JP4363601B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂、フッ素系樹脂及び難燃剤を包含する難燃性樹脂組成物、並びにその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、熱可塑性樹脂、フッ素系樹脂及び難燃剤の特定量を包含する難燃性樹脂組成物において、該フッ素系樹脂は複数のフィブリルの形で存在し、該熱可塑性樹脂と難燃剤は混合物の形で存在しており、射出成形法によって作成される該樹脂組成物の試験片に引張り応力を加えて破断させて得られた破片の破断面について、全体にフィブリルが分散した7ミクロン×7ミクロンの領域を走査型電子顕微鏡で調べた時に、該分散フィブリルが特定の分散形態を示す、ことを特徴とする難燃性樹脂組成物、及び該樹脂組成物の製造方法に関する。本発明の難燃性樹脂組成物は、優れた難燃性、特に燃焼時の滴下防止性を有し、さらに高光沢や、フローマークの低減などの成形品の外観にも優れている。
【0002】
【従来の技術】
火災時の安全性向上への要求から難燃化規制の強化が進み、樹脂の難燃化技術は重要な技術となってきており、特にコンピュータやワープロ、プリンター、複写機等のOA分野や、テレビ、ゲーム機等の一般家電分野で欠くことのできない特性の一つとなっている。
【0003】
米国アンダーライターズラボラトリーズ(Underwriters Laboratories)規制によるUL燃焼試験(UL94)において樹脂が高い難燃レベルにランク付けされるには、試験片がUL垂直燃焼試験の過程で滴下しないことが重要であり、実際の火災時における延焼を防ぐためにも、樹脂の滴下防止は重要な課題である。
【0004】
こうした要請を受けて、熱可塑性樹脂においては、燃焼時における樹脂の滴下を防ぐ目的で滴下防止剤を添加している。例えば、日本国特開平3−190958号公報に記載の樹脂組成物では、シリコン樹脂を滴下防止の目的で添加している。しかし一般には、繊維形成能を有するフッ素系樹脂を滴下防止性を向上させるために添加することが多く提案されている。繊維形成性を有するフッ素系樹脂と熱可塑性樹脂の組成物はUSP3,005,795において開示されている。
【0005】
しかしこれは、樹脂の溶融粘度を増すために、繊維形成性のフッ素系樹脂を加えたものであり、本発明の目的とする滴下防止を目指したものではない。難燃性、特に滴下防止性の向上のためにフッ素系樹脂を用いる例としては以下のものが知られている。例えば日本国特開昭59−64651号公報(対応USP4,463,130)には、ポリカーボネート樹脂とスチレン樹脂と難燃剤からなる樹脂組成物にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を添加した系が開示されている。また日本国特開昭63−286463号公報(対応USP4,786,686)にもポリカーボネートとゴム状ポリマーの組成物にフィブリル形成性を有する含フッ素ポリマーを含有せしめた組成物が開示されている。
【0006】
これら2つの先行技術には、滴下防止性の向上が効果としてあげられているが、フッ素系樹脂のフィブリルの微細化、ネットワーク構造化や分岐構造化、また、それらの達成方法についてはなんら述べられておらず、少量のフッ素系樹脂の添加で効率よく再現性のよい滴下防止性を達成する技術は達成されていない。
【0007】
また日本国特表平5−504582号公報(対応USP5,109,044)、日本国特表平4−506829号公報(対応USP5,276,078)には、ポリカーボネートとABS樹脂と難燃剤からなる樹脂組成物に繊維構造を形成し、15%またはそれ以上の熱収縮を有するPTFEを配合した樹脂組成物が開示されている。
【0008】
この樹脂組成物も、燃焼時の滴下防止性が効果としてあげられ、その効果の発現の要因として、PTFEの繊維構造と、その熱収縮性が述べられているが、やはり、フッ素系樹脂のフィブリルの微細化、ネットワーク構造化や分岐構造化、また、それらの達成方法についてはなんら述べられておらず、少量のフッ素系樹脂の添加で効率よく再現性のよい滴下防止性を達成する技術は達成されていない。
【0009】
また樹脂組成物へのフッ素系樹脂の配合方法としては次のものが知られている。例えば日本国特開昭60−13844号公報(対応USP4,810,739)や日本国特開平2−32154号公報(対応USP5,061,745)には、ポリカーボネートとABS樹脂と難燃剤からなる樹脂組成物にPTFEを配合するにあたり、PTFEの水性分散媒へのディスパージョン(固形分約60重量%)と、ABS樹脂水性乳化液との混合物を凝析して得た組成物をポリカーボネート及び難燃剤と溶融混練する手法が開示されている。この方法により、難燃性、滴下防止性が改良され、表面欠陥の解消が述べられている。
【0010】
また日本国特開平4−272957号公報(対応EP483510)には、ポリカーボネートとエラストマー状耐衝撃改良材の配合に当たり、繊維形成性のPTFEをエラストマー粒子の表面に被覆してから配合する方法が開示されている。この方法により、分散が向上し、凝集体が排除され、外観および難燃性に優れた樹脂組成物が得られることが述べられている。
【0011】
また日本国特開平8−188653号公報(対応EP718346)には、熱可塑性樹脂にPTFE等の固体添加剤を分散させるに当たり例えば熱可塑性樹脂の溶液とPTFEディスパージョンの混合物から噴霧乾燥等により溶媒を同時に除去して得られる組成物を溶融混練する手法が開示されている。この手法によって、PTFE等の分散性が向上する結果、機械的性質の維持と、外観向上が述べられている。
【0012】
しかし、以上の方法によっても、従来法に比べ繊維状のPTFE分散性が向上する結果、外観等の改善は見られるが、従来の繊維状PTFEの分散性改良にすぎず、PTFEの滴下防止性能は向上されておらず、依然その難燃、滴下防止性能が充分でないうえ、外観の改良も充分とは言えない。
又、近年OA分野においては、着色剤の配合によるカラーリングが主で塗装はあまり実施されず、成形加工後のフローマークの低減、外観の向上が求められている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、熱可塑性樹脂と難燃剤の組成物において、フッ素系樹脂を滴下防止剤として用いるにあたり、難燃性、特に滴下防止性と、成形品の外観向上にすぐれた性能を発揮するフッ素系樹脂の特定の形態を有する熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。本発明の他の課題は、上記樹脂組成物を製造する製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決のために、鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂、フッ素系樹脂及び難燃剤の特定量を包含する難燃性樹脂組成物において、該フッ素系樹脂は複数のフィブリルの形で存在し、該熱可塑性樹脂と難燃剤は混合物の形で存在しており、射出成形法によって作成される該樹脂組成物の試験片に引張り応力を加えて破断させて得られた破片の破断面について、全体にフィブリルが分散した7ミクロン×7ミクロンの領域を走査型電子顕微鏡で調べた時に、該分散フィブリルが示す分散形態が、該複数のフィブリルがその総延長の50%以上に相当する長さにわたって0.5ミクロン以下の直径を有し、且つ、該複数のフィブリルが、少なくとも2本のフィブリルが互いに交差する交差点を1つ以上有するネットワーク構造と、1本のフィブリルが少なくとも2本のフィブリルに分岐する分岐点を1つ以上有する分岐構造からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を有し、該交差点と該分岐点からなる群から選ばれる5個以上の点が該7ミクロン×7ミクロンの領域に存在する、ことを特徴とする難燃性樹脂組成物が難燃性、特に滴下防止性に優れ、また、得られる成形品の光沢などの外観にも優れることを見出した。
【0015】
更に本発明者らは、熱可塑性樹脂、フッ素系樹脂と、難燃剤の特定量を包含する樹脂組成物を製造するに当たり、フッ素系樹脂を水系ディスパージョン(粒径0.05〜0.5μm;固形分含量10〜70重量%)の形で用い、所望量の一部または全部の熱可塑性樹脂に、もし望まれるならば所望量の一部または全部の難燃剤を配合した組成物を溶融混練し、次に上記のディスパージョンを配合して共に溶融混練した後、もし、上記熱可塑性樹脂及び上記難燃剤の量が所望量より不足している場合には、所望の量になるように上記ディスパージョン以外の原材料、即ち熱可塑性樹脂及び難燃剤を、その後の少なくとも1段の付加的工程で配合して各工程で更に溶融混練すると、得られる樹脂組成物においてフッ素系樹脂の上記の特定の形態が容易に達成され、難燃性、特に滴下防止性に優れ、かつ外観にも優れた上記熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出した。
【0016】
上記の知見に基づき、本発明に至った。従って本発明の1つの目的は、含有されたフッ素系樹脂が特定の分散形態を有する、すぐれた難燃性、特に滴下防止性と、外観を示す、高難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、含有されたフッ素系樹脂が特定の分散形態を有する、すぐれた難燃性、特に滴下防止性と、外観を示す、高難燃性樹脂組成物を効果的且つ効率よく製造する方法を提供することにある。
【0018】
