JP4371601B2 - バイポーラ膜 - Google Patents

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  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)
  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、特に低電圧、及び高電流密度で水を解離しうるバイポーラ膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
バイポーラ膜は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が貼合わさった構造からなり、水をプロトンと水酸イオンに解離することができるイオン交換膜である。
【0003】
その製造方法は種々提案されており、例えば、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜をポリエチレンイミン−エピクロルヒドリンの混合物で張り合わせ硬化接着する方法(特公昭32−3962号公報)、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜をイオン交換性接着剤で接着させる方法(特公昭34−3961号公報)、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを微粉のイオン交換樹脂、陰または陽イオン交換樹脂と熱可塑性物質とのペースト状混合物を塗布し圧着させる方法(特公昭35−14531号公報)、陽イオン交換膜の表面にビニルピリジンとエポキシ化合物からなる糊状物質を塗布しこれに放射線照射することによって製造する方法(特公昭38−16633号公報)、陰イオン交換膜の表面にスルホン酸型高分子電解質とアリルアミン類を付着させた後、電離性放射線を照射架橋させる方法(特公昭51−4113号公報)、イオン交換膜の表面に反対電荷を有するイオン交換樹脂の分散系と母体重合体との混合物を沈着させる方法(特開昭53−37190号公報)、ポリエチレンフィルムにスチレン−ジビニルベンゼンを含浸重合したシート状物をステンレス製の枠にはさみつけ、一方の側をスルホン化させた後、シートを取り外して残りの部分にクロルメチル化し、次いでアミノ化処理する方法(米国特許3562139号明細書)などが提案されている。また、特定の金属イオンを陰陽イオン交換膜の表面に塗り両イオン交換膜を重ね合わせてプレスすると水解離電圧の低いバイポーラ膜が出来ること(Electrochim.Acta,Vol.31 1175−1176(1986))も報告されている。
【0004】
しかし、こうして作ったバイポーラ膜は比較的早く水解離電圧が上昇してしまったり、陰陽イオン交換膜間に水泡が発生するという欠点や、又バイポーラ膜自体も容易に陰陽イオン交換膜に剥離してしまうという問題があった。
【0005】
また、無機イオン交換体を陰陽イオン交換膜の間に存在させるバイポーラ膜が提案されている(特開平6−172557号公報、特開平6−172558号公報、特開平6−263896号公報、特開平7−3051号公報)が、バイポーラ膜の安定性に欠けるという問題があった。
【0006】
また、金属酸化物の微粒子を含む陰イオン交換体と陽イオン交換膜とが接合したバイポーラ膜(特開平8−269217号公報)、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜の間に中間層を設け、中間層が金属酸化物の微粒子および陰イオン交換基からなるバイポーラ膜(特開平10−87853号公報)が提案されている。これらはかなり良好な性能を示すものの、高電流密度下で水解離電圧が上昇するという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高電流密度下で長期間低い水解離電圧、高い電流効率を示し、しかもブリスター(水泡)、膜剥がれ等が発生せず、耐久性に優れたバイポーラ膜、及びその製造方法を提案する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した問題に鑑み鋭意研究の結果、高電流密度下で水の解離電圧の上昇が小さく、かつ電流効率が高くしかも耐久性に優れたバイポーラ膜が容易に得られることを見いだし、本発明を提案するに至ったものである。
【0010】
即ち、本発明は、算術平均粗さ(Ra)で0.1〜1μmの凹凸を形成した陰イオン交換膜または陽イオン交換膜の表面上に金属イオンまたは金属錯イオンをイオン交換したイオン交換樹脂粒子を存在させた後、該イオン交換膜と反対荷電のイオン交換基を有する高分子体溶液もしくは高分子体の前駆体溶液を流延し、これを固化させることを特徴とするバイポーラ膜の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のバイポーラ膜は、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を接合してなる。
【0012】
上記の陽イオン交換膜は、特に限定されず、公知の陽イオン交換膜を用いることが出来る。例えば、スチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリスルホン樹脂などにスルホン酸基、カルボン酸基等の陽イオン交換基を導入した膜を用いることが出来る。特に、バイポーラ膜の用途の点から酸性下にても交換基が解離しているスルホン酸基を有する陽イオン交換膜が望ましい。また、陽イオン交換膜は、重合型、均一型、不均一型、あるいは補強心材の有無や製造方法に由来する陽イオン交換膜の種類、形式など如何なるものであってもよい。さらに、陽イオン交換膜のなかに陰イオン交換基を若干有する様なイオン交換膜であっても陽イオンの輸率が90%以上であれば本発明の陽イオン交換膜として十分に使用しうる。
