ123の下端面は下部カバー68によって保持され、脱落が防止されている(図9)。図10
は下部支持部材56の下面を示しており、128は吐出消音室64内において吐出ポート41を開閉する第1の回転圧縮要素32の吐出弁である。
ここで、下部支持部材56は鉄系の焼結材料(若しくは鋳物でも可)により構成されており、下部カバー68を取り付ける側の面(下面)は、平面度0.1mm以下に加工された後、スチーム処理が加えられている。このスチーム処理によって下部カバー68を取り付ける側の面は酸化鉄となるため、焼結材料内部の孔が塞がれてシール性が向上する。これにより、下部カバー68と下部支持部材56間にガスケットを介設する必要が無くなる。
尚、吐出消音室64と密閉容器12内における上部カバー66の電動要素14側は、上下シリンダ38、40や中間仕切板36を貫通する孔である連通路63にて連通されている(図4)。この場合、連通路63の上端には中間吐出管121が立設されており、この中間吐出管121は上方の電動要素14のステータ22に巻装された相隣接するステータコイル28、28間の隙間に指向している(図6)。
また、上部カバー66は吐出ポート39にて第2の回転圧縮要素34の上シリンダ38内部と連通する吐出消音室62の上面開口部を閉塞し、密閉容器12内を吐出消音室62と電動要素14側とに仕切る。この上部カバー66は図11に示す如く厚さ2mm以上10mm以下(実施例では最も望ましい6mmとされている)であって、前記上部支持部材54の軸受け54Aが貫通する孔が形成された略ドーナッツ状の円形鋼板から構成されており、上部支持部材54との間にビード付きのガスケット124(図12)を挟み込んだ状態で、当該ガスケット124を介して周辺部が4本の主ボルト78・・・により、上から上部支持部材54に固定されている。この主ボルト78・・・の先端は下部支持部材56に螺合する。
上部カバー66を係る厚さ寸法とすることで、密閉容器12内よりも高圧となる吐出消音室62の圧力に十分に耐えながら、小型化を達成し、電動要素14との絶縁距離を確保することもできるようになる。更に、この上部カバー66の内周縁と軸受け54Aの外面間にはOリング126が設けられている(図12)。係るOリング126により軸受け54A側のシールを行なうことで、上部カバー66の内周縁で十分にシールを行ない、ガスリークを防ぐことができるようになり、吐出消音室62の容積拡大が図れると共に、Cリングにより上部カバー66の内周縁側を軸受け54Aに固定する必要も無くなる。
ここで、図11において127は吐出消音室62内において吐出ポート39を開閉する第2の回転圧縮要素34の吐出弁である。
次に、上シリンダ38の下側の開口面及び下シリンダ40の上側の開口面を閉塞する中間仕切板36内には、上シリンダ38内の吸込側に対応する位置に、図13、図14に示す如く外周面から内周面に至り、外周面と内周面とを連通して給油路を構成する貫通孔131が穿設されており、この貫通孔131の外周面側の封止材132を圧入して外周面側の開口を封止している。また、この貫通孔131の中途部には上側に延在する連通孔133が穿設されている。
一方、上シリンダ38の吸込ポート161(吸込側)には中間仕切板36の連通孔133に連通する連通孔134が穿設されている(図15)。また、回転軸16内には図7に示す如く軸中心に鉛直方向のオイル孔80と、このオイル孔80に連通する横方向の給油孔82、84(回転軸16の上下偏心部42、44にも形成されている)が形成されており、中間仕切板36の貫通孔131の内周面側の開口は、これらの給油孔82、84を介してオイル孔80に連通している。
後述する如く密閉容器12内は中間圧となるため、2段目で高圧となる上シリンダ38内にはオイルの供給が困難となるが、中間仕切板36を係る構成としたことにより、密閉容器12内の底部のオイル溜めから汲み上げられてオイル孔80を上昇し、給油孔82、84から出たオイルは、中間仕切板36の貫通孔131に入り、連通孔133、134から上シリンダ38の吸込側(吸込ポート161)に供給されるようになる。
図16中Lは上シリンダ38の吸入側の圧力変動を示し、図中P1は中間仕切板36の内周面の圧力を示す。この図にL1で示す如く上シリンダ38の吸込側の圧力(吸入圧力)は、吸入過程においては吸入圧損により中間仕切板36の内周面側の圧力よりも低下する。この期間に中間仕切板36の貫通孔131、連通孔133から上シリンダ38の連通孔134を介して上シリンダ38内に給油が成されることになる。
