JP4368136B2 - 誘電体磁器組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、マイクロ波用フィルター等に使用する誘電体磁器組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年において、携帯電話機に代表される移動体通信機器は、より小型化、および軽量化される傾向にあり、それらに使用される電子部品等も、小型、軽量化が求められている。これらの部品の小型、軽量化の要求は、例えば、マイクロ波用セラミックフィルターチップやRFモジュール等の部品についても例外ではない。この場合、特に重要なのは、セラミックス磁器組成物に銀(Ag)を印刷したシートを重ね合わせた積層型部品において、その銀(Ag)が溶け出さないような低い温度、すなわち、900℃前後で組成物が焼結することである。
【0003】
BaO−TiO2系組成の誘電体磁器組成物は、その比誘電率が30〜40と高く、Qも高く、また、共振周波数の温度係数(τf)が小さいので、マイクロ波用セラミックスフィルターチップ素地に有用であることが知られている。
【0004】
さらに、例えば、非特許文献1に記載されているように、BaO−TiO2系組成に三酸化タングステン(WO3)を添加した誘電体磁器組成物は、Q,τfともに改善されるため、マイクロ波用セラミックスフィルターチップ素地に有用であることも知られている。
【0005】
【非特許文献1】
社団法人日本セラミックス協会編、「セラミック工学ハンドブック」、技報堂出版株式会社、第2版、2002年、p.1025、図6.50、表6.15等
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した誘電体磁器組成物は、その焼成温度が約1300℃と高温であり、また、これよりも低い温度では焼結せず、その電気的特性も著しく低下するという問題がある。
【0007】
一方、ホウケイ酸ガラス等の適当な焼結助剤を用いて、900℃前後の温度でBaO−TiO2系組成物の焼成を試みた場合、この温度での焼結は難しく、たとえ焼結したとしても、誘電体磁器組成物の電気的な特性を大きく変化させてしまう。そのため、高周波(マイクロ波)帯域において優れた高誘電率、高Q特性が得られなくなるという問題がある。
【0008】
一般的に焼結助剤として知られているホウケイ酸ガラスを用いて、例えば、BaO−TiO2系組成物を930℃で焼成して得た試料の特性データを表2に示す。表2から分かるように、このような条件下で得られた試料は、焼結が不十分なため、その特性の測定ができない。よって、従来の一般的な焼結助剤では、BaO−TiO2系組成物を銀(Ag)の融点以下の温度で焼結させることは困難である。
【0009】
従って、一般的に知られた焼結助剤を用いた焼成方法では、銀(Ag)電極と同時焼成でき、かつ、マイクロ波用セラミックスフィルター特性を十分に満足する誘電体磁器組成物を得ることができない、という問題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、良好な焼結性が得られ、誘電体としての高周波特性が優れ、かつ、比較的低温で焼成が可能な誘電体磁器組成物を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、マイクロ波用フィルター特性を満足する誘電体磁器組成物を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として、本発明は、例えば、以下の構成を備える。すなわち、誘電体磁器組成物であって、少なくともバリウム(Ba)と、チタン(Ti)と、タングステン(W)を含む化合物粉体を、一般式αBaO・(1−α)TiO2(αはmol%で、0.171≦α≦0.24)と、βWO3(βはmol%で、2≦β≦40)とで表される組成比で混合して得たBaO−TiO2−WO3系組成物、および/またはBaO−TiO2系組成物およびBaO−WO3系組成物からなる複合組成物に、少なくともゲルマニウム(Ge)を含むガラスと、少なくともホウ素(B)を含むホウ素化合物とを混合してなることを特徴とする。
【0013】