【0013】
陽イオン交換膜の厚みは特に制限されないが、一般には10〜400μm、好ましくは30〜200μmである。イオン交換容量は、電圧降下や輸率の関係から0.5〜3.0meq/gであることが好ましく、さらに、0.7〜2.5meq/gであることがより好ましい。
【0014】
次に、本発明における陰イオン交換膜は特に限定されず、公知の陰イオン交換膜を用いることが出来る。例えば、スチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリスルホン樹脂などに4級アンモニウム基、ピリジニウム基、アミノ基等の陰イオン交換基を導入した膜を用いることが出来る。特に、バイポーラ膜の用途の点からアルカリ性下にても交換基が解離している4級アンモニウム基を有し、かつアルカリ耐久性の陰イオン交換膜が望ましい。また、陰イオン交換膜は、重合型、均一型、不均一型、あるいは補強心材の有無や製造方法に由来する陰イオン交換膜の種類、形式など如何なるものであってもよい。さらに、陰イオン交換膜のなかに陽イオン交換基を若干有する様なイオン交換膜であっても陰イオンの輸率が90%以上であれば本発明の陰イオン交換膜として十分に用いうる。
【0015】
陰イオン交換膜の厚みは特に制限されないが、一般には10〜400μm、好ましくは30〜200μmである。イオン交換容量は、電圧降下や輸率の関係から0.4〜2.5meq/gであることが好ましく、さらに0.6〜2.0meq/gであることが好ましい。
【0016】
本発明のバイポーラ膜における陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の少なくとも一方の接合側の面は、算術平均粗さ(Ra)が0.1〜1μmの値を取るような凹凸を成している。ここで、算術平均粗さ(Ra)は、次の方法によって求めた値である。3cm×3cmの膜サンプルについて、レーザーテック(株)製の共焦点レーザー走査顕微鏡(1LM21W型)で観察した任意の100μm×100μmの画面を縦横方向にそれぞれ10に分割することによって100区画に分けた。この1区画を画素という。ソルト社製のソフトを用いて、画像処理により1画素ずつ高さを求め、測定範囲内の画素100個の平均高さ(Zav)からの高低差の平均を算術平均粗さ(Ra)とし、下記式により算術平均粗さ(Ra)を求めた。この操作を数回繰り返し、誤差が±5%以内であることを確認した。
【0017】
【化1】
Figure 0004371601
【0018】
本発明のバイポーラ膜における陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の少なくとも一方の接合側の面は、算術平均粗さ(Ra)が0.1〜1μmの値を取るような凹凸を形成していることが必要である。算術平均粗さ(Ra)が0.1μmより小さい場合には陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合強度が十分発揮されず、結果として比較的早く水解離電圧が上昇してしまったり、陰陽イオン交換膜間に水泡が発生するという欠点や、又バイポーラ膜自体も容易に陰陽イオン交換膜に剥離してしまうという欠点があり、好ましくない。また、算術平均粗さ(Ra)が1μmより大きくなると、膜の機械的強度が著しく低下し、実質的にバイポーラ膜として使用できなくなるために好ましくない。
【0019】
なお、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とが直接接合されている場合は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜のどちらを測定しても算術平均粗さ(Ra)は同じである。陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とが後述するIER粒子層を介して接合されている場合は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の少なくとも一方が上記した算術平均粗さ(Ra)を満たしておればよい。
【0020】
陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接合面にイオン交換樹脂粒子(以下、単にIER粒子ともいう)を存在させることは、得られるバイポーラ膜の水解離電圧の上昇を防止し、また、バイポーラ膜の剥離を防止するために、本発明において好ましい態様である。IER粒子は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接合面間で通常、層を形成する。IER粒子層は、IERの一次粒子及び/又は凝集粒子が集まって出来た層であり、粒子間に重合体等のバインダーを含んでいても良いが、電流効率の低下やブリスターを発生させない点で含まない方が好ましい。
【0021】
上記のIER粒子は有機イオン交換体の粒子ならどんなものでも良く、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、あるいは両性イオン交換樹脂、キレート形成能を持つ官能基を導入したキレートイオン交換樹脂等で、水に不溶性のものであれば、何ら制限なく使用できる。
【0022】
