JP4390302B2 - 生分解性を有する成型用不織布、その製造方法、同不織布を用いてなる容器形状品 - Google Patents

生分解性を有する成型用不織布、その製造方法、同不織布を用いてなる容器形状品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、深絞り成型に有用な生分解性を有する成型用不織布、その製造方法、同不織布を用いてなる容器形状品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の成型用不織布としては、従来から、未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布が検討されている(特開昭51−40475号公報)。しかし、加熱成型時に繊維に熱劣化を生じてその物性が低下するために、十分満足するものが得られていない。
【0003】
その改良として、半延伸状態のポリエチレンテレフタレート繊維からなる成型用不織布が提案されている。この種の成型性不織布としては、例えば、特開昭59−179856号公報、特開昭60−199957号公報、特開昭60−199961号公報、特開昭63−120154号公報などに記載されたものがある。
【0004】
しかし、これらは、いずれもポリエチレンテレフタレートの単一成分からなる長繊維にて構成されているため、成型時の不織布の延展性、保形性に難点がある。このため、成型直前に基布を予熱したり、成型用金型の加熱温度を高くしたりするなどの処方を取り入れても、成型時の張力が高く、品質の安定した成型物が得られにくいという問題点がある。またヒートシール性に乏しく、このため成型品の適用範囲がきわめて狭くなるという問題点もある。
【0005】
また、これらの成型品は、使用後自然界に放置されると分解されにくいため、いろいろな問題を生じている。したがって、使用後は土中に埋められたり焼却することが必要となるが、生分解性が低いため、土中に埋められるとその土地の利用に制限が生じている。
【0006】
このような問題を解決するためには、自然界で分解される素材すなわち生分解性重合体を用いることが考えられる。このような生分解性重合体としては、セルロース、セルロース誘導体、キチン、キトサン等の多糖類、微生物により作られるポリ3−ヒドロキシブチレートや3−ヒドロキシブチレート及び3−ヒドロキシバリレートの共重合体、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステルが知られている。
【0007】
しかしながら、主に使用されるセルロース系のコットンや再生セルロースは、安価であるが、熱可塑性でないため加工成型ができない。またバインダー繊維としてポリオレフィン、ポリエステル繊維等を用いると、これらの繊維は生分解されにくいため問題となる。微生物により作られるポリ3−ヒドロキシブチレートや3−ヒドロキシブチレート及び3−ヒドロキシバリレートの共重合体は、高価であり用途が限定されるという問題がある。ポリカプロラクトンは、比較的安価な生分解性ポリマーであるが、融点が約60℃と低く、この温度は流通段階で生じ得る温度であり、耐熱性の点で問題がある。
【0008】
また、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等は、比較的安価な生分解性ポリマーであり、融点も100℃を超える温度を有しているが、結晶化が遅く、したがって紡糸時に繊維糸条間で密着が生じやすく、高伸度の繊維や不織布が得られにくいといった問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を解決し、不織布によって容易に深絞り成型品を得ることができ、しかも成型品にヒートシール性を具備させることができ、また成型品に生分解性を付与できるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。すなわち、本発明は、
(1)熱プレス成型により容器状に形成するための成型用不織布であり、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体よりなる2種成分の芯鞘型複合長繊維にて構成され、前記ポリ乳酸とポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体とは融点が100℃以上であり、鞘成分の融点は芯成分の融点よりも低く、芯成分の複屈折率は0.001〜0.012であり、鞘成分の複屈折率は芯成分の複屈折率よりも低く、前記繊維が集積され、これら繊維相互間が鞘成分の軟化又は溶融によって融着された部分熱融着領域が散点状に設けられ、乾熱90℃雰囲気下で測定した縦方向破断伸度と横方向破断伸度との和が180%以上であることを特徴とする生分解性を有する成型用不織布と、
(2)ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体であって、融点が100℃以上でありかつ相互に異なる2種のものを用いて、高融点成分を芯部に配しかつ低融点成分を鞘部に配して芯鞘型複合長繊維を紡糸し、得られた糸条を冷却固化させ、次にこの糸条を3000m/分以下で牽引・開繊して、芯成分の複屈折率が0.001〜0.012であり、かつ鞘成分の複屈折率が芯成分の複屈折率よりも低い芯鞘型複合長繊維からなる繊維ウェブとし、その後、前記鞘成分を軟化させて繊維ウェブの繊維相互間を疑似接着させ、引き続いて前記鞘成分を軟化又は溶融させて繊維相互間を部分熱融着させた融着区域を散点状に形成することで、前記繊維ウェブを一体化することを特徴とする生分解性を有する成型用不織布の製造方法と、