本発明によれば、(A)熱可塑性樹脂100重量部、(B)フッ素系樹脂0.01〜5重量部、及び(C)難燃剤0.1〜30重量部を包含する難燃性樹脂組成物において、該フッ素系樹脂(B)は複数のフィブリルの形で存在し、該熱可塑性樹脂(A)と難燃剤(C)は混合物の形で存在しており、UL−94規格に記載の垂直燃焼法による難燃性試験用に射出成形法によって作成される樹脂組成物の試験片にそれを破断させて破断面を形成するのに十分な引張り応力を加えることによって得られた破片の破断面について、全体にフィブリルが分散した7ミクロン×7ミクロンの領域を走査型電子顕微鏡で調べた時に、該分散フィブリルが示す分散形態が、該複数のフィブリルがその総延長の50%以上に相当する長さにわたって0.5ミクロン以下の直径を有し、且つ、該複数のフィブリルが、少なくとも2本のフィブリルが互いに交差する交差点を1つ以上有するネットワーク構造と、1本のフィブリルが少なくとも2本のフィブリルに分岐する分岐点を1つ以上有する分岐構造からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を有し、該交差点と該分岐点からなる群から選ばれる5個以上の点が該7ミクロン×7ミクロンの領域に存在する、ことを特徴とする難燃性樹脂組成物が提供される。
【0019】
次に、本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
【0020】
1.(A)重量平均分子量10000〜80000のポリカーボネート系樹脂、又は、重量平均分子量10000〜80000のポリカーボネート系樹脂5〜98重量部、及びゴム状重合体に該ゴム状重合体とグラフト共重合可能な少なくとも1種のビニル化合物をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体とビニル重合体とを含むゴム強化樹脂95〜2重量部からなる熱可塑性樹脂100重量部、(B)フッ素系樹脂0.01〜5重量部、及び(C)難燃剤3〜22重量部を包含する難燃性樹脂組成物において、該フッ素系樹脂(B)は複数のフィブリルの形で存在し、該熱可塑性樹脂(A)と難燃剤(C)は混合物の形で存在しており、UL−94規格に記載の垂直燃焼法による難燃性試験用に下記条件の射出成形法によって作成される樹脂組成物の1/2×5×1/16inchの試験片を引っ張り試験機を用いて速度5mm/分で引っ張って試験片を破断させた破断面について、全体にフィブリルが分散した7ミクロン×7ミクロンの領域を走査型電子顕微鏡で調べた時に、該分散フィブリルが示す分散形態が、該複数のフィブリルがその総延長の50%以上に相当する長さにわたって0.5ミクロン以下の直径を有し、且つ、該複数のフィブリルが、少なくとも2本のフィブリルが互いに交差する交差点を1つ以上有するネットワーク構造と、1本のフィブリルが少なくとも2本のフィブリルに分岐する分岐点を1つ以上有する分岐構造からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を有し、該交差点と該分岐点からなる群から選ばれる5個以上の点が該7ミクロン×7ミクロンの領域に存在する、ことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
(試験片の射出成形条件)
成型機 :MJEC−10(日本国、モダンマシナリー社製)
成形温度:ポリカーボネート系樹脂単独の場合は280℃、ポリカーボネート系樹脂5〜98重量部とゴム強化樹脂95〜2重量部からなる熱可塑性樹脂の場合は260℃
金型温度:ポリカーボネート系樹脂単独の場合は80℃、ポリカーボネート系樹脂5〜98重量部とゴム強化樹脂95〜2重量部からなる熱可塑性樹脂の場合は60℃
射出速度:500(設定値)
【0021】
2.該複数のフィブリルがその総延長の70%以上に相当する長さにわたって0.5ミクロン以下の直径を有し、該交差点と該分岐点からなる群から選ばれる10個以上の点が該7ミクロン×7ミクロンの領域に存在する前項1記載の樹脂組成物。
【0024】
3.フッ素系樹脂(B)が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である前項1または2記載の樹脂組成物。
【0025】
4.難燃剤(C)がハロゲン系難燃剤である前項1または2記載の樹脂組成物。
【0026】
5.難燃剤(C)がリン酸エステル系難燃剤である前項1または2記載の樹脂組成物。
【0027】
6.難燃剤(C)が縮合リン酸エステル系難燃剤である前項1または2記載の樹脂組成物。
【0030】
7.前項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる成型品。
【0031】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)としては、スチレン系重合体樹脂、オレフィン系重合体樹脂や、ポリアミド系樹脂、オキシメチレン系重合体樹脂、フェニレンエーテル系重合体樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂等のエンジニアリングプラスチック類、メチルメタクリレート系重合体樹脂等がある。これらの樹脂は、単独重合体及び共重合体のいずれでもよい。また、これらを単独で使用しても、2種類以上混合してもよい。
【0032】
ここで、特に熱可塑性樹脂として、スチレン系重合体樹脂とポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。スチレン系重合体樹脂は、ゴム変性スチレン系重合体樹脂またはゴム非変性スチレン系重合体樹脂である。熱可塑性樹脂として更に好ましいのは、ゴム変性スチレン系重合体樹脂またはゴム変性スチレン系重合体樹脂とポリカーボネート系樹脂とからなる樹脂組成物である。[以下、屡々、ゴム変性スチレン系重合体樹脂を、「ゴム強化樹脂(A−d)」、ポリカーボネート系樹脂を「ポリカーボネート樹脂(A−e)」と称す。]
【0033】
上記のゴム変性スチレン系重合体樹脂またはゴム非変性スチレン系重合体樹脂に使用するビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロへキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体があげられる。
【0034】
それらの中で好ましくは、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート類、シアン化ビニル単量体、マレイミド系単量体であり、さらに好ましくは、スチレン、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ブチルアクリレートである。これらのビニル化合物は単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
ゴム変性スチレン系重合体樹脂としては、ビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体及び、必要に応じ、これと共重合可能なビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、塊状けん濁重合、溶液重合、または、乳化重合する事により得られる。
【0036】
上記ゴム状重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものであれば用いることができる。具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、ならびに、スチレン−ブタジエンブロック共重合体ゴム及びスチレン−イソプレンブロック共重合体ゴム等のブロック共重合体およびそれらの水素添加物等を使用することができる。
【0037】
ゴム変性スチレン系重合体樹脂の例としては、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0038】
次に本発明で用いられるゴム強化樹脂(A−d)の好ましい組成および製造方法について述べる。
本発明で用いられるゴム強化熱可塑性樹脂(A−d)はゴム状重合体にグラフト重合可能なビニル化合物をグラフト重合させて得ることができるが、このグラフト重合過程においてビニル化合物の単独重合で生じるビニル重合体が含まれてもかまわない。また本発明においては、ビニル重合体をグラフト重合体とは別に製造して上記のグラフト重合体と配合してもよい。本発明におけるゴム強化熱可塑性樹脂(A−d)中に含まれるビニル重合体のうち、少なくとも1重量%のビニル重合体がゴム状重合体にグラフトしていることが好ましい。
【0039】
本発明に使用するゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン及びポリクロロプレン;ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などの共役ジエン系ゴム;エチレン−プロピレンゴム;ならびにアクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴムなどであるが、好ましくは共役ジエン系ゴムであるポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体およびブタジエン−アクリロニトリル共重合体である。また、これらは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0040】
ゴム強化熱可塑性樹脂(A−d)中のゴム状重合体の含有量は5〜65重量%で、好ましくは10〜60重量%である。5重量%未満では耐衝撃性が得られず、また65重量%を越えると成形加工時の流動性や成形品の光沢が低下し好ましくない。
【0041】
