JP4345328B2 - 弾性表面波デバイス及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は弾性表面波デバイス及びその製造方法に係り、特に、誘電体基板上に複数の層を備えた積層構造を有する弾性表面波デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)は、水面上を伝わっていく波と同じように弾性体の表面にエネルギーが集中して伝播する波である。この弾性表面波を利用するデバイスとしては、圧電基板の表面上に薄膜電極トランスデューサ(Interdigital Transducer、以下、単に「IDT」という。)を形成し、これを介して電気信号とSAWとの間の変換、逆変換を行うものがある。このデバイスは、半導体ICと同様に基板表面に対するプロセス技術のみで形成することができる。結晶中の弾性振動は、同一周波数の電磁波と比べて波長が10分の一程度ときわめて短く、高周波デバイスの動作を担う波動として適している。SAWは数十MHzから数GHz帯のマイクロ波デバイスに適し、フィルタや共振器等のIC化が困難なデバイスを抜本的に小型化できるという利点がある。
【0003】
また、基板の表面に圧電膜或いは磁性膜を形成し、これらの薄膜を弾性表面波の伝播媒体として用いる場合がある。ここで、上記の薄膜の表面上にIDTを設ければ、高周波帯域の弾性表面波を直接励振、検出する薄膜変換器を構成することができる。この場合、基板には圧電材料を用いる必要がないので、基板材料の選択の自由度が増し、多機能化を図ることが可能であると共に、特性の良い安価な通信用の弾性表面波デバイスの実現が期待される。
【0004】
従来、圧電薄膜を用いた弾性表面波デバイスとして、シリコン基板上に酸化亜鉛薄膜を形成したものが知られており、このタイプのデバイスには、電気機械結合係数を高めて高性能化を図るために、IDTと短絡電極との間に圧電体薄膜が挟まれるように構成したものが知られている(たとえば、以下の非特許文献1参照)。このデバイス構造では、圧電体薄膜の厚さが波長の数%のときに大きな電気機械結合係数が得られるとされている。非特許文献1の第23図には、誘電体基板上にIDT、圧電体薄膜、短絡電極の順に積層した構造(a)及び誘電体基板上に短絡電極、圧電体薄膜、IDTの順に積層した構造(b)が例示されている。
【0005】
【非特許文献1】
National Technical Report Vol.22 No.6 Dec. 1976, P.905: 「薄膜弾性表面波デバイス」三露常男 他(特に、918頁4.3及び第23図参照)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の弾性表面波デバイスにおいて、非特許文献1の第23図(a)に示す構造では、IDTの形成された段差を有する表面上に圧電体薄膜を形成しなければならないので、圧電体薄膜の成膜が困難であり、膜質にも影響が生ずる場合がある。一方、第23図(b)に示す構造では、金属で構成される短絡電極上に圧電体薄膜を形成しなければならないので、圧電体薄膜の膜質が劣化し、良好な性能が得られない場合があるという問題点がある。
【0007】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、誘電体基板上に短絡電極を介して圧電体薄膜を形成してなる弾性表面波デバイスにおいて、圧電体薄膜の膜質に与える影響を低減することにより、高品位のデバイス構成を実現することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の弾性表面波デバイスは、誘電体基板上に下地電極層と圧電体薄膜の積層構造が設けられ、前記圧電体薄膜に弾性表面波を誘起する電極を備えた弾性表面波デバイスであって、前記下地電極層は前記圧電体薄膜の界面上の電位変動を低減する機能を有し、前記下地電極層が半導体で構成されていることを特徴とする。
【0009】