(3)上記成型用不織布のプレス成型により容器状に形成されていることを特徴とする容器形状品と、
(4)上記成型用不織布を予熱して構成繊維の鞘成分を軟化溶融させ、その後に、加熱された金型によって前記成型用不織布をプレス成型することを特徴とする容器形状品の製造方法と、を要旨とするものである。
【0011】
したがって本発明によれば、ポリ乳酸とポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体との融点が100℃以上であり、鞘成分の融点は芯成分の融点よりも低く、芯成分の複屈折率は0.001〜0.012であり、鞘成分の複屈折率は芯成分の複屈折率よりも低いという特定の繊維にて形成された不織布を成型用基布として用いるので、低温での深絞り成型性が良好で、かつ熱劣化も生じない。この成型用不織布は、成型加工に伴う温度条件の幅が広く、成型品の品質が極めて安定であり、成型加工における操業上も問題なく、また使用後の廃棄についても生分解性を有しているため問題とならない。特に、生分解性を有する重合体として、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体を用いているため、他の生分解性樹脂に比べ紡糸性が良く、熱安定性も優れているという利点がある。また、芯鞘型複合繊維の鞘成分として、芯成分に比べ融点が低い重合体を配しているので、成型後においてもヒートシール性が良好であり、食品型容器、各種生活資材用通気通液成型容器、自動車内装用各種成型材、育苗用成型容器、インテリア寝装材、フィルターなど汎用に展開できるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を詳細に説明する。本発明の生分解性を有する成型用不織布の構成繊維に用いられる重合体は、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体であって、融点が100℃以上のものである。このようなポリ乳酸としては、ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、D−乳酸とL−乳酸との共重合体などが挙げられる。このようなポリ乳酸は、乳酸の脱水縮合、又は乳酸の環状エステルの開環重合により得ることができる。ポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体としては、乳酸に、ε−カプロラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、セバチン酸等のジカルボン酸類、ラウリン酸、ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸類が一種又は二種以上共重合されたものを用いることができる。共重合することにより融点が低下するようにコントロールすることができる。
【0013】
このように本発明は、生分解性を有する成型用不織布の構成繊維に用いられる重合体として、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体を用いているため、生分解性を有する重合体として上述のポリカプロラクトンやポリブチレンサクシネートやポリエチレンサクシネートなどを用いた場合に比べ、結晶化が速く紡糸性が良いだけでなく、熱安定性にも優れているという利点を得ることができる。
【0014】
これらポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体の数平均分子量は、10000以上150000以下が好ましい。より好ましくは30000以上120000以下である。10000以下では、繊維として十分な強力が得られない。また150000を超えると紡糸時に高粘度となり、製糸性が低下することになる。
【0015】
不織布を構成するための、生分解性を有する繊維は、上述のポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体であって、融点が100℃以上のもの2種よりなる芯鞘型複合長繊維で、繊維の鞘成分の融点は芯成分の融点よりも低く、芯成分の複屈折率が0.001〜0.012であり、鞘成分の複屈折率が芯成分の複屈折率よりも低いものである。この繊維は、伸度が100%以上である高伸度繊維である。
【0016】
この繊維を用いて不織布を製造するために熱接着を行い、また熱接着後にある程度の強度を維持するためには、上述のように、この繊維の融点が100℃以上であることが必要である。また不織布によって容器形状品を成型加工する際に、ある程度の耐熱性が要求される。例えば乾燥工程や成型工程等の加工工程を通過させることや、製品の流通段階において夏期には80℃程度のところに保管されることなどから、熱安定性を考慮して、製品が軟化したり変形したりするおそれを生じないようにするためには、繊維の融点は少なくとも100℃が必要となる。
【0017】
この繊維においては、上述のように芯成分よりも鞘成分の方が融点が低いことが必要であるが、その融点差が5℃以上であることが好適である。このように芯成分と鞘成分との融点差を5℃以上とすることで、後述のように繊維相互間を鞘成分の軟化又は溶融により融着させて不織布化を行うときに、芯成分が溶融せずに繊維形態を維持させることが可能となる。また、この不織布を用いて容器形状品を成型するための熱処理の際に許容される温度範囲を広くすることができ、しかも得られる成型品の品質を安定させることができる。
【0018】
