JP4344834B2 - ビーム・ブランク及びその鋳造方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は形鋼のニア・ネット・シェイプ材料であるビーム・ブランクを連続鋳造する方法に関し、特に芯部欠陥が無く均質緻密な組織を持ち、且つ後続の成形圧延に望ましい形状のビーム・ブランクを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
H型、I型等の形鋼は通常、素材として連続鋳造された長方形断面の鋼片を使用し熱間圧延によって製造されている。一部では連続鋳造により鋼片より断面積が小さく、且つH型、I型に近い形状のビーム・ブランクを製造し、圧延に供されている。
【0003】
上記鋳造ビーム・ブランクにより鋼片のブレイク・ダウン工程が省略されるという効果が得られる。他方、特異な断面形状の故に表面割れ、内部割れ、中心偏析などの品質問題やブレイクアウト等の操業問題の克服が困難で、結果的に鋳込速度が上げられていない。その上断面積も相対的に小さいので鋳造能率は高々60t/時間程度である。スラブ状鋼片の80〜160t/時間に比較して不利という問題がある。鋳造の困難性からブランクの肉厚も通常90mm以上であってこれが当該方法のニア・ネット・シェイピングの限度になっている。
【0004】
ビーム・ブランクをより有利に鋳造する一方法が特開平8−39219に提示されている。該方法は一種の湾曲式の連続鋳造方法であって、鋳型断面形状を長方形とし、鋳片引抜軌跡を3/4円周までは同一曲率円弧、以後は水平とし、鋳片内部の溶融芯を1/2円周を越えて鋳込み面から約1.4m高い位置まで保持し該位置で重力により鋳片凝固殻から分離して真空の中空鋳片を形成し、その後孔型圧延機又はユニバーサル・ミルを使用して中実のH型、I型等のビーム・ブランクへ圧接成形するものである。本方法には複数の効果がある。凝固終点が存在しないので中心偏析、収縮孔、多孔質等の芯部欠陥が解消され、高品質形鋼の条件である超音波欠陥が回避される。鋳造能率の飛躍的向上、100〜150t/hも可能である。鋳造ビーム・ブランクより薄肉にする方法も開示されている。
【0005】
他方、本方法によるとブランクの肉厚はウェブとフランジでほぼ同等になる。なぜなら鋳片殻厚は断面内でほぼ均一であり、圧接圧延においても圧下比はウェブとフランジで基本的に差をつけることができないからである。もし圧下比に差をつけると、延伸に差が生じて正常な形状が得にくくなる。例えばウェブを相対的を薄くするため大きく圧下するとその分延伸しようとするが、小さい圧下のフランジ部が追随できずウェブが波打つ。ウェブ肉厚が大きい場合はフランジ部はある程度追随できるがその分フランジ幅が減少する。従って所望の形状、寸法、肉厚分布は得にくい。
【0006】
製品形鋼は通常ウェブとフランジで厚さが異なる。製品寸法仕様によっては等厚ブランクより不等厚の方が使い易い。前項の等厚ブランクは鋳造ブランクと比較して肉厚は小さくでき、肉厚の調整もできるが不等厚化まではできず形鋼への成形圧延工程にまだ煩雑さが残る。
【0007】
他の弱点としてビーム・ブランクの形状、寸法に対応して鋳型の変更、2次冷却装置の交換、ロールの孔型もしくユニバーサル・ミルの水平ロール幅の変更即ちロールの交換等をしなければならない。これは設備上の負担と操業効率の低下をもたらし従来の鋳造ビーム・ブランクと同様問題が残る。
【0008】