ゴム強化熱可塑性樹脂(A−d)中のゴム状重合体の好ましい粒子径については、海島構造(islands−in−sea configuration)を有するゴム強化樹脂(A−d)において海部を構成するビニル重合体の種類により異なるため特に限定されないが、例えばABS樹脂の場合、グラフト重合させる前の粒子で測定して粒子径が150〜600nmで、好ましくは200〜500nm、さらに好ましくは250〜450nmである。粒子径が150nmより小さいと耐衝撃性が得られず、また600nmを越えると得られる樹脂組成物から製造した成型品の光沢値が低下する。
【0042】
本発明に用いるゴム状重合体粒子にグラフト重合可能なビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;ならびにグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体があげられるが、好ましくは、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート類、シアン化ビニル単量体、マレイミド系単量体であり、さらに好ましくは、スチレン、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ブチルアクリレートである。
これらのビニル単量体は単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
ゴム強化熱可塑性樹脂(A−d)に含まれることのできるビニル重合体を構成する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヒキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体があげられるが、好ましくは、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート類、シアン化ビニル単量体、マレイミド系単量体であり、さらに好ましくは、スチレン、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ブチルアクリレートである。
これらのビニル単量体は単独あるいは2種以上を組み合わせたり、共重合して用いることができる。
【0044】
本発明におけるゴム強化熱可塑性樹脂(A−d)の製造方法としては、特に限定はされないが、乳化重合で製造されたゴム状重合体ラテックスにビニル化合物をグラフト重合させる乳化グラフト重合方式、および、上記の乳化グラフト重合で得たグラフト共重合体を含む反応混合物に、さらにビニル化合物を加え、ひき続き溶液重合や懸濁重合で更にグラフト重合を行なう、二段重合法などが例示される。これらは、連続式、バッチ式、セミバッチ式いずれも可能である。また、上記の方法であらかじめ高ゴム含量のグラフト重合体をつくり、後に塊状重合、乳化重合や懸濁重合で製造したグラフト重合時に用いたビニル化合物を主成分とする熱可塑性樹脂を配合して目的のゴム含有量にする方法もとられる。
【0045】
本発明におけるゴム強化熱可塑性樹脂(A−d)を製造する方法としては、ゴム状重合体を乳化重合で製造した後、引き続いてビニル化合物を開始剤、分子量調節剤等とともに連続的に添加してゆくことによってグラフトする乳化グラフト重合法が好ましい。
また、重合時のpHにも特に限定はないが、中性付近(pH7〜9)がグラフト反応の面から好ましい。
【0046】
乳化重合に使用する乳化剤としては、一般に乳化重合に用いられる乳化剤を用いることができ、そのような乳化剤としては、例えば、ロジン酸塩、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性乳化剤があげられる。
以上の乳化剤以外にも、分子内に二重結合を有するラジカル重合可能な乳化剤を用いることも出来る。
【0047】
分子内に二重結合を有するラジカル重合可能な乳化剤(以下、重合性乳化剤と称す)とは、化合物中に親水基および疎水基を有し、気−液、液−液、固−液界面張力を低下させる能力のある化合物のうち、化合物中に二重結合を1つ以上有し、特に、共役ジエン系ゴム、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および/または(メタ)アクリル酸エステル化合物とラジカル共重合可能なものを言う。重合性乳化剤の親水基はアニオン性、ノニオン性、カチオン性のいずれでも良いが、好ましくはアニオン性、さらに好ましくはノニオン性、アニオン性両方の性質を有するものである。重合性乳化剤の例としては、下記化1〜化9で表わされるのものがあげられるが、これらにより限定されるものではない。
まず下記化1で表される重合性乳化剤があげられる。
【0048】
【化1】
[式中、X6は(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基または1−プロペニル基を示す。Y6は水素、または−SO3M6(M6は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムを示す。)で表される硫酸エステル塩形成基、または−CH2COOM6(M6は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムを示す。)で表されるカルボン酸塩、または下記化2で表されるリン酸モノエステル塩形成基を示す。R6'は炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基もしくはアラルキル基、R6''は水素または炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基もしくはアラルキル基、R6'''は水素またはプロペニル基、A6は炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、mは1〜200の整数を示す。]
【0049】
【化2】
(式中、各M6'は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムであり、各M6'は同一のものでも異なるものでもよい。)
【0050】
他の例として、下記化3で表される(メタ)アリルグリセリルエーテル誘導体および(メタ)アクリルグリセリルエステル誘導体があげられる。
【0051】
【化3】
[式中、X7は、(メタ)アリル基または(メタ)アクリロイル基を示す。Y7は、水素、または−SO3M7(M7は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムを示す。)で表される硫酸エステル塩形成基、または−CH2COOM7'(M7'は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属を示す。)で表されるカルボン酸塩、または上記化2で表されるリン酸モノエステル塩形成基、または、下記化4で表される基を示す。Z7は、炭素数8〜30のアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキルアリール基、置換アルキルアリール基、アラルキルアリール基、置換アラルキルアリール基、アシル基または置換アシル基を示す。A7は、炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、mは0〜100、nは0〜50の整数を示す。]
【0052】
【化4】
(式中、M6''は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムまたは炭素数2〜4のアルキレンオキサイド単位を有してもよい炭素数8〜30のアルキル基であり、M6'''は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムである。)
又、他の例として、下記化5で表されるコハク酸誘導体があげられる。
【0053】
【化5】
[式中、X8は、(メタ)アリル基または(メタ)アクリロイル基を示す。B8、B8'は、次に表されるY8またはZ8を示し、B8、B8'は、異なるものである。Y8は、M8または−SO3M8(M8は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムを示す。)で表される硫酸エステル塩形成基を示す。Z8は、炭素数8〜30のアルキル基またはアルケニル基を示す。A8は、炭素数2〜4のアルキレン基、置換基を有するアルキレン基であり、m、nは0〜50の整数である。]
更に、他の例として、下記化6で表される化合物があげられる。
【0054】
【化6】
[式中、X9は、(メタ)アリル基または(メタ)アクリロイル基を示す。Y9は、水素、または−SO3M9(M9は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムを示す。)で表される硫酸エステル塩形成基、または−CH2COOM9(M9は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)で表されるカルボン酸塩を示す。各R9は、水素、または炭素数1〜25のアルキル基で、それぞれ同一であっても異なってもよく、各R9'は、炭素数1〜25のアルキル基、ベンジル基、またはスチリル基を示し、それぞれ同一であっても異なってもよく、pは0〜2の整数を示す。A9は、炭素数2〜4のアルキレン基、置換基を有するアルキレン基であり、m、nは0〜50の整数を示す。]
更に、他の例として、下記化7で表される(メタ)アリルエーテル誘導体および(メタ)アクリルエステル誘導体があげられる。
【0055】
【化7】
