JP4356184B2 - フレキシブル金属箔積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、フレキシブル金属箔積層体に関するものであり、さらに詳しくはエッチング工程および加熱工程の逐次処理を加えても寸法変化が小さく、ファインピッチ回路を形成する基板材料として好適なフレキシブル金属箔積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カメラ、パソコン、液晶ディスプレイなどの電子機器類への用途として芳香族ポリイミドフィルムは広く使用されている。
芳香族ポリイミドフィルムをフレキシブルプリント板(FPC)やテ−プ・オ−トメイティッド・ボンディング(TAB)などの基板材料として使用するためには、エポキシ樹脂などの接着剤を用いて銅箔を張り合わせる方法が採用されている。
【0003】
芳香族ポリイミドフィルムは耐熱性、機械的強度、電気的特性などが優れているが、接着剤の耐熱性等が劣るため、本来のポリイミドの特性を損なうことが指摘されている。
このような問題を解決するために、接着剤を使用しないでポリイミドフィルムに銅を電気メッキしたり、銅箔にポリアミック酸溶液を塗布し、乾燥、イミド化したり、熱可塑性ポリイミドを熱圧着させたオ−ルポリイミド基材が開発されている。
しかし、これらオ−ルポリイミドの金属箔積層体は、接着強度が小さいとか電気特性が損なわれるという問題点が指摘されている。
【0004】
また、ポリイミドフィルムと金属箔との間にポリイミド接着剤をサンドイッチ状に接合したポリイミドラミネ−トが知られている(米国特許第4543295号)。
しかし、このポリイミドラミネ−トでは、低熱線膨張のビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムについては接着強度が小さく使用できないという問題がある。
【0005】
このため、ロ−ルラミネ−ト法でラミネ−トロ−ルの材質として特定の硬度を有する金属を使用する方法や、熱圧着性のポリイミドとして特定の芳香族ジアミンによって得られたものを使用する方法が提案されている。
しかし、これらの方法によって得られるフレキシブル金属箔積層体も、エッチングおよび加熱処理の両工程を加えると、各工程の寸法変化率およびト−タルの累積寸法変化率が大きくなり、電子回路のファインピッチ化の要求を満足することが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、ポリイミドと金属箔とを積層してなる、エッチング工程および加熱工程の逐次処理を加えても寸法変化が小さいフレキシブル金属箔積層体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明は、厚みが10〜15μmで、300℃で2時間での加熱収縮率が0.01〜0.1%の熱圧着性多層ポリイミドフィルムと、厚みが3〜12μmの金属箔とを熱圧着して張り合わせて積層されてなる常温でエッチング後の寸法変化率および250℃で30分加熱処理後の寸法変化率のいずれも絶対値が0.04%以下で、かつ常温でエッチング後の寸法変化率と250℃で30分加熱処理後の寸法変化率との合計である累積寸法変化率が絶対値が0.07%以下の回路を形成する基板材料用のフレキシブル金属箔積層体の製造方法であり、
高耐熱性の芳香族ポリイミド層は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラ−フェニレンジアミンとを含む成分より製造される芳香族ポリイミド、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とピロメリット酸二無水物とパラ−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとを含む成分より製造される芳香族ポリイミド、
或いはピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとを含む成分より製造される芳香族ポリイミドで、
熱圧着性のポリイミド層は、1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを含む成分より製造されるもの、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパンと4,4’−オキシジフタル酸二無水物とを含む成分より製造されるもの、
