JP4390157B1 - 高抗張力ボルトとその締結方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高抗張力ボルトの耐遅れ破壊性を低コストで向上させる。
【解決手段】 ボルトを高強度の軸部と低強度のナットを頭部とする2部品から構成する。軸素材として低コストである制御冷却された所定強度の熱延ねじ節棒鋼をそのまま使用する。軸とナットの螺合面にグラウトが容易に圧入・通過できるよう間隙を設ける。頭部端面の螺合入口部を圧入孔とする。ボルト締結時において圧入孔から螺合面にグラウトを圧入する。グラウトは結合される鋼部材のボルト孔に充満した後締結ナットの螺合面にも侵入しボルトを防蝕被覆する。防蝕によりPC工法に準ずる耐遅れ破壊性が得られる。頭部圧造が無いので首下破断の問題が解消される。転造・圧造・熱処理工程は省略される。軸部の金属組織をパーライトを主体とし且つショットピーニングを施し従来の調質鋼よりも耐遅れ破壊性を強化する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、耐遅れ破壊性に優れた鋼の高抗張力ボルトに関するものである。
高抗張力ボルトの抗張力は通常1000MPa以上であり、一部には1300MPa級も使用されている。施工に際して多数のボルトを所定張力で締結するため油圧トルクレンチ等を介して高能率で処理される。材料を所定強度にするため通常ボルトに成形後、仕上げ工程として焼入焼戻し処理がなされる。主たる金属組織は焼戻しマルテンサイトである。当該組織の弱点は抗張力が1100MPa以上(規格F11T)になると遅れ破壊が問題となることである。遅れ破壊とは張力下にある鋼材の表面において腐蝕が進行につれHに起因する局所脆化が発現し、施工数ヶ月〜十数年後に破断する現象である。環境が腐食性になるほどまた材料強度が大きくになるほど劣化は加速する。鋼構造物の安全性に関して大きな問題とされている。
耐遅れ破壊性の改善のため、全工程で種々の対策がなされる。製鋼工程では脱H精練の強化、Hの有害性を緩和するV,Moの添加、破壊起点になる粗大な非金属介在物の低減、P,S等の不純物の低減、熱間圧延工程では同様に破壊起点になる表面キズの低減、加工工程では頭部割れや首部微小キズの発生防止、最終の熱処理工程では適正な金属組織を得るため厳密な条件管理が行われ、所定品質の維持コストも問題である。
破壊部位は多くの場合頭部と軸部の境界近辺いわゆる首下である。首下は圧造における塑性流れの大きな変局点であり、キズや延伸した非金属介在物等の材料欠陥が開口し、応力集中点として新たな欠陥となり易い。又熱延材料には元々異方性がある。即ち圧延方向に対して垂直方向は延靭性が低下する。首下では使用時の張力がその低下方向にも作用して極めて不都合である。圧造即ち軸部片端を塑性的に拡径してボルト頭部を形成する現行の成形方法では首下劣化は避けられない弱点となっている。
特許文献1には耐遅れ破壊性の改善の一方法が開示されている。それによるとピアノ線材を使用し、パテンティング処理を施してパーライト組織とした後伸線加工し、その後切断・ねじ切りを加え高抗張力ボルトに仕上げる。パーライト組織を持つ鋼は従来の焼入焼戻し処理の鋼(以下調質鋼と称する)よりも耐遅れ破壊性に優れることは周知であるが冷間加工の附加により更に優れることが示唆されている。
当方法では、ボルトへの成形に際して材料は伸線により既に高強度になり且つ加工性が消費されているので問題が多い。1)転造によるねじ成形には細心の注意を要する。加工発熱が大きく異常組織が発生することがある。2)圧造による頭部成形では所定形状が得にくい。従って両端ねじ切り方式がより良いとしている。3)又ダイス消耗等コストの増加は無視できない。4)さらに当方法は細径製品には適用できても12mm径以上の場合は素材となる棒鋼のパテンティング処理とその後の引抜加工には特別の設備を要するのでコスト上実用的ではない。
特許文献2には耐遅れ破壊性改善の他の例が示されている。それによると破壊の原因となる拡散性Hの悪影響を抑制するためVやMoを多量に添加する。1300MPa級が実用されているが該合金は高価であるため材料コスト上の問題が極めて大きい。
