JP4378019B2 - 超音波による金属の材質劣化検出方法 - Google Patents

超音波による金属の材質劣化検出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属の材質劣化検査方法の改良に関するものであり、主として炭素鋼やステンレス鋼等の熱時効による材質劣化や機械的応力の印加による材質劣化、中性子照射等による材質劣化等の検出に用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】
金属、特にステンレス鋼は、その優れた耐食性や耐錆性の故に多くの分野で広く利用されている。その中でも所謂オーステナイト系ステンレス鋳鋼は耐食性、強度、溶接性等に特に優れているため、化学プラントや原子力発電プラント等において広く用いられている。
ところで、オーステナイト系ステンレス鋳鋼は、冶金学的には約10〜20%のα相と約90〜80%のγ相の二相から形成されており、α相は約0.1mmの間隔でγ相内に分布している。そして、300℃以上の高温中に数百時間以上保持すると、所謂熱時効により前記α相内で硬度の上昇や衝撃値の低下が発生し、ステンレス鋼としての材質が大きく変化する。
尚、このような材質の変化は、オーステナイト系ステンレス鋳鋼の場合だけでなく、炭素鋼等の金属材に共通して見られる現象であり、且つ熱時効のケースのみならずに加圧力等の機械的応力を長期に亘って印加した場合や中性子照射等の場合にも生ずる。
【0003】
ところで、金属の内部に生じた欠陥や材質劣化等の検出方法として、これ迄に超音波を用いた各種の方法が開発されている。
しかし、ステンレス鋼、特にオーステナイト系ステンレス鋳鋼は結晶粒が粗大であるうえ、その大きさも不均一であり、しかも結晶異方性を有している。そのため、オーステナイト系ステンレス鋳鋼内を通過する超音波ビームは粗大結晶粒によって著しく散乱される。その結果、超音波ビームの減衰やバックグランドノイズとしてのエコーを生ずることになり、SN比の低下を来たして材料欠陥の検出性能を低下させる。
【0004】
また、結晶異方性の方は材料の音響異方性を引き起し、通過する超音波ビームのゆがみ(スキュー)や通過方向によって音速が変動することになり、材料欠陥や材質劣化が生じている位置の検出精度が低下する。
更に、超音波発信用探触子の取り付け面と金属外表面との間の伝達効率を高めるために接触媒質を使用する必要があり、検査の実施に多くの手数と時間と費用を必要とする。
【0005】
一方、上述の如き超音波を用いた金属の材質劣化検査に於ける各問題を解決するものとして、本願発明者は先きに図11に示すような超音波受信用の電磁探触子2と受信用の磁気マイクロプローブ3を用いたステンレス鋼の材質劣化検査方法を開発し、これを特願平10−363453号として公開している。
即ち、この発明は、▲1▼磁場を有する被検査体1の表層内を電磁探触子2から発信した超音波を伝播させ、当該伝播する超音波のエネルギーを用いて被検査体1の表層を振動させる。被検査体1の表層が振動すると、被検査体の表層の前記磁場が変動するので、この磁場の変動を被検査体1の表面に配設した少なくとも0.5μmの分解能を有する磁気マイクロプローブ3を用いて検出する。▲3▼そして、検出した磁場の変動の状態から、被検査体1の材質劣化を判定するものである。尚、図11に於いて7・8は磁気マイクロプローブ3に設けた磁極、4はプリアンプ、5はアンプ、6はディスプレイである。
【0006】
例えばオーステナイト系ステンレス鋳鋼の被検査体1の場合、その表層が超音波エネルギーによって振動すると、組織を形成する幅10μm程度で材料中に分布するα相(フェライト相・約10〜20%の割合でランダムに混在)も振動する。その結果、α相の粒界近傍の磁場は、α相が磁場内で振動することにより生じた誘導電流の磁場によって乱され、強弱のある不均一な磁場となる。
この被検査体1の表層の振動により生じたα相近傍の磁場の変動は、図12の曲線Aのような形状になるものと想定され、被検査体1の矢印イーロ方向の振動に対しては、α相とγ相との粒界付近で磁場のピーク値P1 、P2 を持つ変動になる。
【0007】
