JP4349002B2 - 試料物質を供給又は回収するための装置を用いた試料物質供給回収方法 - Google Patents

試料物質を供給又は回収するための装置を用いた試料物質供給回収方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、荷電性の試料物質を、直流電界の作用を利用して、基板等に形成された反応領域に対して供給したり、該反応領域から試料物質を回収したりするための装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
試料物質を微小な反応領域に対して滴下して供給する技術がある。具体的には、所定の反応領域に対して、DNAプローブ等の試料物質を含む微小滴を所定の反応領域(「スポット領域」ともいう。)に正確に滴下する方法がある。この方法の代表例として、インクジェットプリンティング法やマイクロメカニカルスポッティング法等が知られている。
【0003】
「インクジェットプリンティング法」は、インクジェットプリンターで用いられるノズルを応用する方法であって、電気を用いてインクジェットプリンターのようにプリンターヘッドから基板に検出用試料物質を噴射して、固定する方法である。この方法には、圧電式インクジェット法、バブルジェット法、超音波ジェット法がある。圧電式インクジェット法は、圧電体にパルスを印加することによって生じる変位の圧力によって液滴を飛ばす方法である。バブルジェット法は、熱方式であって、ノズル中のヒーターを熱して発生させた気泡の圧力によって液滴を飛ばす方式である。超音波ジェット法は、超音波ビームを液体の自由面に当てて、局所的に高い圧力を与えることによってその箇所から微小滴を放出させる方式である。
【0004】
「マイクロメカニカルスポッティング法」は、マイクロスポッティングペン、キャピラリー(細管)、あるいはピンセットを装着させたプリントヘッドを用いて、検出用試料物質を含む微小滴を基板上の検出表面部位にスポットしていく方法である。
【0005】
このような試料物質のスポッティング技術は、ガラス基板やシリコン基板上に多種・多数のDNAオリゴ鎖やcDNA(complementary DNA)等が微細配列されて集積されている、いわゆるDNAチップ又はDNAマイクロアレイ(以下、「DNAチップ」と総称。)と呼ばれるバイオアッセイ用の集積基板を作製又は製造する際の重要技術となっている。
【0006】
「DNAチップ」は、例えば、ガラス基板やシリコン基板上に供給されて固定化されたDNAプローブ等に対して、標的DNAを含む試料溶液を供給してハイブリダイゼーション行い、これに続いてハイブリダイゼーションを示さなかったDNAやミスハイブリしたDNA等を洗い流す作業(以下「洗浄作業」と称する。)を行った後に、所定の検出器で蛍光測定等を行うことによって、分子間の相互作用の解析や遺伝子の変異解析、SNPs(一塩基多型)分析、遺伝子発現頻度解析等に広く用いられている。
【0007】
その他、特許文献1には、高密度マイクロアレイを、試料溶液をエレクトロスプレイすることによって作成する技術が開示されている。特許文献2には、同一スポットに対して試料溶液を、上記インクジェットプリンティング法により複数回供給する技術が開示されている。特許文献3には、プローブを含む液体を上記インクジェットプリンティング法により固相表面に付着させる技術が開示されている。特許文献4には、ハイブリダイゼーション後に、緩衝液で洗浄して検出実験を行う技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−281252号公報。
【特許文献2】
特開2001−186880号公報。
【特許文献3】
特開平11−187900号公報。
【特許文献4】
特開2003−300号公報。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の試料物質(含む溶液)のスポッティング技術においては、基板上に試料物質を滴下する作業(試料物質を供給する作業)や滴下された試料物質を所定表面部位に固定化する作業等を行う際に、試料物質が乾燥雰囲気に晒されるため、その分子構造(例えば、高次構造などの立体構造)に悪影響を及ぼす可能性があるという問題があった。
【0010】
また、相互作用(例えば、ハイブリダイゼーション)を実施した後に行われる上記洗浄作業においては、偽陽性や偽陰性の検出エラーを極力発生させないようにするために、的確な洗浄溶液の選定並びに洗浄溶液の条件設定に関して、実験作業者は充分に配慮しなければならなかった。
【0011】
さらに、前記洗浄作業によって、反応領域に存在している固定化不十分状態あるいは未固定状態の検出用試料物質(例えば、DNAプローブ)が、洗浄目的である試料物質と一緒に洗い流されてしまうので、貴重な実験材料(検出用試料物質)にロスが生じ、DNAチップ等の製造コストを押し上げてしまうという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、主に、(1)試料物質を乾燥させることがない、(2)洗浄液を用いる洗浄作業を行う必要がない、(3)検出用試料物質のロスを大幅に減少できる、以上(1)〜(3)の利点を有する、試料物質の供給又は回収のための装置及び方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では、第一に、以下の「試料物質供給回収装置」を提供する。この装置は、陰電荷又は陽電荷に荷電する性質を有する試料物質を、直流電界の駆動力によって所定反応領域へ供給したり、あるいはこの反応領域中に遊離状態や弱い結合力で存在している試料物質を、前記駆動力によって回収したりできるように工夫された装置である。具体的には、本発明に係る装置は、荷電性の試料物質を含む溶液を貯留する「溶液槽」と、前記溶液槽に連通された「電導性ゲル収容槽」と、前記溶液及び前記電導性ゲルに直流電界を形成するための「第一電極」と、を少なくとも備えている。この構成において、前記溶液槽に貯留された溶液と電導性ゲルの界面は接している。