さらに、上述した課題を解決する他の手段として、本発明は、例えば、以下の構成を備える。すなわち、誘電体磁器組成物であって、一般式αBaO・(1−α)TiO2(αはmol%で、0.171≦α≦0.24)で表される組成物に、βmol%(2≦β≦40)のタングステン酸化物を添加して得た第1の材料100重量部に対して、少なくともゲルマニウムを含むガラスをx重量部(10≦x≦17.5)と、少なくともホウ素(B)を含む化合物をy重量部(3≦y≦7.5)とを混合した第2の材料を焼成してなることを特徴とする。
【0014】
例えば、上記ガラスは、少なくともゲルマニウムと、バリウムと、ビスマスからなる粉末を原材料とすることを特徴とする。
【0015】
また、例えば、上記ガラスは、組成式aGeO2−bBaO−cBi23(a,b,cはmol%で、0.4≦a≦0.6,0.1≦b≦0.5,0.1≦c≦0.5であって、a+b+c=1)で表されることを特徴とする。
【0016】
さらに、例えば、上記第2の材料の焼成温度を銀(Ag)の融点961.93℃未満の温度とすることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面および表を参照して、本発明に係る実施の形態例を詳細に説明する。本実施の形態例に係る誘電体磁器組成物の作製工程は、磁器組成物の原料を作製する工程と、焼結助剤として機能するガラスを作製する工程と、これらの組成物、ガラス等を混合、焼成して、目的とする磁器組成物を作製する工程とからなる。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態例に係る誘電体磁器組成物の組成物原料を作製する手順を示すフローチャートである。図1のステップS11において、磁器組成物の出発原料として、炭酸バリウム(BaCO3)粉末と、二酸化チタン(TiO2)粉末と、三酸化タングステン(WO3)粉末を、例えば、以下の表1に示す組成となるように秤量する。なお、ここでは、酸化バリウム(BaO)をBaCO3から得る。
【0019】
ステップS12では、ステップS11で秤量した原料をボールミルに入れて湿式混合し、続くステップS13において、それを乾燥させて混合粉を得る。次のステップS14では、この混合粉を高温焼成する。ここでは、大気中において、焼結助剤なしでBaO−TiO2−WO3系化合物、および/またはBaO−TiO2系とBaO−WO3系よりなる混合系化合物を生成するような高温(例えば、1250℃)で焼成する。
【0020】
その後、ステップS15において、この焼成物をボールミルにより湿式粉砕し、続くステップS16で、焼結助剤を含まないBaO−TiO2−WO3系化合物粉末、および/またはBaO−TiO2系とBaO−WO3系よりなる混合系化合物を得る。
【0021】
図4は、上述した工程によって得られた化合物の粉末X線回折パターンである。図4に示す回折パターンから、この化合物粉末がBa4Ti330およびBaTi49のBaO−TiO2系化合物、並びにBa4WO4であるBaO−WO3系化合物よりなる混合相であることが同定できる。なお、以下の説明における材料等の混合時間、高温焼成温度、粉砕時間、平均粒径等は一例であり、X線回折によって、粉末がBaO−TiO2−WO3系組成物、および/またはBaO−TiO2系組成物とBaO−WO3系組成物よりなる混合系組成物もしくは化合物であることが同定できれば、それらに類似するプロセスも本発明に含まれる。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態例に係る誘電体磁器組成物の焼成助剤として機能するガラスの作製手順を示すフローチャートである。図2のステップS21において、ガラスの出発原料として二酸化ゲルマニウム(GeO2)粉末とBaO(このBaOは、BaCO3粉末により添加する)と三酸化ビスマス(Bi23)粉末を、例えば、表1に示す組成となるように換算して秤量する。
【0023】
ステップS22では、このように秤量された原料を、例えば、乳鉢・乳棒によって乾式混合する。次のステップS23において、混合した粉末をアルミナ質るつぼに入れて、例えば、1000℃の炉内で溶融する。そして、30分後、炉からるつぼを取り出し、室内で放冷してガラスを固化させる。
【0024】
