JP4339337B2 - 電気分解用陰極の活性化方法および電気分解方法 - Google Patents

電気分解用陰極の活性化方法および電気分解方法 Download PDF

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Description

本発明は、隔膜法またはイオン交換膜法による電気分解の技術分野に属し、詳しくは、電気分解槽の陰極室が備える陰極の活性を回復する方法と、ハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解方法に関する。本発明は、また、水酸化アルカリ金属水溶液、ハロゲンガスおよび水素ガスよりなる群から選択される少なくとも1種の製造方法に関する。
従来、隔膜法またはイオン交換膜法によるハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解では、軟鉄製の陰極を用いることが主流であった。しかし、軟鉄製の陰極は、水素過電圧が高いため、電気分解の際に、高い印加電圧が必要となる。その結果、電力消費が多くなることが知られている。
電力消費の削減は、電気分解業界における重要課題である。そこで、軟鉄に比べて低い水素過電圧を示す陰極(以下、低水素過電圧陰極と記す)を用いることが提案されている。低水素過電圧陰極には、陰極芯体上に所定の電極触媒層を形成したものが用いられている。電極触媒層は、ニッケル、コバルト、白金族元素、これらの酸化物などを1種以上含む。電極触媒層は、様々な表面処理技術により、陰極芯体の表面に形成される。例えば、合金メッキ、分散・複合メッキ、貴金属の熱分解コーティング、プラズマ溶射、浸漬(溶融メッキ法)などによる表面処理が行われる。
しかし、低水素過電圧陰極を用いる場合でも、長期間に亘り電気分解を継続的に行うと、種々の原因で陰極が劣化する。例えば、陰極の表面に水素過電圧の高い物質(鉛や鉄など)が付着または電着し、陰極の活性が低下する。その結果、陰極の水素過電圧は上昇する。
また、金属製の電極触媒層は、酸化によって活性が低下することが知られている。電極触媒層の酸化は、電気分解槽の運転停止時や、イオン交換膜を交換するために陰極を電気分解槽から取り出したときに進行する。さらに、金属酸化物を用いた電極触媒層は、還元によって活性が低下したり、内部応力によって陰極から剥がれたりすることが知られている。
活性が低下した陰極には、通常、電極触媒層の再形成処理が施される。その際、電気分解槽の運転は停止される。電極触媒層の再形成処理は、陰極室に陰極を取り付けたままの状態または陰極室から陰極を取り外した状態で行われる。しかし、電極触媒層の再形成処理は、相当に高い費用を要する。また、電極触媒層の再形成処理を施している間は、電気分解槽の運転を停止しなければならない。運転を継続しようとすれば、予備の電気分解槽を購入する必要があり、設備利用の経済性が低くなる。
一方、活性が低下した陰極をそのまま用いれば、陰極の水素過電圧が高くなっているため、電気分解に要する電圧も高くなる。よって、電力消費が大きくなり、ハロゲンガスや水酸化物などの製造コストが増加する。経済性の観点からは、電気分解槽の運転を停止することなく、低下した陰極の活性を回復させることが望ましい。
このような要望に対し、陰極室に白金族化合物(白金族元素の化合物)を添加することが提案されている(特許文献1参照)。陰極室に白金族化合物を添加することにより、電気分解槽の運転を停止することなく、陰極の活性を回復させる一定の効果が得られる。陰極室に添加された白金族化合物には、陰極の水素過電圧を低下させる作用があると考えられる。
特開昭64−11988号公報
特許文献1では、白金族化合物のうちの、塩化白金酸の効果が具体的に述べられている。活性が低下した陰極を具備する陰極室に塩化白金酸を添加すると、その直後は、陰極の水素過電圧が低下し、一時的に活性が回復する。
しかし、電気分解を更に継続すると、水素過電圧は再び上昇を始める。一定期間経過後には、塩化白金酸を陰極室に添加する前の水素過電圧に戻ってしまう。再び水素過電圧を低下させるためには、塩化白金酸を陰極室に再度添加する必要がある。しかし、塩化白金酸は高価であるため、その使用量が多くなると、経費が嵩むという問題が生じる。
以上のように、特許文献1は、電気分解を長期間に亘り継続する場合に、水素過電圧の上昇を経済的に抑制する方法を提案するものではない。なお、特許文献1は、陰極の水素過電圧を顕著に低下させる複数の白金族化合物の具体的な組み合わせを提案するものではない。
本発明者らは、白金族化合物の中でも、特に、イリジウム化合物とイリジウム以外の白金族元素の化合物とを併用する場合に、陰極を活性化させる効果が大きくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
ここで、陰極を活性化させる効果として、陰極の水素過電圧を低下させる効果(活性回復効果)が発現する。
すなわち、本発明は、陽極室および陰極室を有する電気分解槽と、陽極室に備えられた陽極と、陰極室に備えられた陰極とを用いる、ハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解において、陰極室内に、水またはハロゲン化アルカリ金属水溶液に可溶である白金族化合物(白金族元素の化合物)を添加する工程を有し、白金族化合物が、イリジウム化合物を含み、かつ、イリジウム以外の白金族元素の化合物を少なくとも1種含む、電気分解用陰極の活性化方法(活性回復方法)に関する。
なお、白金族元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)および白金(Pt)の総称である。
