JP4371297B2 - 有機elディスプレイ - Google Patents

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  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、通常、透明導電膜と金属電極で有機物積層体を挟持した構造からなり、素子内部で発光したEL光は、透明電極を介して素子外部に取り出される。
【0003】
光取り出し側、すなわち観察者側とは反対側に配された背面電極としては、MgとAgの合金、AlとLiの合金などが用いられる。これらの金属は反射性であるため、外部から入射した外光を強く反射する。従って、得られたディスプレイは、背面電極で反射された外光の影響が強く、観察者から見て鏡面様の視認性に欠けたものとなる。
【0004】
これを防ぐために、外光の反射をカットする目的で、高価な円偏光フィルターを素子外部に設けることが一般的である。しかし、光取り出し電極が、基板側ではなく、有機膜の上に配された、いわゆるトップエミッション構造では、円偏光フィルターを素子外部に素子に接するように設けることは難しい。
【0005】
また、基板側に光取り出し電極を配する場合でも、基板自体を薄くした場合、円偏光フィルターの厚さが薄型化、軽量化を阻害する。また、一般に用いられる円偏光フィルターの光透過率は40%前後であるため、有機EL光の利用効率は、フィルターを付加しないものの半分以下になってしまう。
【0006】
視認性の低下を防ぐ他の方法として、素子の背面を無反射にする技術が知られている。無反射電極を実現する方法として、たとえば、吸収性の材料を電極として用いる技術が知られている。また、特許第2529741号は、光学干渉を利用して、図4に示すような積層構造を背面電極として低反射率のデバイスを得る方法を開示している。
【0007】
他にも、両方の電極を透過性または半透過性とし、どちらかの電極の外側に無反射性の膜を配することで、外光の背面電極での反射をおさえ、視認性を改善する方法もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
円偏光フィルターを付加せずに視認性を向上させる目的で素子背面の反射率を低反射ないし無反射にしたこれらの素子では、素子の外部取り出し効率の低下が激しい。
【0009】
有機EL素子の内部発光は、図1に示すように全方位に等しい強度で放射される。このため、前方に放射される光と等しい強度の光が背面方向にも放射されている。実際に素子外部に取り出される光は、前方放射光と背面方向に放射され、背面電極で反射されて前方に戻ってくる光との電界振幅合成和となる。通常、有機EL素子では、前方放射光と背面放射光の反射光の位相差が、光学干渉の強めあいの条件を満たすように、素子積層構造の光学膜圧を最適化し、背面電極や、その他の反射面によって反射された多重反射光も、有効に外部EL光として取り出されている。
【0010】
一方、無反射電極を背面電極として用いたとき、背面側に放射されたEL光は前面に取り出されることがないので、外部に取り出される有機EL光の強度は1/2程度になると予想される。
【0011】
ところが、実験を行ったところ、外部に取り出される有機EL光強度は、無反射電極を配した素子では通常の素子に比べて概1/4に低下してしまう。これは、通常素子に円偏光フィルターを付加したときの、さらに半分程度のEL光利用効率である。
【0012】
本発明は、少なくとも片側に光を取りだして利用する有機ELデバイスにおいて、背面の反射率を低下させてディスプレイの視認性を向上させる技術を使用したときの、有機EL光の外部取り出し強度を改善する方法と、これを用いた有機ELディスプレイを提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の有機EL素子は、少なくとも2つの電極で有機物が挟持された有機EL素子を備えた有機ELディスプレイであって、光を放出する発光層と、前記発光層からみて観察者側に配置された前面反射部位と、前記発光層からみて観察者側と反対側に配置された背面反射部位と、を有し、前記有機物の光学膜厚、前記前面反射部位の強度反射率R1、及び、前記背面反射部位の強度反射率R2が、観察者からみたディスプレイの外光強度反射率を光学干渉効果によって10%以下にするように調整され、前記強度反射率R 2 が、EL光外部取り出し効率を増強するように5〜50%に調整されていることを特徴とする有機ELディスプレイである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本願発明者は、実験により、有機EL素子の背面電極反射率を無反射化することで、EL光の素子外部取り出し効率が概1/4になってしまうことと、前記背面電極反射率を有効に残すことで、前記取り出し効率が改善されることを見出した。
【0015】
また、本願発明者は、有機EL素子における、素子内部で発光するEL光および、素子外部から入射し、再び素子外部へ反射される外光反射光について、光学干渉モデルを元に調べ、両者は素子内部EL発光層を挟む二つの部位の反射率および透過率と、その内部の光学距離と、に関連していることを見出した。
【0016】
また、本願発明者は、前記EL光取り出し効率を表す式と、前記外光反射率を表す式が異なることを利用し、前記外光反射率を低く保ちながら、前記EL光取り出し効率を改善する、前記発光層を挟む二つの部位の反射率および透過率の範囲が存在することを見出した。
【0017】
以下、図面を参照しながら有機ELディスプレイについて、詳細に説明する。
【0018】