上記のイオン交換樹脂としては、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル等とジビニルベンゼン等との共重合物や、セルロース等を素材樹脂とするものなどが挙げられ、スルフォン酸基、カルボキシル基、フェノール性水酸基等の陽イオン交換基の一種以上を有した陽イオン交換樹脂;アミノ基、置換アミノ基、4級アンモニウム基等の一種以上を有した陰イオン交換樹脂;および両性イオン交換樹脂;イミノジ酢酸基のようなキレートを形成しうる基を有するキレートイオン交換樹脂などを挙げることができる。
【0023】
また、IER粒子は、一次粒子径が小さく比表面積が大きいものが有効である。このようなことから、IER粒子の平均一次粒子径は0.02〜10μmであることが好ましく、さらに0.03〜5μmであることがより好ましい。これらのIER粒子は、単粒子のほかに凝集粒子として存在する場合もある。IER粒子は、取扱い時の利便性から凝集粒子の平均粒子径が0.1〜10μmであることが望ましい。
【0024】
IER粒子は、元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオン(以下、これらを単に金属イオン等ともいう)を有することが、高電流密度下で長期間低い水解離電圧と高い電流効率を有し、しかもブリスターや膜剥がれ等を発生しない耐久性のよいバイポーラ膜とすることができるために好ましい。
【0025】
金属イオン等は、通常のイオン交換により、また、キレート結合によるイオン交換によりIER粒子に結合していることが、高電流密度下で長期間低い水解離電圧で運転可能であるために好ましい。
【0026】
上記の金属イオン等は、特に周期律表第IV族および第VIII族の金属を好適に用いうる。本発明において好適な金属を例示すれば、例えば、鉄(II、III)、チタン(IV)、スズ(II、IV)、ジルコニウム(IV)、ニッケル(II)、パラジウム(III)、ルテニウム(III)などを挙げることができる。
【0027】
上記のIER粒子は、通常は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接合界面に層を形成して存在する。層の厚みは一定でなくても良い。IER粒子の層の平均厚さは、一般には0.02〜100μmであることが、水解離電圧を低くし、また、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接着強度を保持するために好ましい。水解離電圧と剥がれやすさを勘案すると、IER粒子層の平均厚さは、0.05〜50μmであることがより好ましい。
【0028】
IER粒子は、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜の接合面に一定厚みで存在させることもできるが、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜の少なくとも一方の表面に微細な凹凸を形成させ、これらを接合したときに凹部によって形成される間隙により多くのIER粒子を偏在させることが好ましい。
【0029】
本発明においては、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合面全体の面積に占めるIER粒子層の面積の割合は、水解離電圧の上昇を抑え、且つ、陰陽イオン交換膜間の接着強度を維持するために、1〜99%、さらに2〜98%であることが好ましい。陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合面全体に占めるIER粒子層の面積の割合は、膜面に平行な平面に投影される接合面とIER粒子層のそれぞれの面積の割合として表わされる。
【0030】
IER粒子のイオン交換容量は特に制限されないが、一般には、0.5〜5.0meq/gであることが好ましく、さらに、1.0〜3.0meq/gであることがより好ましい。金属イオン等は、その内、0.1〜100%、好ましくは0.2〜95%の範囲でイオン交換していることが、本発明の効果が顕著であるために好適である。これを重量基準で表わすと、金属イオン等のIER粒子に占める重量割合は、1〜5wt%であることが好ましく、さらに1.5〜4.5wt%であることがより好ましい。
【0031】
本発明のバイポーラ膜は、どのような方法で製造しても良いが、以下に説明する方法が好適に採用できる。
▲1▼ 算術平均粗さ(Ra)で0.1〜1μmの凹凸を形成した陰イオン交換膜または陽イオン交換膜の表面上にこれと反対荷電のイオン交換基を有する高分子体溶液もしくは高分子体の前駆体溶液を流延、塗布又は噴霧し、これを固化させる方法。
▲2▼ 算術平均粗さ(Ra)で0.1〜1μmの凹凸を形成した陰イオン交換膜または陽イオン交換膜の表面上にこれと反対荷電のイオン交換基を有するイオン交換膜を熱圧着、接着により積層する方法。
▲3▼ 算術平均粗さ(Ra)で0.1〜1μmの凹凸を形成した陰イオン交換膜または陽イオン交換膜の表面上にイオン交換樹脂粒子を存在させた後、上記▲1▼または▲2▼の方法と同様にして反対荷電を有するイオン交換膜を形成する方法。
【0032】
以下に、上記▲1▼の方法および▲1▼と▲3▼とを組み合わせた方法を具体的に説明する。なお、以下の説明においては、陽イオン交換膜における陰イオン交換膜との接合面に凹凸を形成する方法を代表例として説明するが、陰イオン交換膜における陽イオン交換膜との接合面に凹凸を形成する方法もこれと同様に実施することができる。
【0033】