陰極室内に添加する白金族化合物のうちの「イリジウム以外の白金族元素の化合物」は、白金化合物およびロジウム化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なかでもイリジウム化合物と白金化合物との2成分のみの組み合わせが好ましい。2成分の組み合わせとしては、イリジウム化合物と白金化合物との組み合わせ、またはイリジウム化合物とロジウム化合物との組み合わせが挙げられる。当該2成分の組み合わせに、他の白金族化合物を添加して3成分以上の組み合わせを用いても構わない。
陰極室内に添加する白金族化合物の合計量は、陰極の有効電気分解面積の1m2あたり、10-7〜10-2モルが好適である。
ここで、陰極の有効電気分解面積とは、電気分解に使用される陰極の寸法を示す。例えば、長方形の陰極の縦方向の寸法をX、横方向の寸法をYとすると、有効電気分解面積Sは、X×Yで表される(S=XY)。なお、陰極芯体は、例えばエキスパンドメタル、パンチングメタル、メッシュなどからなり、網目構造を有する。よって、有効電気分解面積Sは、網目の開口(孔)の面積も含んでいる。
本発明は、また、陽極室および陰極室を有する電気分解槽と、陽極室に備えられた陽極と、陰極室に備えられた陰極とを用い、ハロゲン化アルカリ金属水溶液を電気分解して、水酸化アルカリ金属水溶液、ハロゲンガスおよび水素ガスよりなる群から選択される少なくとも1種を製造する電気分解方法であって、陰極室内に、白金族元素が添加されており、白金族元素が、イリジウムを含み、かつ、イリジウム以外の白金族元素を少なくとも1種含む、電気分解方法(または水酸化アルカリ金属水溶液、ハロゲンガスもしくは水素の製造方法)に関する。
イリジウム以外の白金族元素には、白金およびロジウムよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでもイリジウム化合物と白金化合物との2成分のみの組み合わせが好ましい。2成分の組み合わせとしては、イリジウム化合物と白金化合物との組み合わせ、またはイリジウム化合物とロジウム化合物との組み合わせが挙げられる。当該2成分の組み合わせに、他の白金族化合物を添加して3成分以上の組み合わせを用いても構わない。
本発明が特に好適に適用される製造方法としては、例えばハロゲン化アルカリ金属水溶液として食塩水を用いて、水酸化アルカリ金属水溶液として苛性ソーダ水溶液を製造する方法、ハロゲンガスとして塩素ガスを製造する方法が挙げられる。
本発明では、電気分解槽の温度を65〜90℃に設定し、電流密度を0.1kA/m2〜10kA/m2に設定して電気分解を行うことが好ましい。ここで、電流密度は、陰極の有効電気分解面積の1m2あたりの電流値をいう。
本発明によれば、ハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解において、電気分解槽の運転を停止することなく、水素過電圧を低下させるという効果を得ることができる。
本発明は、隔膜法またはイオン交換膜法によるハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解に関連する。ここで、ハロゲン化アルカリ金属水溶液とは、水溶性のハロゲン化アルカリ金属を水に溶解したものである。水溶性のハロゲン化アルカリ金属の種類は特に限定されない。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウムなどを例示できる。
本発明は、特に、塩化ナトリウム水溶液または塩化カリウム水溶液の電気分解に好適であり、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などの水酸化アルカリ金属水溶液の製造に利用することができる。
本発明は、陽極室および陰極室を有する電気分解槽と、陽極室に備えられた陽極と、陰極室に備えられた陰極とを用いて実施される。陰極は、通常、ハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解に用いられる低水素過電圧陰極であれば特に限定されない。例えば、ニッケル化合物被膜を有する陰極、多孔質ニッケルからなる陰極、ラネーニッケル合金からなる陰極などを用いることができる。
低水素過電圧陰極は、陰極芯体上に電極触媒物質としてのニッケル、コバルト、白金族元素などの金属単独、もしくはこれらの金属混合物、またはこれらの金属酸化物の電極触媒層が形成された低水素過電圧陰極を用いることが好ましい。
一般に、低水素過電圧陰極は、陰極芯体上に所定の電極触媒層を形成することにより得られる。電極触媒層は、ニッケル、コバルト、白金族元素、これらの酸化物などを1種以上含む。例えば、合金メッキ、分散・複合メッキ、貴金属の熱分解コーティング、プラズマ溶射、浸漬(溶融メッキ)、またはこれらの技術を組み合わせて表面処理が行われる。
電気分解槽において、陽極室と陰極室とは、隔膜またはイオン交換膜により区切られている。隔膜およびイオン交換膜の種類は特に限定されない。一般的な隔膜法およびイオン交換膜法で用いられているイオン交換膜および隔膜であれば用いることができる。イオン交換膜としては、例えば、含フッ素陽イオン交換膜が用いられる。
イオン交換膜の構造は、特に限定されないが、例えば、補強材と、高含水率層と、低含水率層とを含むイオン交換膜が例示される。イオン交換膜の補強材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維などが好適である。高含水率層および低含水率層としては、スルホン酸基フッ素系ポリマー(パーフルオロスルホン酸樹脂)またはカルボン酸基を有するフッ素系ポリマー(パーフルオロカルボン酸樹脂)が好適である。なかでも、高含水率層が、スルホン酸基を有するフッ素系ポリマーからなり、低含水率層が、カルボン酸基を有するフッ素系ポリマーからなるイオン交換膜が特に好適である。
