JP4389451B2 - 半導体レーザ励起固体レーザ装置とその稼働方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザ励起固体レーザ装置に関し、とくに固体レーザ装置出力レーザパワー一定制御機能を持った半導体レーザ励起固体レーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体レーザ(LD)励起固体レーザ装置において、レーザ媒質励起用LDがその発振特性に劣化を生じてきたり、あるいは周囲温度の変化した場合に、固体レーザ発振器のレーザ出力パワーが変動するという問題がある。従来は、人手によりLD電流の調整を行ってパワー調整するか、あるいは自動パワー一定制御系を構成して行っていた。パワー一定制御を行う場合には、パワー特性がLD電流に対して線形な領域で行う必要があるため、この線形領域で所望の一定出力パワーに対応するLDの設定電流値を調整していた。また、通常駆動電流の過入力によるLDの破壊を防止するために電流リミットを掛けている。
しかし、LDの劣化が進行するとパワー特性が変化して初期設定のLD電流値では同一のパワー出力が得られなくなる。このため、LD劣化の進行とともに設定電流値を徐々に増加させることによってパワーを一定に保持することができるが、設定電流値が初期設定の電流リミット値を越えた場合はその時点で最適なリミット値を更に高く設定し直す必要が生じる。さらにLD劣化が進行したことによってリミットを調整してもパワー一定制御が不可能となった場合、LDを交換すべきかどうかの判断を行う必要がある。従来はこのリミット調整あるいはLD電流値調整を人手によって行っていたため、メンテナンス時には調整に熟練が必要であった。
出力の温度変動を生じたり劣化が生じているLDから常に所望の出力パワーを得るために、LDの特性検出手段によって求めたLD特性に基づいて目標値を補正して出力一定制御する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。この例は、固体レーザ出力ではなくLD自身の出力一定制御であり、また、リミット調整の機能を備えておらず、リミットを調整してもパワー一定制御が不可能となった場合、LDを交換すべきかどうかの判断を与える手段を備えていない。開示技術を用いてもなお固体レーザ励起用LDのメンテナンスには熟練が必要である。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−294871号公報(第6−9頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題に鑑みて成されたものであって、その目的とするところはLD駆動電流出力のリミットを自動的に調整し、レーザパワー出力一定フィードバック制御を行うことができ、さらにLD交換状態を指示するアラーム出力を備えた、LD調整に熟練の必要がなくなりメンテナンス性の向上を図ることができる半導体レーザ励起固体レーザ装置とその稼働方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置は、半導体レーザ(LD)を励起光源とする固体レーザ装置であって、LDの駆動電流に制限を与える手段と、固体レーザ装置のレーザ出力がLDの駆動電流値によって自動的に一定となるように制御する手段と、固体レーザ装置のレーザ出力を一定にするために必要なLDの駆動電流値が、制限値を超える場合に、制限値を所要駆動電流値以上に増大させる手段、を備え、前記制限値は、レーザ出力をLDの駆動電流で微分した微分値が、微分値の最大値より所定の値だけ低下した値を与える駆動電流値であることを特徴とする。
【0006】
また本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置は、半導体レーザ(LD)を励起光源とする固体レーザ装置であって、固体レーザ装置のレーザ出力を検出する受光素子と、受光素子の出力が予め設定された目標値に自動的に一定となるようにLDの駆動電流を帰還制御する回路と、LDの駆動電流に制限を与える電流リミット回路と、受光素子の出力をLDの駆動電流で微分し、微分値が微分値の最大値より所定の値だけ低下した値を与える駆動電流値を電流リミット回路の制限値として出力する微分回路を備えることを特徴とする。
半導体レーザ励起固体レーザ装置が、さらに、制限値が予め設定した値を超える場合に警報を発する回路を備える。
微分回路が、LDの駆動電流値と微分値とを記憶するメモリを備える。
【0007】
また本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の稼働方法は、上記の半導体レーザ励起固体レーザ装置において、レーザ装置の起動時毎に、LDの駆動電流を0から走引して、メモリのLDの駆動電流値と微分値の記憶データを書き換えるステップを含む。
また本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の稼働方法は、上記の半導体レーザ励起固体レーザ装置において、適切な時間毎に、LDの駆動電流を0から走引して、メモリのLDの駆動電流値と微分値の記憶データを書き換えるステップを含む。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の概念装置構成を図1に示す。本構成は、レーザ発振器1とLDコントローラ6とで構成される。レーザ発振器1は、励起用LD2と、励起用LD2により励起されレーザ光を発振するレーザ共振器50と、レーザ共振器が発振したをレーザ光5をさえぎるシャッタ3と、レーザ光5の出力の一部をモニタするパワーモニタ4から構成され、LDコントローラ6は、パワーモニタ4の出力信号8をフィードバックしてLD電流出力信号9を生成するフィードバック回路7を内蔵している。
【0009】
フィードバック回路7の機能構成を図2に示す。フィードバック回路7は、指令パワーP0を電流値に変換する制御ゲイン12、パワー入力にゲインを掛けるフィードバックゲイン14、LD電流出力とパワー入力から微分波形を生成する微分回路15、微分回路出力によりLD電流出力リミット値を変化させるリミット回路13、微分回路出力をモニタしてアラーム出力を行うアラーム回路16から構成される。
【0010】
本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置は、レーザ光5の出力パワーを一定に保つ機能と、励起LDが劣化や温度変動によって出力特性が変化した場合に、励起LDの駆動に設けられている電流リミットの値を自動的に調整する機能と、LD劣化が進行してリミット調整が不可能となった場合には、アラームを出力してLD交換を指示する機能を備える。
