JP4384347B2 - 血清または血漿分離用組成物の製造方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血清または血漿分離用組成物の製造方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、チクソトロピー性のゲル状の血清または血漿分離用組成物（以下、単に「本組成物」と略記することもある）を採血管の底部に収容した血液分離管が知られている。この血液分離管内に採血し、適当な時間静置させた後、遠心分離操作を行うと、遠心力によってゲル状の本組成物が流動状態となり、また、このゲル状の本組成物は、予め、血清成分または血漿成分と血餅成分または血球成分との中間の比重を有するように調整されているため、管底から次第に浮上し、血清層または血漿層と血餅層または血球層との中間に位置して隔壁を形成するようになり、血清層または血漿層と血餅層または血球層とを分離することができる。このようにして得られた血清や血漿を用いて生体内の種々の物質の量が測定され、病気の診断や治療に利用されている。
【０００３】
本組成物としては、構成成分として、例えば、シクロペンタジエンのオリゴマー、可塑剤（例えば、フタル酸ジエステル）、微粉末シリカからなる組成物が挙げられる。また、上記組成物に、構成成分として、有機ゲル化剤（例えば、ジベンジリデンソルビトール）、有機ゲル化剤の分散剤（例えば、１−メチル−２−ピロリドン）、相溶化剤および粘度低下剤等を添加した組成物もある。
【０００４】
本組成物は、例えば、上記のような各構成成分を混練することにより製造される。上記混練とは、「混練装置、橋本健次著、科学技術総合研究所発行（１９８６年）」によれば、一般的に、圧縮作用、剪断作用、へらなで作用の３つのいずれか、または、適宜組み合わせた作用を有する混練装置を用いて行われる操作である。
【０００５】
本組成物の組成上の特徴の一つは、チクソトロピー性の付与および比重の調節を目的として微粉末シリカが添加されていることである。また、本組成物の製造上の特徴の一つは、微粉末シリカ以外の構成成分が予め所定の割合で混合された中間組成物を製造し、次いでこの中間組成物に微粉末シリカを均一に分散させるための高精度の混練工程が必要なことである。
【０００６】
本組成物の従来の工業的製造においては、図６に示すように、二軸のハイブリッドミキサを用いた混合装置２０を使用して中間組成物を製造する混合工程と、続いて混練ブレード２１を備えたダブルプラネタリミキサを用いた混練装置２３を用いて、真空ポンプ２４による減圧下で中間組成物に微粉末シリカを均一に分散させる分散工程との二つの工程からなる方法が用いられてきた。
【０００７】
本組成物の製造上、最も精度が要求されるのは中間組成物に微粉末シリカを均一に分散させる工程である。本工程で用いられるダブルプラネタリミキサの有する混練作用は主に剪断作用である。しかしこの装置では、混練ブレードが各構成成分を混合するとき、中間組成物の粘度が低い場合には、混練ブレード近傍の中間組成物と微粉末シリカにしか剪断作用を与えることができず、また、混練タンク内に充填された中間組成物と微粉末シリカの中を混練ブレードが移動しながら混練を行うため、構成成分全体に対して均一な剪断力を与え難いという問題点がある。
【０００８】
上記問題点を解決するためには、混練を行う混練部分に中間組成物と微粉末シリカとを供給し、全体に均一に混練作用を与える必要がある。このような装置としては、従来からロールミルが用いられてきた。ロールミルによる混練作用は圧縮作用、剪断作用およびへらなで作用である。
【０００９】
しかし、ロールミルはその構造上、フィードロールとセンターロールの間で一度混練されるとエプロンロールに移動し、その後スクレーパにて回収されるために、連続混練となり本組成物のように中間組成物に微粉末シリカを均一に分散させるような工程では、連続的に一定の組成で両者を混練することが困難であり、その結果、混練は十分に行われるものの、バッチ内で両者の混合比が微妙に変動するという避け難い問題点がある。
【００１０】
また、ロールミルはダブルプラネタリミキサに比べて単位時間あたりの処理量が少なく、工業的製造には非効率的であるという問題点もある。
【００１１】
さらに、本組成物は主として真空採血管に収容されて使用されるが、真空採血管に収容された後、減圧下での本組成物中の溶存空気による発泡を防ぐために、本組成物の製造中に構成成分中の溶存空気を除去することが重要である。従って、本組成物は真空採血管の減圧度よりもさらに低い減圧下で混練されるのが好ましいが、従来のロールミルを減圧下で使用することは構造上困難であるという問題点もある。
【００１２】
例えば、特開平８−９２１０７号公報には、血液分離剤の製造方法として、上記の問題点を解決すべく、構成成分の大まかな混合を行うプラネタリミキサなどの混合装置と、構成成分の均一分散を行うロールミルなどの分散装置と、組成物に混入した空気を減圧下で除去する脱泡装置とを用いる方法が開示されている。
【００１３】
しかし、上記公報に開示されている方法では少なくとも３つの装置が必要であり、製造装置が大がかりとなり効率的ではない。また、上記公報に開示されている方法では製造工程の最後で脱泡装置を用いるが、混合工程および分散工程で混入した気泡だけでなく、既に構成成分中に溶け込んでいる溶存空気を完全に除去するには脱泡に長時間を要するためにやはり効率的ではない。
【００１４】
一方、本組成物の製造において、従来のダブルプラネタリミキサを用いる混練工程では、混練の良否は各構成成分に及ぼされる剪断作用の程度によって決まるが、中間組成物は常温で３〜７万センチポイズという比較的低粘度であるために、微粉末シリカを均一に分散させるのに必要な剪断作用を与え難いという問題点がある。
【００１５】
また、中間組成物は気温の影響により通年で粘度が変動するため、従来の製造方法では剪断作用を均一に制御し難いという問題点もある。即ち、中間組成物の温度を一定に保てばこの問題点は解消されるが、この点について検討した結果、２５±１℃程度の精度での温度調節が必要と判明し、大量生産の場合には温度調節に多大な時間を要するために非効率的であるという新たな問題点が発生する。上記の新たな問題点は、たとえ特開平８−９２１０７号公報に記載の方法を採用しても、根本的な解決は不可能である。
