JP4341735B2 - めっき鋼板のプレス成形性評価法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、実際のプレス成形試験を行うことなくプレス成形性が良好なめっき鋼板を的確に判定することにより、プレス成形機へプレス成形性が良好なめっき鋼板を安定的に供給できるように管理することを可能とした、めっき鋼板のプレス成形性評価法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車部品の生産に用いられているプレス金型は、パンチ,ダイス及びしわ押さえのためのビード等によって構成されており、プレス成形の際における“鋼板の金型への流れ込み”は、通常、ビードやしわ押え圧によって調整されている。この場合、鋼板の金型への流入量が過多の場合にはしわが発生し易く、一方、過少の場合には破断を起こし易い。
上記“鋼板の金型への流れ込み”の難易を支配する因子のうち、鋼板側において最も大きく影響するのは“鋼板表面の潤滑性”である。この潤滑性は、鋼板に塗布されるプレス油の性能等といった鋼板上層(表層)を構成する被覆層の物性に左右されることが多いが、鋼板表面自体の潤滑性も支配因子となる。
【0003】
ところで、近年、プレスに供される鋼板において、コスト低減の観点から規格を下げた安価なものが求められるためにグレードダウン化が指向されたり、環境問題から自動車車体重量の低減を求められるために高張力鋼の適用等による板厚低減化(ゲージダウン化)が指向されたりしている。これらの、グレードダウン化,ゲージダウン化は共に材料の機械的性質を下げることになり、プレス成形に際して鋼板の金型への流れ込みを低下させる要因となっている。
従って、上述のようにグレードダウンされた鋼板を用いる場合、それを補償するだけの金型への流入量を確保することはプレス成形において不可欠であり、めっき鋼板にあってはめっき表層の潤滑性を的確に把握する手段の開発が是非とも必要になる。
【0004】
一方、プレス成形の際には、ある程度しわ押え圧を確保した状態でなければしわの発生が避けられないので、このような状態下でのプレス割れを防止するためにも、鋼板表面の潤滑性を的確に把握することは今後ますます重要度を増すものと考えられる。
上述のように、プレス成形性に対して鋼板の表面の潤滑性を適正に把握し評価することは、良好なプレス成形性を確保する上で従来にもまして重要な技術課題となってきた。
【0005】
鋼板表面の潤滑性及びプレス成形性を評価する手法として最も確実な方法は、実際のプレス金型によるプレス成形試験結果を用いることである。
しかしながら、この方法はプレス機の操作やプレス金型の調整に多大な労力,時間,コストを要するので合理的でない。
【0006】
そこで、特開平6−138020号公報として、鋼板試験片を表裏面もしくは片面で押さえ付けて特定速度で引き抜く際の“押え圧”と“引き抜き力”とから摩擦係数を求める平板摺動試験により、鋼板の潤滑性及びプレス成形性を評価する方法が提案された。
また、特開平9−72799号公報には、プレス金型の絞りビード部を模擬したものを鋼板試験片に押し付けた形態で鋼板試験片を引き抜く際の“押え圧”と“引き抜き力”とから摩擦係数を求めるドロービード試験により、鋼板の潤滑性およびプレス成形性を評価する方法が提案されている。
【0007】
一方、特開昭60−250835号公報には、ビード引き抜きと、ダイ丸み半径部分における曲げ,曲げ戻し変形及び摺動とをシミュレートすることによって絞りビード部とダイス肩部との潤滑状態を同時にシミュレートする方法が提案されている。
そして、特開平6−308017号公報には、回転ディスク体にピンで荷重を付与し、摩擦力、加重変動、更には表面粗さ等の様々な情報を取り込んで摺動摩耗を解析する方法が提案されている。
更に、特開2000−193450号公報には、鋼板表面の形状を測定し、その断面曲線から振幅確率密度分布を求め、この振幅確率密度分布等からプレス成形性を間接評価する方法が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、鋼板の潤滑性,プレス成形性に関する種々の評価試験方法や装置等がこれまでにも多数提案されてはいるものの、その何れによっても鋼板表面の摺動性やプレス成形性の正確な評価を十分に行うことができないのが現状であった。これは、その評価方法が複雑であるため、評価結果に鋼板の表面以外の因子が複雑に影響するからであると考えられる。
【0009】
即ち、前記特開平6−138020号公報により提案された方法では、鋼板の表面性状は表面粗さや塗油量の影響を大きく受けるため、これらの影響を受けて表面性状が変化しやすい鋼板について摺動性を正確に評価することは難しい。更に、金型の押え圧の増加により引き抜き時に摺動部分の塑性変形が起きるため、めっき層そのものの摺動性の評価が困難になってしまう。
【0010】
また、前記特開平9−72799号公報や特開昭60−250835号公報により提案された方法では、塑性変形と引き抜き摺動抵抗とを評価してしまうために板厚や強度の影響を受けるのは避けられない。つまり、これらの方法では板厚や強度等の鋼板基材の特性を実質均一にすることが困難であるために、様々な種類の鋼板を用いて莫大な量のデータを採って評価に加える必要があり、鋼板表面(めっき層等)そのものの摺動性を判別してプレス成形性合否判定を行うことが難しい。
【0011】
このように、特開平6−138020号公報,特開平9−72799号公報あるいは特開昭60−250835号公報により提案された方法では、塑性変形機能が影響することを避けられないために鋼板の表面の潤滑性や摺動性を正確に評価することができなかった。
【0012】