【0014】
この装置構成においては、例えば、溶液槽の上部等に配置された前記第一電極と外部の反応領域に付設された第二電極に印加することによって、前記溶液槽の溶液から電導性ゲルを通過して反応領域へ至る「直流電界」(例えば、約10V/cm)を形成することができる。この「直流電界」は、荷電した試料物質を電界方向に沿って駆動させる役割を果たす。すなわち、陰電荷を帯びた試料物質を陽極側へ、陽電荷を帯びた試料物質を陰極側へ移動させる作用を発揮する。
【0015】
例えば、陰電荷を帯びた試料物質を反応領域に供給する場合は、前記第一電極を陰極、反応領域に付設された第二電極を陽極として直流電界を形成し、陰電荷を帯びた試料物質を溶液槽に回収する場合は、第一電極を陽極、第二電極を陰極として直流電界を形成すればよい。同様に、陽電荷を帯びた試料物質を反応領域に供給する場合は、前記第一電極を陽極、反応領域に付設された第二電極を陰極として直流電界を形成し、この陽電荷を帯びた試料物質を溶液槽に回収する場合は、第一電極を陰極、第二電極を陽極として直流電界を形成すればよい。
【0016】
この直流電界による荷電性試料物質の駆動作用によって、前記溶液槽内の試料物質を、電動性ゲルを移動通過させて反応領域へ供給したり、この反応領域内に存在する試料物質を、前記電動性ゲルを通過移動させて前記溶液槽に回収したりすることが、自在に行うことができる。なお、前記溶液槽に回収される試料物質は、例えば、反応領域の所定表面部位に未固定状態又は固定化不十分状態の試料物質である。
【0017】
この荷電性の試料物質の供給又は回収に係わる作業は、前記電導性ゲルを反応領域(に貯留されている溶液界面)に密着させた状態で行うことになるので、作業工程中に試料物質を乾燥雰囲気に晒してしまうことがない。このため、前記作業の過程において、試料物質の分子構造(例えば、高次構造などの立体構造)に悪影響を与えてしまうことがないという利点がある。即ち、試料物質を、所定のパートナー分子との間で相互作用できる分子構造状態を保持したままの状態で、外部の反応領域に供給したり、あるいは該反応領域から回収したりすることができる。
【0018】
また、本発明に係る装置では、上記した「直流電界」に加え、前記反応領域に貯留された溶液に「高周波電界」を形成する手段を備えるように工夫することもできる。
【0019】
例えば、1MV/m程度の高周波電界を印加すると、ヌクレオチド分子(リン酸イオン等を備えるヌクレオチド鎖の陰電荷とイオン化した水素原子の陽電荷で構成される多数の分極ベクトルからなるヌクレオチド分子)に誘電分極が生じ、その結果、ヌクレオチド分子が電界と平行に直線状に引き伸ばすことができる。
【0020】
より詳しくは、ハイブリダイゼーションを検出するための検出用試料物質として機能するDNAプローブ等のヌクレオチド分子を反応領域に供給し、この反応領域の所定表面部位(検出表面)に前記ヌクレオチド分子の一端(末端)を固定化した状態では、このヌクレオチド分子は、ランダムコイル状等に丸まったり、重層したりしている。このような立体構造状態では、塩基同士が重層するので、反応時に立体障害が発生する。ヌクレオチド分子を高周波電界の作用で直線状に引き伸ばすと、塩基同士が重層することが無くなるため、反応時の立体障害が少なくなって、ハイブリダイゼーション反応が短時間で円滑に進むようになるので、検出の効率や精度を向上させることができる。
【0021】
ここで、上記「高周波電界」を形成するための具体的手段としては、反応領域(の例えば、底面)に付設された第二電極と前記第一電極以外の「第三電極」との間で形成することもできるし、前記反応領域を挟むように対設してなる「対向電極」によって形成することもできる。
【0022】
第一電極と第二電極は、試料物質を供給又は回収するための「直流電界」を形成する役割を果たし、第一電極と第三電極、あるいは前記対向電極は、試料物質を伸長するための「高周波電界」を形成する役割を果たす。なお、第一電極と第二電極を用いて、直流電界と高周波電界の両方を形成できるように工夫してもよい。
【0023】
ここで、高周波電界形成に用いられる前記第三電極として、反応領域に付設された第二電極と対向する位置に移動可能であって、かつ該位置から退去可能に構成された可動電極を採用することができる。この「可動電極」は、試料物質の供給作業時又は回収作業時には、他の所定位置に待機しており、これらの作業が完了したら、(反応領域に付設された)第二電極と対向する位置(例えば、反応領域の上方位置)に移動して高周波電界を形成し、この電界形成作業(伸長作業)が完了したら再び前記待機位置に戻るという動作を、コンピュータ制御等によって実行可能な可動性の電極である。
【0024】
また、この第三電極として、上記した電導性ゲル収容槽の下面(あるいは底面)位置に設けられ、前記試料物質が通過可能な形状とされた電極を採用することもできる。例えば、試料物質が通過可能なサイズの微細孔が均等かつ多数形成された電極板である。これらの微細孔は、第一電極と第二電極との間で形成された直流電界の作用によって移動してくる試料物質を反応領域方向あるいは溶液槽方向に通過させるという役割を果たす。
【0025】
本発明に係る装置は、DNAプローブ等の検出用ヌクレオチド分子(ヌクレオチド鎖)を基板上の反応領域に供給する装置として、あるいは該反応領域の所定表面部位に固定化された検出用ヌクレオチド分子を伸長する装置として好適である。
【0026】
以上のように、本発明に係る装置は、溶液槽内の溶液に含まれている荷電性の試料物質を反応領域へ効率良くかつ迅速に供給するための装置として好適である。また、反応領域(の所定表面部位)に固定化されないで遊離状態にある検出用試料物質や固体化が不充分な状態(固定化結合が弱い状態)にある検出用試料物質を強制的に回収する装置としても好適である。あるいは、固定化された検出用試料物質と相互作用を示さなかった物質や誤相互作用(例えば、ミスハイブリダイゼーション)した試料物質を強制的に回収する装置としても好適である。