【００１６】
また、上記のような従来の製造方法を用いて本組成物を製造した場合、外気温などの影響で中間組成物の温度が一定でない場合、混練工程で微粉末シリカの分散度合いが不均一になるということが判明した。即ち、例えば、中間組成物の温度が３０℃程度にまで上昇した場合、中間組成物の粘度が著しく低下し、混練工程で微粉末シリカを十分且つ均一に分散させることができない。そして、この不均一分散は混練時間を延長しても解消することができない。
【００１７】
上記のような不均一分散が起こると、本組成物のチクソトロピー性が不足する場合がある。このような組成物を真空採血管に充填した場合、保存時に真空採血管を横倒しにすると、図７に示すように、本組成物２６が真空採血管２５の底部から管壁に沿って流動し、該真空採血管２５に血液を採取した後、遠心分離すると、この流動した部分２７が千切れて小塊となって血清または血漿中に浮遊する場合がある。
【００１８】
また、同様に不均一分散が起こると、保存時に本組成物から構成成分の一つである可塑剤が分離する場合がある。このような組成物を真空採血管に充填した場合、保存時に真空採血管を横倒しにすると、図７に示すように、相分離した可塑剤２８が管壁に沿って存在するようになる。このような真空採血管２５に血液を採取した後、遠心分離すると、この相分離した可塑剤２８が血清または血漿中に油滴として浮遊する場合がある。
【００１９】
上記いずれの場合も血清または血漿検査機器が本組成物の小塊や可塑剤の油滴を吸引した場合には、検査機器自体の故障や、血清または血漿中の測定目的物質の測定値に異常値を与える恐れがある。
【００２０】
一方、これらの問題点を解決するための具体的方法が、例えば、特開平１１−２０６８７８号公報に開示されている。上記公報に開示されている方法では、本組成物の各構成成分を７０〜１２０℃程度の高温下で均一混合しているが、このような高温下では本組成物の粘度が極めて低くなるため、混合終了後、本組成物が冷却されて粘度が上昇する迄に、微粉末シリカや有機ゲル化剤のようなチクソトロピー性付与剤が再凝集を起こし、せっかく均一混合を行っても、不均一化するという問題点がある。
【００２１】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑み、血清または血漿分離用組成物のチクソトロピー性の低下による流動や相分離の原因となる、例えば微粉末シリカや有機ゲル化剤のようなチクソトロピー性付与剤の不均一分散を防いで組成物が均一に混合され、且つ、混合後に上記チクソトロピー性付与剤が再凝集して組成物が不均一化することのない血清または血漿分離用組成物の効率的且つ簡便な製造方法を提供することにある。
【００２２】
【課題を解決するための手段】
請求項１に記載の発明による血清または血漿分離用組成物の製造方法は、血清または血漿分離用組成物の各構成成分を混合装置の混合部に形成された所定の間隙を強制的に通過させることにより均一に混合する血清または血漿分離用組成物の製造方法であって、上記各構成成分を加熱下で混合して血清または血漿分離用組成物を作製した後、加熱を停止し、ＪＩＳ Ｋ−７１１７に準拠して剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した上記組成物の粘度が４Ｐａ・ｓ以上となるまで、上記組成物を混合しつつ、冷却することを特徴とする。
【００２３】
請求項２に記載の発明による血清または血漿分離用組成物の製造方法は、上記請求項１に記載の血清または血漿分離用組成物の製造方法において、混合装置の混合部が、相互に近接して対面する２枚の円盤状体からなり、且つ、２枚の円盤状体の内の少なくとも一方には導入口が設けられ、且つ、対面する２枚の円盤状体のそれぞれの平面部同士の間の少なくとも一部が所定の間隙を有しており、且つ、上記対面した２枚の円盤状体の少なくとも一方が回転可能となされていることを特徴とする。
【００２４】
請求項３に記載の発明による血清または血漿分離用組成物の製造方法は、上記請求項１または請求項２に記載の血清または血漿分離用組成物の製造方法において、血清または血漿分離用組成物が、シクロペンタジエンのオリゴマー、可塑剤および微粉末シリカからなることを特徴とする。
【００２５】
請求項４に記載の発明による血清または血漿分離用組成物の製造方法は、上記請求項１〜請求項３のいずれかに記載の血清または血漿分離用組成物の製造方法において、血清または血漿分離用組成物が、シクロペンタジエンのオリゴマー、可塑剤、微粉末シリカおよび有機ゲル化剤からなることを特徴とする。
【００２６】
以下、本発明を詳しく説明する。請求項１に記載の血清または血漿分離用組成物の製造方法は、血清または血漿分離用組成物の各構成成分を混合装置の混合部に形成された所定の間隙を強制的に通過させることにより均一に混合する血清または血漿分離用組成物の製造方法であって、上記各構成成分を加熱下で混合して血清または血漿分離用組成物を作製した後、加熱を停止し、ＪＩＳ Ｋ−７１１７に準拠して剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した上記組成物の粘度が４Ｐａ・ｓ以上となるまで、上記組成物を混合しつつ、冷却することを特徴とする。
【００２７】
上記強制的に通過させるとは、血清または血漿分離用組成物の各構成成分を混合装置の混合部に形成された所定の間隙を、例えば、遠心力による押圧力、ピストンなどによる押圧力、真空装置による吸引力などの力によって通過させることを言う。
【００２８】
また、上記各構成成分を混合する時の加熱温度は、従来の血清または血漿分離用組成物の製造方法の場合と同様に、７０〜１２０℃程度で良い。
【００２９】
本発明の血清または血漿分離用組成物の製造方法においては、血清または血漿分離用組成物の各構成成分を加熱下で混合して血清または血漿分離用組成物を作製した後、加熱を停止し、ＪＩＳ Ｋ−７１１７に準拠して剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した上記組成物の粘度が４Ｐａ・ｓ以上となるまで、上記組成物を混合しつつ、冷却することが必要である。これは換言すれば、血清または血漿分離用組成物の上記粘度が４Ｐａ・ｓ以上となった時点で、血清または血漿分離用組成物を混合装置から保存容器中に抜き出し、製品とすることを意味する。