変動する磁場のピークP1 、P2 は、0.5μmのギャップGを有する磁気マイクロプローブ(即ち、0.5μmの空間分離能を有する磁気マイクロプローブ)3によって検出され、プリアンプ4、アンプ5を通してディスプレイ6等に表示若しくは記録される。
尚、磁気マイクロプローブ3は、被検査体1の表面を適宜の速度でスキャンニングするが、材質に変化が無ければ、スキャンニング中の各α相の粒界近傍に於ける磁場変動の大きさ(即ちピーク値P1 、P2 の大きさ)は、ほぼ近似した大きさとなる。
【0008】
一方、オーステナイト系ステンレス鋳鋼を構成する組織の一つであるα相は、300℃以上の温度下に500時間以上保持すると所謂熱時効によってその材質が変化する。具体的には、熱時効によってα相が硬化(弾性常数が増加)して超音波の伝播特性が変化する。また、その磁気特性も変化する。
熱時効によってα相の磁気特性に変化が生じると、α相の振動によるα相粒界近傍の磁場変動の状態も変わる。具体的には、磁場の変動曲線が図12の曲線B或いは曲線Cのような形状になり、ピーク値P1 ′、P2 ′或いはP1 ″、P2 ″が熱時効による材質の変化が無い場合の曲線Aのピーク値P1 、P2 に比較して変化する。
【0009】
磁気マイクロプローブ3によって検出されたα相の粒界近傍の磁場変動(ピーク値P1 ′、P2 ′或いはP1 ″、P2 ″は、ディスプレイ6やこれに接続されたコンピュータ(図示省略)等へ表示並びに記録され、この磁場の変動量が設定範囲外の大きさになれば、材料に変質(材質劣化)が生じていると判断される。また、被検査体1の表面の所定の範囲内をスキャンニングして材料変質の有・無の分布を求めることにより、被検査体1の材料変質(材質劣化)を起こしている範囲が特定できる。
【0010】
図13は、被検査体1としてオーステナイト系ステンレス鋳鋼(厚さ25mm、外形100mm×200mm、400℃・2000Hrの熱時効を印加)を、電磁探触子2として波長λ=約0.5MHZのSH波を発信するものを、磁気マイクロプローブ3として分解能(ギャップG)が約0.5μmの磁気マイクロプローブを夫々使用し、磁気マイクロプローブ3と電磁接触子2の間隔Lを100mmとしたときの磁気マイクロプローブ3の検出信号をオッシレータで測定したものである。尚、曲線Bはプローブ3に磁極7・8を設けず且つ被検査体1に残留磁気がある場合、また曲線Cはプローブ3に磁極7・8を設け且つ被検査体1に残留磁気がある場合を示す。また、曲線Aは残留磁気及び磁極7・8が無い場合である。
【0011】
上記先出願に係る金属の材質劣化検査方法は磁気マイクロプローブ3の検出信号の振幅の対比から材質劣化を比較的容易に検出することができ、優れた実用的効用を有するものである。
しかし、この材質劣化検査方法にも実用化を図る上で多くの問題点が残されている。
例えば、図13の曲線B及びCからも明らかなように、反射超音波等の影響によって磁気マイクロプローブ3の検出信号は、同一地点であっても時間の経過と共に大きく変動する。また、変動の起き方そのものもランダムであって、相互の間に規則性が全く見られない。従って、現実の測定に於いては、検出信号の最初の変動範囲S(図13の曲線Cの40μs〜50μsの間)の平均値を求め、この平均値と、予かじめ熱時効のない同一の被検査体について同じ超音波入力等の条件下で測定した検出信号の最初の変動範囲の平均値とを対比し、これによって材質劣化の有無を判定するようにしている。
【0012】
しかし、前記最初の変動範囲Sの平均値がそれより後の変動範囲S′、S″(図13の70us以降)の平均値と大きく異なる場合が屡々あり、判断基準とする最初の変動範囲Sの検出値のそのものの信頼性が低い。そのため、高精度な材質劣化の判断ができず、判断結果に対する信頼性に欠けると云う難点がある。
【0013】
同様に、図13の曲線B及び曲線Cの矢印B′、C′からも明らかなように、検出信号の振幅の変化が比較的ゆっくりとしているため、超音波の伝播速度の変化を正確に検出することが困難となる。その結果、伝播速度の変化率から材質劣化を検出する場合であっても、検出精度が極めて低いと云う問題がある。
【0014】