【0027】
本装置では、直流電界の強度を調整することによって、試料物質の供給速度、回収速度、供給量、回収量、回収物質の種類等を調節することが可能である。例えば、試料物質の回収作業では、直流電界の強度を低下させることによって、固定化されないで遊離状態にある検出用試料物質のみを回収したり(固体化が不充分な状態にある検出用試料物質を回収しないようにしたり)、固定化された検出用試料物質と相互作用を示さなかった遊離物質のみを回収したり(誤相互作用した試料物質を回収しないようにしたり)することができる。
【0028】
本発明では、第二に、以下の「試料物質供給方法」を提供する。具体的には、溶液中に含まれている荷電性の試料物質を、直流電界の作用により電導性ゲルを移動通過させ、所定の反応領域に供給する試料物質供給方法を提供する。
【0029】
この方法は、ヌクレオチド分子等の荷電性の試料物質を一時溶液中に収容しておいて、直流電界の形成によって、この試料物質を前記溶液中から電導性ゲルへ移動させ、続いてこの電導性ゲルを通過させて、所定の反応領域に供給する。即ち、本方法は、荷電性の試料物質は、溶液→電導性ゲル→反応領域の経路で移動させる方法である。
【0030】
また、この方法は、前記反応領域に臨むように形成された表面(検出表面)に対して、前記試料物質を固定化する手順を含む方法とすることができる。即ち、試料物質の供給手順と固定化手順の両方を備えた方法とすることができる。
【0031】
また、前記固定化手順の際には直流電界オフにすることによって、前記表面に対する試料物質の固体化反応を、物質のブラウン運動に専ら委ねて行うようにする。これにより、固定化反応を電界の影響がない状態で円滑に進行させることができる。
【0032】
さらに、本方法を、高周波電界の作用によって固定化されたヌクレオチド分子を伸長させる手順を含む方法に発展させ、固定化されたヌクレオチド分子をハイブリダイゼーションし易い直鎖状構造に整えることができるようにする。
【0033】
本方法は、反応領域中に既に固定化された前記試料物質と相互作用を示す他の荷電性の試料物質を、直流電界の作用によって前記電導性ゲルを移動させて反応領域に供給する方法に発展させることができる。即ち、相互作用を行う少なくとも二種類の試料物質を、直流電界の作用によって所定の反応領域に順次供給する方法を提供できる。また、この相互作用を行う際に直流電界オフにすることにより、該相互作用をブラウン運動に専ら委ねて行うように工夫することによって、電界の影響が状態で相互作用を円滑に進行させることができる。
【0034】
本発明では、第三に、以下の「試料物質回収方法」を提供する。
【0035】
まず、反応領域中の溶液に存在する荷電性の試料物質を、直流電界の作用によって電導性ゲル内を移動させて、所定の溶液槽に回収する試料物質回収方法を提供する。
【0036】
本方法によって反応領域中から回収される試料物質は、前記反応領域の所定表面部位(検出表面)に固定化された検出用試料物質との間で相互作用を示さなかった物質、あるいは反応領域の所定表面部位に未固定状態又は固定化不十分状態にある試料物質を挙げることができる。
【0037】
次に、本発明では、溶液中に含まれている荷電性の検出用試料物質を、(1)直流電界の作用によって電導性ゲルを移動させて所定の反応領域に供給する手順と、(2)前記反応領域に臨む所定表面部位に対して、前記検出用試料物質を固定化する手順と、(3)前記表面部位に未固定状態又は固定化不十分状態の前記検出用試料物質を直流電界の作用によって電導性ゲル内を移動通過させて溶液槽に回収する手順と、(4)溶液中に含まれている荷電性の標的試料物質を、直流電界の作用によって電導性ゲルを移動させて所定の反応領域に供給する手順と、(5)固定化された前記検出用試料物質と標的試料物質との間の相互作用を行う手順と、(6)固定化された前記検出用試料物質との間で相互作用を示さなかった標的試料物質又は/及び誤相互作用した標的試料物質を、直流電界の作用によって電導性ゲル内を移動通過させて溶液槽に回収する手順と、を含む試料物質供給回収方法を提供する。
【0038】
この方法は、検出用試料物質供給→検出用試料物質固定化→未固定状態等の検出用試料物質回収→標的試料物質供給→相互作用→相互作用を示さなかった標的試料物質等の回収、という一連の相互作用検出手順をすべて含む包括的な方法である。
【0039】
この方法では、固定化された検出用試料物質がヌクレオチド分子である場合において、高周波電界の作用によって該ヌクレオチド分子を伸長させる手順を含むように工夫し、前記固定化及び/又は前記相互作用を行う場合には、直流電界オフにするように工夫した方法も提供できる。
【0040】
ここで、本願における主な技術用語の定義付けを行う。
【0041】
「反応領域」は、液相中においてハイブリダイゼーションその他の物質間の相互作用の場を提供できる試料溶液貯留領域である。例えば、基板上に形成された微小な凹構造又はウエル構造部位を挙げることができる。「表面」あるいは「表面部位」は、物質間の相互作用を検出するために、検出用の試料物質を固定化するために必要な表面処理が施された検出用の表面である。
【0042】
「相互作用」は、物質間の化学的結合あるいは解離を広く意味する。例えば、一本鎖ヌクレオチド分子間の相互反応、即ちハイブリダイゼーションに加え、二本鎖ヌクレオチド分子とペプチド(又はタンパク質)の相互反応、酵素応答反応その他の分子間相互反応、抗原抗体反応、タンパク質間等の高分子間の相互作用、低分子と高分子との間の相互作用、低分子間の相互作用を広く含み、狭く解釈されない。
【0043】
