JP4343012B2 - 有害物質含有水性溶液による汚染検知ディスポーザブルシート - Google Patents

Description

本発明は、人体に有害な成分を含有する水性溶液による汚染を容易に検知することのできるディスポーザブルシートに関する。さらに詳しく言えば、放射性元素を含有する物質、例えば実験動物あるいは被験者の患部等を検査するために一時的に使用される人体に有害な放射性同位元素標識化合物等の有毒物質や細菌等を含有する水性溶液による研究者や検査技師等の関係者への二次汚染の防止に有用なディスポーザブルシート（使い捨て）シートに関するものである。

研究機関や病院等の医療機関では、実験用動物や被験者等の対象部位（患部）を検査するために人体に有害な、例えば、放射性同位元素標識化合物その他の有毒物質を一時的に被験対象（動物あるいは人体）に注入して、γ−カメラ等を使用して対象部位（患部等）を撮像して検査あるいは診断することが広く行われている。これらの検査用試薬は作業中にそれが床や作業台などの設備にこぼれることがあるが、布や紙等による拭き取りでは完全な除染が困難なため、一般的には紙製のディスポーザブル（使い捨て）シートを床面に敷いたり、ディスポーザブルシートからなる検査衣、実験衣あるいは作業衣を、被験者、検査技師、研究者あるいは作業者が着用し、汚染した場合はシートあるいは着衣を定められた手順で廃棄することにより二次的汚染の防止を図っている。

ところが、前記の検査あるいは診断に使用される検査試薬は一般に無色透明の水性溶液であるため、それがディスポーザブルシートにこぼれても溶媒が蒸発してしまうと汚染跡が残らず、目視では汚染部位の確認が困難であるため、検査技師等の関係者は汚染されていないと思い込み、比較的高価なディスポーザブルシート製の実験衣を繰り返し使用してしまうことにより、基準量を超える照射を受ける等の二次汚染の可能性があった。

従って、本発明の目的は、ディスポーザブルシートにこぼれた場合、乾燥後にその形跡が残らないような、無色透明の有害物質含有水系溶液による汚染を容易に検知できるディスポーザブル（使い捨て）シートを提供し、危険物による二次汚染の拡大を防止することにある。

本発明者らは前記課題に鑑み鋭意検討した結果、防水層と水系溶剤吸収性材料層からなる従来のディスポーザブルシートの水系溶剤吸収性材料層を、表面の水系溶剤吸収性材料層とその下の水系溶剤に溶解性の染料を含有する中間染色層の積層構造とすることによって、有害物質含有水系溶液がこぼれた時に中間染色層中の水に溶解する染料が表面の非染色層に拡散移動して、水系溶媒が蒸発した後に有害物質含有水系溶液による汚染が明確に表面層に残り確認が容易にできるシートとすることにより前記の課題を解決した。

すなわち、本発明は以下の１〜７のディスポーザブルシートに関する。
１．防水層と水系溶剤に溶解性の染料を含有する中間染色層とその上の非染色層を備えていることを特徴とするディスポーザブルシート。
２．中間染色層及び非染色層が、水系溶剤吸収性材料からなる前記１に記載のディスポーザブルシート。
３．水系溶剤吸収性材料が紙、織布または不織布である前記２に記載のディスポーザブルシート。
４．防水層が防水性のプラスチックシートからなる前記１に記載のディスポーザブルシート。
５．プラスチックシートがポリオレフィンからなる前記４に記載のディスポーザブルシート。
６．有害物質含有水性溶液による汚染が検知できるシートである前記１乃至５のいずれかに記載のディスポーザブルシート。
７．有害物質が、放射性元素を含有する物質である前記６に記載のディスポーザブルシート。

本発明の汚染検知ディスポーザブルシートは汚染部位が染色されるために、簡便に汚染の確認ができる。溶媒が蒸発した後も汚染部位は染色されたままのため、汚染部位を見失うことがない。また、底面は防水性のため、汚染物が下部に浸透することがなく汚染拡大を防止する。汚染検知ディスポーザブルシートが汚染した場合は所定の手順により廃棄することにより簡便に除染できる。