【００３０】
上記粘度が４Ｐａ・ｓ未満の状態で血清または血漿分離用組成物を混合装置から保存容器中に抜き出して保存すると、保存中に、本組成物中に含有される微粉末シリカや有機ゲル化剤のようなチクソトロピー性付与剤が再凝集を起こして、本組成物が不均一化する。このような不均一化した本組成物を真空採血管に充填した場合、保存時に真空採血管を横倒しにすると、図７に示すように、本組成物２６が真空採血管２５の底部から管壁に沿って流動し、該真空採血管２５に血液を採取した後、遠心分離すると、この流動した部分２７が千切れて小塊となって血清または血漿中に浮遊したり、また、本組成物２６中に含有される可塑剤２８が相分離を起こして、血清または血漿中に油滴として浮遊する等の問題点が発生する。
【００３１】
従来の製造方法では、本発明の製造方法の骨子である冷却による粘度調節を行うことなく、７０〜１２０℃程度の高温下で混合した血清または血漿分離用組成物を、４Ｐａ・ｓ未満の低粘度の状態で、換言すれば、上記高温状態で保存容器中に抜き出して保存していた。従って、保存中に、自然冷却により本組成物の粘度が４Ｐａ・ｓ以上に上昇する前に、上記チクソトロピー性付与剤が再凝集を起こして、本組成物が不均一化し、本組成物の流動部分や相分離を起こした可塑剤に起因する上記問題点を惹起していた。
【００３２】
これに対し、本発明の製造方法では、７０〜１２０℃程度の高温下で混合した血清または血漿分離用組成物を、混合しつつ冷却して、予め粘度を４Ｐａ・ｓ以上に高めた状態で保存容器中に抜き出して保存する。従って、保存中に上記チクソトロピー性付与剤が再凝集することがなく、本組成物は長期間にわたって均一な状態を維持するので、本組成物の流動部分や相分離を起こした可塑剤に起因する上記問題点の発生を未然に防止することができる。
【００３３】
高温下で混合された血清または血漿分離用組成物の冷却方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、水冷法、空冷法、フレオンガス等の冷媒を用いる冷却法、或いは、これらを組み合わせた冷却法等が挙げられ、いずれの方法が採られても良い。
【００３４】
本発明の製造方法においては、上記冷却中に、本組成物は混合を継続されていることが必要である。本組成物の冷却中に混合が停止されていると、混合装置内でチクソトロピー性付与剤の再凝集が起こり、組成物が不均一化することがある。
【００３５】
次に、請求項２に記載の血清または血漿分離用組成物の製造方法について詳しく説明する。本製造方法において用いられる混合装置の混合部は、相互に近接して対面する２枚の円盤状体からなり、且つ、２枚の円盤状体の内の少なくとも一方には導入口が設けられ、且つ、対面する２枚の円盤状体のそれぞれの平面部同士の間の少なくとも一部が所定の間隙を有しており、且つ、上記対面した２枚の円盤状体の少なくとも一方が回転可能となされている。
【００３６】
図１は、上記混合装置の混合部の一例を示す平面図であり、図２は、図１のＩＩ−ＩＩ線断面図である。混合部は、相互に近接して対面した上側円盤状体１および下側円盤状体２からなる。上側円盤状体１および下側円盤状体２は、その平面図が円形であるものであり、全体が一様な厚みの円盤であっても良いし、後述する図３および図４に示すように、全体が一様な厚みでなくても良い。また、２枚の円盤状体１、２のうちの少なくとも一方には導入口３が設けられており（例えば、図１および図２では上側円盤状体１に導入口３が設けられている）、混合しようとする材料はこの導入口３より供給される。上側円盤状体１および下側円盤状体２は互いに接触せずに、両者の間に間隙が形成されているが、上側円盤状体１および下側円盤状体２のそれぞれの平面部同士の間の少なくとも一部は、所定の間隙４とされている。所定の間隙４とは、この間隙４を通過させることにより本組成物の各構成成分が均一に混合され得るような間隙４を指すものであり、具体的には後述する。また、２枚の円盤状体１、２は上述のように互に接触することなく、少なくとも一方が回転可能となされている。尚、上記混合部は、受け容器内（図示せず）に配置されている。図１および図２に示した装置では、上側円盤状体１は、受け容器の壁面に固定されており、下側円盤状体２は、下側円盤状体２の中心から垂直方向に立ち上がった軸部２ａを有し、該軸部２ａは図示しないモータに接続されており、該モータの回転により回転可能とされている。
【００３７】
次に、上記混合部を用いて中間組成物（中間組成物の定義は、従来技術の説明の項で述べた通り）と微粉末シリカとを混合する方法について説明する。下側円盤状体２を回転させながら、上側円盤状体１に設けられた導入口３に、中間組成物と微粉末シリカを供給すると、両者には下側円盤状体２の回転によって回転力が付与され、その遠心力によって、両者は間隙４の内部に進入させられ圧縮作用を受ける。さらに回転を継続させると、微粉末シリカは、間隙４へへら撫で作用により分散されるとともに、遠心力により間隙４の外周方向に連続的に移動し、最終的に間隙４を通過する。中間組成物に微粉末シリカが均一に分散されながら間隙４を通過する過程で、導入口３には陰圧が発生し、これに伴い新たな構成成分が導入口３に供給される。従って、上記の混合工程が連続的に進行する。
【００３８】
尚、２枚の円盤状体は、上記のように、どちらか一方の円盤状体を固定し、他方の円盤状体を回転させても良いし、両方の円盤状体ともに回転し得るように構成し、互いに逆方向に回転させても良い。実際には前者の方がより簡単な装置とすることができるため好ましい。また、均一混合に必要な回転数は上側円盤状体１および下側円盤状体２の外径および間隙４の容積などによって変わり、特に限定されるものではないが、それぞれ０〜１５００ｒｐｍの範囲で連続的に調節することができるようにされるのが好ましい。
【００３９】
上記所定の間隙４の厚み（２枚の円盤状体間の垂直距離）は１〜１００μｍが好ましく、５〜５０μｍがより好ましい。間隙の厚みは、小さくなると、中間組成物と微粉末シリカが間隙を通過し難くなるので混合に時間を要したり、また、微粉末シリカの一次粒子に剪断作用が作用することによって、過度に破壊されるために、均一に混合した場合でも本組成物のチクソトロピー性が低下し、本組成物の流動が発生し易くなり、逆に大き過ぎると、圧縮作用とへらなで作用が不足し、中間組成物に微粉末シリカを均一に分散させるためには混合時間が過度に長くなるので好ましくない。