重合体の複屈折率については、できるだけ配向を抑える観点から、低いことが好ましい。特に芯成分の複屈折率が鞘成分のそれよりも高く、また芯成分の複屈折率が0.001〜0.012であることが必要である。芯成分の複屈折率が0.015を超えると、芯成分の軸方向における分子配向の程度が過度となって、成型時の応力に応じきれなくなり、深絞り成型ができなくなる恐れが生じる。一方繊維が全く配向していないと紡糸時に密着が生じたり製糸性が低下することがあるため好ましくない。芯成分の複屈折率の好ましい範囲は、0.003〜0.010、より好ましい範囲は0.003〜0.008である。
【0019】
鞘成分の複屈折率が芯成分のそれよりも低い理由は、分子配向の程度を下げてバインダー特性としての効果をより発揮させるためである。したがって鞘成分の複屈折率は0.010以下であることが好適であり、できるかぎり低い方が不織布の接着強力を上げる観点から好ましい。また、鞘成分よりも芯成分の複屈折率を高くすることで、成型時の熱安定性を具備させることができる。しかし、鞘成分の配向が全く進んでいないと、繊維を紡糸した際に糸条間の密着が生じ、開繊性の良い均一な地合いの不織布が得られにくいといった問題が生ずることがあり、好ましくない。したがって、鞘成分の複屈折率のより好ましい範囲は0.001〜0.010である。
【0020】
この芯鞘型複合長繊維は100%以上の高伸度であることが必要であり、100%未満では熱変形を行い難くなって成型加工用に適さない。この繊維の伸度を100%以上とするためには、繊維の芯成分の複屈折率を0.001〜0.012とするとともに、その鞘成分の複屈折率を0.001〜0.010とすることが必要である。このように繊維の伸度が100%以上であることで、この繊維によって構成される成型用不織布の90℃雰囲気下での縦伸度と横伸度の和を180%以上にすることができ、またこの不織布によって成型される容器形状品を成型斑のない良好なものとすることができる。
【0021】
本発明の繊維は、長繊維が最も好ましいが、更にこの繊維を用いて機械的な捲縮を付与した後に適当な長さにカッティングした短繊維、あるいはショートカット綿のいずれでも良く、使用目的によって適宜選択できる。この場合の長繊維は、後述の成型用長繊維不織布に適用したり、あるいは、長繊維を編織物とした後、成型用基布としたりすることが可能である。また、短繊維として形成した場合も、ニードルパンチ短繊維不織布、流体交絡短繊維不織布、エンボス加工不織布等に形成したものを成型加工用基布として展開することが可能である。
【0022】
芯鞘型複合長繊維の繊度は、30デニール以下、特に15デニール以下であることが好ましい。繊度が30デニールを超えると、長繊維の剛性が高くなって、粗硬感が強くなり、汎用的な用途に使用しにくくなるので好ましくない。また溶融紡糸工程において、紡出糸条の冷却固化に支障を来したりするので好ましくない。
【0023】
芯鞘型複合長繊維中における、芯成分と鞘成分との重量比は、芯成分1重量部に対して鞘成分が0.1〜5重量部であるのが好ましく、特にこれが0.2〜4重量部であるのが最も好ましい。鞘成分は、融着区域において複合長繊維相互間を融着させる成分であるため、その重量割合が0.1重量部未満になると、繊維同士の融着が不十分となって、不織布の引張強力が低くなる恐れがある。一方鞘成分が5重量部を超えると、融着区域における融着が激しくなって、融着区域中において繊維形態を維持している箇所の割合が少なくなり、このため風合いが硬くなると共に不織布強力が低下する恐れがある。
【0024】
芯鞘型複合長繊維は、芯成分と鞘成分とが同心であっても構わないし、やや偏心していても特に構わない。なお、上記繊維の芯、鞘成分中には、必要に応じて、艶消し剤、顔料、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、結晶化促進剤等の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加しても良い。
【0025】
本発明に係る生分解性を有した成型用不織布は、上述のような特定の芯鞘型複合長繊維を構成繊維とするものである。この芯鞘型複合長繊維は、上述のように、芯成分よりも融点の低いポリ乳酸又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体であって融点が100℃以上のものが鞘成分として採用されるものである。この理由は、不織布に低温ヒートシール性を保有するためであり、これにより鞘成分の融点付近の低温で他素材とのヒートシールが可能となるためである。
【0026】
長繊維不織布中には、芯鞘型複合長繊維相互間が融着された融着区域が、散点状に多数設けられていることが必要である。この融着区域は、熱圧着によって、複合長繊維間が鞘成分の軟化又は溶融によって融着したものである。この鞘成分に対し芯成分は、軟化または溶融は行わずに、繊維形態を維持したままあるいは繊維形態が若干変形した状態で存在する。その散点状に多数設けられた融着区域の形態は、丸型、楕円型、スリット型、十字型、十葉型、三角型、三葉型、四角型、五角型、六角型、八角型、ひし形、T型、井型、長方形四葉型、五葉型、六葉型、八葉型、卍型等の任意の形態を採用できる。この散点状に多数設けられた融着区域は、圧着面積率で示し測定されるものである。
【0027】
この圧着面積率は、不織布の全体面積に対する融着区域の面積によって表されるものであるが、3〜50%であるのが好ましい。圧着面積率が3%未満であると、不織布の柔軟性は向上するが、不織布強力の低下をきたしたり、不織布が擦れた場合に毛羽が発生し易くなったりして、実用面から問題が生じる。また、圧着面積率が50%を超えると、不織布自体が極めて硬くなり、ハンドリング性が悪くなる。また成型時の応力が高くなり、成型性の観点からも問題となることがある。したがって、圧着面積率は、4〜40%であることがより好ましい。これらの点圧着部で融着されることによって不織布が形態保持されるのであり、しかも、その他の部分は熱圧着されないため、不織布の曲げ易さ、ハンドリングのよさ、延展性などが付与されるのである。また一つの融着区域の大きさは、0.1〜2.0mm程度であることが好ましい。