4,4’−オキシジフタル酸二無水物およびピロメリット酸二無水物と1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)とを含む成分より製造されるもの、
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とを含む成分より製造されるもの
あるいは3,3’−ジアミノベンゾフェノンおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とを含む成分より製造されるポリイミドで、
共押出−流延製膜成形法によって高耐熱性の芳香族ポリイミド層の少なくとも片面、好ましくは両面に熱圧着性の芳香族ポリイミド層を積層一体化して得られる熱圧着性多層ポリイミドフィルムを用いて、
熱圧着性多層ポリイミドフィルムと金属箔とをダブルベルトプレスの加熱圧着ゾ−ンの温度が熱圧着性ポリイミドのガラス転移温度より20℃以上高く400℃以下の温度で加圧下に熱圧着し、引き続いてダブルベルトプレスの冷却ゾ−ンで熱圧着性ポリイミドのガラス転移温度より20℃以上低い温度まで冷却して張り合わせて積層することを特徴とするフレキシブル金属箔積層体の製造方法に関する。また、この発明は、前記フレキシブル金属箔積層体の製造方法により製造されるフレキシブル金属箔積層体に関する。なお、前記の記載において、|0.04|%とは絶対値が0.04%であることを、|0.07|%とは絶対値が0.07%であることを意味する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の好ましい態様を列記ずる。
1)熱圧性ポリイミドフィルムが、高耐熱性の芳香族ポリイミド層の少なくとも片面、好ましくは両面に熱圧着性の芳香族ポリイミド層を有するものである前記のフレキシブル金属箔積層体。
2)金属箔が、電解銅箔、圧延銅箔、アルミニウム箔あるいはステンレス箔である前記のフレキシブル金属箔積層体。
3)金属箔が、厚み3μm〜35μmの金属箔である前記のフレキシブル金属箔積層体。
【0009】
4)熱圧着性ポリイミドフィルムが厚み7〜50μmである前記のフレキシブル金属箔積層体。
5)熱圧着性ポリイミドフィルムが、共押出−流延製膜成形法によって高耐熱性の芳香族ポリイミド層の少なくとも片面、好ましくは両面に熱圧着性の芳香族ポリイミド層を積層一体化して得られるものである前記のフレキシブル金属箔積層体。
【0010】
この発明のフレキシブル金属箔積層体の構成としては、例えば次の組み合わせが挙げられる。次の記載でTPI−Fは熱圧着性ポリイミドフィルムを示す。
▲1▼金属箔/TPI−F
▲3▼金属箔/TPI−F/金属箔
【0011】
この発明においては、300℃での加熱収縮率が0.1%以下、好適には0.01〜0.1%である熱圧着性ポリイミドフィルムを使用することが必要であり、この明細書で加熱収縮率0.1%以下とは長尺フィルムの長手方向:MDと、幅方向:TDとの平均値をいう。
【0012】
前記の特定の加熱収縮率を有する熱圧着性ポリイミドフィルムは、熱圧着性ポリイミドフィルムを与えるポリイミド前駆体溶液、好適には高耐熱性の芳香族ポリイミド層の少なくとも片面、好ましくは両面に熱圧着性の芳香族ポリイミド層を有する熱圧着性多層ポリイミドフィルムを与える熱圧着性多層ポリイミド前駆体(ポリアミック酸ともいう)溶液からポリイミドフィルムを得る間の製膜工程中で処理する第1の方法によって達成してもよく、あるいは一旦フィルム化した後に熱アニ−ル処理する第2の方法によって達成してもよい。
【0013】
前記の第1の方法としては、キュア最高温度ゾ−ンから冷却の工程中でのフィルムへ与える張力について、フィルム平面性が保てる範囲内で張力を緩める方法が挙げられる。
【0014】
前記の第2の方法としては、通常の方法によって得られた熱圧着性ポリイミドフィルム、好適には300〜500℃に加熱して乾燥・イミド化を完了した直後の熱圧着性ポリイミドフィルムを200〜350℃で1〜180分間程度、無荷重下あるいは小荷重下に加熱処理する熱アニ−ル処理法が挙げられる。
【0015】
前記の熱圧着性多層ポリイミドフィルムは、特に、共押出し−流延製膜法によって高耐熱性の芳香族ポリイミドの前駆体溶液の片面あるいは両面に熱圧着性の芳香族ポリイミドの前駆体溶液を積層した後、乾燥、イミド化してフィルムを得る際に、前記の工程中で処理するか、あるいは前記の熱アニ−ル処理法を適用して得ることが好ましい。
【0016】
