JP4392324B2 - 冷間鍛造用肌焼鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、球状化焼鈍後の硬さが低く、かつ、この硬さが均質な冷間鍛造用肌焼鋼の製造方法に関する。なお、ここで記載する鋼材とは、熱間圧延した鋼線材、鋼棒などを言う。
従来、自動車用部品、建設機械用部品等の機械構造用部品を製造する構造用鋼材としては、機械構造用炭素鋼材や機械構造用低合金鋼材が用いられている。これらの鋼材から自動車のボルト、ロット、エンジン部品、ギヤなど駆動系部品等の機械構造部品を製造するには、従来は主として熱間鍛造および切削工程により製造されていた。しかし、近年、生産性の向上等を狙いとして、冷間鍛造工程へ切り替えが指向されている。
冷間鍛造工程では、通常、熱間圧延線材を伸線した鋼線などの鋼材に、球状化焼鈍(SA)を施して冷間加工性を確保した後に、冷間鍛造が施されている。ところが、冷間鍛造では鋼材に加工硬化が生じ、延性が低下して、割れ発生や金型寿命の低下を招くことが問題である。
特に、近年では、環境問題からくる自動車軽量化のために冷間鍛造部品の余肉を極力小さくすべく、冷間鍛造の加工度(加工率)が大きくなり、金型寿命は益々低下する傾向にある。このような金型寿命の低下は、鍛造部品の大型化により、金型が大型化している状況下では、冷間鍛造工程の生産性を大きく阻害する要因になる。
このため、球状化焼鈍後の硬さを低く、軟質化して、冷間鍛造性を改善する技術が,従来から種々提案されている。
例えば、熱間圧延材の組織を微細化させ、引抜き加工を行ない、球状化焼鈍を省略する肌焼鋼の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、熱延材をマルテンサイト、ベイナイト或はマルテンサイト+ベイナイトの組織とし、粗引き伸線、球状化焼鈍、、仕上伸線、冷間鍛造、浸炭、焼入れ焼戻しの機械構造用部品製造工程において、球状化焼鈍前の粗引き伸線(伸線引抜き加工)を省略し、高延性の球状化焼鈍材を提供することが提案されている(特許文献2参照)。
更に、マルテンサイト、ベイナイト、パーライトの1種又は2種以上からなる組織を有する鋼棒線材の、表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のフェライトの組織面積率を10%以下として、表面層のみを硬くし、中心部は軟らかい組織とすることにより、球状化焼鈍後の延性に優れた冷間鍛造用棒線材とすることが提案されている(特許文献3参照)。
特公平6−99747号公報(特許請求の範囲) 特開2000−336457号公報(特許請求の範囲、段落0004) 特開2001−240941号公報(特許請求の範囲)
上記各公報に開示された各技術は、特に、前記金型の大型化に対する金型寿命延長のために必要な、冷間鍛造用鋼の球状化焼鈍後の硬さ低下が、未だ不十分である。
更に、特許文献1は、球状化焼鈍を省略した熱延材ままであるために、ロット内やロット間の鋼材の硬さのバラツキも大きい。特許文献2のマルテンサイトやベイナイトの組織も、冷却速度に敏感であり、線径、熱延における圧延、冷却時の温度のバラツキによって、球状化焼鈍を省略した熱延材ままであるために、ロット内やロット間の鋼材の硬さのバラツキが大きい。これは特許文献3も同様である。
また、従来、冷間鍛造性を改善するために、球状化焼鈍を2〜3回の複数回繰り返すことも実施されているが、長時間に亘る球状化焼鈍の繰り返しは、生産性を著しく低下させる。また、これに関して、球状化焼鈍の改良に関する技術も、従来から多数提案されているものの、前記した、金型の大型化に対する金型寿命延長のために必要な、冷間鍛造用鋼の球状化焼鈍後の硬さ低下が不十分であり、また、これを改善しようとする技術ではない。