陽イオン交換膜の接合面に算術平均粗さ(Ra)が0.1〜1μmの凹凸を形成する方法としては、どのような方法であってもよいが、次の方法を好適に採用することができる。例えば、陽イオン交換膜の接合面を直接サンドペーパー等で研磨したり、砂などの硬質粉粒体を吹付けたりして所定の凹凸を形成する方法を挙げることができる。また、陽イオン交換膜を製造する際に、所定の凹凸を形成したポリエチレンテレフタレート等の基材を用い、該基材上で陽イオン交換膜を製造後、基材を剥離する方法がある。
【0034】
上記した方法で表面に凹凸を形成した陽イオン交換膜は水洗した後、乾燥させたものを用いることが陰イオン交換膜との接着強度向上及びバイポーラ膜の性能の点から好ましい。
【0035】
IER粒子を陽イオン交換膜の凹凸を形成した面に存在させる方法としては、次のような方法を挙げることができる。
▲1▼ IER粒子を懸濁した溶液中に陽イオン交換膜を浸せきする方法。
▲2▼ IER粒子を懸濁した溶液を陽イオン交換膜面上に塗布、噴霧、スクリーン印刷、熱転写等を行い、IER粒子を陽イオン交換膜面上に付着させる方法。
▲3▼ 凹凸を形成した陽イオン交換膜上にIER粒子を散布し、これを押圧することにより前記陽イオン交換膜の表面にIER粒子層を形成させる方法。
【0036】
上記の方法の中でも、▲3▼の方法は、陽イオン交換膜の伸縮が少ないために後処理工程がスムーズにいき、また、その理由は不明であるが、得られるバイポーラ膜の性能は優れたものとなるために、本発明において好適に採用することができる。
【0037】
上記▲3▼の方法を具体的に説明すれば、以下のとおりである。算術平均粗さ(Ra)0.1〜1μmに粗面化された陽イオン交換膜の上にIER粒子を直接散布してIER粒子を存在させた後、所定の応力を加えて機械的に押圧することにより陽イオン交換膜の表面にIER粒子を一部埋め込むようにしてIER粒子層を形成する。押圧の応力は、IER粒子と陽イオン交換膜との密着性を十分に保ち、また、陽イオン交換膜の破れを防止するために、0.5〜5kPaであることが好ましく、さらに1〜4kPaであることが好ましい。
【0038】
このときIER粒子層の膜面占有面積が1〜99%、層の厚みが0.02〜100μmになるように調整することが望ましい。
【0039】
次いで、この上に陰イオン交換膜を形成させるが、陽イオン交換膜の表面に、陰イオン交換膜となる被膜を形成させるための陰イオン交換基を有する高分子体について述べる。
▲1▼ 陰イオン交換基を有する高分子体は主なるイオン交換基が強塩基性のものであってしかも耐アルカリ性を有するものが望ましい。そのような陰イオン交換基を有する高分子体としては4級塩基を有するものを挙げることができる。4級塩基を有する高分子体は、水の分解効率を高く保つことができるために好適に用い得る。4級塩基としては、ピリジニウム基、4級アンモニウム基等を挙げることができるが、中でもイオン交換基を有する高分子体が耐アルカリ性に優れるため、4級アンモニウム基が望ましい。
▲2▼ IER粒子層を有する陽イオン交換膜に密着させるためには、皮膜を形成する陰イオン交換基を有する高分子体又は該高分子体の前駆体は、溶媒に可溶であるものが望ましい。溶媒が除去され、あるいは、化学反応が進行することにより陰イオン交換膜が形成される。このとき形成された陰イオン交換膜は、使用中に陰陽イオン交換膜に分離することのないように、陽イオン交換膜に適度の強度で接着されている必要がある。
▲3▼ バイポーラ膜が取扱中に割れて性能低下を起こさないために、適度の柔軟性を有するものが望ましい。
▲4▼ 陽イオン交換膜上に皮膜を形成させてバイポーラ膜とした後、使用時に溶け出してはならないため、水に不溶でなければならない。
【0040】
IER粒子層を存在させた陽イオン交換膜の表面に、溶媒に溶解した陰イオン交換基を有する高分子体又は該高分子体の前駆体の溶液を流延して陰イオン交換膜を作る方法として、大別して2方法がある。
【0041】
1つは、線状ポリマーを用いて皮膜を作る方法、他の1つは、架橋体の皮膜を作る方法である。
【0042】
線状ポリマーを用いる方法は、陰イオン交換基を有する高分子体として陰イオン交換性線状ポリマーを溶媒に溶解させ、この溶液を陽イオン交換膜の上に流延した後、乾燥して陰イオン交換膜を形成する方法である。
【0043】
陰イオン交換性線状ポリマーとして、
a.トリアルキルビニルベンジルアンモニウム塩と水に不溶性のビニル化合物(例えば、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル等)の共重合体、
b.ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトンなどのポリマーをクロルメチル化、次いでトリアルキルアミンで4級アンモニウム基化した4級アンモニウム化ポリスルホンなどの線状アミノ化ポリマー、
c.ポリスルホンとポリトリアルキルビニルベンジルアンモニウム塩のブレンド混合物
などを挙げることができる。
【0044】
これら陰イオン交換性線状ポリマーの交換容量は、水の中の溶解や膨潤による水解離の電流効率の低下および電気抵抗の増大による水解離電圧の上昇を防止するためには、0.4〜2.5meq/gであることが好ましく、特に0.6〜2.0meq/gであることが好ましい。
【0045】
これら線状ポリマーをエチレンジクロライド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、メチルアルコール等の有機溶媒(必要により混合溶媒も可である)に溶かしておき、この溶液を陽イオン交換膜の上に流延した後、乾燥させて陰イオン交換膜を生成させる。
【0046】
また、架橋体の皮膜を作る方法は、一般的には、陰イオン交換基を有する高分子体の前駆体を有機溶媒に溶かしておき、この溶液を陽イオン交換膜上に流延した後、乾燥及び架橋反応させ陰イオン交換膜を形成する方法である。用いる前駆体に応じて必要であればさらに陰イオン交換基を導入すればよい。