更に、磁気マイクロプローブ3の分解能とも関係するが、熱時効の無い被検査体であるにも拘わらず、最初の変動範囲Sに該当する検出値が相当大きくなることが屡々あり、熱時効の比較的軽い被検査体の場合には、検出値に殆んど差異が出て来ない。
即ち、被検査体1に相当量の熱時効が加わえられない限り、磁気マイクロプローブ3による検出値の振幅に明確な差異が出ず、結果として初期段階での材質劣化の検出が出来ないと云う問題がある。
【0015】
【発明が解決しようとする問題点】
本発明は、先きに開発をした超音波を用いた金属の材質劣化検出に於ける上述の如き問題、即ち、▲1▼磁気マイクロプローブによる伝播して来た超音波の検出値の信頼性が低いため、材質劣化の判断結果に対する信頼性が低いこと、及び▲2▼材質劣化の初期段階に於いて、これを検出することが困難なこと等の問題を解決せんとするものであり、熱時効等を加える前及び後の被検査体について、電磁マイクロプローブにより検出した検出信号の振幅そのものの対比から材質劣化を判断したり、或いは振幅の変動から検出した超音波の伝播速度の変化から材質劣化を判断するのではなく、両検出信号間の位相のづれから検出した位相差の変動率(即ち、伝播速度の変動率)を対比することにより、より正確に金属の材質劣化を検出できるようにした材質劣化検出方法を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、金属の外表面の所定位置に超音波送信プローブを配設すると共に当該位置より所定距離だけ離れた位置に超音波受信プローブを配設し、前記送信プローブから発信され金属内部を伝播して来た超音波を受信プローブにより検出すると共に受信プローブからの検出信号を記録し、次に、所定時間が経過したあと、前記金属材料の外表面の所定位置に超音波送信プローブを、またこれにより所定距離だけ離れた位置に超音波受信プローブを夫々配設し、前記送信プローブから最初の場合と同じ超音波を発信して金属内部に伝播させると共に、伝播して来た超音波を最初の場合と同じ受信条件下で受信プローブにより検出し、当該受信プローブからの検出信号と前記記録した検出信号とを対比して両検出信号間の位相差Δtを検出すると共に当該位相差Δtの変化率Δt/Tを演算し、前記位相差Δtの変化率Δt/T(超音波の音速変化率)に基づいて金属の材質劣化を検知することを発明の基本構成とするものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明に於いて、送信プローブ及び受信プローブを電磁超音波接触子から成るプローブとしたものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明に於いて、送信プローブから送信する超音波を表面SH波としたものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1の発明に於いて、所定時間が経過した後の超音波伝播特性の測定を最初の場合の送信プローブ及び受信プローブと実質的に同一のプローブを用いて行なうようにしたものである。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1、請求項3又は請求項4の発明に於いて、送信プローブを圧電接触子から成る送信プローブとしたものである。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1、請求項3、請求項4又は請求項5の発明に於いて、受信プローブを電磁マイクロプローブとしたものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の機器配置の概要を示す説明図であり、送信プローブ10及び受信プローブ11を電磁探触子とした場合を示すものである。
図1に於いて、1は被検査体、10は送信プローブ、11は受信プローブ、12は任意波形発生器、13はパワーアンプ、14は受信アンプ、15はオッシロスコープ、16はパソコンである。
【0023】
被検査体1には、オーステナイト系ステンレス鋳鋼製の厚板(厚さh=30mm、横幅w=85mm、長さm=200mm)が用いられており、その外表面は平滑面に仕上げられている。