前記の熱圧着性多層ポリイミドフィルムにおける高耐熱性の芳香族ポリイミドは、好適には3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下単にs−BPDAと略記することもある。)とパラフェニレンジアミン(以下単にPPDと略記することもある。)と場合によりさらに4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(以下単にDADEと略記することもある。)および/またはピロメリット酸二無水物(以下単にPMDAと略記することもある。)とから製造される。この場合PPD/DADE(モル比)は100/0〜85/15であることが好ましい。また、s−BPDA/PMDAは100:0−50/50であることが好ましい。
また、高耐熱性の芳香族ポリイミドは、ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとから製造される。この場合DADE/PPD(モル比)は90/10〜10/90であることが好ましい。
さらに、高耐熱性の芳香族ポリイミドは、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)および4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(DADE)とから製造される。この場合、酸二無水物中BTDAが20〜90モル%、PMDAが10〜80モル%、ジアミン中PPDが30〜90モル%、DADEが10〜70モル%であることが好ましい。
前記の高耐熱性の芳香族ポリイミドの物性を損なわない範囲で、他の種類の芳香族テトラカルボン酸二無水物や芳香族ジアミン、例えば4,4’−ジアミノジフェニルメタン等を使用してもよい。
また、前記の芳香族テトラカルボン酸二無水物や芳香族ジアミンの芳香環にフッ素基、水酸基、メチル基あるいはメトキシ基などの置換基を導入してもよい。
【0017】
前記の高耐熱性の芳香族ポリイミドとしては、ガラス転移温度が350℃未満の温度では確認不可能であるものが好ましく、特にフィルムにした場合に熱線膨張係数(50〜200℃)(MD、TDおよびこれらの平均のいずれもで、通常はこれらに差が少ないためMDの値で表示する。)が5×10-6〜25×10-6cm/cm/℃であるものが好ましい。
この高耐熱性の芳香族ポリイミドの合成は、最終的に各成分の割合が前記範囲内であればランダム重合、ブロック重合、ブレンドあるいはあらかじめ2種類以上のイミド前駆体であるポリアミック酸の溶液を合成しておき各ポリアミック酸の溶液を混合してポリアミック酸の再結合によって共重合体を得る、いずれの方法によっても達成される。
【0018】
また、前記の熱圧着性多層ポリイミドフィルムにおける熱圧着性ポリイミドとしては、300〜400℃程度の温度で熱圧着できる熱可塑性ポリイミドであれば何でも良い。好適には1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)(以下、TPERと略記することもある。)と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、a−BPDAと略記することもある。)とから製造される。
また、前記の熱圧着性ポリイミドとしては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(DANPG)と4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)とから製造される。
あるいは、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)およびピロメリット酸二無水物と1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)とから製造される。
また、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とから、あるいは3,3’−ジアミノベンゾフェノンおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とから製造される。
【0019】
この熱圧着性ポリイミドの物性を損なわない範囲で他のテトラカルボン酸二無水物、例えば3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物などで置き換えられてもよい。