【0028】
圧着点の密度は、6〜150個/cmが好ましい。6個/cm未満であると、不織布の柔軟性は向上するが、不織布強力が低下しやすくなったり、また不織布が擦れた場合に毛羽が発生し易くなったりして、実用面から問題が生じる。また、圧着点の密度が150個/cmを超えると、不織布自体が極めて硬くなり、ハンドリング性が悪くなる。したがって、圧着部の密度が8〜120個/cmであるのがより好ましい。さらに、圧着点の密度が10〜100個/cmであるのが最も好ましい。
【0029】
本発明の成型用不織布を90℃の乾熱雰囲気下で引張った時の縦方向の破断伸度と横方向の破断伸度との和は、180%以上であることが必要である。これは、容器形状品の成型時の基布の延展は縦方向と横方向との両方に寄与し、その結果これらの和が深絞り成型性に良否を与えるためである。そして成型時においては、深絞り比すなわち成型金型における成型品の深さ/相当口径が0.3を超えるものでは、少なくともこの値が160%必要となるからである。このように縦方向と横方向との破断伸度の和を180%以上とするためには、100%以上の破断伸度を有する繊維で不織布を構成することが必要である。
本発明は、この深絞り比が0.4以上、好ましくは、0.5以上、最も好ましくは、0.6以上となるような成型が可能な、成型用長繊維不織布やその製造方法などを目指したものである。したがって、本発明の不織布ではこの破断伸度を180%以上とするが、好ましくは200%以上である。
【0030】
本発明の成型用不織布を90℃の乾熱雰囲気下で1分間熱処理した際の面積収縮率は、5%以下であることが好適である。この面積収縮率が大き過ぎると、この不織布を用いて容器形状品を成型する直前の予熱の際や、成型時の金型による加熱の際に、不織布が幅入りして、成型金型に見合った目標の成型物が得られなくなる問題や、成型物の品質管理上の問題が生じやすくなる。
【0031】
本発明の不織布の目付は、特に限定しない。比較的低目付の不織布は、通気性や排水性を重視した分野、例えば排水口フィルターや水切りネット用の成型品の用途に適している。これに対し比較的高目付の不織布は、育苗用ポットやフィルターなどの、広範囲の用途に展開できる。
【0032】
本発明の容器形状品は、上述の生分解性を有する成型用不織布のプレス成型により容器状に形成されたものである。このプレス成型により形成された容器形状品は、フランジ部と、このフランジ部から3次元方向に突出した容器部とを有するようにするのが好適である。
【0033】
次に、本発明の生分解性を有する高伸度繊維と、生分解性を有する成型用不織布と、この不織布を用いた容器形状品との製造方法について説明する。なお、本発明の成型用不織布は、他の方法によって製造されたものであっても差し支えない。
【0034】
本発明の生分解性を有する高伸度繊維は、通常の芯鞘型複合紡糸口金を用いて溶融紡糸し、延伸することなく熱処理することで製造できる。溶融紡糸の温度は、重合体の分子量により異なるが、150〜230℃とすることが好ましい。熱処理は、余りリラックスを取らず、かつ延伸されない条件下で、鞘成分のガラス転移温度以上かつ融点よりも50℃低い温度以下で行うのが好適である。そして熱処理した後巻き取ることで、所望の繊維を製造できる。
【0035】
次に、この生分解性を有する高伸度繊維の詳細な製造方法とともに、本発明の成型用長繊維不織布の製造方法について説明する。この不織布を製造するためには、一般に公知の溶融複合紡糸によるスパンボンド法を適用することができる。すなわち、まずポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体よりなる融点の異なる2種の重合体であって、融点が100℃以上のものを個別に150〜230℃で溶融計量し、高融点成分を芯成分とするとともに低融点成分を鞘成分とした芯鞘型複合紡糸を行う。この場合の複合紡糸口金は、通常の芯鞘型複合口金装置のものを使用することができる。引き続いて、紡出された複合繊維を、吹付装置で冷却固化し、さらにエアーサッカーなどの引き取り手段で3000m/分以下の速度で牽引−開繊させる。
【0036】
本発明においては、繊維糸条をエアーサッカーなどにより牽引する際には、糸切れが生じない範囲内でできるだけ低紡速にすることが望ましい。なぜなら、このように低紡速とすることで、上述のように芯成分の複屈折率を0.001〜0.012とし、かつ鞘成分の複屈折率を芯成分の複屈折率よりも低くし、繊維の配向つまり結晶化を低め、成型加工の観点から熱変形しやすくさせるためである。
【0037】
すなわち、低融点成分を鞘成分に用いた芯鞘構造の複合繊維を紡糸する際には、鞘部の成分の紡糸応力が殆ど芯部に集中するため、本発明の場合における芯部の高融点成分は、繊維の配向が鞘部よりも幾分高くなる。これに対し鞘部の低融点成分は、バインダー成分として寄与するため、より配向が少なくてよいのであるが、その通りの性状となる。このようにすることで、芯成分がある程度配向され、かつその周囲を鞘成分が覆った構成となるため、熱劣化をきわめて少なくすることができる。こうするために、上述のように牽引速度は3000m/分以下とするが、好ましくは2800m/分以下、より好ましくは2500m/分以下である。なお、この牽引速度は、1500m/分程度の低速であっても、繊維及び不織布自体の熱劣化は生じない。
【0038】