図1は、有機ELディスプレイ内の有機EL素子の断面構造および有機EL素子内でのEL発光強度分布を示す図である。有機EL素子は、ガラス基板1上に配された陽極としての透明電極2と、陰極としての背面電極3と、透明電極2と背面電極3の間に挟持された有機層4と、を有している。
観察者7は、透明電極2を介して素子外部に放射されるEL光8を観察する。
【0019】
有機層4は、ガラス基板1上に成膜された透明電極2を、パターニングなどの必要な工程を経た後に、真空槽内で複数の有機物を順次加熱蒸着して作製する。透明電極2の上に、ホール輸送層4aを数十〜数百nm堆積させた後、発光層5を同じく堆積し、続いて電子輸送層4bを堆積する。これらの層の機能は、一つの層が複数の機能を有している場合もある。また、ひとつの機能を複数の材料の積層で構成することもある。以上は、低分子系有機EL材料の製膜法方であるが、高分子系有機EL材料等を用い、溶液をスピンコート法やインクジェット法等で順次塗布してもよい。背面電極3の成膜は、成膜の最終工程に当たるが、先に成膜された有機層4へのダメージを最小にする必要があり、真空中で金属を加熱蒸着することが多い。
【0020】
このようにして順次多層積層成膜された有機EL素子は、pn接合型の半導体発光ダイオードのように振る舞う。すなわち、透明電極2と背面電極3の間に電圧を印加すると、陽極である透明電極2からはホールが注入され、陰極である背面電極3からは電子が注入される。ホールはホール輸送層4a中を輸送され、電子は電子輸送層4b中を輸送され、発光層5内部で両キャリアが再結合し、そのエネルギーが発光層分子を励起し、励起分子が基底状態に戻る際に蛍光またはリン光を発する。
【0021】
実際にはホール輸送層4a、発光層5、電子輸送層4bのそれぞれの界面のエネルギー順位差によって、キャリアは界面に集中しており、多くの素子では発光層5のどちらかの界面でキャリア再結合が集中して発生する。このため、図1に示すように、素子内部におけるEL光の発光強度は発光層5の界面近傍に強いピークを示し、発光層内部にゆくに従って指数関数的に減少する分布となる事が知られている。
【0022】
この、強度のピーク値が1/eに減少するまでの距離は、5〜20nm程度であり、大部分のEL発光点6は界面近傍に集中して層をなしていると考えられている。
【0023】
図2は、内部発光点6から放射された光の、素子内部での光学干渉について説明する図である。EL発光点6から放射されるEL光は、等方的かつ無偏光であり、観察者7の方向へ放射される光と同じ強度で背面電極の方向へも放射されている。発光層5の界面に集中している発光点6の1個1個はそれぞれ全く無相関の電磁波を放射している。無相関の電磁波どうしは干渉しにくいが、以下のような理由で有機EL素子では強い干渉現象が発生している。
【0024】
一般的に、有機分子の蛍光寿命は数ナノ秒である。この時間に伝播する距離は真空中で数十cmである。一般に、発光点6から反射性の背面電極3間での距離は数十〜数百nmであり、有機物4の屈折率は1.6〜2程度であるので、背面電極3で反射された光の行程距離は可干渉距離より十分短い。
【0025】
このため、1個の発光点6が後方へ放射した光が、背面電極3で反射されて再び発光点6に戻ってきたときには、発光点6は反射光と相関のある電磁波をまだ放射し続けている。すなわち、一つ一つの発光点のすべてが、自分自身の反射波によって干渉現象を引き起こし、これらを重ね合わせた合成波がEL光として観測されている。従って、内部で発光したEL光は、自己干渉現象によって強く光学的影響を受ける。
【0026】
図3は、有機EL素子構造を光学的に最適化する方法を示す図である。素子内部の光学干渉を利用し、素子外部に取り出される光8を大きくするために、図3に示すすべての光波が同位相になるように、有機物4を構成する4a, 5, 4bの層の光学膜厚を調整する。
【0027】
詳しく説明すると、図3の第一前方放射光9aと、第一後方反射光9bが同相になるように、発光界面5aと背面反射面11との光学距離10aを調整する。すなわち、第一後方反射光9bの伝播する往復の行程および背面反射面11での1回の反射過程で、位相差が2πの整数倍となるように光学距離10aを調整すればよい。
【0028】
同じようにして、第一前方放射光9aと、第一前方反射光9cが同相になるように、発光界面5aと前面反射面12との光学距離10bを調整する。このとき、第一前方反射光9cは、まず前面反射面12で反射され、続いて背面反射面11で反射された後、第一前方放射光9aと干渉する。
【0029】
ここで、発光界面5aと背面反射面11との光学距離10aが前記のように調整されていれば、第一前方反射光の前面反射面反射光9dと、第一後方放射光9eが同相となれば自動的に第一前方放射光9aと、第一前方反射光9cが同相になる。すなわち、第一前方反射光の前方反射面反射光9dの伝播する往復の行程および前面反射面12での1回の反射過程で、位相差が2πの整数倍となるように光学距離10bを調整すればよい。
【0030】
このようにして、光学距離10aおよび10bを調整した素子では、図3に記されたすべての素子内部光が同相で増強されることになる。素子の発光原理にもとづいて、キャリアの注入、輸送、再結合の過程は、素子を構成する層の膜厚によって変化せず、素子内部の発光強度分布や発光強度は保存されていると言える。すなわち、このような光学膜厚の調整を行っても、同一の電流を流したときの素子内部での発光強度はいつも同一であるといえる。
【0031】
本実施形態の有機ELディスプレイは、有機層4の光学膜厚、発光層5よりも観測者側に位置する光を反射する部位の光強度反射率R1、及び、発光層5よりも観測者からみて奥側に位置する光を反射する部位の光強度反射率R2が、観察者からみた有機ELディスプレイの外光強度反射率を光学干渉効果によって10%以下にするように調整されている。以下にその理由を説明する。