上述の如く上下シリンダ38、40、中間仕切板36、上下支持部材54、56及び上下カバー66、68はそれぞれ4本の主ボルト78・・・と主ボルト129・・・にて上下から締結されるが、更に、上下シリンダ38、40、中間仕切板36、上下支持部材54、56は、これら主ボルト78、129の外側に位置する補助ボルト136、136により締結される(図4)。この補助ボルト136は上部支持部材54側から挿入され、先端は下支持部材56に螺合している。
また、この補助ボルト136は前述したベーン50の後述する案内溝70の近傍に位置している。このように補助ボルト136、136を追加して回転圧縮機構部18を一体化することで、内部が極めて高圧となることに対するシール性の確保が成されると共に、ベーン50の案内溝70の近傍を締め付けるので、後述する背圧室74からベーン50に加える高圧の背圧がリークする不都合も防止できるようになる。
一方、上シリンダ38内には前述したベーン50を収納する案内溝70と、この案内溝70の外側に位置してバネ部材としてのスプリング76を収納する収納部70Aが形成されており、この収納部70Aは案内溝70側と密閉容器12(容器本体12A)側に開口している(図8)。前記スプリング76はベーン50の外側端部に当接し、常時ベーン50をローラ46側に付勢する。そして、このスプリング76の密閉容器12側の収納部70A内には金属製のプラグ137が設けられ、スプリング76の抜け止めの役目を果たす。
この場合、プラグ137の外寸は収納部70Aの内寸よりも小さく設定され、プラグ137は収納部70A内に隙間嵌めにより挿入される。また、プラグ137の周面には当該プラグ137と収納部70Aの内面間をシールするためのOリング138が取り付けられている。そして、上シリンダ38の外端、即ち、収納部70Aの外端と密閉容器12の容器本体12A間の間隔は、Oリング138からプラグ137の密閉容器12側の端部までの距離よりも小さく設定されている。係る寸法関係としたことにより、プラグ137を収納部70A内に圧入固定する場合の如く、上シリンダ38が変形して上部支持部材54との間のシール性が低下し、性能悪化を来す不都合を未然に回避することができるようになる。
尚、プラグ137の外寸を収納部70Aの内寸よりも小さく設定して、プラグ137を収納部70A内に隙間嵌めした場合でも、上シリンダ38と密閉容器12間の間隔をOリング138からプラグ137の密閉容器12側の端部までの距離よりも小さく設定しているので、スプリング76側の高圧(ベーン50の背圧)によってプラグ137が収納部70Aから押し出される方向に移動しても、密閉容器12に当接して移動が阻止された時点で依然Oリング138は収納部70A内に位置してシールするので、プラグ137の機能には何ら問題は生じない。
一方、上シリンダ38内の案内溝70のローラ46とは反対側には、ベーン50をローラ46に付勢する背圧を当該ベーン50に印加するための前述した背圧室74が形成されている。この背圧室74は、中間仕切板36と上部支持部材54間に渡って略円筒形状を呈して上シリンダ38内に貫通して形成されている(図19)。該背圧室74は収納部70Aと案内溝70に連通しており、後述する背圧通路72から上シリンダ38内の高圧室側のガスを背圧室74に流入させて案内溝70内のベーン50の背後から背圧を加えベーン50をローラ46側に付
勢する。
そして、前記背圧通路72は上部支持部材54(閉塞部材)内に形成されている。この背圧通路72の一端は上シリンダ38内の高圧室側に対応する位置の上部支持部材54下面に形成した開口72Aにて上シリンダ38内に開口すると共に、他端は背圧室74に対応する位置の上部支持部材54下面にて開口し(図20参照)、上シリンダ38内の高圧室側と背圧室74とを連通している。そして、シリンダ38内の高圧室側の圧力は背圧通路72を介して背圧室74に供給される。該背圧通路72の高圧室側の開口は、ベーン50が最も突出したときのローラ46の回転位置を180°とした場合、当該ローラ46の回転位置(180°)を含むその前後所定範囲の回転位置において、ローラ46は背圧通路72の開口72Aを開放する。