調質鋼の耐遅れ破壊性の向上には本件のような成分適正化以外に金属組織やねじ形状等の適正化による種々の改良方法が提起されているがいずれも確実な対策には問題を残す。
非特許文献1にはパイル用、ポール用のPC(プレストレスト・コンクリート)鋼棒の遅れ破壊性が研究されている。調質鋼において鋼材表面のショットピーニング加工が耐遅れ破壊性を強化することが解明されている。張力下にある高強度鋼材は表面の腐蝕の進行によりいずれ遅れ破壊が生ずる。PC鋼棒の場合、鋼棒がコンクリートに密接・埋設されていて腐蝕が防止され従って遅れ破壊も防止されている。当該処理は密接が不完全の場合に遅れ破壊の危険性を軽減する。
特許文献3には橋梁用の高強度PC鋼棒の製造方法が開示されている。それによるとSi,Mn,Crを含む高炭素低合金鋼を材料にして熱間圧延後の制御冷却により大部分が緻密なパーライトから成る組織に誘導し抗張力1350MPaを得ている。17〜32mm径のねじ節棒鋼も製造されている。
当該PC鋼棒の施工に当たって防蝕は不可欠要素であり、そのため確実なグラウトのためのメカニズムが組み込まれている。ナット等から構成される両端の特殊な緊張・定着部材や鋼棒を所定長さに延長する特殊連結カップラー及び数10mにもなる棒本体ともそれぞれグラウト(セメントと水から成る乳液状のアルカリ性被覆充満材)処理がなされ防蝕被覆される。その結果遅れ破壊は発生せず半永久的耐久性を持つ。当該技術の当長所が許容コスト、許容作業能率で高抗張力ボルトに転用できれば問題解決となる。
ボルト締結とPC鋼棒・工法について、1品当たりの施工コストと作業能率を比較するとそれぞれ数桁違いにPCの方が劣る。PCと同様機能を得る作業内容を通常の高抗張力ボルトの作業能率で処理し得る新しいボルトとその締結方法が工夫されなければならない。
特許文献4にはプレキャスト・コンクリート梁の接合方法が開示されている。それによると梁同士を接合金具と長身ボルトを介して接合するもので、梁内のボルト孔や金具と梁材の間隙に硬化材を注入して接合をより強固にしている。積極的応力付与がないので目的が異なるがPC工法と同じ様な作業である。グラウト処理が防蝕だけでなく固定と言う機能を持つことが解る。作業能率に関しては何ら言及は無いがPC構造物と同様であって一般の鋼構造物のボルト組立には適さない。
特許文献5には鉄骨柱脚をコンクリート基礎に固定する方法が開示されている。それによると、アンカーボルトとして作業性が良くコストに有利な熱延ねじ節鉄筋を使用する。柱脚と一体のベースプレートを基礎に埋設されたアンカーボルトにナットで締結するに当たり、二つの問題を解決している。一つは熱延ねじ節鉄筋の特徴である粗ねじはねじ戻りが生じ易い。その対策として締結ナットの側面に設けた注入孔から螺合面にグラウトを注入して強固に結合する。他は柱脚を基礎に強固に固定するため該グラウト作業を延長し、該プレートのボルト孔内にも充填してプレートとボルト間を強固に固定し、さらに延長して基礎コンクリートとプレートの間隙にも充填して敷きモルタルを形成し基礎とプレート間も安定させること等が説明されている。
当方法の問題は、ナットの側面孔から注入されたグラウトはその半分がナットの外側端面(上面)に流出するので本来必要な作業時間と資材消費が倍増しさらに流出物の後処理も必要になる。その上流出にともない注入圧が上がりにくい。そのためグラウトは当該ナットには侵入できても他端のナットの間隙や他の部材の狭隙まで侵入することが困難になる。 当基礎ボルトと比較して一般のボルト結合作業ではボルト径が小さく且つ数量は桁違いに多いので高能率で作業しなければならない。本方法が固定及び防蝕に有効であってもそのままでは受け入れられない。作業性の飛躍が求められる。
公開特許公報2002−337334 公開特許公報2006−219718 公開特許公報昭61−26730 公開特許公報2008−063845 公開実用新案公報平成01−138943
CAMP-ISIJ Vol.8(1995)-1507
以上述べたように現行の1100MPa級以上の高抗張力ボルトでは遅れ破壊の危険性があり、対策として調質鋼においてV,Moの添加により拡散性Hの悪影響を抑制する方法では材料コストが高いという問題がある。