[式中、X27は,(メタ)アリル基または(メタ)アクリロイル基を示す。Y27は、水素、またはメチル基、または−SO3M27(M27は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムを示す。)で表される硫酸エステル塩形成基、または−CH2COOM27(M27は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムを示す。)で表されるカルボン酸塩、または化2で表されるリン酸モノエステル塩形成基を示す。Z27は、炭素数8〜30のアルキル基を示す。A27は、炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、mは0〜20、nは0〜50の整数を示す。]
更に、他の例として、下記化8で表されるジオール化合物があげられる。
【0056】
【化8】
(式中、A30は炭素数2〜4のアルキレン基であり、R30は炭素数8〜24の炭化水素基であり、R30'は水素またはメチル基であり、mおよびnはm+nが0〜100の間の値となるようなそれぞれ0〜100の数であり、M30は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムである。)
更に、他の例として、下記化9で表せる化合物があげられる。
【0057】
【化9】
[式中、X32は、(メタ)アリル基、(メタ)アリロキシ基または(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基または下記化10を示す。Y32は水素、または−SO3M32(M32は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムを示す。)で表される硫酸エステル塩形成基、または−CH2COOM32(M32は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムを示す。)で表されるカルボン酸塩、または化2で表されるリン酸モノエステル塩形成基、または、化4で表されるスルホコハク酸モノエステル塩形成基を示す。Z32は炭素数6〜30の置換基を有してもよいアルキレン基を示す。A32は炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、n、mは0〜50の整数を示す。]
【0058】
【化10】
(式中R32'、R32''は水素またはメチル基を表す。)
【0059】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂(A−e)は、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンからの、均一系での反応または不均一系での2相界面反応による方法、またはやはり芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの反応により溶融エステル交換法の何れかで製造される芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることが出来る。
【0060】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ビスフェノール類が好ましく、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAと記す)が好ましい。また、ビスフェノールAの一部または、全部を他の2価フェノール化合物で置換してもよい。ビスフェノールA以外の芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えば、ハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどの化合物である。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物のホモポリマー、または、2種以上のコポリマーあるいは、これらのブレンド品であってもよい。
【0061】
溶融エステル交換法に用いる炭酸ジエステルとしては、ジアリールカーボネート類、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0062】
芳香族ポリカーボネート類は本発明の目的を損なわない範囲で少量の、3ないしは3以上の多官能性化合物を加えることにより分岐を導入することが出来る。多官能性化合物の例としては、多価フェノールを挙げることができる。
【0063】
本発明におけるポリカーボネート樹脂(A−e)は、重量平均分子量が5000〜300000の範囲が好ましい。上記範囲より重量平均分子量が小さい場合は、機械的強度が低く好ましくはなく、上記範囲より大きい場合は流動性が低下し好ましくはない。更に好ましくは、重量平均分子量が7000〜100000の範囲であり、より好ましくは10000〜80000の範囲にある。
【0064】
ポリマーの末端分子構造は特に限定はされないが、ヒドロキシル基、アリールカーボネート基、アルキルカーボネート基から選ばれた一種以上の末端基とすることが出来る。ヒドロキシル基は、用いた芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される末端であり、その割合は、実質的に含まないものから全末端の50%あるものまで用いることが出来る。
【0065】
熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート系樹脂(A−e)と、ゴム強化樹脂(A−d)からなる樹脂組成物を用いることが特に好ましい。その好ましい配合組成は、ポリカーボネート系樹脂(A−e)5〜98重量部に対しゴム強化樹脂(A−d)95〜2重量部であり、さらに好ましくは、ポリカーボネート系樹脂(A−e)20〜90重量部に対しゴム強化樹脂(A−d)80〜10重量部であり、更に好ましくはポリカーボネート系樹脂(A−e)40〜85重量部に対しゴム強化樹脂(A−d)60〜15重量部である。
【0066】
本発明において用いられるフッ素系樹脂(B)は、樹脂組成物中において主に0.5ミクロン以下の太さのフィブリル状の形をなし、フィブリルが、ネットワーク構造及び/又は分岐状で存在するフッ素系樹脂は、一般に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やフッ化エチレンプロピレン(FEP)樹脂等のパーフルオロアルカン樹脂、及びパーフルオロアルコキシ(PFA)樹脂から選ばれ、特に、PTFEが好ましい。
【0067】
フッ素系樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。0.01部未満の場合、滴下防止の効果が十分でなく、5重量部を越える場合、樹脂の機械的強度および加工流動性が低下する。より好ましくは0.02〜2重量部で、特に好ましくは0.1〜1重量部である。
【0068】
本発明において、フィブリル状の形のフッ素系樹脂(B)の樹脂組成物中の分散形態は具体的には以下の方法で観察される。すなわち、樹脂組成物のUL94垂直燃焼試験用テストピースを射出成形で成形し、それから引張り試験で得られる引張り破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、複数のフッ素系樹脂フィブリルが上に記載した分散形態で存在することを確認する。本発明において、SEM観察における上記以外の条件は特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート系樹脂(A−e)と、ゴム強化樹脂(A−d)からなる樹脂組成物を用いた場合には、実際には下記の条件でSEM観察を行なう。
【0069】
(射出成形)
成型機 :M−JEC10(日本国、モダンマシナリー社製)
成形温度 :260℃
金型温度 :60℃
射出速度 :500(設定値)
テストピース:1/2×5×1/16inch
(SEM観察用サンプルの作成)
引っ張り試験器(オートグラフ5000D、日本国、島津製作所製)を用いて、速度5mm/分で破断するまで引っ張る。
【0070】
(SEM観察)
前処理 :サンプル破断面に、金の厚さが200オングストローム以上になるように金蒸着を行う。(蒸着装置:日本国、日本電子社製 JFC 1500 QUICK AUTO COATER)
観察装置:JSM−5300(日本国、日本電子社製)
加速電圧:15kV
【0071】
以下に、本発明においてフッ素系樹脂分散フィブリルが示すネットワーク構造及び/又は分岐構造を有する分散形態について、図1、図3〜9に参照して説明する。尚、図1はフッ素系樹脂フィブリルの分散形態の1例を示す模式図であり、図3〜9は分散形態の種々の例を示すSEM写真である。フッ素系樹脂は、図1では実線で示した部分であり、図3〜9では白く見える部分である。
【0072】
上記のように、本発明においては、UL−94規格に記載の垂直燃焼法による難燃性試験用に射出成形法によって作成される樹脂組成物の試験片にそれを破断させて破断面を形成するのに十分な引張り応力を加えることによって得られた破片の破断面について、全体にフィブリルが分散した7ミクロン×7ミクロンの領域を走査型電子顕微鏡で調べた時に、該分散フィブリルが示す分散形態が、該複数のフィブリルがその総延長の50%以上に相当する長さにわたって0.5ミクロン以下の直径を有し、且つ、該複数のフィブリルが、少なくとも2本のフィブリルが互いに交差する交差点を1つ以上有するネットワーク構造と、1本のフィブリルが少なくとも2本のフィブリルに分岐する分岐点を1つ以上有する分岐構造からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を有し、該交差点と該分岐点からなる群から選ばれる5個以上の点が該7ミクロン×7ミクロンの領域に存在する、ことが必要である。
【0073】