この場合、実施例ではローラ46の回転位置が180°(図19中(C)の位置)の前後所定範囲であるローラ46の回転位置が90°以上300°以下の範囲で背圧通路72の開口72Aは開放されるように当該開口72Aは配置されている。即ち、ローラ46が回転してその回転位置が90°となった位置(図19中(F))で開口72Aは開放され、300°となった位置(図19中(B))で閉じられる。従って、この90°以上300°の回転位置で背圧通路72を介し、上シリンダ38内の高圧室側の圧力は背圧室74に供給されることになる。
これにより、上シリンダ38内の高圧室側の冷媒ガスを背圧室74に流入させてベーン50に背圧を加えられるので、ベーン50をローラ46側に付勢することが可能となる。
ところで、回転軸16と一体に180度の位相差を持って形成される上下偏心部42、44の相互間を連結する連結部90は、その断面形状を回転軸16の円形断面より断面積を大きくして剛性を持たせるために非円形状の例えばラグビーボール状とされている(図17)。即ち、回転軸16に設けた上下偏心部42、44を連結する連結部90の断面形状は上下偏心部42、44の偏心方向に直交する方向でその肉厚を大きくしている(図中ハッチングの部分)。
これにより、回転軸16に一体に設けられた上下偏心部42、44を連結する連結部90の断面積が大きくし、断面2次モーメントを増加させて強度(剛性)を増し、耐久性と信頼性を向上させている。特に使用圧力の高い冷媒を2段圧縮する場合、高低圧の圧力差が大きいために回転軸16にかかる荷重も大きくなるが、連結部90の断面積を大きくしてその強度(剛性)を増し、回転軸16が弾性変形してしまうのを防止している。
この場合、上側の偏心部42の中心をO1とし、下側の偏心部44の中心をO2とすると、偏心部42の偏心方向側の連結部90の面の円弧の中心はO1、偏心部44の偏心方向側の連結部90の面の円弧の中心はO2としている。これにより、回転軸16を切削加工機にチャックして上下偏心部42、44と連結部90を切削加工する際、偏心部42を加工した後、半径のみを変更して連結部90の一面を加工し、チャック位置を変更して連結部90の他面を加工し、半径のみを変更して偏心部44を加工すると云う作業が可能となる。これにより、回転軸16をチャックし直す回数が減少して生産性が著しく改善されるようになる。
そして、この場合冷媒としては地球環境にやさしく、可燃性および毒性等を考慮して自然冷媒である炭酸ガスの一例としての前記二酸化炭素(CO2)を使用し、潤滑油としてのオイルは、例えば鉱物油(ミネラルオイル)、アルキルベンゼン油、エーテル油、エステル油等既存のオイルが使用される。
密閉容器12の容器本体12Aの側面には、上部支持部材54と下部支持部材56の吸込通路58、60、吐出消音室62及び上部カバー66の上側(電動要素14の下端に略対応する位置)に対応する位置に、スリーブ141、142、143及び144がそれぞれ溶接固定されている。スリーブ141と142は上下に隣接すると共に、スリーブ143はスリーブ141の略対角線上にある。また、スリーブ144はスリーブ141と略90度ずれた位置にある。
そして、スリーブ141内には上シリンダ38に冷媒ガスを導入するための冷媒導入管92の一端が挿入接続され、この冷媒導入管92の一端は上シリンダ38の吸込通路58に連通される。この冷媒導入管92は密閉容器12の上側を通過してスリーブ144に至り、他端はスリーブ144内に挿入接続されて密閉容器12内に連通する。
また、スリーブ142内には下シリンダ40に冷媒ガスを導入するための冷媒導入管94の一端が挿入接続され、この冷媒導入管94の一端は下シリンダ40の吸込通路60に連通される。この冷媒導入管94の他端はアキュムレータ146の下端に接続されている。また、スリーブ143内には冷媒吐出管96が挿入接続され、この冷媒吐出管96の一端は吐出消音室62に連通される。
上記アキュムレータ146は吸込冷媒の気液分離を行なうタンクであり、密閉容器12の容器本体12Aの上部側面に溶接固定された密閉容器側のブラケット147にアキュムレータ側のブラケット148を介して取り付けられている。このブラケット148はブラケット147から上方に延在し、アキュムレータ146の上下方向の略中央部を保持しており、その状態でアキュムレータ146は密閉容器12の側方に沿うかたちで配置される。