特開平8−281301にはブルーム連続鋳造ラインの未凝固部を保有する部位にユニバーサル・ミルを付設し、未凝固部の幅と圧下量を調整することによりフランジ幅を自在に造り分けるビーム・ブランク連続鋳造方法が提示されている。本方法によるとフランジ幅は確かに調節でき、且つ水平ロール幅の変更によりウェブ幅を造り分けることも可能と読みとれる。問題はフランジ幅設定が前提となりウェブ厚、フランジ厚とも自在には設定できず結果的にある特定の値をとる。場合により所望とは逆にフランジ厚がウェブ厚よりかなり小さくなることもある。ブランクの製造までは合理化できても、ブランクから形鋼までの成形圧延の煩雑性は改善されにくい。
【0009】
特開平11−77247には多種類のビーム・ブランクを効率的に鋳造する方法が提示されている。本方法では連続鋳造ラインに鍛造装置が設置され、内部が未凝固状態の鋳片が四方から圧下されてビーム・ブランクに形成される。製造するブランクの寸法、形状の変更に対応して鋳型寸法の調節(長方形鋳型の周長変更)、圧下金型幅の調節、圧下量の調節等がなされる。
【0010】
本発明によると多種類の形状のビーム・ブランクが効率的に造り分けられ能率向上、歩留り向上が得られる。ウェブとフランジ間の不等厚化の意義とその実施方法には全く言及されていないが原理的に等厚になる。そのように想定されている。従って既述した問題が残っている。また変形と成形の挙動については一見特開平8−39219と類似しているが、詳細に述べられているように圧接成形ではなく、凝固殼の曲げ成形であり、従って溶融芯が若干残存した溶着となっている。ここから二つの問題が発生する。
【0011】
第1に溶融芯のある凝固殼内面は1%前後の引張り歪みにより割れが発生することは周知である。割れ目には固液界面の濃化溶液が浸透し割れ目偏析となる。溶融芯を持つ鋳片の加工は常にこの危険性を伴っている。本方法では圧下に際してウェブとフランジの境界部の殻内面や長方形鋳片コーナー部の殻内面は必ず大きな引張りを受け割れが発生し易い。割れの一部は後続の圧延工程で圧接・消滅するが、一部は残存して超音波欠陥をもたらす。
【0012】
第2の問題は既述のように基本的に等厚ブランクとなる。不等厚化するため水平方向の圧下比と垂直方向のそれを変えると以下の問題が生ずる。即ち未凝固鋳片の大圧下は条件次第で中心領域は正偏析にも負偏析にもなり、最適条件の範囲は狭いことはよく知られている。圧下に伴う未凝固部の融液の絞り出し量は必然的に両部分で異なり偏析が発生するとともに、半端な絞り出しによる異常組織の発生の危険性がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上に述べたような代表的な従来方法の問題をまとめて改善しようとする。具体的には1)必要最小の鍛錬比で且つ最適ウェブ/フランジ肉厚比、ニア・ネット・シェイプにより近づけること、2)鋳造能率を従来方法の最良水準とすること、3)材料内部品質を従来方法の最良水準とすること、4)多様な寸法、形状への効率的対応を従来方法の最良水準とすること等を課題とする。ここで必要最小鍛錬比は一義的には決定されない。実用上の問題、製鋼上の問題が絡むからである。同様に最適形状、最適肉厚比についても一義的には決まらず、当該工場の製品構成や設備の性能が絡む。しかしそれぞれにとって最適とした値に容易に対応できることを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため発明者は従来方法の長所を踏襲するとともに短所を排除し、且つ新規の工夫を加えて以下の発明をなした。その骨格は鋳造能率と内部品質の解決に対しては特開平8−39219の方法を踏襲する。多様な寸法・形状への効率的対応に対しては特開平11−77247の方法を参考・応用する。必要最小の鍛錬比で且つ適切なウェブ/フランジ肉厚比のニア・ネット・シェイプに対しては特開平8−39219の理論と方法を参考にしつつ新規工夫−−横断面内不均等殻厚を持つ中空鋳片のH型への圧接成形−−によっている。