ここで、スルホン酸基を有するフッ素系ポリマーおよびカルボン酸基を有するフッ素系ポリマーは、例えば、一般式(1)および(2):
Figure 0004339337
で表される繰り返し単位を含む。
ただし、一般式(1)および(2)において、Xは、フッ素原子または−CF3であり、Yは、一般式(3):
Figure 0004339337
で表される炭化水素基である。
ただし、一般式(3)において、Aは−SO3Mまたは−COOMであり、Mはアルカリ金属であり、mは0〜2の整数、nは1〜4の整数である。アルカリ金属Mとしては、ナトリウム(Na)、カリウム(K)などが挙げられる。
イオン交換膜の厚さは、特に限定されないが、例えば50〜500μmが好ましく、100〜300μmが更に好ましい。イオン交換膜の厚さがこの範囲であれば、十分な強度が得られ、電気分解中におけるイオン交換膜の破損も抑制される。また、イオン交換膜が適度な厚さであれば、電気分解槽が過度に大きくなることもない。膜表面に気泡が付着すると、電気抵抗が増大するため、イオン交換膜の陽極側および陰極側の表面に、ガス付着防止層を設けてもよい。
本発明で用いることのできる市販の含フッ素陽イオン交換膜として、例えば、Nafion(R)(ナフィオン(R))(デュポン株式会社製)、Flemion(R)(フレミオン(R))(旭硝子株式会社製)、Aciplex(R)(アシプレックス(R))(旭化成ケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。
陰極室に添加する白金族化合物は、水または水酸化アルカリ金属水溶液に可溶であればよく、特に限定されない。ただし、本発明は、白金族化合物として、イリジウム化合物とイリジウム以外の白金族元素の化合物とを陰極室に添加する点に特徴を有する。イリジウム化合物とイリジウム以外の白金族元素の化合物とを併用することにより、白金族化合物を単独で用いる場合に比べて、白金族元素単位重量あたりの水素過電圧をより確実に低下させることができるという効果を得ることができる。
イリジウム化合物としては、例えば、三塩化イリジウム、三臭化イリジウム、硝酸イリジウム、イリジウム酸、イリジウム酸塩、ヘキサクロロイリジウム酸、ヘキサクロロイリジウム酸塩、ヘキサアンミンイリジウム酸、ヘキサアンミンイリジウム酸塩、ペンタアンミンアクアイリジウム酸、ペンタアンミンアクアイリジウム酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、三塩化イリジウム、三臭化イリジウム、硝酸イリジウム、ヘキサクロロイリジウム酸、ヘキサクロロイリジウム酸塩、ヘキサアンミンイリジウム酸、ヘキサアンミンイリジウム酸塩などが好ましい。
白金化合物としては、例えば、ヘキサフルオロ白金酸、ヘキサフルオロ白金酸塩、テトラクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸塩、ヘキサクロロ白金酸、ヘキサクロロ白金酸塩、ヘキサヒドロキソ白金酸、ヘキサヒドロキソ白金酸塩、ヘキサアンミン白金酸、ヘキサアンミン白金酸塩、テトラニトロ白金酸、テトラニトロ白金酸塩、ジクロロジアンミン白金、テトラクロロジアンミン白金、ビスグリシナト白金、ジクロロビス(エチレンジアンミン)白金、ジアンミンジニトロ白金、テトラアンミン塩化白金、テトラアンミン塩化白金塩などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、テトラクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸塩、ヘキサクロロ白金酸、ヘキサクロロ白金酸塩、ヘキサヒドロキソ白金酸、ヘキサヒドロキソ白金酸塩、ヘキサアンミン白金酸、ヘキサアンミン白金酸塩、ジクロロジアンミン白金、テトラクロロジアンミン白金、ジアンミンジニトロ白金、テトラアンミン塩化白金、テトラアンミン塩化白金塩などが好ましい。
ロジウム化合物としては、例えば、過酸化ロジウム、硝酸ロジウム、三塩化ロジウム、三臭化ロジウム、ヘキサフルオロロジウム酸、ヘキサフルオロロジウム酸塩、ヘキサシアノロジウム酸、ヘキサシアノロジウム酸塩、ヘキサアンミンロジウム酸、ヘキサアンミンロジウム酸塩、ジクロロビス(エチレンジアミン)ロジウム、ヘキサクロロロジウム酸、ヘキサクロロロジウム酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、硝酸ロジウム、三塩化ロジウム、三臭化ロジウム、ヘキサフルオロロジウム酸、ヘキサフルオロロジウム酸塩、ヘキサシアノロジウム酸、ヘキサシアノロジウム酸塩、ヘキサアンミンロジウム酸、ヘキサアンミンロジウム酸塩、ヘキサクロロロジウム酸、ヘキサクロロロジウム酸塩などが好ましい。
ルテニウム化合物としては、例えば、三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、硝酸ルテニウム、ルテニウム酸、ルテニウム酸塩、ペンタクロロルテニウム酸、ペンタクロロルテニウム酸塩、ヘキサシアノルテニウム酸、ヘキサシアノルテニウム酸塩、ペンタクロロアクアルテニウム酸、ペンタクロロアクアルテニウム酸塩、ペンタクロロニトロシルルテニウム酸、ペンタクロロニトロシルルテニウム酸塩、ヘキサクロロルテニウム酸、ヘキサクロロルテニウム酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、硝酸ルテニウム、ペンタクロロルテニウム酸、ペンタクロロルテニウム酸塩、ヘキサシアノルテニウム酸、ヘキサシアノルテニウム酸塩、ペンタクロロニトロシルルテニウム酸、ペンタクロロニトロシルルテニウム酸塩、ヘキサクロロルテニウム酸、ヘキサクロロルテニウム酸塩などが好ましい。