本願発明者は、誘電体基板上に下地電極層と圧電体薄膜の積層構造が設けられた弾性表面波デバイスにおいて、下地電極層を半導体で構成した場合にも、電気機械結合係数が所定条件において向上することを見出した。この場合、下地電極層を半導体で構成することによって、下地電極層を金属で構成した場合に較べて、下地電極層の上に積層される圧電体薄膜の膜質を向上させることが可能になり、その結果、高性能の弾性表面波デバイスを構成できることが判明した。特に、下地電極層と圧電体薄膜とを同種の材料で構成することによって、製造が容易になるとともに、圧電体薄膜の膜質もさらに改善される。
【0010】
本発明において、前記下地電極層は1〜1000Ω・cmの抵抗率を有することが好ましい。通常、半導体とは、抵抗率に関して、10−3Ω・cm以下の導体と、抵抗率が10Ω・cm以上の絶縁体との中間に位置する材料を広く包含するが、特に、約1〜1000Ω・cmの抵抗率を有することが好ましい。上記範囲よりも抵抗率を低くすることは、一般的な材料ではドーピングなどを行わない限り困難であり、上記範囲よりも抵抗率を高くすると、短絡電極としての機能を充分に発揮することが困難になる。なお、圧電体薄膜の抵抗率は、1MΩ以上であり、特に100MΩ以上(100MΩ〜1GΩ)であることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記下地電極層は半導体特性を有する酸化亜鉛で構成されていることが好ましい。下地電極層が半導体特性を有する酸化亜鉛で構成されていることによって、上層の圧電体薄膜を良好な膜質に成膜することが容易になる。また、酸化亜鉛を材料とする場合には半導体特性を有する薄膜を容易に形成できる。
【0012】
本発明において、前記圧電体薄膜は圧電体特性を有する酸化亜鉛で構成されていることが好ましい。酸化亜鉛を材料とする場合には圧電体特性を有する薄膜を容易に形成できる。また、下地電極層と圧電体薄膜とを共に酸化亜鉛で構成することにより、製造が容易になり、たとえば、製造条件のみを変えることによって連続工程で形成できるとともに、圧電体薄膜の膜質(結晶性や配向性)をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明において、前記弾性表面波の波長をλとし、前記圧電体薄膜の厚さをTpとしたとき、規格化された膜厚khp=2πTp/λが約0.1〜0.8であることが好ましい。膜厚khpが約0.1〜0.8である場合には、下地電極層を設けない場合に較べて大幅に電気機械結合係数が高くなる。
【0014】
本発明において、前記圧電体薄膜はLiNbOで構成され、前記弾性表面波の波長をλとし、前記圧電体薄膜の厚さをTpとしたとき、規格化された膜厚khp=2πTp/λが約2.0〜3.0であることが好ましい。圧電体薄膜としてLiNbOを用いた場合には、膜厚khpが約2.0〜3.0である場合には、下地電極層を設けない場合に較べて電気機械結合係数が大幅に高くなる。
【0015】
本発明において、前記誘電体基板と前記下地電極層との間に硬質誘電体層が設けられていることが好ましい。この手段によれば、誘電体基板よりも硬質の硬質誘電体層が設けられることにより、誘電体基板として比較的安価な素材、たとえば、シリコン基板、ガラス基板などを用いても、弾性表面波の伝播速度を高くすることができ、デバイスの高速化・高周波化が可能になり、デバイスの小型化も可能になる。
【0016】
次に、本発明の弾性表面波デバイスの製造方法は、誘電体基板上に半導体で構成される下地電極層を形成する工程と、前記下地電極上に圧電体を成膜して圧電体薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明において、前記下地電極層を形成する工程を成膜装置内で実施し、該成膜装置内で引き続き成膜条件を変更することにより前記圧電体薄膜を形成する工程を実施することが好ましい。これによれば、下地電極層と圧電体薄膜との間の界面の清浄性の向上及び製造時間やコストの低減を図ることができる。
【0018】
本発明において、前記下地電極層は半導体特性を有する酸化亜鉛で構成し、前記圧電体薄膜は圧電体特性を有する酸化亜鉛で構成することが好ましい。
【0019】