「検出用試料物質」は、反応領域の表面部位に直接的に又は間接的に固定化される物質であり、「標的試料物質」は、前記検出用試料物質と特異的な相互作用を示す物質であって、場合によっては、蛍光物質等により標識される。
【0044】
「ヌクレオチド分子」とは、プリンまたはピリミジン塩基と糖がグリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステルの重合体を意味し、DNAプローブを含むオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチオドが重合したDNA(全長あるいはその断片)、逆転写により得られるcDNA(cDNAプローブ)、RNA、ポリアミドヌクレオチド誘導体(PNA)等を広く含む。
【0045】
「ハイブリダイゼーション」は、相補的な塩基配列構造を備えるヌクレオチド鎖間の相補鎖(二重鎖)形成反応を意味する。
【0046】
「立体障害(steric hindrance)」は、分子内の反応中心等の近傍に嵩高い置換基の存在や反応分子の姿勢や立体構造(高次構造)によって、反応相手の分子の接近が困難になることによって、所望の反応(本願では、ハイブリダイゼーション)が起こりにくくなる現象を意味する。
【0047】
「対向電極」は、電圧印加可能な一対の電極を意味する。
【0048】
「電導性ゲル」は、アガロースゲルなどの電導性のゲルを意味する。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に狭く限定されない。
【0050】
まず、図1に示された符号1は、本発明に係る試料物質供給回収装置の好適な実施形態をしめしている。この試料物質供給回収装置1(以下「装置1」と略称する。)は、下方側に配置された基板2の所定領域に対して荷電性の試料物質Sを供給する装置、又は前記基板2から所定の前記試料物質Sを回収する装置として機能するものである。
【0051】
本装置1は、前記試料物質Sを含む溶液Lを貯留する容器状の溶液槽11と、電導性ゲルGを収容する電導性ゲル収容槽12と、前記溶解槽11の上部に取り付けられた第一電極Eとから構成されている。
【0052】
電導性ゲル収容槽12は、溶液槽11に連設されており、溶液槽11に収容された溶液Lと電導性ゲルGの界面は接した状態となっている。電導性ゲルGは、溶液槽1中の溶液Lが下側に漏れていかないように封止する役割も果たしている。
【0053】
前記溶液槽11の溶液L中に含まれる荷電性の試料物質Sは、溶液L中で陰電荷又は陽電荷を帯びる物質であれば広く利用でき、例えば、ヌクレオチド分子、ペプチド、タンパク質等を挙げることができる。なお、溶液Lとしては、DNA等のヌクレオチド分子を緩衝液等で溶解したものを用いることができる。
【0054】
電導性ゲル収容槽12に収容された電導性ゲルGは、溶液Lの溶媒(緩衝液等)は通過できないが、直流電界の作用によって荷電性の試料物質Sを移動通過させることができる性質を有するゲルであればどのようなものでも適宜採用可能である。
【0055】
装置1の下側の基板2は、石英ガラスや合成樹脂等で形成されたものであり、例えば、DNAチップ、プロテインチップその他のセンサーチップを構成する基板である。基板2の上面には、微少容積のウエル形状等からなる凹部構造部位であって、緩衝液等の溶液を貯留可能な反応領域(スポット領域)21が設けられている。
【0056】
この反応領域21に対して、装置1の溶液槽11から試料物質Sが、所定の手順によって供給等される(後述)。本装置1は、反応領域21に密着させた状態で試料物質Sを供給又は回収する構成であるので、試料物質Sを乾燥雰囲気に晒すことなく、基板2上にスポッティングすることができる。
【0057】
反応領域21のいずれかの箇所には、試料物質S(例えば、DNAプローブ等の検出用試料物質D)を固定化できるように表面処理が施されている表面部位あるいは金属薄膜表面部位3(以下「検出表面3」という。)が設けられている。
【0058】
この検出表面3は、反応領域21の底面や側壁面等に適宜設けられており、装置1から供給されてきた試料物質Sの一部と化学結合し、該試料物質Sを固定する部位として機能する表面である。例えば、試料物質SがDNAプローブ等の検出用ヌクレオチド分子である場合、ヌクレオチド分子の一端(末端)が検出表面3に固定される。本発明において、検出表面3の構成自体狭く限定されない。
【0059】
この検出表面3の裏面側部位には、図1中に符号Eで示された第二電極が付設されている。この第二電極Eは、装置1が反応領域21の上方に位置されたときに、装置1の上記第一電極Eと一対の対向電極を形成できる関係にあって、スイッチ4のオン/オフ操作によって電源Vを介して電圧印加可能とされている。
【0060】
この構成により、電極E−Eは、溶液L、電導性ゲルG、反応領域21(中の溶液)を通過する直流電界(後述)を形成する役割を果たす。なお、第一電極Eと第二電極Eは、陰極、陽極の切り替えが自在に行うことができる構成とされている。
【0061】
具体的に説明すると、試料物質Sが陰電荷を帯びている場合、第一電極Eを陰極、第二電極Eを陽極として直流電界を形成すると、該試料物質Sは陽極である第二電極E側に向かって移動する。第一電極Eを陽極、第二電極Eを陰極として直流電界を形成すると、該試料物質Sは陽極である第一電極E側に向かって移動する。
【0062】
一方、試料物質Sが陽電荷を帯びている場合、第一電極Eを陰極、第二電極Eを陽極として直流電界を形成すると、該試料物質Sは陰極である第一電極E側に向かって移動する。第一電極Eを陽極、第二電極Eを陰極として直流電界を形成すると、該試料物質Sは陰極である第二電極E側に向かって移動する。
【0063】
以下、添付した図2、図3に基づいて、試料物質Sのひとつである検出用試料物質Dを、基板2の反応領域21の検出表面3に供給して、固定化する手順を説明する。なお、以下の説明では、試料物質Sが、DNAプローブのように陰電荷を帯びた検出用試料物質Dである場合を代表例として説明するが、これに狭く限定する趣旨ではない。