【００４０】
間隙４の厚みは、好ましくは１〜１００μｍ、特に好ましくは５〜５０μｍであり、この範囲であれば、円盤状体１、２の径方向には、特に一定である必要はない。間隙４の厚みは本組成物の組成により適宜決定されるが、例えば、外側になるに従って間隙４の厚みが大きくなる場合には、回転に伴う中間組成物と微粉末シリカの通過速度が上昇するために圧縮作用を向上させることができる。また逆に、外側になるに従って間隙４の厚みが小さくなる場合には、回転に伴う中間組成物と微粉末シリカの通過速度が低下するためにへらなで作用を向上させることができる。
【００４１】
上記のように、間隙４の厚みを、例えば、１〜１００μｍの範囲で精密に調整するには、上側円盤状体１および下側円盤状体２の少なくとも一方を、垂直方向に移動させて行うことができる。また、上側円盤状体１および下側円盤状体２の少なくとも一方を厚みの異なるものと交換することでも可能である。
【００４２】
上記所定の間隙４の長さ（間隙４の円盤状体の径方向の長さ）は１〜１００ｍｍが好ましく、５〜５０ｍｍがより好ましい。間隙の長さは、小さ過ぎると、圧縮作用とへらなで作用が不足し、中間組成物への微粉末シリカの分散が不均一となり本組成物の相分離が発生し易くなり、また、均一に分散させるためには混合時間が過度に長くなる。また、大きすぎると、中間組成物と微粉末シリカが間隙を通過し難くなるので、混合時間が過度に長くなる。
【００４３】
図３は、上記混合装置の混合部の他の一例を示す平面図であり、図４は、図３のＩＶ−ＩＶ線断面図である。混合部は、相互に近接して対面する上側円盤状体５および下側円盤状体６からなり、上側円盤状体５には円形の導入口７が４ケ設けられている。下側円盤状体６は、下側円盤状体６の中心から垂直方向に立ち上がった軸部６ａを有しており、該軸部６ａは図示しないモータの回転軸と接続されており、一方、上側円盤状体５は、上側円盤状体５の中心から垂直方向に立ち上がった中空の軸部５ａを有しており、該軸部５ａは図示しないモータ固定用フランジに固定されている。そして、上側円盤状体５と下側円盤状体６とはそれぞれの軸部５ａ、６ａの部分でオイルシールなどのシール８を介して接触している。このように、二枚の円盤状体５、６は相互に直接に接触することなく、この混合装置では、下側円盤状体６が回転可能とされており、上側円盤状体５は固定されている（但し、上側円盤状体５と下側円盤状体６の回転については、上記の場合に限らず、上側円盤状体５と下側円盤状体６の両方を回転可能に構成し、それぞれが相対的に自由に回転することができるようにされていても良い）。
【００４４】
上側円盤状体５は、その径方向に一様の厚みではなく、導入口７よりも外側の部分が分厚くされている。また、下側円盤状体６も、その径方向に一様の厚みではなく、上側円盤状体５の導入口７に対向する部分よりも外側の部分が分厚くされている。そして、上側円盤状体５の分厚くされている部分と、下側円盤状体６の分厚くされている部分の間が所定の間隙９とされている。
【００４５】
また、下側円盤状体６は上側円盤状体５よりも直径がやや大きくされており、その大きくされた部分に円盤の径方向に溝１０が複数設けられている。この溝１０は２枚の円盤状体５、６の少なくともどちらか一方に複数設けられていれば良い。このような溝１０を設けると、間隙９を通過した本組成物をこの溝１０に導くことにより、下側円盤状体６の回転に伴い本組成物に付与される遠心力を有効に利用することができ、本組成物の突出量を増加させ混合時間を短縮できるとともに、バッチ式の混合を行う場合には、突出量の増大に伴い受け容器内で本組成物を十分に流動させることができ、より均一な混合が行える。溝１０の大きさや数は、目的とする混合量、混合時間、本組成物の組成により適宜選定されるものであり、特に限定されるものではない。
【００４６】
本発明の製造方法に用いられる血清または血漿分離用組成物としては、構成成分が、シクロペンタジエンのオリゴマー、可塑剤および微粉末シリカからなるものが特に好ましい。
【００４７】
上記シクロペンタジエンのオリゴマーには、シクロペンタジエンが多量体化されたオリゴマー、および、シクロペンタジエンが二量体化されたジシクロペンタジエンが多量体化されたオリゴマーが含まれる。上記オリゴマーは、シクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンを、例えば、ディールスアルダー反応等を利用して多量体化することにより製造され得る。これは、ジシクロペンタジエン樹脂（ＤＣＰＤ樹脂）と呼ばれることもある。これらのシクロペンタジエンのオリゴマーは、単独で用いられても良いし、２種類以上が併用されても良い。尚、上記オリゴマーはさらに水素添加をして残存する二重結合を飽和させておくのが好ましい。
【００４８】
上記オリゴマーは、ＪＩＳ Ｋ−６８６３「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」によって測定される軟化点が７０〜１４０℃であるものが好ましい。軟化点が低すぎると相分離が発生し易くなり、高すぎると溶融し難くなり、製造が困難になる。
【００４９】
上記オリゴマーは、ＪＩＳ Ｋ−６８６２「ホットメルト接着剤の溶融粘度試験方法」中のＡ法によって測定される１８０℃での溶融粘度が３０〜５００センチポイズであるものが好ましい。溶融粘度が低すぎると本組成物の粘度が不足し、高すぎると本組成物の粘度が過剰になる。
【００５０】
上記オリゴマーは、２５℃における比重（硫酸銅溶液を用いた浮沈法試験による）が１．０２〜１．１０ｇ／ｃｍ³ 、好ましくは、１．０３〜１．０９ｇ／ｃｍ³ であるものが好ましい。比重が上記範囲を逸脱すると、本組成物の比重を好適に調整し難くなる。
【００５１】
上記オリゴマーは、ＧＰＣ法によるポリスチレン換算の分子量が、数平均分子量で２００〜８００であるものが好ましく、より好ましくは５００〜７００であり、重量平均分子量で５００〜１５００であるものが好ましく、より好ましくは７００〜１２００である。数平均分子量および重量平均分子量が小さすぎると相分離が発生し易くなり、大きすぎると本組成物の粘度が過剰になる。
【００５２】