一方、特開平6−308017号公報により提案された方法では、摩耗面の解析手法としては優れた点も認められるが、あくまでも摩耗させたときの情報を解析するものであるため、鋼板表面の潤滑性能を的確に解析することはできない。更に、特開2000−193450号公報により提案された方法は、プレス時の摺動挙動を表面粗さの因子で評価しようとするものであるが、鋼板表面の物性 (硬度),潤滑油の種類,潤滑皮膜の種類によって摺動挙動が変化してしまうために、表面粗さのみによって鋼板表面(めっき表面等)の各種状態に左右される摺動性,潤滑性,成形性を評価するのは困難である。
【0013】
このように、めっき鋼板をプレス成形に供するに当って、めっき表層部の摺動性,耐型カジリ性等により変動する表面抵抗を実プレス成形に正確に反映できる程度に的確な評価を行える手法は未だ十分に確立されているとは言えず、厳しいプレス成形性を要求される用途に実プレス成形試験を行うことなくプレス成形性が良好なめっき鋼板を安定的に供給できるように管理し得る手段の開発が急務となっていた。
【0014】
そこで、本発明が目的としたのは、めっき鋼板をプレス成形するに際して、めっき鋼板のめっき表層自体あるいはプレス成形性に影響を及ぼすめっき最表面の“摺動性,耐型カジリ性,成形性等により表されるプレス成形性”を正確に評価することができる的確なめっき鋼板のプレス成形性評価手段を提供し、これにより実プレスを行うことなく安定してプレス成形性の良好なめっき鋼板の管理,供給を実施できるようにすることである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、まず、めっき鋼板をプレス成形する際に発生しがちな被成形材の割れ(プレス割れ)は、プレス時の塗油が部分的に切れ、金型と鋼板とが直接的に接触するいわゆるメタルタツチを起こし易い領域で発生し易いことを確認した。そして、めっき鋼板に関してプレス成形時に割れを発生し易いか否かを的確に評価するには、上述のような状況を発現させ易い“被成形材からなる試験片に金属体を点接触もしくは非常に小さい接触面積で接触させて摺動させる接触摺動試験”が適していることを見出した。
【0016】
また、実プレス成形では金型に被成形材(めっき鋼板)が流れ込んでその表面が摺動を受けるが、メタルタッチによる金型焼き付きが発生すると被成形材の流れ込みが抑制されて最終的にプレス割れが発生することから、摺動距離内での摺動抵抗の変動を正確に測定してプレス成形性の評価に反映させることが重要であることも判明した。
即ち、摺動試験によってめっき鋼板の摺動抵抗を測定しその結果を摩擦係数として評価する際、摺動抵抗の測定をリアルタイムに、そして好ましくは複数の時点(複数点)で測定し、この測定結果に基づく評価を行ったり、更には、前記測定結果を摩擦係数として評価する際にその平均値,標準偏差を取り出すと共に、更に解析を加えることにより、めっき鋼板のプレス成形性と良好な相関関係を示すデ−タを得られることが判明した。
【0017】
つまり、一般的に行われている摺動試験を実施すると、得られる摩擦係数平均値に差が認められない鋼板であっても実プレス成形では割れが発生するものと割れが発生しないものとが出る。これは、プレス成形の際に金型と摺動する被成形材の全摺動部が全て同じ摩擦係数を示すとは限らず、摺動の開始部から終了部までの間で摩擦係数に変化が出るためであると考えられる。そのため、本発明者らは、上記全摺動部あるいは摺動部の或る特定領域における“摩擦係数の変化”を観察しこれをプレス成形性の評価に採り入れることによって、より的確なプレス成形性の評価結果が得られることを確認した。
【0018】
本発明は、上記知見事項等を基にしてなされたものであり、次に示すめっき鋼板のプレス成形性評価法を提供するものである。
1) 摺動摩擦試験機を用い、めっき鋼板からなる被試験材に金属体を“点状”もしくは“接触面積が20mm2 以下の平面状”の接触面でもって接触摺動させると共に、この際の被試験材に押し付ける金属体の押し付け荷重を2〜300N、摺動速度を1〜1000mm/min 、そして総摺動長を5〜20000mmとし、摺動長内において測定される摺動抵抗の変動から“摺動抵抗/押し付け荷重”の値(本発明では“摩擦係数”と称する)の変化を求め、更にこの摩擦係数の変化から摩擦係数平均値μave と摩擦係数標準偏差値μσとを求め、その値によって被試験材のプレス成形性を評価することを特徴とする、めっき鋼板のプレス成形性評価法。
2) 摺動摩擦試験機を用い、めっき鋼板からなる被試験材に金属体を“点状”もしくは“接触面積が20mm2 以下の平面状”の接触面でもって接触摺動させると共に、この際の被試験材に押し付ける金属体の押し付け荷重を2〜300N、摺動速度を1〜1000mm/min 、そして総摺動長を5〜20000mmとし、摺動長内における複数の時点で測定される摺動抵抗の変動から摩擦係数の変化を求め、更にこの摩擦係数の変化から摩擦係数平均値μave と摩擦係数標準偏差値μσとを求め、その値によって被試験材のプレス成形性を評価することを特徴とする、めっき鋼板のプレス成形性評価法。
3) 被試験材と金属体との接触摺動中に少なくとも20以上の時点で摺動抵抗の測定を行う、前記 2)項記載のめっき鋼板のプレス成形性評価法。
4) 被試験材の温度を実プレス成形で昇温する金型温度の領域に保持して摺動抵抗の測定を行う、前記 1)乃至 3)項の何れかに記載のめっき鋼板のプレス成形性評価法。
5) 摺動摩擦試験機を用い、めっき鋼板からなる被試験材に金属体を“点状”もしくは“接触面積が20mm2 以下の平面状”の接触面でもって接触摺動させる際、被試験材に押し付ける金属体の押し付け荷重を2〜300N、摺動速度を1〜1000mm/min 、そして総摺動長を5〜20000mmとし、また過度の局所情報を避けるために、被試験材と金属体との接触摺動長を複数の区域に区分すると共に、摺動抵抗の変動より求められる各区域における摩擦係数の平均値を求め、各区域毎に求めた摩擦係数の平均値のうちの最大値μmax によって被試験材のプレス成形性を評価することを特徴とする、めっき鋼板のプレス成形性評価法。