ピアノ線を成形する方法では高強度材を成形加工するので加工品質・工具コスト・実用寸法域に問題がある。
PC鋼材では高抗張力ボルトの張力比(張力/抗張力)以上の張力比で使用されるが、確実なグラウトにより防蝕されているので遅れ破壊は防止されている。ボルト締結作業とPC定着作業の施工コストと作業数量・作業能率を比較するとそれぞれ数桁違いである。当該処理をボルトに応用することは至難である。
熱延ねじ節鉄筋をアンカーボルトに使用する例では簡易グラウト処理がなされている。該処理によりナットのねじ戻りとボルトの固定強化の2問題を解決しているが、ナットの側面孔から注入するので作業の半分がロスとなること、注入圧が上がらずボルト周辺への充填に難があること作業能率が一般のボルト締結作業に対して格段に低い等の問題がある。
本発明はPC構造物と同様の優れた耐遅れ破壊性を持ち、高作業能率で施工することができ且つ低コストで製造できる高抗張力ボルトを提供することを課題とする。
上記問題解決のため本発明では、ボルトの構造の基本的な変更を基にして各種の策、特に迅速グラウトが適切に組み込まれる。
1) 本発明のボルトは従来の一体物ではなく、ねじ節棒鋼の軸部と該軸部に螺合するナットの頭部の2部品で構成される。頭部ナットの端面の螺合入口は流動性硬化材が圧入される圧入孔の機能を持つ。
2) 螺合面には適切な間隙を設け、圧入された硬化材の通過を急速円滑に行わしめる。通過した硬化材は軸の張力部全体をグラウト処理する。
3) ボルトの張力部は防蝕被覆されるので耐遅れ破壊性が格段に向上する。
4) 抜本コスト低減のため脱膜・伸線・切断・圧造・転造・熱処理から成る現行のボルトの加工工程の大部分を省略し市販のPC用の熱間圧延・制御冷却により製造された高強度パーライト鋼のねじ節棒鋼を適用する。
課題を解決するため本発明の一つは、抗張力が1100MPa以上である高抗張力ボルトにおいて、ボルト軸部は熱間加工により成形されたねじ節棒鋼から成り、ボルト頭部は該軸部の片端に通常の材料強度のナットを一定位置に螺合して構成し、該頭部端面の螺合入口部を流動性硬化材の圧入孔とし、該螺合面間には圧入された硬化材が通過可能な間隙を設けたことを特徴とする高抗張力ボルトである。
第2発明は、該間隙の部位が軸部のねじ底平坦部、ねじ山頂部、ねじ山押圧背面の3カ所のうちの2カ所以内とし、該間隙の大きさが0.2mm以上であることを特徴とする第1発明に記載の高抗張力ボルトである。
第3発明は、ねじ節棒鋼の主たる金属組織がパーライトであり該棒鋼表面にショットピーニング加工を施したことを特徴とする第1発明又第2発明に記載の高抗張力ボルトである。ここで『主たる−−−』とは、パーライトが90%以上であり残りが初析フェライトと上部ベイナイトから成る通常のパテンティングの組織を意味する。
第4発明は、第1発明又は第2発明又は第3発明に記載されたボルトを接合対象の鋼部材のボルト孔に差し込み締結用のナットを螺合して締結後、頭部ナットの圧入孔から流動性硬化材を圧入して螺合面を通過させ、該ボルト孔の空間及び締結用ナットの螺合面にも充満させて、両ナット間の軸部を該硬化材で被覆したことを特徴とする高抗張力ボルトの締結方法である。
本発明の高抗張力ボルトは頭部がナットの螺合により構成されるので圧造に伴う首下の特異な塑性加工流れが無く、首下遅れ破壊の問題は解消される。
金属組織面では調質鋼から実績十分な高強度パーライト鋼に替えられ且つショットピーニング加工されるので耐遅れ破壊性が材料面からも強化される。
ボルト頭部には適切な圧入孔、螺合面には適切な間隙を設けてあるので締結に際し、該圧入孔から流動性硬化材を容易且つ迅速に圧入することができる。圧入された該硬化材は螺合面及び締結される鋼材のボルト孔を充満しボルト張力部を防蝕構造とするので耐遅れ破壊性は格段に向上し、PC工法と同等水準に接近する。
製造工程は、熱延の量産ねじ節棒鋼を走行させつつショット加工・切断・螺合から成る。従来の脱膜・伸線・圧造・転造・熱処理の一連の工程が省略され、加工費で圧倒的に有利になる。更に適用される鋼種はSi,Mn,Cr等を少量(合計約3質量%以内)含み、高コストのV,Mo等を含まない高炭素低合金鋼であるから材料コスト面でも有利になる。締結作業に附加されるグラウト圧入作業は簡単且つ迅速であって大きな負担にならない。