上記オリゴマーは、ＤＳＣ法によるガラス転移点が４０〜９０℃であるものが好ましく、より好ましくは５０〜８０℃である。ガラス転移点が小さすぎると相分離が発生し易くなり、大きすぎると本組成物の粘度が過剰になる。
【００５３】
上記可塑剤としては、シクロペンタジエンのオリゴマーとの相溶性に優れることから、フタル酸エステルが好ましい。上記フタル酸エステルとしては、二つのエステル基を形成するアルコール残基の内の少なくとも一方が炭素数６以上のものが好ましい。両方の炭素数が５以下であるジエステルはシクロペンタジエンのオリゴマーとの相溶性が低下する傾向がある。また、二つのエステル基を形成するアルコール残基のそれぞれの炭素数は、大きすぎると本組成物の比重を好適な範囲に調整し難くなるので、１１以下が好ましい。
【００５４】
上記可塑剤の具体例としては、例えば、フタル酸ブチルペンチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ブチルヘキシル、フタル酸ブチルヘプチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ペンチルヘプチル、フタル酸ブチルノニル、フタル酸ペンチルオクチル、フタル酸ヘキシルヘプチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ヘプチルオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸オクチルノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸デシルウンデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ブチルベンジル等が挙げられるが、なかでも特に好ましい可塑剤は、二つのエステル基を形成するアルコール残基の各炭素数が９〜１１のフタル酸ジエステルである。これらの可塑剤は、単独で用いられても良いし、２種類以上が併用されても良い。
【００５５】
上記可塑剤の使用量は、シクロペンタジエンのオリゴマー１００重量部に対して、３０〜１６０重量部が好ましく、より好ましくは５０〜１５０重量部であり、特に好ましくは６０〜１２０重量部である。上記範囲を逸脱すると本組成物の粘度を好適に調整し難くなる。
【００５６】
上記微粉末シリカとしては、二酸化珪素の一次粒子表面の水酸基の大部分をメチル基で置換した、非晶質二酸化珪素｛化学式ＳｉＯ₂ ・ｎ［（ＣＨ₃ ）₂ ＳｉＯ］｝からなる気相法による乾式シリカが好ましい。上記乾式シリカは、疎水性を有するため、シクロペンタジエンのオリゴマーまたは可塑剤に良好に分散する一方、血液に溶けて溶血させることがないので、赤血球中の成分が血清中または血漿中に混入する恐れがなく、好適に用いられる。これらの微粉末シリカは、単独で用いられても良いし、２種類以上が併用されても良い。
【００５７】
上記微粉末シリカの比表面積は、１０〜１０００ｍ² ／ｇが好ましく、より好ましくは５０〜５００ｍ² ／ｇである。上記範囲を逸脱すると本組成物のチクソトロピー性を好適に調整し難くなる。
【００５８】
上記微粉末シリカの一次粒子径は、１〜１００μｍが好ましく、より好ましくは５〜５０μｍである。上記範囲を逸脱すると本組成物のチクソトロピー性を好適に調整しにくくなる。
【００５９】
上記微粉末シリカの使用量は、シクロペンタジエンのオリゴマー１００重量部に対して１〜５０重量部が好ましく、より好ましくは２〜２０重量部であり、さらに好ましくは５〜２０重量部であり、特に好ましくは６〜１６重量部である。上記範囲を逸脱すると本組成物の比重またはチクソトロピー性を好適に調整し難くなる。
【００６０】
本発明の製造方法に用いられる血清または血漿分離用組成物には、さらに必要に応じて、構成成分として、有機ゲル化剤が添加されても良い。
【００６１】
上記有機ゲル化剤としては、ソルビトールと芳香族アルデヒドの縮合物が好ましく、その具体例としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール、メチル置換ジベンジリデンソルビトール等が挙げられるが、なかでも本組成物のチクソトロピー性を良好に発揮することから、ジベンジリデンソルビトールが特に好ましい。これらの有機ゲル化剤は、吸水性や水溶性を有しないため、長時間、血液と接触しても本組成物が吸水白濁することがなく、また、血液を濃縮するなどの副作用がない。これらの有機ゲル化剤は、単独で用いられても良いし、２種類以上が併用されても良い。
【００６２】
上記有機ゲル化剤の使用量は、シクロペンタジエンのオリゴマー１００重量部に対して０．０２〜３重量部が好ましく、より好ましくは０．１〜２重量部である。上記範囲を逸脱すると本組成物のチクソトロピー性を好適に調整し難くなる。
【００６３】
本発明の製造方法に用いられる血清または血漿分離用組成物には、さらに必要に応じて、構成成分として、有機ゲル化剤の分散剤が添加されても良い。
【００６４】
上記有機ゲル化剤の分散剤は、好ましくは１．０〜９．０、より好ましくは４．０〜６．０のＨＬＢ値を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、１−メチル−２−ピロリドンおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれるものである。これらの有機ゲル化剤の分散剤は、単独で用いられても良いし、２種類以上が併用されても良い。
【００６５】
上記ブロック共重合体のＨＬＢ値は、小さすぎると有機ゲル化剤の分散効果が不足し、本組成物のチクソトロピー性が低下する。大きすぎると疎水性が不足し、本組成物の使用時に血液中に溶けて血液を溶血させ赤血球中の成分が血清中または血漿中に混入するため正確な検査結果を与えなくなる恐れがある。
【００６６】
上記ブロック共重合体の使用量は、シクロペンタジエンのオリゴマー１００重量部に対して０．１〜１５重量部が好ましく、より好ましくは０．１〜５重量部である。ブロック共重合体の使用量が少なすぎると有機ゲル化剤の分散効果が不足し、本組成物のチクソトロピー性が低下する。多すぎるとシクロペンタジエンのオリゴマーとの相溶性が低下して、本組成物のチクソトロピー性が低下する。
【００６７】