【0015】
第1の発明は一種の湾曲式の連続鋳造方法であって、鋳型断面形状をほぼ長方形とし、鋳片引抜軌跡を3/4円周までは同一曲率円弧とし以後は水平とし、鋳片内部の溶融芯を1/2円周を越えて鋳込み面から約1.4m高い位置まで保持し該位置で重力により鋳片凝固殼から分離して中空鋳片を形成し、その後水平部位で水平、垂直の4方向から圧接加工を加えて中実ビーム・ブランクとする連続鋳造方法において、ビーム・ブランクのウェブに相当する鋳片の長辺中央部とフランジに相当する鋳片外周の残りの部分とで個別に2次冷却強度を設定して該両部分の殼厚を個別に加減することによりウェブ厚とフランジ厚の比を0.7〜1 5とすることを特徴とするビーム・ブランクの連続鋳造方法である。
【0016】
上記発明において、中空材から中実材への圧接に際してはビーム・ブランクのウェブに相当する鋳片の長辺中央部とフランジに相当する鋳片外周の残りの部分とでほぼ同等の圧下比(=圧接後厚さ/圧接前実質厚さ)とすることが望ましい。また同様に圧接方法として垂直及び水平方向の同時圧下の4面プレスを使用することが望ましい。ここで”圧接前実質厚さ”とは圧接される2枚の殻の厚さの和である。
【0017】
多様な寸法・形状への効率的対応に対しては、ビーム・ブランクの各部分の肉厚仕様に対応して当該部分の鋳片殼厚をブランク肉厚/2/設定圧下比hに従って決定し、ビーム・ブランクの形状、寸法仕様に対応して鋳片実断面積がビーム・ブランクの断面積/該設定圧下比に等しくなるよう鋳片短辺幅は一定のまま長辺幅を決定することが望ましい。ここで、設定圧下比hは0.70以上、0.95以下の適切な値を採用する。
【0018】
上記の方法によって製造され、ビーム・ブランクのウェブ厚とフランジ厚の比が製品形鋼のウェブ厚とフランジ厚の比の±10%の範囲にあることを特徴としたビーム・ブランクを素材とする形鋼は課題を解決した成果となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本発明を実施する連続鋳造機の概要を示す。タンディシュ1の中の溶鋼2をほぼ長方形断面の鋳型3に鋳込み、鋳片4の外皮を形成する。該鋳型3から引き抜かれた該鋳片4を2次冷却装置5貫通させつつスプレイ6により冷却し凝固を進行させる。その際、2次冷却装置5の全域にわたって、鋳片4の表面の長辺中央部であってその幅が製造しようとするビーム・ブランクのウェブ内側寸法に等しい帯域とその他の部分とでスプレイ冷却強度を個別に設定し、鋳片殻厚を個別に加減する。溶融芯7を保有する鋳片4を1/2円周を通過して、鋳込面より約1.4m高い位置Q点(これは大気圧に相当する溶鋼のヘッド)まで引き抜くと、該溶融芯7は凝固殼内面から分離し、中空鋳片8が形成される。該中空鋳片8を3/4周点で伸直ロール9により伸直して水平に引き抜く。次に水平、垂直の2対の金型を持つ4面プレス10により該中空鋳片8の4面を同時に圧下して鋳片内面を互いに圧接せしめ中実化させると同時にH型等に成形して中実ビーム・ブランク11とする。
【0020】
H型への変形の様相を図2によって説明する。中空鋳片8の断面形状に関して、長片中央部は殻厚dwの薄肉部12を形成し、残りの厚肉部13の殻厚dfはdwに対して所定の比率、例えば1.4倍に予め制御されている。既述のように薄肉部12の長さLはブランクのウェブ内寸仕様と等しくしてある。垂直金型14により薄肉部12を圧下する際、該金型幅はウェブ内寸仕様と等しくしてあるので薄肉部12はウェブ15を構成し、その幅Wiは垂直金型14の幅Dwに、即ちウェブ内寸仕様になる。同時に垂直金型14と同期して水平金型16が鋳片両側部を圧下し、厚肉部13の全体が湾曲しつつ垂直金型14の側面をアンビルにして2枚重ねになって圧接され、フランジ17に形成される。垂直、水平とも相対する両金型の接近に伴い凝固殻内面が互いに接触した後圧接と正味の圧下が進行する。垂直金型14の側面にはフランジ幅を規定するカラー18が設けてあり、フランジ部が充満する。重要な条件であるが両部分に対して概ね同一圧下比(=圧接後厚さ/圧接前実質厚さ)となるよう予め金型ストロークの最下点が設定されている。