また、被検査体1には、同一の材質及び外形寸法のものがセットで準備されており、一方の被検査体1bには予かじめ400℃×500Hrの熱時効が加えられているが、他方の被検査体1aには熱時効が全く加えられていない。
更に、本実施形態に於いては、被検査体1としてオーステナイト系ステンレス鋳鋼を使用しているが、硬化やぜい化等の材質劣化が一様に(若しくは均一に)起るものであれば、如何なる金属であってもよい。
【0024】
前記送信プローブ10及び受信プローブ11には、前述の通り公知の電磁探触子が使用されている。図2は本発明で使用する電磁探触子の斜視図であり、複数の永久磁石2aを磁極を相互に反転させながら組み合わせ、その上面にコイル2bを蛇行して構成されている。間隔dは磁極の反復単位を与え、2本の同極磁石間の間隔である。磁石の本数は任意に選択でき、最終的に、横W=20mm、縦K=12mm、高さH=30mmのサイズに構成される。
【0025】
図3は電磁探触子の発信機構の説明図である。本図では、図2に示す電磁探触子が逆転して被検査体1の近傍に非接触に配置されている。
コイル2bに高周波電流(例えば700〜2000KHZ)を記号方向に流すと、被検査体1内に図示方向に渦電流が流れる。この渦電流は磁石2aの磁力線Mと相互作用して、実線矢印方向にローレンツ力Fが作用する。このローレンツ力Fが被検査体1に超音波を生起し、高周波電流の周波数と同じ振動数の超音波が発生する。
【0026】
このようにして発生した超音波はSH波(Shea Horizontal Wave)である。発生する超音波は被検査体1の表層部を伝播する必要性から表面SH波が選ばれる。また、電磁探触子は被検査体1と非接触であっても近接さえしていれば、超音波を被検査体1に伝達することができる。
更に、発生する超音波の波長をλ、超音波の入射角をθ、1組の永久磁石の厚さをDとすると、λ=Dsinθの関係にある超音波のSH波(Shea Horizontal Wave)を発生することができる。
尚、本実施形態では、図2の如き構成のSH波を発生する電磁探触子を用いているが、本発明で使用する電磁探触子は如何なる構成のものであってもよく、また、発生する超音波も横波・縦波の何れであってもよい。
【0027】
電磁探触子の受信機構は、前記発信機構の場合と逆くであり、超音波の伝播により被検査体1の表層部が振動すると、永久磁石2aの磁力線Mとの相互作用によって被検査体1にうづ電流が流れる。このうず電流により起生した磁界がコイル2bと鎖交することにより、コイル2bに超音波の振動数と同じ周波数の高周波電圧が誘起される。
尚、上記電磁探触子そのものは、既に公知であり、従ってその詳細説明は省略する。
同様に、任意波形発生器12、パワアンプ13、受信アンプ14、オッシロスコープ15及びパソコン16等も既に公知であるため、その説明は省略する。
【0028】
次に、本発明を用いた金属の材質劣化検査方法について説明する。図1を参照して、先ず熱時効等を加えていない方の被検査体1aの表面(検査面)を清浄面とし、その後、電磁探触子から成る送信用プローブ10と受信プローブ11とを適宜の間隔例えばL=50mm〜300mm程度離して被検査体1上にセットする。
各機器のセッチングが終ると、任意波形発生器12、パワーアンプ13、受信アンプ14、オシロスコープ15及びパソコン16の設定並びに調整を行ない、送信プローブ10を作動させる。これにより、送信プローブ10からは、周波数が0.5MHZ〜2MHZ(本実施形態の場合1.5MHZ)の超音波の表面SH波(波長λは約6mm〜1.5mm)Sが被検査体1の表面に沿って発信される。
上記発信された超音波の表面SH波Sは、被検査体1の表面から波長λの約1/2程度の寸法(即ち、約2〜3mm程度)の深さまで浸透し、被検査体1の表層内を進行する。
【0029】
超音波の表面SH波が被検査体1の表層内を進行すると、表面SH波Sの有するエネルギーによって被検査体1の表層が振動し、表面SH波Sが受信プローブ11へ到達すると、受信プローブ11により検出される。