本発明において、前記下地電極層を形成する工程では、酸化亜鉛若しくは亜鉛をターゲットとするスパッタリングを酸素分圧の低い雰囲気にて実施し、前記圧電体薄膜を形成する工程では、酸化亜鉛若しくは亜鉛をターゲットとするスパッタリングを酸素分圧の高い雰囲気にて実施することが好ましい。これによれば、酸素分圧の低い雰囲気にて成膜することによってn型半導体特性を有する酸化亜鉛を下地電極層として形成することができ、また、酸素分圧の高い雰囲気にて成膜することによって圧電体特性を有する酸化亜鉛を圧電体薄膜として形成することができる。
【0020】
上記各発明において、前記下地電極層としては、上記の酸化亜鉛の他に、シリコン半導体や他の化合物半導体を用いることができる。また、誘電体基板の表面にキャリア導入などによって抵抗率を低下させて形成した低抵抗層であっても構わない。
【0021】
上記各発明において、前記圧電体薄膜としては、上記の酸化亜鉛の他に、LiNbO、LiTaO、KNbO、PZTなどが挙げられる。その他の圧電薄膜でも支障ない。
【0022】
また、前記誘電体基板としては、シリコン、ガラス、石英、水晶などが挙げられる。誘電体基板としては、上層の膜質を損ないにくい材料、或いは、比較的安価な材料で構成されたものであることが好ましい。その他の誘電体や誘電薄膜でも支障ない。
【0023】
さらに、前記硬質誘電体層の材料としては、窒化シリコン、ダイヤモンド、サファイア、窒化アルミニウム、シリコンカーバイド、酸化チタンなどが挙げられる。硬質誘電体層としては、少なくとも誘電体基板よりも硬度の高い材料の誘電体や圧電体であることによって弾性表面波の高速化に寄与する。なお、その他の硬質誘電薄膜でも支障ない。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面を参照して本発明に係る弾性表面波デバイスの実施形態について詳細に説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る弾性表面波デバイスの一例である第1実施形態の構成を模式的に示す概略斜視図である。この弾性表面波デバイス100では、シリコン基板、ガラス基板、石英基板などで構成される誘電体基板101の表面上に、シリコン半導体や化合物半導体などの半導体で構成される下地電極層102が形成され、この下地電極層102の上に酸化亜鉛(ZnO)、LiNbO、LiTaO、KNbO、PZTなどの圧電体で構成される圧電体薄膜103が形成されている。また、圧電体薄膜103の表面上には、すだれ状電極104を有するIDT110が形成されている。この図示例では、IDT110の両側にグレーティング反射器120が配置される。図示例の弾性表面波デバイス100は、すだれ状電極104によってIDT110にて形成される弾性表面波がグレーティング反射器120間において共振する共振器を構成する。なお、本発明に係る弾性表面波デバイスとしては、上記の共振器に限らず、フィルタ、遅延線、コンボルバ(相関器)などを構成することも可能である。これらの場合、上記の図示例とは異なり2以上のIDTを設けることがある。
【0026】
IDT110に設けられる上記のすだれ状電極104の形成間隔によって、IDT110により励起される弾性表面波の波長λが決定される。励振される弾性表面波の波長λは、図1に示すように一対の電極体110S,110Tが設けられ、図2に示すように電極体110Sに接続されたすだれ状電極104Sと、電極体110Tに接続されたすだれ状電極104Tとが交互に形成されている場合、各すだれ状電極の形成周期に等しくなる。一般には、IDT110のすだれ状電極104は、0.5〜10μm程度の波長λの弾性表面波に対応する配列構造を有する。たとえば、上記図示例のようにシングル電極構造の場合には、上記波長λの1/2の間隔ですだれ状電極104が配列される。また、ダブル(スプリット)電極構造では、波長λの1/4の間隔で配列される。
【0027】
上記のように半導体で構成される下地電極層102が形成され、この下地電極層102上に圧電体薄膜103が形成されることにより、デバイスの電気機械結合係数Kが所定の膜厚範囲で向上し、その結果、デバイスの性能向上や小型化を図ることが可能になる。