【0021】
H型等に成形された中実ビーム・ブランク11は切断して再加熱した後、又は再加熱せず、又は切断もせずそのまま形鋼成形圧延ラインに供される。
【0022】
以上は鋳造と変形の様相を定性的に示したものである。次に多種のブランクに対応するための定量的な条件決定と変更方法について説明する。
最初にビーム・ブランクのウェブ、フランジ各肉厚仕様に対応してウェブ及びフランジ相当部の鋳片殼厚をブランク肉厚/2/設定圧下比によって決定し、ビーム・ブランクの形状、寸法仕様に対応して鋳片実断面積がビーム・ブランクの断面積/該設定圧下比に等しくなるよう鋳片短辺幅Sは特定の一定値のまま長辺幅Gを決定する。この条件は体積一定の原理に整合させたものである。形状制御は後述する。このようにして鋳型寸法が決定される。作業方法については多用されている幅可変スラブ鋳型を使用すれば幅は容易に調節できる。短辺幅Sは作業のし易い200mm以下に制限しておくとバルジングが発生しにくく、その結果2次冷却帯における短辺側支持ローラーも不要になる。
【0023】
次に2次冷却帯における殼厚制御に関して、まず所定殻厚に対して2次冷却強度全体を調節することは従来同様であるから説明を省略する。ウェブ相当部と他を弱冷却と強冷却に分けることは事例には無いが当業者にとっては特に困難ではない。問題はブランクの寸法変更に対応して容易に条件を調節できることである。薄肉部12の長さを容易に変更する具体事例を挙げると、図3に示すようにしきり板20を調節して弱冷却ノズル21と強冷却ノズル22の作用幅を加減し、境界を移動させる。一方、短辺側スプレイ・ノズル23は寸法変更によりスプレイ距離が変わる。そのためスプレイ管を前後進させるのは煩雑である。ノズルの配置上の工夫で固定化することができる。即ち、扇型スプレイパタンを引抜方向に対して平行に噴射すると距離が大きくなっても前後のスプレイが重なり水滴密度はほぼ変わらない。短辺幅に対応して幅方向ノズル数を適当に決める。以上の手段により変更作業は特に負担とはならなくなる。
【0024】
鋳片支持機構に関しては、鋳型短辺寸法を一定としたこと、且つ短辺支持ローラーを省略したことにより鋳片長辺最大幅に適合するローラー・エプロンが全サイズに共用できる。
【0025】
次に圧接成形に対してユニバーサル・ミルを使用するとウェブ内寸の変更に際して水平ロールの作用幅の変更が必要で、そのためロールを交換しなければならない。これは大きな負担になる。プレスによる圧接、成形工程でも当然垂直金型14はウェブ寸法の変更に際して交換しなければならないが、比較的容易である。例えば専用ジグを使用して新旧金型を引抜方向に平行に摺動、着脱する。これが本発明において圧接に対してプレスの適用を指定した主な理由である。他方水平金型16の幅はブランクの最大フランジ幅に合わせてあり全サイズに共用される。以上述べたようにブランクの寸法変更に対して部材交換作業、調節作業は必要であるが生産性を阻害するほどのものではない。
【0026】
【作用】
以下上記の発明の作用、根拠及び意義について説明する。