本発明は、かかる問題に鑑みなされたもので、一回のみの球状化焼鈍であっても、球状化焼鈍後の硬さが低く、かつ、この硬さが均質な、冷間鍛造性に優れた肌焼鋼の製造方法を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明の球状化焼鈍後の硬さが低く、かつ均質な冷間鍛造用肌焼鋼の製造方法の要旨は、質量%で、C:0.25%以下、Si:0.3%以下、Mn:1.5%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.08%以下、N:0.100%以下(これらいずれの元素も0%を含まず)、Cr:0.2〜1.5%、を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材であって、鋼材の表面から中心までの任意の断面における組織が、ベイナイト体積分率が平均で50%以下(0%を含む)であるフェライト・パーライト組織からなる鋼材を、減面率28%以上の伸線引抜き加工を行なった後に、球状化焼鈍を行なうことである。
通常、熱間圧延された線材の組織は、フェライトとラメラー状パーライトの組織からなっており、直接球状化焼鈍を行っても、硬度は一定レベル以下にはならない。このため、従来においても、例えば、特許文献2にも開示されるごとく(段落0004)、球状化焼鈍前に粗引き伸線工程(伸線引抜き加工)を行って、パーライトラメラー(セメンタイト)の分断及び引抜き歪を付与して、球状化焼鈍を可能にしている。
但し、Cが0.25%以下の低炭素鋼材においては、粗引き伸線加工率が高いほど、球状化焼鈍後のフェライト粒径が小さくなるため、軟質化が困難と考えられていた。このため、Cが0.25%以下の低炭素鋼材の粗引き伸線加工率は、せいぜい減面率が28%未満程度であった。
しかし、本発明では、球状化焼鈍前に、敢えて減面率28%以上の強伸線加工(伸線引抜き加工)を行ない、球状化焼鈍時にセメンタイトの球状化を促進させて、冷間鍛造用肌焼鋼の軟質化を図る。
この球状化焼鈍前の鋼材組織として、本発明では、ベイナイト体積分率が平均で50%以下(0%を含む)であるフェライト・パーライト組織からなるものとする。球状化焼鈍前の鋼材組織が、ベイナイトやマルテンサイト主体の場合には、球状化焼鈍前に減面率28%以上の強伸線加工を行なっても、一回の球状化焼鈍では、セメンタイトの粗大化ができず、冷間鍛造用肌焼鋼の軟質化を図ることは困難である。また、伸線時の変形抵抗が過大となって、伸線ダイスの寿命低下の悪影響の方が大きくなる。
なお、中炭素鋼材では、伸線加工率が高いほど球状化焼鈍時にセメンタイトの球状化が促進されることで軟質化することが知られている。しかし、中炭素鋼材では、低炭素鋼材に比して、パーライト分率が大きく、フェライト分率が小さい。一方、Cが0.25%以下の低炭素鋼材においては、中炭素鋼材よりもフェライト分率が大きい。このため、前記した通り、粗引き伸線加工率が高いほど、球状化焼鈍後のフェライト粒径が小さくなるため、軟質化が困難と考えられ、粗引き伸線加工率を高くすることは避けられていた。
(鋼材組織)
本発明は、熱延後の冷却過程で生じやすいベイナイトの体積分率は、球状化焼鈍による軟質化のためには、少ないほど好ましい。このために、ベイナイト体積分率は、平均で50%以下(0%を含む)、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下とする。そして、組織を主相としてフェライト・パーライト組織からなるものとする。これによって、強伸線加工を行なった場合に、一回の球状化焼鈍で、セメンタイトの球状化および粗大化を促進させ、冷間鍛造用肌焼鋼の軟質化を図れる。金型寿命を伸ばすことができる、
前記した通り、球状化焼鈍前の鋼材組織が、50%を超えるベイナイトや、あるいはマルテンサイト主体の場合には、球状化焼鈍前に減面率28%以上の強伸線加工を行なっても、一回の球状化焼鈍で、セメンタイトの球状化および粗大化を促進させ、冷間鍛造用肌焼鋼の上記軟質化を図ることは困難である。ベイナイトやマルテンサイト主体の組織の場合には、セメンタイトの分散は均一で、焼鈍による球状化自体は容易だが、平均粒子間距離が短いため、軟質化の程度が低い。このため、必要レベルまで軟質化するためには、セメンタイトをオストワルド成長させる必要があり、このためには、生産効率を犠牲にして、球状化焼鈍を繰り返す必要が生じる。