【0064】
まず、図2(A)は、装置1が基板2上方に離れて位置している様子を示している。この状態では、まだ電極E−Eに電圧が印加されていない状態であるので、検出用試料物質Dは、溶液槽11の溶液L中に依然留まっている。
【0065】
続いて、図2(B)では、装置1が基板2の反応領域21に着いて、第一電極E−第二電極E間に電圧が印加されている(この場合、第一電極Eが陰極、第二電極Eが陽極)。これにより溶液L→電導性ゲルG→反応領域21を通過する直流電界Xが形成される。この直流電界Xの作用によって検出用試料物質Dが溶液槽11から電動性ゲル収容槽12を移動通過し、反応領域21へ供給されている。なお、図2(B)中のDは、検出表面3に固定化された検出用試料物質を示している。
【0066】
次に、図2(C)は、反応領域21に存在する未固定状態あるいは不完全状態で固定化されている検出用試料物質(符号Dで示す。)が装置1の溶液槽11へ回収されている様子を示す図である。この手順段階では、第一電極Eが陽極、第二電極Eが陰極に切り替えられており、直流電界Xとは逆向きの直流電界Xが形成されている。
【0067】
図2(B)に示す手順を経て、反応領域21に検出用試料物質Dが供給されると、この検出用試料物質Dの特定部位が検出表面Dに化学結合して固定化される。固定化は、リンカー分子やスペーサ分子を介して行われる場合もある。
【0068】
この固定化の際、立体障害等に起因して、固定化されなかったものや未完全に固定化された検出用試料物質Dが反応領域21中に混在してしまう。そこで、反応領域21中に確実に固定化された検出用試料物質Dのみを残すことができる適度な電圧強度を選択して、直流電界Xとは逆向きの直流電界Xを形成し、検出用試料物質Dを、電導性ゲル収容槽12を移動通過させて、上方の溶液槽11へ回収する(図2(C)参照)。これにより、反応領域21中には、固定化された検出用試料物質Dのみを存在させることができる。
【0069】
図3は、図2(A)〜(C)の手順を電界形成手順の形式で模式的に示した図である。まず、第一電極Eを陰極、第二電極Eを陽極として直流電界Xを形成して検出用試料物質Dを反応領域21に供給する。続いて、一旦電界オフにして検出用試料物質Dの固定化反応を進行させ、所定時間後に、第一電極Eを陽極、第二電極Eを陰極に切り替え、前記直流電界Xとは逆向きの直流電界Xを形成する。
【0070】
ここで、固定化反応の際に直流電界をオフにすると、検出表面3と検出用試料物質Dとの間の化学結合(固定化反応)を、専ら検出用試料物質Dの自然なブラウン運動に委ねた状態で進行させることができるので好適である。
【0071】
以上の装置構成あるいは手順に基づいて、反応領域21中に検出用試料物質Dが固定化された状態の基板2を形成することができる。これは、DNAプローブ等の検出用ヌクレオチド分子が固定化されたDNAチップや検出用のタンパク質が固定化されたプロテインチップその他のセンサーチップの作製又は製造に広く利用できる。
【0072】
次に、図4、図5に基づいて、反応領域21中の検出表面3に検出用試料物質Dが固定化されている状態の基板2に対して、試料物質Sである標的試料物質Tを供給等する手順を説明する。
【0073】
まず、図4(A)は、装置1が基板2上方に離れて位置決めされた様子を示している。この状態では、まだ電極E−Eに電圧が印加されていない状態であるので、標的試料物質Tは、溶液槽11の溶液L中に依然留まっている。
【0074】
続いて、図4(B)では、装置1が基板2の反応領域21に密封状態で着いて、第一電極E−第二電極E間に電圧が印加されている(この場合、第一電極Eが陰極、第二電極Eが陽極)。これにより、溶液L→電導性ゲルG→反応領域21を通過する直流電界Xが形成される。この直流電界Xの作用によって陰電荷を帯びた標的試料物質Tが溶液槽11から電動性ゲル収容槽12を移動通過して反応領域21へ供給される。
【0075】
次に、図4(C)は、反応領域21に固定化されている検出用試料物質D1と相互作用(ここでは、ハイブリダイゼーション)を示さなかった標的試料物質等(符号T)を装置1の溶液槽11へ回収する様子を示す図である。この手順段階では、第一電極Eが陽極、第二電極Eが陰極に切り替えられ、直流電界Xとは逆向きの直流電界Xが形成されている。
【0076】
図4(B)に示す手順を経て、反応領域21に標的試料物質Tが供給されてくると、この標的試料物質Tの特定部位(特定塩基配列部分)は、検出表面3に固定化されている検出用試料物質Dと相互作用(ここでは、ハイブリダイゼーション)を示す。
【0077】
このとき、検出用試料物質Dや標的試料物質Tはランダムコイル状に丸まったりしているので、立体障害等が発生する。これにより、反応領域21中には、検出用試料物質Dと相互作用して結合した(二重鎖を形成した)標的試料物質Tに加えて、相互作用せずに反応領域12に遊離している標的試料物質や検出用試料物質Dと誤相互作用(ここでは、ミスハイブリダイゼーション)した状態の標的試料物質(以下これらをまとめて「標的試料物質T」で示す。)が存在する。
【0078】
これらの標的試料物質Tを反応領域21に放置しておくと、相互作用の有無を検出する作業段階で、擬陽性や偽陰性を示してしまう原因となるので、検出作業段階前に、反応領域21中から標的試料物質Tを除いておくことが望ましい。
【0079】
そこで、反応領域21中において、検出用試料物質Dと相互作用を示した標的試料物質Tのみを残すことができる適度な電圧強度を選択して、上記直流電界Xとは逆向きの直流電界Xを形成し、相互作用を示さなかったり、誤相互作用を示したりした標的試料物質Tを、電導性ゲル収容槽12を移動通過させて、上方の溶液槽1に回収する(図4(C)参照)。これにより、反応領域21中には、相互作用を示した標的試料物質T(とD)のみを存在させることができる。