6) 摺動摩擦試験機を用い、めっき鋼板からなる被試験材に金属体を“点状”もしくは“接触面積が20mm2 以下の平面状”の接触面でもって接触摺動させると共に、この際の被試験材に押し付ける金属体の押し付け荷重を2〜300N、摺動速度を1〜1000mm/min 、そして総摺動長を5〜20000mmとし、摺動長内において測定した摺動抵抗の変動より求められる摩擦係数の変化から“総摺動長における摩擦係数平均値”又は“摺動長の部分区域における摩擦係数平均値”と“総摺動長における摩擦係数標準偏差値”又は“摺動長の部分区域における摩擦係数標準偏差値”とを求め、その値によって被試験材のプレス成形性を評価することを特徴とする、めっき鋼板のプレス成形性評価法。
7) 被試験材の温度を実プレス成形で昇温する金型温度の領域に保持して摺動抵抗の測定を行う、前記 5)又は 6)項記載のめっき鋼板のプレス成形性評価法。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明法において適用される摺動摩擦試験機としては、ピンオンディスクや付着すべり試験機等の摩擦摩耗試験機が好適である。
ピンオンディスクは、ディスク上に載置した被試験材をディスクと共に回転させると共に、当該被試験材の表面にピン状の金属体を押し付けて一方向に摺動させる試験機であるが、付着すべり試験機(バウデン試験機)のように往復運動させる摺動方法も有効である。
ここで、これらの摩擦摩耗試験機による摩擦摩耗試験自体はベアリング材料やセラミックス等を被試験材として公知であるため、装置そのものの詳細な説明は省略する。
【0020】
なお、実プレス成形においてはプレス加工時の摺動方向は一定方向になることが多いことから、本発明法において適用するめっき鋼板のプレス成形性評価機器としてはバウデン試験機よりもピンオンディスクの方がより好ましいと言える。しかし、本発明では、従来から検討されている素材そのものの耐摩耗性を測定することを目的としたものではなく、プレス成形性の良否を判別させることを目的としていて、プレス成形性に影響を及ぼす鋼板表面の摺動抵抗を厳密かつ的確に測定する必要があり、比較的低荷重でかつ短い時間で測定することが重要である。従って、従来の摩擦摩耗試験機のように“素材そのものの摩耗性”を測定し評価する必要がないので、鋼板表面の極く表面だけのメタルタッチを発現する程度の摺動がなされるように装置の作成,改造は必要である。
【0021】
被試験材に摺動接触させる金属体としては、実プレスの金型で使用される材質とするのが好ましく、例えば、JIS−G−4401,4403,4404に定める工具鋼(例えば、SKD11等)があげられる。また、必要に応じて、プレス金型に採用されているCrめっき,TiN処理等の表面処理を施したものを金属体として適用することも可能である。
【0022】
上記金属体の先端形状としては、“点状”もしくは“接触面積が20mm2 以下の平面状”が好ましい。この理由としては、前述したように、極めて厳しいプレス条件下においては表面に存在する油分が油切れを起こしてメタルタッチによる金型焼き付きが発現し、これが実プレス成形性の割れの発生原因と考えられるので、メタルタッチを起こしやすい状態を効果的に発現させる必要があり、そのため極力接触面積を小さくすることが重要だからである。
従って、接触体としての金属体の形状としては、ボール状球体(点状接触)もしくは20mm2 以下の平面部を持つ棒を採用することが好ましい。
【0023】
なお、金属体の接触面積を20mm2 以下に規定した理由は、20mm2 超では平面部での油の流動が生じにくく、押え荷重を上げてもメタルタッチが生じにくくなって極めて過酷な摺動条件の発現が困難であるとともに、大きな面積の平面状の金属体では被接触材である平滑なめっき鋼板に均一な面圧で押え付けることが困難になり、測定結果にバラツキが生じるためである。
従って、接触体である金属体は、極力点接触であることが好ましい。
【0024】
本発明に係るめっき鋼板のプレス成形性評価法では、被試験材に押し付ける金属体先端部の押し付け荷重を2〜300N,摺動速度を1〜1000mm/min、総摺動長を5〜20000mmの条件で被試験材と金属体とを接触摺動させ、その接触摺動中における摺動抵抗の測定を行うのが望ましい。この場合、接触摺動中に少なくとも20以上の時点で摺動抵抗の測定を行うのがより望ましい。
【0025】
つまり、被試験材に押し付ける金属体先端部の押し付け荷重が2N未満であると、プレス割れの原因となる金属と被試験体とのメタルタッチによる金型焼き付が発生しにくくなるため、本発明の鋼板表面の摺動性を測定するための荷重としては不十分な場合が多い。また、摩擦係数の変化を把握できる総摺動長がかなり長くなって評価そのものに時間を要してしまうおそれがある上、プレス成型時に摺動を受ける表面層全ての摺動抵抗がとれず、摺動抵抗が安定して摩擦係数標準偏差が小さくなるため、プレス成形性の有効な評価範囲とはいえなくなるおそれがある。
一方、金属体先端部の押し付け荷重が300Nを超えると、押し付け力が大き過ぎるために実プレス成形に影響を及ぼす表面層以上に鋼板内部の摺動性を測定することになり、鋼板表面の摩擦係数を測定できなくなるおそれが出てくる。
【0026】
従って、金属体先端部の押し付け荷重は2〜300Nの範囲が望ましいが、実プレス時の面圧を考えると当該押し付け荷重の下限は20Nであることがより望ましく、上限は100Nであることがより望ましい。
実際には、メタルタッチによる金型焼き付き現象は接触時の面圧が重要になってくるが、本発明においては接触時の面圧としては10N/mm2以上が望ましく、より好ましくは100N/mm2以上である。
【0027】
一方、摺動速度が1mm/min未満であると、実際のプレス成形時の摺動速度に比較してあまりに遅いために得られる摩擦係数の信頼性が乏しくなる。
これに対して、摺動速度が1000mm/minを超えると金属体と被試験体との間への油の流れ込みが生じてすべりやすくなり、本発明で期待している金属接触が生じなくなって摩擦係数が低下するため、やはり正確な測定を行うことが難しくなるおそれが出てくる。
従って、摺動速度は1〜1000mm/minの範囲が望ましいが、より望ましい範囲は40〜400mm/minである。