また、受信プローブ11からの検出信号は、受信アンプ14で増幅されたあとオッシロスコープ15へ入力されると共に、ディジタル化されてパソコン16へ入力され、ここに記憶される。尚、受信プローブ11による検出時間は極く短時間(例えば100〜200μsec)でよい。
【0030】
上記被検査体1aについてのデータの読み取りが終れば、この被検査体に所定の熱時効を加える。これを被検査体1bとし、この熱時効を加えた被検査体1bに前記送信プローブ10及び受信プローブ11をセットする。
この場合、両送信プローブ10及び受信プローブ11は先きに検査をした被検査体11aの場合と全く同じ位置関係となるようにセットされる。即ち、両プローブ10・11間の距離Lは勿論のこと、横幅w方向の位置関係及び長さm方向の位置関係も、全く前者の被検査体1aの場合と同一になるようにセットする。
【0031】
その後、任意波形発生器12、パワーアンプ13、受信アンプ14、オシロスコープ15並びにパソコン16の設定並びに調整を行ない、送信プローブ10及び受信プローブ11を前回の被検査体1aの場合と全く同じ条件下で作動をさせる。即ち、任意波形発生器12、パワーアンプ13、受信アンプ及びオシロスコープ15等を先きに測定をした被検査体1aの場合と同じ条件下に設定し、受信プローブ11により被検査体11b内を伝播して来た超音波の表面SH波を検出し、その検出波形をオシロスコープ15に表示させると共に、当該検出信号をディジタル信号化してマイコン16に取り込む。
【0032】
前記被検査体1bに対する超音波表面SH波の伝播特性の測定が終れば、先きに行なった熱時効等を加えていない被検査体1aについての伝播特性の測定データと、熱時効等を加えた被検査体1bに対する伝播特性の測定データとを対比し、両伝播特性間の位相差Δtを検出すると共に、当該位相差Δtの変化率(即ち、音速変化率Δt/T)を求め、この音速変化率の大きさから被検査体1bの熱時効等の印加による材質劣化のレベルを判断する。
【0033】
尚、図1の実施態様に於いては、熱時効を加えた被検査体1bに対する超音波伝播特性の測定を全て完了した後に、当該検出データと先きに測定をした新たな被検査体1aに対する検出データとを対比するようにしているが、受信プローブ11からの被検査体1bに対する検出信号を入力しつつ、前記被検査体1aに対する検出データと逐次的に対比するようにしてもよい。
また、本実施形態では、送信プローブ10からの出力波形を、任意波形発生器12の調整により正弦波に近い波形となるようにしている。電磁接触子に於いては、電磁接触子の有するフィルター作用により正弦波波形の超音波の方がより高精度な受信ができるからである。
【0034】
図4は、前記図1の方法により測定した被検査体1aと被検査体1bに配置した受信プローブ11からの検出信号を示すものであり、図5は図4の囲い部分(Bの部分)の拡大図である。
尚、図4に於いて、曲線A1 、A2 、A3 …A9 は夫々発信プローブ10と受信プローブ11間の距離Lを50mm、60mm、70mm…130mmとした場合の受信プローブ10の検出信号を示すものである。
また、被検査体1a、1bは厚さh=30mm、横幅w=85mm、長さm=200mmのオーステナイト系ステンレス鋳鋼から成る厚板であり、被検査体1aには熱時効が印加されていないが、被検査体1bには400℃×500Hrの熱時効が加えられている。
更に、発信プローブ10からは0.5MHZの超音波表面SH波が発信されている。
【0035】
図4に於いては、被検査体1aに対する検出信号Kaと被検査体1bに対する検出信号Kbとがほぼ重なっており、各曲線A1 、A2 、A3 …A9 は一本の太線のように見えるが、実際は、図5に示すように両検出信号Ka、Kbの間にΔtだけの位相差があり、熱時効を加えた方の被検査体1bに対する出力波形Kbの方が、Δtだけ進み位相となり、音速が速くなる。
また、この位相差Δtの大きさは、時間Tの経過と共に増大する。
【0036】
尚、図5では、図4のB部のみを拡大しているが、図4のC部かD部に於いても位相差Δt′が生じており、発信プローブ10と受信プローブ11間の距離Lが変っても、加えられた熱時効のレベルが同じであれば、前記位相差の変化率Δt/Tはほぼ同じ値になる。
【0037】