また、熱圧着性ポリイミドの物性を損なわない範囲で他のジアミン、例えば4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルメタン、2,2−ビス〔4−(アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパンなどの複数のベンゼン環を有する柔軟な芳香族ジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカンなどの脂肪族ジアミン、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのジアミノジシロキサンによって置き換えられてもよい。
前記の熱圧着性の芳香族ポリイミドのアミン末端を封止するためにジカルボン酸類、例えば、フタル酸およびその置換体、ヘキサヒドロフタル酸およびその置換体、コハク酸およびその置換体やそれらの誘導体など、特に、フタル酸を使用してもよい。
【0020】
前記の熱圧着性のポリイミドは、前記各成分と、さらに場合により他のテトラカルボン酸二無水物および他のジアミンとを、有機溶媒中、約100℃以下、特に20〜60℃の温度で反応させてポリアミック酸の溶液とし、このポリアミック酸の溶液をド−プ液として使用できる。
この発明における熱圧着性のポリイミドを得るためには、前記の有機溶媒中、酸の全モル数(テトラ酸二無水物とジカルボン酸の総モルとして)の使用量がジアミン(モル数として)に対する比として、好ましくは0.92〜1.1、特に0.98〜1.1、そのなかでも特に0.99〜1.1であり、ジカルボン酸の使用量がテトラカルボン酸二無水物のモル量に対する比として、好ましくは0.00〜0.1、特に0.02〜0.06であるような割合が好ましい。
【0021】
また、ポリアミック酸のゲル化を制限する目的でリン系安定剤、例えば亜リン酸トリフェニル、リン酸トリフェニル等をポリアミック酸重合時に固形分(ポリマ−)濃度に対して0.01〜1%の範囲で添加することができる。また、イミド化促進の目的で、ド−プ液中に塩基性有機化合物系触媒を添加することができる。例えば、イミダゾ−ル、2−イミダゾ−ル、1,2−ジメチルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ルなどをポリアミック酸(固形分)に対して0.01〜20重量%、特に0.5〜10重量%の割合で使用することができる。これらは比較的低温でポリイミドフィルムを形成するため、イミド化が不十分となることを避けるために使用する。
また、接着強度の安定化の目的で、熱圧着性の芳香族ポリイミド原料ド−プに有機アルミニウム化合物、無機アルミニウム化合物または有機錫化合物を添加してもよい。例えば水酸化アルミニウム、アルミニウムトリアセチルアセトナ−トなどをポリアミック酸(固形分)に対してアルミニウム金属として1ppm以上、特に1〜1000ppmの割合で添加することができる。
【0022】
前記のポリアミック酸製造に使用する有機溶媒は、高耐熱性の芳香族ポリイミドおよび熱圧着性の芳香族ポリイミドのいずれに対しても、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、クレゾ−ル類などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記の共押出し−流延製膜法においては、例えば前記の高耐熱性の芳香族ポリイミドのポリアミック酸溶液の片面あるいは両面に熱圧着性の芳香族ポリイミドの前駆体の溶液を共押出して、これをステンレス鏡面、ベルト面等の支持体面上に流延塗布し、100〜300℃で半硬化状態またはそれ以前の乾燥状態とすることが好ましい。この半硬化状態またはそれ以前の状態とは、加熱および/または化学イミド化によって自己支持性の状態にあることを意味する。
また、前記の共押出しは、例えば特開平3−180343号公報(特公平7−102661号公報)に記載の共押出法によって二層あるいは三層の押出し成形用ダイスに供給し、支持体上にキャストしておこなうことができる。
前記の高耐熱性の芳香族ポリイミドを与える押出し物層の片面あるいは両面に、熱圧着性の芳香族ポリイミドを与えるポリアミック酸溶液を積層して多層フィルム状物を形成して乾燥後、熱圧着性の芳香族ポリイミドのガラス転移温度(Tg)以上で劣化が生じる温度以下の温度、好適には300〜400℃の温度(表面温度計で測定した表面温度)まで加熱して(好適にはこの温度で1〜60分間加熱して)乾燥およびイミド化して、高耐熱性(基体層)の芳香族ポリイミドの片面あるいは両面に熱圧着性の芳香族ポリイミドを有する熱圧着性多層ポリイミドフィルムを得る。