圧接過程を殻内面が接して断面が例えばH型状となる前半を変形過程とし、以後正味の圧下が進行して所定のH型寸法になる後半を成形過程とする。変形過程までは、断面積はほぼ一定で肉厚は殼厚のほぼ2倍になっている。”ほぼ”とした理由は角部の丸み、金型テーパー、歪みの局所不均等等のためである。成形過程ではまず肉厚は定義から2×殻厚×圧下比となる。他方原理として圧下歪みは延伸歪みと拡幅歪みに分解されるがウェブ部の拡幅は水平金型による圧下のため起こり得ない。フランジ部の拡幅は垂直金型のカラーによる拘束のため同様に起こらない。従って圧下歪みはすべて延伸歪みに転換される。両部分は同一の圧下率に設定されているので同一延伸率になり、成形は円滑になされる。このようにウェブ、フランジの両部分が同一圧下比、同一延伸比となることから鋳片実断面積はブランク断面積/圧下比という関係も定まる。ここで設定圧下比については、設備及び作業上無理が無い範囲で適当に設定すればよいが、0.95を越えると操業条件の変動で殼厚が不足した場合には圧接が不充分となり、0.70未満では鋳造組織の加工限界に近づくのでこの間を特定した。
【0027】
ウェブ内寸Wiは垂直金型幅Dw、即ち仕様寸法に一致する。ウェブ肉厚Wtは薄肉部殻厚dwの2枚分と実質圧下比h(=圧下後厚/圧下前厚(=殻厚2枚分))の積になる。元々この関係になるよう殼厚を設定したのでウェブ肉厚Wtは仕様寸法になる。フランジ幅Fは厚肉部13の片側長さのほぼ1/2であり、垂直金型カラー内寸Dfとなる。カラー内寸Dfはフランジ幅仕様寸法に設計、調節されているので仕様に一致する。フランジ肉厚Ftもウェブと同様仕様寸法になる。以上から金型ストローク最下点で形成される空間形状はビーム・ブランク仕様寸法と一致して一定に維持される。このような機構では殼厚が多少変動しても圧下比が追随して変化し、結果的に寸法変動は小さい。
【0028】
以上から製品寸法仕様に合わせて設定圧下比hを介して鋳片殻厚dw、dfが決定され、同時に鋳片実断面積が決定され、さらに長辺幅Gが決定され鋳片形状が定まる。次に4面の金型で形成される例えばH型空間を製品寸法仕様に一致させることによりウェブ相当部、フランジ相当部とも同一圧下率、同一延伸率になり、寸法精度が高く且つ円滑な圧延が可能となる。
【0029】
本方法によるとブランクの外形の自在性が高く形鋼のそれに近づけることができる。肉厚も特開平8−39219に開示された方法により鋳造ビーム・ブランクより容易に小さくすることができるので必要最小の鍛錬比を前提に薄くするほど成形圧延が簡素化される。必要鍛錬比は形鋼では通常5以上とされているが本方法では特開平8−39219に開示されているように芯部欠陥が無く、且つ均質微細組織が得られるので3程度でも充分となる。
【0030】
一般にH型、I型等の形鋼のウェブ/フランジの肉厚比は特殊品を含めるといろいろあるので本発明では両部分の殻厚比は事例に合わせ0.70〜1.50と特定した。ブランクのウェブ/フランジの肉厚比が形鋼のそれと同等なら成形圧延のパス数を減らすことができる。ユニバーサル・ミルによる成形圧延においてはフランジ部の拡幅は条件により微妙に変化するので両者の肉厚比の比は1が最良とは限らない。これが前者を後者の±10%の範囲に限定した理由である。以上のようにブランクの形状、寸法及びウェブ/フランジ肉厚比が形鋼のそれらに近づいてくると現行の往復圧延を含む複雑な異形圧延工程がユニバーサル・ミルによる連続圧延に簡素化される可能性が大きくなる。
【0031】
【実施例】
上記の成形方法を約1/5プラスティシン・モデルによって確かめた。G=200mm、S=30mm、dw=8.5mm、df=12mm、
df/dw=1.4、Dw=70mm、Df=64mm、h=1.0〜0.9とし、変形の進行を観察して以下の知見を得た。
1) 水平金型を若干先行させると変形過程で簡単にH型に変形できる。しかもカラー部のコーナーに充満する。