ステップS24では、るつぼからガラスだけを取り出し、自動乳鉢機で粗粉砕する。そして、粗粉砕したガラスの粉末をボールミルで湿式粉砕することで、ガラス粉末を得る(ステップS25)。なお、後述するように、得られた粉末のX線回折パターンより、その粉末は非晶質ガラスであることが分かる。
【0025】
図5は、本実施の形態例に係るガラスのX線回折パターンを示している。ここで、ガラスは、aGeO2−bBaO−cBi23(a=0.567,b=0.243,c=0.189)である。本実施の形態例では、ガラスは、溶融後、室温へ放冷して作製しているが、粉末X線回折により非晶質ガラスであることが確認できれば、この方法に限定されることなく、一般的な急冷水砕法、急冷ロール法等も使用できる。
【0026】
次に、本実施の形態例に係る誘電体磁器組成物の作製手順を説明する。図3は、本実施の形態例に係る誘電体磁器組成物の作製手順を示すフローチャートである。最初に、図3のステップS31において、図1に示す工程で得られた、誘電体磁器組成物の主成分であるBaO−TiO2−WO3系組成物、および/またはBaO−TiO2系組成物とBaO−WO3系組成物よりなる混合系組成物(BaO−TiO2−WO3粉末)と、図2に示す工程で得たガラス粉末と、酸化ホウ素(B23)とを、表1に示す組成となるように秤量する。なお、ここでは、B23をホウ酸(H3BO3)で秤量する。
【0027】
次に、ステップS32で、上記の秤量した材料を、ボールミルによって湿式混合した後、ステップS33で乾燥させて、混合粉を得る。そして、続くステップS34において、この混合粉にPVA水溶液を添加して造粒する。
【0028】
ステップS35では、上記のステップで得られた造粒粉を金型に詰めて、例えば、19.6MPa(メガパスカル)(200kgf/cm2)の1軸加圧で仮成形する。さらに、その成形体に対して、静水圧プレス機を使って、例えば、98MPa(1000kgf/cm2)の圧力で等方加圧し、成形する。
【0029】
ステップS36では、上記の成形品を大気中において、表1の低温焼成温度で、例えば、2時間焼成して、BaO−TiO2−WO3系、および/またはBaO−TiO2系とBaO−WO3系よりなる混合系組成物の低温焼結体を得る(ステップS37)。なお、本実施の形態例では、粉末金型プレス法と静水圧プレス法を組み合わせて試料を作製しているが、本発明における成形方法は、これに限定されない。他の成形方法、例えば、グリーンシー卜法、鋳込み法、押出し法等のような方法を使用してもよい。
【0030】
表1は、上述した手順で作製した試料(全33件)について、その組成と電気的な諸特性のデータをまとめて示したものである。本実施の形態例では、一般式αBaO・(1−α)TiO2[α:mol%]で示される組成物に、βmol%のWO3を添加したものを主成分とする材料に対して、焼結助剤としてのGeO2を含むガラスとB23の添加の有無、その添加率を変えること、ガラスの組成を変えること、焼結温度等を考慮して、表1に示す試料の作製を行った。
【0031】
図6は、表1に示すガラスの組成を示す図(3元組成図)である。図6中において、黒丸に付した数字は、表1中の試料番号に対応している。
【0032】
表1に示す試料のうち、試料番号1〜28の試料は、上述した手順によって作製した低温焼結体に対応している。また、試料番号29〜33の5件の試料は、ガラスおよびB23の添加がないBaO−TiO2組成物と、BaO−TiO2−WO3組成物、および/またはBaO−TiO2系組成物とBaO−WO3系組成物よりなる混合系組成物の評価用試料を、表1の組成となるように調整し、1200℃以上で焼成して作製したものである。
【0033】
表1に示す各試料の測定データは、上述した手順によって作製した試料を、直径9mm、高さ4.5mmの円柱状に加工して、その電気的特性を測定した結果である。すなわち、マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法(JISR1627)に規定された両端短絡形誘電体共振器法で得られた、焼結体の比誘電率とQの測定結果である。
【0034】
【表1】
Figure 0004368136
【0035】
また、共振周波数(本測定方法では、共振周波数とは測定周波数を指す)の温度係数(τf)の計算も行った。この共振周波数の温度係数(τf)は、次の式(1)で求める。すなわち、温度係数は、共振周波数の変化分率を、対応する温度の変化分で除した値である。