【0032】
本願発明者は、図1において背面電極3を無反射膜とする実験を試みた。これは、例えば、特許第2529741号に記載の方法を用いて、光学干渉を利用した無反射の電極が得られる。
【0033】
(例1)
特許第2529741号で示された技術は以下のようなものである。図4のように、ガラス基板13上に 第一半透過層14と高反射層16で第二半透過層15を挟んだ構造を作製する。
【0034】
このとき、第一半透過層反射光18aと、高反射層反射光18bが打ち消し合うように、第一半透過層14の反射率および透過率と第二半透過層15の厚さおよび高反射層16の反射率を調整することで無反射積層構造とすることができる。簡単な場合では、第二半透過層15は、目的の波長の概1/4λの光学厚さを持つようにするとよい。
【0035】
たとえば、第一半透過層14および高反射層16は、金属アルミ薄膜で実現することが出来る。また、第二半透過層15を、半透明な有機物の蒸着膜で作ることができる。また、第二の半透過層に、有機EL材料として一般的なアルミキノリノール錯体(Alq3)を選ぶことが出来る。Alq3の屈折率は、たとえばエリプソメトリ法などで測定することが出来、波長525nmにおいて1.76である。
【0036】
膜の屈折率をn、厚さをdとしたとき、その光学厚さはn×dで与えられ、Alq3膜の場合、λ=525nmの1/4となるdは、以下のように求められる。
【0037】
n・d = 525/4 = 131.25
∴ d = 74.6 nm
【0038】
実際にガラス基板13上に第一半透過層14としてごく薄いアルミを真空加熱蒸着し、続いて第二半透過層15としてAlq3を80nm真空加熱蒸着し、最後に高反射層16としてアルミを100nm真空蒸着したものの反射率をガラス側から測定すると、図5のようになり、光学干渉によってその反射率は最低1%まで減じることが出来る。
【0039】
さらに、図5に示すように、第二半透過層15として用いたAlq3層の厚さを調整することで、その最低反射率を調整することができる。この、反射率の調整は、第一半透過層の薄いアルミの厚さを変化させて行うことも出来る。
【0040】
次に、このようにして得られる無反射積層構造を有機EL素子の陰極として用いた。ソーダライムガラス上に成膜された透明電極をパターニングし、その上に有機EL素子を作製した。ホール注入層として銅フタロシアニン 25nmを、ホール輸送層としてα-NPD 45nmを、発光層としてAlq3 60nmを順次真空中にて蒸着した。各層の膜厚は、図3で示した最適設計を行って、実験により外部EL光強度が最大となる組み合わせを選択した。その後、電子注入添加材として、Li2Oを0.3nm積層した後、前記した薄いアルミ、Alq3を80nm、高反射アルミを蒸着して無反射積層構造を有する有機EL素子を作成した。
【0041】
(例2)
上記有機EL素子と対比させるために、同様のITO付きソーダライムガラス上に銅フタロシアニン 25nm、α-NPD 45nm、Alq3 60nmを順次真空中にて蒸着し、その後、電子注入添加材として、Li2Oを0.3nm積層した後、アルミを100nm蒸着した無反射積層構造を有しない有機EL素子を作製した。
【0042】
図6は無反射積層構造を有する例1の有機EL素子と無反射積層構造を有しない例2の有機EL素子の電圧-電流特性を示すグラフである。図6より、両素子の電圧-電流特性はほとんど同一であることがわかる。このことは、両素子において有機ダイオードが等しく機能しており、同一電流に対する素子の内部発光強度も等しいと見なすことが出来る。
【0043】
一方、図7は例1と例2の電流-輝度特性を示したグラフである。図7によると、電流-輝度特性においては、すべての電流領域において、常に例1の電流輝度効率は、例2の電流輝度効率の概1/4である。
【0044】
これまで述べたように、例2では、反射・干渉現象を利用して、後方放射光が前方光を増強するように設計されている。一方、例1では、後方反射光が前方に反射されることがなくなるので、取り出されるEL光強度は概1/2になることが予想される。ところが、簡単なモデル計算を行うと、その強度は1/2ではなく、概1/4になることが示される。
【0045】
このことは、以下に示す有機EL素子内部における干渉モデルにより説明される。まず、光学干渉現象では、光の入射角を考慮して解析せねばならないが、ここでは垂直入射の場合に限定する。入射角が垂直でない場合は、入射角によって位相や反射強度などが変化するが、ディスプレイとしては垂直入射を重視して考えてよい。また、光の偏光についても、EL放射光が無偏光であることと、垂直入射での議論では偏光を区別する必要がないことから、以後無視して考える。
【0046】
次に、光学膜の多重干渉では、その多重反射および伝播における位相の遅れや吸収による減衰を考えなければならないが、例1のようにすべての反射光を同相とするように素子を最適化してあれば、素子内部から外部に透過してくる光はすべて同相であるとしてよいので、位相の項は省略して議論する。
【0047】
また、これらの光学干渉を定量的に議論するときには、電磁波としての重ね合わせをすべて考えた後、最後にその絶対値の自乗を光の強度として考えなければならない。すなわち、一般に測定される光の強度、反射率、透過率などは、光波の電界振幅の自乗である。実際には、電磁波は複素数で表され、その絶対値の自乗が光強度となるが、議論を簡単にするために、実数領域で話を進める。このようにしても一般性を失わない。
【0048】
「光学の原理I」(M.ボルン, E.ウォルフ著, 1974,東海大学出版) p.61〜73には、反射・屈折現象に関するFresnelの公式が示されている。