【0047】
陰イオン交換基を有する高分子体の前駆体としては、陰イオン交換基に変換できる官能基及び架橋に関与する2個以上の官能基を有する化合物、架橋反応時に架橋と4級アンモニウム化が同時に進行する官能基を2個以上有する化合物等を挙げることができる。
【0048】
陰イオン交換基に変換できる官能基及び架橋に関与する2個以上の官能基を有する化合物を用いた場合には、架橋後に該陰イオン交換基に変換できる官能基を陰イオン交換基に変換すればよい。
【0049】
このとき上記前駆体として架橋反応時に、架橋と4級アンモニウム化が同時に進行する官能基を2個以上有する化合物を選べば、効率よく4級アンモニウム基を有する陰イオン交換膜が製造できるのでより好都合である。架橋と4級アンモニウム化の同時反応に使用できる化合物の組合せとして以下のものがある。
A:3級アミノ基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)とエポキシ基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)
B:3級アミノ基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)とハロメチル基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)
ここで、3級アミノ基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)として、例えば、ポリジアルキルビニルベンジルアミン、ポリジアルキルアミノエチルスチレン、ポリジメチルアリールアミン、NNN'N'−テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、NNN'N'−テトラメチル−1,3−トリメチレンジアミン等を例示することができる。
【0050】
エポキシ基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)として、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、レゾルシン型ジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ノボラック型ポリグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等を例示することができる。
【0051】
ハロメチル基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)として、ポリクロルメチルスチレン、クロルメチル化ポリスルホン、クロルメチル化ポリフェニレンオキシド、クロルメチル化ポリエーテルエーテルケトンを例示することができる。
【0052】
架橋と4級アンモニウム化の同時反応を行うにはこれらの化合物の中から組合せを適宜選べばよい。選択した化合物を、エチレンジクロライド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メチルアルコール等の有機溶媒(必要により混合溶媒でもよい)に溶かしておき、この溶液を陽イオン交換膜の上に流延し、架橋反応及び乾燥させて架橋陰イオン交換膜を生成させる。
【0053】
これら架橋陰イオン交換膜の交換容量は、高すぎる場合には脆くなりバイポーラ膜として使用し難くなり、低すぎる場合には電気抵抗が高くなり水分解の電圧が高くなる。したがって、好ましい交換容量は0.4〜2.5meq/gであり、さらに好ましくは0.6〜2.0meq/gである。膜厚も好ましくは10〜400μmで、特に好ましくは30〜200μmである。
【0054】
また架橋体の皮膜を作る方法としては、他の方法として次のような方法を採用することもできる。陰イオン交換基を有する高分子体の前駆体としてクロルメチル化ポリスルホン、ポリクロルメチルスチレン、クロルメチル化ポリフェニレンオキシド、クロルメチル化ポリエーテルエーテルケトン等のクロルメチル化線状ポリマーと、必要に応じてポリスルホン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルなどのアミノ化合物と反応しない不活性線状ポリマーとを加えた有機溶媒溶液を、陽イオン交換膜上に流延した後、溶媒を除去して皮膜とした後、トリアルキルアミン、ジアルキルアミン,NNN'N'−テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミンなどの3級アミンと反応させて、線状ポリマー間の架橋及び4級アンモニウム基の導入を行うことにより、陰イオン交換膜とすることが出来る。
【0055】
これらの方法は陽イオン交換膜の表面に陽イオン交換膜と十分密着した陰イオン交換膜を形成させることが出来るので好適である。
【0056】
IER粒子層が存在する陽イオン交換膜には、予め粗面化により凹凸が付けてある。しかし、流動性のある溶媒に溶解した陰イオン交換基を有する高分子体又は該高分子体の前駆体の溶液は、一部はIER粒子層の上へ、一部は陽イオン交換膜の上へ流れ込む。
【0057】
陰イオン交換基を有する高分子体又は該高分子体の前駆体の溶液が陽イオン交換膜上に流れ込んだ部分では、陽イオン交換膜と密着した陰イオン交換膜ができ、陰陽イオン交換膜間の接着の強度が増す。
【0058】
また、陽イオン交換膜を陰イオン交換膜に、陰イオン交換基を有する高分子体又は該高分子の前駆体溶液を陽イオン交換基を有する高分子体又は該高分子の前駆体溶液に変えることにより、上記した方法と同様の方法で陰イオン交換膜面上にIER粒子層を存在させ、次いで陽イオン交換層を形成させる方法で本発明のバイポーラ膜を得ることもできる。