発明を実施の形態

以下、本発明の汚染検知ディスポーザブルシートを図面を参照して説明する。なお、本明細書において水性溶液とは、単なる水溶液だけでなく、水を主体とし、水に溶解する他の溶剤（アルコール等）や、各種物質（塩類）を含有する溶液を含むことを意味し、水系溶剤とは水だけでなく、水を主体とし水に溶解する他の溶剤（アルコール等）を含む溶剤を意味する。
本発明の汚染検知ディスポーザブルシートの１例の平面図を図１（Ａ）に、その側断面図を図１（Ｂ）に示す。

本例のディスポーザブルシート（１）は、表面層（２）と中間染色層（３）と底面の防水層（４）の３層からなる。

表面層（２）は一般に吸水性材料として知られている水系溶剤吸収性材料からなり、後記の中間層に含まれている水溶性染料を含まない層である。通常は無色の紙、織布あるいは不織布を使用するが、有害物質含有水性溶液が付着した際に中間層に含まれている水溶性染料がこの表面に水を介して拡散移行した時にその色が明確に確認できる色であれば、着色していているものでも構わない。

中間層（３）は水系溶剤吸収性材料に水溶性染料を含有した染色層であり、通常は前記表面層と同様の紙、織布あるいは不織布を水溶性染料で染めた層である。使用する染料及びその含有量は特に限定されず、水溶性であって毒性が高くないものであり、有害物質含有水性溶液が表面層に付着した際にその色が表面に移行して溶媒が蒸発した乾燥時に汚染部位が容易に確認できる含有量であればよい。

底面層（４）は、防水性のプラスチックシートからなる層であり、表面と中間層で吸収した有害物質含有水性溶液による汚染が漏れ出ることを防止する。防水性材料は、従来のディスポーザブルシートと同様の材料でよく、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンシートが挙げられるが、ポリオレフィンシートが好ましく、中でもポリエチレンシートが特に好ましい。

本発明のディスポーザブルシートは、中間層として染料含有シートを使用する点を除いて、従来のディスポーザブルシートと同様にして製造することができる。
すなわち、例えば、無色の紙シートと染料含有紙シートを重ね、染料含有シート面を接着剤を塗布したポリシートの上に重ねて加圧エンボス加工することにより容易に製造することができる。

本発明のディスポーザブルシートの各層の厚みは特に限定されず、目的に応じて任意に調整できる。必ずしも、防水層、中間染色層及び非染色層の３層構造でなくてもよい。防水層と中間染色層の間に水系溶剤非吸収性のあるいは吸収性の別の層を設けてもよい。また、表面層の厚みは中間層の色が多少見えている程度でも構わない。

本発明のディスポーザブルシートで汚染を検知する対象となる有害物質含有水性溶液の有害物質の例としては、病院等で検査に使用される放射性同位元素標識化合物、研究機関等で取り扱われる細菌、原子力発電所等の原子力機関で取り扱われる放射性元素化合物等が挙げられる。

［作用］
本発明の汚染検知ディスポーザブルシートは、下記のようにして使用される。
床または作業台などの上に汚染検知ディスポーザブルシートを敷く。また、ディスポーザブルシートからなる検査衣、実験衣を被験者、検査技師あるいは研究者が身に付けて、有害物質含有水性溶液を取り扱う。検査試薬がディスポーザブルシートに付着した場合は吸収され、汚染部位で表面が染色され容易に確認ができる。汚染から時間が経過し溶媒が蒸発しても汚染部位が染色されているので容易に確認できる。汚染されたディスポーザブルシートは所定の手順で廃棄処理ことにより危険物である検査薬による汚染が防止される。

本発明の有害物質含有水性溶液による汚染検知ディスポーザブルシートの１例の平面図（Ａ）及び側断面図（Ｂ）である。

符号の説明

１ 汚染検知ディスポーザブルシート
２ 吸水性材料からなる表面非染色層
３ 吸水性材料からなる水溶性染料含有中間染色層
４ 防水性材料からなる防水層

Claims (3)

1. 防水層と水系溶剤に溶解性の染料を含有する中間染色層とその上の非染色層を備え、前記中間染色層及び非染色層が紙、織布または不織布からなり、前記防水層がポリオレフィンからなる、有害物質含有水系溶液による汚染が検知できることを特徴とするディスポーザブルシート。
2. 有害物質が、放射性元素を含有する物質である請求項１に記載のディスポーザブルシート。
3. 請求項１または２に記載のディスポーザブルシートからなる検査衣または実験衣。