【0011】
次に本実施形態の動作を説明する。図3に励起LDの駆動電流とレーザ共振器出力パワーの関係を示す。実線の曲線10はLDに劣化を生じていない正常時の出力特性、破線11はLDに劣化が起こり始めた異常時の出力特性を示す。正常時に所要のレーザ出力パワーP0を得るためにLDに印加する電流をI1とした時、制御ゲイン12と、LD2と、パワーモニタ4と、フィードバックゲイン14とが構成する帰還回路は印加電流をI2に増大して、異常時にも同一のパワーP0を出力するようにパワー一定制御の動作を行う。それは、図3に示すようにレーザパワー出力特性が初期状態10からLD劣化状態11に変化してLD電流出力範囲が初期リミットILIM1を越える場合にも自動的にリミットをILIM2に調整してパワー一定制御を続行できるからである。LD劣化が進行してリミット調整が不可能となった場合にはアラームを出力してLD交換を指示できる。
【0012】
さらに、LD劣化によるリミット制御とアラーム出力の動作を細かく説明する。まずレーザ発振器立上げ時にシャッタ3をクローズし、帰還回路のループを解き、リミット回路の電流制限を解除し、LD2の電流出力を0Aから許容電流値までスキャンしながらパワーモニタ4によりパワー値を測定する(図4(A))。この時に図3で示した微分回路15では、LD電流出力とパワー入力から微分波形を生成する(図4(B))。正常時の微分出力波形17を示した場合、リミット回路13では、微分出力の定常出力状態又は最大値から一定値Δp‘低下したところをリミット値ILIM1としてLD電流の制限を行う。LDが劣化状態の異常時の出力特性に移行し、微分回路15の出力が微分出力波形18に移行した時、LD電流の制限を微分出力の定常出力状態又は最大値から一定値Δp‘低下したところをリミット値ILIM2とし、この制限電流内でパワー一定制御を続ける。
さらに、LDの劣化が進み、リミット値がパワーフィードバック不可の領域となる場合すなわち、リミット電流値におけるレーザ出力が飽和に近づき、微分出力が予め定めた値のアラームレベルPl‘より低下し、その点に対応する電流値に達した時、アラーム回路においてアラーム出力を行う。
以上により本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置では、パワー特性の変動がパワーフィードバック可能な領域にある場合には、自動的にリミット値が調整され、パワーフィードバック不可領域までパワーが変動した場合にはアラームが出力されるという処理が行われる。
【0013】
本発明は、LD劣化によるパワー変動だけでなく、周囲温度の変化によるパワー変動に対しても同様にリミット調整を行うことができるため、レーザパワー出力特性の測定を随時行うことにより、温度変化が大きい環境においても適用が可能である。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置は、レーザパワーのフィードバックを行うことができ、LD電流出力のリミットを自動的に調整し、アラーム出力によりLD交換状態も明確となるため、調整に熟練の必要がなくなりメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0015】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の概念的な構成を示す図である。
【図2】本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置が備えるフィードバック回路のブロック図である。
【図3】レーザパワー出力特性を示す図である。
【図4】本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置のフィードバック回路が備える微分回路の微分出力を示す図である。
【符号の説明】
1 レーザ発振器
2 LD
3 シャッタ
4 パワーモニタ
5 レーザ光
6 コントローラ
Claims (6)
- 半導体レーザ(LD)を励起光源とする固体レーザ装置であって、
前記LDの駆動電流に制限を与える手段と、
前記固体レーザ装置のレーザ出力が前記LDの駆動電流値によって自動的に一定となるように制御する手段と、
前記固体レーザ装置のレーザ出力を一定にするために必要な前記LDの駆動電流値が、前記制限値を超える場合に、前記制限値を前記所要駆動電流値以上に増大させる手段と、
を備え、
前記制限値は、
前記レーザ出力を前記LDの駆動電流で微分した微分値が、前記微分値の最大値より所定の値だけ低下した値を与える駆動電流値である、
ことを特徴とする半導体レーザ励起固体レーザ装置。 - 半導体レーザ(LD)を励起光源とする固体レーザ装置であって、
前記固体レーザ装置のレーザ出力を検出する受光素子と、
前記受光素子の出力が予め設定された目標値に自動的に一定となるように前記LDの駆動電流を帰還制御する回路と、
前記LDの駆動電流に制限を与える電流リミット回路と、
前記受光素子の出力を前記LDの駆動電流で微分し、前記微分値が前記微分値の最大値より所定の値だけ低下した値を与える駆動電流値を前記電流リミット回路の制限値として出力する微分回路、
を備えることを特徴とする半導体レーザ励起固体レーザ装置。 - 前記半導体レーザ励起固体レーザ装置が、
さらに、前記制限値が予め設定した値を超える場合に警報を発する回路、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。 - 前記微分回路が、
前記LDの駆動電流値と前記微分値とを記憶するメモリ、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。 - 請求項4に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置において、
前記レーザ装置の起動時毎に、前記LDの駆動電流を0から走引して、前記メモリの前記LDの駆動電流値と前記微分値の記憶データを書き換えるステップ、
を含むことを特徴とする半導体レーザ励起固体レーザ装置の稼働方法。 - 請求項4に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置において、
適切な時間毎に、前記LDの駆動電流を0から走引して、前記メモリの前記LDの駆動電流値と前記微分値の記憶データを書き換えるステップ、
を含むことを特徴とする半導体レーザ励起固体レーザ装置の稼働方法。
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