【0036】
【数1】
Figure 0004368136
【0037】
上記の式(1)において、frefは、基準温度Trefにおける共振周波数であり、fTは、温度Tにおける共振周波数である。ここでは、−40℃〜+80℃の温度範囲で、τfを計算するための共振周波数を測定した。
【0038】
共振周波数は、測定する温度に到達した後、その温度で15分以上保持してから測定した。ここでは、20℃を基準温度Trefとし、この温度における共振周波数をfrefとした。また、共振周波数の測定は、マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法(JISR1627)に規定された両端短絡形誘電体共振器法で行った。なお、表1におけるτfは、−40℃〜+80℃のτfの平均値である。
【0039】
作製試料についての焼結性の評価は、得られた各試料についての吸水率を、電気絶縁用セラミック材料試験方法(JISC2141)に規定された方法により求めた。表1に示すように、吸水率が0.1%未満のものは、焼結が十分に行われているものと判断して○印を付してある。また、吸水率が0.1%以上のものについては、焼結が不十分であると判断して×印を付してある。
【0040】
一般的に、BaO−TiO2系組成物は、約1300℃の焼成温度で十分に焼結し、マイクロ波フィルター特性を満足する良好な比誘電率やQ等が得られる。例えば、表1に示す試料No.30は、上述した一般式αBaO・(1−α)TiO2において、α=0.174とした場合であり、1250℃の焼成温度で、吸水率が0.1%未満、比誘電率が38、Qが2780と、良好な値が得られた。
【0041】
一方、試料No.33は、式αBaO・(1−α)TiO2において、α=0.24とし、WO3を33.0mol%添加した場合であり、そのQが5538となって、上記の試料No.30よりも、さらに良好な値が得られた。
【0042】
しかしながら、これらの組成物に焼結助剤を添加することなく単独で、これよりも低い温度で焼成した場合には、焼結性が悪化し、その電気的特性も著しく低下することは、上述したとおりである(上記「従来の技術」の欄を参照)。
【0043】
表2は、1250℃の高温焼成によって作製したBaO−TiO2系組成物100重量部に対して、一般的に焼結助剤として知られているホウケイ酸ガラスを、表中に示すx重量部添加し、930℃で焼成した結果である。
【0044】
【表2】
Figure 0004368136
【0045】
表2から分かるように、得られた試料(試料番号*1〜*5)は、その吸水率が高く、焼結も不十分であるため、電気的特性の測定が不可能であった。すなわち、ホウケイ酸ガラスは、焼結助剤として知られているが、ここで取り上げている磁器組成物を900℃前後の温度で焼結することは困難である。
【0046】
これに対して、1250℃の高温焼成で作製したBaO−TiO2−WO3系組成物、および/またはBaO−TiO2系組成物とBaO−WO3系組成物よりなる混合系組成物もしくは化合物に、GeO2を含むガラスと、B2O3とを適当量、添加して得られた試料(すなわち、試料No.2、試料No.4、試料No.6、試料No.7、試料No.9〜11、試料No.13、試料No.15、試料No.16、試料No.18、試料No.20〜23)は、表1に示すように、その焼成温度が870℃と850℃である。これは、銀と同時焼成できる低温焼成温度であり、結果として、良好な焼結性とともに所望の電気的特性が得られた。
【0047】
次に、上記の試料の具体的な組成について説明する。表1に示す試料は、一般式αBaO・(1−α)TiO2(0.171≦α≦0.24、α:mol%)で示される組成物に、βWO3(2≦β≦40)(β:mol%)を添加したものを主成分とする材料100重量部に対して、焼結助剤としてのGeO2を含むガラスx重量部(10≦x≦17.5)と、B23をy重量部(3≦y≦7.5)混合して焼成したものである。
【0048】
このガラスは、組成式aGeO2−bBaO−cBi23で表される。ここで、a,b,cはモル比であり、0.4≦a≦0.6,0.1≦b≦0.5,0.1≦c≦0.5であって、a+b+c=1の範囲内にある(図6参照)。