また本発明では、繊維糸条に十分な延伸を施さずに3000m/分以下で引き取ることで、伸度が100%以上の高伸度繊維を製造することができる。高伸度繊維を最終製品とする場合は、上述の工程のみで処理を終わる。これに対し成型用の長繊維不織布を製造する場合には、得られた繊維糸条を移動するコンベヤネット上に堆積させて繊維ウェブとする。
【0039】
本発明では、成型用不織布を製造するに際し、ウェブを形成した後の熱処理によって、芯鞘型複合長繊維の鞘成分を軟化させて繊維ウェブ表層の繊維相互間を疑似接着させる。そして、引き続き熱圧着処理を施して、この芯鞘型複合長繊維の鞘成分の軟化又は溶融によって繊維相互を融着させて、融着区域を散点状に設ける。これにより繊維ウェブを一体化させ、その後に捲取機で巻き取って不織布を製造することができる。
【0040】
本発明においては、繊維ウェブとした後に、上述のように芯鞘型複合長繊維の鞘成分を軟化させることによって繊維ウェブ表層の繊維相互間を疑似接着させるが、その理由は次の通りである。すなわち、上述のように芯成分の複屈折率が0.001〜0.012であり、鞘成分の複屈折率は芯成分の複屈折率よりも低く、したがってウェブを構成する長繊維自体の結晶化が余り進んでいないことで、熱収縮率が高く、したがって直接に次の熱圧着処理工程に導入すると、ウェブの収縮乱れや大幅な幅入りが生じ、品位の悪い不織布しか得られない、という問題の発生を防ぐためである。また、このようにウェブ表層の繊維相互間を疑似接着させることで、コンベヤネットから熱圧着処理工程へのウェブ移行がスムーズとなり、操業性の向上を図ることが可能となる。
【0041】
繊維ウェブ表層の繊維相互間を良好に疑似接着させるためには、温度条件を、芯鞘型複合長繊維の鞘成分の融点よりも70℃低い温度からこの融点よりも30℃低い温度までの範囲とし、かつ線圧として、0.1〜5kg/cm程度の圧力を付与するのが好適である。
【0042】
次に、この繊維ウェブに対し、芯鞘型複合長繊維の鞘成分の軟化又は溶融によって融着された融着区域を散点状に形成する。その際には、乾式不織布用に一般に使用されている公知の熱エンボス加工機や超音波溶着機などの装置を適用することができる。
【0043】
例えば、熱エンボス加工機を適用する場合は、加工温度として、一般的には、熱接着成分すなわち鞘成分の融点よりも60℃低い温度から、この鞘成分の融点よりも5℃低い温度までの範囲を好適に適用できる。鞘成分の融点よりも5℃低い温度を超えた温度とすると、不織布の風合いが硬くなって、ハンドリングが悪く、不織布化のための操業性が低下しやすくなる。また、深絞り成型時の加工性も悪くなりやすくなる。一方、鞘成分の融点よりも60℃低い温度未満の温度とすると、ウェブが熱圧着されにくく不織布の形態保持性が低下しやすくなる。また熱エンボス加工温度が低いとウェブが彫刻ロールに取られ、操業性良く不織布を製造することができにくくなる。上述のように加工温度はいずれも融点以下の温度であるが、鞘成分の軟化点がその加工温度の範囲内にあり、しかも彫刻ロールの圧着ポイント部で圧力が付与されることにより、確実に融着された状態となる。
【0044】
また、不織布を製造する上では、この不織布における上述の点圧着の形態すなわち模様が、不織布強力、柔軟性、風合いなどに影響するため重要であり、彫刻ロールの彫刻面積やその形状が一つのポイントとなる。彫刻面積の基準は、熱圧着させる時の圧着面積率で示すことができ、この圧着面積率の好ましい範囲は上述の通りである。
【0045】
一方、超音波溶着機を用いて融着区域を散点状に形成する際には、彫刻ロールと超音波溶着機構をもった支持体との間に繊維ウェブを通布し、20kHz程度の超音波を発振すればよい。溶着状態を変更する場合には、用いる素材によって超音波の波長を適宜変更すればよい。この場合の線圧としては、熱エンボス加工機の場合とは異なって0.5〜2kg/cm程度を用いればよい。また、圧着面積率は4〜50%が好ましい。この超音波溶着により点圧着を施す方法は、点圧着部以外の繊維が殆ど熱の影響を受けず、風合いが硬くならないため、より好ましい。
【0046】
本発明においては、このようにして得られた不織布のプレス成型によって、容器形状品が得られる。この容器形状品は、フランジ部と、このフランジ部から3次元方向に突出した容器部とを有するように構成するのが好適である。
【0047】
このような容器形状品を製造する際には、上述の成型用不織布をまず予熱し、その後に金型を用いてプレス成型する。この予熱によって、互いに接触する繊維の鞘成分どうしを軟化溶融させ、その後の融着によって最終成型品に耐摩耗性や撥水性を付与することができる。また構成繊維の接触部のみが鞘成分どうしによって融着し、接触部以外では融着は生じないため、最終成型品に通気性を付与することもできる。
【0048】
この予熱の際には、不織布を構成する繊維の鞘成分の軟化温度以上かつ鞘成分が溶融しない温度以下の範囲で処理を行うことで、繊維の鞘成分どうしが良好に融着する。この処理温度が鞘成分の軟化温度未満であると、処理温度が低過ぎて、鞘成分どうしを良好に融着させにくくなる。また鞘成分の溶融温度を越えると、鞘成分のみならず芯成分もが軟化しすぎて、所要の繊維形態を維持させにくくなる。
【0049】
金型を用いたプレス成型に際し、その金型の温度は、芯成分のガラス転移温度以上かつ鞘成分の融点未満とするのが好適である。金型の温度が芯成分のガラス転移温度よりも低いと、プレス成型性が悪化しやすくなって、所要の深絞り加工を行いにくくなる。反対に金型が鞘成分の融点を越えた温度となると、この鞘成分が溶融してしまって、やはりプレス成型性が悪化しやすくなる。
【0050】