【0059】
本発明のバイポーラ膜が優れた物性を有する理由は、未だ十分に明らかではないが、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とが接触する界面のいずれか一方の接合面を、算術平均粗さ(Ra)が0.1〜1μmの凹凸を形成させて粗面化すること、更には必要に応じて該粗面化された面上にIER粒子層を配すことによって陽イオン交換膜または陰イオン交換膜の接触比表面積が大幅に増大し、単位面積当りに占める水を解離させる活性サイトが大幅に増加し、低電圧下で水を解離させることが出来るものと考えられる。
【0060】
またIER粒子層の存在しない箇所では、陰陽イオン交換膜が強固に接合され、両膜は剥離し難くなっている。
【0061】
さらにIER粒子は水の解離触媒として有効に働き低電圧下で水を解離させることが出来るものと考えられる。
【0062】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のバイポーラ膜によれば、高電流密度下で長期間水解離電圧が低く、高い電流効率を示し、しかもブリスター(水泡)や膜の剥離等を発生しない耐久性に優れたバイポーラ膜を容易に得ることが出来る。
【0063】
従って、かかる本発明のバイポーラ膜を用いた水の解離においては、電力原単位を大幅に低減できる。
【0064】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、バイポーラ膜の性質は次のごとく測定した。
【0065】
2室セルにバイポーラ膜をセットし、5時間後の水解離電圧としての電圧降下、及び電流効率を測定した。
【0066】
即ち、有効膜面積10cmであるバイポーラ膜の陽イオン交換膜側に1N−塩酸水溶液を100ml、陰イオン交換膜側に1N−水酸化ナトリウムを100ml注入し、白金板電極の塩酸側を陰極とし、水酸化ナトリウム側を陽極として10A/dmの電流密度で10時間通電後、各部屋の酸、塩基及び塩の量を測定することにより、バイポーラ膜の水分離効率として水酸イオン、水素イオンの電流効率(ηH,ηOH)と塩素イオン、ナトリウムイオンの電流効率(ηCl,ηNa)を求めた。
【0067】
また、長期運転下の水解離電圧、及び加速した耐久性テストについては、以下の構成を有する3室セルを使用した。
【0068】
陽極(Pt板)/3モルNaOH溶液/バイポーラ膜/4モル硝酸溶液/隔膜(陽イオン交換膜ネオセプタCMX((株)トクヤマ製))/2モルHCl溶液/陰極(Pt板)
電流密度は10A/dmとした。
【0069】
水解離電圧の測定は、2室および3室セルの何れにおいても、バイポーラ膜を挟んで設置した白金線電極によってバイポーラ膜による電圧降下を測定した。
【0070】
陽(陰)イオン交換膜上の算術平均粗さ(Ra)は、共焦点レーザー走査顕微鏡を用い、表面粗さを求めた。
【0071】
IER粒子層の膜平面への投影面積の割合は、陽イオン交換膜上にIER層を存在させた後に真上から写真を撮り、その面積比率より求めた。
【0072】
実施例1
帝人(株)製テイジンマットフィルム(タイプPS、ポリエチレンテレフタレート)基材を用い、該基材上で陽イオン交換膜を製造して表面に算術平均粗さ(Ra)が0.626μmの凹凸を持たせた陽イオン交換膜ネオセプタCM−1((株)トクヤマ製)をイオン交換水でよく洗浄し、室温にて風乾した。この膜の上に4級アンモニウム基の交換容量0.92meq/gのアミノ化ポリスルホン(ポリスルホンをクロルメチル化し、次いでトリメチルアミンにて4級アンモニウム基化したもの)をメタノール/クロロホルム(1:1vol)の混合溶媒に15wt%に溶解したものを塗布し、室温で放置して乾燥した。アミノ化ポリスルホンの厚みは80μmであった。
【0073】
この膜のバイポーラ膜特性を測定した。2室セルにおける水解離電圧は1.6ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.2%、ηCl=0.3%、ηNa=0.5%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.4ボルトが一ヶ月後1.5ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
【0074】
比較例1
実施例1で、表面を粗面化していない陽イオン交換膜ネオセプタCM−1((株)トクヤマ製)(算術平均粗さ(Ra)が0.004μm)を使用した他は全く同一手順でバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の陰イオン交換膜の厚みは80μmであった。バイポーラ膜特性は、以下の通りであった。
【0075】
2室セルにおける水解離電圧は3.0ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.0%、ηCl=0.04%、ηNa=0.06%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には2.8ボルトが数時間後に5ボルト以上になった。この時バイポーラ膜の中に微少の気泡水泡の発生が認められた。
【0076】
比較例2
サンドペーパー(CC 200 CW)で予め表面に算術平均粗さ(Ra)が0.06μmの凸凹を持たせた陽イオン交換膜ネオセプタCM−1((株)トクヤマ製))を使用した他は全く同一手順でバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の陰イオン交換膜の厚みは80μmであった。バイポーラ膜特性は、以下の通りであった。