フッ素系樹脂のフィブリルは、フィブリルがその総延長の50%以上に相当する長さにわたって0.5ミクロン以下の直径を有する必要がある。図1の符号cで示されるような0.5ミクロンを越える太さのフィブリルの存在は可能であるが、例えば図6のSEM写真に見られるように、該7ミクロン×7ミクロンの領域に存在するフィブリルの総延長の50%以上に相当する長さにわたって0.5ミクロン以下の直径を有する必要があり、好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上である。0.5ミクロン以下の直径を有するフィブリルの長さがフィブリルの総延長に占める割合が50%未満であると、優れた滴下防止効果を得られない。
【0074】
また、本発明にいうネットワーク構造は、図1の模式図に符号aで示した部分のように、2本以上のフィブリルが互いに交差する交差点を1つ以上有する。また、本発明にいう分岐構造は、図1の模式図に符号bで示した部分のように、1本のフィブリルが少なくとも2本のフィブリルに分岐する分岐点を1つ以上有する。ネットワーク構造と分岐構造は、ともに3次元の広がりを持つ。この交差点と分岐点からなる群から選ばれる5個以上の点が該7ミクロン×7ミクロンの領域に存在することが必要である。この交差点と分岐点からなる群から選ばれる点が5個未満であると、優れた滴下防止効果を得られない。
【0075】
SEMで観察された該7ミクロン×7ミクロンの領域にフッ素系樹脂分散フィブリルが上記のような特定の分散形態を示すことは、樹脂組成物中におけるフッ素系樹脂分散フィブリルの密な存在を反映している。この様な密なフッ素系樹脂分散フィブリルの存在により、燃焼時のフィブリルの3次元的な収縮が生起し、効果的な滴下防止が達成されると推定される。
【0076】
フッ素系樹脂は、例えば「ふっ素樹脂ハンドブック」(日本国、日刊工業新聞社 1990年刊)に記載のように、懸濁重合または乳化重合で製造される。本発明の目的のためには、乳化重合で合成したフッ素系樹脂が好ましく、水を溶媒として用いる乳化重合でフッ素系樹脂ラテックスを得て、得られたラテックスを凝析・乾燥したファインパウダーや、上記のフッ素系樹脂ラテックスを濃縮・安定化した水性ディスパージョンが用いられる。
【0077】
フッ素系樹脂水性ディスパージョンは市販されている。市販のフッ素系樹脂水性ディスパージョンのうち、PTFEディスパージョンの例としては、日本国の三井・デュポンフロロケミカル社から市販される“テフロン30−J”(固形分濃度60重量%、粒子径0.23ミクロン、界面活性剤濃度がPTFE重量に対して6重量%、pH値9〜10)、や日本国のダイキン工業社から市販される“ポリフロンTFEディスパージョンD−1”(固形分濃度約60重量%、粒子径0.20〜0.40ミクロン、pH値9〜10)などを挙げることができる。
【0078】
本発明においては、フッ素系樹脂水性ディスパージョンの使用が特に好ましい。フッ素系樹脂水性ディスパージョンの好ましい固形分濃度は、10〜70重量%である。通常の市販のフッ素系樹脂水性ディスパージョンは、固形分濃度が60重量%付近で供給されることが多いが、必要に応じて水で希釈するか、または濃縮して所望の濃度に調整して用いることが出来る。
【0079】
フッ素系樹脂は、樹脂組成物中で、熱可塑性樹脂や難燃剤との溶融混練時にネットワーク構造及び/又は分岐構造を形成するために、繊維形成能を有するものを用いるが、このようなフッ素系樹脂については、USP3,005,795号、3,671,487号、4,463,130号を参照できる。
【0080】
本発明における難燃剤(C)とは、いわゆる一般の難燃剤であり、リン系化合物やハロゲン系有機化合物の他、メラミン等の窒素含有有機化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の無機化合物を用いることができる。また、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物、赤リン、ホスフィン、次亜リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、無水リン酸などの無機系リン化合物、カーボンファイバー、グラスファイバーなどの無機繊維、膨張黒鉛、シリカ、シリカ系ガラス溶融物などが用いられるが、好ましくはリン系化合物、またはハロゲン系有機化合物および、ハロゲン系有機化合物と酸化アンチモンの併用である。又、リン酸エステル系難燃剤及び縮合リン酸エステル系難燃剤を挙げることができる。
【0081】
ハロゲン系有機化合物としては、一般に難燃剤として用いられるハロゲン系有機化合物および含ハロゲンリン酸エステルを指す。例えば、ハロゲン系有機化合物としては、ヘキサクロロペンタジエン、ヘキサブロモジフェニル、オクタブロモジフェニルオキシド、トリブロモフェノキシメタン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルオキシド、オクタブロモジフェニルオキシド、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモブテン、ヘキサブロモシクロドデカン等があるが好ましくは、下記化11の構造を有するハロゲン系有機化合物であり、特に好ましいのは下記化14のハロゲン系有機化合物である。
【0082】
【化11】
n=0または自然数、Xは独立に塩素、または臭素を示し、i、j、k、pはそれぞれ1〜4の整数であり、R1およびR2はそれぞれ独立に水素、メチル基、下記化12、
【0083】
【化12】
で表わせる基、フェニル基または、下記化13(ただし、mは0、1、2または3を示す)
【0084】
【化13】
で表わせる基。
【0085】
【化14】
n=0または自然数、R3およびR4は各々、独立して、下記化15
【0086】
【化15】
で表わせる基、フェニル基または、下記化16
【0087】
【化16】
で表わせる基。
【0088】
一方、含ハロゲンリン酸エステルとしては、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチルホスフェート)およびこれらの縮合リン酸エステル等があるが、好ましくは、トリス(トリブロモネオペンチルホスフェート)、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェートである。
これらのハロゲン系有機化合物は1種類でも、2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0089】
リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物がある。
【0090】
縮合リン酸エステル系難燃剤としては、下記一般式化17で表わされるものを用いることができる。
【0091】
【化17】
(式中、nは1〜10の整数であり、Ar1〜Ar4は各々独立に、フェニル基、トリル基またはキシリル基である。また、nが2以上の場合、複数あるAr4は各々同一でも異なってもよい。また、R5は下記化18のA1〜A4から選ばれる基である。)
【0092】
【化18】
上記化17で表わされる縮合リン酸エステル系難燃剤のなかで好ましいものは、下記の化19〜化22で表される縮合リン酸エステル化合物であり、これらのリン酸エステル化合物は難燃化効果、および、耐熱性が特に優れる。
【0093】
【化19】
【0094】
【化20】
【0095】
【化21】
【0096】
【化22】
(式中、Ar5〜Ar7は各々、独立して、フェニル基、トリル基、または、2,6−キシリル基以外のキシリル基であり、Rは、式(5)のR5で定義したA4と同じである。)
これらは単独または2種類以上を併用して用いることができる。
【0097】
難燃剤の配合量は望まれる難燃性のレベルに応じて決められるが、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜30重量部であることが必要である。0.1重量部未満では望まれる難燃効果が発揮されない。30重量部を超えると樹脂の機械的強度を低下させる。好ましくは1〜25重量部の範囲であり、特に好ましい範囲としては3〜22重量部である。難燃剤としてハロゲン系化合物を用いる場合、難燃効果を高める為に難燃助剤を用いることが出来る。
【0098】
難燃助剤として好ましくは、元素周期律表におけるV族に属する元素を含む化合物で、具体的には、窒素含有化合物、リン含有化合物、酸化アンチモン、酸化ビスマスである。また、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物も効果的である。この中でも特に好ましくは、酸化アンチモンであり、具体的には三酸化アンチモン、五酸化アンチモンがあげられる。これらの難燃助剤は樹脂中への分散を改善する目的および/または樹脂の熱的安定性を改善する目的で表面処理を施されているものを用いてもよい。
【0099】
難燃助剤の添加量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.5〜20重量部が好ましい。0.5重量部未満の場合、難燃助剤の効果が十分でなく、20重量部を越える場合、樹脂の機械的強度および加工流動性が低下する。より好ましくは1〜15重量部で、特に好ましくは1〜10重量部である。
【0100】
本発明において望ましいフッ素系樹脂フィブリルの分散形態を有する樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、フッ素系樹脂としてファインパウダーを用いる場合、−20℃以上にならない状態で粉砕したフッ素系樹脂と、冷却した原料樹脂を10℃以下の温度でブレンドし、溶融混練することでも達成出来る。しかし、本発明の樹脂組成物を構成する成分の中で、ファインパウダー、ディスパージョン等のフッ素系樹脂を除く、所望量の熱可塑性樹脂の一部又は全部と、もし望まれるならば、所望量の難燃剤の一部又は全部を溶融混練し、その後、フッ素系樹脂を配合して混練する製造方法をとるのが好ましい。