【0028】
図2は、本発明の弾性表面波デバイス100の断面構造を模式的に示す概略縦断面図である。誘電体基板101は、取り扱い可能な範囲の厚さを有し、たとえば、数百μm〜数mm程度の厚さのものが用いられる。下地電極層102は、たとえば、シリコン半導体、n型半導体である酸化亜鉛、InPなどの化合物半導体で構成できる。また、酸化亜鉛で構成することもできる。下地電極層102の厚さは、通常0.001〜1.0μm程度に設定される。下地電極層の厚さが薄すぎると、短絡電極(等電位層)としての機能を発揮することが難しくなり、下地電極層の厚さが厚くなりすぎると、製造効率を悪化させる。下地電極層102の抵抗率は約1〜1000Ω・cmの範囲内であることが好ましい。抵抗率がこの範囲を下回る半導体は通常ある程度限られるために素材の選択範囲が限定されてしまう。また、抵抗率が上記範囲を上回ると、圧電体薄膜の界面の電位変動を低減する等電位化効果が不十分となる場合がある。下地電極層102の抵抗率は、構成材料を選択する方法の他に、ドーピングやイオン注入などのキャリア導入や、成膜条件(ガス分圧比、圧力、パワーなど)の変更などによって調整することができる。
【0029】
さらに、圧電体薄膜103は、たとえば酸化亜鉛(ZnO)の基本構成を有する。通常、圧電体薄膜103は、後述する方法などにより圧電特性を有するように成膜されたものである。圧電体薄膜103の厚さTpは、通常、0.5〜50μm程度に形成される。ここで、以下の説明においては、圧電体薄膜103の規格化された膜厚として、上記弾性表面波の波長λを基準としたkhp=2πTp/λ(すなわち、厚さと波数kとの積)を用いる。この場合、厚さTpは単位として[μm]を用いている。
【0030】
図3は、本実施形態の弾性表面波デバイス100の弾性表面波の伝播速度V[m/s]における圧電体薄膜103の膜厚khpに対する依存性を示すものである。ここで用いた弾性表面波デバイス100では、誘電体基板101は面方位(100)のシリコン基板であり、下地電極層102はn型半導体である酸化亜鉛(後述する製造方法で成膜されたもの。抵抗率:10−8〜10Ω・cm、キャリア濃度:1015〜1020cm−3)で構成され、圧電体薄膜103は酸化亜鉛(抵抗率100MΩ以上)で構成されたものである。このグラフにおいて低速側(グラフの下側)にある線はレーリー波のデータを示し、高速側(グラフの上側)にある線は2次波(セザワ波)のデータを示す。いずれの場合にも、圧電体薄膜103の膜厚khpが小さくなるほど伝播速度が上昇する。
【0031】
図4は、上記デバイスの電気機械結合係数K[%]における膜厚khpに対する依存性を示すものである。グラフの下側にある線はレーリー波のデータを示し、グラフの上側にある線は2次波(セザワ波)のデータを示すものである。レーリー波の電気機械結合係数は、khpが約0.1以上1.0以下の領域で顕著な増加を示す。
【0032】
図5は、下地電極層102を形成しない点のみが異なり、他は上記実施形態と同様に構成された第1比較例の伝播速度V[m/s]における膜厚khpに対する依存性を示すグラフ、図6は、上記第1比較例の電気機械結合係数K[%]における膜厚khpに対する依存性を示すグラフである。各グラフにおいてグラフの下側にある線はレーリー波のデータを、グラフの上側にある線は2次波(セザワ波)のデータを示す。この比較例でも、基本的には上記実施形態と類似した傾向を示す。
【0033】
図7は、本実施形態と上記第1比較例とを弾性表面波の伝播速度のデータで比較するグラフ、図8は、本実施形態と上記第1比較例とをデバイスの電気機械結合係数のデータで比較するグラフである。これらのグラフを見ると、弾性表面波の伝播速度においては第1実施形態と第1比較例とでほとんど差異はないが、レーリー波に関する電気機械結合係数では、圧電体薄膜の膜厚khpが約0.1〜0.8の範囲で本実施形態が第1比較例を凌駕している。特に、膜厚khpが約0.1〜0.5の範囲では、本実施形態の電気機械結合係数は第1比較例の2〜3倍の値を示している。