本発明の高抗張力ボルトの例の概観を示す。 本発明の高抗張力ボルトの締結状態の縦断面を示す。 本発明の高抗張力ボルトの螺合状態(B,C,D,E)を説明する。
以下実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1には本発明の高抗張力ボルトの構造の例を示す。ボルト0は軸部1と頭部2とから構成される。軸部1には材料として所定径、所定形状、所定金属組織、所定強度を持つねじ節棒鋼が使用さる。該棒鋼の表面をショットピーニング加工しつつ所定長さに切断し軸部1とする。該軸部1に所定形状・通常の材料強度のナットを螺合させて頭部2とする。螺合には通常のねじ形状とは異なり、螺合面に間隙が設けられる。
図2は該ボルト0の締結状態の縦断面を示す。接合対象の厚板3を2枚の摩擦板4で挟んでボルト0を両板のボルト孔5に差し込み、締結ナット6を締め込んで仮締結する。次ぎにボルト頭部2の端面に圧入ノズル8を押圧し、螺合入口(輪状)を圧入孔7とし、流動性硬化材を圧入する。該硬化材としてグラウトが適切である。グラウトはねじ間隙10を通過し、ボルト孔5を充満し対面の締結ナット6のねじ間隙に浸透する。該ナット6からグラウトの漏れ出しを確認してグラウト作業が終わる。所定トルクの本締結後にグラウトは固化し、ボルト張力部(両ナット間)全体のグラウト9が完成する。グラウト作業は本締結後に行ってもよい。
以上により締結されたボルトは防蝕構造となって耐遅れ破壊性はPC工法に準ずるような格段の強化がなされる。螺合面に固着したグラウトはナットの弛みも確実に防止する。
以下上記説明内容の詳細を記す。
ねじ節棒鋼の所定径とは、高抗張力ボルトの現行規格に合わせたものとする。所定形状とは図1に例示される以下のねじ節棒鋼である。即ち該棒鋼は熱間圧延の仕上げ孔型圧延機において孔型内に刻まれたねじ節溝により圧下面に沿って上下2列のねじ節11が円柱表面に形成される。圧下側面12にはねじ節は欠落している。ねじ節形状は通常のメートルねじと異なり丸みを持つ台形ねじである。ねじピッチpは直径の約50%、ねじ山裾幅aはピッチpの約35〜50%、ねじ底は平坦で幅bは同約50〜65%、ねじ山高さhは直径の約5〜9%であって極めて粗く寸法許容幅は熱間成形の精度に準ずる。当該形状の異形棒鋼はねじ節棒鋼として量産・市販されている。転造による全周ねじ節を持つ棒鋼も使用することができるがコストに不利である。
該棒鋼の所定金属組織として、パーライトを主体とし10%未満の初析フェライト+上部ベイナイトの混在を許容する。当該組織は高炭素鋼の通常のパテンティングによって得られるものである。パーライトと特定する理由の一つは周知のようにパーライト組織の材料の耐遅れ破壊性が調質鋼よりも優れることであり、もう一つは大量生産の棒鋼ミルにおいて仕上げ圧延直後の制御冷却(加速冷却)の適用により比較的簡単且つ低コストで製造することができるからである。棒鋼ミルで調質鋼を製造するには特別の焼入装置と焼戻し装置が必要になり、設備費と操業コスト双方に問題が大きい。
該棒鋼の所定強度として、高抗張力ボルトの規格が適用される。本発明では抗張力は遅れ破壊の危険性が増大する1100MPa以上と特定する。
上記所定の組織と強度を得る鋼種として、約0.6〜0.7質量%C(以下%と略称)、Si,Mn,Cr各約1%の高炭素低合金鋼が適切である。10〜20mm径の棒鋼では空冷で、30mm径前後では加速冷却により容易に抗張力を1100MPa以上とすることができる。合金成分に依存する焼入性と冷却条件が適合すると微細ラメラのパーライトに誘導することができ1400MPaも可能である。製造条件の詳細は既述の特許文献4に開示されている。当該材料は橋梁用のPC鋼棒として強度と耐久性に十分な実績がある。
材料自体の耐遅れ破壊性を確実にするため棒鋼の表面にはショットピーニング加工を施す。当該処理はグラウト作業に局所的不備があった場合でも遅れ破壊を防止する安全策となる。表面のスケールは除去され灰白色の梨地状の光沢を示す。該表面性状はグラウト密着性に対してスケール付着の熱延鋼材よりも安定している。