【0101】
最も好ましくは、フッ素系樹脂としてディスパージョンを用い、溶融した熱可塑性樹脂に配合するのが好ましい。この方法により、溶融樹脂中にラテックス粒子が均一に分散され、凝集等が抑えられ、樹脂組成物中での剪断により、均一な繊維化が促進され、フッ素系樹脂のネットワーク構造及び/または分岐構造が形成され易くなると考えられる。
【0102】
以下に、本発明の樹脂組成物の好ましい製造方法について、さらに詳細に説明する。
好ましい製造方法としては、例えば、目的とする難燃性樹脂組成物が熱可塑性樹脂100重量部、フッ素系樹脂0.01〜5重量部、及び難燃剤0.1〜30重量部を包含する樹脂組成物であるなら、まず、10〜100重量部の熱可塑性樹脂(A)と、0〜30重量部の難燃剤(C)を溶融混練して溶融混練物を形成し、この溶融混練物に0.01〜5重量部のフッ素系樹脂(B)を加えて共に溶融混練してフッ素系樹脂含有熱可塑性樹脂組成物を形成した後、もし、熱可塑性樹脂(A)/難燃剤(C)の重量比が100/0.1〜30を満足していない場合には、この比になるように成分(A)及び/又は成分(C)を該フッ素系樹脂含有熱可塑性樹脂組成物に加えて更に溶融混練する方法が挙げられる。
【0103】
即ち、本発明においては、
熱可塑性樹脂100重量部、フッ素系樹脂0.01〜5重量部、及び難燃剤0.1〜30重量部を包含する難燃性樹脂組成物の製造方法において、
(1)10〜100重量部の熱可塑性樹脂(A)と0〜30重量部の難燃剤(C)を溶融混練して溶融混練物を形成し、
(2)該溶融混練物に0.01〜5重量部のフッ素系樹脂(B)を加えて共に溶融混練してフッ素系樹脂含有熱可塑性樹脂組成物を形成する
ことを包含し、その際該フッ素系樹脂(B)は水性分散媒に該フッ素系樹脂が分散した水性ディスパージョンの形で用い、該水性ディスパージョンは、フッ素系樹脂粒径が0.05〜0.5ミクロンで、固形分濃度が10〜70重量%であり、
工程(1)で溶融混練する成分(A)と成分(C)が成分(A)/成分(C)重量比が100/0.1〜30の範囲の所望比を満足していない場合は、成分(A)と成分(C)から選ばれる少なくとも1種の成分を、工程(2)で形成されるフッ素系樹脂含有熱可塑性樹脂組成物に成分(A)/成分(C)重量比100/0.1〜30の所望比を満足するのに必要な量、その後の少なくとも1段の付加的工程で加えて各工程で更に溶融混練する、
ことを特徴とする難燃性樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0104】
溶融混練は従来から公知の方法で行うことが出来る。例えば、フッ素系樹脂以外の成分をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ターンブルミキサー、リボンブレンダー等で均一に混合した後、単軸押出し機、二軸押出し機、バンバリーミキサー等で、溶融混練し、その溶融した樹脂組成物中にフッ素系樹脂のディスパージョンを配合し、さらに溶融混練を行うことにより本発明の樹脂組成物を製造できる。
【0105】
また、本発明の効果が得られる限り、公知の安定剤(例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー等の添加剤を加えることは任意であり、なかでもリン系安定剤(リン系酸化防止剤や熱安定剤など)の併用は好ましく、その配合順序も、フッ素系樹脂配合の前後いずれでも良い。
【0106】
本発明の樹脂組成物に所望により用いることの出来る充填剤としては、ガラスファイバー、ガラスフレーク、カーボンファイバー、タルク、マイカ等を挙げることができる。これらの種類は、必要とする機械的強度、剛性、成形加工性、耐熱性に応じて決めればよい。配合量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0〜50重量部の範囲である。
【0107】
具体的にフッ素系樹脂のディスパージョンの配合方法を例示すると、溶融混練に押出し機を使用する場合、押出し機の途中、樹脂の溶融が完了した後段に液添用のノズルを設け、ポンプにより、上記のノズルからディスパージョンを注入することが出来る。ポンプとしてはチューブポンプ、ギヤポンプ、プランジャーポンプ等を用いることが出来る。送液中のフッ素系樹脂の凝集を防ぐためにディスパージョンは冷却するのが好ましく、またポンプもチューブポンプが好ましい。
【0108】
フッ素系樹脂のディスパージョンのこの他の好ましい配合方法としては、図2に示すように、押出し機の途中にベント口等の開口部(3)を設け、そこへ冷却用のジャケットを備えた配管(2)を設置し、この配管よりディスパージョンを滴下する方法がある。この方法を用いると、フッ素系樹脂のディスパージョンに圧力をかける必要がなく、ポンプ部分(P)でのフッ素系樹脂のディスパージョンの凝集が防止でき、さらに、滴下部分の配管が押出し機に接触していないため、冷却ジャケットで冷却されたディスパージョンの昇温も少なく、フッ素系樹脂の凝集が抑制でき好ましい。さらにベント口(3)から滴下と共にディスパージョンの水性分散媒が蒸発により効率的に除去されるので好ましい。ポンプとしてはチューブポンプ、ギヤポンプ、プランジャーポンプ等を用いることが出来、チューブポンプが好ましい。
【0109】
即ち、本発明の更に他の態様によれば、本発明の高難燃性樹脂組成物の上記した製造方法において、途中に開口部を有する押出し機を用い、該開口部より該フッ素系樹脂(B)水性ディスパージョンを滴下して、上記の工程(1)で形成された溶融混練物と共に溶融混練しながら、該フッ素系樹脂(B)水性ディスパージョンの水性分散媒を該開口部から蒸発させる方法が提供される。
【0110】
図2は、本発明の上記の態様により開口部を途中に有する押出し機を用いて本発明の難燃性樹脂組成物を製造する方法を説明するための概略図であるが、本発明の製造方法はこの図によって制限されるものではない。尚、例えば、図2に示す押出し機のホッパー1と(フッ素系樹脂ディスパージョンを供給するための)開口部3の間に別の少なくとも1つの更なる開口部(図示せず)を設けて、ホッパー1とその更なる開口部から熱可塑性樹脂の少なくとも一部と難燃剤の少なくとも一部をそれぞれ供給することもできる。また、図2の開口部3の(押出し方向に対して)上流で熱可塑性樹脂及び/又は難燃剤の供給を完了しない場合は、開口部3の後段(下流)に別の少なくとも1つの更なる開口部(図示せず)を設けて、その更なる開口部から残りの成分を供給することができる。
【0111】
このようにして得られた熱可塑性樹脂組成物からなる成形品の成型方法は特に限定されないが、押し出し成形、圧縮成型、射出成形、ガスアシスト成形等があげられ、中でも射出成形が好ましい。
成形品の例としては、ノート型パソコン、コピー機、プリンターのハウジング等のOA機器筐体、OA機器シャーシ、携帯電話のハウジング等が挙げられる。
【0112】
【発明の実施の形態】
以下、実施例及び比較例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0113】
本発明の実施例及び比較例における測定および評価方法は以下の通りである。
(1)重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。
装置:日本国、東ソー HLC−8020
溶媒:THF
カラム:日本国、東ソー TSKゲル(T5000HXL+T4000HXL)
【0114】
(2)熱可塑性樹脂組成物中のフッ素系樹脂の形態観察明細書に記載の方法に準じて観察した。
(試験片の射出成形)
成型機 :MJEC−10(日本国、モダンマシナリー社製)
成形温度 :260℃
金型温度 :60℃
射出速度 :500(設定値)
テストピース:1/2×5×1/16inch
【0115】
但し成形温度と金型温度は、熱可塑性樹脂として、後述の(A−1)を単独で用いる場合は、それぞれ280℃、80℃に変更して実施した。同様に、熱可塑性樹脂として、後述の(A−2)を単独で用いる場合は、それぞれ290℃、80℃に変更して実施した。また熱可塑性樹脂として、後述の(A−6)を単独で用いる場合は、それぞれ230℃、50℃に変更して実施した。
【0116】
(SEM観察用サンプルの作成)
引っ張り試験機(オートグラフ5000D、日本国、島津製作所製)を用いて、上記の射出成形で得た試験片を速度5mm/分で破断するまで引っ張る。
【0117】
(SEM観察)
前処理 :サンプル破断面に、金の厚さが200オングストローム以上になるように金蒸着を行う。(蒸着装置:日本国、日本電子社製 JFC 1500QUICKAUTOCOATER)
観察装置:JSM−5300(日本国、日本電子社製)
加速電圧:15kV
全体にフィブリルが分散した7ミクロン×7ミクロンの領域をSEMで調べて、分散フィブリルが示す分散形態における、0.5ミクロン以下の直径を有するフィブリルの長さがフィブリルの総延長に占める割合(%)と、フィブリルの交差点と分岐点の数を測定した。
【0118】
(3)難燃性
UL94規格20MM垂直燃焼試験(厚み1/16インチ)に基づく試験により、評価した。この試験においては、V−0又はV−1と評価されているときは火種の滴下がなく、火種の落下が認められたときはV−2と評価される。
【0119】
(4)光沢度
それぞれの樹脂組成物に適合した温度で射出成形した10cmx10cmx2mmの平板を射出成形し、ASTM−D−523−62Tに基づき光沢計(Glossmeter)により、入射角、反射角60度として表面光沢を測定した。(光沢計による測定で得られた値が高いほど、表面が滑らかで光沢度が高い。)