たとえば、ある反射面の反射率Rを実測したとき、その値は光の強度の反射率であり、電界振幅反射率rとは次の関係にある。
【0049】
R = | r |2 ・・・(1)
∴r = √(| R |) ・・・(2)
【0050】
この関係は、複素反射率のときにも同様に成立する。以下の議論では、光の強度反射率、強度透過率をそれぞれR, Tのように大文字アルファベットで表し、電界振幅反射率、電界振幅透過率をr, tのように小文字アルファベットで表すこととする。
【0051】
「光学の原理I」にあるように、屈折率n1の媒質から屈折率n2の媒質に垂直で入射した光の感じる電界振幅反射率r, 電界振幅透過率tは以下のように表される。
【0052】
r = (n2−n1)/(n2 + n1) ・・・(3)
t = 2・n2/(n2 + n1) ・・・(4)
【0053】
同じ媒質について、これとは逆に屈折率n2の媒質からにn1の媒質に入射した場合について、電界振幅反射率r', 電界振幅透過率t'のように、右肩に「'」をつけて表すことにする。r', t'は以下のように表される。
【0054】
r' = (n1−n2)/(n2 + n1) = −r ・・・(5)
t' = 2・n1/(n2 + n1) ・・・(6)
【0055】
このときの電界強度反射率R, R', および電界強度透過率T, T'は以下のように表される。
【0056】
R = | r |2 = r2
=(n2−n1)2/(n1+n2)2 = R' ・・・(7)
T = (n2/n1)・| t |2
= 4・n1・n2/(n2 + n1)2 =T'
= t・t' ・・・(8)
【0057】
また、以下のような関係も導かれる。
【0058】
r + t = 1
r2 + t2 = 1
【0059】
以上を前提に、有機ELの光学的モデルについて説明する。
図8は有機ELディスプレイの光学的モデルの模式図である。すべての有機ELデバイスは、光学的に単純化すると図8のようにみなすことができる。
【0060】
図3は図8の特殊な場合といえる。図3では、背面反射面11の反射率r2は、r2≒1としていいほど高く、前面反射面12の反射率r1≪1である例を示している。前面反射面12での反射が2回以上繰り返された反射光の強度は非常に小さく、無視できるほどであるため、素子内部の4つの光波9a, 9b, 9c, 9dを考えればよかった。
【0061】
図9は、図8の構成において、素子内部から放射された光の多重反射と、素子外部へ取り出される光の電界振幅を表した図である。内部発光の電界振幅をEとし、それぞれの光波の電界振幅を記入してある。
【0062】
これら外部に取り出された光波の合成波の振幅と、内部発光の電界振幅Eとの比を、EL光取り出し合成電界振幅透過率mELと呼ぶことにする。
観察者7の側に取り出される光波のmELは、すでにすべての外部取り出し光が同相となるように調整されているので、そのまま足し合わせればよく、以下のように表現される。
【0063】
【数2】
Figure 0004371297
・・・(9)
【0064】
ここで、0≦| r1|≦1, 0≦| r2|≦1より0≦|r1 r2|≦1と、以下の公式を用いた。
【0065】
【数3】
Figure 0004371297
(0<p<1) ・・・(10)
【0066】
同様にして、観察者7とは反対側の外部に取り出される光波は、以下のようになる。
【0067】
【数4】
Figure 0004371297
・・・(11)
【0068】
次に、図10は、入射外光22aに関する有機EL素子での多重干渉現象の模式図である。観察者7側の光は、第1の反射光22bと、素子内部に透過・入射して多重反射を繰り返しながら素子外部に出てくる光の合成光23に分けられる。内部から発光したEL光の多重反射光がすべて同相になるよう調整された素子では、合成光23は自動的にすべて同相となる。
【0069】
一方、第1の反射光22bは、前記fresnelの公式によって、入射側/透過側媒質の屈折率の大小関係によりその反射率r1'の符号が反転する。これは、位相がπだけシフトすることに相当する。入射光22aと透過光22cは常に同位相である。
【0070】
図11(a)及び(b)は、光の位相の反転状況を示す図である。位相が反転するときを-1, 同位相の時を1と記してある。r = -r'であるので、ある入射方向で位相反転を伴う反射が生じたとき、その逆方向の入射では位相は反転しない。
【0071】
図11(a)では、外光の第一反射で位相が反転する場合を示している。このとき、素子内部の光は、前面反射部位20では同位相の反射となる。すなわち、前面反射部位20と背面反射部位19の間を1往復する光は、伝播・反射により2mπ(mは自然数)の位相差を持つように調整されている。この調整は、前記した素子の最適化を行うことと同意であり、EL光を増強するように最適化された素子では、自動的にこのように調整されている。
【0072】
図11(b)では、外光の第一反射で位相が反転しない場合を示している。このとき、素子内部の光は、前面反射部位20では位相反転反射となる。すなわち、前面反射部位20と背面反射部位19の間を1往復する光は、伝播・反射により2(m-1)π(mは自然数)の位相差を持つように調整されている。この調整は、前記した素子の最適化を行うことと同意であり、EL光を増強するように最適化された素子では、自動的にこのように調整されている。
【0073】
このように、最適化されたEL素子においては、いかなる場合でも図10における第一の反射光22bと透過合成光23は逆相となる。ここで、透過合成光23の合成振幅は以下のように表される。
【0074】
t1t1'r2(1+r1r2+(r1r2)2+…)=t1t1'r2/(1−r1r2) ・・・(12)
【0075】