上述のように、プレス成型を行う材料としての不織布を構成する芯鞘型複合長繊維の芯成分の複屈折率を0.001〜0.012とし、鞘成分の複屈折率を芯成分の複屈折率よりも低くして、繊維の配向すなわち結晶化を低めることで、プレス成型加工の際に熱変形しやすく、したがって良好な成型性を確保することができる。また、上記不織布における乾熱90℃雰囲気下で測定した縦方向破断伸度と横方向破断伸度との和を160%以上としたことで、上述のようにプレス成型時に良好に深絞り加工することができる。さらに、上述のように不織布の構成繊維における芯成分と鞘成分とに融点差をもたせることで、予熱時およびプレス成型時に許容される温度範囲を広くすることができ、また得られる成型品の品質を安定させることができる。
【0051】
本発明によれば、プレス成型を行う材料としての不織布を構成する芯鞘型複合長繊維の芯成分よりも鞘成分の融点が低いため、プレス成型によって得られた容器形状品にヒートシール性を付与することができる。
【0052】
また、予熱の段階とプレス成型の段階とにおいて材料としての不織布を加熱するため、構成繊維に熱収縮応力が付与される。このため、得られた容器形状品は、プレス加工されたにもかかわらず、良く目が詰まっており、極端な延伸点が存在しないものとすることができる。したがって、たとえば育苗用の容器に適用した場合には、良好な根切り性を付与することができる。
【0053】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例および比較例における各種特性の測定及び評価は、次の方法により実施した。
【0054】
(1)重合体の融点:パーキンエルマ社製の示差走査型熱量計 DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とした。
【0055】
(2)繊維の芯成分および鞘成分の複屈折率:カールツアイスイエナ社製の干渉顕微鏡 インタファコを用い、封入剤として流動パラフィンとα−ブロムナフタリンとの混合液を用いた。そして、芯部と鞘部との繊維の太さを考慮して繊維を径方向に多層に分割し、表層からの2層の複屈折率の平均値を鞘成分の複屈折率とし、中心部からの2層の複屈折率の平均値を芯成分の複屈折率とした。
【0056】
(3)繊維の伸度:東洋ボールドウイン社のテンシロンUTM−4−1−100を用い、JIS L 1069にしたがい測定した。
(4)不織布の強力、伸度:東洋ボールドウイン社製の テンシロンUTM−4−1−100を用い、JIS L−1096に記載のストリップ法にしたがい測定した。すなわち、試料幅5cm、試料長15cmの、不織布の縦方向(MD)の試料と横方向(CD)の試料とを各々10個準備し、掴み間隔10cm、引張速度10cm/分で測定した。その場合の最大の個々の引張強力を平均化した値をもって不織布の引張強力とした。また、その時の破断時の伸度を平均化した値をもって不織布の引張伸度とした。
【0057】
(5)圧着面積率:不織布の小片を走査型電子顕微鏡で拡大撮影し、最小繰返単位の面積に対する点圧着されている部分の面積の総和の比率を個々に10回測定したときの平均値で、不織布の圧着面積率を測定した。
【0058】
(6)不織布の乾熱雰囲気下の面積収縮率:1m×1mの大きさの試料の中に、不織布の縦方向が5cmかつ横方向が5cmとなる大きさの枠を4か所記載した。その後、四フッ化エチレン樹脂製のシートのうえに上記試料を置き、熱風循環型熱処理機を用いて、加熱温度90℃、熱処理時間1分で処理した。その後に放冷し、上記枠の個々の長さを測定し、最初に記載した元の面積から熱処理後の面積を減算して、その差についての元の面積に対する割合を算出して、面積収縮率(%)とした。なお、それらを平均化して、HWSで示した。
【0059】
(7)加熱雰囲気下の破断伸度:インストロン社製の加熱雰囲気下引張試験機 MODEL1122を用い、JIS L−1096に記載のストリップ法にしたがい測定した。すなわち、試料幅5cm、試料長15cmの、不織布の縦方向(MD)の試料と横方向(CD)の試料とを各々10個準備し、掴み間隔10cm、引張速度10cm/分、内部の雰囲気温度90℃、温度保持時間1分で測定した。その時の破断時の伸度を平均化して、不織布の破断伸度とした。
【0060】
(8)耐摩耗性:縦20cm×横3cmの試験片を作成し、摩擦試験機(学振型)を用いて測定した。すなわち、JIS L−0803の綿布3号を摩擦布として用いて、荷重500gで100往復摩擦させた。その後、試験片の外観変化を下記の判定基準に照らして判定し、耐摩耗性を評価した。
【0061】
3級:全く毛羽立ちがない
2級:少し毛羽立ちがあるが目立たない
1級:毛羽立ちが目立つ
(9)生分解性能:試料片を土中に埋設し、1年、2年及び3年経過後に取り出してその形態を観察し、以下の3段階で評価した。
【0062】
○:試料片が埋設後2年経過するまでは不織布の形態を保持し、3年経過時点では崩壊していた。
△:試料片が埋設後2年経過するまでに不織布の形態を崩壊させていた。
【0063】
×:試料片が埋設後3年を経過しても不織布の形態を保持していた。
(10)成型性:クランプに保持した不織布を鞘成分の融点よりも30℃高い温度の雰囲気下で10秒予熱し、次に直ちに加熱金型上に移動させて、容器形状にプレス成型を行った。金型は、上径50mmφ、下径40mmφ、深さ40mm、底部の隅部の曲率半径3mmであった。またプラグとのクリアランスは0.5mmとし、金型及びプラグの温度は共に70℃に保持させた。成型後は冷却し、成型物を取り出して深さを測り、金型との深さの比による熱セット率を求め、下記の基準で判定を行った。また成型物の外観検査を行い、下記の基準で成型性の判定を行った。
【0064】
熱セット率
○:熱セット率が90%以上
△:熱セット率が70%以上90%未満
×:熱セット率が70%未満
外観検査