ナットの材料には通常強度の軟鋼が使用される。第1の理由は軸部同等の高強度のナットを使用すると棒鋼のねじ節の寸法精度は必ずしも精密ではないので螺合部におけるねじ山の接触圧力が場所により過剰となり応力集中点が生じ易く、軟鋼ではねじ山が適当にせん断変形して螺合面に応力が広く分散し易いからである。第2の理由はナットを高強度にするとナット自体の耐遅れ破壊性が問題になる。第3に2個使用するので多少寸法が増加しても軟鋼がコスト有利になるからである。
ナットのねじ形状は、頭部用と締結用は同一であり、螺合部においてグラウトが圧入され通過が容易となるよう棒鋼のねじ節形状に対応して特別の形状にする。
図3はボルトとナット間のねじ山の接触状態を特徴的に示す。図3Aは通常のねじ節棒鋼とナットの螺合状態を示し、ねじ込み可能の範囲で螺合面の間隙は小さく設計される。図3Bはナットのねじ底深さを大きく(ねじ節の山高さhを相対的に小さく)してナットのねじ底面との間に間隙を形成、図3Cは逆にナットのねじ山高さを小さくして棒鋼ねじ底面との間に間隙を形成、図3Dは互いに押圧するねじ山側面の背面に間隙を形成したものである。この場合ナットは軸方向に少し摺動する。それぞれ当該目的に適合する発明例である。
又図3Eに示すようにCとDを組み合わせた間隙を形成してもよい。
B,C,Dのうちの二つを組み合わせることは目的に適合するが、三つを併設すると軸とナットが偏心して良くない。
螺合間隙10の大きさに関して、図3Aの螺合で間隙が0.2mm未満でも水なら圧入容易、グラウトは通過可能だが通過能率には問題がある。図3Cの螺合で間隙を0.3〜0.4mmとした試験でグラウトの圧入はほぼ問題無かった。将来のグラウト流動性の改善を加味して、図3Eを前提に間隙の大きさは0.2mm以上と特定した。上限として棒径40mmにも対応して1.0mm以下とした。間隙を過大にするとグラウト通過は容易になるがねじ強度面で問題が生ずる。
通常強度のボルト・ナットではねじ戻りによる経時弛みが問題となる。PC工法では降伏応力に近い張力による締め付けによりナットによる固定でも弛みは全く生じない。高抗張力ボルトはその機構の精度上PC工法水準の張力管理はなされていないが、大きな張力の故に弛みは問題とされていない。本発明では張力の他にボルト軸部と頭部及び締結ナットとの螺合間隙はグラウトにより強固に接着・固定され弛みは生じない。
軸材の素材として制御冷却された熱延ねじ節棒鋼と特定した他の理由は、2次加工工程を抜本簡素化しコストを低減するためである。即ち従来の加工工程は精密なねじ転造と頭部圧造を保証するため材料の真円化が条件になりそのため伸線工程が必要になる。本発明では転造、圧造が無いので特別の寸法精度を要せず、熱延鋼材の精度で十分であるからであり、その上熱処理工程も省略できるからである。
流動性硬化材として既述したようにグラウトが適切である。圧入をより円滑に行うため流動性は大きい方が良い。界面活性剤の添加など今後の課題である。砂の粒度を厳密に管理したモルタルも使用することができる。硬化性樹脂も使用することができるがコストが増加する。
施工について説明する。PC工事において通常使用されるグラウトは大きな間隙に場合により100m以上の送給を行うため水分が過剰になっておりボルト孔のような小さな空間を確実に充填するには適切でない。ある程度濃いグラウトで均質・緻密なもの、粒状の混ざりが無いものが良い。グラウト厚が小さくてもボルト張力部はPC工法と同様の防蝕信頼性が得られ、その結果耐遅れ破壊性が格段に強化される。
グラウト作業は現行のボルト締結作業を阻害せず、簡単且つ迅速になされなければならない。そのためには圧入孔の位置は圧力損失を無くするため頭部ナットの端面の螺合入口とすることが最適であり、且つナット端面と軸端面は平坦が望ましく、少なくとも一定の凹凸に維持しておくことが必要である。
凹凸にバラツキがあると圧入ノズルの正確な押圧ができない。凹凸に自在に対応し得る作業性の良い圧入機の設計は容易ではない。これが圧入孔を頭部端面の螺合入口とし且つ頭部ナットを一定位置に特定した理由である。