オスミウム化合物としては、例えば、三塩化オスミウム、臭化オスミウム、酸化オスミウム、オスミウム酸、オスミウム酸塩、ヘキサクロロオスミウム酸、ヘキサクロロオスミウム酸塩、ヘキサアンミンオスミウム、ヘキサシアノオスミウム酸、ヘキサシアノオスミウム酸塩、テトラクロロジオキソオスミウム酸、テトラクロロジオキソオスミウム酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、三塩化オスミウム、臭化オスミウム、ヘキサクロロオスミウム酸、ヘキサクロロオスミウム酸塩、ヘキサアンミンオスミウム、ヘキサシアノオスミウム酸、ヘキサシアノオスミウム酸塩、テトラクロロジオキソオスミウム酸、テトラクロロジオキソオスミウム酸塩などが好ましい。
パラジウム化合物としては、例えば、二塩化パラジウム、二臭化パラジウム、硝酸パラジウム、パラジウム酸、パラジウム酸塩、テトラクロロパラジウム酸、テトラクロロパラジウム酸塩、テトラブロモパラジウム酸、テトラブロモパラジウム酸塩、テトラアンミンパラジウム酸、テトラアンミンパラジウム酸塩、テトラニトロパラジウム酸、テトラニトロパラジウム酸塩、ビス(エチレンジアンミン)パラジウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、二塩化パラジウム、硝酸パラジウム、テトラクロロパラジウム酸、テトラクロロパラジウム酸塩、テトラブロモパラジウム酸、テトラブロモパラジウム酸塩、テトラアンミンパラジウム酸、テトラアンミンパラジウム酸塩、テトラニトロパラジウム酸、テトラニトロパラジウム酸塩、ビス(エチレンジアンミン)パラジウムなどが好ましい。
イリジウム化合物とイリジウム以外の白金族元素の化合物との合計に占める、イリジウム以外の白金族元素の化合物の割合は、特に限定されないが、イリジウム以外の白金族元素の化合物とイリジウム元素との重量比が1:9〜9:1となる割合が好ましい。イリジウム以外の白金族元素の化合物の割合が大き過ぎる(イリジウム化合物の割合が小さ過ぎる)と、イリジウム以外の白金族元素の化合物とイリジウム化合物とを併用することによる相乗効果が十分に発揮されない場合がある。
白金族化合物として、白金化合物およびイリジウム化合物を併用し、更に、ロジウム化合物、ルテニウム化合物、オスミウム化合物、パラジウム化合物などを陰極室に添加する場合、白金族化合物全体に占める、白金化合物とイリジウム化合物との合計量の割合は、50重量%以上とするが好ましく、60重量%以上とすることが特に好ましい。
なお、ロジウム化合物、白金化合物、ルテニウム化合物、イリジウム化合物、オスミウム化合物およびパラジウム化合物の具体例として例示した塩の金属成分としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が好ましい。特にナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などが好適である。
陰極室内への白金族化合物の添加は、所定期間毎に、継続的に行うことが好ましい。1回当たりに添加する白金族化合物の合計量は、陰極の有効電気分解面積の1m2あたり、10-7〜10-2モルが好適であり、10-5〜10-2モルが更に好適であり、10-3〜10-2モルが特に好適である。この程度の量であれば、水素過電圧を回復させる効果を十分に得ることができ、コスト的にも有利である。なお、陰極室内への白金族化合物の添加を行ってから、再度、白金族化合物の添加を行うまでの期間は任意であり、規則的でもよく、不規則的でもよい。例えば、陰極の水素過電圧が、予め定められた所定値に達したときに、陰極室内への白金族化合物の添加を行えばよい。
ハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解で、陰極に供給される物質としては、例えば純水のみを用いる場合、および水で希釈されたハロゲン化アルカリ金属水溶液を用いる場合などがあるが、本発明はいずれの場合においても適用することができる。
白金族化合物を陰極室内に添加する工程は、特に限定されないが、例えば、電気分解槽の陰極室に連通する配管に白金族化合物を供給し、その配管から陰極室に導入することができる。例えば、食塩水の電気分解を行う場合、陰極室には、苛性ソーダ水溶液を供給する配管(陰極溶液用配管)と、陰極室に水を供給する配管(水用配管)が存在する。よって、陰極溶液用配管または水用配管に白金族化合物を供給することができる。
特に、陰極溶液用配管の陰極室の近傍に供給ノズルを設け、そのノズルに白金族化合物を供給することにより、白金族化合物の配管内への付着が軽減され、白金族化合物を陰極室内に効率よく導入することができる。また、供給ノズルの出口を陰極溶液用配管の中央まで突き出させ、配管壁から離れた管内流路の中央付近に白金族化合物を供給することが好ましい。
白金族化合物は、固体のまま配管に供給してもよく、水に溶解させて水溶液として供給してもよい。ただし、水溶液の状態で白金族化合物を陰極室に添加する方が、白金族化合物が速やかに陰極溶液と混合され、陰極室に効率良く供給される。
陰極室への白金族化合物の添加は、電気分解槽の運転中に行うことが最も好ましい。電気分解槽の運転中において、陰極の有効電気分解面積1m2当たりの電流密度は、0.1kA/m2〜10kA/m2が好適であり、0.5kA/m2〜8kA/m2が更に好適であり、1kA/m2〜8kA/m2が特に好適である。電流密度が0.1kA/m2〜10kA/m2である場合、劣化している陰極は、発生期の水素によって還元性が高くなっている。よって、陰極室内に添加された白金族化合物は、選択的に陰極表面に付着または電着する。これにより、陰極の活性を回復させる効果が極めて顕著となる。
ハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解では、陰極溶液として、水酸化アルカリ金属水溶液が用いられる。水酸化アルカリ金属水溶液には、苛性ソーダ水溶液などが用いられる。例えば、食塩水の電気分解においては、陰極室内に、濃度20〜40重量%の苛性ソーダ水溶液が生成する。陰極室で生成した苛性ソーダ水溶液は、陰極室から回収され、例えば19〜39重量%の濃度にまで希釈され、またはそのままの濃度で陰極溶液として用いられる。
電気分解槽の温度は、特に限定されず、それが通常用いられる温度範囲であればよい。ただし、イオン交換膜を利用する場合には、イオン交換膜の性能を最大限に発揮させる観点から、電流密度に応じて、電気分解槽の温度を適正範囲に設定することが好ましい。温度の適正範囲は膜の種類によって若干異なるが、例えば、電流密度が0.1kA/m2以上、1kA/m2未満の場合には、65〜74℃、1kA/m2以上、2kA/m2未満の場合には、68〜77℃が好ましく、2kA/m2以上、3kA/m2未満の場合には、74〜85℃が好ましく、3kA/m2以上、4kA/m2未満の場合には、77〜88℃が好ましく、4kA/m2以上、10kA/m2以下の場合には、90℃以下が好ましい。
一般に、イオン交換膜は、電気分解槽の温度が上昇または低下することで、物理的に伸縮する。すなわち、電気分解槽の温度は、イオン交換膜の性能に影響を与えることが知られている。イオン交換膜を用いる場合、電気分解槽の温度範囲は、65〜90℃の範囲が好適である。90℃以下の温度であれば、イオン交換膜に皺が発生したり、傷が発生したりするのを防止できる。また、電気分解槽の温度が65℃以上であれば、温度低下に伴うイオン交換膜の収縮を防止でき、電流効率の低下を防止できる。また、膜内への電解溶液の浸透が容易になり、膜に与えられるダメージを軽減できる。
本発明の活性回復方法は、例えばイオン交換膜法により、ハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解を行う場合に適用することができる。例えば含フッ素陽イオン交換膜によって、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とに区分された電気分解槽を用い、陽極室にハロゲン化アルカリ金属水溶液(陽極溶液)を供給し、陰極室に水酸化アルカリ金属水溶液(陰極溶液)を供給する。
陽極と陰極との間に電圧を印加すると、ハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解が進行する。その際、陽極室ではハロゲンガスが発生し、陰極室では水素ガスが発生し、同時に、陰極室に供給された水酸化アルカリ金属水溶液よりも高濃度の水酸化アルカリ金属水溶液(陰極生成物)が生成する。
また、電気分解後に陽極室から未分解のハロゲン化アルカリ金属水溶液(陽極生成物)が排出される。例えば、ハロゲン化アルカリ金属水溶液が食塩水の場合には、電気分解後に陽極室から未分解食塩水である淡塩水(陽極生成物)が排出される。また、陰極室で生成する苛性ソーダ溶液(陰極生成物)は、一部製品として抜き取られ、抜き取った残りの苛性ソーダ溶液に純水を加え希釈したものまたは希釈しないままの苛性ソーダ溶液をさらに陰極溶液として食塩水電気分解を行う。
このとき、白金族化合物は、純水と混合して、純水とともに陰極溶液に供給することができる。あるいは、白金族化合物は、陰極室の近傍に設けられた陰極溶液用配管に供給し、陰極溶液とともに陰極室に導入することができる。陰極室に導入された白金族化合物は、陰極の表面に付着または電着する。以上の操作は、電気分解装置の運転を停止することなく行うことができる。
より具体的に、本発明の活性回復方法について、図1を用いてより具体的に説明する。図1は本発明を適用し得る電気分解装置の一例としてイオン交換膜法を用いた食塩水電気分解の模式図である。
電気分解槽1は、含フッ素陽イオン交換膜2によって、陽極5を有する陽極室3と陰極6を有する陰極室4とに区画される。陽極室3に食塩水(陽極溶液7)を供給し、陰極室4に苛性ソーダ水溶液(陰極溶液8)を供給し、電気分解を行う。電気分解によって陽極室3からは塩素ガス(陽極生成ガス9)が発生し、陰極室4からは苛性ソーダ溶液(陰極生成物12)と水素ガス11が発生する。
また、電気分解後に陽極室3から未分解食塩水である淡塩水(陽極生成物10)が排出される。また、陰極室4で生成する苛性ソーダ濃度20〜35重量%の苛性ソーダ溶液(陰極生成物12)は、一部製品12aとして抜き取られ、抜き取った後の残りの苛性ソーダ溶液に純水14を加え希釈したものまたは希釈しないままの苛性ソーダ溶液12bをさらに陰極溶液8として食塩水電気分解を行う。
白金族化合物13は、純水14に混合させて陰極溶液8に供給するか、または陰極室近傍の苛性ソーダ溶液配管8aに供給し、陰極溶液8に混合させることにより陰極室4内へ供給され、白金族化合物が陰極6の表面に付着または電着される。
陰極室4内に白金族化合物13を添加する工程は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。例えば、長期にわたる電気分解操業により、陰極の活性が低下したタイミングで陰極室4に白金族化合物13を添加してもよく、陰極溶液8に含まれている不純物により、短期的に陰極の活性が低下したときに添加してもよい。陰極室4に白金族化合物13を添加する回数は特に限定されず、何回でも添加することができる。