【0034】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図9乃至図14を参照して説明する。この第2実施形態の弾性表面波デバイスは、上記第1実施形態のデバイス100とほぼ同様の構造を有し、誘電体基板101、下地電極102、すだれ状電極104は第1実施形態と全く同様であるので、同一部分についての説明は省略する。この第2実施形態が第1実施形態と異なる唯一の点は、上記の圧電体薄膜103として、酸化亜鉛の代わりにLiNbOを用いている点である。
【0035】
図9は、本実施形態の弾性表面波デバイス100の弾性表面波の伝播速度V[m/s]における圧電体薄膜103の膜厚khpに対する依存性を示すものである。このグラフにおいて低速側(グラフの下側)にある線はレーリー波のデータを示し、高速側(グラフの上側)にある線は2次波(セザワ波)のデータを示す。いずれの場合にも、圧電体薄膜103の膜厚khpが小さくなるほど伝播速度が上昇する。
【0036】
図10は、上記デバイスの電気機械結合係数K[%]における膜厚khpに対する依存性を示すものである。グラフの下側にある線はレーリー波のデータを示し、グラフの上側にある線は2次波(セザワ波)のデータを示すものである。レーリー波の電気機械結合係数は、khpが約0.5以上3.0以下の領域で顕著な増加を示す。
【0037】
図11は、下地電極層102を形成しない点のみが異なり、他は上記第2実施形態と同様に構成された第2比較例の伝播速度V[m/s]における膜厚khpに対する依存性を示すグラフ、図12は、上記第2比較例の電気機械結合係数K[%]における膜厚khpに対する依存性を示すグラフである。各グラフにおいてグラフの下側にある線はレーリー波のデータを、グラフの上側にある線は2次波(セザワ波)のデータを示す。この比較例でも、基本的には上記実施形態と類似した傾向を示す。
【0038】
図13は、本実施形態と上記第2比較例とを弾性表面波の伝播速度のデータで比較するグラフ、図14は、本実施形態と上記第2比較例とをデバイスの電気機械結合係数のデータで比較するグラフである。これらのグラフを見ると、弾性表面波の伝播速度においては第2実施形態と第2比較例とでほとんど差異はないが、レーリー波に関する電気機械結合係数では、圧電体薄膜の膜厚khpが約2.0〜3.0の範囲で本実施形態が第2比較例を凌駕している。
【0039】
[その他の実施形態]
上記実施形態の変形例の構造を図17に示す。この変形例の弾性表面波デバイス200は、シリコン基板などの誘電体基板201の表面上に、窒化シリコン(Si)、ダイヤモンド、サファイア、窒化アルミニウム、シリコンカーバイド、酸化チタンなどで構成される硬質誘電体層202が形成され、この硬質誘電体層202の上に上記各実施形態と同様の下地電極層205、圧電体薄膜203、すだれ状電極204が順次に形成されたものである。このように誘電体基板201と下地電極層205との間に硬質誘電体層202を形成することによって、誘電体基板201としてシリコン基板やガラス基板などの比較的安価な基板を用いても弾性表面波の高速化を図ることができる。
【0040】
[製造方法]
次に、図15を参照して上記実施形態の弾性表面波デバイスの製造方法について説明する。ここで、この製造方法では、上記実施形態の弾性表面波デバイス100を製造する場合について説明するが、上記の変形例の弾性表面波デバイス200においても、硬質誘電体層202を形成する工程が増える以外は同様である。なお、窒化シリコン(Si)などの硬質誘電体層202は、常圧CVD法、プラズマCVDなどによって形成できる。成膜ガスは、窒化シリコンの場合、通常、SiH、NH、Hを用いる。
【0041】
まず、誘電体基板101の表面を清浄化する。誘電体基板、たとえばシリコン基板の清浄化は、純水や溶剤等を用いた洗浄等により行うことができる。たとえば、硫酸で処理した後に中和し、さらに純水で洗浄した後に乾燥させる。
【0042】