【0080】
図5は、図2(A)〜(C)から図4(A)〜(C)に至る一連の方法手順を、電界形成手順の形式に従って模式的に示した図である。
【0081】
まず、第一電極Eを陰極、第二電極Eを陽極として直流電界Xを形成して陰電荷を帯びた検出用試料物質Dを反応領域21に供給し(図2(B)参照)、続いて、一旦電界オフにして検出用試料物質Dの検出表面3への固定化反応を進行させ、所定時間後に、第一電極Eを陽極、第二電極Eを陰極に切り替え、前記直流電界Xとは逆向きの直流電界Xを形成し、未固定状態あるいは固定化不充分の検出用試料物質Dを溶液槽11に回収する(図2(C)参照)。この回収された検出用試料物質Dは再利用できる。
【0082】
次に、標的試料物質Tが収容された装置1を基板2移動させ(図4(A)参照)、続いて、第一電極Eを陰極、第二電極Eを陽極として直流電界Xを形成して陰電荷を帯びた標的試料物質Tを反応領域21に供給する(図4(B)参照)。
【0083】
続いて、一旦電界オフにして、固定化された検出用試料物質Dと標的試料物質Tの相互作用を物質間のブラウン運動に委ねて効率よく進行させ、所定時間後に、第一電極Eを陽極、第二電極Eを陰極に切り替えて前記直流電界Xとは逆向きの直流電界Xを形成する。
【0084】
この直流電界Xによって、検出用試料物質Dと相互作用せずに反応領域12に遊離していたり、あるいは検出用試料物質Dと誤相互作用していたりする標的試料物質Tを、電導性ゲルGを移動通過させて、溶液槽11に回収する(図4(C)参照)。
【0085】
以上の装置構成あるいは手順を利用すれば、基板2の反応領域21中に検出用試料物質Dを供給し、この検出用試料物質Dの固定化反応を効率よく進行させ、その後、検出精度に悪影響を与える未固定状態等にある検出用試料物質Dを反応領域21から回収し、続いて、該反応領域21に標的試料物質Tを供給し、該標的試料物質Tを(検出表面3に)固定化された検出用試料物質Dとの間の相互作用(例えば、ハイブリダイゼーション)を進行させ、その後、検出精度に悪影響を与える誤相互作用等した標的試料物質Tを反応領域21から回収するという一連の方法(アッセイ)を円滑に実施することができる。
【0086】
以下、直流電界に加えて、「高周波電界」を形成する手段又は手順を用いるように、更に改良工夫された装置構成あるいは手順に係る発明について、図6〜図10に基づいて説明する。
【0087】
これらの改良発明は、1MV/m程度の高周波電界を印加すると、ヌクレオチド分子(リン酸イオン等を備えるヌクレオチド鎖の陰電荷とイオン化した水素原子の陽電荷で構成される多数の分極ベクトルからなるヌクレオチド分子)に誘電分極が発生し、その結果、ヌクレオチド分子が電界と平行に直線状に引き伸ばされる現象又は原理を利用するものである。
【0088】
高周波電界を形成する具体的な手段あるいは方法としては、可動電極(第三電極)と第二電極を用いる方法(図6)、ゲル収容槽2の下面に配置された第三電極と第二電極を用いる方法(図7)、基板Bの反応領域4に貯留する溶液を挟んで対設されている対向電極を設置する方法(図9)等がある。この高周波電界を形成する手段又は手順を備える装置又は方法は、検出用試料物質DがDNAプローブ等のヌクレオチド分子の時に、特に有効である。
【0089】
まず、図6中の符号E31は、上記した第一電極Eや第二電極E以外の第三の電極であって、高周波電界形成のために用意された「可動電極」を示している。図2(A)〜(C)及び図3に示された方法やその他の方法に従って、反応領域21に検出用試料物質D(DNAプローブ等)が固定化された基板2(DNAチップ等)を準備し、これを用いる。
【0090】
可動電極E31は、その動作がすべてコンピュータ制御等されており、所定のコンピュータプログラムに従って、所定の位置決め動作を行うように定められている。具体的には、まず、待機位置から基板2上に移動してくる動作が実行され、続いて、反応領域21を閉塞するように着く動作を行う(図6(A)参照)。
【0091】
続いて、この可動電極E31と第二電極Eとの間に電圧を印加し、反応領域12中の溶液(緩衝液等)に1MV/m程度の高周波電界Yを形成する。これにより、反応領域21中に固定化された検出用試料物質D(DNAプローブ等のヌクレオチド分子等)を、高周波電界Yの作用によって、直線状に引き伸ばすことができる(伸長作業、図6(B)の符号D参照)。
【0092】
続いて、この伸長作業が終了したら、可動電極E31を反応領域12上方から移動させて(図6(C))、かわりに上記装置1を当該反応領域12上方まで移動させる(図6(D)参照)。
【0093】
次に、第一電極Eと第二電極Eとの間に電圧を印加して、第二電極Eに向かう直流電界Xを形成する。この直流電界Xによって、装置1の溶液槽1に収容された溶液L中の標的試料物質Tを反応領域21に供給する(図6(E)参照)。
【0094】
続いて、所定時間電界オフの状態として、相互作用を効率良く進行させた後に、第一電極Eと第二電極Eとの間に電圧を印加して第一電極Eに向かう直流電界Xを形成する。この直流電界Xによって、反応領域21中の標的試料物質Tを装置1の溶液槽1の溶液L中へ回収する(図6(F)参照)。この回収作業が完了したら、装置1を基板2から引き上げる(図6(G)参照)。
【0095】
図6に示された上記手順を行うことによって、伸長状態とされた検出用試料物質Dと標的物質Tとの間の相互作用を、立体障害の影響が少ない条件下で行うことができる。
【0096】
次に、図7及び図8では、符号Yで示された「高周波電界」を形成するために、電導性ゲル収容槽12の下面(あるいは底面)位置に第三電極E32を設けた実施形態を示している。
【0097】
この実施形態では、装置1に第三電極E32が一体化されているため、装置1に加えてさらに上記可動電極E31を移動させる必要がないという作業上の利点がある。また、第三電極E32は、収容槽12からゲルGを脱落し難くするという機能も発揮するので、この点でも好適である。