2) 成形過程ではほぼ所定寸法になった。Wi=69mm、F=64mm、Wt=15mm、Ft=21mm、Ft/Wt=1.4
3) カラーの高さがフランジ厚より小さくてもオーバー・フィル(金型外へのはみ出し)にはなりにくい。容易に延伸する。
以上から本方法は妥当であることが確認できた。
【0032】
【発明の効果】
本発明によると製品形鋼に対して、従来よりも外形が近似し、従来よりも薄肉であり且つウェブ/フランジ肉厚比が近似したビーム・ブランクを容易に連続鋳造法によって製造することができる。鋳造能率は大きく、芯部欠陥が無く均質微細な組織により鍛錬比の制限も緩和されニア・ネット・シェイピングが大きく前進する。複雑な成形圧延工程が大幅に簡素化され、形鋼の連続圧延の可能性、鋳造・圧延一貫の可能性が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は本発明を実施する連続鋳造方法を例示する。
【図2】は中空鋳片から中実ビーム・ブランクへの変形状態を示す。
【図3】は2次冷却におけるスプレイ幅の変更方法を示す。
【符号の説明】
1:タンディシュ 2:溶鋼 3:鋳型 4:鋳片 5:2次冷却装置 6:スプレイ 7:溶融芯 8:中空鋳片 9:伸直ロール 10:プレス 11:中実ビーム・ブランク 12:薄肉部
13:厚肉部 14:垂直金型 15:ウェブ 16:水平金型 17:フランジ 18:カラー 20:仕切板 21:冷却ノズル 22:強冷却ノズル 23:短辺側ノズル
Claims (5)
- 一種の湾曲式の連続鋳造方法であって、鋳型断面形状をほぼ長方形とし、鋳片引抜軌跡を3/4円周までは同一曲率円弧とし以後は水平とし、鋳片内部の溶融芯を1/2円周を越えて鋳込み面から大気圧相当の溶鋼ヘッドだけ高い位置まで保持し該位置で重力により鋳片凝固殻から分離して中空鋳片を形成し、その後水平部位で水平、垂直の4方向から圧接加工を加えて中実ビーム・ブランクとする連続鋳造方法において、ビーム・ブランクのウェブに相当する鋳片の長辺中央部とフランジに相当する鋳片外周の残りの部分とで個別に2次冷却強度を設定して該両部分の殻厚を個別に加減することによりウェブ厚とフランジ厚の比を0.7〜1.5とすることを特徴とするビーム・ブランクの連続鋳造方法。
- ビーム・ブランクのウェブに相当する鋳片の長辺中央部とフランジに相当する鋳片外周の残りの部分をほぼ同等の圧下比(=圧接後厚さ/圧接前実質厚さ)で圧接することを特徴とする請求項1に記載のビーム・ブランクの連続鋳造方法。
- 垂直及び水平方向の同時圧下の4面プレスにより中空材から中実材へ圧接することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の連続鋳造方法。
- ビーム・ブランクの各部分の肉厚仕様に対応して当該部分の鋳片殻厚をブランク肉厚/2/設定圧下比hに従って決定し、ビーム・ブランクの形状、寸法仕様に対応して鋳片実断面積がビーム・ブランクの断面積/該設定圧下比に等しくなるよう鋳片短辺幅は一定のまま長辺幅を決定することを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の連続鋳造方法。ただし、hは0.70以上、0.95以下の値とする。
- 請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4に記載の方法によって、ビーム・ブランクのウェブ厚とフランジ厚の比を製品形鋼のウェブ厚とフランジ厚の比の±10%の範囲に設定することを特徴としたビーム・ブランクを素材とする形鋼。
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