【0028】
また、総摺動長が5mm未満であると鋼板から得られる情報(摩擦係数)が少なすぎるためにプレス成形性との相関に関して信頼性に欠ける場合がある。一方、総摺動長が20000mmを超えてもそれ以上の信頼性の向上につながらないだけでなく、回転摺動や往復摺動の場合には荷重を小さくしたとしても摺動により実プレス成型時に影響を及ぼすめっき表面層が測定工具により貫通されてしまい、重要となる鋼板表面を通り越して被試験材内部の摺動抵抗の情報が得られるようになり、後の解析によっても誤差を生じるおそれがある。
従って、総摺動長は5〜20000mmが望ましいが、より望ましくは100〜8000mmの範囲とするのが良い。
【0029】
なお、摺動抵抗の測定は、特に限定されるわけではないものの、被試験材と金属体との接触摺動における摺動長内で少なくとも20点以上(少なくとも20以上の時点で)実施するのが良い。
即ち、本発明ではプレス成形性を判別することを目的としているが、その際に問題となるのは被試験材の表面のみの摺動性である。
しかし、例えば複雑なプレス成形性が行われる自動車車体用の鋼板としては一般には表面にめっき(電気亜鉛めっき,電気亜鉛合金めっき、合金化溶融亜鉛めっき等)を施した防錆処理鋼板が採用されている。更に、これらの亜鉛系めっき鋼板でも、プレス成形性を向上させるために更にその上層にめっきを施した2層めっき、有機樹脂を塗布した有機複合被覆鋼板等、最表面のみを改質しためっき鋼板も適用されている。また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板においては、溶融亜鉛めっきを形成後直ちに加熱して素材の鉄を亜鉛めっき皮膜中に拡散させ合金層を形成させるために、めっき深さ方向に鉄の濃度勾配が生じる傾斜組成になり、めっき最表層は軟質な亜鉛もしくは鉄濃度の低い亜鉛−鉄合金相が残存する場合がある。従って、めっき層全体の合金化度(めっき皮膜中のFe含有率)が同一であっても、表面に軟質相が残存するような合金化溶融亜鉛めっき鋼板では当然に型カジリが生じやすく、プレス成形性が劣化する。即ち、一概に同一表面処理鋼板といっても最表層とめっきバルク層(内部層)とでは摺動性が異なり、最表面の摺動性のバラツキがプレス割れのばらつきになると予想される。そのため、これらのメッキ鋼板は、摺動試験で表面のみの摺動性情報を得るのが難しい材料である。
【0030】
しかるに、摺動試験を行う際に摺動抵抗を複数回採取することによりプレス成形性に関与する表層の摺動性のみを採取することが可能となる。
なお、摺動抵抗の測定点が20回未満であるとプレス成形性に及ぼす表層の正確な摺動性を代表するだけの情報が十分に採取できないおそれがが残るので、測定精度の面からは摺動抵抗の採取回数は20回以上とするのが望ましいが、より好ましくは測定時間中に一定ピッチで100回以上の摺動抵抗をリアルタイムで測定すべきである。
プレス成形性の評価を行うには、最表面の摺動性を効果的かつ精度を上げて測定する必要があることは先に述べた通りであるが、上記測定条件にて表層の摺動性を的確に測定することが可能となる。
【0031】
さて、測定された摺動抵抗からは「摩擦係数=摺動抵抗/押し付け荷重」なる関係に基づいて摩擦係数を導き出すことができるが、本発明ではこのようにして測定された摩擦係数の変化に基づいてめっき鋼板からなる被試験材のプレス成形性を評価する。
【0032】
この場合、測定された摩擦係数の変化から測定された摩擦係数の平均値である摩擦係数平均値μave と標準偏差である摩擦係数標準偏差値μσとを求め、これにより実プレスで関与する表層の摺動抵抗を求めてプレス成形性を評価するのが良い。
以下、この点について説明する。
【0033】
実プレス成形においてはメタルタッチによる金型焼き付きが起き、焼き付いた金属をその後の摺動により除去していく現象が起こっており、最終的に焼き付きによる金属粉の堆積(ビルドアップ)量が著しく増大したときに材料流れ込みが止まってプレス割れが生じると考えられる。従って、めっき表層が焼き付きやすいものでも、容易に剥離することでプレス割れは防止することが可能である。
本発明者らは各種めっき鋼板の調査を行ったところ、“軟質で焼き付き現象を起こしやすいもの”あるいは“表面粗度が大きいもの”は摩擦係数平均値μave が高いが、このようなめっき鋼板であっても必ずしも全てがプレス割れを起こすわけではなく、摩擦係数標準偏差値μσが小さいものはプレス成形が可能であることが判明した。
即ち、一旦、金型に焼き付いても容易に金型から剥離していくことでビルドアップが抑制されるため、摩擦係数のバラツキが小さくなり、摩擦係数標準偏差値μσが小さくなると考えられる。
【0034】
つまり、摩擦係数平均値μave は金型への材料流入のしやすさを表すと共にめっき鋼板の焼き付きやすさの指標であるが、金型に焼き付いた金属粉の剥離のしやすさの指標として摩擦係数標準偏差値μσが存在し、この両方を見ることでプレス割れの原因となる金型へのビルドアップ量を予測することが可能となる。
従って、従来のように摩擦係数のみを見てプレス割れ現象を予測することは必ずしも十分であるとは言えず、めっき鋼板のプレス成形性を正確に予想してプレス成形性に優れためっき鋼板を提供するためには摩擦係数平均値μave の他に摩擦係数標準偏差値μσをも評価することが、より的確なプレス成形性評価につながる訳である。
【0035】
なお、めっき鋼板のプレス成形性評価では、摩擦係数平均値μave 及び摩擦係数標準偏差値μσに関する下記 (1)式及び (2)式を評価基準とするのが良い。
μave ≦ 0.200 ……(1)
μσ≦ 0.080− 0.2×μave ……(2)
プレス成形に供するめっき鋼板が上記 (1)式及び (2)式を共に満足すればプレス成形性が良好であると判断できるが、その理由について説明する。
【0036】
前述のように、摩擦係数平均値μave はめっき鋼板の金型への焼き付き性を示すものであり、摩擦係数平均値μave が 0.200超では金型へ焼き付き現象が顕著になると共に、その表面形状から金型へのひっかかりが大きくなって材料そのものが流れ込まなるためにプレス成型時にプレス割れが生じる。