このことから、図10におけるすべての合成波の電界振幅と、入射した外光22aの電界振幅Aとの比を表す係数を外光合成振幅反射率m外光は、以下のように表される。
【0076】
m外光=| r1' | −|tt'r2/(1−r1r2)| ・・・(13)
【0077】
ここで、t1t1' =T 1=1−r1 2,| r1'|=| r1|を用いると、式(13)は以下のように書き換えられる。
【0078】
m外光= | r1' | −|r2|(1−|r12)/(1−|r1r2|)
=(| r1 −r2|)/(1−|r1r2|) ・・・(14)
【0079】
以上が有機EL素子の一般的光学モデル解析である。まとめると、前面反射部位の反射率r1, r1'と透過率t1, t1'および、背面反射部位の反射率r2を用い、内部EL光の電界振幅をE、入射外光の電界振幅をAとしたとき、外部に取り出されたEL光の電界振幅Eoutおよび外部に反射する入射外光Arefは、以下のように表される。
【0080】
【数5】
Figure 0004371297
・・・(15)
【0081】
【数6】
Figure 0004371297
・・・(16)
【0082】
このときの光強度IOUTおよびIREFはそれぞれEOUTおよびAREFの絶対値の自乗である。特に、A REF=0となる条件は、r1 =r2である。
【0083】
式(15)について、その強度比MEL=IOUT/E2を r1、r2が、それぞれ0〜0.95の範囲について計算した結果以下の表1に示す。表1では、r1=r2を満たす対角線上に位置するコラムの強度反射率MELが1.00となっていることがわかる。
【0084】
【表1】
Figure 0004371297
【0085】
また、(式16)について、同様にM外光=IREF/A2を r1、r2が、それぞれ0〜0.95の範囲について計算した結果を表2に示す。表2では、r1=r2を満たす対角線上に位置するコラムの強度反射率M外光が0となっていることがわかる。
【0086】
【表2】
Figure 0004371297
【0087】
この結果を、例1と例2に適用してみる。例2では、前面反射部位反射率r1は次のように見積もることが出来る。例2において、前方側の強い反射面となりうるのは、有機物/ITO/ガラス界面であり、特にITO/ガラスの屈折率差が大きく、有機物/ITO界面の屈折率差が小さいので、ITO/ガラス界面を前方反射部位としてよい。このことは、EL光取り出し効率を最大にする素子においては、この界面と発光層との距離が光学的に強め合うように調節したときに得られることが、実験的に確認されていることからも正しいと言える。
【0088】
ITO (屈折率n=1.93)とガラス (屈折率n=1.52)の界面での電界振幅反射率r1は以下のようになる。
【0089】
r2 = (nITO−nガラス)/(nITO+nガラス)
=( 1.93−1.52)/(1.93+1.52)
= 0.119 ・・・(17)
【0090】
また、吸収のない反射・透過現象であるので、t1=1−r1としてよい。
【0091】
背面反射部位は、金属電極であるアルミと有機物の界面である。Alq/Al界面の電界振幅反射率は、92.5%であるので、(式9)に(r1, r2)=(0.119, 0.925)を代入し、自乗すると、そのEL強度の取り出し係数MELは以下のようになる。
【0092】
MEL=(mEL)2=1.9062=3.63 ・・・(18)
【0093】
次に、例1についても同様に計算する。背面電極の無反射化がなされているので、(r1, r2)=(0.119, 0)としてMELを計算すると以下のようになる。
【0094】
MEL=(mEL)2=0.8892=0.78 ・・・(19)
【0095】
図7より例1の輝度は例2の輝度の0.23倍であるが、これは取り出し係数MELの比の計算結果0.78/3.63=0.21とよく合っている。
【0096】
(例3)
例3として、無反射電極の第二透過層であるAlq3層の厚さを調整し、実測した強度反射率R=0.12、すなわちr2=(0.12)1/2=0.346としたものを電極とした有機EL素子を、例1と同じように作製した。このときの同じ電流での外部EL光強度は、154cd/m2であり、例2との輝度比は0.48であった。
【0097】
式(9)に(r1, r2)=(0.119, 0.346)を代入し、自乗すると、そのEL強度の取り出し係数MELは以下のようになる。
【0098】
MEL=(mEL)2=1.2372=1.531
これより、例2での計算値との比は1.531/3.63=0.422となり、実際の輝度比0.48とよくあっている。表3に、例1から例3までを並べて示す。各例において、計算値と実測値が良好に一致していることがわかる。
【0099】
【表3】
Figure 0004371297
【0100】
(例4・5)
例4として、例3で作製したのと同じ条件の無反射積層体を、異なる基材上に作製し、その反射率を調べた。ここでは、例4としてガラス/無反射積層体のものを、例5としてガラス/ITO/無反射積層体のものを作製し、その強度反射率を測定した。
【0101】
例5の強度反射率は約10%であった。このことより、この無反射積層体の振幅反射率は(0.1) 1/2=0.316と見積もられる。一方、例4の強度反射率は約5%であった。例5を基に、例4での外光反射率を式(14)に(r1, r2)=(0.119, (0.1)1/2)=(0.119, 0.316)を代入して計算すると、M外光 = (m外光)2 = 4.19%となり、実測値約5%によく合っている。
【0102】
表2から、有機EL素子において、外光に対して無反射となるような(r1, r2)は、r1=r2の時であり、表1からr1 = r2ではEL光の取り出し係数MEL=1となる。