【0077】
2室セルにおける水解離電圧は2.8ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.0%、ηCl=0.5%、ηNa=0.5%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には2.5ボルトが数時間後に5ボルト以上になった。この時バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全くなかった。
【0078】
実施例2
多孔性の強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、ダイヤイオン HPK25)を粉砕機で粉砕して2000ppmの塩化第一スズ水溶液中に浸漬し、5分間攪拌して処理した後、遠心分離し、乾燥して一次粒子径0.5μm、凝集粒子の平均粒子径5μmのIER粒子を調整した。蛍光X線分析法によるIER粒子中のスズの含有量は2.7wt%であった。
【0079】
これを実施例1で用いた陽イオン交換膜の上に、指で塗り込んで陽イオン交換膜上にIER粒子層を形成させた。
【0080】
膜面上におけるIER粒子層の膜平面への投影面積の割合は80%であった。この膜の上に実施例1と同様の陰イオン交換体を生成させた。この膜の陰イオン交換膜の厚さは80μmであった。IER粒子層の厚みは1〜10μmであった。
【0081】
2室セルにおけるバイポーラ膜特性は、初期の水解離電圧は0.9ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.5%、ηCl=0.2%、ηNa=0.3%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.0ボルトが一ヶ月後1.1ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
【0082】
実施例3
実施例1で用いた陽イオン交換膜の表面にIER粒子を指で塗り込んだ陽イオン交換膜の上にポリジメチルビニルベンジルアミン:ビスフェノールA型ジエポキシ化合物:クロロホルム=1:1:10(重量比)の溶液を塗布し、室温にて10時間乾燥してエポキシ樹脂を硬化させると同時に4級アンモニウム基型の陰イオン交換体を生成させた。この膜の陰イオン交換膜の厚さは80μmであった。IER粒子層の厚みは1〜10μmであった。
【0083】
2室セルにおけるバイポーラ膜特性は、初期の水解離電圧は0.9ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.5%、ηCl=0.3%、ηNa=0.2%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.0ボルトが一ヶ月後1.0ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
【0084】
比較例3
サンドペーペー(CC 100 Cw)で予め表面に算術平均粗さ(Ra)が15μmの凹凸を持たせた陽イオン交換膜ネオセプタCM−1((株)トクヤマ製)上に、多孔性の強塩基性陰イオン交換樹脂を粉砕機で粉砕後、遠心分離してIER粒子を得、2000ppmの塩化第一鉄水溶液で処理し、乾燥して一次粒子径1μm、取り扱い時の平均粒子径10μmのIER粒子(蛍光X線分析法によるIER粒子中の鉄の含有量は2.5wt%)を調製し、指で塗り込んで陽イオン交換膜上にIER粒子からなる層を存在させた。IER粒子の膜平面上への投影面積の割合は80%であった。
【0085】
この膜の上に4級アンモニウム基の交換容量0.92meq/gのアミノ化ポリスルホン(ポリスルホンをクロルメチル化、次いでトリメチルアミンにて4級アンモニウム基化したもの)をメタノール/クロロホルム(1:1vol)の混合溶媒に15wt%に溶解したものを塗布し、室温で放置して乾燥した。アミノ化ポリスルホンの厚みは80μであった。IER粒子層の厚みは1〜10μmであった。
【0086】
この膜の2室セルでのバイポーラ膜特性を測定した。水解離電圧は2.9ボルトで、電流効率は、ηH,OH=90.1%、ηCl=5.3%、ηNa=4.6%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には2.6ボルトが一ヶ月後5.1ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に若干の気泡の発生が見られた。
【0087】
実施例4
実施例1で用いた陽イオン交換膜ネオセプタCM−1((株)トクヤマ製)の上に、イミノジ酢酸型のキレート樹脂(オルガノ(株)製アンバーライトIRC718)を粉砕機を用いて粉砕して遠心分離後、2000ppmの塩化第一スズ水溶液で処理し、乾燥して、一次粒子径0.1μm、凝集粒子の平均粒子径5μmのIER粒子を得た。
【0088】
蛍光X線分析法によるIER粒子中のスズの含有量は1.8wt%であった。これを膜面上に指で塗り込んで、陽イオン交換膜上にIER粒子のみからなる層を存在させた。IER粒子の膜平面上への投影面積の割合は74%であった。
【0089】
この膜の上に4級アンモニウム基の交換容量0.87meq/gの部分アミノ化ポリスチレン(スチレンとクロルメチルスチレンの10:1(mol比)モノマーをトルエン中で70℃、重合開始剤ベンゾイルパーオキシドの存在下に10時間重合し、次いで反応液をメタノール中に注ぎ、共重合体を得、この共重合体のクロルメチル基をトリメチルアミンにて4級アンモニウム基化したもの)をメタノール/クロロホルム(1:5vol)の混合溶媒に15wt%に溶解したものを塗布、室温で放置して乾燥した。このアミノ化ポリスチレンの厚みは85μmであった。IER粒子層の厚みは、0.1〜5μmであった。