従って、プレス成形に供するめっき鋼板の摩擦係数平均値μave は好ましくは0.200 以下、より好ましくは 0.180以下とすべきである。なお、摩擦係数平均値μave の下限はプレス割れにおいては特に規定するものではないが、実プレス成型時のしわの問題からすれば0.05以上にするのが好ましい。
【0037】
一方、摩擦係数標準偏差μσは焼き付いた金属の剥離のしやすさを表す指標でもあることから低いほど好ましい。
本発明において摩擦係数平均値μave と摩擦係数標準偏差μσを前記 (2)式の範囲に規定するのが好ましいとした理由は、摺動時の金属粉のビルドアップ量を抑制するためであり、前記 (2)式の範囲を超える摩擦係数標準偏差μσでは金型での金属粉の剥離量よりも金型への金属粉の焼き付き量が多くなり、ビルドアップ量が増大してプレス割れが生じるためである。
なお、より一層過酷なプレス条件を考えた場合には、摩擦係数標準偏差μσは「μσ≦ 0.060− 0.2×μave 」の領域に抑制することが好ましい。
【0038】
ところで、本発明では摩擦係数の解析については摩擦係数平均値μave と摩擦係数標準偏差μσとを採用しているが、最大摩擦係数、あるいはバラツキ等を考慮して最大10点の摩擦係数の平均値等を採用して解析方法に加えることも可能である。
【0039】
ここで、プレス成形性の評価に資する摩擦係数は、被試験材によっては例えば摺動摩擦試験の開始時部分と終了時部分とを除いた部位の摺動抵抗から求められるものを評価に適用しても満足できる結果を得られることが多い。また、摺動摩擦試験での摩擦係数の変化の様相は、測定条件やめっき付着量(表面処理皮膜の付着量)等が同じであれば被試験材におけるめっき(表面処理)の種類毎にほぼ類似することも確認されている。従って、ある特定の被試験材(表面処理鋼板)の摩擦状態を測定する場合、総摺動長にわたって測定値の平均,偏差を採る必要は必ずしもなく、摺動長の特定の部分区域(例えば摺動摩擦試験の開始時部分と終了時部分とを除いた部位)〔本発明ではこれを「部分区域」と呼ぶ〕における摺動抵抗を把握すればプレス成形性の的確な評価を行える場合もある。そのため、前記「摩擦係数平均値」としては“総摺動長における摩擦係数平均値”又は“摺動長の部分区域における摩擦係数平均値”を、そして前記「摩擦係数標準偏差」としては“総摺動長における摩擦係数標準偏差値”又は“摺動長の部分区域における摩擦係数標準偏差値”を採用しても良く、下記の (4)式並びに (5)式を満足した場合に「プレス成形性が良好である」と判定するのが実際作業上好ましい場合もある。
“総摺動長における摩擦係数平均値”又は“摺動長の部分区域にお
ける摩擦係数平均値”≦ 0.20 ……(4)
“総摺動長における摩擦係数標準偏差値”又は“摺動長の部分区域
における摩擦係数標準偏差値”≦ 0.080− 0.2×μave ……(5)
【0040】
また、測定中の最大摩擦係数をプレス成形性評価の解析方法に採用することも可能であることは先に述べた通りであるが、前記「最大摩擦係数」が特異な瞬間最大値であるといった局所情報に過ぎる危険もある。そこで、これを避けるためには、被試験材と金属体との接触摺動長を適宜な複数の区域に区分すると共に、摺動抵抗より求められる各区域における摩擦係数の平均値を求めた上で、各区域毎に求めた摩擦係数の平均値のうちの最大値μmax を基に被試験材のプレス成形性を評価する手法の採用が推奨される。
この場合、前記各区域毎に求めた摩擦係数の平均値のうちの最大値μmax が下記の (3)式を満足した場合に「プレス成形性が良好である」と判定するのが適当である。
μmax ≦ 0.25 ……(3)
【0041】
以上に説明した各めっき鋼板のプレス成形性評価法は、実プレス条件に応じて経験的に適宜使い分けるのが良い。
【0042】
なお、本発明以外の測定条件、例えば試料温度,雰囲気温度,塗油時の油種や塗油量等については材料特性により変化させることも可能であり、実プレス環境に即した条件で行う方がより正確なプレス成形性の判定が可能である。
特に、測定時の温度は非常に重要である。例えば実プレス成形では素材変形による発熱,摺動による摩擦熱で金型温度が上昇し、50〜100℃にまで達するので、本発明に係る試験の際には、被試験材であるめっき鋼板の温度をこの温度域(即ち実プレス成形で昇温する金型温度の領域であって、 より好ましくは30〜90℃の温度域、 更に好ましくは50〜70℃の温度域)に保持して試験・測定を行うことがより実プレス環境を反映できるので好ましい。
【0043】
以上に説明した本発明に係るめっき鋼板のプレス成形性評価法では、プレス成形の際に発生しがちな割れの原因となる“プレス時の塗油が部分的に切れて金型と鋼板とが直接的に接触するいわゆるメタルタツチを起こし易い状態”を簡単かつ正確に再現でき、短時間,安価,少労力でもって正確かつ安定的にめっき鋼板の持つプレス成形能力を評価することが可能であるので、その評価結果に基づく管理によってプレス成形性に優れためっき鋼板を安定して供給することも可能となる。
【0044】
続いて、本発明を実施例によって説明する。
【実施例】
〔実施例1〕
板厚が 0.8mmで、機械的性質が日本鉄鋼連盟規格JSC270D相当の素材をベースにした表1に示す各種めっき鋼板に関して粗度が種々のものを準備し、それらを被試験材として“実プレス成形性”と“ピンオンディスクを用いた本発明に係るプレス成形性評価値”との関係を調査した。
【0045】
【表1】
【0046】
なお、実プレス成形試験としては、図1に示すフェンダーモデル金型でのプレス成形を実施した。
この際に、しわ押え圧を変動させると、しわ押え圧が低い場合にはしわが発生し、高い場合には割れが発生するが、しわも割れも発生しない好適なプレス成形性が得られるしわ押え圧が存在する。その好適しわ押え圧の範囲が広いほどプレス成形性時の成形余裕度が高いことから、好適しわ押え圧を測定することによりプレス成形性の合否判定を行った。