【0098】
この第三電極E32は、図7に示すように、電導性ゲル収容槽12の下面(あるいは底面)位置に嵌着等されて配置された電極板であって、電極板を貫通する多数の微小孔4が規則正しく配列された形態を備えている。この微少孔4は、少なくとも試料物質S(T,D)を円滑に通過させることができる程度の口径又はサイズに設定する。
【0099】
以下、図8を参照して、第三電極E32が一体化されている装置1を用いた方法を説明する。まず、図8(A)では、検出用試料物質Dの固定化が既に完了した基板2上に、第三電極E32が一体化された装置1を移動させ手順を表している。そして、この装置1を反応領域21に着けて、第二電極Eと第三電極E32との間に電圧を印加し、反応領域21中に高周波電界Yを形成する(図8(B)参照)。この高周波電界Yの作用によって、検出表面3に伸長状態で固定化された検出用試料物質Dが多数配列されることになる。
【0100】
次に、図8(C)に示す手順では、第一電極Eと第二電極Eとの間に電圧を印加し、溶液槽11から電導性ゲル収容槽12を経て反応領域12に至る直流電界Xを形成する。この直流電界Xの作用によって基板2の反応領域21へ標的試料物質Tを供給する。
【0101】
図8(D)に示す手順では、固定化された検出試料物質Dと標的試料物質Tとの特異的な相互作用によって両者が結合している中で、相互作用を示さなかったり、誤相互作用したりした標的試料物質Tを、直流電界Xと反対方向の反応領域12から電導性ゲル収容槽12を経て溶液槽11に至る直流電界Xによって、装置1の溶液槽1に回収する。
【0102】
次に、図9に基づいて、高周波電界Yを形成する別の実施形態を説明する。この実施形態では、基板2の反応領域21の側壁面のいずれかに検出表面3を形成しておき、かつ反応領域21を挟むように対向電極E、Eを配設しておく。
【0103】
装置1から供給される検出用試料物質Dは、側壁の前記検出表面3に固定化される(図9(A)のD参照)。この固定化された検出用試料物質Dを対向電極E、Eに電圧を印加することによって形成される高周波電界Yによって、横方向に伸長する((図9(B)参照)。
【0104】
次に、装置1を反応領域12に密着させて、第一電極Eと第二電極Eとに電圧を印加し、溶液槽11から電導性ゲル収容槽12を経て反応領域12に至る直流電界Xを形成する。この直流電界Xの作用によって基板2の反応領域21へ標的試料物質Tを供給する(図9(C)参照)。
【0105】
続いて、図9では特に示さないが、直流電界Xをオフにして、相互作用を進行させ、続いて、相互作用を示さなかったり、誤相互作用を示したりした標的試料物質Tを直流電界Xにより回収し、検出作業に入る。
【0106】
図10は、高周波電界Yを用いた試料物質S(T,D)の供給回収方法を電界形成手順に従って説明する図である。
【0107】
まず、第一電極Eと第二電極Eとの間で形成した直流電界Xによって、検出用試料物質Dを溶液槽1から電導性ゲルGを介して反応領域21に供給する。次に、この直流電界Xをオフにして固定化反応を進行させる。
【0108】
そして、前記直流電界Xと反対向きの直流電界Xを第一電極Eと第二電極Eとの間で形成することによって、固定化されなかったり、固定化不十分であったりする検出用試料物質Dを、反応領域21から電導性ゲルGを介して溶液槽11に回収する。
【0109】
続いて、高周波電界Yを上記第三電極であるE31(可動電極)又はE32と第二電極Eとの間で形成したり、上記対向電極E−Eの間で形成したりすることによって、検出表面3に固定化された検出用試料物質Dを伸長する。
【0110】
そして、再び直流電界Xによって標的試料物質Tを溶液槽1から電導性ゲルGを介して反応領域21に供給する。次に、前記直流電界Xをオフにして、伸長状態の検出用試料物質Dと標的試料物質Tの相互作用を進行させる。
【0111】
続いて、直流電界Xと反対向きの直流電界Xを第一電極Eと第二電極Eとの間で形成することにより、相互作用しなかったり、誤相互作用(ミスハイブリ)を示したりした標的試料物質Tを反応領域21から電導性ゲルGを介して溶液槽11に回収する。
【0112】
図11は、基板2の一例を示している。なお、この基板2は、ガラス基板、シリコン基板等の上に、多種・多数の検出用試料物質Dを集積することができるものであればどのようなものでもよい。図11では、円板上の基板を用いているが、基板の形状、構成等は、これに限定されない。
【0113】
図11では、基板2の表面に、多数の反応領域21が配設されている。基板2上の反応領域21に装置1を着けて、試料物質S(検出用試料物質D又は標的試料物質T)を供給したり、回収したりする。装置1は、一つの反応領域(例えばR)のみを狙って試料物質Sを供給したり、回収したりできるものでもよいし、複数の反応領域(例えば、R又はR)や基板2上のすべての反応領域21に同時に試料物質Sを供給したり、回収したりできるものでもよい。
【0114】
検出用試料物質Dは、一般に、多種類のものを基板2上に集積させる場合が多い。そのような場合には、一つの反応領域21に対応した装置1を用意し、各反応領域21に、それぞれ別の検出用試料物質Dを供給して、検出用の基板2(手例えば、DNAチップ)を作製する。
【0115】
一方、標的試料物質Tは、一般に、一種のものを、複数の反応領域に供給する場合が多い。そのような場合には、所定範囲の複数の反応領域21に同時に標的試料物質Tを供給できる装置1を用いる。
【0116】
以上のように、本発明に係る装置1は、一つの反応領域21に対応するもの、一列分の反応領域21(R)対応するもの、複数列の反応領域21(R3)に対応するもの、基板2上のすべての反応領域21に対応するものなどを目的に応じて、使い分けることができる。
【0117】