◎:成型物に異常が全く認められない
○:成型物はおおむね良好
△:成型斑がややある
×:成型斑が目立つまたは穴あきがある
(実施例1)
鞘成分として融点が140℃、ASTM−1238Eの処方で測定したメルトインデックス値(190℃)が35g/10分、D−乳酸/L−乳酸のモル比(D/L比)が4/96であるポリ乳酸を用い、芯成分として融点が168℃、前記メルトインデックス値(190℃)が45g/10分、D/Lのモル比が1/99であるポリ乳酸を用いた。これら鞘成分と芯成分とを個別に溶融計量し、通常の丸孔を有する芯鞘型複合紡糸用口金装置(温度210℃)を用い、単孔吐出量を0.88g/分(芯鞘複合比は重量比で1:1)として紡出した。
【0065】
その後、冷却装置を介してエアーサッカーで紡出糸条を2200m/分で牽引し、開繊し、移動するコンベヤネット上に堆積して、繊度が3.6デニールの繊維ウェブを得た。この繊維の芯成分の複屈折率は0.011、また鞘部の複屈折率は0.009であった。この繊維ウェブを、加熱回転ロール(温度が80℃、線圧が0.5kg/cm)に接触させ、ウェブの表層を疑似接着させた。その後、圧着面積率が15%、圧着部密度が22個/cm、圧着部面積が0.7mmの彫刻ロールと、フラットロールとを備えた熱エンボス加工機で、加工温度を115℃、線圧を40kg/cmとして、上述の表層疑似接着ウェブを点圧着した。これにより、目付が約100g/mの長繊維不織布を製造した。また、上述のようにして不織布の特性を測定した。
【0066】
その不織布を成型加工用基布とし、上述の(10)の条件で成型加工を行って成型性を評価した。以上の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、安定した操業状態で長繊維不織布を得ることができた。得られた不織布は、生分解性能及び熱安定性を持ち、成型加工のために必要な基本性能を有するものであって、成型性が良好で深絞り成型に好適であることが分かった。
【0067】
【表1】
Figure 0004390302
【0068】
実施例2
鞘成分として融点が120℃、ASTM−1238Eの処方で測定したメルトインデックス値(190℃)が35g/10分、D−乳酸/L−乳酸のモル比(D/L比)が8/92であるポリ乳酸を用い、芯成分には実施例1同じ重合体を用いた。また、紡糸時の単孔吐出量を1.79g/分、紡糸速度を2300m/分、単糸繊度を7デニール、芯鞘複合比を重量比で芯/鞘:1.5/1とした。そして、それ以外は実施例1と同じ処方として、目付が約100g/mの長繊維不織布を製造した。また、その不織布を成型加工用基布とし、成型加工を行って、成型性を評価した。その結果を表1に示す。
【0069】
表1から明らかなように、得られた成型用不織布は、常温下での引張伸度はやや低いものの、加熱雰囲気下の破断伸度(MD+CD)は高い状態にあるため、成型性が良好であり、深絞り成型に好適であることが分かった。
【0070】
比較例1
紡糸時の単孔吐出量を1.17g/分、紡糸速度を3500m/分とした。そして、それ以外は実施例1と同じ処方で、単糸繊度が3デニール、目付が100g/mの長繊維不織布を製造し、その特性を測定した。また得られた不織布を成型加工用基布とし、成型加工を行って、成型性を評価した。その結果を表1に示す。
【0071】
表1から明らかなように、得られた長繊維不織布は、芯部と鞘部の複屈折率が共に比較的高く、加熱雰囲気下の破断伸度(MD+CD)がやや低い状態にあるため、成型性がやや劣る傾向にあった。
【0072】
比較例2
紡糸時の単孔吐出量を1.60g/分、紡糸速度を4000m/分とした。そして、それ以外は実施例1と同じ処方で、目付が約100g/mの長繊維不織布を製造し、その特性を測定した。また、その不織布を成型加工用基布とし、成型加工を行って、成型性を評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
表1から明らかなように、得られた長繊維不織布は、生分解性能を有し、通常の機械的特性は優れているものの、複屈折率が高過ぎたために加熱雰囲気下の引張伸度(MD+CD)が低く、成型用不織布としては不適であり、成型性が劣っていた。
【0074】
比較例3
通常の単軸型溶融押し出し機を適用し、融点が256℃、固有粘度が0.70(フェノール:テトラクロルエタン=1:1の混合溶媒中、20℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを290℃で溶融計量し、丸孔を有する単一型紡糸用口金装置(温度290℃)を用い、単孔吐出量を1.67g/分として紡出した。その後、冷却装置を介してエアーサッカーで5000m/分で牽引し、開繊し、移動するコンベヤネット上に堆積して、繊度が3デニールの繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、圧着面積率が15%、圧着部密度が22個/cm、圧着部面積が0.7mmの彫刻ロールと、フラットロールとからなる熱エンボス加工機で、加工温度が230℃、線圧が40kg/cmの条件で点圧着し、目付が約100g/mの長繊維不織布を製造した。またその不織布の特性を測定した。さらに、その不織布を成型加工用基布とし、成型加工を行って、成型性を評価した。その結果を表1に示す。
【0075】
表1から明らかなように、得られた長繊維不織布は、通常の機械的特性は優れているものの、その構成繊維が本発明品のようなポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体よりなる2種成分の芯鞘型複合長繊維を用いたものではなく、また牽引速度も高過ぎたため、生分解性を有しないばかりか、加熱雰囲気下の引張伸度(MD+CD)が低く、成型用不織布としては不適であり、成型性は著しく劣っていた。