また、発信プローブ10及び受信プローブ11と被検査体1a(又は被検査体1b)との相対的な位置関係は、前述の通り各被検査体1a、1bについて厳密に同一とする必要があり、単に両プローブ10、11間の距離Lだけを同一としても、正確な材質劣化の検出は困難となる。被検査体1a、1bに対する両プローブ10、11の相対的な位置関係を同一とすることにより、反射波等の全ての雑音性超音波を含めて、各被検査体1a、1bに対する超音波の伝播状態が同一となるからである。
【0038】
更に、使用する発信プローブ10や受信プローブ11等は、両被検査体1a、1bについて同一の機器を用いるのが望ましいが、同一仕様で製作されているものであれば、別のプローブ10、11例えば後で行なう被検査体1bの検査に於いて先きに使用したプローブ10、11の予備品を使用したとしても、測定データに大きな差異が生じない。
【0039】
図6は、前記400℃×500Hrの熱時効を加えた被検査体1bの位相差変化率即ち音速変化率(Δt/T)を示すものであり、図4の各曲線A1 〜A9 を基にしてプロットしたものである。
この実施態様に於いては、被検査体1bに400℃×500Hrの熱時効が加えられることにより、Δt/T=0.445%の音速変化率が生じたことが判る。
尚、加えた熱時効のレベルが上昇すれば高速変化率Δt/Tは大となる。
【0040】
図7は被検査体1bに加えた熱時効の時間Hと被検査体1bのシャルピー吸収エネルギーJとの関係の一例を示すものであり、400℃×500Hrの熱時効を加えることにより、被検査体1bのシャルピー吸収エネルギーは約240Jから約150Jに低下し、所謂ぜい化現象が生じていることが判る。
【0041】
同様に、図8は被検査体1bに加えた熱時効の時間Hと被検査体1bのヴイッカス硬度Hvとの関係を示すものであり、400℃×500Hrの熱時効を加えることにより、例えばHu=約230が約245に上昇し、被検査体1bは硬化する。
【0042】
本実施形態に於いては、前記熱時効による音速変化率Δt/Tを測定し、当該Δt/Tが所定の設定値を越えた場合に被検査体1bに材質変化が生じていると判断する。
また、本実施形態に於いては、被検査体1aと被検査体1bとを同一体としており、本発明を現実に実施する場合には、機器等の使用開始前に、予かじめ機器等の構成材の所定位置毎に超音波伝播特性を測定し、その時の測定値や測定条件等を全て記録しておく。
次に、機器等の使用開始後に適宜の時間間隔でもって、前記最初の測定条件と同一の条件下で所定位置毎に超音波伝播特性を測定し、前記音速変化率Δt/Tの大きさを求めることにより機器の材質劣化を判定する。
【0043】
また、本実施形態では熱時効による材質劣化を検出しているが、熱時効以外の原因例えば中性子照射や機械的応力の印加による材質変化であっても、本実施形態と同様の手順で材質劣化を検出することができる。
【0044】
更に、本実施形態では被検査体1としてオーステナイト系ステンレス鋳鋼を用いているが、被検査体1の材質はステンレス鍛鋼であっても或いはその他の炭素鋼等であってもよく、全ての金属材に本発明を適用することができる。
【0045】
図9及び図10は本発明の第2形態及び第3実施形態の機器配置の概要を示すものであり、図9に於いては送信プローブ10として圧電斜角探触子及び受信プローブ11として電磁探触子を、また図10に於いては、送信プローブ10として圧電斜角探触子及び受信プローブ11として電磁マイクロセンサプローブを、夫々使用している。
尚、送信プローブ10及び受信プローブ11以外の機器類や被検査体1の材質劣化の検査方法は、前記図1に示した第1実施形態の場合と同一であるため、ここではその説明を省略する。
【0046】
【発明の効果】
本発明に於いては、被検査体が新しい時の超音波伝播特性を測定してこれを記録しておくと共に、被検査体に熱時効等が加った後に、前記最初の測定時と同じ条件の下で被検査体の超音波伝播特性を測定し、両測定で得られた受信プローブによる検出信号を対比することにより、両検出信号間の位相差Δtの検出並びに当該位相差Δtの変化率Δt/T(即ち音速変化率)の演算を行ない、当該位相差の変化率Δt/Tを基準にして被検査体の材質劣化を検出する構成としている。