合否判定の判断基準としては、好適しわ押え圧範囲が少なくとも5ton あればプレス機の能力から考えて十分に制御可能であることから、このレベル以上のものを合格(○)とし、更に、成形性で問題になることのない冷延鋼板の好適しわ押え圧範囲が20ton であることから、しわ押え圧範囲がこのレベル以上であるならばより良好(◎)と判断した。
〈プレス成形性合否判定〉
◎:好適しわ押え圧範囲≧20ton
○:好適しわ押え圧範囲=5〜20ton
×:好適しわ押え圧範囲<5ton
また、その際のピンオンディスクの評価条件は表2に示す条件とした。
【0047】
【表2】
【0048】
表1に記載した内容のサンプルについて、その表面粗度を変更することにより表面の摺動性を変化させた際の実プレス性の評価結果と、ピンオンディスクを用いた本発明に係る方法で測定した摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσとを表3及び図2に示す。
また、表3中には、ディスク1回転の摺動長(摺動距離=1260mm÷20=63mm)毎の摩擦係数の平均値のうちの最大値μmax をも示した。
【0049】
【表3】
【0050】
表3より、めっき種によって摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσ,部分区域毎の摩擦係数の平均値のうちの最大値μmax のレベルが異なっており、純亜鉛めっきであるEG,GIに比較して合金めっきであるSZ及びGAの方が全般的に摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσ,部分区域毎の摩擦係数の平均値のうちの最大値μmax が低くなる傾向が認められ、また表層のみを改質を目的とした上層にめっきを施したGA−F,有機複合被膜を施したTC,あるいはGI上にリン酸亜鉛皮膜を形成したGI−Pは摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσ,並びに部分区域毎の摩擦係数の平均値のうちの最大値μmax が更に低下する傾向が認められ、実プレス成形性に対して効果的であることが分かる。
【0051】
表3の結果を基に、ピンオンディスクを用いた本発明に係る方法で測定した摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσと実プレス成形性との関係をより明確にするために、実プレス性の結果と摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσのバランスの関係を前記図2に示したが、めっき種にかかわらず本発明例の摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσの範囲であれば満足する実プレス結果が得られることが分かり、冷延鋼板と同等以上のプレス成形性を得る好適な範囲としては「0.05≦μave ≦0.18」でかつ「μσ≦0.06− 0.2×μave 」の領域であることも分かる。
【0052】
以上の結果から、本発明におけるピンオンディスクでの評価方法は極めてプレス成形性との相関が高く、ピンオンディスクを用いた本発明に係る方法により摩擦係数平均値μave 及び摩擦係数標準偏差μσ、あるいは部分区域毎の摩擦係数の平均値のうちの最大値μmax を測定することで実プレスを行うこと無しにプレス成形性を予測することが可能であることが分かる。
【0053】
〔実施例2〕
表4に示すサンプル及びピンオンディスク試験条件にて摩擦係数を測定した。その際、接触先端子として所定面積となる棒状の金属片を準備し、先端を鏡面研磨した後試験機に取り付け、摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσを測定した。
併せて、先端子が鋼球(直径=5mm)での試験結果も記載した。
【0054】
【表4】
【0055】
その結果を図3に示すが、先端子接触面積が20mm2 以下であれば鋼球の場合の摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσとほとんど差が認められず、摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσを見ることで、実プレス結果と相関がとれることが分かる。
一方、先端子接触面積が28mm2 以下では、先端子とのメタルタッチを起こしにくくなり、摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσが急激に低下し、本発明の摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσから想定されるプレス結果では良好な結果となって実プレス結果との相違が生じることから、摺動性評価条件として不的確であることが分かる。
従って、先端子の面積はメタルタッチを効果的に発現させるために非常に重要であり、その接触面積としては20mm2 以下にするのが良いことが分かる。
【0056】
次に、押し付け荷重の影響について説明する。
表3に記載のEG(No.11, 12 )及びGA−F(No.7,9 )について、表5に記載のピンオンディスク試験機での条件にて押し付け荷重を変更した際の摩擦係数を調査した。その際、実プレス性評価(◎:最良,○:良好,×:不良)と本発明に係る摩擦係数から判断されるプレス性評価(◎:最良,○:良好,×:不良)との関係を表6に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
表6のNo.2では、押し付け荷重が小さすぎるためにピンオンディスクから求められる摩擦係数の摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσは小さく、摩擦係数から判断されるプレス性評価は十分に良好な結果となって実プレス成形性との不一致が生じ、試験条件として適切でないことが分かる。