また、球状化焼鈍後の低い硬さが、鋼材の部位に亙って均質化されるように、鋼材の表面から中心までの任意の断面において、上記組織とする。部分的に本発明組織となっていても、一部に50%を超えるベイナイトや、あるいはマルテンサイト主体の組織があった場合、硬さのバラツキが大きくなる。このため、鋼材の部位によっては、硬度が高くなり過ぎ、金型寿命を伸ばすことができないこととなる。
金型寿命の延長に効果のある軟質化の程度は、球状化焼鈍後の鋼材の平均硬度として、Cの含有量が0.2%未満の場合、Crの含有量が1.0%程度で430MPa以下、Crの含有量が1.1%程度では425MPa以下、Crの含有量が1.2%程度では450MPa以下、Cの含有量が0.2%程度の場合、Crの含有量が1.1%程度では440MPa以下、が目安となる。
(鋼材の組成)
本発明鋼材の組成(単位:質量%)について、各元素の限定理由を含めて、以下に説明する。
本発明鋼材の上記組織を得、優れた冷間鍛造性を得る前提として、本発明鋼材の組成は、C:0.25%以下、Si:0.3%以下、Mn:1.5%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.08%以下、N:0.100%以下(これらいずれの元素も0%を含まず)、Cr:0.2〜1.5%、を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材とする。
そして、必要により、上記成分組成において、更に、必要により、Mo:0.4%以下(0%を含まず)、あるいは、更に、V:1.5%以下、Ti:0.2%以下、Nb:0.2%以下(いずれも0%を含まず)の一種または二種以上を含有する。
C:0.25%以下(0%を含まず)。
Cは、鋼の強度を確保するために含有する。C含有量が0.02%未満では鋼の強度が不足する可能性があり、好ましくは0.02%以上含有させる。一方、C含有量が0.25%を超えると、強度やフェライトの硬度が過度に高くなり、冷間鍛造性が却って低下する。このため、Cは0.25%以下の低炭素とし、好ましくは0.02〜0.25%の範囲とする。
Si:0.3%以下(0%を含まず)。
Siは、脱酸元素として、及び固溶体硬化による最終製品の強度を増加させることを目的として含有させる。Si含有量が0.01%未満では、これらの効果による強度が不足する可能性があり、好ましくは0.01%以上含有させる。一方、Siが0.3%を超えた場合、この効果は飽和し、むしろ、硬度の上昇や延性の劣化を招く。このため、Si0.3%以下、好ましくは、0.01〜0.3%の範囲とする。
Mn:1.5%以下(0%を含まず)。
Mnは焼入れ性の向上を通じて、最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。Mnが0.2%未満では、最終製品の強度が不足する可能性がある。一方、Mnが1.5%を超えると、この効果は飽和し、むしろ、硬度の上昇や延性の劣化を招く。このため、Mnは1.5%以下、好ましくは、0.2〜1.5%の範囲とする。
P:0.02%以下(0%を含まず)。
Pは、鋼中に不可避的に含有される成分であるが、Pは鋼中で粒界偏析や中心偏析を起こし、延性劣化の原因となるので、0.02%以下に抑制する。
S:0.02%以下(0%を含まず)。
Sは、鋼中に不可避的に含有される成分であるが、鋼中でMnSとして存在し、冷間鍛造加工にとっては延性を劣化させる有害な元素であるから、0.02%以下に抑制する。
Al:0.08%以下(0%を含まず)。
Alは、脱酸剤として有用であると共に、鋼中に存在する固溶NをAlNとして固定するのに有用である。Al含有量が0.01%未満では、これらの効果が不足する可能性があり、好ましくは0.01%以上含有させる。しかし、Al含有量が0.08%を超えて多すぎると、Al2 3 が過度に生成することとなり、内部欠陥が増大すると共に、冷間鍛造性を劣化することとなる。このため、Alは0.08%以下、好ましくは、0.01〜0.08%の範囲とする。
N:0.100%以下(0%を含まず)。