【0049】
表1に示す試料のうち、試料No.2、試料No.4、試料No.6、試料No.7、試料No.9〜11、試料No.13、試料No.15、試料No.16、試料No.20〜23については、その焼成温度(低温焼成温度)が870℃であり、試料No.18の低温焼成温度は、850℃である。よって、これらの試料15件は、870℃と850℃という低温の焼成温度で、緻密な構造を有する誘電体磁器組成物として作製されたものである。
【0050】
また、これらの試料の比誘電率ε’については、試料No.4が最高値(ε’=33)を有し、試料No.15のε’が最低値(ε’=28)であった。また、いずれの試料も、そのQが500以上と高く、試料No.6が最高値(共振周波数=8GHzにおいて、Q=864)を有する結果となった。さらに、τfは、±20ppm/℃以内であり、マイクロ波用セラミックフィルターを形成するために十分な特性を有している。
【0051】
[比較例]
次に、上記のα,β,a,b,c,x,yの値が適正でない試料例について説明する。まず、ガラス組成が、上記の好ましい範囲外(図6参照)にある試料について説明する。例えば、試料No.24は、表1に示すように、b=0であり、上記の範囲外にある。また、試料No.26は、c=0で範囲外にあり、試料No.27については、a=0.8で範囲外である。これらの試料は、吸水率が高くなり、緻密化しないことが判明した。
【0052】
また、試料No.25は、a=0.3で範囲外にあり、組成物として緻密化しても、そのQが100より低く、マイクロ波用セラミックフィルター特性を十分満足するものではない。
【0053】
一方、ガラス組成が上記の好ましい範囲内にあっても、全体として所望の特性が得られなかった試料について説明する。この場合においても、ガラス組成が好ましい範囲内にあるので、その組成は、aGeO2−bBaO−cBi23で表され、モル比a,b,cは、0.4≦a≦0.6,0.1≦b≦0.5,0.1≦c≦0.5、かつ、a+b+c=1である。
【0054】
例えば、試料No.5は、GeO2を含むガラスの添加量xが10重量部よりも少ないため、その吸水率が0.1%未満に緻密化しなかった。一方、試料No.14のように、ガラスの添加量xが17.5重量部を超えると、ガラスの過剰添加によるものと思われる試料の溶着が起こり、比誘電率ε’やQの測定ができなかった。
【0055】
試料No.8は、B23の添加量yが、その下限値3.0重量部よりも少ないため、870℃における焼成では焼結が不十分で、緻密化しない。その一方で、B23の添加量yが上限値7.5重量部を超えている試料No.12は、共振周波数の温度係数(τf)が+37ppm/℃となり、±20ppm/℃以内に入らなかった。また、試料No.19のように、低温焼成温度が850℃よりも低い場合には、得られた組成物が緻密な構造にならず、その吸水率も0.1%未満にならなかった。
【0056】
上述した一般式αBaO・(1−α)TiO2で示される組成物において、αの値がその上限値(α=0.24)よりも大きい試料No.28(α=0.308)は、過焼結を生じて破損した。また、αが、その下限値(α=0.171)よりも小さい試料No.1(α=0.12)については、τfが、+63ppm/℃となった。
【0057】
次に、ガラスおよびB23の添加のないBaO−TiO2系組成物について説明する。試料No.29は、GeO2を含むガラスと、B23の両方を添加しないで、高温焼成温度1200℃で焼成して得たものである。この試料No.29は、焼結が不十分であり、比誘電率ε’、及びQの測定ができなかった。
【0058】
一方、試料No.30は、高温焼成温度1250℃で焼成したものであり、得られた組成物は緻密化し、その電気的特性としての比誘電率ε’が38、Qが2780となった。これらの結果から言えるのは、GeO2を含むガラスと、B23とを添加しないBaO−TiO2組成物を焼成させるには、高温焼成温度として約1250℃が必要となることである。
【0059】
次に、ガラスおよびB23の添加のないBaO−TiO2−WO3系組成物について説明する。試料No.31は、一般式αBaO・(1−α)TiO2の組成物において、αが0.24のとき、WO3の添加のないもの(すなわち、β=0)である。この試料No.31は、Q=2902で、τf=+88ppm/℃である。