冷媒導入管92はスリーブ141から出た後、実施例では右方に屈曲した後、上昇しており、アキュムレータ146の下端はこの冷媒導入管92に近接するかたちとなる。そこで、アキュムレータ146の下端から降下する冷媒導入管94は、スリーブ141から見て冷媒導入管92の屈曲方向とは反対の左側を迂回してスリーブ142に至るように引き回されている(図3)。
即ち、上部支持部材54と下部支持部材56の吸込通路58、60にそれぞれ連通する冷媒導入管92、94は密閉容器12から見て水平方向で反対の方向に屈曲されたかたちとされており、これにより、アキュムレータ146の上下寸法を拡大して容積を増やしても、各冷媒導入管92、94が相互に干渉しないように配慮されている。
また、スリーブ141、143、144の外面周囲には配管接続用のカプラが係合可能な鍔部151が形成されており、スリーブ142の内面には配管接続用のネジ溝152が形成されている。これにより、スリーブ141、143、144にはロータリコンプレッサ10の製造工程における完成検査で気密試験を行なう場合に試験用配管のカプラを鍔部151に容易に接続できるようになると共に、スリーブ142にはネジ溝152を使用して試験用配管を容易にネジ止めできるようになる。特に、上下で隣接するスリーブ141と142は、一方のスリーブ141に鍔部151が、他方のスリーブ142にネジ溝152が形成されていることで、狭い空間で試験用配管を各スリーブ141、142に接続可能となる。
そして、実施例のロータリコンプレッサ10は図18に示すような給湯装置153の冷媒回路に使用される。即ち、ロータリコンプレッサ10の冷媒吐出管96は水加熱用のガスクーラ154の入口に接続される。このガスクーラ154が給湯装置153の図示しない貯湯タンクに設けられる。ガスクーラ154を出た配管は減圧装置としての膨張弁156を経て蒸発器157の入口に至り、蒸発器157の出口は冷媒導入管94に接続される。また、冷媒導入管92の中途部からは図2、図3では図示していないが除霜回路を構成するデフロスト管158が分岐し、流路制御装置としての電磁弁159を介してガスクーラ154の入口に至る冷媒吐出管96に接続されている。尚、図18ではアキュムレータ146は省略されている。
以上の構成で次に動作を説明する。尚、加熱運転では電磁弁159は閉じているものとする。ターミナル20および図示されない配線を介して電動要素14のステータコイル28に通電されると、電動要素14が起動してロータ24が回転する。この回転により回転軸16と一体に設けた上下偏心部42、44に嵌合された上下ローラ46、48が上下シリンダ38、40内を偏心回転する。
これにより、冷媒導入管94および下部支持部材56に形成された吸込通路60を経由して、吸込ポート162から下シリンダ40の低圧室側に吸入された低圧(一段目吸入圧LP:4MPaG)の冷媒ガスは、ローラ48とベーンの動作により圧縮されて中間圧(MP1:8MPaG)となり下シリンダ40の高圧室側より吐出ポート41、下部支持部材56に形成された吐出消音室64から連通路63を経て中間吐出管121から密閉容器12内に吐出される。
このとき、中間吐出管121は上方の電動要素14のステータ22に巻装された相隣接するステータコイル28、28間の隙間に指向しているので、未だ比較的温度の低い冷媒ガスを電動要素14方向に積極的に供給できるようになり、電動要素14の温度上昇が抑制されるようになる。また、これによって、密閉容器12内は中間圧(MP1)となる。
そして、密閉容器12内の中間圧の冷媒ガスは、スリーブ144から出て(中間吐出圧は前記MP1)冷媒導入管92及び上部支持部材54に形成された吸込通路58を経由して吸込ポート161から上シリンダ38の低圧室側に吸入される(2段目吸入圧MP2)。吸入された中間圧の冷媒ガスは、ローラ46とベーン50の動作により2段目の圧縮が行なわれるが、ローラ46の回転位置が90°以上300°以下の範囲で背圧通路72の開口72Aは開放するように構成しており、ベーン50に好適な背圧を加えられるのでベーン50を円滑に動作させることができる。そして、吸入された中間圧の冷媒ガスは、ローラ46とベーン50の動作により2段目の圧縮が行なわれて高温高圧の冷媒ガスとなり(2段目吐出圧HP:12MPaG)、高圧室側から吐出ポート39を通り上部支持部材54に形成された吐出消音室62、冷媒吐出管96を経由してガスクーラ154内に流入する。このときの冷媒温度は略+100℃まで上昇しており、係る高温高圧の冷媒ガスは放熱して、貯湯タンク内の水を加熱し、約+90℃の温水を生成する。