【0024】
前記の熱圧着性の芳香族ポリイミドは、前記の酸成分とジアミン成分とを使用することによって、ガラス転移温度が180〜275℃、特に200〜275℃であって、好適には前記の条件で乾燥・イミド化して熱圧着性ポリイミドのゲル化を実質的に起こさせないことによって得られる、ガラス転移温度以上で300℃以下の範囲内の温度で液状化せず、かつ未延伸の弾性率が、通常275℃での弾性率が室温付近の温度(50℃)での弾性率の0.0002〜0.2倍程度を保持しているものが好ましい。
このような弾性率特性は、前記のモノマ−成分を使用し前記の条件でフィルム化することによって達成される。
【0025】
また、高耐熱性の(基体層)ポリイミド層の厚さは5〜70μm、特に5〜40μmであることが好ましい。5μm未満では作成した熱圧着性多層ポリイミドフィルムの機械的強度、寸法安定性に問題が生じる。また70μmより厚くなっても特に効果はなく、高密度化の点で不利である。
また、熱圧着性の芳香族ポリイミド層の厚みは各々2〜10μm、特に2〜8μm程度が好ましい。2μm未満では接着性能が低下し、10μmを超えても使用可能であるがとくに効果はなく、むしろフレキシブル金属箔積層体の耐熱性が低下する。
また、熱圧着性の多層ポリイミドフィルムは厚みが7〜75μm、特に7〜505μmであることが好ましい。7μm未満では作成したフィルムの取り扱いが難しく、75μmより厚くても特に効果はなく、高密度化に不利である。
【0026】
前記の共押出し−流延製膜法によれば、高耐熱性ポリイミド層とその片面あるいは両面の熱圧着性ポリイミドとを比較的低温度でキュアして熱圧着性ポリイミドの劣化を来すことなく、自己支持性フィルムのイミド化、乾燥を完了させることができ、良好な電気特性および接着強度を与えるので好適である。
【0027】
この発明において使用される金属箔としては、銅、アルミニウム、鉄、金などの金属箔あるいはこれら金属の合金箔など各種金属箔が挙げられるが、好適には圧延銅箔、電解銅箔などがあげられる。金属箔として、表面粗度の余り大きくなくあまり小さくない、好適にはRzが7μm以下、特にRzが5μm以下、特に0.5〜5μmであるものが好ましい。このような金属箔、例えば銅箔はVLP、LP(またはHTE)として知られている。
金属箔の厚さは特に制限はないが、70μm以下、特に3〜35μmであることが好ましい。
また、Raが小さい場合には、金属箔表面を表面処理したものを使用してもよい。
【0028】
この発明においては、前記の金属箔と300℃での加熱収縮率が0.1%以下、好適には0.01〜0.1%である熱圧着性ポリイミドフィルムとを加熱圧着して積層することが必要であり、熱圧着性ポリイミドフィルムの加熱収縮率が0.1%より大きいと、エッチングおよび加熱処理の両工程を加えて各工程の寸法変化率およびト−タルの累積寸法変化率が大きくなってしまい、良好なフレキシブル金属箔積層体を得ることが困難になる。
【0029】
前記の条件を満足する熱圧着性多層ポリイミドフィルムと金属箔とを、ロ−ルラミネ−ト法あるいはダブルベルトプレス法によって、加圧下に熱圧着して張り合わせて積層することによって、常温でエッチング後の寸法変化率および250℃で30分加熱処理後の寸法変化率がいずれも|±0.04|%以下、好適には±0.01〜±0.04で、かつ常温でエッチング後の寸法変化率と250℃で30分加熱処理後の寸法変化率との合計である累積寸法変化率が|±0.07|%以下、好適には±0.01〜±0.07であるフレキシブル金属箔積層体を得ることができる。
フレキシブル金属箔積層体の前記各寸法変化率および累積寸法変化率のいずれかが前記範囲外であると、電子回路のファインピッチ化に適用することが困難である。
【0030】
前記のロ−ルラミネ−ト法あるいはダブルベルトプレス法において、好適にはロ−ルラミネ−トまたはダブルベルトプレスの加熱圧着ゾ−ンの温度が熱圧着性ポリイミドのガラス転移温度より20℃以上高く400℃以下の温度、特にガラス転移温度より30℃以上高く400℃以下の温度で加圧下に熱圧着し、特にダブルベルトプレスの場合には引き続いて冷却ゾ−ンで加圧下に冷却して、好適には熱圧着性ポリイミドのガラス転移温度より20℃以上低い温度、特に30℃以上低い温度まで冷却して、積層することによってフレキシブル金属箔積層体を製造することができる。