【0120】
(5)フローマーク
それぞれの樹脂組成物に適合した温度で10cmx10cmx2mmの平板を射出成形し、その表面を目視によりフローマークまたはシルバーの有無を調べ、以下のように判定した。
○:フローマーク、シルバーの発生なし
×:フローマークまたはシルバーの発生あり
【0121】
以下に実施例に用いる配合剤を説明する。
(ポリカーボネート樹脂A−1)
重量平均分子量22,500であるビスフェノールA
に由来する芳香族ポリカーボネート樹脂
【0122】
(ポリフェニレンエーテル樹脂A−2)
米国特許4,788,277号明細書(日本国特願昭62−77570号に対応)に記載されている方法に従って、ジブチルアミンの存在下に、2,6−キシレノールを酸化カップリング重合した、還元粘度がηsp/c=0.42dl/gであって、280℃で140sec-1の剪断速度で測定した溶融粘度が49,000poiseである、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(以下PPEと略す)樹脂75重量部と、重量平均分子量210,000の一般ポリスチレン樹脂25重量部をあらかじめ溶融混練した、変性PPE樹脂。
【0123】
(ゴム強化樹脂A−3)
ブタジエンゴムラテックス(透過型電子顕微鏡より求めたラテックスの重量平均粒子径は0.28ミクロン)40重量部、イオン交換水100重量部、ロジン酸カリウム0.3重量部を10リットル反応器に入れ、気相部を窒素置換した後、この初期溶液を70℃に昇温した。重合前のpHの調整は炭酸ガスを反応器内でバブルして約7に調整した。次に以下に示す組成からなる水溶液1と単量体混合液3、さらに乳化剤としてロジン酸カリウムを含んだ水溶液2を反応器に5時間にわたり連続的に添加した。添加終了後、1時間温度を保ち、反応を完結させた。
【0124】
水溶液1の組成は次の通りである。
硫酸第一鉄0.005重量部、ソジウムフォルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.1重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム(EDTA)0.04重量部、イオン交換水50重量部。
水溶液2の組成は次の通りである。
ロジン酸カリウム1.0重量部、イオン交換水20重量部。
単量体混合液3の組成は次の通りである。
アクリロニトリル18重量部、スチレン42重量部、t−ドデシルメルカプタン(t−DM)0.6重量部、クメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.1重量部。
【0125】
次に作成したグラフト重合体ラテックスに酸化防止剤を添加した後、塩析し、水洗浄、脱水した後加熱乾燥し、粉末を得た。
さらに、アクリロニトリル成分比27重量%で、重量平均分子量が120,000のAS樹脂(アクリロニトリル−スチレン樹脂)と、上で得られた粉末とを混合し、以下の組成のABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂を得た。
【0126】
アクリロニトリル成分 24重量%
ブタジエン成分 10重量%
スチレン成分 66重量%
(ゴム強化樹脂A−4)
ゴム強化樹脂A−3と同様にして、以下の組成のABS樹脂を得た。
アクリロニトリル成分 18重量%
ブタジエン成分 33重量%
スチレン成分 49重量%
(ゴム強化樹脂A−5)
アクリロニトリル成分 18重量%
ブタジエン成分 20重量%
スチレン成分 50重量%
N−フェニルマレイミド成分 12重量%
からなるゴム強化樹脂
(ゴム強化樹脂A−6)
ブタジエン成分 10重量%
スチレン成分 90重量%
からなるHIPS樹脂(ハイインパクトポリスチレン樹脂)
【0127】
(フッ素系樹脂PTFEのディスパージョン B−1)
日本国、ダイキン工業社製 ポリフロンTFEディスパージョン D−1(固形分濃度約60重量%、粒子径0.20〜0.40ミクロン、pH値9〜10)
(フッ素系樹脂PTFEのディスパージョン B−2)
日本国、三井デュポンフロロケミカル社製、テフロン30−J(固形分濃度60重量%、粒子径0.23ミクロン、界面活性剤濃度はPTFE重量に対して6重量%、pH値9〜10)
【0128】
(フッ素系樹脂PTFEファインパウダー B−3)
日本国、ダイキン工業社製、ポリフロンF−201L
(フッ素系樹脂PTFEファインパウダー B−4)
日本国、三井デュポンフロロケミカル社製、テフロン62−J
【0129】
(難燃剤C−1)
明細書記載の式(2)で表され、
n=0又は自然数、RとR’は式(4)に記載の基で表される化合物であって、軟化温度が105℃である難燃剤。
(難燃剤C−2)
トリフェニルホスフェート
【0130】
(難燃剤C−3)
前記化20と化21の混合物を主成分とする縮合リン酸エステル系難燃剤であり、以下の方法で合成した。
ビスフェノールA 114g(0.5モル)、オキシ塩化リン 192g(1.25モル)、及び無水塩化マグネシウム 1.4g(0.015モル)を攪拌機・還流管付きの500ml四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下70〜140℃にて4時間反応させた。反応終了後、反応温度を維持しつつ、フラスコを真空ポンプにて200mmHg以下に減圧し、未反応のオキシ塩化リンをトラップにて回収した。ついでフラスコを室温まで冷却し、2,6−キシレノール 122g(1.0モル)、及び無水塩化アルミニウム 2.0g(0.015モル)を加え、100〜150℃に加熱して4時間反応させた。
【0131】
ついでフラスコを室温まで冷却し、フェノール 94g(1.0モル)を加え、100〜150℃に加熱して4時間保持し、反応を完結させた。そのままの温度で1mmHgまで減圧し、未反応のフェノール類を溜去した。反応時に発生する塩化水素ガスは水酸化ナトリウム水溶液にて捕集し、中和滴定によりその発生量を測定して反応の進行をモニターした。生成した粗リン酸エステルを蒸留水で洗浄した後、濾紙[日本国、アドバンテック東洋(株)社製#131]により固形分を除去した。真空乾燥して淡黄色透明な精製物を得た。
HPLC分析(日本国、島津製LC−10A、カラム:日本国、東ソーTSKgel ODS−80T、溶媒:メタノール/水 90/10)の結果、化20と化21成分の合計の純度は75重量%であった。
【0132】
【実施例】
実施例1〜7、比較例7
以上のように調製したフッ素系樹脂を除く樹脂を冷却(3℃)し、ドライアイスとともに粉砕(サンプルミル、SK−M10型、日本国、協立理工社製)したフッ素系樹脂(B−3、B−4)を、表1、2に掲げる組成(単位は重量部)でブレンドし、2軸押出機(ZSK−25、ドイツ国、Werner&Pfleiderer社製)で混練造粒し、ペレットを得て、評価を行った。押出し機の設定温度は、実施例1〜3、比較例7は290℃、実施例4、6は250℃、実施例5、7は220℃にして実施した。樹脂組成物中のフッ素樹脂の分散形態の観察結果と、難燃性の評価結果を表1、2に示す。
【0133】
比較例1〜6、8
以上のように調製した樹脂を表2に掲げる組成(単位は重量部)で一括ブレンド(室温、25℃)し、2軸押出機(ZSK−25)で混練造粒し、ペレットを得て、評価を行った。押出し機の設定温度は比較例1と比較例6、8は290℃、比較例3、5は250℃、比較例2、4は220℃にして実施した。樹脂組成物中のフッ素樹脂の分散形態の観察結果と、難燃性の評価結果を表2に示す。
比較例6は押出しが困難であった。
【0134】
実施例8〜15、比較例17
表3、4の組成(単位は重量部)に従い、下記のように実施した。
フッ素系樹脂と難燃剤を除いて各原料をブレンドし、2軸押出機(ZSK−25)で混練し、押出機の途中から冷却(3℃)したフッ素系樹脂のディスパージョンを図2の様な装置で溶融した原料に滴下混練し、その後段で難燃剤を溶融した樹脂中にポンプで圧入し造粒し、ペレットを得て、評価を行った。押出し機の設定温度は、実施例8〜11と比較例17は290℃、実施例12〜15は250℃にして実施した。樹脂組成物中のフッ素樹脂の分散形態の観察結果と、難燃性、光沢、フローマークの評価結果を表3、4に示す。
比較例17は、押出しが困難であった。
【0135】
実施例16〜18
表3の組成(単位は重量部)に従い、下記のように実施した。
フッ素系樹脂を除き各原料をブレンドし、2軸押出機(ZSK−25)で混練し、押出機の途中から冷却(3℃)したフッ素系樹脂のディスパージョンを図2の様な装置で溶融した原料に滴下し、さらに混練後ペレットを得て、評価を行った。押しだし機の設定温度は、実施例16、18は220℃、実施例17は250℃にして実施した。樹脂組成物中のフッ素樹脂の分散形態の観察結果と、難燃性、光沢、フローマークの評価結果を表3に示す。
【0136】
比較例9〜14、18
表4の組成(単位は重量部)に従い、下記のように実施した。
難燃剤を除き、各原料をブレンドし、2軸押出機(ZSK−25)で混練し、押出機の途中から難燃剤を溶融した樹脂中にポンプで圧入し造粒し、ペレットを得て、評価を行った。押出し機の設定温度は、比較例9〜12と比較例18は290℃、比較例13、14は250℃にして実施した。樹脂組成物中のフッ素樹脂の分散形態の観察結果と、難燃性、光沢、フローマークの評価結果を表4に示す。
【0137】
比較例15、16
表4の組成(単位は重量部)に従い、下記のように実施した。
全原料を一括してブレンドし、シリンダー温度が比較例15に対しては250℃、比較例16に対しては220℃に設定された2軸押出機(ZSK−25)で混練し、ペレットを得て、評価を行った。樹脂組成物中のフッ素樹脂の分散形態の観察結果と、難燃性、光沢、フローマークの評価結果を表4に示す。