【0060】
一方、No.15 及びNo.16 では、押し付け荷重が大きすぎるためにメタルタッチによるカジリが顕著になってめっき層内部の摺動性が表れてくるためにめっき最表層の摺動性の評価が適切にできておらず、摩擦係数から判断されるプレス性は不合格になるが実プレス性は合格であり、評価の不一致が生じ押し付け荷重として適切でないことが分かる。
【0061】
更に、No.5では、押し付け荷重が小さいために摩擦係数から判断されるプレス性評価は“最良”になるが、実プレスは“良好”であり、押え荷重として実プレス結果と一致するには、No.4より:押し付け荷重が10kN以上で好適であることが分かる。
同様に、No.11 ,12からは、押し付け荷重が大きすぎる場合もわずかに実プレス結果との相違が認められ、実プレス結果と一致するには押し付け荷重が100kN以下で好適であることが分かる。
【0062】
次に、押し付け摺動速度及び摺動距離の影響について説明する。
表3に記載の実プレス結果が良好であったNo.3の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を使用し、表7に示すピンオンディスク試験機での試験条件にて摺動速度(ディスクの回転速度で対応)及び摺動距離(データサンプリング時間を一定にし、 回転速度を変えることですることで対応)を変動させることにより、摩擦係数がどのように変動するかを調査した。
【0063】
【表7】
【0064】
データ採取時間を5秒ピッチで120点採取した際の摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσの結果を表8に、 2.5秒ピッチの場合を表9に、10秒ピッチの場合を表10に示す。
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】
【表10】
【0068】
表8のNo.31 から、摺動速度が 0.6mm/minでは摩擦係数が大きすぎ、摩擦係数から想定されるプレス結果と実プレス結果が一致せず測定条件として不適切であることが分かる。
また、No.52, No.53からして摺動速度が速すぎる場合も摩擦係数が上昇して実プレス結果との不一致となることから、摺動速度の条件としては1〜1000mm/minの範囲が好ましいと分かる。
【0069】
No.38 〜44では、摩擦係数から想定されるプレス結果と実プレス結果が共に好適な結果となって一致していることから、より好ましい摺動速度の条件としては40〜400mm/minであることが分かる。
【0070】
表9からも、表8と同様、摺動速度としては1〜1000mm/minが適正で、かつ40〜400mm/minがより好ましいことが分かるとともに、No.54 から摺動距離が3mmと余りに短い場合は更に摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσが上がることから好ましくないことが分かり、摺動処理としては、5mm以上が好ましいことが明らかである。
【0071】
表10からも、表8と同様、摺動速度としては1〜1000mm/minが適正で、かつ40〜400mm/minがより好ましいことが分かると共に、No.98 から摺動距離が1000mmを超えると表8,9の場合に比較し更に摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσが上がることから好ましくないことが分かり、摺動処理としては1000mm以下が好ましいことが明らかである。
【0072】
次に、測定回数の影響について説明する。
表3中のNo.3の合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、表11の測定条件にて測定した。
その際に、デ−タ採取間隔を変更することにより2点〜1200点でデ−タを採取した際の摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσの変動を調査した。
その結果を図4に示す。
【0073】
【表11】
【0074】
測定点数が少ない場合は摩擦係数平均値μave が低く、摩擦係数標準偏差μσが高くなり、測定点数が100点以上では摩擦係数平均値μave ,摩擦係数標準偏差μσとも安定することが分かる。
今回調査した合金化溶融亜鉛めっき鋼板(表3中のNo.3)の実プレス性は“最良”レベルであり、図4から摩擦係数から判断されるプレス性との関係を見ると測定点数が20点以上あれば合格レベルの判断を下せ、100点以上あれば好適判断が下せることが分かり、判定点数としては20点以上、好ましくは100点以上とするのが良いことが分かる。
【0075】
〔実施例3〕
本実施例では、本発明法を用いることによって摺動性を管理した表面処理鋼板の適用例について紹介する。
【0076】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、GA鋼板)は、加熱により母材鋼板から亜鉛めっき皮膜中へのFe拡散を利用して合金化処理を行うが、GA鋼板では加熱時のめっき皮膜中へのFe拡散速度にバラツキが大きく、めっき皮膜表面の合金相構造にバラツキが大きくなる。また、ミクロ的なFe拡散速度の違いにより表面粗度のバラツキも大きくなる。
このような特性を持つGA鋼板は、極めて厳密に合金化度,表面粗度を制御しても摺動性に大きなバラツキが生じることになり、実質、製造条件の厳密な管理だけでは極最表層の合金化状態,表面形状を完全に制御することが困難である上、極表層の合金層状態,表面形状を測定することは技術的にも極めて困難で、かつ測定可能であっても時間がかかるので、その結果をもって操業条件に直ちに反映することは実質不可能である。
従って、GA鋼板で良好なプレス成型性を安定的に供給するためには操業条件の厳密な管理、及び極表層の合金相,表面形状の制御だけでは不十分であり、皮膜そのもののの表層の摺動性を簡便,迅速に直接測定してプレス結果に反映させる必要が極めて大きい。