上述した上シリンダ38内における2段目の圧縮において、ローラ46の回転角度位置が0°から始まる冷媒ガスの吸入初期段階は、上シリンダ38内の高圧室側も吸入圧力(MP1)と同等である。そのため、この冷媒ガスが背圧室74に流入すると、再膨張して圧縮効率が低下する。また、ベーン50をローラ46側に付勢する背圧としての機能も期待できない。
他方、ローラ46の回転角度位置が360°に向かう冷媒ガスの圧縮最終段階では、高圧室側は上述した極めて高い高圧HPとなるため、係る極めて高圧の冷媒ガスが背圧室74に流入すると、背圧によるベーン50をローラ46に押し付ける力が過大となり、却ってベーン50を案内溝70側に押し込むための仕事量が大きくなって、入力(電力)が増大することで効率が低下する。
しかしながら、本発明では上述した如くローラ46の回転位置が90°以上300°以下の範囲でのみ背圧通路72の開口72Aをローラ46が開放し、高圧室側と背圧室74とを連通すると共に、0°〜90°の範囲の吸入初期段階と300°〜360°の圧縮最終段階では開口72Aを閉じて連通しないようにしているので、係る効率悪化を防止できる。また、ベーン50をローラ46に押し付ける背圧過剰も防止できるので、両者の耐久性も改善され、潤滑特性も良好となる。
一方、ガスクーラ154において冷媒自体は冷却され、ガスクーラ154を出る。そして、膨張弁156で減圧された後、蒸発器157に流入して蒸発し、アキュムレータ146(図18では示していない)を経て冷媒導入管94から第1の回転圧縮要素32内に吸い込まれるサイクルを繰り返す。
特に、低外気温の環境ではこのような加熱運転で蒸発器157には着霜が成長する。その場合には電磁弁159を開放し、膨張弁156は全開状態として蒸発器157の除霜運転を実行する。これにより、密閉容器12内の中間圧の冷媒(第2の回転圧縮要素34から吐出された少量の高圧冷媒を含む)は、デフロスト管158を通ってガスクーラ154に至る。この冷媒の温度は+50〜+60℃程であり、ガスクーラ154では放熱せず、当初は逆に冷媒が熱を吸収するかたちとなる。そして、ガスクーラ154から出た冷媒は膨張弁156を通過し、蒸発器157に至るようになる。即ち、蒸発器157には略中間圧の比較的温度の高い冷媒が減圧されずに実質的に直接供給されるかたちとなり、これによって、蒸発器157は加熱され、除霜されることになる。
ここで、第2の回転圧縮要素34から吐出された高圧冷媒を減圧せずに蒸発器157に供給して除霜した場合には、膨張弁156が全開のために第1の回転圧縮要素32の吸込圧力が上昇し、これにより、第1の回転圧縮要素32の吐出圧力(中間圧)が高くなる。この冷媒は第2の回転圧縮要素34を通って吐出されるが、膨張弁156が全開のために第2の回転圧縮要素34の吐出圧力が第1の回転圧縮要素32の吸込圧力と同様となってしまうために第2の回転圧縮要素34の吐出(高圧)と吸込(中間圧)で圧力の逆転現象が発生してしまう。しかしながら、上述の如く第1の回転圧縮要素32から吐出された中間圧の冷媒ガスを密閉容器12から取り出して蒸発器157の除霜を行なうようにしているので、係る高圧と中間圧の逆転現象を防止することができるようになる。
このように、上シリンダ38内の高圧室側と背圧室74とを連通する背圧通路72とを上部支持部材54に形成しているので、背圧通路72を介してシリンダ38内の高圧室側の圧力を背圧室74に供給することができる。これにより、密閉容器12内が中間圧となるロータリコンプレッサ10において、ベーン50をローラ46側に付勢するための背圧を支障無く印加することが可能となる。特に、上部支持部材54に背圧通路72を形成してるだけの簡単な構成なので、背圧通路72の加工を極めて簡単に行なうことができ、背圧通路72の加工性を大幅に向上することができるようになる。
尚、上記実施例では上シリンダ38内の高圧室側と背圧室74とを連通させるための背圧通路72を上部支持部材54に設けたが、これに限らず背圧通路72を、中間仕切板36(本発明における閉塞部材となる)に設けても本発明は有効である。
尚、ロータリコンプレッサ10に冷媒として二酸化炭素(CO2)を用いたが、この冷媒に限らず、他の自然冷媒として炭化水素(HC)、アンモニア(NH3)などを用いても本発明は有効である。