その結果、先きに本願発明者等が公開した電磁マイクロプローブにより伝播して来た超音波を受信し、その受信信号波形から超音波の伝播速度を検知して超音波伝播特性の変化から材質劣化を検出する方法や、受信信号波形そのものの変化の状態から材質劣化を検出する方法に比較して、より高精度な材質劣化の検出が可能となる。
本発明は上述の通り優れた実用的効用を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の概要を示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態で使用する電磁探触子型の発信プローブを示す斜面図である。
【図3】電磁探触子型の発信プローブの超音波発生機構の説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に於ける受信プローブによる検出信号の一例を示すものである。
【図5】図4のA部の部分拡大図である。
【図6】本発明の第1実施形態による被検査体の熱時効による音速変化率を示す曲線である。
【図7】被検査体の熱時効によるシャルピー吸収エネルギーの変化状態を示すものである。
【図8】被検査体の熱時効によるヴイッカス硬さの変化状態を示すものである。
【図9】本発明の第2実施形態の概要を示す説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態の概要を示す説明図である。
【図11】先願に係るステンレス鋼の材質劣化検査の実施説明図である。
【図12】図11のステンレス鋼の材質劣化検査に於ける被検査体(ステンレス鋼)のα相粒界の磁場変動のモデル説明図である。
【図13】図11のステンレス鋼の材質劣化検査に於ける磁気マイクロプローブによる検出信号の一例を示すものである。
【符号の説明】
1は被検査体、1aは熱時効の無い被検査体、1bは熱時効を加えた被検査体、2は電磁超音波探触子、2aは永久磁石、2bは磁極、10は送信プローブ、11は受信プローブ、12は任意波形発生器、13はパワーアンプ、14は受信アンプ、15はオシロスコープ、16はパソコン、hは被検査体の厚さ、wは被検査体の縦幅、mは被検査体の横幅、Lは送・受信プローブ間の距離。

Claims (6)

  1. 金属の外表面の所定位置に超音波送信プローブを配設すると共に当該位置より所定距離だけ離れた位置に超音波受信プローブを配設し、前記送信プローブから発信され金属内部を伝播して来た超音波を受信プローブにより検出すると共に受信プローブからの検出信号を記録し、次に、所定時間が経過したあと、前記金属の外表面の前記所定位置に超音波送信プローブを、またこれにより所定距離だけ離れた位置に超音波受信プローブを夫々配設し、前記送信プローブから最初の場合と同じ超音波を発信して金属内部に伝播させると共に、伝播して来た超音波を最初の時と同じ受信条件下で受信プローブにより検出し、当該受信プローブからの検出信号と前記記録した検出信号とを対比して両検出信号間の位相差Δtを検出すると共に当該位相差Δtの変化率Δt/Tを演算し、前記位相差Δtの変化率Δt/T(超音波の音速変化率)に基づいて金属の材質劣化を検知することを特徴とする金属の材質劣化検出方法。
  2. 送信プローブ及び受信プローブを電磁超音波接触子から成るプローブとした請求項1に記載の金属の材質劣化検出方法。
  3. 送信プローブから送信する超音波を表面SH波とした請求項1又は請求項2に記載の金属の材質劣化検査方法。
  4. 所定時間が経過した後の超音波伝播特性の測定を最初の場合の送信プローブ及び受信プローブと実質的に同一のプローブを用いて行なうようにした請求項1に記載の金属の材質劣化検査方法。
  5. 送信プローブを圧電接触子から成る送信プローブとした請求項1、請求項3又は請求項4に記載の金属の材質劣化検査方法。
  6. 受信プローブを電磁マイクロプローブとした請求項1、請求項3、請求項4又は請求項5に記載の金属の材質劣化検査方法。
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