前記の方法において、製品が片面金属箔のフレキシブル金属箔積層体である場合には、剥離容易な高耐熱性フィルム、例えばRzが2μm未満の高耐熱性フィルムまたは金属箔、好適にはポリイミドフィルム(宇部興産社製、ユ−ピレックスS)やフッ素樹脂フィルムなどの高耐熱性樹脂フィルムや圧延銅箔などであって表面粗さが小さく表面平滑性の良好な金属箔を保護材として、熱圧着性ポリイミド層と他の金属面との間に介在させてもよい。この保護材は積層後、積層体から除いて巻き取ってもよく、保護材を積層したままで巻き取って使用時に取り除いてもよい。
【0031】
特にダブルベルトプレスを用いて予熱後、加圧下に熱圧着−冷却して積層することによって、得られるフレキシブル金属箔積層体は、長尺で幅が約400mm以上、特に約500mm以上の幅広の、接着強度が大きく(90°ピ−ル強度:0.7kg/cm以上、特に1kg/cm以上)、金属箔表面に皺が実質的に認めれられない程外観が良好なフレキシブル金属箔積層体を得ることができる。
【0032】
この発明において、フレキシブル金属箔積層体は、熱圧着性多層ポリイミドフィルムおよび金属箔がロ−ル巻きの状態でロ−ルラミネ−トまたはダブルベルトプレスにそれぞれ供給され、金属箔積層フィルムをロ−ル巻きの状態で得ることができる。
【0033】
この発明によって得られるフレキシブル金属箔積層体は、ロ−ル巻き、エッチング、および場合によりカ−ル戻し等の各処理を行った後、所定の大きさに切断して、電子部品用基板として使用できる。
例えば、FPC、TAB、多層FPC、フレックスリジッド基板の基板として好適に使用することができる。
特に、金属箔の厚みが3〜35μmで熱圧着性多層ポリイミドフィルム層の厚みが7〜50μmである片面銅箔積層体(全体厚みが15〜85μm)あるいは両面銅箔積層体(全体厚みが25〜120μm)から、エポキシ系接着剤あるいは熱可塑性ポリイミドや熱可塑性ポリアミドイミドあるいはポリイミドシロキサン−エポキシ系などの耐熱性ポリイミド系接着剤から選ばれる耐熱性接着剤(厚み5〜50μm、好ましくは5〜15μm、特に7〜12μm)で複数の銅箔積層体を接着することによって銅箔積層体が2〜10層で、高耐熱性・低吸水・低誘電率・高電気特性を満足する多層基板を好適に得ることができる。
この発明のフレキシブル金属箔積層体には、前記の長尺状のものだけでなく前記のように長尺状のものを所定の大きさに切断したものも含まれる。
【0034】
この発明のフレキシブル金属箔積層体には、それ自体公知のエッチング工程および加熱工程の逐次処理を加えて、回路基板として使用される。
前記のエッチング工程としては、例えばフレキシブル金属箔積層体の銅箔を塩化第二鉄水溶液などのエッチング処理液によってエッチング処理する方法が挙げられる。
また、前記の加熱工程としては、例えばフレキシブル金属箔積層体を300℃の半田浴に60秒間程度浸漬する半田処理や、他のフレキシブル金属箔積層体と耐熱性接着剤によって積層して多層基板とする加熱圧着が挙げられる。
【0035】
【実施例】
以下、この発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
以下の各例において、物性評価は以下の方法に従って行った。
▲1▼加熱収縮率:ポリイミドフィルムの加熱処理前と300℃で2時間加熱処理後の寸法変化を求め、%で表示した。
▲2▼エッチング後の寸法変化率:フレキシブル金属箔積層体のエッチング前と常温エッチング(43℃、エッチング剤:塩化第二鉄水溶液)後の寸法変化を求め、%で表示した。
▲3▼加熱処理後の累積寸法変化率:エッチング後、さらに250℃で30分間加熱処理後とエッチング前との寸法変化を求め、%で表示した。
▲4▼加熱処理による寸法変化率:加熱処理後の累積寸法変化率(▲3▼)からエッチング後の寸法変化率(▲2▼)を引いた寸法変化率
▲5▼熱線膨張係数:50〜200℃、5℃/分で測定(TD、MDの平均値)、cm/cm/℃
▲6▼ガラス転移温度(Tg):粘弾性より測定。
▲7▼接着強度:90°剥離強度を測定し、平均値で評価
▲8▼電気特性:体積抵抗をASTM D257で測定
▲9▼総合評価:良好:寸法変化が小さく、90°剥離強度が1.0kgf/cm以上で接着強度が大きく、電気特性が良好、外観が良好○、普通:寸法変化がやや大きい△、不良:寸法変化が大きい×
【0036】
高耐熱性の芳香族ポリイミド製造用ド−プの合成例1