【0090】
この膜の2室セルでのバイポーラ膜特性を測定した。水解離電圧は0.5ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.2%、ηCl=0.3%、ηNa=0.5%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.0ボルト、一ヶ月後1.0ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
【0091】
実施例5
実施例1で使用した陽イオン交換膜の上に、実施例2で得たものと同様のIER粒子を塗り込み、さらにその上に、塩素の含有量1.1meq/gのクロルメチル化ポリスルホンの15wt%テトラヒドロフラン溶液にNNN'N'−テトラメチル1−6ヘキサメチレンジアミン10gを混合した溶液を塗布し、室温にて5時間溶媒を蒸発乾燥させた。乾燥と同時に架橋4級アンモニウム基化が進み、陰イオン交換膜が生成しバイポーラ膜が出来た。
【0092】
陰イオン交換膜の厚みは90μm、IER粒子層の厚みは0.1〜5μmであった。
【0093】
この膜のバイポーラ膜特性は、2室セルにおける水解離電圧が0.9ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.4%、ηCl=0.3%、ηNa=0.3%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には0.9ボルトが一ヶ月後0.95ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
実施例6
多孔性の強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、ダイヤイオン PK208)を粉砕機で粉砕して2000ppmの塩化第一スズ水溶液中に浸漬し、5分間攪拌して処理した後、遠心分離し、乾燥して一次粒子径0.45μm、凝集粒子の平均粒子径5μmのIER粒子を調製した。蛍光X線分析法によるIER粒子中のスズの含有量は2.5wt%であった。
【0094】
これを実施例1で用いた陽イオン交換膜の上に、指で塗り込んで陽イオン交換膜上にIER粒子層を形成させた。
【0095】
膜面上におけるIER粒子層の膜平面への投影面積の割合は84%であった。この膜の上に実施例1と同様の陰イオン交換体を生成させた。この膜の陰イオン交換膜の厚さは85μmであった。IER粒子層の厚みは1〜10μmであった。
【0096】
2室セルにおけるバイポーラ膜特性は、初期の水解離電圧は0.92ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.4%、ηCl=0.3%、ηNa=0.3%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.0ボルトが一ヶ月後1.2ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
【0097】
実施例7
実施例1で、表面を算術平均粗さ(Ra)が0.499μmの凸凹を持たせた陽イオン交換膜ネオセプタCM−1((株)トクヤマ製)を使用した他は全く同一手順でバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の陰イオン交換膜の厚みは80μmであった。バイポーラ膜特性は、以下の通りであった。
【0098】
2室セルにおける水解離電圧は1.5ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.4%、ηCl=0.3%、ηNa=0.3%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.4ボルトが一ヶ月後1.5ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
【0099】
実施例8
実施例2で、表面を算術平均粗さ(Ra)が0.846μmの凸凹を持たせた陽イオン交換膜ネオセプタCM−1((株)トクヤマ製)を使用した他は全く同一手順でバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の陰イオン交換膜の厚みは80μmであった。バイポーラ膜特性は、以下の通りであった。
【0100】
2室セルにおける水解離電圧は0.8ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.8%、ηCl=0.1%、ηNa=0.1%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.1ボルトが一ヶ月後1.3ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。

Claims (1)

  1. 算術平均粗さ(Ra)で0.1〜1μmの凹凸を形成した陰イオン交換膜または陽イオン交換膜の表面上に金属イオンまたは金属錯イオンをイオン交換したイオン交換樹脂粒子を存在させた後、該イオン交換膜と反対荷電のイオン交換基を有する高分子体溶液もしくは高分子体の前駆体溶液を流延し、これを固化させることを特徴とするバイポーラ膜の製造方法。
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