本発明は、水酸化アルカリ金属水溶液、ハロゲンガスおよび水素の製造方法を包含する。本発明で製造される水酸化アルカリ金属水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などが例示される。本発明は、特に、水酸化ナトリウム水溶液の製造に適している。また、本発明で製造されるハロゲンガスとしては、例えば塩素、臭素などが例示される。
次に、図1の電気分解装置を用いて、ハロゲン化アルカリ金属水溶液である食塩水の電気分解を行う場合について説明する。
電気分解槽1の陽極室3には、陽極溶液7として食塩水が供給される。陰極室4には、陰極溶液8として、苛性ソーダ水溶液が供給される。陽極5と陰極6との間に電圧を印加すると、食塩水の電気分解が進行する。食塩水の電気分解時には、陰極室4で水素ガス11(H2)が発生するとともに、水酸化物イオン(OH-)が生成する。一方、陽極室3では、ハロゲンガス9として塩素ガス(Cl2)が発生するとともに、ナトリウムイオン(Na+)が生成する。このナトリウムイオンが、含フッ素陽イオン交換膜2を通って、陽極室3から陰極室4へ移動し、陰極室4の水酸化物イオンと結合する。よって、陰極室4では、陰極生成物12として、例えば苛性ソーダ濃度が20〜40重量%の苛性ソーダ水溶液が得られる。
なお、陰極室で生成する苛性ソーダ水溶液の濃度は、電流密度1〜10kA/m2の場合、20〜40重量%が好ましく、30〜33重量%が更に好ましい。生成する苛性ソーダ濃度が20〜40重量%であれば、イオン交換膜2の収縮を抑制でき、電解液をイオン交換膜に充分に浸透させることができる。さらに、生成する苛性ソーダ濃度が20〜40重量%であれば、イオン交換膜2の膨張を抑制できるため、陽極から陰極へのNaClの移動が生じにくくなる。よって、苛性ソーダ水溶液中の食塩濃度の上昇を防止でき、製品の品質が向上する。
苛性ソーダ循環型の電気分解槽の場合、電気分解後、陽極室3からは、陽極生成物10として、低濃度の食塩水が排出される。陰極生成物12である高濃度の苛性ソーダ水溶液の一部は、製品12aとして抜き取られる。残りの高濃度の苛性ソーダ水溶液には、純水14が加えられて、例えば19〜39重量%の苛性ソーダ濃度に希釈される。希釈された苛性ソーダ水溶液は、陰極溶液8として、陰極室4に供給される。なお、残りの高濃度の苛性ソーダ水溶液を、希釈せずにそのまま陰極室4に供給する場合もある。
食塩水は、原料塩を水に溶解することにより製造される。得られた食塩水は、1次精製および2次精製などの前工程で不純物を除去することが好ましい。陽極室3に供給される食塩水の食塩濃度は、160〜320g/Lが好ましく、200〜310g/Lが更に好ましい。食塩水の食塩濃度が160〜320g/Lであれば、イオン交換膜2の収縮を抑制でき、電解液をイオン交換膜に充分に浸透させることができる。
電気分解後、陽極室3から排出される食塩水の食塩濃度は、150〜300g/Lが好ましく、180〜250g/Lが更に好ましい。陽極室3から排出される食塩水の食塩濃度を150〜300g/Lとすることで、イオン交換膜2の膨張を抑制でき、イオン交換膜に皺や傷が発生するのを防止できる。
陰極室に供給する苛性ソーダ水溶液には、上述のように、電気分解によって製造された高濃度苛性ソーダ水溶液に純水を加えて希釈したものの他に、希釈しないままの高濃度の苛性ソーダ水溶液を用いることもできる。
本発明に用いる電気分解槽は、特に限定されない。電気分解で一般的に用いられている電気分解槽と同様でよい。例えば、単極式電気分解槽、複極式電気分解槽なども用いることができる。
以下に、本発明を実施例および比較例に基づいて、より具体的に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。特に、以下の実施例では、含フッ素陽イオン交換膜を用いるイオン交換膜法で電気分解を行ったが、その他のイオン交換膜法および一般的な隔膜法による電気分解にも本発明を適用できる。
(比較例1)
図1に示されているような電気分解装置に於いて、陰極6として、陰極芯体の表面に炭素質微粒子を分散させたニッケルメッキをし、その表面に常法の電気メッキにより含硫黄ニッケルメッキ層を形成させた陰極を用いた。陰極の有効電気分解面積は0.01m2とした。陽極5としては、RuO2の被膜を有するTi製エキスパンドメタルを用いた。イオン交換膜2としては、スルホン酸基とカルボン酸基からなる含フッ素陽イオン交換膜を有効電気分解面積0.01m2に加工した後、それを締付型電気分解槽1内に設置した。
電気分解槽温度82℃および電流密度3.0kA/m2の条件のもとで、陽極溶液として陽極室3内へ食塩濃度310g/Lの食塩水7を供給し、電気分解によって陽極室出口で塩素ガス9と食塩濃度200g/Lの陽極生成物10を排出するように食塩水7の流量を調整した。また、陰極室4内には苛性ソーダ濃度32重量%の苛性ソーダ水溶液8を供給し、電気分解によって水素ガス11と苛性ソーダ濃度33重量%の苛性ソーダ水溶液12を排出するように苛性ソーダ水溶液8の流量を調整した。このような電気分解条件のもとで、電圧および電流効率推移が安定するまで10日間電気分解を行った。この時の陰極6の水素過電圧は0.10Vであった。
この後、電気分解槽の運転を継続していくと、陰極6の水素過電圧は徐々に上昇していき、水素過電圧が0.17Vまで達した。この時、水素過電圧の上昇した状態の電気分解槽の運転を停止することなく、陰極室4内へ白金元素を15重量%含む塩化白金酸水溶液13を1.5×10-2g(H2PtCl6・6H2Oを6.0×10-3g)添加した。よって、陰極の有効電気分解面積1m2あたりの塩化白金酸量は1.2×10-3モルであった。この水溶液13の添加直後から電気分解電圧は徐々に下がりはじめ、所定量の添加終了後一日経過した時の水素過電圧は0.146Vであった。その後、電気分解槽の運転を継続していき、添加後から7ヶ月経過した時の陰極6の水素過電圧を測定した。この時、水素過電圧は0.188Vまで上昇し、水素過電圧上昇速度(Vr)は6.0mV/monthであった。