【0138】
実施例19
表3(単位は重量部)に従い、下記のように実施した。
フッ素系樹脂と難燃剤を除いて各原料をブレンドし、シリンダー温度が250℃に設定された2軸押出機(ZSK−25)で混練し、まず難燃剤を溶融した樹脂中にポンプで圧入し、その後段で冷却(3℃)したフッ素系樹脂のディスパージョンを図2の様な装置で溶融した原料に滴下混練し、造粒し、ペレットを得て、評価を行った。樹脂組成物中のフッ素樹脂の分散形態の観察結果と、難燃性、光沢、フローマークの評価結果を表3に示す。
【0139】
比較例19
ゴム強化樹脂A−3の調製で記述した、グラフト重合体ラテックスに酸化防止剤を添加した後、塩析し、水洗浄、脱水した後加熱乾燥して得られた粉末 15重量部に、フッ素系樹脂のディスパージョン B−1を0.5重量部を均一にブレンドし、乾燥させた。このブレンド物に、ポリカーボネート樹脂A−1 80重量部、アクリロニトリル成分比27重量%で、重量平均分子量が120,000のAS樹脂(アクリロニトリル−スチレン樹脂) 5重量部をブレンドし、シリンダー温度が250℃に設定された2軸押出機(ZSK−25)で混練し、押出機の途中から難燃剤C−3 8重量部を溶融した樹脂中にポンプで圧入し造粒し、ペレットを得て、評価を行った。樹脂組成物中のフッ素樹脂の分散形態の観察結果と、難燃性、光沢、フローマークの評価結果を表4に示す。
【0140】
実施例20
ポリカーボネート樹脂A−1 80重量部をシリンダー温度が290℃に設定された2軸押出機(ZSK−25)で溶融し、まず難燃剤C−3 8重量部を溶融した樹脂中にポンプで圧入し、その後段では、シリンダー温度を250℃に設定し、冷却(3℃)したフッ素系樹脂のディスパージョンB−1 0.5重量部を図2の様な装置で溶融した原料に滴下混練し、さらにその後段でゴム強化樹脂A−4 20重量部をサイドフィーダーを用いて配合し、造粒し、ペレットを得て、評価を行った。樹脂組成物中のフッ素樹脂の分散形態の観察結果と、難燃性、光沢、フローマークの評価結果を表3に示す。
【0141】
実施例1〜7と比較例1〜8とを比較すると分かるように、本発明の特定のネットワーク構造及び/又は特定の分岐構造を有する分散形態でフッ素系樹脂を包含する熱可塑性樹脂組成物は、そのようなネットワーク構造を有さないフッ素系樹脂組成物を包含する熱可塑性樹脂組成物に比べ、難燃性、特に燃焼時の滴下防止性に優れていることがわかる。
【0142】
また実施例8〜20と比較例9〜19とを比較すると分かるように、溶融した熱可塑性樹脂組成物にフッ素系樹脂のディスパージョンを特定のやり方で配合、溶融混練する本発明の方法は、それ以外の方法に比べて、本発明の特定のネットワーク構造及び/または特定の分岐構造を有する分散形態でフッ素系樹脂を包含する熱可塑性樹脂組成物の製造に適しており、得られる樹脂組成物は、難燃性、特に燃焼時の滴下防止性に優れているばかりでなく、その樹脂組成物を成形して得られる成型品の外観にも優れていることがわかる。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【0146】
【表4】
【0147】
【発明の効果】
本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及び難燃剤とともに、特定の分散形態を有するフッ素系樹脂分散フィブリルを包含しており、難燃性、特に燃焼時の滴下防止性に優れているばかりでなく、その樹脂組成物を成形して得られる成型品の外観にも優れている。また、フッ素系樹脂水性ディスパージョンを用い、それを熱可塑性樹脂及び難燃剤と特定のやり方で溶融混練する本発明の方法は、特定の分散形態を有するフッ素系樹脂分散フィブリルを含有する上記の難燃性樹脂組成物の製造に適している。
よって本発明の樹脂組成物、およびその製造方法は、火災時の安全性向上への要求から材料への難燃化の要求の強い分野、例えばコンピュータやワープロ、プリンター、複写機等のOA機器分野や、テレビ、ゲーム機等の一般家電分野、携帯電話のハウジング材料などの分野で特に有利に用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の難燃性樹脂組成物より得られる成型品の引張破断面のフッ素系樹脂フィブリルの分散形態を現す模式図である。なお、図1において実線で示した部分がフッ素系樹脂である。
【図2】図2は、本発明に用いることのできる押出し機の一例の内部構造を示す概略側面図である。
【図3】図3は、実施例4の樹脂組成物成型品の引張破断面のフッ素系樹脂フィブリルの分散形態を観察した走査電子顕微鏡写真であり、図3の写真においては、白く観察される部分がフッ素系樹脂である。
【図4】図4は、比較例5の樹脂組成物成型品の引張破断面のフッ素系樹脂フィブリルの分散形態を観察した走査電子顕微鏡写真であり、図4の写真においては、白く観察される部分がフッ素系樹脂である。
【図5】図5は、実施例8の樹脂組成物成型品の引張破断面のフッ素系樹脂フィブリルの分散形態を観察した走査電子顕微鏡写真であり、図5の写真においては、白く観察される部分がフッ素系樹脂である。
【図6】図6は、実施例12の樹脂組成物成型品の引張破断面のフッ素系樹脂フィブリルの分散形態を観察した走査電子顕微鏡写真であり、図6の写真においては、白く観察される部分がフッ素系樹脂である。
【図7】図7は、実施例13の樹脂組成物成型品の引張破断面のフッ素系樹脂フィブリルの分散形態を観察した走査電子顕微鏡写真であり、図7の写真においては、白く観察される部分がフッ素系樹脂である。
【図8】図8は、実施例15の樹脂組成物成型品の引張破断面のフッ素系樹脂フィブリルの分散形態を観察した走査電子顕微鏡写真であり、図8の写真においては、白く観察される部分がフッ素系樹脂である。
【図9】図9は、比較例14の樹脂組成物成型品の引張破断面のフッ素系樹脂フィブリルの分散形態を観察した走査電子顕微鏡写真であり、図9の写真においては、白く観察される部分がフッ素系樹脂である。
【符号の説明】
a:ネットワーク構造におけるフィブリルの交差点(少なくとも2本のフィブリルが互いに交差する点)
b:分岐構造におけるフィブリルの分岐点(1本のフィブリルが少なくとも2本のフィブリルに分岐する点)
c:0.5ミクロンを越える太さを有するフィブリル
1:押出機のホッパー
2:フッ素系樹脂のディスパージョンを添加するためのジャケット付き配管(ノズル)
3:押出機の途中の開口部
4:押出機のスクリュー
P:ポンプ
Claims (7)
- (A)重量平均分子量10000〜80000のポリカーボネート系樹脂、又は、重量平均分子量10000〜80000のポリカーボネート系樹脂5〜98重量部、及びゴム状重合体に該ゴム状重合体とグラフト共重合可能な少なくとも1種のビニル化合物をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体とビニル重合体とを含むゴム強化樹脂95〜2重量部からなる熱可塑性樹脂100重量部、(B)フッ素系樹脂0.01〜5重量部、及び(C)難燃剤3〜22重量部を包含する難燃性樹脂組成物において、該フッ素系樹脂(B)は複数のフィブリルの形で存在し、該熱可塑性樹脂(A)と難燃剤(C)は混合物の形で存在しており、UL−94規格に記載の垂直燃焼法による難燃性試験用に下記条件の射出成形法によって作成される樹脂組成物の1/2×5×1/16inchの試験片を引っ張り試験機を用いて速度5mm/分で引っ張って試験片を破断させた破断面について、全体にフィブリルが分散した7ミクロン×7ミクロンの領域を走査型電子顕微鏡で調べた時に、該分散フィブリルが示す分散形態が、該複数のフィブリルがその総延長の50%以上に相当する長さにわたって0.5ミクロン以下の直径を有し、且つ、該複数のフィブリルが、少なくとも2本のフィブリルが互いに交差する交差点を1つ以上有するネットワーク構造と、1本のフィブリルが少なくとも2本のフィブリルに分岐する分岐点を1つ以上有する分岐構造からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を有し、該交差点と該分岐点からなる群から選ばれる5個以上の点が該7ミクロン×7ミクロンの領域に存在する、ことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
(試験片の射出成形条件)
成型機 :MJEC−10(日本国、モダンマシナリー社製)
成形温度:ポリカーボネート系樹脂単独の場合は280℃、ポリカーボネート系樹脂5〜98重量部とゴム強化樹脂95〜2重量部からなる熱可塑性樹脂の場合は260℃
金型温度:ポリカーボネート系樹脂単独の場合は80℃、ポリカーボネート系樹脂5〜98重量部とゴム強化樹脂95〜2重量部からなる熱可塑性樹脂の場合は60℃
射出速度:500(設定値) - 該複数のフィブリルがその総延長の70%以上に相当する長さにわたって0.5ミクロン以下の直径を有し、該交差点と該分岐点からなる群から選ばれる10個以上の点が該7ミクロン×7ミクロンの領域に存在する請求項1記載の樹脂組成物。
- フッ素系樹脂(B)が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である請求項1または2記載の樹脂組成物。
- 難燃剤(C)がハロゲン系難燃剤である請求項1または2記載の樹脂組成物。
- 難燃剤(C)がリン酸エステル系難燃剤である請求項1または2記載の樹脂組成物。
- 難燃剤(C)が縮合リン酸エステル系難燃剤である請求項1または2記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる成型品。
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