【0077】
本実施例では、市販のGA鋼板(コイル)にて切り出したサンプルにてピンオンディスク条件を実施してGA鋼板の摩擦係数を測定し、客先での当該コイルのプレス割れ有無をトレ−スした。
使用したGA鋼板は、厳しい管理基準の下で製造された自動車車体バネル用のもので、具体的には日本鉄鋼連盟規格のJAC270D,JAC270E,JAC270F,JAC340H,JAC340Pで、目付量が片面当り35〜50g/m2 ,合金化度=9〜11%、表面粗度がJIS B 0601に記載された平均粗さRaでRa= 0.6〜 1.2μmのものである。
【0078】
ピンオンディスクの条件は前記表2の条件で行った摩擦係数(μave ,μσ)を用い、実プレスで割れたGA鋼板については「×」、問題なく使用できたGA鋼板については「○」(合格)とし、その調査結果を図5に示した。
図5から、GA鋼板は、極めて厳格な操業管理で品質的に良好な車体外装用途鋼板でも摩擦係数平均値μave が低く、摩擦係数標準偏差μσのバラツキが大きく、実プレス割れを起す場合があるが、本発明の請求範囲範囲内であれば安定的にプレス成形性が良好であることが分かる。
【0079】
即ち、厳しい操業管理の下でGA鋼板を製造しても実プレス割れを完全に抑制することは困難であり、本発明のような簡便かつ迅速な摺動性管理を行うことにより安定してプレス成形性の良好なGA鋼板がはじめて提供可能になることが分かる。
【0080】
【発明の効果】
以上に説明した如く、この発明によれば、めっき鋼板のプレス成形性を実際のプレス成形を行う前に簡便かつ迅速に予知することができるようになり、プレス成形性の優れた表面処理鋼板を安定的に提供できる管理体制を確立することを可能にするなど、産業上極めて有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例におけるプレス成形試験で採用したフェンダーモデル金型の概要図である。
【図2】実プレス性の評価結果とピンオンディスクを用いた本発明に係る方法で測定した摩擦係数(μave ,μσ)との関係を示すグラフであり、実施例1の表3の試験結果をまとめたものである。
【図3】押し付け先端子の接触面積と本発明に係る方法で測定した摩擦係数(μave ,μσ)との関係について示すグラフである。
【図4】本発明に係る方法で測定した摩擦係数(μave ,μσ)と測定点数との関係について示すグラフである。
【図5】市販の合金化溶融亜鉛めっき鋼板における本発明に係る方法で測定した摩擦係数(μave ,μσ)バラツキとその際の実プレス結果との関係を示すグラフである。
Claims (7)
- 摺動摩擦試験機を用い、めっき鋼板からなる被試験材に金属体を“点状”もしくは“接触面積が20mm2 以下の平面状”の接触面でもって接触摺動させると共に、この際の被試験材に押し付ける金属体の押し付け荷重を2〜300N、摺動速度を1〜1000mm/min 、そして総摺動長を5〜20000mmとし、摺動長内において測定される摺動抵抗の変動から“摺動抵抗/押し付け荷重”の値(以降“摩擦係数”と称する)の変化を求め、更にこの摩擦係数の変化から摩擦係数平均値μave と摩擦係数標準偏差値μσとを求め、その値によって被試験材のプレス成形性を評価することを特徴とする、めっき鋼板のプレス成形性評価法。
- 摺動摩擦試験機を用い、めっき鋼板からなる被試験材に金属体を“点状”もしくは“接触面積が20mm2 以下の平面状”の接触面でもって接触摺動させると共に、この際の被試験材に押し付ける金属体の押し付け荷重を2〜300N、摺動速度を1〜1000mm/min 、そして総摺動長を5〜20000mmとし、摺動長内における複数の時点で測定される摺動抵抗の変動から摩擦係数の変化を求め、更にこの摩擦係数の変化から摩擦係数平均値μave と摩擦係数標準偏差値μσとを求め、その値によって被試験材のプレス成形性を評価することを特徴とする、めっき鋼板のプレス成形性評価法。
- 被試験材と金属体との接触摺動中に少なくとも20以上の時点で摺動抵抗の測定を行う、請求項2記載のめっき鋼板のプレス成形性評価法。
- 被試験材の温度を実プレス成形で昇温する金型温度の領域に保持して摺動抵抗の測定を行う、請求項1乃至3の何れかに記載のめっき鋼板のプレス成形性評価法。
- 摺動摩擦試験機を用い、めっき鋼板からなる被試験材に金属体を“点状”もしくは“接触面積が20mm2 以下の平面状”の接触面でもって接触摺動させる際、被試験材に押し付ける金属体の押し付け荷重を2〜300N、摺動速度を1〜1000mm/min 、そして総摺動長を5〜20000mmとし、また過度の局所情報を避けるために、被試験材と金属体との接触摺動長を複数の区域に区分すると共に、摺動抵抗の変動より求められる各区域における摩擦係数の平均値を求め、各区域毎に求めた摩擦係数の平均値のうちの最大値μmax によって被試験材のプレス成形性を評価することを特徴とする、めっき鋼板のプレス成形性評価法。
- 摺動摩擦試験機を用い、めっき鋼板からなる被試験材に金属体を“点状”もしくは“接触面積が20mm2 以下の平面状”の接触面でもって接触摺動させると共に、この際の被試験材に押し付ける金属体の押し付け荷重を2〜300N、摺動速度を1〜1000mm/min 、そして総摺動長を5〜20000mmとし、摺動長内において測定した摺動抵抗の変動より求められる摩擦係数の変化から“総摺動長における摩擦係数平均値”又は“摺動長の部分区域における摩擦係数平均値”と“総摺動長における摩擦係数標準偏差値”又は“摺動長の部分区域における摩擦係数標準偏差値”とを求め、その値によって被試験材のプレス成形性を評価することを特徴とする、めっき鋼板のプレス成形性評価法。
- 被試験材の温度を実プレス成形で昇温する金型温度の領域に保持して摺動抵抗の測定を行う、請求項5又は6に記載のめっき鋼板のプレス成形性評価法。
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