図2は、陰極の水素過電圧上昇速度(Vr)を説明するための模式的グラフである。このグラフに於いて、横軸は電気分解月数(Month)を表し、縦軸は陰極の水素過電圧(mV)を表している。xmとynは、白金族化合物を添加する前と後における水素過電圧をそれぞれ表している。すなわち、白金族化合物を添加することによって、水素過電圧をA=xm−ynだけ低下させる(陰極の活性を回復させる)ことができる。しかし、陰極6の活性を回復させた後に於いても、電気分解をさらに継続させていけば、月数B(Month)の後に於いて水素過電圧は再度上昇してxm+1に至る。この場合に、水素過電圧上昇速度はVr=(xm+1−yn)/Bで表される。
すなわち、陰極6の水素過電圧を長期間にわたって低く維持するためには、白金族化合物は、水素過電圧の低減A(mV)または水素過電圧上昇速度Vr(mV/month)の抑制の少なくともいずれかに於いて顕著な効果を有することが望まれる。
なお、本願においては、陰極の水素過電圧はカレントインタラプター法で測定した。カレントインタラプター法とは、電解電流を瞬時に遮断し、電流遮断時の電圧波形から電気抵抗による電圧損失を測定する方法である。
図1に示されているように、電流遮断には定電流パルス発生器(北斗電工株式会社製)17を用い、電流遮断前後の電極電位の測定はデジタルオシロスコープ(日本テクトロニクス株式会社製)18を用いた。水素過電圧の測定条件は、温度80℃、苛性ソーダ濃度32重量%、および電流密度3.0kA/m2であり、参照電極には白金黒電極16を使用した。また、電解電圧は、陰極を取り付けている陰極枠と陽極を取り付けている陽極枠に電圧計15の測定端子を接続して測定した。
(比較例2)
比較例1と全く同一条件の電気分解を継続し、陰極6の水素過電圧が上昇して、水素過電圧が比較例1と同じく0.17Vに達した時、陰極室4内へ白金元素を15重量%含む塩化白金酸水溶液13を2.2×10-2g(H2PtCl6・6H2Oを8.7×10-3g)添加した。よって、陰極の有効電気分解面積1m2あたりの塩化白金酸量は1.7×10-3モルであった。この水溶液13の添加直後から電気分解電圧は徐々に下がりはじめ、所定量を添加終了後一日経過した時の水素過電圧は0.139Vであった。その後、電気分解槽の運転を継続していき、添加後から7ヶ月経過した時の陰極6の水素過電圧を測定した。この時、水素過電圧は0.178Vまで上昇し、水素過電圧上昇速度(Vr)は5.6mV/monthであった。
(比較例3)
比較例1と全く同一条件の電気分解を継続し、陰極6の水素過電圧が上昇して、水素過電圧が比較例1と同じく0.17Vに達した時、陰極室4内へ白金元素を15重量%含む塩化白金酸水溶液13を2.4×10-2g(H2PtCl6・6H2Oを9.7×10-3g)添加した。よって、陰極の有効電気分解面積1m2あたりの塩化白金酸量は1.9×10-3モルであった。この水溶液13の添加直後から電気分解電圧は徐々に下がりはじめ、所定量を添加終了後一日経過した時の水素過電圧は0.134Vであった。その後、電気分解槽の運転を継続していき、添加後から7ヶ月経過した時の陰極6の水素過電圧を測定した。この時、水素過電圧は0.174Vまで上昇し、水素過電圧上昇速度(Vr)は5.7mV/monthであった。
(比較例4)
比較例1と全く同一条件の電気分解を継続し、陰極6の水素過電圧が上昇して、水素過電圧が比較例1と同じく0.17Vに達した時、陰極室4内へイリジウム元素を15重量%含む塩化イリジウム水溶液13を1.5×10-2g(H2IrCl6・6H2Oを6.0×10-3g)添加した。よって、陰極の有効電気分解面積1m2あたりの塩化イリジウム量は1.2×10-3モルであった。この水溶液13の添加直後から電気分解電圧は徐々に下がりはじめ、所定量を添加終了後一日経過した時の水素過電圧は0.149Vであった。その後、電気分解槽の運転を継続していき、添加後から7ヶ月経過した時の陰極6の水素過電圧を測定した。この時、水素過電圧は0.192Vまで上昇し、水素過電圧上昇速度(Vr)は6.2mV/monthであった。
(比較例5)
比較例1と全く同一条件の電気分解を継続し、陰極6の水素過電圧が上昇して、水素過電圧が比較例1と同じく0.17Vに達した時、陰極室4内へロジウム元素を15重量%含む塩化ロジウム水溶液13を1.5×10-2g(RhCl3・3H2Oを5.8×10-3g)添加した。よって、陰極の有効電気分解面積1m2あたりの塩化ロジウム量は2.2×10-3モルであった。この水溶液13の添加直後から電気分解電圧は徐々に下がりはじめ、所定量を添加終了後一日経過した時の水素過電圧は0.147Vであった。その後、電気分解槽の運転を継続していき、添加後から7ヶ月経過した時の陰極6の水素過電圧を測定した。この時、水素過電圧は0.186Vまで上昇し、水素過電圧上昇速度(Vr)は5.6mV/monthであった。
(実施例1)
比較例1と全く同一条件の電気分解を継続し、陰極6の水素過電圧が上昇して、水素過電圧が比較例1と同じく0.17Vに達した時、陰極室4内へ白金元素を15重量%含む塩化白金酸水溶液とイリジウム元素を15重量%含む塩化イリジウム水溶液との体積比1:1の混合水溶液13を1.5×10-2g(H2PtCl6・6H2Oを3.0×10-3gとH2IrCl6・6H2Oを3.0×10-3g)添加した。よって、陰極の有効電気分解面積1m2あたりの塩化白金酸量は5.8×10-4モル、塩化イリジウム量は5.8×10-3モルであった。この混合溶液13の添加直後から電気分解電圧は徐々に下がりはじめ、所定量を添加終了後一日経過した時の水素過電圧は0.142Vであった。その後、電気分解槽の運転を継続していき、添加後から7ヶ月経過した時の陰極6の水素過電圧を測定した。この時、水素過電圧は0.184Vまで上昇し、水素過電圧上昇速度(Vr)は6.2mV/monthであった。