Nは、鋼中に不可避的に含有される成分であって、他の元素と窒化物を形成して冷間鍛造性を低下させる有害な元素であるから、0.100%以下に抑制する。
Cr:0.2〜1.5%。
Crは、焼入れ性の増加等により最終製品の強度を増加させる。Crが0.2%未満では、最終製品の強度が不足する可能性がある。一方、Crが1.5%を超えると、熱間圧延ままで鋼材の一部(冷却速度の大きい表面あるいは合金元素が偏析しやすい中心部など)にベイナイト、マルテンサイト組織を生じて、硬さの増加を招く。このため、Crは0.2〜1.5%の範囲とする。
Mo:0.4%以下(0%を含まず)
MoもCrと同様に、焼入れ性の増加等により最終製品の強度を増加させる。選択的に含有させる場合、Moが0.05%未満ではこの効果が得られない可能性がある。一方、Moが0.4%を超えると、Crと同様に、熱間圧延ままで鋼材の一部に、ベイナイト、マルテンサイト組織を生じて、硬さの増加を招く。このため、選択的に含有させる場合、Moは0.4%以下、好ましくは、0.05〜0.4%の範囲とする。
V:1.5%以下、Ti:0.2%以下、Nb:0.2%以下(いずれも0%を含まず)。
V、Ti、Nbは、鋼材の結晶粒を細かくする効果があり、結晶粒度調整に選択的に含有させる。選択的に含有させる場合、Ti、Nb含有量が各々0.005%未満、V含有量が0.03%未満では、この効果が得られない可能性がある。一方、V:1.5%、Ti:0.2%、Nb:0.2%を各々超えると、その効果は飽和し、むしろ延性を劣化させる。このため、これらの一種または二種以上を選択的に含有させる場合、V:1.5%以下、Ti:0.2%以下、Nb:0.2%以下とし、好ましくは、V:0.03〜1.5%、Ti:0.005〜0.2%、Nb:0.005〜0.2%、の範囲とする。
(製造方法)
本発明鋼材の好ましい製造条件について以下に説明する。
本発明鋼材の工程自体は、常法による。即ち、線材であれば、上記成分組成を有する鋼を溶製、鋳造し、鋼片(鋳片)を加熱して熱間圧延後に冷却し、コイリングする。その後、線材コイルを酸洗して、伸線引抜き加工し、球状化焼鈍を行ない、冷間鍛造用鋼線材とする。棒鋼の場合も、線材特有の工程を除いて、同じ工程で棒鋼材が製造される。
鋼片の熱間圧延の際に、熱間圧延上がりでの鋼材組織を、鋼材の表面から中心までの任意の断面における組織が、ベイナイト体積分率が平均で50%以下(0%を含む)であるフェライトとパーライトとの複合組織からなるものとする。熱間圧延は、粗圧延、中間圧延、仕上げ圧延からなる。
このためには、熱間圧延の際の鋼片加熱温度を、少なくとも850℃以上とすることが好ましい。この鋼片の加熱温度はビレットが加熱炉を出た段階で測定される。
また、その後の熱間圧延温度をオーステナイト域とすることが有効である。
そして、この熱間圧延後(仕上げ圧延後)の冷却速度の制御も重要である。熱間圧延後のステルモアラインの冷却制御は、鋼材の表面から中心までの任意の断面における組織を、上記ベイナイト体積分率が少なく、フェライトとパーライトとの複合組織とするために有効である。
この熱間圧延後の冷却速度が速い(速過ぎる)場合、鋼材組織が、50%を超えるベイナイトや、あるいはマルテンサイト主体となって、球状化焼鈍前に減面率28%以上の強伸線加工を行なっても、一回の球状化焼鈍で、セメンタイトの球状化および粗大化を促進させ、冷間鍛造用肌焼鋼の上記軟質化を図ることは困難である。また、組織の鋼材の表面から中心までの任意の断面において、上記本発明組織に均質化することが困難となる。
本発明では、更に、圧延後の冷却速度を小さくすることで、上記ベイナイト体積分率が少ない、フェライトとパーライトとの複合組織とすることができる。この熱間圧延後の冷却速度について、熱間圧延した鋼線材をステルモアラインで冷却する際に、ステルモアラインに実質的に載置した直後から少なくとも500℃までの平均冷却速度V(℃/s)を2.0℃/s以下、好ましくは1℃/s以下で冷却することが好ましい。「実質的に載置」とは、風冷設備がある最初の個所での載置を意味する。ステルモアコンベアにて冷却される場合の線材の冷却速度は、厳密には線材コイルの疎部と密部によって異なるが、これらの冷却速度の平均の冷却速度を意味する。