上記１−メチル−２−ピロリドンは、有機ゲル化剤を良好に溶解すること、血液と反応して溶血を起こさないこと、および、本組成物の滅菌を目的とした放射線の照射による分解がないこと等から好適に用いられる。
【００６８】
上記１−メチル−２−ピロリドンの使用量は、シクロペンタジエンのオリゴマー１００重量部に対して０．０５〜５重量部が好ましく、より好ましくは０．０５〜３重量部である。１−メチル−２−ピロリドンの使用量が少なすぎると有機ゲル化剤の分散効果が不足し、本組成物のチクソトロピー性が低下する。多すぎると溶血反応を引き起こす。
【００６９】
本発明の製造方法に用いられる血清または血漿分離用組成物には、さらに必要に応じて、構成成分として、適量の比重調整剤、相溶化剤、粘度低下剤等が適宜添加されても良い。
【００７０】
上述した構成成分から構成される本組成物の比重は、血清または血漿と血餅または血球との中間の比重であることが好ましく、具体的には、２５℃において１．０３〜１．０８ｇ／ｃｍ³ が好ましく、より好ましくは１．０４〜１．０６ｇ／ｃｍ³ である。
【００７１】
また、本組成物の粘度は、通常の遠心分離操作によって、本組成物を血清または血漿層と血餅または血球層との中間部に位置させるためや、真空採血管用等の血液検査容器への充填作業をし易くするために、２５℃において５０〜１０００Ｐａ・ｓが好ましく、より好ましくは６０〜５００Ｐａ・ｓである。
【００７２】
次に、本発明による血清または血漿分離用組成物の製造方法の一例を具体的に説明する。図５に示すように、先ず、シクロペンタジエンのオリゴマーと可塑剤を加熱下でバッチ式で混合し、中間組成物を製造する。この工程で用いられる混合装置１１は従来のブレード型ミキサ（例えば、一軸ミキサ、二軸ハイブリッドミキサ、プラネタリミキサ、ダブルプラネタリミキサ等）であれば良く、特に限定されない。加熱温度はシクロペンタジエンのオリゴマーの軟化点に従って適宜設定される。加熱は、混合装置の受け容器１２を蒸気または温水で加熱する方法が好ましい。
【００７３】
また、上記混合工程では、さらに必要に応じて、有機ゲル化剤、有機ゲル化剤の分散剤、比重調整剤、相溶化剤または粘度低下剤等を添加しても良い。有機ゲル化剤および有機ゲル化剤の分散剤は、チクソトロピー性を好適に発揮するために、予め混合しておくことが好ましい。この場合の混合は従来の混合方法（例えば、ガラスコルベン、ビーカ、その他の汎用容器等に構成成分を投入し、マグネチックスターラ、小型モータと攪拌羽根の組み合わせ等の装置で攪拌する）であれば良く、特に限定されない。
【００７４】
さらに、上記混合工程は、真空ポンプ１３による減圧下で行っても良い。減圧下で行うことにより、中間組成物に気泡が混入するのを防ぎ、且つ、構成成分に溶存している空気を除去することができる。減圧の程度としては、効果的に空気を除去するためには、混合工程の圧力として０〜１００ｍｍＨｇであるのが好ましい。
【００７５】
次いで、得られた中間組成物をポンプ１４により混合装置１５に移送し、中間組成物に微粉末シリカをバッチ式で均一に分散させて混合し、本組成物を製造する。この工程で用いられる混合装置１５は、受け容器１６中に、先に詳細に説明した通りの混合部１７を備えるものである。
【００７６】
上記混合装置１５には、乱流発生板１８が設けられても良い。乱流発生板１８は、混合装置１５の混合部１７の回転に伴い発生する本組成物の渦流れと逆回転方向、または、渦流れと同一回転方向に、渦流れよりも遅い速度で混合装置１５の内壁面に沿って回転する板状体であり、この乱流発生板１８により、本組成物の渦流れに乱流を発生させることができ、本組成物の混合をより均一に行うことができる。
【００７７】
また、乱流発生板１８には、乱流発生板１８の外側に沿ってスクレーパ１９が設けられても良い。スクレーパ１９は、混合装置１５の内壁面に接触しており、乱流発生板１８の回転に伴って、混合装置１５の内壁面に付着した本組成物をかき落とす働きを有するものである。このスクレーパ１９により本組成物の混合をさらに均一に行うことができる。スクレーパ１９としては、シリコンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性および耐摩耗性に優れる弾性材料が好適である。
【００７８】
上記混合時の温度は、５０〜１５０℃が好ましく、７０〜１２０℃がより好ましい。温度が低すぎると中間組成物の粘度が高すぎるため混合に時間を要する。温度が高すぎるとシクロペンタジエンのオリゴマーおよび微粉末シリカの変性が起こり易くなる。加熱は混合装置１５の受け容器１６を蒸気または温水で加熱する方法が好ましい。また、真空ポンプ１３による減圧下で混合させるのが好ましい。減圧下で混合することにより、中間組成物の気泡が混入するのを防ぎ、且つ、構成成分に溶存している空気を除去することができる。減圧の程度としては、効果的に空気を除去するためには、混合工程の圧力として０〜１００ｍｍＨｇであるのが好ましい。
【００７９】
また、上記混合工程は、上記のような従来の混合工程で製造した中間組成物への微粉末シリカの分散だけでなく、中間組成物自体の製造もこの混合装置内で行うことができる。この場合の一例を挙げると、シクロペンタジエンのオリゴマーおよび可塑剤を混合装置１５に投入し、シクロペンタジエンのオリゴマーの軟化点以上に加熱した後、混合させる。次いで、必要に応じて、上記有機ゲル化剤および有機ゲル化剤の分散剤の混合物、比重調整剤、相溶化剤或いは粘度低下剤等を添加して、混合する。最後に微粉末シリカを投入して均一に混合させる。
【００８０】
さらに、上記混合工程は、中間組成物の混合工程と連続して行うこともできる。この場合は、混合装置１１と混合装置１５を連結し、混合装置１１内で本組成物の全ての構成成分を混合する。この時点では微粉末シリカの分散は不十分であるため、混合装置１１から抜き出した本組成物を連続的に混合装置１５に供給し、微粉末シリカを均一に分散させ、均一に混合させる。
【００８１】
【作用】