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、N−メチル−2−ピロリドンを加え、さらに、パラフェニレンジアミンと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを1000:998のモル比?でモノマ−濃度が18%(重量%、以下同じ)になるように加えた。添加終了後50℃を保ったまま3時間反応を続けた。得られたポリアミック酸溶液は褐色粘調液体であり、25℃における溶液粘度は約1500ポイズであった。この溶液をド−プとして使用した。
【0037】
熱圧着性の芳香族ポリイミド製造用ド−プの合成−1
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、N−メチル−2−ピロリドンを加え、さらに、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンと2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを1000:1000のモル比でモノマ−濃度が22%になるように、またトリフェニルホスフェ−トをモノマ−重量に対して0.1%加えた。添加終了後25℃を保ったまま1時間反応を続けた。このポリアミック酸溶液は、25℃における溶液粘度が約2000ポイズであった。この溶液をド−プとして使用した。
【0038】
参考例1〜3
上記の高耐熱性の芳香族ポリイミド用ド−プと熱圧着性の芳香族ポリイミド製造用ド−プとを三層押出し成形用ダイス(マルチマニホ−ルド型ダイス)を設けた製膜装置を使用し、前記ポリアミック酸溶液を三層押出ダイスの厚みを変えて金属製支持体上に流延し、140℃の熱風で連続的に乾燥し、固化フィルムを形成した。この固化フィルムを支持体から剥離した後加熱炉で200℃から320℃まで徐々に昇温して溶媒の除去、イミド化を行い、さらに場合により加熱して熱アニ−ル処理して三層押出しポリイミドフィルムを巻き取りロ−ルに巻き取った。
得られた三層押出しポリイミドフィルムは、次のような物性を示した。
【0039】
1)熱圧着性多層ポリイミドフィルム−1
厚み構成:4μm/17μm/4μm(合計 μm)
熱圧着性の芳香族ポリイミドのTg:250℃(以下同じ)
体積抵抗>1×1015Ω・cm(以下同じ)
加熱収縮率:0.40%
2)熱圧着性多層ポリイミドフィルム−2
厚み構成:5μm/15μm/5μm(合計25μm)
加熱収縮率:0.20%
3)熱圧着性多層ポリイミドフィルム−3
厚み構成:5μm/15μm/5μm(合計25μm)
加熱収縮率:0.04%
4)熱圧着性多層ポリイミドフィルム−4
厚み構成:3μm/9μm/3μm(合計15μm)
加熱収縮率:0.04%
5)熱圧着性多層ポリイミドフィルム−5
厚み構成:2μm/6μm/2μm(合計10μm)
加熱収縮率:0.04%
これらの熱圧着性多層ポリイミドフィルムは、いずれも熱線膨張係数(50〜200℃)が10×10-6〜25×10-6×cm/cm/℃であった。
【0040】
比較例1
前記の熱圧着性多層ポリイミドフィルム−1と、2つのロ−ル巻きした電解銅箔(三井金属鉱業社製、3EC−VLP、Rzが3.8μm、厚さ18μm)とを、ダブルベルトプレスに連続的に供給し、予熱し、加熱ゾ−ンの温度(最高加熱温度)380℃(設定)、冷却ゾ−ンの温度(最低冷却温度)117℃)で、連続的に加圧下に熱圧着−冷却して積層して、フレキシブル銅派箔積層体(幅:約530mm、以下同じ)のロ−ル巻状物を得た。
得られたフレキシブル銅箔積層体についての評価結果を次に示す。
エッチング後の寸法変化率:−0.05%
加熱処理後の累積寸法変化率:−0.14
加熱処理による寸法変化率:−0.09%
総合評価:×
【0041】
比較例2
前記の熱圧着性多層ポリイミドフィルム−2を使用した他は比較例1と同様に実施して、フレキシブル銅派箔積層体(幅:約530mm、以下同じ)のロ−ル巻状物を得た。
得られたフレキシブル銅箔積層体についての評価結果を次に示す。
エッチング後の寸法変化率:−0.03%
加熱処理後の累積寸法変化率:−0.08
加熱処理による寸法変化率:−0.05%
総合評価:△
【0042】
参考例4
前記の熱圧着性多層ポリイミドフィルム−3を使用した他は比較例1と同様に実施して、フレキシブル銅派箔積層体(幅:約530mm、以下同じ)のロ−ル巻状物を得た。得られたフレキシブル銅箔積層体についての評価結果を次に示す。
エッチング後の寸法変化率(常温でエッチング後の寸法変化率):−0.03%