次に、図15(a)に示すように、当該表面上にn型半導体である酸化亜鉛を成膜し、下地電極層102を形成する。この成膜工程は、スパッタリング法、蒸着法、レーザアブレーション法、CVD法などによって行うことができる。たとえば、スパッタリング法としては、高周波マグネトロンスパッタリングが挙げられる。スパッタリング法を用いる場合、ターゲット材質としては、酸化亜鉛で圧電体薄膜を構成するとき、金属Znでもよく、酸化亜鉛でもよいが、酸化亜鉛のターゲットを用いることが膜質を向上させるために好ましい。ターゲット材質の具体例としては、たとえば、ZnO−LiO(酸化亜鉛に1.5モル%の酸化リチウムを添加したもの)がある。以下の記述では、このターゲットを用いて実験を行っている。
【0043】
雰囲気としては、酸化亜鉛のターゲットを用いる場合、Arなどの不活性ガスが用いられる。ここで、微量の酸素ガスを導入してもよい。亜鉛ターゲットを用いる場合には、ある程度の酸素ガスを導入する。ただし、雰囲気中の酸素分圧は、後述する圧電体薄膜を形成する工程よりも低い値にする。他の条件の例としては、RFマグネトロンスパッタリング装置を用いる場合、パワーが200〜600W、基板温度270〜330℃、真空度(チャンバ圧力)5Pa以下、Ar流量100SCCMである。このような条件で、n型半導体特性を有する酸化亜鉛薄膜を形成できる。
【0044】
次に、図15(b)に示すように、上記下地電極層102の上に酸化亜鉛で圧電体薄膜103を形成する。この圧電体薄膜103の成膜工程は、スパッタリング法、蒸着法、レーザアブレーション法、CVD法などによって行うことができる。たとえば、スパッタリング法としては、高周波マグネトロンスパッタリングが挙げられる。スパッタリング法を用いる場合、ターゲット材質としては、酸化亜鉛で圧電体薄膜を構成するとき、金属Znでもよく、酸化亜鉛でもよいが、酸化亜鉛のターゲットを用いることが膜質を向上させるために好ましい。ターゲット材質の具体例としては、たとえば、ZnO−LiO(酸化亜鉛に1.5モル%の酸化リチウムを添加したもの)がある。以下の記述では、このターゲットを用いて実験を行っている。
【0045】
雰囲気としては、Arなどの不活性ガスに酸素を混合したもの(たとえば混合比が容積比で50:50)が用いられる。他の条件の例としては、RFマグネトロンスパッタリング装置を用いる場合、パワーが200〜600W、基板温度270〜330℃、真空度(チャンバ圧力)5Pa以下、Ar流量50SCCM、酸素流量50SCCMである。また、スパッタリングの電力(パワー)は膜質に影響する。上記の範囲では、一般にパワーが大きいほど成膜速度が増大するが、膜質は低下する。このような条件で、圧電体特性を有する酸化亜鉛薄膜を成膜できる。
【0046】
上記のように半導体特性を有する酸化亜鉛薄膜の上に圧電体特性を有する酸化亜鉛薄膜を形成することにより、上層の圧電体薄膜103の膜質を向上させることができ、高性能のデバイスを製造できる。特に、本実施形態の場合には、同じ酸化亜鉛で下地電極層102と圧電体薄膜103とが形成されているので、界面の整合性がよくなり、圧電体薄膜の結晶性も大幅に向上する。
【0047】
なお、下地電極層102と圧電体薄膜103は同一の成膜装置によって続けて形成することができる。上記の例では、当初は成膜雰囲気中の酸素分圧を低く(或いは酸素供給を遮断)しておき、下地電極層102を成膜する。その後、成膜雰囲気中の酸素分圧を高く(酸素供給を開始)し、圧電体薄膜103を成膜する。これによって、各層の成膜工程を別々の装置で行う必要がなくなるので、製造効率を飛躍的に高めることができる。また、下地電極層102と圧電体薄膜103の界面も清浄に形成することができる。
【0048】
図16は、上記の成膜工程において用いるスパッタリング装置の概略構成を示す。この装置10は、原料ガスを混合して供給するガス供給手段11と、このガス供給手段11から所定のガスの供給を受ける高周波スパッタリング装置等の装置本体12と、装置本体12に電力を供給する電力供給手段13と、装置本体12のチャンバー内部を排気する排気装置14とを備えている。装置本体12のチャンバー内には図示しないターゲットと、誘電体基板101を配置する基板ホルダとが対向配置される。
【0049】