多数の(又は全ての)反応領域21に対応した装置1の場合、溶液槽1に入れる試料物質D、Tを適宜変えることによって、効率的に手順を行うことができる。検出用試料物質Dは、それぞれの溶液槽1に別々の物質を入れておいてから、その後の手順を行えば、供給、固定化、回収等の一連の工程を、同時に行うことができる。
【0118】
標的試料物質Tの場合、全ての(装置1の)溶液槽1に同種の物質を入れてから、その後の工程を行うことにより、一回の作業で、相互作用の検出等を行うことができる。その他、例えば、数列ごとに、違う物質を入れて、いくつかの実験、検定等を一回の作業で行うこともできる。なお、一連の工程、特に、装置1と基板2の移動及び組み合わせや、電界の形成手順等は、コンピュータ制御等によって実行可能である。
【0119】
【発明の効果】
本発明には、以下のような効果がある。
【0120】
本発明に係る「試料物質供給回収方法」を用いることにより、試料物質を乾燥雰囲気に晒さすことなく、試料物質を基板上にスポッティングすることができる。
【0121】
この方法は、検出用試料物質を基板上にスポッティングできるだけでなく、検出用試料物質を固定した基板に標的試料物質を供給し、検出用試料物質と標的試料物質が相互作用(例えば、ハイブリダイゼーション)を示すかどうかを検出する実験に役立てることができる。
【0122】
また、本発明に係る方法を用いて、相互作用を示すかどうかを検出する実験を行う場合は、従来のような洗浄液を用いた洗浄工程を必要としないから、実験作業者は、的確な洗浄溶液の選定や洗浄溶液の条件設定に関して配慮する必要がなく、簡易かつ効果的な相互作用実験を実施することができる。また、洗浄作業による試料物質のロスを防ぎ、効率的かつ経済的な実験が可能となる。
【0123】
本発明に係る方法では、直流電界に加えて、高周波電界を用いることができるため、特に、DNAプローブ等のヌクレオチド分子を検出用試料物質として用いる場合においてこれを伸長させることができるので、標的試料物質との相互作用(ハイブリダイゼーション等)の効率を向上させることができる。
【0124】
本発明では、試料物質を基板上(の反応領域)に供給する方法、基板上(の検出表面)に固定化等されなかった試料物質を回収する方法、検出用試料物質と標的試料物質の相互作用を確実に検出できる方法を提供できる。
【0125】
その他、本発明は、DNAプローブ等のヌクレオチド分子で特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る試料物質供給回収装置(1)の好適な実施形態を示す図。
【図2】同装置(1)を用いて検出用試料物質(D)を供給、固定化、回収する一連の方法を示した図。
【図3】同方法を電界形成手順に従って説明する図。
【図4】同装置(1)を用いて標的試料物質(T)を供給、固定化、回収する一連の方法を示した図。
【図5】同方法を電界形成手順に従って説明する図。
【図6】第三電極として可動電極(E31)を用いた場合の一連の方法を示した図。
【図7】電導性ゲル収容槽(12)の下面に配置される第三電極(E32)の構成を示す図。
【図8】同第三電極(E32)が設けられた装置(1)を利用する一連の方法を示した図。
【図9】反応領域(21)に対向電極(E,E)を設けた場合の一連の方法を示した図。
【図10】高周波電界(Y)を形成する手順を含む一連の方法を電界形成手順に従って説明する図。
【図11】装置1から試料物質(S)が供給等される基板2の領域例を示す図。
【符号の説明】
1 試料物質供給回収装置(装置)
2 基板
3 検出表面(試料物質が固定化される表面部位)
11 溶液槽
12 電導性ゲル収容槽
21 反応領域
D 検出用試料物質
固定化された検出用試料物質
未固定あるいは固定化不充分の検出用試料物質
伸長された検出用試料物質
第一電極
第二電極
31,E32 第三電極
,E 対向電極
G 電導性ゲル
L 溶液
S 試料物質
T 標的試料物質
相互作用した標的試料物質
相互作用しなかったり、誤相互作用を示したりした標的試料物質
供給用の直流電界
回収用の直流電界
Y 高周波電界

Claims (3)

  1. ヌクレオチド分子を含む溶液を貯留する溶液槽と、前記溶液槽に連通された電導性ゲル収容槽と、直流電界を形成するための第一電極と、を少なくとも備える試料物質供給回収装置を用い
    前記第一電極と外部の反応領域に付設された第二電極に電圧を印加して前記直流電界を形成することによって、
    (1)前記溶液槽内の検出用ヌクレオチド分子を、電動性ゲルを移動通過させて前記反応領域へ供給する手順と、
    (2)前記反応領域に臨む所定表面部位に対して、前記検出用ヌクレオチド分子を固定化する手順と、
    (3)前記表面部位に未固定状態又は固定化不十分状態の前記検出用ヌクレオチド分子を、電導性ゲル内を移動通過させて前記溶液槽に回収する手順と、
    (4)前記溶液槽内の標的ヌクレオチド分子を、電導性ゲルを移動させて所定の反応領域に供給する手順と、
    (5)固定化された前記検出用ヌクレオチド分子と前記標的ヌクレオチド分子との間の相互作用を行う手順と、
    (6)固定化された前記検出用ヌクレオチド分子との間で相互作用を示さなかった標的ヌクレオチド分子又は/及び誤相互作用した標的ヌクレオチド分子を、電導性ゲル内を移動通過させて溶液槽に回収する手順と、
    さらに、前記反応領域を挟んで対設されている対向電極により高周波電界を形成することによって、(7)固定化された前記検出用ヌクレオチド分子を伸長させる手順と、を含み、
    前記手順(3)と前記手順(4)との間に、前記(7)の手順を行う試料物質供給回収方法
  2. 前記手順(2)の際に直流電界オフにすることを特徴とする請求項1記載の試料物質供給回収方法
  3. 前記手順(5)の際に直流電界オフにすることを特徴とする請求項1記載の試料物質供給回収方法
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