【0103】
ここで、(r1, r2)=(0.1, 0.35)とした場合、MEL=1.59, M外光=6.7%とすることが出来る。 (r1, r2)=(0.1, 0)とした場合のMEL=0.81, M外光=1.0%と比べるとEL効率が1.96倍に改善されていることがわかる。
【0104】
(例6)
例4と同様にして、無反射電極の第一透過層である薄いアルミ層の厚さを調整し、強度反射率を変えたものを電極とした複数の有機EL素子を、例1と同じように作製した。
【0105】
これらの素子の、輝度効率の分布と式(9)による計算曲線を図12に示す。このように、様々なR2=(r2)2において、実際の素子のEL強度は式(9)による計算によくあっている。
【0106】
また図12より、背面強度反射率が0から10%に増加すると、輝度が約70cd/m2から125 cd/m2まで、実に1.79倍程度に大きく上昇しているのがわかる。すなわち、有機EL素子の素子効率は2倍近く向上している。このように、背面反射率が0である場合に比べ、僅かでも強度反射率が増大した場合には、素子効率が大幅に向上することがわかる。
【0107】
ここで、表1及び表2より、外光無反射の場合と僅かに残留反射が残っている場合を比較する。表2から、有機EL素子において、外光に対して無反射となるような(r1,r2)は、r1=r2の時である。表1からr1=r2ではEL光の取り出し係数がMEL=1となる。
【0108】
ここで、(r1, r2)=(0.1, 0.35)とした場合(残留反射あり)、MEL=1.59,M外光=6.7%とすることが出来る。 (r1, r2)=(0.1, 0)とした場合のMEL=0.81, M外光=1.0%と比べるとEL光の取り出し効率が1.96倍に改善される。これより、外光無反射の場合に比べて、僅かに残留反射が残っている場合には、EL光の取り出し効率が大幅に改善されることがわかる。
【0109】
ここでは、背面反射部位の強度反射率R2が、観察者からみたディスプレイの外光強度反射率M外光を光学干渉効果によって10%以下にするように調整されているとよく、好ましくは、前記強度反射率R2が、EL光外部取り出し効率を増強するように5〜50%に調整されているとよい。観察者からみたディスプレイの外光強度反射率M外光が10%よりも大きくなると、外光強度の反射率の増大が有機EL光の取り出し効率の増大よりも大きな寄与を果たし、ディスプレイの視認性が悪化してしまう。
【0110】
この観察者からみたディスプレイの外光強度反射率M外光を満たすような(r1, r2)の組み合わせとしては、表2の左上隅から右下隅にかけて引くことのできる対角線近傍の領域の数値が外光強度反射率M外光10%以下となっている。この領域は、式(16)より、以下の関係式により表現される。
【0111】
【数7】
Figure 0004371297
・・・(20)
【0112】
【数8】
Figure 0004371297
・・・(21)
【0113】
この領域の数値において、表1を参考にしてEL光の強度透過率MELを向上させるよう選択すれば、外光強度の反射率を抑え、かつEL光の発光強度を高めたディスプレイを得ることが可能となる。好ましくは、表1の左上隅から右下隅にかけて引くことのできる対角線の左下側に位置するパラメータのうち、外光強度反射率M外光10%以下となるパラメータを選択すればよい。この領域は、表1より、以下の関係式により表現される。
【0114】
r1≦r2 ・・・(22)
R1 ≦ R2 ・・・(23)
【0115】
以上をまとめると、外光強度反射率M外光10%以下であり、かつパラメータr1≦r2であるような、すなわちR1 ≦ R2となるようにディスプレイを調整することが好ましい。このようなディスプレイであれば、外光強度の反射率を抑え、かつEL光の発光強度を高めたディスプレイを得ることが可能となる。また、上記構成により、有機層に流れる電流を低電流化した状態で、有機ELディスプレイの発光強度を高めることが可能となる。
【0116】
(第1実施形態)
以下、図13を参照しながら本発明に係る第1実施形態について説明する。
【0117】
図13は、本発明に係る第1実施形態の有機EL素子30を示す図である。有機EL素子30は、ガラス基板31と、ガラス基板31上に配置された透明電極32と、透明電極32上に順次積層された複数の積層体である有機層34と、有機層34に続いて積層された背面電極33を有する。透明電極32と背面電極33との間に電圧を印可することで、正負のキャリアが素子内に注入され、この再結合により有機層34内部でエレクトロルミネッセンスが発生する。35は有機層34内部で、励起された有機分子が基底状態に戻る際に光を放射する発光源であり、1分子程度のサイズである。発光源35は、無数に層状に分布している。これら無数の発光源35から放射されたルミネッセンス光は、直接、または素子内部での多重反射によって、透明電極32および基板31を介して観察者36の方向に放射される。
【0118】
本実施形態では、背面電極33と有機層34の界面と、発光源35の発光強度ピーク位置との光学距離、および透明電極32と基板31の界面と、発光源35の発光強度ピーク位置との光学距離は、素子内部でのすべての多重反射光を強め合うように選択されている。
【0119】
透明電極32としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いている。透明電極32には、その他の透明な導電膜でもよい。
【0120】