本発明の製造方法によれば、高温下で混合した血清または血漿分離用組成物を、混合しつつ冷却して、ＪＩＳ Ｋ−７１１７に準拠して剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した粘度が４Ｐａ・ｓ以上となるように予め高めた状態で保存容器中に抜き出して保存するので、本組成物中に含有されるチクソトロピー性付与剤が保存中に再凝集することがなく、本組成物は長期間にわたって均一な状態を維持する。従って、本発明の製造方法で得られる血清または血漿分離用組成物は、例えば真空採血管に充填され、保存時に真空採血管が横倒しにされても、本組成物が真空採血管の底部から管壁に沿って流動することが殆どなく、また、本組成物中に含有される可塑剤が相分離を起こすことも殆どないので、該真空採血管に血液を採取し、遠心分離した時に、本組成物の流動した部分が千切れて小塊となって血清または血漿中に浮遊することがなく、また、本組成物中に含有される可塑剤が油滴として血清または血漿中に浮遊することもない。
【００８２】
また、本組成物の構成成分の混合、特に中間組成物と微粉末シリカのような粉体状物質との混合工程において、従来のブレード型混練機に比べ、構成成分自体が流動し、２枚の円盤状体で形成される間隙を通過させることにより、均一な混合が実現できるため、得られる本組成物は上記流動および相分離を殆ど発生しない。また、上記間隙を通過する際に、従来のブレード型混練機のように剪断作用が働かず、圧縮作用とへらなで作用のみで分散されるために、混練過度による微粉末シリカ一次粒子の破壊が起こり難いため、本組成物のチクソトロピー性が好適に保たれることも、上記流動や相分離が殆ど発生しない理由の一つである。
【００８３】
また、従来のロールミルに比べ、高温即ち低粘度の状態で混合を行うことができ、かつバッチ式で混合できるため、本組成物は受け容器内で十分に流動が可能であり、バッチ内の構成成分の均一化が可能であり、また、単位時間あたりの処理量も大きい。
【００８４】
さらに、混合工程を減圧下で行うことができるため、別途の脱泡工程が不要となるとともに、本組成物中の気泡および溶存空気を、混合工程を利用して効果的に除去できる。
【００８５】
加えて、剪断作用によらない、即ち、圧縮作用およびへらなで作用による製造方法であるため、従来の製造方法の問題であった中間組成物の精密な温度管理による粘度制御が不要となるので、製造効率が向上する。
【００８６】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
【００８７】
（実施例１）
（１）有機ゲル化剤と有機ゲル化剤の分散剤との混合
２リットル容量のガラス製ビーカに、１−メチル−２−ピロリドン（ＢＡＳＦ社製）１００部、ジベンジリデンソルビトール（商品名「ゲルオールＤ」、新日本理化社製）２５部を仕込み、マグネチックスターラを用いて室温で２時間攪拌し、ジベンジリデンソルビトールを溶解させた。
【００８８】
（２）血清または血漿分離用組成物の製造
図３および図４に示した混合部を有する混合装置を用いた。具体的には、上側円盤状体５の直径が３３０ｍｍ、下側円盤状体６の直径が３５０ｍｍで、且つ、図５に示した乱流発生板１８およびスクレーパ１９を有し、容積６００リットルの受け容器を有する混合装置を用いた。間隙９は、厚み２０μｍ、長さ１０ｍｍとなるように、２枚の円盤状体５、６を調節した。
【００８９】
混合装置の受け容器に軟化点１０３℃のシクロペンタジエンのオリゴマー（商品名「ＥＣＲ２５１」、トーネックス社製）１００部、アルコール残基が炭素数９〜１１のアルキル基であるフタル酸ジエステル（商品名「ＰＬ−２００」、三菱ガス化学社製）７０部を仕込み、混合装置の混合部を上記配合物に浸漬した後、受け容器を密閉した。受け容器を蒸気で加熱して配合物の温度を１１０℃にした後、内部を８ｍｍＨｇに減圧した。配合物の温度を１１０±１０℃に保ちながら、２枚の円盤状体５、６の内、下側円盤状体６を２００ｒｐｍで６０分間回転させ混合した。
【００９０】
減圧を一時解除し、（１）で得られた有機ゲル化剤と有機ゲル化剤の分散剤との混合物０．５部を仕込み、再度内部を８ｍｍＨｇに減圧した。配合物の温度を１１０±１０℃に保ちながら、二枚の円盤状体５、６の内、下側円盤状体６を４００ｒｐｍで３０分間回転させ混合した。
【００９１】
減圧を一時解除し、比表面積２５０ｍ² ／ｇの微粉末シリカ（商品名「レオロシールＤＭ３０Ｓ」、トクヤマ社製）７．１部を仕込み、再度内部を８ｍｍＨｇに減圧した。配合物の温度を１１０±１０℃に保ちながら、２枚の円盤状体５、６の内、下側円盤状体６を１０００ｒｐｍで、且つ、乱流発生板１８を下側円盤状体６の回転方向と逆方向に２０ｒｐｍで、１５分間回転させ混合した。
【００９２】
次いで、混合容器の受け容器を１３℃の冷却水で冷却し、さらに下側円盤状体６を停止させ、乱流発生板１８のみを継続して５０分間回転させて、血清または血漿分離用組成物を製造した。この時の本組成物の温度は５８℃であり、同温度において剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した粘度は８Ｐａ・ｓであった。
【００９３】
（実施例２）
フタル酸ジエステル「ＰＬ−２００」の配合量を７５部、（１）で得られた有機ゲル化剤と有機ゲル化剤の分散剤との混合物の配合量を０．６部及び微粉末ルＤＭ３０Ｓ」の配合量を７．８部としたこと以外は実施例１の場合と同様にして、血清または血漿分離用組成物を製造した。この時の本組成物の温度は５８℃であり、同温度において剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した粘度は６Ｐａ・ｓであった。
【００９４】
（実施例３）
フタル酸ジエステル「ＰＬ−２００」の配合量を７７部、（１）で得られた有機ゲル化剤と有機ゲル化剤の分散剤との混合物の配合量を０．６部及び微粉末シリカ「レオロシールＤＭ３０Ｓ」の配合量を７．６部としたこと以外は実施例１の場合と同様にして、血清または血漿分離用組成物を製造した。この時の本組成物の温度は５８℃であり、同温度において剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した粘度は５Ｐａ・ｓであった。
【００９５】
（比較例１）
混合容器の受け容器の冷却を行わなかったこと以外は実施例１の場合と同様にして、血清または血漿分離用組成物を製造した。この時の本組成物の温度は１０５℃であり、同温度において剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した粘度は２Ｐａ・ｓであった。