この制御熱延、制御冷却後の線材コイルに、必要により酸洗、被膜処理などの前処理を施した後に、減面率28%以上の伸線引抜き加工を行なう。この強伸線加工によって、歪みが線材に導入されて、一回の球状化焼鈍で、セメンタイトの球状化および粗大化を促進させ、冷間鍛造用肌焼鋼の軟質化を図れ、金型寿命を伸ばすことができる。また、球状化焼鈍時に生じるフェライト再結晶が均一となって、硬さのバラツキが抑制される。この点、減面率は高いほど好ましく、減面率を28%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上とする。
一方、伸線引抜き加工の減面率が28%未満では、熱延後の鋼材を、ベイナイト体積分率が少ないフェライトとパーライトとの複合組織からなるものとしても、一回の球状化焼鈍で、セメンタイトの球状化を促進させ、冷間鍛造用肌焼鋼の上記軟質化を図ることは困難である。また、球状化焼鈍時に生じるフェライト再結晶が不十分あるいは不均一となって、硬さのバラツキが大きくなる原因となる。
前記した通り、球状化焼鈍前の鋼材組織が、50%を超えるベイナイトや、あるいはマルテンサイト主体の場合には、球状化焼鈍前に減面率28%以上の強伸線加工を行なっても、一回の球状化焼鈍で、セメンタイトの球状化および粗大化を促進させ、冷間鍛造用肌焼鋼の上記軟質化を図ることは困難である。
線材などの冷間鍛造用鋼材は、必要により、ボンデ処理などを施されて、冷間鍛造に供せられる。
以下に本発明の実施例を説明する。各成分組成の鋼線材を、前記した常法により、但し熱間圧延後の冷却条件を変えて、熱延後の組織の内、特にベイナイトの体積分率を変化させて、実機にて製造した。そして、これらの鋼線材を表2に示す伸線加工率で伸線引抜き加工を行ない、線径がΦ10〜55mmの鋼線とした上で、球状化焼鈍し、焼鈍後の軟質化と均質化の評価により、冷間鍛造における金型寿命への影響を予測した。
具体的には、表1に示す成分組成の鋼片を加熱、熱間圧延し、表2に示すように、熱間圧延後の冷却条件を変えた上で、共通してΦ15mmの線径の鋼線材を製造した。なお、表2に示す圧延後の冷却速度は、仕上げ圧延後、ステルモアコンベア上に鋼線材が載置されてから500℃まで冷却した場合の、平均冷却速度を示す。これら熱間圧延後の冷却速度は、コイル状線材のリングピッチの制御や、徐冷カバーの使用、風冷の際の風量、風向き、などを組み合わせて、適宜制御した。
この熱延後の鋼線材のベイナイト組織の体積分率は、鋼線材の各試験片の5000倍のSEM(走査型電子顕微鏡:JEOL社製 JSM-5410 )を用いて、鋼線材のの表面から中心までの10箇所の断面における組織を1視野ずつ測定した。これを画像解析ソフト(MEDIA CYBERNETICS TM社製Image-Pro Prus)で、前記SEMで観察した視野におけるベイナイトの合計測定面積の、フェライトやパーライトなどの他の組織とを合計した測定面積に対する、ベイナイト組織の面積分率(%)を各々求め、10箇所(10視野)の結果を平均化した上で、ベイナイト組織の体積分率とした。これらの結果を表2に示す。
なお、製造された各鋼線材の、上記組織観察結果では、上記ベイナイト以外は、全て、フェライトとパーライトの混合組織であった。
そして、これらの鋼線材を、表2に示す各伸線加工率で伸線引抜き加工を行ない、線径がΦ11〜15mmの鋼線とした上で、1回のみ球状化焼鈍し、各々約2トンの鋼線コイルを得た。表2の球状化焼鈍パターンは二種類とし、Aパターンが均熱を760℃×5hrで処理後、13℃/hrの冷却速度で徐冷し、685℃以降は放冷、Bパターンが均熱を760℃×7hrで処理後、11℃/hrの冷却速度で徐冷し、680℃以降は放冷放冷した。
以上の製造された鋼線の平均引張強度(平均TS:MPa)と、最大と最低の引張強度の差ΔTS(MPa)とを測定した。鋼線の平均TSは、製造した上記鋼線コイルの内、トップ、ミドル、ボトムの各1リンク計3リンクのTSの平均を求めた。ΔTSは、これらTSの中から選択される、最大TSと最低TSとの差を求めた。これらの結果を表2に示す。