透明電極32とガラス基板31のなす界面での電界振幅反射率r1は 0.119と見積もられる。また、透明電極32と有機層34のなす界面での電界振幅反射率は、0.043であり、0.119に比べて小さいので無視する。ここで有機層28と背面電極27との間の電界振幅反射率r2は、0.346である。この場合のMEL及びM外光を計算すると、それぞれ、1.531,3.63%となる。r2が0の場合には、MELが0.8程度であるため、約2倍程度EL発光強度の輝度が上昇することとなる。本実施形態において、MELを向上させるためには、表1および2より、r1≦r2であり、かつr2が0.4以下であれば、外光強度反射率M外光10%以下の素子とすることが可能となる。
【0121】
本実施形態において、外光強度反射率M外光を調整することにより、10%以下、特にほぼ0となる場合には、有機EL素子自体が無反射構造を持つ無反射体となることを意味する。このように、本実施形態では、発光層よりも観測者側に設けられた反射面と、観測者側から見て発光層よりも奥に形成された反射面を利用して、低反射構造、無反射構造を実現するものとなっている。
【0122】
(第2実施形態)
第1実施形態は、基板の方向にEL光を取り出す場合の例であったが、基板とは反対側の方向にEL光を取り出す、いわゆるトップエミッション型有機EL素子についても、上記考察結果はそのままあてはまる。図14はトップエミッション型有機EL素子を示す図である。以下、図14を参照しながら詳しく説明する。
【0123】
有機EL素子40は、基板41と、基板41上に配置された背面電極42と、背面電極42上に順次積層された複数の積層体である有機層44と、有機層44に続いて積層された透明電極43を有する。透明電極43は、透過性金属と導電性酸化膜の積層体で構成されることもある。透明電極43として、スパッタ成膜されたITOを用いた。
【0124】
ここで透明電極43から空気にEL光を取り出すときのr1は以下のように表される。
【0125】
r1 = (nITO−n空気)/(nITO+n空気)
=( 1.93−1.0)/(1.93+1.0)
= 0.317
【0126】
このとき、背面(基板側)電極での電解振幅反射率r2と強度反射率R2と外光強度反射率M外光とEL光強度取り出し係数MELの関係を表4に示す。
【0127】
【表4】
Figure 0004371297
【0128】
外光の強度反射率M外光を10%とする条件は、(式14)を絶対値の符号に気をつけて解くことで得られ、R2=0%および33.1%に相当する。このとき、R1≦R2なる請求項2に記載の条件を適用することで、EL光強度取り出し係数を1.73とすることができる。これは、背面電極の強度反射率R2=0の場合の4.25倍である。
【0129】
(変形例)
トップエミッション型有機ELデバイスにおいて、図15のように、背面電極を透明導電膜と低反射性膜との積層構造体で構成してもよい。
すなわち、両方の電極を透過性としたいわゆる透過型有機EL素子において、取り出し側とは反対側の背面に吸収性の膜を塗布したような場合も、この面の反射率をr2として考えればよい。
【0130】
また、トップエミッション型有機ELデバイスにおいて、図16、図17のように、光取り出し電極を透過性導電膜と反透過性膜との積層構造体で構成してもよい。式(14)は、外光から見た第1の反射面ではエネルギーの吸収をゼロとした場合だが、さらに界面に吸収層を設け、t1をr1とは別に調整することも出来る。
【0131】
例1に類するデバイス形態として、図18のように、背面電極を透過性導電膜と低反射性膜の積層構造体で構成してもよい。
【0132】
また、図19のように、背面または前面に反射面が複数存在するとき、EL発光源の位置において、背面または前面に位置するすべての反射面からの反射光の合成光を反射光として定義し、そのときの電界振幅の変化をr1またはr2として定義すればよい。
【0133】
また、図20(a)に示すように、無反射体(低反射低透過率積層光学構造体)は、有機EL素子そのものであるような構造であってもよい。図20では、半透過性膜である透明電極51は、基材上に配置されている。透明電極51上には、少なくとも発光層を有する半透過性の有機EL層52が積層されている。そして、有機EL層52上には、反射性の背面電極53が配置されている。
【0134】
本構成において、透明電極51、有機EL層52、及び背面電極53は、基材側から入射した外部光を各層間の界面での反射光との光学干渉により打ち消しあうように調整された無反射体である。このような有機EL素子において、外光強度反射率M外光を10%以下にするようにr1,r2を調整してもよい。
【0135】
勿論、上記構造は、基材上に配置された電極51を反射性の背面電極とし、電極53を半透過性の透明電極とすることで、いわゆるトップエミッション型の構造の有機EL素子にも適用可能である。
【0136】
このように、有機EL素子自体を無反射体として構成することにより、別途半透過性の光学部材や光学反射膜を設置する必要がないため、有機EL素子を薄膜化することが可能となる。また他の部材を設ける必要がないため、製造上のステップが簡略化され、製造効率が向上する。
【0137】
また、図20(b)に示すように、無反射体(低反射低透過率積層光学構造体)が、有機EL素子の一部を含み、無反射体の一端が有機EL素子の一部で構成されるようにしてもよい。図20(b)では、透過性膜である透明電極61は、基材上に配置されている。透明電極61上には、少なくとも発光層を有する透過性の有機EL層62が積層されている。そして、有機EL層62の中には、電荷輸送性を有し且つ半透過性の光学反射膜63が挿入されている。有機EL層62上には、背面電極64が配置されている。
【0138】