【0076】
比較例4
紡糸時の単孔吐出量を0.83g/分、紡糸速度を2500m/分、熱エンボス加工温度を150℃とした。そして、それ以外は比較例3と同じ処方で、目付が約100g/mの長繊維不織布を製造し、その特性を測定した。また、その不織布を成型加工用基布とし、成型加工を行って、成型性を評価した。その結果を表1に示す。
【0077】
表1から明らかなように、得られた長繊維不織布は、加熱雰囲気下の引張伸度(MD+CD)が高いものの、その構成繊維は本発明品のようなポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体よりなる2種成分の芯鞘型複合長繊維ではなく、かつ面積収縮率が高いため、生分解性を有しないばかりか、耐摩耗性が悪く、成型用不織布としては不適であり、成型性は著しく劣っていた。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体よりなる融点が100℃以上の2種成分の芯鞘型複合長繊維にて構成され、しかも構成繊維の複屈折率すなわち配向度が制御されるとともに、高温での縦方向と横方向との破断伸度の和が160%以上であるように構成された特定の長繊維不織布を成型用基布として用いるので、低温での深絞り成型性が良好で、かつ熱劣化も生じない。この成型用不織布は、成型加工に伴う温度条件の幅が広く、成型品の品質が極めて安定であり、成型加工における操業上も問題なく、また使用後の廃棄についても生分解性を有しているため問題とならない。特に、生分解性を有する重合体として、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体を用いているため、他の生分解性樹脂に比べ結晶化が速く紡糸性が良いだけでなく、熱安定性も優れているという利点がある。また、芯鞘型複合繊維の鞘成分として、芯成分に比べ融点が低い重合体を配しているので、成型後においてもヒートシール性が良好であり、食品型容器、各種生活資材用通気通液成型容器、自動車内装用各種成型材、育苗用成型容器、インテリア寝装材、フィルターなど汎用に展開できるものである。

Claims (10)

  1. 熱プレス成型により容器状に形成するための成型用不織布であり、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体よりなる2種成分の芯鞘型複合長繊維にて構成され、前記ポリ乳酸とポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体とは融点が100℃以上であり、鞘成分の融点は芯成分の融点よりも低く、芯成分の複屈折率は0.001〜0.012であり、鞘成分の複屈折率は芯成分の複屈折率よりも低く、前記繊維が集積され、これら繊維相互間が鞘成分の軟化又は溶融によって融着された部分熱融着領域が散点状に設けられ、乾熱90℃雰囲気下で測定した縦方向破断伸度と横方向破断伸度との和が180%以上であることを特徴とする生分解性を有する成型用不織布。
  2. 鞘成分の複屈折率が0.001〜0.010であることを特徴とする請求項1記載の生分解性を有する成型用不織布。
  3. 90℃の乾熱雰囲気下で1分間熱処理した時の面積収縮率が5%以下であることを特徴とする請求項1記載の生分解性を有する成型用不織布。
  4. 芯成分と鞘成分との融点差が5℃以上であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の生分解性を有する成型用不織布。
  5. 熱プレス成型により容器状に形成するための成型用不織布を製造する方法であり、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体であって、融点が100℃以上でありかつ相互に異なる2種のものを用いて、高融点成分を芯部に配しかつ低融点成分を鞘部に配して芯鞘型複合長繊維を紡糸し、得られた糸条を冷却固化させ、次にこの糸条を3000m/分以下で牽引・開繊して、芯成分の複屈折率が0.001〜0.012であり、かつ鞘成分の複屈折率が芯成分の複屈折率よりも低い芯鞘型複合長繊維からなる繊維ウェブとし、その後、前記鞘成分を軟化させて繊維ウェブの繊維相互間を疑似接着させ、引き続いて前記鞘成分を軟化又は溶融させて繊維相互間を部分熱融着させた融着区域を散点状に形成することで、前記繊維ウェブを一体化することを特徴とする生分解性を有する成型用不織布の製造方法。
  6. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の成型用不織布のプレス成型により容器状に形成されていることを特徴とする容器形状品。
  7. フランジ部と、このフランジ部から3次元方向に突出した容器部とを有することを特徴とする請求項6記載の容器形状品。
  8. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の成型用不織布を予熱して構成繊維の鞘成分を軟化溶融させ、その後に、加熱された金型によって前記成型用不織布をプレス成型することを特徴とする容器形状品の製造方法。
  9. 鞘成分の軟化温度以上かつ鞘成分の融点よりも100℃高い温度以下で予熱することを特徴とする請求項8記載の容器形状品の製造方法。
  10. 金型温度を芯成分のガラス転移温度以上かつ鞘成分の融点以下の温度とすることを特徴とする請求項8または9記載の容器形状品の製造方法。
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