球状化焼鈍による鋼線の平均TSの軟質化評価の合格基準は、表1の鋼種毎に設定され、鋼種1は430MPa以下、鋼種2は425MPa以下、鋼種3は440MPa以下、鋼種4は450MPa以下、とした。また、球状化焼鈍による鋼線の均質化基準は、ΔTSは20MPa以下とした。
表2から明らかな通り、発明例3〜6、9〜12、15の鋼線材は、本発明成分組成であるとともに、鋼線材の表面から中心までの任意の断面における組織が、ベイナイト体積分率が平均で50%以下であるフェライト・パーライト組織からなる。そして、この鋼線材は、減面率28%以上の伸線引抜き加工が行なわれている。この結果、上記球状化焼鈍後の硬さが低く、かつ均質な鋼線(冷間鍛造用肌焼鋼)が得られている。したがって、冷間鍛造金型の使用寿命を著しく延ばすことができるものと予想される。
これに対して、各比較例1、2、7、8、13、14、16は、発明例に比して、上記球状化焼鈍後の硬さが高過ぎるか、硬さにバラツキがある。このため、冷間鍛造金型の使用寿命を低下させるものと予想される。
例えば、比較例1は、伸線加工率が0%であり、伸線引抜き加工を行なっていない。このため、ベイナイト体積分率が0%以下であるフェライト・パーライト組織からなるものの、上記球状化焼鈍後の鋼線の硬さが高過ぎ、また、硬さにバラツキがある。
比較例2は、伸線加工率が低過ぎる。このため、ベイナイト体積分率が0%であるフェライト・パーライト組織からなるものの、比較例1と同様に、上記球状化焼鈍後の鋼線の硬さが高過ぎ、また、硬さにバラツキがある。
比較例7、比較例13、比較例16は、圧延後の冷却速度が比較的大きいこともあり、鋼線材のベイナイト体積分率が高過ぎる。このため、減面率28%以上の伸線引抜き加工を行なっているにもかかわらず、上記球状化焼鈍後の鋼線の硬さが高過ぎ、また、硬さにバラツキがある。
比較例8、比較例14は、伸線加工率が低過ぎる。このため、ベイナイト体積分率が0%であるフェライト・パーライト組織からなるものの、比較例1と同様に、上記球状化焼鈍後の鋼線の硬さが高過ぎ、また、硬さにバラツキがある。
以上の結果から、本発明要件の臨界的な意義が分かる。
Figure 0004392324
Figure 0004392324
以上説明したように、本発明によれば、一回のみの球状化焼鈍であっても、球状化焼鈍後の硬さが低く、かつ、この硬さが均質な、冷間鍛造性に優れた肌焼鋼の製造方法を提供することができる。このため、本発明鋼材は、被削性を重視した部品類で、切削によって多量に製作される主に小物部品であるネジ類、ニップル類などに有用である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.25%以下、Si:0.3%以下、Mn:1.5%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.08%以下、N:0.100%以下(これらいずれの元素も0%を含まず)、Cr:0.2〜1.5%、を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材であって、鋼材の表面から中心までの任意の断面における組織が、ベイナイト体積分率が平均で50%以下(0%を含む)であるフェライト・パーライト組織からなる鋼材を、減面率28%以上の伸線引抜き加工を行なった後に、球状化焼鈍を行なうことを特徴とする、球状化焼鈍後の硬さが低く、かつ均質な冷間鍛造用肌焼鋼の製造方法。
  2. 前記鋼材が、更に、Mo:0.4%以下(0%を含まず)を含有する請求項1に記載の冷間鍛造用肌焼鋼の製造方法。
  3. 前記鋼材が、更に、V:1.5%以下、Ti:0.2%以下、Nb:0.2%以下(いずれも0%を含まず)の一種または二種以上を含有する請求項1または2に記載の冷間鍛造用肌焼鋼の製造方法。
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