本構成において、光学反射膜63、背面電極64は、基材側から入射した外部光を各層間の界面での反射光との光学干渉により打ち消しあうように調整された無反射体である。この構造においては、基材と透明電極61間の界面での反射光、及び透明電極61と有機EL素子間の界面での反射光は微量であるため無視できるものとする。このような有機EL素子において、外光強度反射率M外光を10%以下にするようにr1,r2を調整してもよい。
【0139】
このように、有機EL素子の一部を無反射体が含むように構成することにより、半透過性の光学部材や光学反射膜を設置数が減少し、有機EL素子を薄膜化することができ、製造上のステップが簡略化され、製造効率が向上する。
【0140】
以上説明した有機ELディスプレイによれば、円偏光フィルターを用いることなく、有機ELディスプレイのコントラストを向上させながら、有機EL光の発光効率を高めることが出来る。また、上記構成により、有機層に流れる電流を低電流化した状態で、有機ELディスプレイの発光強度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機ELディスプレイ内の有機EL素子の断面構造および有機EL素子内でのEL発光強度分布を示す図である。
【図2】内部発光点から放射された光の、素子内部での光学干渉について説明する図である。
【図3】有機EL素子構造を光学的に最適化する方法を示す図である。
【図4】積層光学膜による無反射積層体を示す図である。
【図5】アルミと有機物を用いた無反射積層体の波長と反射率の関係を示す図である。
【図6】無反射積層構造を有する例1の有機EL素子と無反射積層構造を有しない例2の有機EL素子の電圧-電流特性を示すグラフである。
【図7】例1と例2の電流-輝度特性を示したグラフである。
【図8】有機ELディスプレイの光学的モデルの模式図である。
【図9】図8の構成において、素子内部から放射された光の多重反射と、素子外部へ取り出される光の電界振幅を表した図である。
【図10】入射外光に関する有機EL素子での多重干渉現象の模式図である。
【図11】(a)及び(b)は、光の位相の反転状況を示す図である。
【図12】輝度効率の分布と式(9)による計算曲線を示す図である。
【図13】本発明に係る第1実施形態の有機EL素子を示す図である。
【図14】本発明に係る第2実施形態の有機EL素子を示す図である。
【図15】本発明に係る変形例の有機EL素子を示す図である。
【図16】本発明に係る変形例の有機EL素子を示す図である。
【図17】本発明に係る変形例の有機EL素子を示す図である。
【図18】本発明に係る変形例の有機EL素子を示す図である。
【図19】本発明に係る変形例の有機EL素子を示す図である。
【図20】 (a)及び(b)は、本発明に係る変形例の有機EL素子を示す図である。
【符号の説明】
1,31 基板
2,32,43,51,61 透明電極
3,33,42,53,64 背面電極
4,34,44,52,62 有機層
5 発光層
6,35,45 発光点
7,36,46 観察者
8 EL光
9a 第一前方放射光
9b 第一後方反射光
11 背面反射面
12 前面反射面
13 ガラス基板
14 第一半透過層
15 第二半透過層
16 高反射層
18a 第一半透過層反射光18a
18b 高反射層反射光
19 背面反射部位
20 前面反射部位
22a 入射外光
22b 第一反射外光
22c 第一透過外光
23 多重反射合成光
30,40 有機EL素子
63 光学反射膜

Claims (12)

  1. 少なくとも2つの電極で有機物が挟持された有機EL素子を備えた有機ELディスプレイであって、
    光を放出する発光層と、
    前記発光層からみて観察者側に配置された前面反射部位と、
    前記発光層からみて観察者側と反対側に配置された背面反射部位と、を有し、
    前記有機物の光学膜厚、前記前面反射部位の強度反射率R1、及び、前記背面反射部位の強度反射率R2が、観察者からみたディスプレイの外光強度反射率を光学干渉効果によって10%以下にするように調整され、
    前記強度反射率R 2 が、EL光外部取り出し効率を増強するように5〜50%に調整されていることを特徴とする有機ELディスプレイ。
  2. 前記強度反射率R1と、前記強度反射率R2との関係が、
    R1 ≦ R2
    である請求項1記載の有機ELディスプレイ。
  3. 前記強度反射率R1 と、前記強度反射率R2 との関係が、
    Figure 0004371297
    の関係を略満たす請求項1記載の有機ELディスプレイ。
  4. 前記強度反射率R1 と、前記強度反射率R2とが略等しい請求項1記載の有機ELディスプレイ。
  5. 前記前面反射部位が、基材とひとつ以上の透明または半透明の膜で形成された請求項1乃至の何れか記載の有機ELディスプレイ。
  6. 前記透明または半透明の膜は、前記電極のうちどちらか一方を含む請求項5記載の有機ELディスプレイ。
  7. 前記前面反射部位が、有機EL素子の電極と基材の界面である請求項1乃至4の何れかに記載の有機ELディスプレイ。
  8. 前記前面反射部位が、有機EL素子の電極と透過性膜の界面である請求項1乃至4の何れか記載の有機ELディスプレイ。
  9. 前記前面反射部位が、空気と透明または半透明の膜で形成された請求項1乃至4の何れか記載の有機ELディスプレイ。
  10. 前記背面反射部位は、有機EL素子の電極である請求項1乃至4の何れか記載の有機ELディスプレイ。
  11. 前記背面反射部位が、複数の反射性または透過性または半透過性の膜で形成されている請求項1乃至4の何れか記載の有機ELディスプレイ。
  12. 前記複数の反射性または透過性または半透過性の膜は有機EL電極を含む請求項11記載の有機ELディスプレイ。
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