加熱処理後の累積寸法変化率(常温でエッチング後の寸法変化率と250℃で30分加熱処理後の寸法変化率との合計である累積寸法変化率):−0.06%
加熱処理による寸法変化率(250℃で30分加熱処理後の寸法変化率):−0.03%
総合評価:○
【0043】
実施例1〜2
熱圧着性多層ポリイミドフィルム−4および厚み12μmの電解銅箔(三井金属鉱業社製)を使用するか、熱圧着性多層ポリイミドフィルム−5および厚み9μmの電解銅箔(三井金属鉱業社製)を使用した他は参考例4と同様にして、連続的に加圧下に熱圧着−冷却して積層して、フレキシブル銅箔積層体を巻き取りロ−ルに巻き取った。得られたフレキシブル銅箔積層体についての評価結果は参考例4と同等で良好な結果を示した。
【0044】
【発明の効果】
この発明によれば、以上のような構成を有しているため、次のような効果を奏する。
【0045】
この発明によれば、エッチング工程および加熱工程の逐次処理を加えても寸法変化が小さく、ファインピッチ回路を形成する基板材料として好適なフレキシブル金属箔積層体を得ることができる。
Claims (3)
- 厚みが10〜15μmで、300℃で2時間での加熱収縮率が0.01〜0.1%の熱圧着性多層ポリイミドフィルムと、厚みが3〜12μmの金属箔とを熱圧着して張り合わせて積層されてなる常温でエッチング後の寸法変化率および250℃で30分加熱処理後の寸法変化率のいずれも絶対値が0.04%以下で、かつ常温でエッチング後の寸法変化率と250℃で30分加熱処理後の寸法変化率との合計である累積寸法変化率が絶対値が0.07%以下の回路を形成する基板材料用のフレキシブル金属箔積層体の製造方法であり、
高耐熱性の芳香族ポリイミド層は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラ−フェニレンジアミンとを含む成分より製造される芳香族ポリイミド、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とピロメリット酸二無水物とパラ−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとを含む成分より製造される芳香族ポリイミド、
或いはピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとを含む成分より製造される芳香族ポリイミドで、
熱圧着性のポリイミド層は、1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを含む成分より製造されるもの、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパンと4,4’−オキシジフタル酸二無水物とを含む成分より製造されるもの、
4,4’−オキシジフタル酸二無水物およびピロメリット酸二無水物と1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)とを含む成分より製造されるもの、
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと
3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とを含む成分より製造されるもの
あるいは3,3’−ジアミノベンゾフェノンおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とを含む成分より製造されるポリイミドで、
共押出−流延製膜成形法によって高耐熱性の芳香族ポリイミド層の少なくとも片面、好ましくは両面に熱圧着性の芳香族ポリイミド層を積層一体化して得られる熱圧着性多層ポリイミドフィルムを用いて、
熱圧着性多層ポリイミドフィルムと金属箔とをダブルベルトプレスの加熱圧着ゾ−ンの温度が熱圧着性ポリイミドのガラス転移温度より20℃以上高く400℃以下の温度で加圧下に熱圧着し、引き続いてダブルベルトプレスの冷却ゾ−ンで熱圧着性ポリイミドのガラス転移温度より20℃以上低い温度まで冷却して張り合わせて積層することを特徴とするフレキシブル金属箔積層体の製造方法。 - 金属箔が、電解銅箔、圧延銅箔、アルミニウム箔あるいはステンレス箔である請求項1に記載のフレキシブル金属箔積層体の製造方法。
- 請求項1又は請求項2のいずれかに記載のフレキシブル金属箔積層体の製造方法により製造されるフレキシブル金属箔積層体。
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