【0060】
また、試料No.32、および試料No.33は、αBaO・(1−α)TiO2組成物において、αが0.24のとき、WO3の添加量をそれぞれ、β=16.4,β=33.0としたものである。得られた組成物の電気的特性は、試料No.32については、Q=4620,τf=+55ppm/℃となり、試料No.33は、Q=5538,τf=+24ppm/℃となった。このことから、WO3の添加とともに、これらの特性が改善されることが分かる。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態例によれば、誘電体材料(BaO−TiO2−WO3系組成物)に対して、銀の融点未満の低温での焼成を促進させることができる、Geを含むガラスと、B23とを添加することで、比誘電率が28〜33、Qが500〜864(測定周波数=6〜8GHz)、τfが、−5〜+20ppm/℃の特性を有するとともに、吸水率が0.1%未満の緻密な誘電体磁器組成物を、銀(Ag)の融点未満の温度で焼成することができる。
【0062】
また、得られた誘電体磁器組成物の緻密な構造により、セラミックスの強度が向上し、比誘電率ε’,Q、およびτfのバラツキが減少して、特性が安定化するという性能面における改善もある。
【0063】
さらに、誘電体磁器組成物と銀(Ag)電極とを同時焼成できるので、かかる組成物を使用した電子部品等の製造工程の短結と、製造コストの削滅とを達成できるという、製造上の利点もある。
【0064】
さらにまた、BaO−TiO2組成にWO3を添加して得た組成物は、BaO−TiO2組成物に比べて優れたQ、およびτfを持つため、マイクロ波用セラミックスフィルターチップ素地に有用である。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、良好な焼結性を有し、誘電体としての高周波特性が優れるとともに、低温焼成が可能な誘電体磁器組成物を提供することができる。
【0066】
また、本発明によれば、マイクロ波用フィルター特性を満足する誘電体磁器組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例に係る誘電体磁器組成物の組成物原料を作製する手順を示すフローチャートである。
【図2】実施の形態例に係る誘電体磁器組成物の焼成促進剤として機能するガラスの作製手順を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態例に係る誘電体磁器組成物の作製手順を示すフローチャートである。
【図4】組成物原料の作製工程で得られた化合物の粉末X線回折パターンである。
【図5】実施の形態例に係るガラスのX線回折パターンを示す図である。
【図6】実施の形態例に係るガラスの組成を示す図である。

Claims (2)

  1. 少なくともバリウム(Ba)と、チタン(Ti)と、タングステン(W)を含む化合物粉体を、一般式αBaO・(1−α)TiO2(αはmol%で、0.171≦α≦0.24)と、βWO3(βはmol%で、2≦β≦40)とで表される組成比で混合して得たBaO−TiO2−WO3系組成物および/またはBaO−TiO2系組成物およびBaO−WO3系組成物を含む複合組成物100重量部に対して、少なくともゲルマニウム(Ge)と、バリウムと、ビスマス粉末を原材料として含み、組成式aGeO 2 −bBaO−cBi 2 3 (a,b,cはmol%で、0.4≦a≦0.6,0.1≦b≦0.5,0.1≦c≦0.5であって、a+b+c=1)で表されるガラスx重量部(10≦x≦17.5)と、少なくともホウ素(B)を含む化合物y重量部(3≦y≦7.5)とを混合した第2の材料を焼成してなることを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. 前記第2の材料の焼成温度を銀(Ag)の融点未満の温度とすることを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器組成物。
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