【００９６】
（比較例２）
混合容器の受け容器の冷却を行わなかったこと以外は実施例２の場合と同様にして、血清または血漿分離用組成物を製造した。この時の本組成物の温度は１０５℃であり、同温度において剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した粘度は１Ｐａ・ｓであった。
【００９７】
（比較例３）
混合容器の受け容器の冷却を行わなかったこと以外は実施例３の場合と同様にして、血清または血漿分離用組成物を製造した。この時の本組成物の温度は１０５℃であり、同温度において剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した粘度は１Ｐａ・ｓであった。
【００９８】
実施例１〜実施例３、及び、比較例１〜比較例３で得られた血清または血漿分離用組成物の性能（▲１▼流動性、▲２▼相分離性）を以下の試験方法で評価した。その結果は表１に示すとおりであった。
【００９９】
▲１▼流動性試験：本組成物１．２ｍｌを外径１６ｍｍ、内径１３ｍｍ、長さ１００ｍｍの丸底のポリエチレンテレフタレート製試験管に底部に気泡が混入しないように充填し、図７に破線で示したＡのように組成物の液面に沿って該試験管に印を付けた後、室温で直立させ２時間静置した。次いで、直ちに横に倒し水平にして、６０℃の恒温槽中に２４時間静置した後、組成物の流動した先端部分と上記の液面に沿って付けた印との距離（図７に示したＢ）をノギスで測定し、流動距離（ｍｍ）を求めた。尚、試験の繰り返し数は６とし、その平均値を表１に記載した。
▲２▼相分離性試験：上記流動性試験に用いた試料を用いた。組成物の流動した先端部分とそこからさらに流動した相分離の先端部分との距離（図７に示したＣ）をノギスで測定し、相分離距離（ｍｍ）を求めた。尚、試験の繰り返し数は６とし、その平均値を表１に記載した。
【０１００】
【表１】

【０１０１】
表１から明らかなように、本発明の製造方法による実施例１〜実施例３の血清または血漿分離用組成物は、流動距離及び相分離距離のいずれもが小さく、流動性や相分離性を殆ど示さなかった。
【０１０２】
これに対し、製造時に冷却を行わず、ＪＩＳ Ｋ−７１１７に準拠して剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した粘度が４Ｐａ・ｓ未満の状態であった比較例１〜比較例３の血清または血漿分離用組成物は、流動距離及び相分離距離のいずれもが大きく、流動性や相分離性が激しかった。
【０１０３】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の製造方法によれば、例えば微粉末シリカや有機ゲル化剤のようなチクソトロピー性付与剤の不均一分散を防いで組成物が均一に混合され、且つ、混合後に上記チクソトロピー性付与剤が再凝集して組成物が不均一化することのない血清または血漿分離用組成物を効率的且つ簡便に得ることができる。
【０１０４】
また、本発明の製造方法で得られる血清または血漿分離用組成物は、例えば真空採血管に充填され、保存時に真空採血管が横倒しにされても、本組成物が真空採血管の底部から管壁に沿って流動することが殆どなく、また、本組成物中に含有される可塑剤が相分離を起こすことも殆どないので、該真空採血管に血液を採取し、遠心分離した時に、本組成物の流動した部分が千切れて小塊となって血清または血漿中に浮遊することがなく、また、本組成物中に含有される可塑剤が油滴として血清または血漿中に浮遊することもない。従って、本発明の製造方法で得られる血清または血漿分離用組成物は、血清層または血漿層と血餅層または血球層との高精度な分離用として好適に用いられる。
【０１０５】
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明で用いられる混合装置の混合部の一例を示す平面図である。
【図２】図１のＩＩ−ＩＩ線断面図である。
【図３】本発明で用いられる混合装置の混合部の他の例を示す平面図である。
【図４】図３のＩＶ−ＩＶ線断面図である。
【図５】本発明で用いられる製造装置の一例の説明図である。
【図６】従来の製造装置の一例の説明図である。
【図７】血清または血漿分離用組成物の流動および相分離を示す説明図である。
【符号の説明】
１、５ 上側円盤状体
２、６ 下側円盤状体
３、７ 導入口
４、９ 間隙
８ シール
１０ 溝
１１ 混合装置
１２ 受け容器
１３ 真空ポンプ
１４ ポンプ
１５ 混合装置
１６ 受け容器
１７ 混合部
１８ 乱流発生板
１９ スクレーパ
２０ 混合装置
２１ 混練ブレード
２３ 混練装置
２４ 真空ポンプ
２５ 真空採血管
２６ 本組成物
２７ 流動した部分
２８ 相分離した可塑剤
２ａ、５ａ、６ａ 軸部

Claims (4)

1. 血清または血漿分離用組成物の各構成成分を混合装置の混合部に形成された所定の間隙を強制的に通過させることにより均一に混合する血清または血漿分離用組成物の製造方法であって、上記各構成成分を加熱下で混合して血清または血漿分離用組成物を作製した後、加熱を停止し、ＪＩＳ Ｋ−７１１７に準拠して剪断速度１０ｓｅｃ^-1で測定した上記組成物の粘度が４Ｐａ・ｓ以上となるまで、上記組成物を混合しつつ、冷却することを特徴とする血清または血漿分離用組成物の製造方法。
2. 混合装置の混合部が、相互に近接して対面する２枚の円盤状体からなり、且つ、２枚の円盤状体の内の少なくとも一方には導入口が設けられ、且つ、対面する２枚の円盤状体のそれぞれの平面部同士の間の少なくとも一部が所定の間隙を有しており、且つ、上記対面した２枚の円盤状体の少なくとも一方が回転可能となされていることを特徴とする請求項１に記載の血清または血漿分離用組成物の製造方法。
3. 血清または血漿分離用組成物が、シクロペンタジエンのオリゴマー、可塑剤および微粉末シリカからなることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の血清または血漿分離用組成物の製造方法。
4. 血清または血漿分離用組成物が、シクロペンタジエンのオリゴマー、可塑剤、微粉末シリカおよび有機ゲル化剤からなることを特徴とする請求項１〜請求項３のいずれかに記載の血清または血漿分離用組成物の製造方法。

Images