次に、図15(c)に示すように、圧電体薄膜103の上に電極材料層104Aを形成する。この電極材料層104Aとしては、たとえば、Al等の金属を用いることができる。成膜方法としては、スパッタリング法、蒸着法、レーザアブレーション法などを用いることができる。その後、電極材料層104A上にレジスト層105Aを形成する。レジスト層105Aは、たとえば感光性レジストをスピンコーティング法などによって塗布し、乾燥若しくは加熱硬化させることによって形成できる。その後、当該レジスト層のパターニングを行う。このパターニングは、たとえば、通常のフォトリソグラフィ法等を用いる。より具体的には、レジスト層105Aを所定の露光マスクを用いてパターン露光し、その後、レジスト層105Aを現像することによって、図15(d)に示すレジストマスク105を形成する。
【0050】
次に、上記のレジストマスク105を用いて、エッチングなどによって電極材料層104Aをパターニングし、図15(e)に示すすだれ状電極104を形成する。その後、レジストマスク105を除去することによって、図15(f)に示すように、表面にすだれ状電極104を備えた弾性表面波デバイスの構造が形成される。
【0051】
なお、すだれ状電極104の表面上には図示しないシリコーン樹脂などの樹脂モールド材やSiOなど無機絶縁膜のコーティングを施すことが好ましい。これによってすだれ状電極の腐食や損傷などを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る弾性表面波デバイスの外観を示す概略斜視図。
【図2】 第1実施形態の弾性表面波デバイスの概略断面図。
【図3】 第1実施形態の弾性表面波の伝播速度と膜厚khpとの関係を示すグラフ。
【図4】 第1実施形態の電気機械結合係数と膜厚khpとの関係を示すグラフ。
【図5】 第1比較例の弾性表面波の伝播速度と膜厚khpとの関係を示すグラフ。
【図6】 第1比較例の弾性表面波の電気機械結合係数と膜厚khpとの関係を示すグラフ。
【図7】 弾性表面波の伝播速度と膜厚khpとの関係について第1実施形態と第1比較例とを比較して示すグラフ。
【図8】 電気機械結合係数と膜厚khpとの関係について第1実施形態と第1比較例とを比較して示すグラフ。
【図9】 第2実施形態の弾性表面波の伝播速度と膜厚khpとの関係を示すグラフ。
【図10】 第2実施形態の電気機械結合係数と膜厚khpとの関係を示すグラフ。
【図11】 第2比較例の弾性表面波の伝播速度と膜厚khpとの関係を示すグラフ。
【図12】 第2比較例の弾性表面波の電気機械結合係数と膜厚khpとの関係を示すグラフ。
【図13】 弾性表面波の伝播速度と膜厚khpとの関係について第2実施形態と第2比較例とを比較して示すグラフ。
【図14】 電気機械結合係数と膜厚khpとの関係について第2実施形態と第2比較例とを比較して示すグラフ。
【図15】 弾性表面波デバイスの製造工程を示す工程断面図(a)〜(f)。
【図16】 圧電体薄膜の製造装置の概略構成図。
【図17】 弾性表面波デバイスの変形例の概略断面図。
【符号の説明】
100…弾性表面波デバイス、101…誘電体基板、102…下地電極層、103…圧電体薄膜、104…すだれ状電極、110…IDT、120…グレーティング反射器、khp…圧電体薄膜の規格化された膜厚、Tp…圧電体薄膜の厚さ、λ…弾性表面波の波長

Claims (2)

  1. 誘電体基板上に下地電極層と圧電体薄膜の積層構造が設けられ、前記圧電体薄膜に弾性表面波を誘起する電極を備えた弾性表面波デバイスであって、
    前記下地電極層は半導体特性を有する酸化亜鉛で構成され、
    前記圧電体薄膜はLiNbO3で構成され、前記弾性表面波の波長をλとし、前記圧電体薄膜の厚さをTpとしたとき、規格化された膜厚khp=2πTp/λが2.0〜3.0であることを特徴とする弾性表面波デバイス。
  2. 前記下地電極層は1〜1000Ω・cmの抵抗率を有することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
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