圧入に際して圧入機のノズル部分のみ軽量・携帯式に構成する。圧入時間が約10秒でなされるなら現行の工事に組み込むことは大きな負担とはならず、抵抗感が少なく受け入れられる。上記能率は当業者にとって困難ではない。
本発明と従来の調質鋼高抗張力ボルトのコスト比較について補足する。材料費は、強度1100MPa級では双方特別の合金を要しないので大差ない。1300MPa級以上では調質鋼はV,Mo等が添加されるので本発明は相当有利になる。
加工費は、本発明ではショット加工・切断・ナット螺合から成り、従来方法ではショット加工(脱膜)・伸線・切断・圧造・転造・熱処理から成る。本発明は圧倒的に有利となる。締結作業では、グラウト作業が附加されるが作業性は解決され、高度の信頼性が得られ十分引き合うと見なされる。
ディビダーク工法PC鋼棒(JIS G3109-1994)を材料にして本発明の高抗張力ボルトを試作した。成分は0.7%C−0.8%Si−1.2%Mn−0.7%Crで、鋼片までの工程は転炉で溶製し、真空脱ガスし、約450mm角のブルームに連続鋳造し、110mm角鋼片に分塊圧延した。該鋼片を1000℃に加熱し、棒鋼ミルで1000〜900℃の間で32mm径のねじ節棒鋼に圧延し、冷却台では全面的にミスト冷却による制御冷却を施し、パーライト変態温度を580〜610℃に誘導した。得られた抗張力は1340MPa、絞りは40%、伸びは13%であった。ねじ節の形状は図1において母材部高さ・幅は32.0mm、ねじ山高さ2.0mm、ねじ山裾幅7.0mm、ねじピッチ17mm、ねじリード角α8°である。該棒鋼の表面をショット・ピーニング加工した。スケールが除去され灰白色の梨地表面となった。該棒鋼を250mm長さに切断してボルト軸部とした。頭部及び締結用のナットには当該PC鋼棒に常用されている軟鋼製のものを原型にねじ山の片側側面とねじ山頂部を約0.2mm研削した。螺合には約0.3〜0.4mmの軸方向間隙が生じた。頭部は、軸部端面がナット端面から2mm凸になるようねじ込んだ。
50mm径のボルト孔を持つ21mm厚の厚板3枚を重ね、上記ボルトを該孔に挿入してナットで仮締めし、頭部端面の螺合入口からグラウトを圧入した。グラウトが締結側ナットの外側端面より滲み出したことによりグラウト作業を確認した。その後所定トルクで本締め付けを行った。1週間後結合部材の解体を行ったが、締め付けトルクではナットは回らず衝撃を与えつつナットを取り外した。ボルト孔はグラウトが完全に充満し且つボルト表面に強固に付着しており、防蝕の確実性とナットの緩み止めを確認した。グラウト作業には約30秒を要したが、圧入機の改良、作業の熟練等により10秒以下で処理する見込みを得た。
本発明の高抗張力ボルトは鋼構造物の接続・締結に対して、現場打ちされる従来のPC鋼棒の材料及び工法が効果的に転用され、PC鋼棒・工法と同様の防蝕信頼性が得られる。その結果耐遅れ破壊性は格段に向上する。附加されるグラウト作業は全体能率をほとんど害せず、総合コストは削減され、従来の高抗張力ボルトに代替させることが可能になる。
0:ボルト 1:軸部 2:頭部 3:厚板 4:摩擦板 5:ボルト孔 6:締結ナット 7:圧入孔 8:圧入ノズル 9:グラウト 10:ねじ間隙 11:ねじ節 12:圧下側面 p:ねじピッチ a:ねじ山裾幅 b:ねじ底幅 h:ねじ山高さ α:ねじリード角

Claims (1)

  1. 熱間加工により成形されたねじ節棒鋼を軸部とし、該軸部の片端に通常の材料強度のナットを一定位置に螺合して頭部を構成し、該頭部端面の螺合入口部を流動性硬化材の圧入孔とし、該螺合面間には圧入された硬化材が通過可能な間隙を設けた抗張力が1100MPa以上である高抗張力ボルトにおいて、該ボルトを接合対象の鋼部材のボルト孔に差し込み、締結用のナットを螺合して締結後、前記頭部ナットの圧入孔から流動性硬化材を圧入して螺合面を通過させ、さらに該ボルト孔の空間及び締結ナットの螺合面にも充満させて、両ナット間の軸部を硬化材で被覆したことを特徴とする高抗張力ボルトの締結方法。
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