以上のことから、塩化白金酸水溶液のみ、または塩化イリジウム水溶液のみを添加する比較例1〜4の場合に比べて、塩化白金酸水溶液と塩化イリジウム水溶液との混合水溶液を添加する本実施例1に於いては、白金族元素単位重量あたりの水素過電圧の低下Aがさらに改善され得ることがわかる。
(実施例2)
比較例1と全く同一条件の電気分解を継続し、陰極6の水素過電圧が上昇して、水素過電圧が比較例1と同じく0.17Vに達した時、陰極室4内へ、イリジウム元素を15重量%含む塩化イリジウム水溶液とロジウム元素を15重量%含む塩化ロジウム水溶液との体積比1:1の混合水溶液13を1.5×10-2g(H2IrCl6・6H2Oを3.0×10-3gとRhCl3・3H2Oを2.9×10-3g)添加した。よって、陰極の有効電気分解面積1m2あたりの塩化イリジウム量は5.8×10-3モル、塩化ロジウム量は1.1×10-3モルであった。この混合溶液13の添加直後から電気分解電圧は徐々に下がりはじめ、所定量を添加終了後一日経過した時の水素過電圧は0.144Vであった。その後、電気分解槽の運転を継続していき、添加後から7ヶ月経過した時の陰極6の水素過電圧を測定した。この時、水素過電圧は0.185Vまで上昇し、水素過電圧上昇速度(Vr)は5.8mV/monthであった。
以上のことから、塩化白金酸水溶液のみ、塩化イリジウム水溶液のみ、または塩化ロジウム水溶液のみを添加する比較例1〜5の場合に比べて、塩化イリジウム水溶液と塩化ロジウムとの混合水溶液を添加する本実施例2に於いては、白金族元素単位重量あたりの水素過電圧の低下Aがさらに改善され得ることがわかる。
最後に、以上の比較例1〜5および実施例1〜2における結果の要約が、次の表1において示されている。
Figure 0004339337
本発明は、隔膜法またはイオン交換膜法によるハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解全般に適用可能である。本発明によれば、電気分解槽の陰極室が備える陰極の活性を効果的に回復させることができる。よって、電気分解の操業効率を高めることができ、操業コストを低減することができる。
電気分解装置の一例の構造を示す模式図である。 陰極の水素過電圧の上昇速度に関する説明図である。
符号の説明
1 電気分解槽、2 イオン交換膜、3 陽極室、4 陰極室、5 陽極、6 陰極、7 陽極溶液、8 陰極溶液(苛性ソーダ溶液)、8a 陰極溶液用配管(苛性ソーダ溶液用配管)、9 陽極生成ガス、10 陽極生成物、11 水素ガス、12 陰極生成物(苛性ソーダ溶液)、12a 製品としての苛性ソーダ溶液、12b 陰極生成物12から一部製品12aを抜き取った後の残りの苛性ソーダ溶液に純水を加えて希釈したものまたは希釈しないままの苛性ソーダ溶液、13 可溶性白金族化合物、14 純水、15 電圧計、16 参照電極としての白金黒電極、17 定電流パルス発生器、18 電極電位の測定用のデジタルオシロスコープ。

Claims (8)

  1. 陽極室および陰極室を有する電気分解槽と、前記陽極室に備えられた陽極と、前記陰極室に備えられた陰極とを用いる、ハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解において、
    前記陰極室内に、水またはハロゲン化アルカリ金属水溶液に可溶である白金族化合物を添加する工程を有し、前記白金族化合物が、イリジウム化合物を含み、かつ、イリジウム以外の白金族元素の化合物を少なくとも1種含む、電気分解用陰極の活性化方法。
  2. 前記イリジウム以外の白金族元素の化合物が、白金化合物およびロジウム化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1記載の電気分解用陰極の活性化方法。
  3. 前記陰極室内に添加する前記白金族化合物の合計量が、前記陰極の有効電気分解面積の1m2あたり、10-7〜10-2モルである、請求項1記載の電気分解用陰極の活性化方法。
  4. 陽極室および陰極室を有する電気分解槽と、前記陽極室に備えられた陽極と、前記陰極室に備えられた陰極とを用い、ハロゲン化アルカリ金属水溶液を電気分解して、水酸化アルカリ金属水溶液、ハロゲンガスおよび水素ガスよりなる群から選択される少なくとも1種を製造する電気分解方法であって、
    前記陰極室内に、白金族元素が添加されており、前記白金族元素が、イリジウムを含み、かつ、イリジウム以外の白金族元素を少なくとも1種含む、電気分解方法。
  5. 前記イリジウム以外の白金族元素が、白金およびロジウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項4記載の電気分解方法。
  6. 前記ハロゲン化アルカリ金属水溶液が、食塩水であり、前記水酸化アルカリ金属水溶液が、苛性ソーダ水溶液であり、前記ハロゲンガスが、塩素ガスである、請求項4記載の電気分解方法。
  7. 前記電気分解槽の温度を65〜90℃に、前記陰極の有効電気分解面積の1m2あたりの電流密度を0.1kA/m2〜10kA/m2に設定して、ハロゲン化アルカリ金属水溶液の電気分解を行う、請求項4記載の電気分解方法。
  8. 請求項4記載の電気分解方法を用いる、水酸化アルカリ金属水溶液、ハロゲンガスおよび水素ガスよりなる群から選択される少なくとも1種の製造方法。
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